SUMMARY OF SUBMISSIONS
SUMMARY OF SUBMISSIONS
運送事件
I. レッド社は、アブ・プロポリス及びxx・xxxxに生じた損害の責任を負う (1段落)。
II. レッド社は、マスター契約に基づき債務を免れることはできない(11段落)。
III. ブルー社は、レッド社の債務不履行によって生じた775万ネゴリラの損失について、損害賠償を受ける権利を有する(26段落)。
情報事件
IV. ブルー社にデータ保護法を遵守する義務はなかった(37段落)。
V. 仮にデータ保護法が適用されるとしても、レッド社は自己に対する損害の発生に自ら寄与したため、レッド社の主張できる損害賠償は減額されるべきである(44段落)。
VI. ブルー社は、System Development Agreement (以下「システム DA」) に基づきシステム開発の義務を履行したが、システムの「Error Free」を保証することには同意していない(48段落)。
VII. ブルー社は間接的な損害を補償する義務を負わないため、レッド社の主張する損害賠償は減額されるべきである(56段落)。
仲裁手続
VIII. 当事者の合意した仲裁手続に矛盾するため、ブルー社は、オンラインでの証人尋問の実施に反対する(64段落)。
IX. ただし、仲裁xがオンラインでの証人尋問を実施する権限を自ら有すると判断する場合、ブルー社は、仲裁xに対し、手続的xxと適正手続の要件を満たすことを求める(70段落)。
運送事件
I レッド社は、xx・xxxxx及びxx・xxxxに生じた損害の責任を負う
A レッド社とブルー社は、「BSN Super-10th Anniversary Sale」という特別なセールのために、マスター 契約とは別の特別な契約(以下「特約」)を締結した。
1. 特約は、レッド社とブルー社の代表者による会議の議事録(別添9)及び2019年
7月16日の両社の覚書(別添10)にから成る。この特約は、「BSN Super-10th Anniversary Sale」のための梱包と運送について当事者間の責任の分担方法を定めるものである。
2. 特約に拘束されるとの両当事者の意思は、議事録(別添9第2条1項及び第3条)及び覚書(別添10)に示されている(「UNIDROIT 国際商事契約原則2016年
版」、以下「ユニドロワ」、第1.2条及び第2.1.2条)。
3. 特約には、商品の価格、商品名、履行の内容が記載されており、契約として十分確定的である。
4. 両当事者は、マスター契約の主な規定をこの特約によって置き換える意思を有していた。
4.1. マスター契約によれば、両当事者はブルー社の負担にて商品の梱包を行う責任を負う(別添4第1.2条1項)。しかし、特約には、レッド社は自社の負担にて梱包を行うことと定められている(別添10第2条)。
4.2. 両当事者は、この特約によりマスター契約を変更することにより、レッド社が梱包について義務を負いかつ危険を負担するとの明確な意思を示していた(ユニド
ロワ第4.2条2項)。レッド社の本社で行われた契約準備段階における当事者間の交渉(ユニドロワ第4.3条 a 項)及び覚書によれば、両当事者は、「BSN Super-10th Anniversary Sale」のために新しい条件を決める意思を有してい
た。さらに、特約締結後の当事者の行為は、特約によって新たに両当事者に割り
当てられた梱包義務に則ったものであった(ユニドロワ第4.3条 b 項)。
5. なお、特約には準拠法条項が含まれていない。しかし、マスター契約が、ユニドロワを特約の準拠法とすることを両当事者が意図していたことを示している(別添4第1
2.1条)。
6. したがって、両当事者は、マスター契約の主要な条項を特約と置き換える意図を有していた。
B レッド社は、特約によって定められた債務の履行を怠った。
7. 債務不履行には、不完全な履行及び遅延した履行が含まれる(ユニドロワ第7.1条1項)。特約によれば、レッド社は、ブルー社の商品の「smooth packaging」(別添1
0第4条)及び「smooth transportation」(別添9第5条)を履行する義務を負う。つまり、レッド社は、ブルー社の商品の梱包と運送を円滑に行う責任を負う。
7.1. レッド社が行った、緩衝材の調達及び梱包の円滑な実施という債務の履行には、瑕疵があった。レッド社は、「航空運送に適した」品質の緩衝材を当該債務の履行期間に間に合うように調達しなかった(31段落)。商品の破損原因の調査によれば、この緩衝材を選択したことがブルー社の商品の破損の原因であった(3
1段落)。
7.2. レッド社による、商品の運送を円滑に行うという債務の履行にも瑕疵があった。
覚書は、商品の運送に「特に注意すること」をレッド社に義務付けている(別添
10第5条)。さらに、 レッド社は、商品の破損のもう一つの原因、すなわ
ち、数年に1度あるかないかといった運送中の晴天乱気流に関する対策を怠った
(31段落)。70年にわたる自らの航空運送の経験に照らして、レッド社は、この乱気流の発生を合理的に予測できたはずである(9段落)。
C ブルー社がレッド社の債務不履行を惹起したのではない。
