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第6章 商工労働部の貸付金
第1 商工労働部の貸付金の概要
第2 沖縄県県単融資制度資金貸付金 第3 沖縄県中小企業設備近代化貸付金
第4 沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金第5 沖縄県中小企業機械類貸与資金貸付金
第6 沖縄県中小企業高度化資金貸付金第7 沖縄県労働者住宅建設資金貸付金
第1 商工労働部の貸付金の概要
商工労働部が貸付及び債権管理を行っている貸付事業は、①沖縄県県単融資制度資金貸付金、
②沖縄県中小設備近代化資金貸付金、③沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金、④沖縄県中小企業機械類貸与資金貸付金、⑤沖縄県中小企業高度化資金貸付金、⑥沖縄県労働者住宅建設資金貸付金及びの6件がある。概要をまとめると次のとおりである。
6件の貸付事業のうち①~⑤はいずれも中小企業者等の振興に寄与することを目的としてお り、うち①沖縄県県単融資制度資金貸付金は、中小企業の事業活動に必要な資金の融資の円滑化を図ることにより、その振興に寄与することを目的としている。
次に、②沖縄県中小企業設備近代化資金貸付金、③沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金及び④沖縄県中小企業機械類貸与資金貸付金の3件は中小企業者等の設備機械類の近代化を図 ることにより、その振興に寄与することを目的としている。②沖縄県中小企業設備近代化資金貸付金は、県が中小企業者に対して直接設備を近代化するための資金を貸し付けるのに対し、③沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金及び④沖縄県中小企業機械類貸与資金貸付金は県が沖 縄県産業振興公社に対して貸付を行い、公社が機械類を購入して、中小企業者等に対して機械類を割賦販売、リース、貸与等の方法で使用させる点が異なっている。また、③沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金は国が主体的に導入し全国で行われている貸付事業であるため、中小企業庁からの通知により貸与の方法、対象者等の要件が細かく規定ないし変更される等制約もあったため、県独自の制度として④沖縄県中小企業機械類貸与資金貸付金を導入したという経緯があ
る。②沖縄県中小企業設備近代化資金貸付金及び③沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金はすでに貸付事業を終了しているため、現在も貸付事業を行っているのは④沖縄県中小企業機械類貸与資金貸付金のみである。
⑤沖縄県中小企業高度化資金貸付金は中業企業者等の連携、事業の共同化、中小企業の集積を図ることにより、中小企業者等の振興に寄与することを目的としている。
最後に、⑥労働者住宅建設資金貸付金は労働者に対して住宅の新築等に必要な資金を貸し付けることにより、労働者の福祉の増進に資することを目的としている。
以上6件の貸付金について、以下検討する。
第2 沖縄県県単融資制度資金貸付金
1 概要
⑴ 一覧表
貸付金名 | 沖縄県県単融資制度資金貸付金 |
担当部署名( 部及び課) | 商工労働部 中小企業支援課 |
貸付開始年度 | 昭和47年度 |
根拠規定( 法律, 条例, 要綱等) | 沖縄県中小企業の振興に関する条例, 沖縄県中小企業振興資金融資制度要綱 |
マニュアル, 手引き等 | 沖縄県融資制度の手引き |
貸付金の目的 | 中小企業の事業活動に必要な資金の融資の円滑化を図って, 県内中小企業の振興に寄与すること( 要綱第1条) |
貸付対象 | 県融資制度取扱金融機関等 |
財源( 県, 国, その他のいずれか) | 県のみ |
貸付の方法 | 県は県融資制度取扱金融機関に貸付を行い, 金融機関が中小企業者等へ融資を行う。 |
前項において金融機関や他の団体等を通じて貸す場合の県の債権管理方法 | 各金融機関等から, 毎月の融資状況や過去の融資残高状況の報告を受けている。2年に1度, 国 ( 沖縄総合事務局財務部, 経済産業部) と合同で, 沖縄県信用保証協会へ検査を実施している。 |
当該貸付が単年度貸付であるか否か | 単年度貸付である。 |
過去の内部監査等の指摘事項の有無及び内容 | 無 |
貸付業務及び債権管理業務に従事する職員数 | 2名 |
広報の有無及び内容 | ホームページ, リーフレット等 |
債権管理業務に関する個別研修の有無 | 年3回, 取扱金融機関等の関係機関との意見交換等を目的に研究会を開催している。 |
貸付の条件 | - | |
利息の有無 | 無 | |
利息の利率( 年) | % | |
遅延損害金規定の有無 | 無 | |
遅延損害金の利率 | % | |
保証人の要否 | 無 | |
物的担保の要否 | 無 | |
担保価値の把握方法 | - | |
償還方法 | 原則, 毎年度4月1日に各取扱金融機関等へ貸付金を預託( 金融機関の融資実績に応じて年度中に追加交付する場合がある) し, 年度中に交付した貸付金全額を, 翌年3月31日に一括して償還を受けている。 | |
償還猶予規定の有無 | 無 | |
償還免除規定の有無 | 無 | |
期限の利益喪失規定の有無 | 無 |
本貸付金の貸付実績及び回収状況等 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | |
予算額( 円) | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 | |
申請件数( 件) | 6 | 6 | 6 | 7 | 9 | |
貸付実績 | 貸付金額( 円) | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 |
貸付件数( 件) | 6 | 6 | 6 | 7 | 9 | |
回収すべき金額( 当年度分) A | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 | |
回収済み金額( 当年度分) B | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 | |
