1) 労働協約は、労使間合意に優先して、労働条件を労働者にとって有利にも不利にも規律する。したがって、Y 社とZ 労働組合との間で「アルバイト 1 年目の時給を 1200 円とする」旨の労働協約を締結していた場合には、X が Z 労働組合の組合員であれば、X の 1 年目の時給は 1200 円となる。反対に、労働協約が
労働法の概要 第1章 労働法の役割 労働契約は私法上の契約であるから、契約自由の原則により、その契約内容を労働者と使用者の合意により自由に決定できるはずである。しかし、一般に労働者は使用者に比べて交渉力や情報量の面で大きく劣位するため、労働契約について契約自由の原則を貫徹すると、労働者が不利な契約内容を押し付けられることになりがちである。そこで、労働法は、実質的な意味での契約の自由(さらには、市場機能)を回復させるために、労働基準法や労働契約法、労働組合法などにより特別な法的規律を設けている。 労働法は、対象領域に着目して、雇用関係法、集団的労働法、雇用保障法に分類することができる。以下では、雇用関係法と集団的労働法の概要を取り上げる。 第2章 雇用関係法 雇用関係法とは、個々の労働者と使用者との間の雇用関係を規律する法律の総称である。代表的なものとしては、労働基準法、労働契約法が挙げられる。これらは、労働条件の最低水準を定めるとともに、基本的人権に関する規律や労働契約に関する基本的ルールを定めている。 1.労働契約の内容の規律(形成/補充) 労働条件は、労働契約の内容により決せられる。 労働契約の内容を規律する代表的なものとしては、労使間の合意(労働契約法 3 条 1 項・8 条)、就業規則(労働契約法 7 条本文・10 条本文)・労働協約(労働組合法 14 条以下)・強行法規の一部(労働基準法 32 条等)が挙げられる。 [図解] 労働条件に関する労働契約の内容 労使間合意 就業規則 労働協約 強行法規の一部これらの間には、優劣がある。 ①労使間合意・就業規則・労働協約は強行法規を下回ってはならないから、 「労使間合意・就業規則・労働協約 ≧ 強行法規」となる。 ②労使間合意は就業規則の水準を下回ってはならないから、「労使間合意 ≧就業規則 ≧ 強行法規」となる。 ③労使間合意・就業規則は労働協約を下回ることも上回ることもできないから、労働協約は、労使間合意・就業規則に優先して、労働条件を労働者にとっ て有利にも不利にも規律する(有利原則否定説)。 | A A ほかにも、労使慣行(民 92 条)と xxx(民 1 条 2 項、労契 3 条 4 項)がある。 厳密には、外部規律説からは、労働協約は労働契約を外部から規律するにとどまる(契約内容の修正は伴わない、速修 332 頁・1(2)イ)。 速修 332 頁 1(3)イ |
(具体例) case1:Y 社では、就業規則においてアルバイトの時給について定めておらず、採用面接の際に、その都度、アルバイトの時給について合意をしていた。 ➡X が Y 社との間で「X の 1 年目の時給を 1000 円とする」旨の合意をしていれば、X の 1 年目の時給に関する契約内容は、上記合意により、「Xの 1 年目の時給を 1000 円とする」という内容になる(合意による契約 内容の確定)。その結果、X の 1 年目の時給は 1000 円になる。1) case2:Y 社では、就業規則で「1 年目のアルバイト従業員の時給を 1000 円とする」旨を定めていた。 ➡1 年目のアルバイト X の時給に関する契約内容は、原則として、就業規則により、「1 年目の時給を 1000 円とする」という内容になる(合意原則に対する例外)。2)3) case3:Y 社には、同社従業員によって組織される Z 労働組合があり、Z 労働組合と Y 社との間で、「来期は、Z 労働組合の組合員全員の基本給を 10%アップする」旨の労働協約を締結した。 ➡基本給 10%アップを内容とする労働協約の規範的効力が Z 労働組合の組合員 X にも及ぶことにより、X の基本給に関する契約内容が「来期は、基本給を 10%アップする」という内容に規律される。