8. レッド社の債務不履行は、ブルー社の行為または不作為により生じたのではない(ユニドロワ第7.1.2条)。
8.1. レッド社が時機を逸して十分な緩衝材の調達を懈怠することがなければ、レッド社は、ブルー社が追加で購入した緩衝材を必要としなかったはずである。
8.2. レッド社は、経験豊かな航空運送会社であり、かつ、ブルー社が提供した緩衝材が通常の緩衝材よりも低価格であることを知っていたにもかかわらず、品質を確認せずにこの緩衝材を受領した(別添11 (ブルー社)第4条)。緩衝材が「航空運送に適切」であることの確認をレッド社が怠らなければ、ブルーが損害を被ることもなかった。
9. ブルー社は、レッド社の求めに応じて緩衝材を提供したことにより、レッド社の債務の履行に協力した(ユニドロワ 第5.1条3項)。もっとも、ブルー社の協力の有無にかかわらず、レッド社の債務履行の責任が免除されることはない。
9.1. 協力義務を負うということは、ブルー社がレッド社に代わってレッド社の負う債務を履行する義務を負担することを意味しない。すなわち、ブルー社の協力義務は、合理的な範囲でレッド社の梱包作業と緩衝材の調達という債務の履行に協力するにとどまる(ユニドロワ第5.1条3項注釈)。
9.2. ブルー社は、緩衝材を調達したことにより、合理的な範囲で、レッド社の債務履行に対する協力義務を果たした(別添11第4条)。レッド社の最低限の指示に従い、ブルー社は、唯一入手可能であった緩衝材を、わずか1日という短期間で調達した(29段落及び別添11第4条)。そもそも、特約上、緩衝材を調達する債務はレッド社が負うものであった。また、ブルー社が、緩衝材の航空運送へ
の適合性に関するレッド社の専門知識を尊重し、かつ、問い合わせなしにレッド社が緩衝材を受領したことを、レッド社の緩衝材の航空運送への適合性への満足と理解したことは、合理的であった。
10. よって、レッド社の債務不履行は、自らの行為および不作為により生じたものである。
II レッド社は、マスター契約に基づき債務を免れることはできない
A 特約は、マスター契約の免責条項に優先して適用される。
11. マスター契約には免責条項が含まれている。しかし、両当事者は、債務および危険の負担について特約において新たに規定することに合意している。
12. 「Lex specialis derogati xxxx generali」の法理に従い、マスター契約において定められた各種の一般的な義務規定は、特約中の特定の条項に照らして解釈されるべきである。
13. 特約により、商品の梱包を行うという債務は、レッド社に移転した(別添9及び1
0)。
14. 契約条項は、当事者の共通の意思に従い、または、条項に効果を与えるように解釈されなければならない(ユニドロワ第4.1条及び第4.5条)。
15. レッド社がマスター契約中の免責条項を用いて契約上の債務を免除されることになれば、このことは、当事者間の明示的な合意に反することになる。
16. このような方法でにマスター契約中の免責条項を援用することを認めると、レッド社が自らの主要な債務を免れることとなり、結果として、特約が無意味なものとなる
(別添10第4項)。
17. 免責条項の一つに、「inherent defect」、すなわち「小包に固有の瑕疵又は自然な損耗」がある場合にレッド社が商品の航空運送に関する債務不履行の責任を免れるとするものがある(別添10第7.1条1項)。レッド社には不備なく適切に商品を梱包する義務があり、それには、航空運送に適した緩衝材を調達する義務も含まれるため、緩衝材に「小包に固有の瑕疵又は自然な損耗」があったとしてこの免責条項を援用することは認められない。
18. したがって、特約において示された両当事者の意思に効力を与えるためには、マスター契約の免責条項が適用されてはならない。
B マスター契約の免責条項が特約に適用された場合でも、レッド社はブルー社の損害についての責任を負う。
19. レッド社に関係する、マスター契約中の三つの免責条項(別添4第7.1条)を用いた
としても、「BSN Super-10th Anniversary Sale」向けの梱包と運送の債務不履行について、レッド社は責任を免れることはできない。
20. 「Damage …not caused by Red's willfulness or negligence」、すなわち「商品の破損がレッド社の故意または過失によるものではない限り」、レッド社が不履行の責任を負うことがマスター契約に定められている(別添4第7.1条)。
21. 過失とは、合理的かつ客観的な観点から見て認識することができた不注意である
(Vogenauer, 2015: 483)。1
22. レッド社には過失責任があった。なぜならば、レッド社は、長い実績を持つ運送会社であることから、より多くの緩衝材が必要であることに気づくことができたにもかかわらず、十分な量の緩衝材の調達を怠ったばかりか、入手できた緩衝材が通常よりも
1 Xxxxxx Xxxxxxxxx and Xxx Xxxxxxxxxxxxxxxx, Commentary on the UNIDROIT Principles of International Commercial Contracts