回収すべき金額( 過年度分) C | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収済み金額( 過年度分) D | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収率 ( B+D)/( A+C) | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | |
総貸付残高( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
総貸付件数( 件) | 6 | 6 | 6 | 7 | 9 | |
不納欠損額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
不納欠損件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
⑵ 本貸付金の概要
注) 予算額は最終予算額
注) 申請件数等はのべ数( 平成28年度は金融機関等7機関のうち2機関へ追加貸付を行っている。)
沖縄県県単融資制度資金貸付金(以下「本貸付金」という。)は、沖縄県が本土復帰した昭和 47 年度から貸付を開始し、現在まで貸付を継続して行っている貸付金である。その目的は、中小企業の事業活動に必要な資金の融資の円滑化を図って、県内中小企業の振興に寄与することであり、平成 28 年の総貸付金額 115 億 4236 万 9000 円は商工労働部が所管する貸付金の中で最も多額である。
⑶ 根拠規定
沖縄県県単融資制度資金貸付金は昭和 47 年から存在する貸付金であるが、現在の根拠
規定は、平成 20 年に制定された沖縄県中小企業の振興に関する条例(以下「本条例」と
いう。)及び平成 17 年に制定された沖縄県中小企業振興資金融資制度要綱(以下「本要
綱」という。)である。
⑷ 目的
中小企業の事業活動に必要な資金の融資の円滑化を図って、県内中小企業の振興に寄与することを目的としている(本要綱第1条)。
⑸ 貸付対象
本貸付金は、取扱金融機関が中小企業者、小規模企業者及び協同組合等(以下「中小企業者等」という。)に対して融資を行うための貸付原資の一部を、県が取扱金融機関等(取扱金融機関及び中小企業団体中央会)に対して預託する方法により行っており、県の貸付対象者は取扱金融機関等である。
⑹ 財源
本貸付金については、全て県の資金を財源としている。
⑺ 貸付の方法
県は、県融資制度取扱金融機関等に対して貸付原資の一部を預託し、取扱金融機関がその原資に自己資金を加えて中小企業等に対して融資を行う。
⑻ 債権管理方法
取扱金融機関は、県融資制度に係る毎月の融資状況並びに各年度に融資した融資残高状況をそれぞれ沖縄県中小企業振興資金融資実績報告書、沖縄県中小企業振興資金融資残高状況報告書により、報告しなければならない(本要綱第7条第4項)。かかる報告書は、後述する資金メニューごとに融資金額等が記載されたシンプルなものであるが、取扱金融機関からの償還が単年度貸付であり期限通りに全て償還されていることからすると、十分な内容と思われる。
⑼ 沖縄県融資制度の流れ
沖縄県融資制度(以下「県融資制度」という。)の流れを図にすると次のとおりである。
(「平成 29 年度沖縄県融資制度の手引き」から)なお、取扱金融機関は、県から預託を受けた金額に、次の表に掲げる融資倍率を乗じた
金額に相当する額を超えることを目標として融資を行わなければならない(本要綱第7条)。
また取扱金融機関は、融資の申込みを受けたときは、速やかに審査して融資を行わなければならず、県融資制度による融資については、利用者に歩積、両建の預金をさせてはならない(本要綱第7条)。
⑽ 当該貸付が単年度貸付であるか否か
本貸付金は単年度貸付である。原則毎年4月1日に各取扱金融機関に対して貸付金を預託し、預託金全額を翌年3月 31 日に一括して償還を受けている。
⑾ 過去の内部監査等の指摘事項の有無及びその内容 無
⑿ 貸付業務及び債権管理業務に従事する職員数 2名
⒀ 広報の有無と内容
沖縄県のホームページ内に「県融資制度」を説明する箇所を設け、どのような資金メニューがあり、どのような方にお勧めかをまとめているほか、「県融資制度リーフレット」
「資金選びのためのフローチャート」「利用対象者等について」「資金別保証料率一覧表」
「担保・保証人の徴求について」「関係機関一覧表」等のPDFデータを取得できるようにしてある。
⒁ 債権管理業務に関する個別研修の有無
担当職員が年3回、取扱金融機関等の関係機関との意見交換を目的とした研究会を開催している。
2 本貸付金の内容
⑴ 貸付の条件
取扱金融機関であること。
⑵ 利息の有無及び内容 無
⑶ 遅延損害金規定の有無及び内容 無
⑷ 保証人の要否 無
⑸ 物的担保の要否及び担保価値の把握方法 無
⑹ 償還方法
本貸付金はいわゆる単年度貸付であり、原則的に毎年度4月1日に各取扱金融機関に対して貸付金を預託し、年度中に預託した貸付金全額について、翌年3月 31 日に一括して償還を受けている。なお、取扱金融機関の融資実績に応じて、年度中に追加預託する場合もある。
⑺ 償還猶予規定の有無及び内容 無
⑻ 償還免除規定の有無及び内容 無
⑼ 期限の利益喪失規定の有無及び内容 無
3 取扱金融機関の中小企業に対する融資の条件等
本貸付金は、県が取扱金融機関等に対して貸付原資の一部を預託し、取扱金融機関がその原資に自己資金を加えて中小企業等に対して融資を行っている。ここでは、取扱金融機関から中小企業者等に対する融資について述べる。
⑴ 融資対象
取扱金融機関の融資対象は、本要綱第2条において定義されており、下記の要件に該当する法人及び個人企業である。また原則として,①信用保証協会の保証対象業種に属していること、②県内において1年以上同一事業を営んでいること(創業者支援資金など例外有)、及び③市県民税を完納していること等、が要件である。
(「平成29年度沖縄県融資制度の手引き」から)
⑵ 資金メニューの種類
沖縄県県単融資制度(以下「県融資制度」という。)の種類は、本要綱第3条に定められており、簡単にまとめると次のとおりである。
「平成 29 年度中小企業の皆様へ 沖縄県融資制度のご案内」から
⑶ 融資の条件
融資の条件は、十数種類ある資金メニューごとに異なっており、まとめると次のとおりである。
(「平成 29 年度中小企業の皆様へ 沖縄県融資制度のご案内」から)
※平成 29 年 10 月1日に組織強化育成資金の融資利息改正(1.25%から 1.30%)
⑷ 利息の有無及び内容
詳しくは既出「平成 29 年度沖縄県融資制度一覧」記載のとおりであるが、中小企業セーフティネット資金(SN4号災害)が 1.00%、新事業分野進出資金やベンチャー支援資金が 1.70%、xx零細企業資金、創業者支援資金が 1.90%、経営振興資金が 2.15%、短期運転資金が 2.30%等である。
