Contract
2008 年2月 25 日
映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会
目 次
1.映像コンテンツ大国の実演に向けて 1
2.放送番組における出演契約ガイドライン 2
3.「ネット配信」研究会 報告 6
4.「権利者不明の場合の第三者機関」研究会 報告 9
5.「災害補償と保険」研究会 報告 12
6.映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会名簿 15
7.映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会
放送番組における映像実演の検討WG委員名簿 16
2008年2月25日映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会
1.経 緯
「映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会」が2007年2月にとりまとめた提言を受け、「放送番組における映像実演の検討ワーキング・グループ」(以下、放送WG)の下に次のとおり研究会を設置し、それぞれ検討を行った。
この度、この研究会の成果をとりまとめ、ここに報告するものである。
(1)ネット配信研究会
放送番組のネット配信を進めるため、報酬の配分ルールを始めとする諸問題に関する関係者間の協議を行う。
(2)権利者不明の場合の第三者機関研究会
放送番組の二次利用に際して、権利者が不明等の場合についての論点を整理するとともに課題の解決に向けた検討を行う。
(3)災害補償と保険研究会
放送番組の製作現場において、事故等が生じた場合の補償の在り方について、関係者間で具体的な協議を行う。
2.検討成果とその活用
各研究会の成果は、別添の報告書のとおりである。なお、ネット配信研究会と災害補償と保険研究会の検討成果については、昨年策定した「放送番組における出演契約ガイドライン」の内容を補完するものであるため、同ガイドラインに反映し、内容を改正した。
今後は、同ガイドラインを関係団体、団体構成員に広く周知し、同ガイドラインが幅広く参照・活用されるための努力を行う。
3.今後の取組
今後は、ガイドラインの実際の定着状況や運用状況を踏まえ、ガイドラインの点検・検証を行うとともに、契約に伴う実務上の課題等について引き続き検討を行う。
また、権利者不明の場合の第三者機関の在り方について、CPRAと放送事業者との暫定的なルール(一任型権利処理の過渡期的受皿)の実施状況を踏まえ、引き続き検討する。さらに、海外展開の効果的な手法について意見交換を行うほか、新たな課題等があれば、必要に応じ委員を拡充して検討を進める。
1
映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会
(ガイドラインの位置付け)
放送番組への出演に際し、放送事業者または番組製作会社と所属事務所・実演家との間で書面契約を締結しない場合において、出演前に、慣行として当事者間で確認されるべきものとする。また、書面による契約を締結する場合においても参考とされるべきものとする。なお、関係団体間において既に団体協約等が取り交わされている場合は、当該協約を優先することとする。
(契約の目的)
・放送番組への出演に関する役務提供契約であることを確認する。
・放送番組の番組名、番組1回の時間および放送予定回数、放送予定、放送波、製作予定期間等役務の内容を特定するために必要な事項を確認する。
(契約の当事者)
・実演家の所属事務所が実演家の代理人として契約する場合には、所属事務所が代理権限を有していることを保証する旨を明記するとともに、可能な限り、実演家本人も署名(記名)押印することにより、同人が契約内容を了知し、それに同意していることを明らかにすることを確認する。
(出演条件等)
・出演料の総額とその内訳、支払い方法、支払い予定日等を確認する。
・経費の扱いを確認する。
(出演業務・出演に伴う義務)
・実演家は、番組製作に支障をきたすことのないよう留意し、出演スケジュールを順守することを確認する。
・実演家は、放送事業者・番組製作会社(または指定する者)が、番組の宣伝のために解説・予告番組を製作する場合、または各種の広報活動のためにスチール写真の撮影等を行う場合には、これに協力することを確認する。
(スケジュール変更)
・放送事業者・番組製作会社は、放送事業者・番組製作会社または第三者の都合により出演スケジュールを変更しようとする場合は、あらかじめ実演家または代理人と協議のうえ新たにスケジュールを定めることを確認する。
(キャンセル)
