ロブマ湾エリア1及び4における LNG 事業に適用する特別法令契約体制
2015 年 1 月
JETRO ヨハネスブルク事務所作成
ロブマ湾エリア1及び4における LNG 事業に適用する特別法令契約体制
(Decree-Law 2/2014)
1. 背景及び目的
ロブマ湾のエリア1及び4における探査及び生産に係るコンセッション契約は、法令 67/2006 及び 68/2006(Decree No. 67/2006, 68/2006, 26 of December)にて規定されているが、巨大なガス田の発見に伴い、LNG 生産のための建設、資金調達、財産権、O&M 等の条件を設定する必要が生じていた。本法令では、ロブマ湾のガス事業に適用される特別な法的契約体制を設定するものであり、2014 年 11 月 25 日に閣議承認され、12 月 2 日に施行された。
本法令は、以下の団体に適用される。
a.) エリア1及び4の「探査及び生産の契約」のコンセッショナー(Anadarko と
ENI)
b.) コンセッショナーによって直接及び間接的に確立された「特別目的団体」
(Entity of Special Objective:本法令第 4 条に規定)
c.) コンセッションナー及び特別目的団体と契約を結んだ団体
d.) ロブマ湾の事業に関与しているその他のサブコントラクター
e.) ENH(Empresa Nacional de Hidrocarbonetos: 国家石油公社)及びその関連企業
本法令は、Anadarko と ENI のガス事業に適用される特別法令である。尚、モザンビーク国における石油・ガスに関する法律は、以下にて規定されている。
• 石油法(Law 3/2001, February 21)
• 石油事業規則(Decree 24/2004, August 20)
• 石油法改正(Xxx 00/0000, Xxxxxx 18)
• 石油事業の税制及び優遇措置に関する特別体制(Law 27/2014, September 23)
2.主な契約内容
(1)実施及びオペレーション(Article 4)
ロブマ湾における事業のため、特別目的団体が設立される。特別目的団体は、以下の条件を満たさなければならない。
a.) モザンビークで設立される
b.) モザンビークの法律に遵守する
c.) モザンビークに本部を位置する
d.) 人材が付与され、ロブマ湾の事業のインフラ建設、財産、オペレーション等の全ての活動を自立的に経営することが認可されている
上記の例外として、ロブマ湾事業の資金調達、販売、海洋輸送を目的とする特別目的団体が、モザンビーク共和国の国外で設立されることができる。モザンビーク政府の承認を要するのは、以下の通りある。
a.) モザンビーク共和国の国外で設立される特別目的団体の会社憲章
b.) 特別目的団体の設立文書とその変更
c.) 特別目的団体の株参加の譲渡もしくは経営の変更
(2)ユニタイゼーション(Article 7: Unitization)
エリア1及び4にまたがる石油埋蔵(straddling reservoirs)が存在することから、エリア1については、天然ガス 12 tcf(trillion cubic feet)、エリア4については、12 tcf を初期の自立的及び調整的な開発として使用することを認可する。これらガスの生産は、コン
セッショナーが作成する生産マスタープラン(Plano Director de Produção: Master Depletion Plan)に基づくものとする。
エリア1及び4のコンセッショナーは、またがる石油埋蔵の商業化及び初期の自立的調整的開発の計画について、表明しなければならない。
本法令の施行から 6 ヶ月以内に、コンセッショナーはユニタイゼーション合意をモザンビーク政府に示さなければならない。
(3)開発計画の要件(Article 8)
ロブマ湾の事業の開発及びガス生産の期間は、各開発計画が政府に承認された日から 30 年間とする。ロブマ湾の各事業は、1つもしくは複数の開発計画を対象とする1。開発計画では、生産、開発事業、液化、譲与、販売、インフラの設置及び O&M を規定するものとする。初期開発計画には、生産マスタープラン(master depletion plan)が付属され