⑸ 保証人の要否及び内容
資金メニューによって異なり、個人事業の場合は必要に応じて求め、法人の場合代表者を保証人とし、小規模企業対策資金(特別xx貸付)の場合保証人は不要である。なお後述するとおり、いずれも県融資制度に係る融資については、原則として保証協会の保証を要する(本要綱第9条)。
⑹ 物的担保の要否及び内容
物的担保は小規模企業対策資金、xx零細企業資金、創業者支援資金は原則不要だが、それ以外の資金は必要に応じて求める場合もある。
⑺ 期限の利益喪失規定の有無及び内容
取扱金融機関は、この要綱に基づく融資を受けた者が、融資を受けた資金を目的の事業に使用しないこととなったとき、又は融資の申込みに虚偽があったときは、繰上償還させることができる(本要綱第 11 条)。
⑻ 信用保証料填補補助金
県融資制度を用いて融資を受ける場合、原則として沖縄県信用保証協会(以下「信用保証協会」という。)の保証を付けることとなり、その場合融資を受ける者は保証料を支払う必要があるが、県から信用保証協会に対して保証料補助を行っており、中小企業者等が負担する保証料が軽減されている。県からの保証料補助後の保証料は次のとおりである。
(「平成 29 年度沖縄県融資制度の手引き」)
信用保証料填補補助金の平成 24 年度から平成 28 年度の実績は次のとおりである。
⑼ xx補給制度
県融資制度に付随する特徴的な制度として、県融資制度の一部の融資を受けた者に対して県がxx分の補給を行うxx補給制度がある。平成 29 年度現在、雇用創出促進資金、新事業分野進出資金、ベンチャー支援資金及び創業者支援資金が対象とされており、次のとおり、融資利率のうち1%から 1.5%を補助することとしている。なお、融資額のうち 2000 万円を対象限度額(創業者支援資金は 1000 万円)、融資を受けた日から3年を限度としている。
(「平成 29 年度沖縄県融資制度の手引き」から)
xx補給制度の平成 24 年度から平成 28 年度の実績は次のとおりである。
4 損失補償
⑴ 損失補償の概要
これまで述べてきたとおり、本貸付金は、県が取扱金融機関等に対して原資を預託し、取扱金融機関がその原資に自己資金を加えて中小企業者等に対して融資を行うものであ る。その際、取扱金融機関は信用保証協会に保証依頼をするため、中小企業者等の弁済が滞った場合には、信用保証協会が取扱金融機関に対して代位弁済を行う。
(「平成 29 年度沖縄県融資制度の手引き」から)信用保証協会がxxする保証制度が責任共有制度の対象である一般保証の場合は、信用
保証協会が不履行等の金額の 80%について代位弁済を行い、取扱金融機関が 20%を負担する結果となり、責任共有制度の対象外である特別保証の場合は、信用保証協会が全額代位弁済を行う。
ここで「責任共有制度」とは、信用保証協会と金融機関が適切な責任共有を図ることにより、両者が連携して、中小企業等の事業意欲等を継続的に把握し、融資実行及びその後における経営支援や再生支援といった適切な支援を行うことを目的として、平成 19 年 10月から導入された制度である。
責任共有制度の導入以前は、信用保証協会が代位弁済額を全額負担していたが、責任共有制度においては、個別貸付金の 80%を信用保証協会が保証する部分保証方式と、保証時点では 100%保証だが、代位弁済状況等に応じて金融機関が負担金を支払う負担金方式の
2つの方式があり、いずれかを金融機関が選択することとなっている。
県は、信用保証協会から取扱金融機関に対する代位弁済額のうち、株式会社日本政策金融公庫の保険分及び全国信用保証協会連合会(以下「連合会」という。)による補償分を除いた残額について、信用保証協会に対して損失補償を行っている。具体的には次のとおりであり、平成 28 年度損失補償契約締結時点においては、13 資金中8資金が損失補償対象である。
県は、信用保証協会との間で毎年度損失補償契約を締結し、契約に基づいて信用保証協会から請求を受け損失補償を行っている。
損失補償期間は資金メニューによって異なっており、平成 28 年度についてみると、12
年 10 か月間から 20 年 10 か月間まで幅がある。
損失補償の限度額は、下記式により算定されている。
損失補償限度額=取扱金融機関の融資枠1×責任共有制度の割合2×日本政策金融公庫非保険分3×保証協会連合会非保険分4×設定平均事故率5
具体的に、平成 28 年度の損失補償限度額は次のとおりである。
1 取扱金融機関の融資枠は、取扱金融機関に対する貸付金×協調倍率
2 責任共有制度の割合は、80%又は 100%
3 日本政策金融公庫非保険分は、20%又は 30%
4 保証協会連合会非保険分は、創業者支援資金のみ 20%
5 設定平均事故率は、損失補償対象資金における過去最大の事故率(異常値を除く)を融資枠を用いて加重平均した事故率
⑵ 単年度別損失補償額及び回収額
資金メニューごとの各年度別損失補償額及び回収額は次のとおりである。
信用保証協会は、損失補償契約書の規定により、損失補償を受けた後も善良な管理者の注意をもって当該補償に係る債権の管理及び回収に努め、中小企業者に対する求償権を行使して得た回収金があったときは、県に納付及び報告する。また、信用保証協会は、損失補償の対象となった債務の保証について、関係帳簿書類を備え付け、県は必要な場合は信用保証協会に報告を求め、又はその職員をして関係帳簿書類を調査させることができる。
⑶ 信用保証制度における代位弁済率との比較
県融資制度の代位弁済率の高低を評価するに当たり、損失補償の場合における代位弁済率について公表されている適切な資料が見当たらないため、直接単年度代位弁済率の高低を比較するのは困難である。そのため、同じ信用保証制度との比較が有用と考えられる。信用保証制度とは、信用力に乏しい中小企業・小規模事業者が民間金融機関から借入を行う際に、信用保証協会が保証を行うことにより、その信用力を補完し、資金繰りを円滑化するものである。
(平成 27 年 11 月 19 日中小企業庁「信用補完制度の現状と指摘」から)
かかる信用保証制度全体について、公表されている平成 23 年度から平成 28 年度の代位弁済率=代位弁済額÷貸付残高を計算すると次のとおりである。1.67%から 2.50%で平均が 2.11%となっている。
単位: 百万円
年度項目 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平均 |