(OUP, 2nd ed, 2015)
低価格であったという事実に照らせば、それが航空運送に適さないものであることに気づくこともできた(別添11(ブルー社)第6条)。さらに、この瑕疵ある緩衝材が商品の運送中の破損を引き起こし得ることも知ることができた。
23. 「[A]n inherent defect or natural wear and tear of the parcels」、すなわち「小包に固有の瑕疵又は自然な損耗」の免責条項は、レッド社のケースには当てはまらない
(別添10第7.1条1項)。
23.1. 商品の破損の原因は、航空運送に適さない緩衝材を使用したことである(31段落)。これは、レッド社が十分に適切な緩衝材を調達しなかったことで生じたのであり、緩衝材や商品自体の固有の瑕疵によるものではなかった。
24. 「[A]cts of god...or other disasters beyond control」、すなわち「天災などの、当事者の支配を超えた災害」の免責条項にもレッド社のケースは当てはまらない(別添1
0第7.1条6項)。
24.1. 天災は、不可抗力に含まれる(Vogenauer 869)。不可抗力とは、契約締結時に当事者に予見することを期待することが不合理であるような、当事者の支配を超えた障害である(ユニドロワ第7.1.7条1項)。
24.2. 商品の破損の原因の一つは、「数年に一度あるかないかという晴天乱気流」であった(31段落)。乱気流は自然現象であるが、レッド社の70年の実績を持ってすれば、その発生を合理的に予測し、かつ、自らの事業においては所与のものと想定することができた。
25. したがって、レッド社は第7.1条の免責条項に依拠することはできない。
III ブルー社は、レッド社の債務不履行によって生じた775万ネゴリラの損失について、損害賠償を受ける権利を有する
A ブルー社は、破損した「アブ・プロポリス」と「アブ・ウォッチ」に関して、仕入れ価格、逸失利益及び損害軽減費用の各損害について、775万ネゴリラの賠償を受ける権利を有する。
26. レッド社の債務不履行によってブルー社が被った損害(ユニドロワ第7.4.2条)は、次の通りである。すなわち、売り物にならなかった「アブ・プロポリス」の仕入れ価格160万ネゴリラ、逸失利益440万ネゴリラ並びに破損した「アブ・ウォッチ」の逸失利益150万ネゴリラ及び修理費用の25万ネゴリラである。
27. まず、通常損害として、ブルー社は、販売不能となった「アブ・プロポリス」4 万本分の仕入れ価格、すなわち、160万ネゴリラの損害を被った(30 段落)。
28. さらに、逸失利益として、ブルー社は、4万本の「アブ・プロポリス」が販売不能となったことにより予定利益440万ネゴリラを失い、かつ、破損した「アブ・ウォッチ」5000本の販売が一ヶ月間遅延したことにより予定利益 150 万ネゴリラを失った。
28.1. 逸失利益は、不履行時に査定されるものである(ユニドロワ第7.4.2条注釈及び Vogenauer 984)。
28.2. 「アブ・プロポリス」に生じた損害は、ネゴランド国の倉庫で検品が行われた2
019年9月27日に発生したものと解すべきである(30段落)。そして、2
019年9月27日時点での同プロポリスの予定販売価格は、一本につき150ネゴリラであった。したがって、以下の式が成り立つ。
損害 = (150×4万) = 600万ネゴリラ
28.3. 「アブ・ウォッチ」に生じた損害は、ブルー社が不履行を発見した2019年1
0月4日に発生したものと解すべきである。2019年10月4日から、ブルー社には「アブ・ウォッチ」を購入した顧客からのクレームが寄せられるようにな
った。そして、2019年10月7日に、ブルー社は破損の確認をレッド社に電子メールで通知した(33段落)。その後、2019年10月12日の二度目のメールで、レッド社に破損の程度を確認する連絡をした(33段落)。したがって、2019年10月7日時点での「アブ・ウォッチ」の価額及び逸失利益を考慮すると、以下の式が成り立つ。
アブ・ウォッチの価額 = (500×500) = 250万ネゴリラ損害 = (250万 – (200×5千) = 150万ネゴリラ
29. さらに、ブルー社が損害を軽減すべく合理的に費やした費用として、「アブ・ウォッチ」の修理費用25万ネゴリラが発生した。ブルー社は、破損した「アブ・ウォッ チ」の損害を軽減するために生じた、この想定外の25万ネゴリラの損害についても
賠償を受ける権利を有する(ユニドロワ第7.4.8条)。この修理費用は、ブルー社が同ウォッチの再販売によって損害軽減を行うための合理的な措置であった(ユニドロワ第7.4.8条注釈)。
30. したがって、ブルー社は、破損した商品の損害賠償として合計775万ネゴリラを受け取る権利を有する。上記の各損害額は、この仲裁手続の口頭弁論期日の時点において確定的である(ユニドロワ第7.4.3条)。
B ブルー社に生じた損害は、レッド社にとって合理的に予見可能であった。
31. 特約の締結時において、レッド社は、ブルー社の主張するところの梱包と運送の債務の不履行により生ずる損害の発生を合理的に予見することができた(ユニドロワ第7.
