静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、日進電機㈱(社長 山下勝央)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2021.9.6
日進電機㈱と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、日進電機㈱(社長 xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 9 月 6 日(月)
2.融資金額 1 億円
3.資金使途 運転資金
4.日進電機㈱の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に電気の活用を通じて社会に貢献する」を経営理念に掲げ、電気設備工事やxxx発電設工事を通じて環境への配慮を優先した企業活動を展開するとともに、家庭の電気設備に関する小さな困りごとを解決する「住まいのおたすけ隊事業」によって、地域の住環境改善に取り組まれています。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
社会面 | ・地域の住環境改善(独居の高齢者ニーズに対応した住まいのおたすけ隊事業の展開) ・従業員の教育体制の充実、女性活躍の推進(ジェンダーレスな登用)、労働環 境の改善(ワークライフバランスの推進) |
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経済面 | ・地域ビジネスへの参画(持続可能な地方ビジネスの創出に取り組む企業に対する出資) |
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環境面 | ・再生可能エネルギーの普及(xxx・蓄電池の活用による再生可能エネルギーの普及・維持)、省エネの促進(LED 照明や空調の導入支援) ・顧客の安全確保(24 時間サポート体制による電気設備トラブルの軽減)、産業廃棄物の適正処理(リサイクル業者への委託率向上など) ・二酸化炭素排出量の削減(自社におけるxxx発電設備、水素自動車の導入) |
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5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実
施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】日進電機㈱の概要
所 在 地 | xxxxxxxxxxxx 0 xx 0 x 00 x | 設 立 | 1966 年(昭和 41 年)4 月 |
資 本 金 | 20 百万円 | 売 上 高 | 2,129 百万円(2020 年 8 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2021 年 9 月 6 日
一般財団法人 静岡経済研究所
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 日進電機株式会社(以下、日進電機) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、日進電機の企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
(企業概要、経営方針と事業活動)
日進電機は、①民間・公共施設の多様な「電気設備工事」、②地域の暮らしを支える「住まいのおたすけ隊」、③将来と万一を見据えた「xxx発電・蓄電池」を三大事業に掲げる電気設備工事事業者である。経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に電気の活 用を通じて社会に貢献する」の精神に基づき、電気設備工事およびxxx発電設備工事を通して、環境への配慮を優先した企業活動を実践し、社員一人ひとりが環境への配慮を優先すべ く従業員の育成に取り組んでいる。
(インパクトの特定)
ポジティブなインパクトが期待できる活動としては、社会面では、住まいのおたすけ隊事業を通した地域の住環境改善への取り組みに加え、教育体制の充実や女性の活躍推進への取り組みが挙げられる。経済面では、出資を通じた地域ビジネスへの参画がみられる。また、環境面では、xxx発電・蓄電池事業を通した再生可能エネルギーの普及およびLED 照明や空調の導入提案による省エネ促進が挙げられる。
一方で、ネガティブなインパクトを低減する活動としては、社会面では、労働事故の減少や残業時間の削減、ワークライフバランスの推進など労働環境の改善への注力が挙げられる。また、事業活動における施工不良件数の減少や電気設備トラブルの軽減、環境被害の低減といった顧客および地域の安全確保に加え、自社におけるxxx発電設備の増設やハイブリッド車等の導入による二酸化炭素排出量の削減、循環型社会の形成を意識した産業廃棄物の適正処理など、環境面での貢献も想定される。
(インパクトレーダーとの関連性)
特定されたインパクトを UNEP FI が掲げるインパクトレーダーに当てはめると、ポジティブ・インパクトについては、住まいのおたすけ隊事業を通した地域の住環境改善への取り組みは「住宅」に、教育体制の充実や女性の活躍推進は「雇用」や「教育」への該当が想定される。出資を通じた地域ビジネスへの参画は「包摂的で健全な経済」に資する。また、xxx発電・蓄電池事業を通した再生可能エネルギーの普及やLED 照明や空調の導入提案による省エネ促進は「エネル
ギー」や「気候変動」への該当が想定される。
一方、労働環境の改善への取り組みは「雇用」の、顧客および地域の安全確保への取り組みは「エネルギー」や「気候変動」のネガティブなインパクトを抑制している。さらに、自社におけるxxx発電設備の増設やハイブリッド車等の導入による二酸化炭素排出量の削減は、「気候変動」のネガティブなインパクトを低減しており、循環型社会の形成を意識した産業廃棄物の適正処理は、「廃棄物」に対するネガティブ・インパクトの抑制となっている。
(SDGs との関連性)
住まいのおたすけ隊事業を通じた地域の住環境改善への取り組みは「ターゲット 11.1」に、教育体制の充実や女性活躍の推進への注力は「ターゲット 4.4」や「ターゲット 8.5」への関連性が認められる。出資による地域ビジネスへの参画は「ターゲット 8.3」や「ターゲット 17.17」に資す る。また、xxx発電・蓄電池事業を通じた再生可能エネルギーの普及および LED 照明や空調の導入提案による省エネの促進は「ターゲット 7.2」や「ターゲット 7.3」、「ターゲット 11.6」や
「ターゲット 13.1」に関するポジティブなインパクトを及ぼすと想定される。
一方、労働環境の改善への取り組みは「ターゲット 8.8」に、顧客および地域の安全確保への取り組みは「ターゲット 7.2」や「ターゲット 7.3」、「ターゲット 11.6」に関するネガティブなインパクトを抑制するものである。また、自社におけるxxx発電設備の増設やハイブリッド車等の導入による二酸化炭素排出量の削減は「ターゲット 11.6」に、循環型社会の形成を意識した産業廃棄物の適正処理は「ターゲット 12.4」や「ターゲット 14.1」に関するネガティブなインパクトを低減す る。