貸付残高 | 34,446,374 | 32,078,613 | 29,778,513 | 27,701,740 | 25,761,647 | 23,873,792 | 28,940,113 |
代位弁済総額 | 860,797 | 777,853 | 650,974 | 526,570 | 445,256 | 397,896 | 609,891 |
代位弁済率 | 2.50% | 2.42% | 2.19% | 1.90% | 1.73% | 1.67% | 2.11% |
(全国信用保証協会連合会「信用保証実績の推移」から算出)これに対して、同じ平成 23 年度から平成 28 年度の間、県融資制度について同様の方法
で計算した代位弁済率は次のとおりである。
単位: 千円
年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平均 |
平均残高 | 15,278,440 | 12,411,178 | 12,999,984 | 16,035,457 | 19,954,152 | 22,066,967 | 16,457,696 |
年度末代位弁済額 | 1,262,561 | 997,873 | 585,285 | 308,792 | 539,473 | 520,863 | 702,475 |
代位弁済率 | 8.26% | 8.04% | 4.50% | 1.93% | 2.70% | 2.36% | 4.27% |
信用保証制度全体の代位弁済率(平成 23 年度から平成 28 年度)が 1.67%から 2.50%で平均が 2.11%であるのに対して、県融資制度の代位弁済率(平成 23 年度から平成 28 年度)は 1.93%から 8.26%で平均が 4.27%であり、信用保証制度全体の代位弁済率より高い。
信用保証制度全体の代位弁済率と比して県融資制度の代位弁済率が高い理由としては、県内の企業の規模が全国に比して小さく、経済状況が悪化した場合の影響を受けやすいことが考えられる。この点、総務省・経済産業省が公表している平成 24 年度経済センサス-
活動調査(確報)結果を見ると、沖縄県は事業所数では 6 万 7284 で全国 26 位(全国に占
める割合 1.2%)であるが、売上(収入)金額では卸売業、小売業では 2 兆 1830 億 8300 万円で全国 36 位(全国に占める割合 0.4%)、製造業では 6277 億 5500 万円で全国 46 位(全国に占める割合 0.2%)と事業所数に比して売上(収入)金額が少なく、企業の規模が小さいことがわかる。また、平成 23 年度及び平成 24 年度は8%を超えているが、平成 26 年度 1.93%、平成 27 年度 2.70%、平成 28 年度 2.36%と、ここ3年度については信用保証制度全体の平均代位弁済率 2.11%と同程度で推移している。
このように、県内の企業の規模が全国に比して小さく、経済状況が悪化した場合の影響を受けやすいこと及びここ3年度は信用保証制度全体の代位弁済率と同程度であること から、県融資制度の代位弁済率は許容すべき範囲内と考える。
⑷ 年度別損失補償支払額及び回収額
県融資制度について損失補償支払額及び回収額は次のとおりである。県融資制度については、各年度中に回収した金額は次のとおりであるものの、各年度の損失補償支払額に対する回収額は明らかでないため、回収率の計算はできない。
年度 | 損失補償支払額 | 回収額( 平成28年度まで) |
~ 15 | 937,166,900 | 234,489,166 |
16 | 137,471,344 | 29,745,545 |
17 | 103,898,896 | 33,400,686 |
18 | 108,077,495 | 32,908,806 |
19 | 104,983,525 | 44,180,415 |
20 | 117,532,051 | 38,501,710 |
21 | 134,306,128 | 37,831,417 |
22 | 65,286,763 | 30,045,881 |
23 | 127,184,260 | 29,221,428 |
24 | 61,751,357 | 25,145,281 |
25 | 51,530,435 | 18,971,804 |
26 | 29,893,139 | 21,454,994 |
27 | 33,925,551 | 18,286,261 |
28 | 46,863,079 | 11,657,489 |
合計 | 2,059,870,923 | 605,840,883 |
5 県融資制度の融資実績及び回収状況等
⑴ 昭和 47 年度から平成 28 年度の融資額の推移
県融資制度を開始した昭和 47 年度の融資額は約3億 9500 万円、翌昭和 48 年度からは 2
0 億円台となり、その後多少の増減はあるものの融資額は増加傾向にあり、平成5年度に
初めて 100 億円台となっている。直近 10 年度の融資額を見ると、かなり年度によってば
らつきがあり、最低額は平成 23 年度の約 28 億円、最高額は平成 27 年度の約 115 億円となっている。
⑵ 昭和 47 年度から平成 28 年度の融資件数
県融資制度を開始した昭和 47 年度の融資件数は 239 件、翌昭和 48 年度には 805 件とな
り、昭和 51 年度に初めて 1000 件を超え 1,601 件となっている。直近 10 年度の融資件数
を見ると、かなり年度によってばらつきがあり、最低件数は平成 24 年度の 469 件、最高
件数は平成 20 年度の 1200 件となっている。
⑶ 平成8年度から平成 28 年度の執行率
資料から数字が確認できる平成8年度から平成 28 年度の執行率は次のとおりである。
この間、平成 13 年度が約 230 億円と突出しているほかは、例年融資枠は約 130 億円から 1
90 億円とそれほど大きな変動はないため、融資金額及び融資件数の変動は経済状況の違いによるものと思われる。
⑷ 融資実績変動の要因
平成 19 年度から平成 28 年度における融資金額と件数及び考えられる変動要因が次のと
おりである。平成 19 年のサブプライム住宅ローン危機に端を発し、平成 20 年 9 月 15 日にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことから連鎖的な世界的金融危機が発生したいわゆるリーマン・ショックの影響で、平成 20 年度の融資金額及び件数が増大していることが推測できる。
また、中小企業や住宅ローン等の金銭債務の支払いについて、返済困窮者が希望した場合一定期間猶予すること等を規定した中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための 臨時措置に関する法律、いわゆる中小企業金融円滑化法が平成 21 年 12 月4日に施行され、