・実演xが出演依頼を受諾した後に、放送事業者・番組製作会社の都合により番組出演を取り消した場合は、放送事業者・番組製作会社は一定のキャンセル料を支払うことを確認する。
・実演家が出演依頼を受諾した後に、実演家自身の責に帰すべき事由により、出演を取り消し放送事業者・番組製作会社に損害を生じさせた場合は、放送事業者・番組製作会社は所属事務所・実演家と協議のうえ、所属事務所・実演家に対し、補償を求めることができることを確認する。
・ただし、放送事業者・番組製作会社もしくは所属事務所・実演家が、出演または収録予定日の前の一定期間までに、止むを得ない事由により、番組出演の取り消しの通知をした場合はこの限りではない。
(氏名表示)
・従来からのxxな慣行に照らし、第三者が作品内容を的確に理解できるよう氏名表示を行うことを確認する。
(安全管理・事故補償)
・放送事業者・番組製作会社は番組製作にあたり、実演家に危険を及ぼすことのないよう配慮し、安全衛生管理を行うことを確認する。
・放送事業者・番組製作会社は事故補償を行う対応窓口を設け、万一、番組製作(リハーサルを含む)に起因して実演家に事故が生じた場合、誠実に対応することを確認する。
・安全衛生管理を行う放送事業者・番組製作会社が事故補償責任を負うことを確認する。
(マルチユース)
・番組の収録・保存・使用について、著作xx、xxな契約慣行等を踏まえつつ、放送事業者・番組製作会社側、実演家側の協議により、以下の項目の取扱いについて確認する。
-国内外の放送事業者や有線放送事業者等への番組の提供
-パッケージによる市販商品化
-映像・音声素材の提供(書籍出版物への提供含む)
-インターネット、モバイルへの番組・素材の提供
(ネット配信については、下記【放送番組のネット配信について】参照)
-番組関連グッズ等の市販商品化
-その他、確認されるべき利用形態
・マルチユースに係る対価については、著作xx、xxな契約慣行等を踏まえつつ、個別の出演契約において定めることができる。ただし、利用の形態・規模等の条件により、団体間の協約がある場合はそれに従う。
(別途協議事項)
・両者において確認していない事情が生じた場合または確認事項の解釈に疑義が生じた場合は、誠意をもって協議し円満に解決することを確認する。
【放送番組のネット配信について】
実際のサービスの内容は下記の事項を踏まえ、当事者の判断あるいは当事者間の合意により決定すること。なお、音楽番組は下記事項の対象から除く。
1.キャッチアップ・サービスについて
(実施主体・対象)
・放送局が(放送局が他社のポータルサイトのスペースを借りる場合も含む。)一度放送した番組を放送終了後に一定期間ネット配信するサービス。
(サービス期間)
・1 週間~10 日などの一定期間とする。
(配信方式)
配信方式は次の通りとし、どのような通信技術または端末を用いて配信されるのか事前に明示すること。
・ストリーミング
・ダウンロード+1週間~10 日などで消去
(報酬の配分方式)
いずれかを関係者の協議により選択。
・レベニューシェア
・出演料ベース
・レベニューシェアと出演料ベースの組み合わせ
(配信内容)
・番組の全部又は一部を配信するかはそれぞれの契約内容に委ねる。
(プロテクション問題)
・その時点で国際標準レベルの技術を採用する。また、プロテクションが破られた時など海賊版が流通した時には関係者は真摯かつ速やかに対応する。
2.放送番組のネット配信について(キャッチアップ・サービスを除く)
(実施主体・対象)
・放送局又は放送局以外の第三者が、過去に放送された番組や今後放送される番組をネット配信するサービス。
(サービス期間)
・契約期間を3年以内とし、合計配信期間6ヶ月以内を原則とする。
(配信方式)
配信方式は次の通りとし、どのような通信技術または端末を用いて配信されるのか事前に明示すること。
・ストリーミング
・ダウンロード+一定期間での消去
(報酬の配分方式)
いずれかを関係者の協議により選択。
・レベニューシェア
・レベニューシェア+ミニマムギャランティー
・提供価格ベース(主に第三者への番組販売)
(プロテクション問題)
・その時点で国際標準レベルの技術を採用する。また、プロテクションが破られた時など海賊版が流通した時には関係者は真摯かつ速やかに対応する。
※ 今後の取組について
・今後の放送番組の円滑な流通のために、放送事業者・番組製作会社・所属事務所・実演家は、番組製作時において次の事項を徹底する。
① 製作者側は、実演家がCPRAあるいは日本音楽事業者協会のいずれにも所属していない場合には、出来る限り当該実演家から本研究会で決まった合意事項に基づき承諾を得るよう努める。
② CPRAあるいは日本音楽事業者協会は、いずれの団体にも所属していない実演家がいる場合には、出来る限りいずれかの団体に権利を委任するよう働きかける。