(地域課題との関連性)
日進電機には、住まいのおたすけ隊事業を通じて、少子高齢化社会において静岡県が掲げる
「誰もが暮らしやすい地域共生社会の実現」への貢献が期待される。ライフスタイルの多様化が進み、社会的孤立や排除などの問題が深刻化、地域の個人や世帯が抱える生活課題に対する支援の拡充が求められる中、収益性より地域貢献を優先した地域密着型サービスが果たす役割は大きくなっている。
(KPI の設定とマネジメント体制)
特定したインパクト(社会面、経済面、環境面)ごとに、KPI(指標と目標)を設定する。 推進体制としては、代表取締役社長 xxxx x(以下、xx社長)を最高責任者とした SDGs対策委員会を中心として、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。
(モニタリング)
KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と日進電機の担当者が、少なくとも年に1回の会合の場を設け、共有する。静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 (モニタリング期間) | 2021 年 9 月 6 日~2026 年 9 月 6 日(5 年 0 ヵ月) |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
企業概要
企業名 | 日進電機株式会社 |
所在地 | xxxxxxxxxxxx0xx0x 00 x |
従業員数 | グループ合計 62 人(単体 54 人) (男女別)男子 53 人 女子 9 人 (資格別(重複含む))第一種電気工事士 28 人 第二種電気工事士 12 人 1 級電気工事施工管理技士 16 人 2 級電気工事施工管理技士 4 人 監理技術者(電気工事)10 人消防設備士 2 人 |
資本金 | 20 百万円 |
業種 | 建設業(電気設備工事) |
事業の内容 | ・電気設備工事事業 (金額ベース内訳) 建設業下請け 67.8%企業向け元請け 30.8% 個人向け元請け 1.4%(住まいのおたすけ隊事業) ・xxx発電設備工事事業 (件数ベース内訳) 企業向け 49.7%個人住宅 50.3% |
主要取引先 | (主要販売先) 民間企業・個人、官公庁 (主要仕入先) 静岡電気工業協同組合(静岡市駿河区) ㈱すみや電器(静岡市葵区)ミツワ電機㈱(xxx中央区) ㈱xx(xxxxxx) |
xx | 0000 年 法人設立 1971 年 電気事業法による静岡県知事届出 1974 年 一般建設業許可取得 静岡県知事許可 1981 年 特定建設業許可取得 静岡県知事許可 2005 年 グループ会社として㈱ニューエレキテル設立 2008 年 エコアクション 21 認証取得 2015 年 住まいのおたすけ隊事業開始 2020 年 ㈱ニューエレキテルより㈱サンハーツへ社名変更xxxのおたすけ隊事業開始 |
(2021 年 9 月 6 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および強み
【日進電機グループ】
日進電機は、事務所や工場の大型設備導入から一般住宅の配線工事まで幅広く携わる県内主要の電気設備工事事業者である。近年は、設備の老朽化に伴い既存建物の改修や補修工事が活発化、xxx発電を中心に再生可能エネルギー関連の需要も増大しているため、地域インフラを支える重要な位置付けを担っている。
電力会社や大手電機メーカー、ゼネコンなどとの系列はなく、グループ売上比率は電気設備工事が 9 割、xxx発電設備工事が 1 割である。仕入は、電設資材商社に電設資材のほか工具等を発注している。そのほか、日進電機が加盟する静岡電気工業協同組合の共同受注・共同購買も活用している。なお、xxx発電設備工事については、グループ会社の㈱サンハーツ(以下、サンハーツ)が主として担っている。
【電気設備工事事業】
電気設備工事のうち 8 割は県内大手ゼネコンからの建設業下請け案件やトップセールスなどで獲得した企業向け元請け案件である。主な業務内容としては、配線、配電盤・分電盤・制 御盤、照明、空調、情報関連機器等の設置・修繕に係る電気設備工事を担い、工程は大きく①積算・設計、②施工管理、③工事、➃検査、⑤保守メンテナンスに分けられる。積算とは、設計に伴う見積もりを指す。日進電機は電設資材商社と連携して営業活動を行うことで、施主や元請けとなるゼネコンの要望に柔軟に対応した積算を強みとしている。設計とは、建築図 面に対する電設図面の作成を指し、照明・空調機器やコンセントの位置、配線を詳細に企画する。一般的に、積算と設計は何度も調整を繰り返す必要がある。施工管理とは、各種手続きを含めたスケジューリングや安全面の確認、品質管理など、工程全体のマネージメントを指す。
【住まいのおたすけ隊事業】
電気設備工事のうち残り 2 割を占めるのが住まいのおたすけ隊である。xx社長が、少子高齢化が進む地域社会への貢献のために始めた事業であり、個人の顧客から直接連絡を受け従業員がxx。見積もり、工事、検査、代金収納までをその場で完結させる。受注内容の多くは、「電球を取り替えてほしい」、「コンセントを増やしてほしい」といった住関連の軽微な困りごとである。一般的に、電球 1 個の取り替え等に対応する電気工事店はないが、住まいのおたすけ隊事業は収益性より地域貢献を重視しており、低価格の依頼にも対応するため、高所での作業に不安を感じる高齢者などを中心に着実に受注が増加している。クイックレスポンスやマナーを含めた対応力が強みであり、営業車を清潔に保ったり、客先で洗い立ての靴下を履いたりといったことをルール化して企業イメージの向上にも努めている。
【xxx発電設備工事事業】
xxx発電設備工事については、サンハーツが主として担い、日進電機とともに再生可能エネルギーの普及・維持に取り組んでいる。一般住宅用から産業用メガソーラーまで、「使う身になって考え、そしてつくる」をモットーに、現地調査を繰り返し、適切な発電・売電シミュレーションを提示するだけでなく、災害等による発電リスクを分析したうえで、常に最良の提案を心掛けてい る。シャープ㈱や京セラ㈱、パナソニック㈱といった国内大手電機メーカーよりxx電池モジュー ル等を仕入れ、モジュール、パワーコンディショナー、モニター、電力量計を設置、配線工事、竣工検査の後、丁寧に取り扱いについて説明している。
その後の保守メンテナンスは日進電機グループの強みのひとつであり、2020 年に開始したxxxのおたすけ隊事業では、自社施工・他社施工を問わず、xxx発電の維持管理をサポ ート。セルラインチェッカー(磁界・電界探査)やドローンを利用した赤外線サーモグラフィ点検など、専門ツールを駆使したメンテナンスにより、再生可能エネルギーの普及および維持に貢献している。
また、近年、xxx発電設備の廃棄問題が顕在化し始めている。これは、海外製を中心に含有成分が不明瞭なxxx発電設備について、リサイクル業者が回収できないことが一因とされる。日進電機グループは、明確な成分表示をしている国内大手電機メーカーの製品のみを取