その結果、X の今期の基本給が月額 30 万円であれば、来期の基本給が月額 33 万円まで上がる。 case4:Y 社は、従業員 X との間で、「1 日 8 時間を超える法定時間外労働をしても、X には残業代を一切支払わない」旨の合意をした。 ➡労基法では、1 日 8 時間を超える法定時間外労働に対しては、一定額の残業代(割増賃金)を支払わなければならないとされている(労基 37 条 1 項)。そうすると、X・Y 社間における「1 日 8 時間を超える法定時間外労働をしても、X には残業代を一切支払わない」旨の合意は、労基法 37 条 1 項違反により無効となる(労基 13 条前段)。その結果、X・Y 社間における労働契約のうち、「1 日 8 時間を超える法定時間外労働に対する残業代の支払い」に関する部分について、空白が生じる(何も定められていないことになる)。この空白部分を労基法上のルール通りに規律す るのが、労基法の直律的効力である(労基 13 条後段)。労基法の直律的 | この原則ルールに対する例外である労xx 7 条但書については基礎編で説明する。 1 日 8 時間労働の原則(労基 32 条 2 項)。 |
1) 労働協約は、労使間合意に優先して、労働条件を労働者にとって有利にも不利にも規律する。したがって、Y 社とZ 労働組合との間で「アルバイト 1 年目の時給を 1200 円とする」旨の労働協約を締結していた場合には、X が Z 労働組合の組合員であれば、X の 1 年目の時給は 1200 円となる。反対に、労働協約が
「アルバイト 1 年目の時給を 900 円とする」という内容である場合には、X の 1 年目の時給は 900 円となる(ルール③、不利益変更の限界については速修 335 頁[論点 1])。
2) 労働協約は、就業規則にも優先するから、「アルバイト 1 年目の時給を 1200 円とする」旨の労働協約が
ある場合には、組合員である X の 1 年目の時給は 1200 円となり、「アルバイト 1 年目の時給を 900 円とする」旨の労働協約がある場合には、X の年目の時給は 900 円となる(ルール③)。
3) 労使間合意は就業規則の水準を下回ってはならない。したがって、X が Y 社との間で「X については、アルバイト 1 年目の時給を 900 円とする」旨の合意をしていた場合であっても、X のアルバイト 1 年目の
時給は 1000 円となる(ルール②)。理論構成としては、就業規則の最低基準効を定める労xx 12 条を用い
ることになる(同条の適用態様については基礎編[速修 27 頁]で説明する)。
効力により、「1 日 8 時間を超える法定時間外労働に対する残業代の支払い」に関する契約内容は、「1 日 8 時間を超える法定時間外労働に対して、労基法 37 条 1 項所定の額による残業代を支払う」という内容に修正される。 2.雇用関係法における労働者・使用者の概念 (1) 労働者 例えば、労働基準法における労働者は、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい(労基 9 条)、これに当たるかは、契約の形式・名称ではなく、就労の実態(使用従属関係の有無)を基準として判断される。 case1:X は、Y 社との間で「業務委託契約」という名称・形式の契約を締結し、 Y 社の工場内において、Y 社の従業員の指揮監督の下で、作業に従事していた。X・Y 社間にも労働基準法が適用されるか、X・Y 社間の契約の名称・形式が「業務委託契約」であることから問題となる。 ➡ある契約関係にある当事者間に労働基準法が適用されるかは、契約の名称・形式ではなく、就労の実態を基準として判断される。 労働基準法の適用の有無? 業務委託契約 X Y 社 (2) 使用者 使用者は、原則として、労働者が労働契約を締結した相手方(雇用主)を意味する。もっとも、黙示の労働契約や法人格否認の法理により、使用者概念が元々の雇用主以外の者にまで拡張されることがある。 