平成 25 年3月 30 日に期限を迎えたことを受け、平成 22 年度から平成 24 年度の融資金額
及び件数が低調だったところ、平成 25 年度には融資金額が前年度の2倍以上となっていることが推測できる。
さらに、中小企業金融円滑化法が平成 25 年3月 30 日に期限を迎えることを受け、新た
に平成 25 年度に資金繰り円滑化借換資金を創設したこと、平成 27 年度から短期運転資金
の限度額を拡大したこと、長期資金金利を引き下げたこと等から、平成 25 年度から平成 2
8 年度にかけて融資金額が高い水準となっていることが推測できる。
⑸ 平成 24 年度から平成 28 年度の貸付実績及び回収状況等一覧表
本貸付金の貸付実績及び回収状況等 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | |
予算額( 円) | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 | |
申請件数( 件) | 6 | 6 | 6 | 7 | 9 | |
貸付実績 | 貸付金額( 円) | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 |
貸付件数( 件) | 6 | 6 | 6 | 7 | 9 | |
回収すべき金額( 当年度分) A | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 | |
回収済み金額( 当年度分) B | 10,289,366,000 | 10,878,809,000 | 10,281,669,000 | 10,786,615,000 | 11,542,369,000 | |
回収すべき金額( 過年度分) C | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収済み金額( 過年度分) D | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収率 ( B+D)/( A+C) | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | |
総貸付残高( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
総貸付件数( 件) | 6 | 6 | 6 | 7 | 9 | |
不納欠損額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
不納欠損件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
注) 予算額は最終予算額
注) 申請件数等はのべ数( 平成28年度は金融機関等7機関のうち2機関へ追加貸付を行っている。)
⑹ 予算額
直近5年度の予算額は、おおむね 100 億円から 110 億円程度で横ばいである。既述のとおり融資枠の執行率は、26.22%から 73.72%である。
⑺ 貸付実績
毎年度4月1日に、新年度分(新年度内の県単融資貸付原資)及び過年度分(前年度までに融資実行された貸付金に係る県負担額)を取扱金融機関に対して預託するため、予算額と貸付金額は一致する。また貸付件数は、取扱金融機関の数と一致する。
なお、平成 28 年度は取扱金融機関等7機関のうち、2機関へ追加他預託を行っている。
⑻ 回収実績
各年度の期末に、取扱金融機関等に対して預託した預託金全額の償還を受けるため、当年度分の回収率は 100%となる。また全て期限通りに償還されているため過年度分の回収すべき債権は発生しない。
⑼ 不納欠損額及び不納欠損件数 無
⑽ 債権放棄額及び債権放棄件数 無
⑾ 免除額及び免除件数 無
5 指摘、意見及びコメント
⑴ 指摘 無
⑵ 意見 無
⑶ コメント
ア 県融資制度の融資実績について
県融資制度を開始した昭和 47 年度から平成 28 年度の融資額、融資件数及び執行率を見ると、世界的又は全国的な経済状況等に連動して上下しており、中小企業の事業活動
に必要な資金の融資の円滑化を図って、県内中小企業の振興に寄与するという目的に一定の寄与をしていると考えらえる。
なお、原則毎年4月1日に各取扱金融機関等に対して貸付金を預託し、貸付金全額を翌年3月 31 日に一括して償還を受ける単年度貸付の性質上、数字上は全て期限通りに償還されるため、融資に際しての審査が甘くなりがちで融資額が年々増大していくのではないかとの懸念があったが、融資実績の変動は経済状況の変化によるところが大きく、そのような懸念は当たらないと言える。
イ 本貸付金の回収について
本貸付金は、県が取扱金融機関等に預託した預託金については全て償還期限通りに償還されている。ただ実際には、取扱金融機関は中小企業等から全て回収できているわけではなく、回収できなかった金額の一部については、県が損失補償を行っているため、代位弁済率や回収率も含めて評価すべきと考える。
この点、信用保証制度全体の代位弁済率(平成 23 年度から平成 28 年度)が 1.67%から 2.50%で平均が 2.11%であるのに対して、県融資制度の代位弁済率(平成 23 年度から平成 28 年度)は 1.93%から 8.26%で平均が 4.27%であり、信用保証制度全体の代位弁済率より高い。しかし、県内の企業の規模が全国に比して小さく、経済状況が悪化した場合の影響を受けやすいことから、県融資制度の代位弁済率が信用保証制度全体の代位弁済率と比して高いが、許容すべき範囲内と考える。
以上
第3 沖縄県中小企業設備近代化資金貸付金
1 概要
⑴ 一覧表
貸付金名 | 沖縄県中小企業設備近代化資金貸付金 | |||||
担当部署名( 部及び課) | 商工労働部 中小企業支援課 | |||||
貸付開始年度 | 昭和47年度( 平成15年度から事業休止, 平成26年度事業終了) | |||||
根拠規定( 法律, 条例, 要綱等) | 中小企業近代化資金等助成法( 昭和31年法律第115号) | |||||
マニュアル, 手引き等 | 沖縄県中小企業設備近代化資金貸付規則( 昭和47年規則第68号) | |||||
貸付金の目的 | 中小企業者が事業で使用する設備の近代化に必要な資金を貸付けることにより,中小企業の近代化の促進を図る | |||||
貸付対象 | 県内に事業場を有する中小企業者 | |||||