り扱い、リサイクル業者を介して適切な撤去対応を徹底している。
2. 業界・取引先からの要望・ニーズ
【2050 年カーボンニュートラルに向けた取り組み】
建設業界では、住宅・建築物の脱炭素化に向け、改正建築物省エネ法※1 の適切な運用、ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅(LCCM 住宅)※2 やネット・ゼロ・エネルギー住宅
(ZEH)※3 等の普及促進、省エネ性能等に関する評価・表示制度の充実・普及等が推進される中、日進電機はLED 照明の多灯分散配置やxxx発電設備、蓄電池の設置などにより貢献。住宅設備の高効率化、創エネ・蓄エネ設備の導入支援を図っている。
LED 照明は、東日本大震災を契機とした電力需給問題により国民の省エネ意識が高まったことで需要が急増。政府が 2014 年に策定した「エネルギー基本計画」において、高効率照明
(LED 照明、有機 EL 照明など)について 2020 年までにフローで 100%、2030 年までにストックで 100%の普及を目標に掲げたこともあり、日進電機の LED 工事高も右肩上がりに 増加し、コロナ禍前の 55 期(2020/8 決算期)には、LED 工事高 210 百万円と、過去 最高値を記録した。蛍光灯の種類によって省エネ効果は異なるが、日進電機は、蛍光灯を LED 照明に替えた場合、概ね 40~50%の消費電力削減を図ることができると試算している。他方、ストック市場におけるLED 化率は未だ 5 割前後との推計もあり、今後も政府目標の達成に向けた積極的な需要喚起が求められている。日進電機では、こうした背景を認識した営業推進にとどまらず、最大限省エネ効果を発揮させるための取り組みに注力している。たとえば、 LED は周囲に断熱材があると寿命が大幅に短くなってしまうため、LED 照明を天井に埋め込む工事を実施する際は周囲の状況を隈なく確認している。また、LED 照明の省エネ効果ほど認 知はされていないものの、空調を省エネ性の高いものに取り替えた場合の消費電力削減効果も大きいため、LED 照明設置工事の際は空調の置き替えまで提案している。
xxx発電の導入についてもさらなる訴求が必要とされている。2021 年 7 月、経済産業省は、2030 年度における総発電量のうち再生可能エネルギーの比率を 36~38%(うちxxx 15%程度)とする新しいエネルギー基本計画の原案を公表した。2019 年度の再生可能エネルギー比率は 18%程度であり、2050 年カーボンニュートラルに向けた野心的なエネルギー政策と捉えられる。経済産業省が、政策対応のポイントのひとつとしてxxx発電の導入拡大を示す中、日進電機グループは、収入・環境・BCP の各観点から顧客の立場に立った提案お よび施工に取り組んでいる。
一方で、「xxx発電の余剰電力買取制度」が開始された 2009 年(2012 年から固定価格買取制度)から 10 年超が経過、xxx発電がある程度普及したことで、xxx発電設備の保守メンテナンスニーズが急増している。xxx発電設備は、設置後はメンテナンスフリーのイメージが浸透しているが、他のさまざまな機器同様寿命があり、修理やメンテナンスを行わなければ、モジュールの汚れや機器の劣化・不具合によって、発電効率や安全面の低下につながる。日進電機はそうした問題を解決すべく、顧客が地球環境を守る一員としてxxxを長く安心して使用できるよう、サンハーツを活動母体としたxxxのおたすけ隊事業を通じて、自社施工・他社施工問わずxxx発電に関する悩みを解決している。
さらに、蓄電池の分野にも進出。主にxxx発電設備を設置する企業向けに、有事の際に主要なシステムを稼働させたり全社員の通信端末を充電したりするための災害復旧用のニーズに対応して、電力の脱炭素化に向けた再生可能エネルギーの最大限の活用を支えている。
※1 建築物のエネルギー消費性能の向上を図ることを目的に制定
※2 xxx発電などを利用して、住宅建設時から運用時、廃棄時までの二酸化炭素の収支をマイナスにする住宅
※3 省エネ設備や創エネ設備の導入により、年間のエネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅
【労働環境の改善に向けた取り組み】
2020 年 10 月、建設業法改正に伴い、適切な社会保険への加入が許可要件となるなど、建設業界では労働環境の改善に向けた制度改正が進められている。静岡県においても、 2020 年 4 月より、「週休 2 日推進工事」が本格的に実施されている。これにより、静岡県が発注するすべての建築工事は、現場閉所予定日を記載した工程xxを監督員へ提出、現場閉所率に応じて工事成績評定点が加点されている。このように、県を挙げた労働環境の整備も推進される中、建設業下請け案件における、大手ゼネコンからの工事現場の労働環境改善指示も厳格化している。
日進電機では、建設業界の最重要課題である「安全」の確保のために、トップダウンで安全衛生に対する意識向上を啓発し続けている。たとえば、脚立での作業時に足元に工具や廃棄物が散在していたため転落した際に大きな事故になってしまった事例や、汚い車は事故率が高いという調査結果などを全社員で繰り返し共有している。加えて、独自に立ち上げた「社内美化委員会」と「社有車美化委員会」が中心となり、意義のある清掃活動を心掛けるなど、安全衛生を最重要視する企業風土が形成されている。工事現場においては、現場担当者とは別に、安全衛生委員会が定期的に現場を訪問し、安全衛生状況の確認および指導を行っている。さらに、提携産業医との定期的な面談機会を設け、安全衛生の向上へ外部の専門家の意見も取り入れている。そのほか、労働時間の削減および確実な休暇の取得のため念入りにスケジュールを策定。従業員一人ひとりが責任感をもつとともに、互いにフォローしあえるチームワークを磨くことで、労働環境の改善を図っている。
3. 経営方針と事業活動
【経営理念】
日進電機は、経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に電気の活用を通じて社会に貢献する」の精神に基づき、電気設備工事およびxxx発電設備工事を通して、環境への配慮を優先した企業活動を実践し、社員一人ひとりが環境への配慮を優先して行動すべく従業員の育成に取り組んでいる。電気工事を「目に見えないモノづくり」と捉え、見えないだけに信頼の構築を重要視している。顧客との信頼関係の構築は、リピートや派生案件につながるだけでなく、従業員のスキルやモチベーションの向上につながっている。役に立ったという事実が従業員の仕事に対する意欲と誇りを高め、さらなる信頼を生み出すという好循環の下、電気に関する地域社会の課題解決を図っている。
【代表者の想い】