case2:X は、Y 社との間で有期労働契約を締結し、Z 社の工場内に派遣され、そこで作業に従事していた。 Y 社は、Z 社との労働者派遣契約が終了することを理由に、X を期間満了前に解雇した。X は、Y 社による解雇は無効であるとして、Z 社に対して労働契約上の地位の確認を求めることができるか。 ➡労働契約上の「使用者」は、原則として、X の雇用主であったY 社だけである。 もっとも、X・Z 社間における黙示の労働契約の成立が認められたり、法人格否認の法理によりY 社の独立の法人格(会 3 条)を否定することができる場合には、Z 社も X の「使用者」として、X に対する包括的雇用 責任を負いうる。4) | A 速修 8~24 頁 |
4) 黙示の労働契約の成立が認められた場合、解雇の有効性にかかわらず、X の Z 社に対する地位確認請求が認められる。これに対し、法人格否認の法理により Z 社の X に対する包括的雇用責任を認めるためには、 Y 社が解雇後も X に対する包括的雇用責任を負っていることが必要であるから、解雇が無効であることまで必要とされる(法人格否認の法理は、Y 社のX に対する責任をZ 社に肩代わりさせる法理だからである)。
①労働者派遣契約 Y 社 Z 社 ③解雇 ②有期労働契約 ④労働契約上の地位の確認 X(派遣労働者) 3.就業規則 (1) 意義 労働契約の内容は、労使間合意により設定されるのが原則的な在り方である(合意原則/労契 1 条・3 条 1 項)。 しかし、多数の労働者に共通する労働条件(=集団的労働条件)を統一的に設定する必要性から、一定の手続・要件の下に、使用者が就業規則の新設により労働者たちの労働契約の内容を一方的に規律することが許容されている(労契 7 条本文)。 要件は、①就業規則の実質的「周知」(労働者が知ろうと思えば知り得る状態にしておくこと)と、②就業規則の「合理」性である(労契 7 条本文)。 なお、一旦設けた就業規則を変更することで労働条件を労働者にとって不利益に変更することも、「周知」・「合理」性を要件として、許容される(労契 10 条本文)。この場合の「合理」性は、労xx 7 条本文の「合理」性よりも厳格に判断される。 (2) 効果 就業規則には、①労働契約の内容を規律(修正を含む)する契約内容規律効と、②最低基準効(労契 12 条)がある。②により、就業規則を下回る労使間合意は無効とされ、当該労使間の労働契約の内容が就業規則通りとなる。なお、就業規則と異なる内容の労使間合意のうち、就業規則の内容よりも 労働者に不利益でないものは、就業規則に優先する(労契 7 条但書・8 条)。 4.労働憲章・雇用平等 (1) 労働憲章 労働基準法は、戦前みられた封建的な労働慣行を排除するために、各種の規定を設けている。 (2) 雇用平等 憲法 14 条の平等原則の理念を実効あらしめるために、私人間の労働契約についても、労使間の交渉力格差などにかんがみ、雇用平等を実現するための法的規律が設けられている。 例えば、労働者の国籍・信条・社会的身分を理由とした労働条件の差別を 禁止する労働基準法 3 条、女性であることを理由とする賃金の差別を禁止す | A 速修 25~40 頁 具体例は 1 の[図]参照 ①は契約内容補充効とも呼ばれる。 労使間合意(個別的労働契約)で定められている労働条件の不利益変更の可否は、速修 29 頁 1(1)参照 C 速修 41~43 頁 B 速修 44~54 頁 |
る労働基準法 4 条、男女雇用機会均等法などが挙げられる。 セクシャル・ハラスメントに関する問題も、ここで取り上げる。 5.雇用関係の成立 (1) 募集・採用 労働契約は諾成契約であり(民 623 条、労契 6 条)、使用者による募集に対して労働者が応募し、使用者が選考のうえ採用するという形をとることが多い。 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなればならない(労基 15 条 1 項前段)。 (2) 採用内定 大学 4 年生の X は、令和 3 年 5 月にY 社から採用内定の通知を受けた後、同年 8 月に Y 社から採用内定を取り消す旨の通知を受けた。 