財源( 県, 国, その他のいずれか) | 県の資金と国の補助金( 負担割合 1:1) | |||||
貸付の方法 ( 県が直接貸すのか, 金融機関や他の団体等を通じて貸すのか) | 県が中小企業者に直接貸し付ける | |||||
金融機関や他の団体等を通じて貸す場合の県の債権管理方法 | ||||||
当該貸付が単年度貸付であるか否か | 否 | |||||
過去の内部監査等の指摘事項の有無及び内容 | 有 | |||||
貸付業務及び債権管理業務に従事する職員数 | 1名 | |||||
広報の有無及び内容 | 平成26年度に貸付事業終了のため, なし。 | |||||
債権管理業務に関する個別研修の有無 | 無 | |||||
貸付の条件 | ①県内に事業場を有する中小企業者が県内に設備を設置する場合であり, ②県が 毎年度定める事業計画に適合し, かつ, ③中小企業の近代化に著しく寄与すると認められるとき | |||||
利息の有無 | 無 | |||||
利息の利率( 年) | - | |||||
遅延損害金規定の有無 | 有 | |||||
遅延損害金の利率 | 10.75% | |||||
保証人の要否 | 要 | |||||
物的担保の要否 | 要 | |||||
担保価値の把握方法 | 貸付対象設備に火災保険による質権設定を行う | |||||
償還方法( ex1年据置半年賦償還) | 1年据置半年賦償還( 5年以内) ※ 法改正等で異なる条件有 | |||||
償還猶予規定の有無 | 有( 貸付規則第21条) | |||||
償還免除規定の有無 | 有( 貸付規則第20条) | |||||
期限の利益喪失規定の有無 | 有( 貸付規則第14条) | |||||
貸付金の貸付実績況及び回収状況等 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | |
予算額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
申請件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
貸付実績 | 貸付金額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
貸付件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収すべき金額( 当年度分) A | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収済み金額( 当年度分) B | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収すべき金額( 過年度分) C | 111,693,372 | 75,733,372 | 61,689,322 | 58,989,322 | 57,839,268 | |
回収済み金額( 過年度分) D | 2,963,000 | 2,135,050 | 2,700,000 | 1,150,054 | 260,000 | |
回収率 ( B+D)/( A+C) | 2.65 | 2.82 | 4.38 | 1.95 | 0.45 | |
総貸付残高( 円) | 75,733,372 | 61,689,322 | 58,989,322 | 57,839,268 | 52,579,268 | |
総貸付件数( 件) | 14件 | 11件 | 11件 | 10件 | 9件 | |
不納欠損額( 円) | 32,997,000 | 11,909,000 | 0 | 0 | 0 | |
不納欠損件数( 件) | 5件( 33xx) | 3件(15xx) | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 5,000,000 | |
債権放棄( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 1件 | |
免除額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
⑵ 本貸付金の概要
中小企業設備近代化資金貸付金(以下「本貸付金」という。)は、中小企業者に対して、その近代化に寄与する設備を導入するための資金を貸し付けることにより、中小企業の近代化の促進を図ることを目的としている。
全国一律の制度である設備近代化資金として、本土復帰の昭和47 年度から開始した。平成15年度に貸付事業が休止し、平成26 年度に制度が廃止されたため、現在は債権の管理回収業務のみ行っている。平成28 年度末の総貸付残高は5257 万9268 円(9件)である。
⑶ 根拠規定
本貸付金の根拠法は、昭和31 年に制定された中小企業近代化資金等助成法(以下「助成法」という。)である。平成11 年に小規模企業者等設備導入資金助成法に改題され、平成25 年6月 21 日に廃止されている(平成27 年3月31 日施行)。
これを受けて、昭和47 年に沖縄県中小企業設備近代化資金貸付規則(以下「本規則」という。)を制定し、貸付を行っていた。
⑷ 目的
本規則第1条において、中小企業者にその設備の近代化に必要な資金を貸付けることにより中小企業の近代化の促進を図ることを目的と定めている。
⑸ 貸付対象
貸付対象は、本規則第2条において、県内に事業場を有する「中小企業者」としており、「中小企業者」については、助成法第2条1項に定義するとしている。
助成法第2条第1項 この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 資本の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業,建設業,運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十
人以下の会社及び個人であって、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの
⑹ 財源
本貸付金の財源については、県の資金と国の補助金の割合が1:1とされている。
⑺ 貸付の方法
県が中小企業者に対して直接貸し付ける。
⑻ 貸付業務の流れ
申込みから貸付、償還までの概略は次のとおりである。
①中小企業者が商工会議所又は商工会に対して申込書類を提出する。
②商工会議所又は商工会が公社に対して申込書類を提出し、公社が書類審査を行う。
③公社が県に対して一件書類を提出する。
④県が書類調査及び経営診断を行う。