xx社長が代表取締役社長に就任した 2004 年頃は、大手ゼネコンの下請け案件がほとんどであり、利益率が低かっただけでなく、労働時間に対する配慮等が不足していたため事故が多 発するなど、「3K(きつい・危険・汚い)」さながらの過酷な労働環境であった。そのような中、xxxx・xxxxを迎え連続赤字を計上したことで、経営の抜本的変革の必要性を考えるようになった。そのころ、経営塾にて省エネ・創エネといった環境問題や少子高齢化などの社会問題に対応する事業を営むよう助言を受けたことをきっかけとして、まず需要が顕在化し始めていたxxx発電設備工事事業を強化。その後、xxx発電設備工事事業が軌道に乗ったことで、少子高齢化問題に関する地域事業として住まいのおたすけ隊を開始した。以降、三大事業として、①民 間・公共施設の多様な「電気設備工事」、②地域の暮らしを支える「住まいのおたすけ隊」、③ 将来と万一を見据えた「xxx発電・蓄電池」を据えている。また、危険が伴う活線作業を取り扱わないことを標榜するなど、従業員の安全にプライオリティを置いている。
現在は、設立 60 周年に向けたビジョンに「電気をつなぐ、心もつなぐ」を掲げている。コロナ禍において人間関係が希薄化する中、住まいのおたすけ隊事業を中心に、日常に欠かすことのできない電気に対する不安をなくし、「安心して暮らせるまち静岡」の一助になることと、国土交通省が 掲げる建設業の「新 3K(給与・休暇・希望)」の実現などによって、従業員エンゲージメントをさらに高めることを使命と考えている。
【地域への貢献】
<住まいのおたすけ隊事業>
住まいのおたすけ隊は、「照明器具が暗い」、「コンセントが足りない」といった住関連の軽微な 困りごとを解決するために、島根電工グループ(島根xxx市)が始めた事業。コンサルティング会社の講演会で取り上げられた島根電工グループの取り組みに感銘を受けたxx社長が同グループへレクチャーの機会を打診。なかなか受け入れられなかったが、何度も連絡して熱意を伝えたことに加え、フランチャイズ事業として展開されたことで、2015 年に、地域社会への貢献と直需の
拡大を具現化する経営理念に沿った事業としてフランチャイズ加盟店に加わった。住まいのおたすけ隊事業は基本的に一般家庭用の照明器具や空調、スイッチやコンセントに関するxx工事であり、人工に対する売上は見込めない。しかし、現地見積ツール「サットくん」の活用により、瞬時に見積もり、施工、集金までを一度の訪問で可能にすることで、収益性を確保している。また、請求の遅延や漏れによる回収トラブルも解消した。
少子高齢化が進行する現代社会において、そのような家庭の電気に関する相談需要は増加している。実に顧客の約 7 割が 60 歳以上であり、地域の住環境の向上に大きな役割を果たしている。住まいのおたすけ隊は、施主が現場にいるため、技術力だけでなく接客力やマナーなども重要となる。従業員にとっては、施主に直接評価されたり感謝されたりする機会も多いため、モチベーションや人間性の成長につながっている。また、クイックレスポンスやマナーを含めた対応力が評価され、口コミで近隣住宅からの受注につながるほか、民間企業の社長や役員宅への施工で企業向け元請け案件に結び付くケースも出ている。そうした案件は下請け案件とは異なり利益率も高くなるため、副次的に収益面に大きく貢献している。実際、エンドユーザーとのタッチポイントが増強されたことで、顧客数ベースで 38 期(2003/8 決算期)に 12.6%だった直需割合は、55期(2020/8 決算期)に 32.6%まで上昇。その結果、収益力も大幅に向上した。
住まいのおたすけ隊事業は必ず自社の従業員が対応するため、人手の確保も課題となるが、近年はそのような地域貢献や高齢者支援に直結する事業活動に共感して入社する若手社員も増えている。2021 年度の新入社員 5 名は、全員が志望動機に住まいのおたすけ隊事業を通 じて人の役に立つことを掲げている。住まいのおたすけ隊事業は、工場等での電気設備工事に比べると、業界未経験の若者にとって事業内容がイメージしやすいこともあり、人材確保につながっている。なお、現在は、水廻り工事や塗装工事などにもワンストップで対応ができるよう、サンハーツが内装仕上工事業許可や塗装工事業許可などを取得。日進電機グループ全体で、一般住宅リフォームまで幅広く顧客ニーズに応えている。
<地域の環境保全>
地域社会へは本業だけでなく環境保全でも貢献している。日進電機グループは、2009 年より、業務の一環として、毎週水曜日に全社員総出で社内一斉清掃および本社周辺道路における 15 分間の清掃活動を実施している。独自に立ち上げた「社内美化委員会」の担当者 6 名が各清掃場所を管轄することで、活動全体が形骸化することを防ぐとともに、xxにわたって効率の良い清掃活動を実践している。「社内美化委員会」は毎月別途ミーティングを開催し、活動改善に向けた意見交換をしているほか、期末・年末の大掃除等の企画運営を担っている。そのほ か、登山者へのゴミ袋の配布、xxのゴミの回収・処分を活動内容とする「富士山クリーンプロジェクト」に協賛・参画したり、静岡市の姉妹都市フランス・カンヌ市と連携したイベント「シズオカ×カンヌウィーク」におけるゴミ収集を中心としたボランティア活動(電気設備のサポートも実施)に参加したりしている。このように、静岡の環境問題に対して能動的に働きかける企業文化を醸成し、地域交流も踏まえて従業員一人ひとりの環境意識を向上させる機会を確立している。
<地域ビジネスへの参画>
さらに、産官学連携を主導して持続可能な地域ビジネスの創出へ取り組む企業に対して積極的に参画。xx社長が住まいのおたすけ隊を通じて取り組む「地域活性化」と同じ志を抱く地元出身経営者のベンチャー企業に対して出資をすることで支援している。2015 年に出資した㈱ CREA FARM(静岡市葵区)は、地域ぐるみの六次産業化や官民協同による観光資源化などに取り組んでいる。2016 年に出資した㈱CSA travel(静岡市葵区)は、漁港のまち「用 宗」の埋没していた観光資源を再発掘、新たな観光拠点の創出を進めている。2020 年には、
「静岡を日本一の再エネ県に」を標榜するつづくみらいエナジー㈱(静岡市葵区)へ出資、住み続けられるまちづくりを支援している。
【再生可能エネルギーの普及・維持・活用】
環境問題への関心が高まり始めた 2005 年、自然エネルギーの必要性を感じて、xxx発電の導入に寄与すべく、グループ会社として㈱ニューエレキテルを設立。「自然との共生」をビジョンに掲げ、現在までに、企業向け 257 件(うち低圧 210 件、高圧 40 件、メガソーラー7 件)、
個人住宅 260 件のxxx発電設備工事を実施している。地球温暖化や大規模災害により 自然エネルギーへの期待がますます高まる今日において、「xxの恵みを生かして人々の暮らし を、心を豊かにしたい」という思いを強くしたことで、2020 年 12 月に㈱サンハーツへ社名変更。 xxx発電のさらなる普及とともにメンテナンスニーズが増大することを予想して、xxx発電設備のメンテナンスチーム「xxxのおたすけ隊」を立ち上げた。民間企業から個人まで、発電事業者が地球環境を守る一員としてxxxを長く安心して使用できるよう、自社施工・他社施工問わずxxx発電に関する困りごとを解決している。特に、企業にとっては、xxx発電の不調による売電収入の減少は大きな問題となる。そのため、現地でのxx電池モジュールやパワーコンディショナーの点検はもちろんのこと、モジュール清掃や周辺のゴミ掃除のほか、雑草対策や水害対策にも迅速に対応している。