令和 3 年 5 月に採用内定の通知を受けた時点で X・Y 社間に労働契約が成立しているのであれば、Y 社による採用内定の取消しは(留保解約権の行使による)解雇に当たる。そして、解雇が無効であれば、X・Y 社間の労働契約が存続することになる(X がY 社に対して労働契約上の地位の確認を請求すれば、それが認められる)。 これに対し、令和 3 年 5 月に採用内定の通知を受けた時点では X・Y 社間に労働契約が成立していないのであれば、Y 社による採用内定の取消しは解雇に当たらないし、採用内定の取消しが違法であったとしても X・Y 社間に労働契約が存在しないという法律関係に変化はない。したがって、X がY 社に対して労働契約上の地位の確認を請求してもそれは認められず、労働契約が締結されていた(あるいは、締結される)であるという期待的利益(等)の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求(民 709 条)が認められ得るにとどまる。 (3) 試用期間 入社後に労働者の職務能力・適格性を判断するという試用目的で、労働契約に期間が設けられることがある。試用目的で付された期間は、特段の事情のない限り、契約期間とは区別される試用期間である。 case1:X は、Y 社との間で、「入社後 3 カ月間の勤務状況を見た上で、本採用をするかどうかを判断する」旨の条件が付された労働契約を締結し、期間満了時に「従業員としての適格性を欠く」との理由で本採用を拒否された。 上記でいう「入社後 3 カ月」の期間が有期労働契約における契約期間である場合には、期間満了により X・Y 社間の労働契約が終了するから、本採用拒否は解雇に当たらないし、その適否にかかわらず X・Y 社間の労働契約が終了したという法律関係に影響はない。 これに対し、上記の期間が試用期間である場合には、本採用拒否は(留保解約権の行使による)解雇であると理解されることが多いから、解雇が 無効と判断されれば、X・Y 社間の労働契約が存続することになる。 | B 速修 55~60 頁 A 速修 61~65 頁 B 速修 66~70 頁 雇止め法理を明文化した労xx 19 条の適用可能性は度外視する。 試用期間の性質の捉え方によっては、本採用拒否は解雇に当たらない (速修 66 頁[論点 1])。 |
6.労働契約上の権利義務 (1) 基本的義務 ア.労働者の労働義務 労働者は、「使用者に使用されて」労働に従事する義務を負う(労契 2 条 1 項、6 条)。 労働者の労働義務の内容(「債務の本旨」の内容)は、使用者による適法な指揮命令(労務指揮権の行使)によって形成される。 使用者の指揮命令権(業務命令)は労働契約を根拠とするから、その範囲は労働契約の予定する範囲内に限定される。また、権利濫用法理(労契 3 条 5 項)にも服する。 イ.使用者の賃金支払義務 使用者は、労働契約に基づき、労働者に対して賃金を支払う義務を負う。もっとも、具体的な賃金支払義務が生じるのは、原則として、労働者が 債務の本旨に従って労働義務を現実に履行したときである(民 624 条 1 項)。例外として、労使間合意・民法 536 条 2 項前段が挙げられる。 (2) 付随義務 労働者は、xxxに基づく労働契約上の付随義務として、労働義務と直接には関わらない領域においても使用者の利益侵害を避けるという義務を負う。特に、秘密保持義務・競業避止義務(在職中・退職後)が重要である。 7.人事 人事とは、企業における労働者の組織づけや管理一般をいい、その内容は、募集、採用、教育訓練、福利厚生、人事異動、懲戒処分、解雇その他の退職管理など、きわめて多岐にわたる。 人事の一環として、①昇格・昇進、降格、配転(企業内における勤務先又は職務内容の変更)、②在籍出向(出向元企業との労働契約関係を維持しつつ、出向先企業の雇用管理に服し、その指揮命令に従い就労すること)、③移籍出向(転籍:出向元企業との労働契約関係を終了させ、出向先企業との間で新たなに労働契約関係に入る)、④休職(労働者に就労させることが適切でない場合に、労働契約を存続させつつ労働義務を一時消滅させること)も重要である。 