「ネット配信」研究会 報告
「映像コンテンツ大国に向けた検討委員会」が2007年2月に取りまとめた提言において、放送番組のマルチユースの促進に向けた今後の課題のひとつとして、ネット配信に際しての配信ルール、プロテクションや配分に関するルールなどが指摘された。
これを受け、同年4月、同委員会の「放送番組における映像実演に関するWG」の下に「ネット配信」研究会が設置され、配分ルールをはじめとするネット配信に関する諸問題について計6回研究会を開催し、検討を行った。その結果、関係者はネット配信に積極的に取り組むことを前提に、以下のとおり合意した。
1.合意の前提条件
・実際のサービスの内容は本合意内容を踏まえ、当事者の判断あるいは当事者間の契約により決定すること。
・以下の合意事項には、音楽番組は含まない。
2.キャッチアップ・サービスについて
(実施主体・対象)
・放送局が(放送局が他社のポータルサイトのスペースを借りる場合も含む。)一度放送した番組を放送終了後に一定期間ネット配信するサービス。
(サービス期間)
・1 週間~10 日などの一定期間とする。
(配信方式)
配信方式は次の通りとし、どのような通信技術または端末を用いて配信されるのか事前に明示すること。
・ストリーミング
・ダウンロード+1週間~10 日などで消去
(報酬の配分方式)
いずれかを各々のメリット、デメリット(図1)を踏まえ関係者の協議により選択。
・レベニューシェア
・出演料ベース
・レベニューシェアと出演料ベースの組み合わせ
(配信内容)
・番組の全部又は一部を配信するかはそれぞれの契約内容に委ねる。
(プロテクション問題)
・その時点で国際標準レベルの技術を採用する。また、プロテクションが破られた時など海賊版が流通した時には関係者は真摯かつ速やかに対応する。
(図1)
メリット | デメリット | |
レベニュー・シェ ア方式 | ・収入が増えれば、配分も増える。 ・事業者にとってリスクがない。 ・経費の全体像が把握できる。 ・事業に参入しやすい。 ・リスクがないため、より多くの番組がラインアップされる。 | ・権利者への配分が少ない可能性がある。 ・権利処理のためのコストが高い。 ・収入の配分管理が大変である。 |
出演料ベース | ・権利者にとって一定の配分が確保される。 ・権利処理のためのコストが低い。 | ・事業者による収入が出ても権利者への配分がない。 ・収入や経費の全体像がわからない。 ・事業者にとってリスクがある。 ・リスクがあるため、よく見られる番組が中心になる。 |
3.放送番組のネット配信について(キャッチアップ・サービスを除く)
(実施主体・対象)
・放送局又は放送局以外の第三者が、過去に放送された番組や今後放送される番組をネット配信するサービス。
(サービス期間)
・契約期間を3年以内とし、合計配信期間6ヶ月以内を原則とする。
(配信方式)
配信方式は次の通りとし、どのような通信技術または端末を用いて配信されるのか事前に明示すること。
・ストリーミング
・ダウンロード+一定期間での消去
(報酬の配分方式)
いずれかを関係者の協議により選択。
・レベニューシェア
・レベニューシェア+ミニマムギャランティー
・提供価格ベース(主に第三者への番組販売)
(プロテクション問題)
・その時点で国際標準レベルの技術を採用する。また、プロテクションが破られた時など海賊版が流通した時には関係者は真摯かつ速やかに対応する。
4.今後の取組について
・放送事業者・番組製作会社・所属事務所・実演家は、番組製作時において、上記1~3を参考としつつ(個別の団体協約がある場合にはそれに従う)、インターネット、モバイルへの番組・素材の提供の可否について確認する。
・また、過去の放送番組の二次利用に当たっては、所在不明の権利者が円滑な利用の障害となっていることに鑑み、同様の事態が今後生じるのを防ぐため、放送事業者・番組製作会社・所属事務所・実演家は、番組製作時において、次の事項を徹底する。
① 製作者側は、出演実演家がCPRAあるいは日本音楽事業者協会のいずれにも所属していない場合には、出来る限り当該実演家から本研究会で決まった合意事項に基づき承諾を得るよう努める。
② CPRAあるいは日本音楽事業者協会は、いずれの団体にも所属していない実演家がいる場合には、出来る限りいずれかの団体に権利を委任するよう働きかける。
以上
「権利者不明の場合の第三者機関」研究会 報告
2007 年 2 月に公表された「映像コンテンツ大国の実現に向けて」の報告書において課題として提起された、権利者不明時におけるクレーム対応の第三者機関の運用方法等について、「権利者不明の場合の第三者機関」の研究会を設置し、検討を行った。