自社においても、環境への配慮を優先した企業活動の一環として、2017 年度の本社社屋 増築工事(2018 年 5 月竣工)に伴い、xxx発電設備を増設。2016 年度に 14,470kWh だったxxx発電量は、2018 年度には 28,113kWh と約 2 倍に増幅した。 xxx発電は天候に左右されるものの、2018 年度から 2020 年度までの 3 年間において、消費量の 37.0%にあたる発電量を創出している。なお、2020 年度は、新型コロナウイルス感染 対策として換気をしながら空調を使用したため動力が上振れ、天候不順が重なったことでxxx発電量が減少した。そのほか、社屋におけるLED 照明の全面導入も実施済みであり、今後もxxx発電設備を増設して、電力自給率の向上を図っていく方針である。
電力 | 2018 年度 | 2019 年度 | 2020 年度 | 平均 | ||
消費量※ | 73,861kWh | 69,891kWh | 71,179kWh | 71,644kWh | ||
xxx発電量 | 28,113kWh | 27,393kWh | 23,940kWh | 26,482kWh | ||
xxx発電量/消費量 | 38.1% | 39.2% | 33.6% | 37.0% | ||
※消費量は蓄電分を含む 再生可能エネルギーに関しては、xxx発電による創エネに加えて、蓄電池による蓄エネにも取り組んでいる。蓄電池は災害対策需要やxxx発電と組み合わせた自家消費需要としてニーズが高まっており、日進電機グループで、現在までに累計 100 件の施工実績がある。また、静 xxは「エネルギーの地産地消事業」に取り組んでおり、市xx中学校 80 カ所に蓄電池を設 置。日進電機グループがうち 43 カ所の設置を担当したほか、全 80 カ所のメンテナンスを担当している。政府としても、2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略として蓄電池産業を育成していく方針であり、日進電機グループは顧客のライフスタイルに合わせた再生可能エネルギーの活用プランの提案を通して、蓄電池の普及に寄与していく。自社においても蓄電池は備えている。xxx発電設備に加え貯水タンク等も設置しており、今後も最低限のライフラインを確保する災害対策設備を増強していくことで地域の防災拠点化を目指している。 【顧客および地域の安全確保】 電気設備工事やxxx発電設備設置工事においては、顧客や地域の安全確保に最大限努めている。そもそも老朽設備における電気設備工事等は、雨漏りによる漏電リスクなどを排除する顧客の安全を守るための事業である。一方、軽微な事象も含めると電気に関する事故が生じ るリスクは常に伴う。そのため、行動指針として「迅速な不点対応」を掲げ、xx社長が就任以 降、全社員で 24 時間のメンテナンスサポート体制を構築、トラブル軽減に奮闘している。また、顧客からの意見はすべて「クレームシート」に記録し、社内で情報共有、対策を検討のうえ、迅速な改善に取り組んでいる。加えて、時代によって顧客の考え方にも変化が生じるため、若手社員からベテラン社員まで全従業員への定期的な社内教育も実施。その結果、施工不良件数は大幅に減少した。 xxx発電設備については、専門家による地盤調査において、土地の不等沈下や軟弱化などのリスクが僅少であり地耐力が認められた地盤においてのみ設置工事を担っている。設置後も、設備の劣化により強風でモジュールが飛散する事故等が生じないよう、xxxのおたすけ隊による充実したメンテナンスを継続。リサイクル事業者への設備撤去まで対応することで、地域における環境被害の発生を防ぎ、持続可能なxxx発電に従事している。また、xxx発電設備設置工事に関しては国家資格がないため、業者によっては杜撰な施工も散見される。xxxのおたすけ隊は他社施工の設備についてもメンテナンスを実施し、多くの発電事業者が安心してxxx 発電を続けられるよう改善提案を行っている。 |
【環境負荷の低減】
事業活動における二酸化炭素排出量を削減するため、社有車はディーゼル車を減らしハイブリッド車を増やしている。2017 年度以降、ハイブリッド車を 4 台導入しており、2021 年度には、 二酸化炭素が排出されない水素自動車を購入している。今後は、ハイブリッド車や水素自動車の比率を高めるとともに、電気自動車を購入、自社駐車場に充電スタンドを設置することを検討している。
2020 年度における産業廃棄物のリサイクル業者への委託率は 91.3%と高く、循環型社会の形成に向けた廃棄物処理の管理が徹底されている。たとえば、廃プラスチックに関しては、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題を周知して、電設資材における梱包材のビニールだけでなく、事務用品におけるプラスチック製品の廃棄時も分別を厳格化している。産業廃棄物のリサイクル業者への委託率(重量ベース)は、蛍光灯・水銀灯の取替工事の影響を大きく受けるが、今後も 2020 年度の水準維持に向けて、再資源化を意識したゴミの分別に取り組んでいく。なお、段ボール、電線・金属類は有価物としてリサイクル業者へ委託している。
産業廃棄物の種類 | 委託先の処理方法 | 重量※ |
廃プラスチック | リサイクル | 24.30t |
スチロール | リサイクル | 0.25t |
水銀含有物 | リサイクル | 85.48t |
乾電池 | リサイクル | 0.03t |
建設混合廃棄物 | 埋め立て | 10.45t |
合計 | 120.50t | |
リサイクル業者への委託率 | 91.3% |
※廃プラスチックは換算係数を適用
【労働環境の改善】
日進電機は、従業員が働きがいをもてるよう、労働環境の改善に力を入れてきた。まず、「モチベーションは笑顔から」と考えるxx社長の発案で朝礼時に「3 割増しの拍手」や「ハイタッチ」を 習慣化したり、独自に「社内美化委員会」「社有車美化委員会」「おたすけ Net100%委員会」
「おたすけ隊活性化委員会」「共通工具・材料・倉庫委員会」の 5 つの委員会を立ち上げ、従業員一人ひとりに裁量と役割、責任感をもたせたりすることなどを通じて、従業員の意識改革を行った。加えて、安全衛生を最優先に考えることをトップダウンで絶えず啓発し、部署ごとの毎月の従業員 1 人あたり残業時間の推移をグラフ化するなど勤怠管理データの見える化・共有にも取り組んだ結果、工事現場における事故はほとんどなくなり、労働時間もコントロールが可能となった。また、ライフラインである電気に関する仕事は休日でも緊急対応を要することが珍しくない。従来、従業員は自身が担当する工事などにおいて、緊急の際は休日でも駆けつけていた。現在は、休業 日でも、出動要請に対応する日直と、電話応対・連絡業務を担当する待機者を事前に取り決
め、全従業員の休日を確保している。やむなく出勤予定日以外に実働する場合は、振替休日の利用を厳命している。さらに、毎週水曜日を「NO 残業デー」としたほか、年間休暇日数を直近 5
年間で 96 日から 112 日へ 16 日増加させるなど、ワークライフバランスを推進している。
【教育体制の充実】