なお、経営診断は、中小企業診断士の資格を持った担当者が行っている。
⑤貸付審査会が貸付の適否を決定する。
⑥県が、貸付が内定した中小企業者に対して内定説明会を行い、中小企業者から設備設置調書等の提出を受ける。
⑦公社が設備設置確認検査を行い、県に対して設置確認調書を提出する。
⑧県が貸付を正式に決定し、中小企業者から貸付金交付請求書、委任状及び委任契約書の提出を受ける。
⑨県と中小企業者との間でxx証書を作成し、貸付金を交付する。
⑩中小企業者は貸付金交付1ヶ月以内に設置完了届を県に提出し、県は完了検査を行う。
⑪中小企業者は公社に償還金の積立を行い,公社が県に対して約定どおり償還を行う。
なお、中小企業者の公社に対する償還金の積立は、償還が半年に一回とされているところ資金繰りに窮する中小企業者がいるため、同意した中小企業者についてのみ事実上公社に毎月償還金を積み立てた上で償還している。
⑼ 当該貸付が単年度貸付であるか否か 否
⑽ 過去の内部監査等の指摘事項の有無及びその内容 有ア 違約金のxx
平成11 年度の包括外部監査において、次のとおり意見が付されている。
貸付金を徴収しない場合、償還期日の翌日から当該金額を支払った日までの日数に応じ、年1
0.75%の割合で計算した額を違約金として徴収することがある。xxされた違約金の未納残高は2
8 件20,182 千円であるが、内8件10,784 千円は元金完済され、違約金のみが残っている。また、違約金の回収は1件362 千円のみである。もともと元金の支払が滞っている状態で、その一部の支払がなされた金額について高い違約金をxxしても意味があるとは思えず、債務者の不誠実な動機が明確な場合を除いて、違約金のxxは控える方がよいと思われる。なお、平成4年度以降は違約金のxxは控えている。なお、xxの点から、過去にxxした分も訂正ということで不納欠損処理すべきであろうが、制度上不可能であれば、徴収停止の措置によることも検討する必要があると思われる。
平成22 年度の包括外部監査において、過去の包括外部監査の措置状況を確認しており、上記点について県は違約金を含め、債権はすべてxx済みとの措置を行っている。これについて、平成22 年度包括外部監査において次のとおり評価しており、妥当である。
違約金を含め、債権はすべてxx済みというのは、平成11 年度包括外部監査の指摘に反する。しかし、違約金債権も県の財産であるところ、債務者の不誠実な動機という曖昧な基準でxxするか否かを判断するのは、県の財産を保全する観点からは、むしろ不適切である。したがって、県の措置を指示する。
イ その他
平成11 年度の包括外部監査の、監査の結果において、貸付審査において売掛金の恒常的な残高であれば毎期において残高として残るものであり、その分は売上と重複して収入に計上されたことになるので資金調達に算入すべきではないとされており、この点平成22 年度の包括外部監査において措置されたものと認められないと評価されている。
回収不能部分は回収コスト等を考慮して、不納欠損処理も検討する必要がある、延滞分の貸付台帳を整備すべきである、設備代金支払完了後の直近の決算後には完了検査を行う必要があるとされており、これらの点について平成22 年度の包括外部監査において措置を講じたといえると評価されている。
⑾ 本貸付金の貸付及び債権管理業務に従事する職員数 1名
⑿ 広報の有無及び内容
平成26 年度に制度が廃止されたため広報は行っていない。
⒀ 債権管理業務に関する個別研修の有無 無
2 本貸付金の内容
⑴ 貸付の条件
本規則第2条において、①県内に事業場を有する中小企業者が県内に設備を設置する場合であり、②県が毎年度定める事業計画に適合し、かつ、③中小企業の近代化に著しく寄与すると認められるとき、とされている。
⑵ 利息の有無及び内容 無
利息については、助成法第5条本文及び本規則第3条の定めから無利息とされていた。
本規則第3条
前条の規定により県が貸し付ける資金(以下「貸付金」という。)の限度、利率及び償還期間は法第4条及び第5条で定めるとおりとする。
助成法第5条本文
都道府県が貸し付ける中小企業設備近代化資金は、無利子とし、その償還期間は、5年をこえない範囲内で政令で定める期間とする。
⑶ 遅延損害金規定の有無及び内容
本規則第15 条において、年10.75%の割合による遅延損害金(規則上は「違約金」とされている。)を徴収することがあると定められている。
規則の規定上「違約金として徴収することがある」とされており、実際償還期日までに貸付金を償還しなかった場合全て違約金を徴収しているわけではなく、一定の場合についてのみ違約金を徴収している。
後述する債権管理マニュアル(中小企業設備近代化資金貸付金、中小企業高度化資金貸付金)には、本貸付金が中小企業の振興を目的とした公共的かつ政策的な融資であることから、違約金は債務の履行を心理的に強制することを目的とした違約罰的な性質であり、制裁を受けることが正当と思われる事実がある場合にのみ徴収するとしている。
⑷ 保証人の要否
本規則第13 条第1項において、連帯保証人として、知事が適当と認める者2人以上が必要とされている。
⑸ 物的担保の要否及び担保価値の把握方法
本規則第13 条第2項において、債権を確保するため必要があると認めるときは、担保として適当な物件の提供を求めることができるとしている。
⑹ 償還方法
本規則第4条において、1年間据え置き、均等年賦又は半年賦とされている。実際には半年ご
との償還として運用されていたようである。
⑺ 償還猶予規定の有無及び内容
本規則第21 条において、激甚災害の場合に、2年を超えない範囲内において償還期間を延長することができると定めている。なお、激甚災害に対処するための財政援助等に関する法律が平成25 年に改正されたことに伴い、第13 条は現在削除されているが、助成法廃止前に適用を受けた貸付については、なお従前の例によるという経過措置が設けられている。
⑻ 償還免除規定の有無及び内容
本規則第20 条において、災害等借主の責めに帰すことのできない理由により貸付対象設備が滅失した場合においてやむを得ないと認めるときに、貸付金の全部又は一部の償還を免除することがあると定めている。
⑼ 期限の利益喪失規定の有無及び内容
借主が貸付金の償還を怠ったとき、貸付金の償還に支障を及ぼす重大な事態が生じたとき、この規則の規定又は当該契約に違反したとき、知事が償還期日前に償還させる必要があると認めたときには、貸付金の全部又は一部を償還期日前に償還させることがある(本規則第14 条)。
3 本貸付金の貸付実績及び回収状況等
設備近代化資金は、昭和47 年に開始した。平成15 年度からは貸付を休止、平成26 年度に根拠法が廃止された。