本研究会では、これまで5回の研究会を開催し、主に、①権利者が不明の場合の対応、②第三者機関のあり方、③一部の人が反対した場合の対応の3点について、それぞれ論点を整理するとともに、課題の解決に向けた検討を行ったが、それらの検討結果は、以下のとおりである。
1. 権利者が不明の場合
(1)現状の課題
・ 著作権の場合には著作権法上の裁定制度があるが、裁定までの時間や手数料の問題などで事実上利用が難しい。
・ 著作隣接権には、法律上の裁定制度がないため、例えば実演家が不明の場合には放送番組の二次利用ができない。
・ 過去に制作されたニュース番組、ドキュメンタリー番組をネット上で二次利用する際、これらに登場する一般人の方々で行方が分からず了解が取れないなどの理由により、二次利用ができない場合がある。
これらの課題に対して、この研究会では、実演家および肖像権やプライバ シーに関わる一般人等の不明の場合を中心に議論を行った。
(2) 実演家が不明の場合
① 合意事項 (一任型権利処理の過渡的受け皿)
実演家が不明の場合、実演家の権利者団体である芸団協実演家著作隣接権センター(CPRA)が不明者の調査を行い、クレーム対応にも積極的に取り組むこととなった。その結果、不明実演家からのクレーム等は実質上ほとんどないと考えられることから、実演家の不明者があっても、放送番組の二次利用を進めることで、CPRAはNHKおよび民放在京5社とそれ
ぞれ合意する方向である。なお、不明者の使用料は、最終的に所在が判明しなかった場合には利用者である放送事業者または放送事業者が指定する第三者に返還されることとなる。
※ただし、現時点では法的な裏付けがあるわけではない。
② 今後の検討課題
現在、文化庁の「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」において、実演家不明の場合の裁定制度の検討が行われているが、現時点においては、不明者の使用料を預託する機関を設立する必要性があるという方向で、幹事社が中心となって、具体的な制度設計を行っていくこととする。
(3) 肖像権やプライバシーに関わる一般人の不明者について
ニュース番組、ドキュメンタリー番組などに出演した一般の方々が見つからない場合、当該放送番組を利用するか否かは利用者の責任において決定されるべきであるが、その際には利用のためのガイドラインの作成や紛争を仲裁する第三者機関の設立が求められるところである。放送事業者は、引き続きこれらの課題について検討を行う。
2.第三者機関のあり方
実演家が不明の場合の第三者機関と肖像権やプライバシーに関わる一般人の場合の第三者機関とは、それぞれ性格が異なるので、別組織が望ましく、また経費等の面から、既存の団体等を活用したほうが良いとの意見が大勢であった。また、第三者機関の法的責任に対する懸念を示す意見のほか、運営資金についてはネット配信事業者などにも負担を求めるべきだとの声もあった。
3.一部の人が反対した場合の対応
(1) 現状の課題
・ 放送番組には多くの権利者が関わっているが、一部の人の反対があるとコンテンツの流通は難しい。
・ 著作権法上、共有著作権については正当な理由がない限り反対できないといった規定があるが、放送番組には適用できないか。
【参考】著作xx
(共有著作権の行使)
第六十五条 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において
「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なけれ ば、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。
3 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。
(2) 合意事項
実演家について、主役級や準主役級の出演者は別として、それ以外の出演者がネット提供に反対した場合には、可能な限り権利者団体等が説得にあたることとする。
※なお、「共同実演に関する規定の在り方」および「共有著作権の規定の在り方」については、文化庁「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」においてワーキングチームを設置し、検討を行っている。
「災害補償と保険」研究会 報告
「映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会」が2007年2月に取りまとめた提言において、今後の取組として、「事故補償」に関し「保険の枠組みに関する検討の開始」があげられた。これを受け、「放送番組における映像実演に関するWG」のもとに研究会「災害補償と保険」が設置され、事故補償と保険について計6回検討が行われた。