る。ロブマ湾の事業のための開発計画は、本法令付属書 B の要素を含めなければならない。本法令の施行から 6 ヶ月以内に、エリア1と4の探査と生産コンセッション契約に関す
る事業者は、以下を政府に提出しなければならない。
i.) 生産マスタープラン
ii.) エリア1及び4の設備の建設、開発、操業に関する実施計画(layout)
(4)物品及びサービスの取得(Article 10)
コンセッショナー及び特別目的団体の物品及びサービスの取得においては、国際的基準に準拠したものでなければならないが、物品及びサービスの提供においては、国内企業、モザンビーク団体、もしくは外国企業とパートナーシップを有する団体を優遇することとする。
ロブマ湾の各事業においては、ローカル事項の計画を作成しなければならない。ローカル事項には、a) モザンビークの物的及び法的団体への優遇、b) 特別なノウハウを必要とする物品及びサービスについては、モザンビーク団体もしくはモザンビーク団体と関連する外国企業への優遇、c) 技術や特許等の特別な要件を必要とする物品及びサービスの契約については、自由に外国企業及びモザンビーク団体から物品及びサービスを取得することができる、ことについて記載する。
本法令で規定されたものと3百万ドル以下の契約を除いて、サービス、提供、建設の機材と契約は、公示されなければならない。
モザンビーク国内で利用できる物品、機材、サービス,設備には、優遇措置を与えなければならないが、国際的な基準を満たすことと、質及び利用可能性という点において競争的なものでなければならない。
(5)ロブマ湾事業の土地及びインフラ(Article 11)
コンセッショナー及び特別目的団体は、事業の実施のために必要な領域へのアクセス、使用、利用、探索の権利を有する。
コンセッショナー及び特別目的団体は、以下の土地において、ロブマ湾事業のインフラの財産権を有する。
a.) コンセッショナー及び特別目的団体に認可された土地の使用・利用権に基づいた土地
b.) コンセッショナー及び特別目的団体の間で取決められた譲渡及び探索契約に基づいた土地
c.) ロブマ湾の事業が実施される部分保護地区
コンセッショナー及び特別目的団体は、以下の権利を有する。
a.) 探索権の譲渡契約を締結すること
1 例えば、ガス火力発電事業の天然ガスは、エリア1からの天然ガスのみから調達されることも可能であるし、エリア1とエリア2の複数から調達されることも可能である。
b.) 探索の権利を譲渡すること、もしくは、探索の移譲の権利に関する契約上の立場を譲渡すること
c.) ロブマ湾の事業のインフラに関するいかなる権利を委譲もしくは譲渡すること
d.) ロブマ湾の事業のインフラに関するいかなる担保権を委譲もしくは譲渡すること
2012 年 12 月に発行した通り、Cabo Afungi に位置する 7,000 ha の領域について、
Rovuma Basin LNG Lda が土地の使用・利用の権利を有することを確認する。
(6)LNG 海洋ターミナル(Article 12)
コンセッショナー及び特別目的団体は、カーボデルガード港湾公社(empresa Portos de Cabo Delgado, SA: PCD)に譲渡された地理的領域の権限を通して、LNG 海洋ターミナルの領域及び LNG 海洋ターミナルのエリアについて、アクセス及び操業の排他的権利を有する。この地理的領域は、付属書 C と D に記載されており、政府がコンセッショナーもしくは特別目的団体に認可した、2つの新たな直接かつ排他的なコンセッション(①材料荷揚げ設備(material offloading facility)、②LNG 海洋ターミナル)に基づいている。
コンセッショナーと特別目的団体は、付属書C の地図に示す海洋領域において、海洋交通の開口部及び出口をコントロール及び管理することができる。
コンセッショナーと特別目的団体は、LNG 海洋ターミナルのエリアにおいて、以下の活動を実施することが認可された。
a.) 材料荷揚げ設備を譲渡、建設、設置、保持、資金調達、課税、使用、維持する
b.) LNG 海洋ターミナルを譲渡、建設、設置、保持、課税、使用、維持、管理及び操業する
探索及び生産コンセッション契約に基づいた事業者と PCD は、特別目的団体を設立することができる。この特別目的団体の株は、PCD に 40%、各事業者に 30%付与され、材料荷揚げ設備の経営及び操業を目的とする。ロブマ湾の事業の第1フェーズ建設完了保証後、材料荷揚げ設備のコンセッション権は、この特別目的団体に優先して委譲されることになる。