4.4.条)。
31.1. 第一に、レッド社は、「アブ・プロポリス」が汎用品ではなかったことを認識していたため、自社の梱包・運送債務の不履行が同プロポリスの仕入れ価格に損害を与えることを合理的に予見できた(25段落)。レッド社は、同商品を特別注意して運送することをブルー社から指示されており、したがって、壊れやすい製品を運送していることを認識していた。(別添9第2条5項)。
31.2. 第二に、レッド社は、梱包・運送債務の不履行が予定利益に損害を与えることも合理的に予見できた。レッド社は、アブ・プロポリスが、近日中に開催される時間制限セールのためのものであることを認識していた(26段落及び別添10)ので、同商品の販売遅延や販売機会の逸失がブルー社に損害を与えることについて、合理的に予見可能だった。
31.3. 第三に、レッド社は、梱包・運送の債務不履行がブルー社に損害軽減措置を講ぜしめる結果となることをも、合理的に予見可能であった。ブルー社が「再販売のためにアブ・ウォッチ」を修理したことは、合理的に予見可能な損害軽減手段であった。なぜならば、修理をすることは、高額な同商品を再購入することより も、xxxに低廉な解決策だからである。
32. レッド社は、梱包・運送債務の不履行により生じる損害の性質や種類について予見する義務を負うが、損害の程度についてまで予見することは、必ずしも求められていない(ユニドロワ第7.4.4条)。したがって、レッド社は、ブルー社が主張する損害賠償の金額についてまで予見することは求められない。
C レッド社の損害賠償責任は、Air Waybill によって制限または免除されない。
33. レッド社は、ブルー社に Air Waybill を発行した(29段落)。これは、荷送人(または荷受人)と運送人の間で締結された交渉の余地のない契約であり、運送人はこれを商品の外側の梱包に取り付けるため、外部から視認できるようになっている。この Air
Xxxxxxx は、商品の総額を示しているだけでなく、当事者間の危険負担についても定めている。
34. Air Waybill は、事故の発生を防ぐためにあらゆる利用可能な措置を講じたことをレッド社が証明した場合にのみ、荷送人としてのレッド社が負うべき商品の破損により生じた損害賠償責任を免除するものである(別添12第3条)。レッド社は、利用可能な措置を講じなかった。
35. Air Waybill の第5条は、ブルー社に寄与過失がある場合に、レッド社の損害賠償責任を運送品1キログラムあたり19ネゴリラに制限するものである(別添12第5
条)。しかし、本件の商品に生じた破損及び損害に対して、ブルー社に寄与過失があったという事実はない。
36. Air Waybill の第6条は、レッド社の損害賠償責任を1キログラムあたり22ネゴリラに制限するものである。レッド社は、契約の目的及び当事者の契約履行に関する正当な期待を考慮し、免責条項の適用を主張することが著しく不xxな場合、それを主張することができない(ユニドロワ第7.1.6条及び Vogenauer, 861)。
36.1. Air Waybill には運送品に600万ネゴリラの価値があると記載されているにもかかわわらず、Air Waybill の第6条によれば、レッド社の損害賠償責任は6万
8200ネゴリラに制限されてしまう。
36.2. Air Waybill は、特約が結ばれ、そして、商品が梱包された後に、同商品に取り付けられたものである。Air Waybill は、レッド社の債務不履行について、レッド社の責任とブルー社の損害賠償責任を制限するものである。この制限は、特約の目的に照らすと、商業的に不合理であり、かつ、ブルー社の期待とは「実質的に異なる」(ユニドロワ第7.1.6条)ものである。
36.3. この著しい不xxは、ブルー社が被った損害額(775万ネゴリラ)とレッド社が求める制限付き損害賠償額(9万200ネゴリラ)との差異から明らかであ る。
36.4. これは、レッド社の損害賠償責任をブルー社の商品の価額の0.89%に制限
し、商業的に不合理な割合の危険負担を定めるものであり、当事者の意図しないものであった。
情報事件
IV ブルー社にデータ保護法を遵守する義務はなかった
A データ保護法は、Site Development Agreement(以下「サイト DA」)の「準拠
法」ではない。
37. サイト DA に基づき、レッド社は、ウェブサイトの所有者および運営者として、ウェブサイトのデザインと運用に関する重要な決定について責任を負っていた(ユニドロワ第4.4 条)。
37.1. ブルー社は、レッド社から指示された仕様通りにウェブサイトをデザインした
(別添8、ユニドロウ第2.1条)。 ウェブサイトについてはレッド社から最終的な承認を受ける必要があった(別添8及びユニドロウ第2.3条)。
37.2. レッド社は、ウェブサイトの運営者および所有者としてリスクを管理、監視及び
軽減することができた(別添8、ユニドロウ第3.1条)。
37.3. 関連法規への適合性も含むウェブサイトの構造や運用については、レッド社がブルー社に対して書面で明確に情報を提供することが前提とされていた(ユニドロウ第5.1.5条 d 項)。
37.4. 関連法規に適合するウェブサイトを用意する義務をブルー社に課すことは、合意された契約内容の範囲から逸脱しているため、商業的に不合理であり、受け入れられない(Vogenauer 616)。
B データ保護法はレッド社に生じたデータ漏洩に適用されない。したがって、ブルー社は、レッド社が支払う必要のなかった制裁金をレッド社に補償する義務を負わない。
38. サイト DA には明確に次のように記載されている。すなわち、「ブルー社は、この契約に定められたすべての債務を、準拠法に従って履行する義務を負う」 (別添8第8.