本研究会で出された主な意見の概要と確認された事項は次のとおりである。
1.主な意見の概要
(1)事故補償の現状について
放送事業者・番組製作会社が事故補償をどのように行っているのか、また、保険加入状況やその内容について以下の報告が行われた。
①安全管理について
・ 事故報告を速やかに行うなどの安全管理体制は整っている。
②補償の考え方について
・ 放送事業者・番組製作会社はその責任下で事故が起きたとき、責任を持って補償している。対応しないと危機管理の面で重要な問題であり、不安があれば解消する。
③保険について
・ 保険は補償のための道具である。製作者の責任を補うものであり、すべてという考え方ではない。また、保険をかけず直接補償を行う事業者もある。
・ 包括傷害保険、約定履行費用保険、海外旅行傷害保険、賠償責任保険に加入、出演者、社外スタッフも対象とし、通院、入院、死亡、後遺障害をカバーしている。補償額は保険料により異なるが、一定の金額は出る。
(2)事前の提示について
実演家側から、出演時に補償内容が示されていない現状について、報告書で提案されたガイドライン等に明記し透明化を図る必要があるのではないかとの意見が出された。これについては以下の意見が出された。
⮚ どのように明示するのか、毎回、その必要があるのか。契約書がない場合もあり一律に示すことは現実的でなく、むずかしい。
⮚ 保険について明記するのは不自然である。補償するスタンスが決まっていれば明記の必要はない。
⮚ 報告書では「各契約書に明記することが望ましい」との努力義務になっており、これを発展させていけばよいのではないか。契約書に代わるものとしてガイドラインを利用する。
(3)補償条件および補償内容について
実演家側から、補償が自動的・無条件に行われること(過失の有無の問題)、一定水準の額が確保されること、所得保障が行われること、事故対応のための現場とは別の一本化された専用窓口が明らかにされていること、事故が内々で処理され交渉において力関係が働かないようにすること、が望まれるとの意見が出された。これについては以下の意見が出された。
⮚ 放送事業者としては無条件にすべて補償することはできない。傷害保険の範囲内であれば、出演者に故意や重大な過失がなければ保険金が支出される。しかし、傷害保険の範囲外であれば過失の問題は重要になってくる。そのための「対応窓口」で
ある。
*傷害保険は過失の有無に関係なく(故意を除き)契約時に設定した補償額が保険金として支払われる。治療費など必要な補償にあてることができる。(損保協会)
⮚ 対応窓口は明らかにしなければならない。一義的には事情を一番よく知っているプロデューサーが責任者として対応すべきであり、「専用」窓口を新たなセクションと
して設けることはむずかしい。現場には事故報告義務があり、現場から業務部、総務部に報告が上がり行うことになっている。向き合えるルールができれば力関係の問題は自ずと消える。
⮚ 窓口としては、①現場と総務・労務との中間的な位置にある各現場部局の総務セクションや業務セクション(NHK、TBS)、②管理部門である総務局総務部(日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)、を考えている。
(4)補償責任者について
事務局作成の製作パターン図――①持込番組・購入番組で放送契約の形態のもの、②製作委託契約の形態で全部委託・複数委託・一部委託のもの、③放送事業者が番組を直接製作する自社製作、を確認し、意見交換を行った。
出演者
<参考図>製作パターン
放送事業 | ①放送契約 持込番組 購入番組 全部委託 ②製作委託契約 複数委託 一部委託 | |
③直接製作 | 自社製作番組 | |
⮚ 局製作、発注製作等それぞれの補償責任はどこが負うのかという問題である。
⮚ 実演家としては、どこが補償責任を負うのかグレーゾーンになっている場合が問題である。また、プロデューサーが責任者となると力関係なしに話ができるのか。たとえば台本に安全衛生管理者としてプロデューサー名を明記してはどうか。
⮚ 放送事業者・番組製作会社は安全衛生管理を行うとなっているが、安全管理対策の面で、プロデューサーが統括安全衛生責任者であり、番組製作において事故が起きた場合、責任者はその番組のプロデューサーだと、中央労働災害防止協会が明快な
ガイドラインを出している。ひとつの尺度として、プロデューサーが仕事をしている会社が事故補償責任を負うというようにすればグレーの部分はなくなる。台本等への明記はなじまない。
(5)新たな事故補償制度について
報告書で問題提起された、保険会社等を交えた「新たな事故補償制度」について、研究会では(社)日本損害保険協会の方に話を聞いた。以下はその概要である。