モザンビーク政府は、PCD を通して、付属書 E に示した港湾当局サービスを提供する。付属書 F に示したその他のサービスについては、PCD もしくは特別目的団体の管理下とな る。
ENH は、本条項に関するコンセッション権に基づいて実施される全てのバリューチェーンに参加する。
(7)為替の活動と手続き(Article 14)
コンセッショナー、特別目的団体、主要なサブコントラクター、融資団体、外国人は、以下の権利を有する。
a.) モザンビークの銀行における国内通貨及び外国通貨の銀行口座の開設、保持、移動
b.) ロブマ湾事業に関連する価値の預金と保持
c.) モザンビーク通貨の購入
d.) モザンビーク領域外の銀行における外貨立て口座の開設、保持、移動
e.) ロブマ湾事業に関連する価値の口座への受領、預金、保持
f.) 以下の目的のために価値を預金すること:
① 石油販売によるコンセッショナーへの支払
② コンセッショナー及び特別目的団体への液化サービス関連の支払
③ 債務サービスの支払
④ 債務契約の返済のための支払
⑤ 事業コストの支払と投資の支出
⑥ 利益と配当金の支払
⑦ コンセッション契約の下での石油販売による国家への支払
⑧ ENH への支払と配分
モザンビーク国内の口座に送金された価値の 50%は、モザンビーク国内で操業するために国内通貨に変換されなければならない。
コンセッショナーと特別目的団体は、モザンビーク国外における外国通貨の口座からモザンビーク国外の融資者に債務の償還を行うことができる。
源泉課税の支払を損なわない限りにおいて、主要サブコン、非居住サブコン、もしくはいかなる外国人労働者は、モザンビーク国外において、外国通貨で報酬を受領する権利を有する。
(8)労働力(Article 18)
ロブマ湾の事業関連団体は、全てのレベルにおいて適切な資格を有するモザンビーク人の雇用を優先しなければならない。非熟練労働の地位については、外国人の雇用を考慮してはならない。外国人の雇用は、モザンビーク政府によって承認された投資事業体制の条件で有効となり、モザンビークで働く外国人労働者の合計の枠内(クォータ)となる。本枠内で契約される外国人労働者に加えて、事業関連団体は、短期間の労働体制の下で外国人を雇用することができ、年間最大 180 日間まで、この労働体制で外国人を雇用することができる。
(9)労働目的の外国人の雇用、入国、滞在(Article 20)
外国人の雇用については、付属書 I で設定された手続きで行われる。労働担当大臣は、労働許可の申請から7営業日以内に回答しなければならない。外国人雇用においては、鉱山産業セクターの最小賃金の5ヵ月分の税金を支払わなければならない。
(10)労働規則(Article 21)
ロブマ湾の事業関連団体は、事務労働を除き、1 日 12 時間労働時間体制を採用するこ
とができる。この 12 時間労働体制では、休暇を含む休憩期間を考慮しなければならない。
(11)会計(Article 22)
モザンビーク政府への全ての支払は、税金を除き、アメリカドルで行われることが可能である。モザンビーク通貨で支払われるコストや費用の受領額は、モザンビーク銀行が発行した通貨の売買為替レートもしくは取引日に有効な規則に基づいて、アメリカドルに両替されることが可能である。
(12)法的・税務的設定(Article 26)
モザンビーク政府は、新しい法律の制定や法律の変更がある場合を除いて、ロブマ湾の各事業の有効期間中の法的・財務的安定を保証する。政府とコンセッショナーは、LNG の最初の出荷の日から 10 年目と 20 年目に会合を設定し、各コンセッション事業で設定された条件について協議する。この協議において、90 日以内に政府及びコンセッショナーが設定条件に合意しない場合、コンセッショナーは、最初の LNG 出荷の日から 10 年以降の 10 年間、石油生産税の 4%を支払わなければならない。20 年目以降については、コンセッショナーは石油生産税の 6%を支払わなければならない2。
2 現行の石油生産税は、Law 28/2014 に規定されており、原油は生産額の 10%、天然ガスは6%、国内産業の開発目的の生産については、各石油生産税の半分(原油 5%、天然ガス3%)と規定されている。