3条3項)。
39. ウェブサイトについてはネゴランド国法が適用されるというのが、本件における当事者の共通の意思であった。しかし、データ保護法は、ネゴランド国法に含まれない。
40. このウェブサイト中の取引に関する同意の取得方法とサイト移行の手続は、ネゴランド国法に違反するものではない(37段落及び39段落]。したがって、サイト DA の第8.3条3項及び第8.3条4項の違反はなかった。
41. 「準拠法」とは、ウェブサイトを法的に拘束する法律である。
41.1. サイト DA の締結後、両当事者は、ネゴランド国法が適用されると想定して同契約を履行した(ユニドロウ第4.3条 c 項)。ウェブサイトの利用規約には、このウェブサイトとそれを利用して行われる取引については、ネゴランド国法が適用される旨が記載されている(37段落)。また、ウェブサイトのサーバーはネゴランド国に設置され(23段落)、取引や予約もネゴランド国で行われていた
(23段落)。サイト DA の第2.1条に基づいて提供された書面にはアービトリア国法に準拠して同ウェブサイトを開発することを求める指示は記載されていなかった(40段落)。
41.2. サイト DA の目的は、レッド社に対し、レッド・トラベルの顧客がインターネット上でアクセスできるウェブサイトを提供することであった(別添8前文及びユニドロウ第4.3条 d 項)。
41.3. 両当事者は、サイト DA の第8.3条3項によりウェブサイトの法的コンプライアンスを監視又は保証する義務がブルー社に課せられることを意図していなかった(ユニドロウ第4.1条)。
42. 当事者と同種の合理的な者が同じ状況のもとその契約に与えるであろう意味に従い解釈すると、サイト DA の第8.3条3項が準拠法であるネゴランド国法以外の法律まで想定していると解釈することは、著しく不合理であり(ユニドロワ第4.1条2項)、商業的にも受け入れられない。
42.1. アービトリア国最高裁判所の判決において、データ保護法がレッド・トラベルに適用されないことが明らかにされた(41段落)。したがって、レッド・トラベルのウェブサイトに対して法的拘束力のないデータ保護法を、サイト DA の準拠法と解することは、商業的に合理的ではない。
42.2. そのような拡張解釈は、レッド・トラベルにアクセスするすべての顧客が属する国・地域の法に従う義務をブルー社に負わせるという、不合理な結果をもたら す。
43. ブルー社は、アービトリア国個人情報保護委員会からレッド社に科された制裁金についてレッド社が有責であることを合理的に予見することはできなかったため、この制裁金を補償する責任を負わない(ユニドロウ第7.4.4)。
V 仮にデータ保護法が適用されるとしても、レッド社は自己に対する損害の発生に自ら寄与したため、レッド社の主張できる損害賠償は減額されるべきである
A レッド社が当該損害に寄与した限りで損害賠償は減額されるべきである。
44. 損害がレッド社の作為もしくは不作為に部分的に起因する場合、レッド社が請求できる損害賠償は、同社が当該損害に寄与した限りで減額される(ユニドロウ第7.4.7条)。
45. ブルー社は、レッド社から提供された仕様書に従ってウェブサイトを開発した。 レッド社は、契約当時明確にしていなかった要件を契約締結後にブルー社に要求すること
はできない。ウェブサイトに係る適用法を明確に文面で指定することはレッド社の責任であり、非準拠から生じる損害はすべてレッド社が責任を負う。
B レッド社は損害を軽減するための適切な措置を取ることを怠った為、損害賠償は減額されるべきである。
46. ブルー社は、レッド社の被った損害についてレッド社が合理的な措置を講ずることにより当該損害を軽減し得た限度において、賠償の責任を免れる(ユニドロウ第7.4条
8項)。
47. アービトリア国の最高裁判所がデータ保護法の地理的適用範囲に関して判決を出す前にレッド社が制裁金を支払ったことは、合理的ではなかった。
47.1. 2019年12月15日、アービトリア国の最高裁判所は、2020年1月6日にこの事件について判決を出すと発表した。
47.2. この事実を知りながら、レッド社は2019月12月16日に制裁金を支払った
(40段落)。
47.3. アービトリア国最高裁判所の判決予定日の4日後である2020年1月10日
(別添13及び2段落)が制裁金の支払期限であったため、判決が出されるまで制裁金の支払いを保留していたとしても、レッド社は不利益を被らなかった。
47.4. そのため、レッド社はこの最高裁判所の判決を待って制裁金の支払いの決断をすることが合理的であった。
VI ブルー社は、System Development Agreement (以下「システム DA」) に基づきシステム開発の義務を履行したが、システムが「Error Free」であることを保証することには同意していない
A システム DA は、R-CMS の「Error Free」を保証しないと両当事者が合意していることを明示している。
48. レッド社は、システムの運用者として、コンピューターシステムとソフトウェアを開
発する際に「バグ」が発生する可能性が常にあることを合理的に予見できた。「バグ」とはプログラミング上のエラーであり、後の「修正」が必要である。
49. 契約条項は、当事者と同種の合理的な者が同じ状況の元でその契約にあたえるであろう意味にしたがって解釈されなければならない(ユニドロワ第4.1条2項)。その 際、関連する取引分野においてその条項に一般的に付与されている意味を考慮しなければならない(ユニドロワ第4.3条 e 項; Independent Music Publishers and Labels Association(Impala、International Association)v Commission 2006 ECR
