(1)M&♙ の場面
株主間契約について
当社は、当社が運営するクラウドファンディングサイト「Unicorn」の募集案件に投資していただく会員のみなさまには、原則として当該案件にかかる「株主間契約」を締結していただくこととしております。以下、この株主間契約の締結が何故必要なのか、また、この契約を締結することにより投資者のみなさまにどのようなことが起こりうるのか等について、わかりやすく説明させていただきます。
1.株主間契約は何故必要なのか
(1)M&♙ の場面
株式投資型クラウドファンディング(以下「ECF」といいます。)により資金調達を行った企業のイグジット手段(株主にとっては投資資金の回収機会になります。)は、IPO(株式の新規公開)だけでなく、M&♙(株式取得、合併、事業売却等)も重要な選択肢のひとつです。
IPO により大きなリターンを得ることができれば良いのですが、スタートアップ企業が IPO のハードルをクリアするのはそれほど容易なことではなく、一定の時間が必要です。
企業経営者は、その時々のビジネス環境に応じた経営判断を行い、企業価値の向上を目指していますが、その中で、大手企業や成⾧企業等から買収の提案を受けることもあるでしょう。経営者として買収の提案を受け入れることが会社にとって最善の方法であると考えた場合、その買収を円滑に実施できる仕組みが必要となります。
(2)次の資金調達の場面
ECF で集めた資金を使って事業を軌道に乗せ、成⾧への足掛かりをつけた後、多くの企業は次のステージを目指すための追加的な資金が必要になってきます。ECF による資金調達金額は、年間の上限が 1 億円未満となっていることから、IPO に至るまでの過程で、より大きな資金が必要な場合は、スタートアップ企業への投資を専門に行うベンチャーキャピタル(以下「VC」といいます。)や大手企業等の運営するコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)等にお願いすることもあるでしょう。
VC 等は、みなさんと同様、投資資金の回収手段として、IPO の他に M&♙ にも大きな関心をもっています。VC 等が安心して投資することができるためには、投資先企業に、株式の全部売却や M&♙ などの機会が生じた場合、株主としての権利が保護され、株式売却などの手続きがスムーズに行える仕組みが必要となります。
(3)株主間契約の意義
この株主間契約は、上述のような場面において有効に機能するものと考えています。すなわち、大手企業や成⾧企業等が企業を M&♙ で買収する場合、通常はその発行済株式の全部を取得することを希望します。しかし、ECF で資金調達をした会社には多くの株主が存在します。このうち一部の株主が買収に反対する場合は、買収する側の希望を満たすことがで
きず、企業経営者は、自らが意図するビジネスチャンスを失うことにもなりかねず、また、株主にとっても投資した資金を回収できる機会を失うことになります。そのため、買収が起こった場合に、一部の株主の反対により手続が滞ることを防ぐ仕組みが必要となります。全部の株式の譲渡が可能であれば、イグジットの手段として、より有利な条件の M&♙ が期待できるでしょう。さらに、このような仕組みを講じることにより、イグジットの選択肢の広い企業ということで、VC 等が ECF 実施後にも投資しやすくなり、投資対象である企業が事業に要する追加資金を必要としたときに適切な資金調達がしやすくなることも期待できます。
これらの事情から、当社では募集の申込みにあたって、投資者のみなさまに別添の「株主間契約」に同意していただくこととしました。これにより大手企業等による M&♙ が発生した場合に、その手続きを円滑に進めることができ、株主にとりましても、ご所有の株式を、より有利な条件で売却できる可能性が高まり、限られたイグジットの機会を最大限に活かすことにも繋がります。すなわち、当社は、この「株主間契約」は、発行会社の経営者だけでなく、ECF を通じて投資していただいた株主のみなさまの利益にもなるものと考えています。
2.株主にとっての留意点
株主間契約の意義は上述のとおりですが、この契約に同意していただくにあたっては、以下の点について留意していただく必要がありますので、必ず目を通すようにしてください。
①この株主間契約に定められる経営者の売却請求権が行使された場合は、株主のみなさまには保有している株式の全部を譲渡していただく必要があります。また、株主のみなさまが必ずしも賛成しない M&♙ によるイグジットが生じることがあり得ます。もっとも、その条件は、経営株主が応じる買収の条件と同等またはそれ以上であることが必要とされており、投資者に不利な形での売却については一定の歯止めがかかっています。