case1:X は、Y 社がxxから係長に昇進させないことに不満を持っている。 ➡仮に昇進させない措置(人事考課権の行使)が違法でも、当然に係長への昇進を求める昇進請求権が認められるわけではない。 case2:X は、Y 社から係長からxxに役職を引き下げられた。 ➡役職の引き下げという意味での「降格」であり、降格が違法であるとして無効になれば、X の役職は係長に戻る。 case3:X は、Y 社の「東京本社」で勤務していたところ、Y 社から「福岡支社」での勤務を命じられた。 ➡勤務地の変更を命じる転勤命令(配転命令の一種)であり、これが無効で あれば X の契約上の勤務地は「東京本社」のままである(したがって、 | B 速修 72~73 頁 改正民法 624 条の 2 では、割合的賃金請求権が新設された。 B 速修 74~79 頁 A 速修 81~107 頁 |
「福岡支社」で就労する義務を負わない)。 case4:X は、Y 社において「営業職」として勤務していたところ、Y 社から「経理職」として勤務するように命じられた。 ➡職務内容の変更を命じる職種変更命令(配転命令の一種)であり、これが無効であれば、X の契約上の職務内容は「営業職」のままである(したがって、「経理職」として就労する義務を負わない)。 case5:X は、Y 社の従業員として「Y 社」で勤務していたところ、Y 社から、Y社との労働契約関係を維持したまま「Z 社」で勤務するように命じられた。 ➡X が Y 社に在籍したまま Z 社に出向するという意味で在籍出向であり、 Y 社による在籍出向命令が無効であれば、X の契約上の勤務先は「Y 社」のままである(したがって、「Z 社」で就労する義務を負わない)。 case6:X は、Y 社の従業員として「Y 社」で勤務していたところ、Y 社は、X との間における労働契約上の使用者たる地位を Z 社に譲渡した上で、X に対して、以後、Z 社の従業員として「Z 社」で勤務するようにと伝えた。 ➡転籍元が転籍先に労働契約上の使用者たる地位を譲渡することによる譲渡型の移籍出向(転籍)であり、転籍の要件について、「労働者の承諾」 (民 625 条 1 項)として転籍時の個別具体的な同意まで必要であるかが問題となる。 case7:X は、Y 社でタクシー運転手として勤務していたところ、業務外で酒に酔って転倒したことにより右足を捻挫した。Y 社は、X に対し、30 日間、休職を命じた。 ➡Y 社がX に対して命じたのは、業務外傷病を理由とする傷病休職であり、休職期間中、X の労働義務が消滅する(したがって、労働をしなくても、労働義務違反とはならない)。 休職期間中、X は労働義務を履行していないから、賃金請求権は発生しない(民 624 条 1 項、ノーワーク・ノーペイ原則)。 X が休職期間満了時に原職(タクシー運転手)に復帰できる状態に至っていない場合、Y 社は、復職事由が認められないとして、X を解雇したり、自然退職扱いとすることがある。この場合、X・Y 社間の労働契約の存続の有無等との関係で、解雇や自然退職扱いの適否が問題となる。 8.労働基準法上の賃金 労基法上の「賃金」には、平均賃金(労基 12 条)や割増賃金(労基 37 条)の算定基礎として用いられたり、通貨払いの原則・直接払いの原則・全額払いの原則・毎月一回以上定期払いの原則という労基法上の保護(労基 24 条 1 項)の対象になるといった意味がある。 労基法上の「賃金」の要件は、①支払主体が「使用者」であること、②「労働の対償」として支払われるものであることである。 ②は緩やかに解されており、具体的労働に対応しない各種手当等であっても、 使用者が労働契約に基づいて支払義務を負うものであれば、②を満たすと解さ | 個別合意・就業規則・労働協約で休職期間中も賃金を支払う旨の定めがあればそれに従う。 速修 105 頁[論点 2] A 速修 108~133 頁 |