(European Court Reports)II-02289:Case t-464 / 04at177)。
50. R-CMS に関連する「バグ」とは、別添14の電子メールにあるように、システム(つまり顧客検索機能)のユーザビリティに影響を与えるプログラミングエラーを意味している。この「バグ」という文言は、システム DA 上で定義されていない。したがって、両当事者で受け入れられた「バグ」(ユーザビリティに影響をあたえる種類のもの)の意味に照らして、「バグ」は、第6.2条に記載されている「エラー」に該当すると解釈できる。
51. 両当事者は、システム DA において、「Error Free」のシステム運用を保証しないことに明示的に合意している。データ漏洩の原因となったバグもこのエラーと解釈されるため、ブルー社はこのバグが存在しないことを保証する義務を負わない。
51.1. この「Error Free」の解釈は、システム DA 第6条2項に一般的にあたえられる意味に合致する。ブルー社は、アービトリア国の大手オンライン小売業者であり
(段落12)、システムエラーが無いことを保証することは不可能であること を、自らの専門知識に基づき認識している。また、事前の両当事者間の交渉を考慮した上でも、この解釈は正当である(ユニドロワ第4.3条 a 項)。
51.2. 契約締結後の当事者の行為も上記の解釈を裏付ける。ブルー社は、R- CMS の使用に対して撤回不能なライセンス契約をレッド社と締結しているため、レッド社の許可なしにはサービス中止等の対応ができない(別添7第5.1条及び第5.2条)。また、ブルー社はコンピューターシステムの構築のみを請け負ったため、レッド社にその後の R- CMS システムやデータ運用の責任が生じる(別添7第
4条及び第5.2条)。1月18日にレッドからブルーに送信された電子メールの内容から、レッド社がシステム運用に監督責任を負うことは明白である(別添
14)。その後、レッド社からブルー社にハッキング対策に関するさらなる要求がなされたが、これはシステム DA の範囲外である。ブルー社がレッド社に対しシステムの保守サービスを請け負うことまでは、この契約には定められていな い。
52. システム開発後のレッド社とブルー社の関係に関する他の契約は存在しない。したがって、両当事者は、R-CMS の完成でブルー社の義務が終了することを意図していた。
53. システム AD の義務を履行する上でブルー社に過失は認められない。なぜなら、バグの有無に関係なく、R-CMS は Web デベロッパーの業界標準に基づき設計されているからである。
53.1. このバグは、経験豊富なソフトウェア開発者が専門的なツールと知見を用いたとしても、容易に発見できるものではなかった。実際、このバグ発見には、通常とは異なり、3〜4日要した(段落21)。
53.2. ブルー社は、情報漏洩の通知を受けた際、システムの操作を一時停止するようレッド社に対してアドバイスし、このバグに適切に対処した(別添14、2019年2月7日メール参照)。
53.3. レッド社が R– CMS の管理者である。管理者がシステムへのアクセスを常時管理することを、システムの納入の際にレッド社は承認した。
53.4. ブルー社は、バグやサイバー攻撃のリスクに対処するためにシステムを継続してアップデートする義務を負わない。このことは、「システム開発後のレッド社とブルー社の関係」に関する他の契約又は合意が存在しないという事実によって裏付けられる(段落21)。したがって、レッド社は、ブルー社がシステム納入後も継続してサービスを提供することを期待していなかった。
B サイト DA 及びシステム DA 間には一切関連性がなく、サイト DA の保証条項は R- CMS に適用されない
54. 両当事者間で締結されたウェブ DA(別添8)及びシステム DA(別添7)は、個別の
契約である。そのため、両当事者は、両契約を、それぞれ別の目的のために締結された別個のものとすることを意図していた。
54.1. 両契約には「完全合意」条項が含まれていたため(別添7第13条及び別添8第
12条3項)、一方の契約の条項が他方の契約に適用されることはない(ユニドロワ 第2.1.17条)。さらに、「システムの開発に関連する他の契約はない」という事実も存在する(段落21)。
54.2. 各契約は、システム及びウェブサイトそれぞれの開発業務に必要な保証を明記している。両当事者は、個別に契約を締結し、かつ、別個の保証及び義務を明記することにより、システムとウェブサイトという二つの製品を区別する明確な意図を示していた。そのため、サイト DA の保証をシステム DA に適用することは、当事者の義務及び保証の内容から逸脱する。
54.3. したがって、サイト開発契約に基づく保証は、完全合意条項に定められたところに従い、システム AD に適用されない。
55. 仮にサイト DA がシステム DA に適用可能であるとしても、両当事者は、契約に定められたそれぞれの義務を履行した。
55.1. 「関連する状況」(ユニドロワ 第4.3条)を考慮してサイト DA の保証条項を解釈した場合、これらの条項はブルー社に適用されない。サイト DA には次の記
載がある。「ブルー社は、合理的な期間内にユーザビリティに影響を与える瑕疵を修復する義務を負う。それ以外の不具合は、24時間以内に対応する」(別添