従業員のスキルアップのために、教育体制も充実している。電気設備工事は作業従事者の資格が電気工事士法によって細かく定められており、多様な有資格者を育成する必要がある。そのため、従業員が建設業労働災害防止協会等の各種団体が主催する講習会へ積極的に参加できる企業風土を形成。費用は全額企業負担として、若手社員・中堅社員を問わず、自身のスキルアップのために活用することを促進している。加えて、部長や課長職による社内勉強会を就業時間内に開催。熟練工の知識と現場での実体験を伝承することで、社内におけるノウハウ蓄積にもつなげている。こうした取り組みは、社内コミュニケーションを活発化させ、風通しの良い職場づくりにもつながっている。なお、ノウハウ強化に関しては、高圧電気設備工事など比較的取扱件数 の少ない工事について、マニュアルやチェックリストを詳細に作り込み、実務についてもできるだけ多 くの従業員が経験できるよう割り振り、社員の成長に資するよう配慮している。
参加実績のある講習事例 |
職長・安全衛生責任者教育 |
職長・安全衛生責任者能力向上教育 |
低圧電気取扱業務特別教育 |
足場の組立て等特別教育 |
フルハーネス型安全帯使用作業特別教育 |
高所作業車運転技能講習 |
玉掛け技能講習 |
小型移動式クレーン運転技能講習 |
中型自動車運転免許運転講習 |
監理技術者講習 |
第一種電気工事士受験準備講習 |
第二種電気工事士受験準備講習 |
1 級電気工事施工管理技士受験準備講習 |
2 級電気工事施工管理技士受験準備講習 |
【女性活躍の推進】
人手不足が慢性化する建設業界において、現場での女性用トイレの設置など、女性従事者が働きやすい環境づくりが進められる中、日進電機も女性活躍を推進している。2011年に会社全体で3名だった女性従業員は、現在、営業部3名、工事部3名を含む9名に増員した。先輩女性従事者が少ない業界ゆえに女性従業員のスキルアップには手厚いフォローをしており、まずは資格習得に関して良い雰囲気で取り組めるよう会社xxで支援している。その結果、本年、3名が第二種電気工事士の筆記試験を合格、うち1名が実技試験にも合格した。今後は、同業の中小企業に先駆けて、女性電気工事士にも施工管理などを担当させる方針。既に女性部長1名のほか課長も1名在籍しているが、引き続き管理職へのジェンダーレスな登用などを通じて、女性従業員のエンパワーメントを図っていく。なお、女性従業員に対する女性管理職の定期的な面談の機会を設け、ハード・ソフトの両面において女性が働きやすい職場環境づくりにも努めている。
このように、従業員の誇りや魅力、やりがいの向上を図る取り組みを進め、従業員一人ひとりが最大限に力を発揮できる環境を整えることで、企業にとって中長期的な担い手が確保され、地域
社会の安全・安心や経済を支えることにつながっている。
4. 企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブ・ネガティブなインパクト
【ポジティブなインパクトが期待できる活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面> 地域の住環境改善教育体制の充実 女性活躍の推進 | ①少子高齢化社会において急増している独居の高齢者ニーズ等に対応した住まいのおたすけ隊事業の拡大 ②従業員のスキルアップのための社外講習会の活用推進、社内勉強会の開催 ③女性従業員に対する手厚いフォローやジェンダーレスな登用 |
<経済面> 地域ビジネスへの参画 | ①持続可能な地方創生ビジネスへ取り組む企業に対する出資 |
<環境面> 再生可能エネルギーの普及 省エネの促進 | ①xxx発電設備工事事業やxxxのおたすけ隊事業、蓄電池の活用による再生可能エネルギーの普及・維持 ②LED 照明や空調の導入提案による省エネの促進 |
【ネガティブなインパクトを低減する活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面> 労働環境の改善 | ①従業員の意識改革や安全衛生の啓発、安全衛生委員会の現場確認や勤怠管理データの見える化などによる、労働事故の減少や残業時間の削減、年間休暇日数の増加などによるワークライフバランスの 改善 |
<環境面> 顧客および地域の安全確保 二酸化炭素排出量の削減 産業廃棄物の適正処理 | ①クレームシートの活用による施工不良件数の減少や 24 時間のメンテナンスサポート体制による電気設備トラブルの軽減、地盤調査から設備撤去まで徹底管理されたxxx発電事業による環境被害の低減 ②自社におけるxxx発電設備の増設による電力自給率の向上やハイブリッド車・水素自動車の導入による二酸化炭素排出量の削減 ③循環型社会の形成を意識した産業廃棄物のリサイクル業者への委 託率向上 |
(1)UNEP FI が掲げるインパクトレーダーとの関連性
日進電機の企業活動は、住まいのおたすけ隊事業を通して地域の住環境改善に取り組んでいるという観点から、「住宅」に関するポジティブなインパクトが想定される。教育体制の充実や女 性活躍の推進の観点からは、「教育」や「雇用」に関するポジティブなインパクトが想定される。また、出資を通じた地域ビジネスへの参画は、「包摂的で健全な経済」に関するポジティブなインパクトに該当する。2050 年カーボンニュートラルに向けては、xxx発電・蓄電池事業を通して再生可能エネルギーの普及を支援しているほか、LED や空調の導入提案によって省エネを促進しているという観点から、「エネルギー」や「気候変動」に関するポジティブなインパクトが想定される。
一方で、労働事故の減少や残業時間の削減、ワークライフバランスの推進など、労働環境の 改善への取り組みは、「雇用」に対するネガティブ・インパクトの抑制となっている。また、施工不良件数の減少や 24 時間のメンテナンスサポート体制、xxx発電事業における環境被害の低減といった顧客および地域の安全確保への取り組みは、「エネルギー」や「気候変動」に関するネガティブ・インパクトの抑制となっている。さらに、自社におけるxxx発電設備の増設やハイブリッド車等の導入による二酸化炭素排出量の削減は、「気候変動」のネガティブなインパクトを低減しており、循環型社会の形成を意識した産業廃棄物の適正処理は、「廃棄物」に対するネガティブ・インパクトの抑制となっている。
利用可能性、アクセス性、価格の手頃さ、品質 | 質(物理的・化学的性質)と有効利用 | 環境の制約内で人のニーズを満 たす手段としての、人々・社会のための経済的価値創出 |
水 | 大気 | 包摂的で健全な経済 |
食料 | 水 | 経済の収れん |
住宅 | 土壌 | |
健康と衛生 | 生物多様性と生態系サービス | |
教育 | 資源効率・資源安全保障 | |
雇用 | 気候変動 | |
エネルギー | 廃棄物 | |
移動手段 | ||
情報 | ||
文化・伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
司法 | ||
強固な制度、平和、安定 |
(2)SDGs との関連性
日進電機の企業活動は、住まいのおたすけ隊事業を通じた地域の住環境改善が「ターゲット
11.1」に、教育体制の充実や女性活躍の推進への取り組みが「ターゲット 4.4」や「ターゲット
8.5」に関するポジティブなインパクトと想定される。出資による地域ビジネスへの参画は「ターゲット 8.3」や「ターゲット 17.17」に資する。また、xxx発電・蓄電池事業を通じた再生可能エ ネルギーの普及およびLED 照明や空調の導入提案による省エネの促進は「ターゲット 7.2」や