○ 製作者サイドが共同で利用できる傷害保険システムの構築については次のような課題があり、実現のハードルは高いであろう。
・対象となる出演者である被保険者すべての保険料の徴収と名簿の管理が必要。そのための新たな機関を設ける必要がある、
・保険の契約期間は通常一年であるが、契約時点において一年間分の出演者を把握することは困難ではないか。
・被保険者を特定しない無記名の包括傷害保険は、リスクが均一な集団を対象としている。実演家の場合、スタントマンなどリスクの高い出演者もいるため、被保険者を特定しない保険を保険会社が受けるか疑問。また、できたとしても相当高い保険料となるだろう。
○ 共同システム構築以前の方策としては、保険加入の最低基準を設けるなど業界共通のガイドライン作成により保障に対する意識を高める方法がある。ただし、保険加入を強制することは独禁法により問題となるので努力義務とすべき。
○ また、出演者サイドが団体保険契約を結び一定のカバーをかける方法もある。
○ 政府労災保険の適用については、出演者の実演を労働提供と捉えるとすると、明確な雇用関係になくとも、厚生労働省が示す使用従属関係の考え方に合致し、実態として事業主と被用者との関係が認められれば、適用はあり得るかと思う。ただし、責任関係の明確化が大きな課題だろう。
2.確認事項
(1)事故補償制度について
◆ 放送事業者・番組製作会社は安全衛生管理を行う。
◆ 安全衛生管理を行う放送事業者・番組製作会社が事故補償責任を負う。
◆ 放送事業者・番組製作会社は事故補償を行う対応窓口を設ける。
(2)ガイドラインの周知徹底について
研究会での主な意見の概要と確認された事項について、参加各社・団体および関係団体等において、報告等の周知徹底を行う。
2008年2月25日
(敬称略・順不同)
〔座 長〕
エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク理事長日比谷パーク法律事務所代表
〔委 員〕
全日本テレビ番組製作社連盟理事長 PDS代表取締役
日本映画製作者連盟顧問東宝社長
日本音楽事業者協会会長
プロダクション尾木代表取締役
日本芸能実演家団体協議会会長人間国宝
日本放送協会会長
フジテレビジョン相談役
日本経団連産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会長ギャガ・コミュニケーションズ 会長
久保利 英 明
工 藤 英 博
高 尾 野 | 井 木 村 | 英 | 幸 徹 萬 |
福 | 地 | 茂 | 雄 |
村 | 上 | 光 | 一 |
依 | 田 | 巽 |
〔オブザーバー〕
内閣官房知的財産戦略推進事務局内閣参事官 山 本 雅 史
〃 内閣参事官 大 路 正 浩
総務省 情報通信政策局コンテンツ振興課長 小笠原 陽 一
文化庁 長官官房著作権課長 山 下 和 茂
〃 文化部芸術文化課長 清 水 明
経済産業省 商務情報政策局文化情報関連産業課長 前 田 泰 宏以 上
映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会放送番組における映像実演の検討WG委員名簿
〔座 長〕
2008年2月25日
(敬称略・順不同)
末吉綜合法律事務所弁護士 末 吉 亙
〔委 員〕
全日本テレビ番組製作社連盟副理事長 中 尾 幸 男
全日本テレビ番組製作社連盟理事 高 村 裕
日本映画製作者連盟テレビ部会員
角川映画映像制作グループ グループ長
日本映画製作者連盟テレビ部会員松竹テレビ部部長
椿 宜 和
田 中 浩 三
日本音楽事業者協会事務局長 山 崎 博 司
実演家著作隣接権センター法制関連委員会委員 浅 原 恒 男
実演家著作隣接権センター運営委員 守 屋 俊 郎
日本放送協会放送総局特別主幹 関 本 好 則
〃 ライツ・アーカイブスセンター(著作権・契約)副部長 梶 原 均
フジテレビジョン総務局局長 三 好 久 雄
日本民間放送連盟知的所有権対策委員会IPR専門部会コンテンツ流通部会 主査
フジテレビジョン編成制作局知財情報センター著作権部長
千 葉 晋 也
〔オブザーバー〕
内閣官房知的財産戦略推進事務局参事官補佐 一 山 直 子
総務省情報通信政策局コンテンツ振興課長 小笠原 陽 一
〃 情報通信政策局コンテンツ振興課課長補佐 倉 田 哲 郎
文化庁 長官官房著作物流通推進室長 川 瀬 真
〃 文化部芸術文化課課長補佐 星 野 有希枝
経済産業省 商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐 井 上 悟 志
〃 商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐 太 田 茂 雄
以 上