8第 8.3条)。保証条項は、R-CMS ではなく、ウェブサイトのユーザビリティに関する範囲での保証を認めている。バグは、R-CMS と同製品のデータセキュリティに影響を与えるのみであった。
55.2. したがって、サイト DA の保証条項は今回のデータ流出を引き起こした事情には適用されない。
VII ブルー社は間接的な損害を補償する義務を負わないため、レッド社の主張する損害賠償は減額されるべきである
A ブルー社は、アービトリア国の個別情報保護委員会がレッド社に科した制裁金からなる損害に責任を負わない。
56. 両当事者は、システム DA において、ブルー社が責任を負う損害の種類を明確に制限
した。システム DA 第6条3項は、ブルー社の契約不履行に伴い発生することが予見される間接的な損害については、これを明確にブルー社の責任の範囲から除外した。また、システム DA 第6条3項はユニドロワからの意図的な逸脱であり、これはユニドロワ第1.1条で認められている。
57. 両当事者は完全合意条項(別添7第13条)に合意していた。したがって、契約がその他の法律又は合意に抵触する場合、契約中の条項が優先的に適用される。
58. レッド社が主張する損害は、第三者によるハッキングに起因する間接的な損害であった。したがって、この損害は、ブルー社がレッド社に対して補償する義務を負う損害の範囲外である(別添7第6条3項)。
59. また、レッド社が被った損害は契約締結時に合理的に予見できるものではなかったため、ブルー社は賠償の責任を負わない(ユニドロワ 第7.4条4項)。
59.1. 個別情報保護委員会によって科された制裁金へのレッド社の対応をブルー社が予見可能であったとすることは、合理的ではない。アービトリア国の一般データ保護法はレッド社に対して域外適用されないため、レッド社が制裁金を支払うことをブルー社は予見できなかった。ブルー社は、レッド社が個別情報保護委員会の決定に異議を申し立てると予想していた。
B ブルー社は、レッド社が支払った見舞金を補償する責任を負わない。
60. システム DA の第6条3項には、「いかなる場合も、ブルー社は間接、特別、結果損害に対して責任を負わない」と明記されている。レッド社によって支払われた見舞金は、レッド社の企業イメージに対する潜在的な損害を軽減するためのものであり、間接的な損害である。それゆえ、ブルー社は、レッド社の被った間接損害である見舞金の支払について補償する義務を負わない。
61. ブルー社は、予見可能な損害についてのみ賠償する責任を負う。今回レッド社が支払った見舞金は、標準的な金額である一人あたり10〜50ネゴリラを著しく超過しており、ブルー社にとって予見できるものではなかった。そのため、レッド社は、見舞金合計500万ネゴリラの負担をブルー社に求めることはできない。
62. また、レッド社自身が損害に寄与した。レッド社は、何者かが不正アクセスを繰り返し試みた形跡を認識していたにもかかわらず、R- CMS を停止することを怠った。レッド社は、自らの不適切な対応及びそれに関連して必要となる企業イメージ維持のための措置について、ブルー社に金銭的な負担を求めることはできない。さらに、少なくとも相場の2倍以上の見舞金をレッド社自ら支払ったことにより、レッド社は自ら自己に生じる損害を増大させたのであるから、その負担をブルー社に求めることはできない
63. 仮に仲裁xが見舞金を補償する責任一部をブルー社に認めたとしても、レッド社自身の対応の不手際により発生した分の損害額を考慮して、ブルー社の支払うべき損害賠償は減額されるべきである。
仲裁手続
VIII 当事者の合意した仲裁手続に矛盾するため、ブルー社は、オンラインでの証人尋問の実施に反対する
64. 仲裁の手続は、当事者の合意によって決定される。同意がない場合、仲裁廷の裁量によって決定される(UNCITRAL Notes on Organising Arbitral Proceedings, 2016,
8段落)。
65. ブルー社は、対面方式で直接的な証人尋問を実施することに契約で同意している。
66. 仲裁xは、適切とされる方法と場所にて仲裁を行うことを自らの裁量で決定する権限を有する(UNCITRAL 国際連合国際商取引法委員会仲裁規則 2010 年版(以下
「UNCITRAL 規則」)第17条1項及び第18条2項)。ただし、その際には、
UNCITRAL 第17条1項の定める条件を考慮しなければならない。
67. この裁量により、当事者の合意なしに仲裁xがオンラインでの証人尋問の実施を決定することも不可能ではない。
68. もっとも、新型コロナウイルス感染症の流行以前からオンライン仲裁は利用可能であったにもかかわらず、両当事者はこのような手続の利用に合意していない。また、両当事者のいずれかがオンライン仲裁手続を利用する可能性について言及したという事実もない。いずれの当事者も、新型コロナウイルス感染症の流行を予見しておらず、オンライン仲裁手続の詳細について考慮したということもなかった。
69. 仲裁は、当事者間の合意を尊重して行われるのが原則である。ブルー社は、オンラインでの証人尋問の実施に同意していない。ゆえに、仲裁xはその事実に注意を払い、両当事者立会いの下に対面で証人尋問を行うという、マスター契約に定められた当事者間の合意内容に留意すべきである。
IX ただし、仲裁xがオンラインでの証人尋問を実施する権限を自ら有すると判断する場合、ブルー社は、仲裁xに対し、手続的xxと適正手続の要件を満たすことを求める
70. 仲裁xは、証人尋問の条件と方法を決定する権限を有する(UNCITRAL 規則第28条