「ターゲット 7.3」、「ターゲット 11.6」や「ターゲット 13.1」に関するポジティブなインパクトと想定される。
一方、労働事故の減少や残業時間の削減、ワークライフバランスの推進など、労働環境の改 善への取り組みは「ターゲット 8.8」に関するネガティブなインパクトを抑制するものである。また、施工不良件数の減少や 24 時間のメンテナンスサポート体制、xxx発電事業における環境被害の低減といった顧客および地域の安全確保への取り組みは「ターゲット 7.2」や「ターゲット 7.3」、「ターゲット 11.6」に関するネガティブなインパクトを抑制するものである。さらに、自社におけるxxx発電設備の増設やハイブリッド車等の導入による二酸化炭素排出量の削減は「ターゲット 11.6」に、循環型社会の形成を意識した産業廃棄物の適正処理は「ターゲット 12.4」
や「ターゲット 14.1」に関するネガティブなインパクトを低減すると想定される。
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<社会面> 地域の住環境改善、労働環境の改善、教育体制の充実女性の活躍推進 11.1 2030 年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 少子高齢化が進行する現代社会において、「照明器具が暗い」、「コンセントが足りない」といった住関連の困りごとを解決する住まいのおたすけ隊事業は、独居の高齢者等を対象に、地域の住環境改善に大きな役割を果たしている。 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全か つ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 従業員の意識改革や安全衛生の啓発、安全衛生委員会の現場確認や勤怠管理データの見える化などによる労働事故の減少や残業時間の削減、年間休暇日数の増加等によるワークライフバランスの改善など、全従業員の労働環境の改善を進めている。また、若手社員・中堅社員のスキルアップのための社外講習会の活用推進、社内勉強会の開催といった教育体制を充実している。さらに、女性従業員に対する手厚いフォローやジェンダーレスな登用をはじめとした女性の活躍推進に力を入れている。 <経済面>地域ビジネスへの参画 8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。 17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。 産官学連携を主導して持続可能な地域ビジネスの創出へ取り組む企業に対して積極的に出資、支援している。 <環境面>再生可能エネルギーの普及省エネの促進 顧客および地域の安全確保二酸化炭素排出量の削減産業廃棄物の適正処理 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効❹の改善❹を倍増させる。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に 特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響
SDGs の
ゴール
13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 2050 年カーボンニュートラルを見据えたxxx発電設備工事事業の拡大に 加え、メンテナンスニーズに対応したxxxのおたすけ隊や蓄電池の活用まで事業を拡げて、再生可能エネルギーの普及・維持を促進するとともに、防災・BCP 策定も支援している。また、LED 照明や空調の導入提案および多灯分散配置などに よって省エネ促進に貢献している。 事業活動においては、顧客および地域の安全確保にも注力している。電気設備に関しては、クレームシートの活用による施工不良件数の減少や 24 時間のメンテナンスサポート体制によるトラブル軽減に努めている。xxx発電設備については、地盤調査から設置工事、メンテナンス、設備撤去まで徹底管理することで地域における環境被害を防いでいる。 さらに、自社においても、xxx発電設備の増設による電力自給率の向上やハイブリッド車等の導入によって、二酸化炭素排出量を削減している。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 14.1 2025 年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。 廃プラスチックをはじめとした産業廃棄物のリサイクル業者への委託率は高水準であり、循環型社会の形成を意識したゴミの分別、産業廃棄物処理の管理が徹底されている。xxx発電設備についても、明確な成分表示をしている国内大手電機メーカーの製品のみを取り扱い、リサイクル業者への設備撤去まで対応してい る。 |
(3)地域課題との関連性
①地域経済に与える波及効果の測定
日進電機は、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 30 億円に、従業員数を 90 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、こ
の目標を達成することによって、日進電機は、静岡県経済全体に年間 48 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
②地域の独自課題への貢献
【少子高齢化社会に対応する住まいのおたすけ隊】
平成 27 年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)によると、静岡県の高齢化率
(総人口に占める 65 歳以上人口の割合)は 27.8%(静岡市は 28.6%)と、全国平均の 26.6%を上回っている。こうした背景を踏まえて、2021 年 3 月に静岡県が策定した「第9次静岡県長寿社会保健福祉計画」では、「地域で支え合い、健やかに、安心して最後まで暮らせる長寿社会の実現」に向けた第 1 の柱として「誰もが暮らしやすい地域共生社会の実現」を掲げている。静岡県は、ライフスタイルの多様化が進み、社会的孤立や排除などの問題が深刻化する中、地域の個人や世帯が抱える生活課題に対する支援を推進していくことを標榜している。
県を挙げた少子高齢化社会に対応したサービス拡充が推進される中、日進電機は、住まいのおたすけ隊事業を拡大している。高齢者独居世帯等を中心に、足腰に不安があり高所の電球が交換できないといった困りごとは年々増加しているとみられ、地域社会に密着したサポート体制を構築。一般的に、電球 1 個の取り替え等に対応する電気工事店はないが、住まいのおたすけ隊事業は収益性より地域貢献を優先しており、こうした低単価の依頼にも対応するため、地元密着型サービスとして着実に受注が増加してきている。また、住まいのおたすけ隊事業を始めてから、新卒採用への応募も増加、住まいのおたすけ隊事業のコンセプトに共感して入社する若手社員が増えたことで、一段とサービスの質が向上している。