②ECF の実施後に、買収(M&♙)により株式を売却していただく場合、売却価額は、通常、株式の取得価額を上回ることが多いと考えられますが、必ずしも株式の取得価額を上回ることが保証されているものではありません。
③買収(M&♙)により株式を売却していただく場合や企業再編によって分配や配当を受ける場合は、その時点で投資資金を回収することになりますので、IPO によるリターンが得られないことになります。
④この株主間契約を締結したからといって買収(M&♙)による投資資金の回収の可能性が高くなるわけではありません。しかし、この契約があることで、VC 等による次のラウンドの資金調達が円滑に行われ、企業の成⾧が加速され、企業価値が高まることが期待できます。
3.株主間契約の内容
上述の説明で株主間契約のポイントについてはご理解いただけたものと存じますが、以下では、この契約の重要な条項について、やや専門的な内容になりますが、できるだけわかり
やすく説明いたします。なお、ここで、買収(M&♙)とは、契約の第 1 条第(1)号において定義されますが、概ね、50%超の議決権や資産等が第三者に移転する株式譲渡・組織再編・事業譲渡等を意味します。
(1)経営株主の売却請求権(ドラッグアロング・ライト)
経営株主は、取締役会(発行会社が取締役会設置会社でない場合には、取締役の決定)による承認を得ることにより、株主間契約の当事者である株主および発行会社に対し、買収
(M&♙)に応じるべき旨を請求する権利、いわゆるドラッグアロング・ライトを有するものとします。この権利が行使された場合、株主は、買収の実施に必要なあらゆる手続、すなわち株式の譲渡に応じることや組織再編を承認する株主総会において賛成すること等が必要になります。なお、売却請求通知に記載される買収の内容および諸条件は、経営株主が応じる買収の条件と同等またはそれ以上でなければならないものとされています。
(第 2 条第 1 項・第 3 項)
(2)買収(M&♙)(株式譲渡以外の場合を含む。)が行われる場合の分配等
①買収(M&♙)の対価として株主に現金が分配される場合、買収の対価の合計額を残余財産として、みなし清算が行われ、普通株主や優先株主(ECF 実施後に VC 等に優先株式が発行される場合が想定されます。)に、定款の定めに基づいて各株主がそれぞれ受領することができる金額が分配されることになります。(第 3 条第 1 項第(1)号)
②買収(M&♙)の対価として株主に現金以外が分配される場合、契約に従って算定される評価額を残余財産として、みなし清算が行われ、普通株主や優先株主に、定款の定めに基づいて各株主がそれぞれ受領することができる金額が分配されることになります。(第 3条第1項第(2)号)
③上記①または②に従った買収(M&♙)が行われる場合、株主は、株式買取請求権の行使等、分配や配当の実現を妨げる行為を行わないものとします。(第 3 条第 3 項)
(3)株式譲渡・会社分割・事業譲渡等による M&♙ の場合の取り扱い
①株式譲渡による M&♙ の場合、売却請求通知に記載された条件で、全ての株主に売却に応じていただくことになります。株式取得買収による買収株式が全部の株式でない場合は、売却を希望する株主が優先されますが、売却を希望する株主の保有する株式数が買収株式数より多い場合は持株数に応じて按分されることになります。(第 2 条第 2 項)
②買収(M&♙)が会社分割によりなされる場合で、株主に配当が行われる場合も、配当の合計額を残余財産として、みなし清算が行われ、普通株主や優先株主に定款の定めに基づいて各株主がそれぞれ受領することができる金額が配当されることになります。(第 3 条第 2 項)。
③買収(M&♙)が事業譲渡等でなされる場合、経営株主は、発行会社の解散および清算、または、分配可能額を事業譲渡等の対価に相当する額以上とすることを要求することができます。(第 4 条)
(4)株主からの株式の取得
特定の株主が反社会的勢力等であることが判明した場合、株主間契約その他発行会社との 間の契約に違反した場合、株式の保有が上場の支障になると発行会社が判断した場合等は、発行会社および発行会社が指定する第三者が、その特定の株主が保有する株式を取得する ことができることになっています。(第 5 条)
(5)契約締結等の代理権
経営株主が株式の売却請求権にかかる買収を実行するため、その他株主間契約に規定された事項を実行するために必要なあらゆる手続きについて、経営株主に代理権を付与していただきます。手続きを円滑に行うための条項です。(第 12 条)
以 上