2項)。そして、これらの条件がxxかつ適正な手続であることを両当事者は確認しなければならない(UNCITRAL 規則第17条1項)。xxかつ適正な手続においては、仲裁に関与する全当事者が事前に手続について周知され、かつ、仲裁xの判断前にもう一方の当事者の主張にxxに反論する機会を与えられることが求められる
(Xxxxxxx and Hemmi, 2015: 110)。2
71. 特に、xxかつ適正な手続は、「情報事件」における賠償問題の解決において非常に重要である。
72. xxxとxxxxの証言は、これらの手続における重要な証拠になり得るため、その信頼性と信憑性は検証されなければならない。
73. 証人尋問をオンライン形式で行うことには、xxかつ適正な手続を実施するにあたり、以下のような課題を伴う(Scherer, 2020: 20〜23)。3
73.1. 証人の信憑性(特に非言語的な手がかり)の評価能力に影響を及ぼす。
2 Xxxxxxxx Xxxxxxx and Lotta Hemmi, ‘Procedural Fairness and Efficiency in International Arbitration’ 3 Groningen Journal of International Law 110, 110 (2015)
3 Xxxx Xxxxxxx, “Remote Hearings in International Arbitration: An Analytical Framework” Journal of International Arbitration
2020, 37(4) (forthcoming), 20-23, [73]; Xxxxxxx Xxxx, “The COVID-19 Pandemic, the Courts and Online Hearings: Maintaining Open Justice, Procedural Fairness and Impartiality”, (2021) Federal Law Review (xxxxx://xxxxxx.xxxx.xxx/xxx0/xxxxxx.xxx?xxxxxxxx_xxx0000000)
73.2. 証人が供述中に第三者から接触、指導及び連絡を受けるリスクが発生する。
73.3. 証人が各種文書を制限なく閲覧することを認めることになり、そこから証人は記憶を蘇らせることができるため、証拠能力が損なわれる。
73.4. 証人尋問の機密性が損なわれる。
73.5. サイバーセキュリティ侵害に対する脆弱性が発生することにより、オンライン証人尋問の信頼性と機密性に影響を及ぼす可能性がある。
73.6. 通信の遅れや接続の問題により、質疑応答や証人陳述において混乱、反復、遺漏等を招く恐れがある。それにより、手続の進行及び理解に影響を及ぼす。
74. UNCITRAL 規則には、xxで適正な手続の実施のための条件が定められている[第 28
条1項及び第27条1〜4項]。
75. UNCITRAL 規則には、オンライン証人尋問についての定めは置かれていない。しかし、新型コロナウイルス感染症及びオンライン仲裁に対応するために各国の仲裁機関が発行したガイドラインでは、オンライン仲裁の実施に際し、以下の条件を満たすことを推奨している。4
75.1. 証人の顔と上半身の映像を常時鮮明に写しつつ、証人が配された部屋の妥当な部分を確認できる映像を画面に投影する。
75.2. 証人は何もない机に向って座りながら証言を行い、各セッションの開始時には、証人がいる部屋の中の360度の映像をモニターに写す。
75.3. 証人は「仮想背景」を使ってはならない。
75.4. 証人が証言を行う場所の妥当性を検査・確認するため、証人尋問は担当者の立ち会いのもと行われる。証人は、(試験担当者を除いて)他に立会人がいないことに同意しなければならない。
75.5. 当事者は、可能な限り、安全な Wi-Fi ネットワークを使用し、そして、インターネットや画像音声通信を含む技術的な環境が、当事者、証人及び仲裁廷の間の通信に支障をきたさないものであることに配慮しなければならない。さらに、問題の発生時に遅延を回避できるように、予備の技術的環境を整えておかなければならない。
75.6. 当事者は、証人が Zoom の使用に習熟していることを確認しなければならない。
75.7. オンライン証人尋問では、尋問の完全性、セキュリティ、機密性を担保するため、パスワードで保護し、Zoom のセキュリティを最も高く設定しなければならない。
76. 仲裁廷が証人尋問をオンラインで行う場合、xxxとxxxxの尋問時には上記の7
3項に記載された各条件を満たすことを前提にブルー社は仲裁xの決定に従うものとする。
4 See e.g. Seoul Protocol on Video Conference in International Arbitration (18 March 2020) (xxxx://xxx.xxxxxxxxxxxxxxxxx.xx.xx/xxxx/Xxxxx/xxxx_xxxxxx_xxxx.xx?XXX_XXx000&XX_XXx000&XXXXXXX_XXXX_XXXX
=MENU0025&TOP_MENU_CODE=MENU0024); Chartered Institute of Arbitrators Guidelines on Witness Conferencing in International Arbitration (xxxxx://xxx.xxxxx.xxx/xxxxx/0000/xxxxxxxxx-00-xxxxxxx-xxxxxxxxxxxx-xxxxx-0000xxx.xxx)