今後は、行政との連携も見据えている。住まいのおたすけ隊事業は一種の生活支援サービスであるが、民間企業が対応する以上は人件費等のコストを削減するには限界がある。また、地域の隅々まで対応することも難しい。そこで、行政と力を合わせて情報共有や活動推進を図ることで、誰もが暮らしやすい地域共生社会づくりに大きな役割を果たすことが期待される。
③日進電機の持続的な成長への貢献度
日進電機が本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組む目的は、自社の地域の住環境改善や再生可能エネルギーの普及への取り組みなどを公表することで、少子高齢化社会への対応や 2050 年カーボンニュートラルの実現といった課題に、真摯に取り組む姿勢をより強固にしたいと
いう気持ちを具現化することにある。社内の業務の棚卸しを経て、SDGs の精神や社会・経済・
環境に関する目標・KPI を設定し、自社の現状や目指すべき方向性を全社員と共有すること で、従業員一人ひとりのいっそうの意識向上を図り、より頑健な経営体制を構築できると考えている。
さらに、取引先や地域など対外的にも、自社の経営理念やビジョン、経営者の想い・こだわり等を周知することで、自社の強みや企業風土の理解を促進し、新規受注や採用などにつながるな
ど、持続的成長の源泉になることを期待している。
5. インパクトを測定する KPI(指標と目標)
特定されたインパクト | KPI(指標と目標) | 関連する SDGs |
<社会面> | ・2030 年までに、住まいのおたすけ隊事業の受注件数を現状の 50 件/月から、100 件/月まで増加させる ・2030 年までに、年間休暇日数を 112 日から、120 日まで増加させる ・2030 年までに、全従業員における第一種電気工事士の資格取得率を 50%超にする ・2030 年までに、女性電気工事士を 5 名以上採用・育成する | |
住宅 | ||
雇用 | ||
教育 | ||
<経済面> 包摂的で健全な経済 | ・持続可能な地方創生に取り組む企業へ参画するほか、官公庁との連携を図る | |
<環境面> | ・2030 年までに、xxxのおたすけ隊事業のメンテナンス契約件数を現状の 40 件から、500 件まで増加させる ・24 時間のメンテナンスサポート体制を維持する ・産業廃棄物のリサイクル業者への委託率 90%超を維持する ・2030 年までに、社用車におけるハイブリッド車・水素自動車・電気自動車の比率を 50%超にする | |
エネルギー | ||
気候変動 | ||
廃棄物 |
6. マネジメント体制
日進電機では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、組織横断的なプロジェクトチームを結成。xx社長が陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動 等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者とした、組織横断的なプロジェクトチームを中心として、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。
xx社長が本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組む最大の目的は、経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に電気の活用を通じて社会に貢献する」の精神に基づ き、電気設備工事およびxxx発電設備工事を通して、環境への配慮を優先した企業活動を実践、社員一人ひとりが環境への配慮を優先して行動することを明確化することにある。地域の住環境改善や再生可能エネルギーの普及への取り組みなどを公表することで、少子高齢化社会への対応や 2050 年カーボンニュートラルの実現といった課題に、真摯に取り組む姿勢をより強固にし、SDGs の精神や社会・経済・環境に関する目標・KPI の実現を通して、持続可能な企業
への変革を図っていく。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxxx |
環境管理責任者 | 総務経理部 xxx |
担当課 | SDGs 対策委員会 |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と日進電機の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つ
ネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する日進電機から供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 調査グループ長 xx xxx研究部 研究員 xx xx
〒420-0853
静岡市葵区追手町 1-13 アゴラ静岡 5 階
TEL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2021 年 9 月 6 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 日進電機株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が日進電機株式会社(「日進電機」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包摂的 で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体 である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的 とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、日進電機の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、日進電機がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
お客さま | ①PIFの申込み | 当行 | ②PIF評価依頼 | 静岡経済研究所 | レビュー依頼 | JCR |
③インパクトの包括分析・特定 | ||||||
⑤目標・KPI等の協議 | ④インパクトの還元 ⑥目標・KPI等の報告 | コメントバック レビュー依頼 | ||||
⑨融資実行 PIF評価書交付 | ⑧PIF評価書作成 | ⑦目標・KPI等の評価 コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100人以下など。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である日進電機から貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲
で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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