⑴ 一覧表
貸付金の貸付実績況及び回収状況等 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | |
予算額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
申請件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
貸付実績 | 貸付金額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
貸付件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収すべき金額( 当年度分) A | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収済み金額( 当年度分) B | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収すべき金額( 過年度分) C | 111,693,372 | 75,733,372 | 61,689,322 | 58,989,322 | 57,839,268 | |
回収済み金額( 過年度分) D | 2,963,000 | 2,135,050 | 2,700,000 | 1,150,054 | 260,000 | |
回収率 ( B+D)/( A+C) | 2.65 | 2.82 | 4.38 | 1.95 | 0.45 | |
総貸付残高( 円) | 75,733,372 | 61,689,322 | 58,989,322 | 57,839,268 | 52,579,268 | |
総貸付件数( 件) | 14件 | 11件 | 11件 | 10件 | 9件 | |
不納欠損額( 円) | 32,997,000 | 11,909,000 | 0 | 0 | 0 | |
不納欠損件数( 件) | 5件( 33xx) | 3件(15xx) | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 5,000,000 | |
債権放棄( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 1件 | |
免除額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
⑵ 予算額 無
⑶ 貸付実績 無
⑷ 回収すべき金額及び回収率
回収すべき貸付金については、漸減しているものの、平成26 年度以降はほとんど減少していない。また、すでに償還期限を徒過した貸付金の回収率は、平成24 年度2.65%、平成25 年度2. 82%、平成26 年度4.38%、平成27 年度1.95%、平成28 年度0.45%とかなり低い水準に留まっ
ている。
⑸ 不納欠損額及び不納欠損件数
平成24 年度は5件3299 万7000 円を不納欠損処理しており、平成25 年度についても3件119 0 万9000 円を不納欠損処理している。なお、平成24 年度の5件、平成25 年度の3件は貸し付けた債権の数である。
平成24 年度及び平成25 年度に不納欠損処理した8貸付先は、いずれも主債務者である法人が廃業しており、連帯保証人である代表者等が所在不明またはすでに時効期間を経過しており援用された等のケースである。
⑹ 債権放棄額及び債権放棄件数
平成28 年度に1件500 万円の債権放棄をおこなっている。債権放棄した貸付先については,主債務者の法人が事実上破産状態にあるところ、代表者が所在不明のため議会の議決を経て債権放棄したものである。
⑺ 免除額及び免除件数 無
⑻ 平成28 年度末現在における未収金
平成28 年度末において未収金が発生しているのは、9貸付先に対する貸付金,合計5257 万9 268 円である。未収債権については、債権管理マニュアルに従った債権管理を行うとともに、その一部の回収を株式会社沖縄債権回収サービス(以下「サービサー」という。)に委託している。本貸付金についての課題は、未収債権の回収及び不納欠損処理、債権放棄、免除等の処理を行
うことであるため、これらの点については後述する。
4 債権管理マニュアルに従った債権管理
本貸付金の債権管理方法については、「債権管理マニュアル(中小企業設備近代化資金貸付金中小企業高度化資金貸付金)」(以下「債権管理マニュアル」という。)が従前のマニュアル
を改訂する方法で作成され、平成29 年3月8日に施行されている。その概要は次のとおりである。
⑴ 債権の分類
債権管理マニュアルにおいては、債権を正常償還先、条件変更先、延滞先及び破綻先の4種類に分類した上で、それぞれ対応策を定めている。
⑵ 回収不能債権の整理
債権を分類した上で、回収不能債権については、徴収停止、履行延期の特約、権利の放棄、不納欠損処理という整理を行う。
⑶ 財産調査
督促後の催告を集中的に行い、当初の納入期限から1年を経過してもなお履行されない場合に
は財産調査に着手しなければならない。財産調査は、特別な事情がない限り、当初の納入期限から1年9か月以内に完了できるように努める。
5 サービサーに対する債権回収業務の委託
⑴ 委託概要
平成28 年度当初現在、県がサービサーに対して債権回収業務を委託しているのは、5貸付先に対する5件の貸付金で、受託債権額(受託時)は1139 万9268 円である。
⑵ 契約の締結
県は、毎年4月1日付で、サービサーと委託契約書を締結している(以下「本委託契約書」という。)。委託業務の名称は、「平成28 年度旧中小企業設備近代化資金貸付金に係る債権の管理回収業務」であり、委託業務の内容は「委託業務仕様書のとおり」とされている。かかる委託業務の内容については後述する。
⑶ 委託期間
委託期間は、毎年4月1日から翌年3月31 日までの1年間である(本委託契約書第2条)。
⑷ 委託料
委託料は、委託対象債権の元金償還金の未収金のうち収納があった金額の30%及び消費税である(本委託契約書第3条)。
⑸ 費用の負担
事務処理に要する費用は、サービサーが負担する(本委託契約書第5条)。
⑹ 回収実績
平成21 年度から28 年度の年間収納率は0.02%から2.35%である。
平成21 年度から23 年度については報酬率が収納金額の35%、平成24 年度から平成28 年度については報酬率が収納金額の30%である。
サービサーに委託した債権について、サービサーは委託業務を問題なく行っていることがうかがえ、また報酬額は収納金額の30%で費用はサービサー負担であることから費用対効果の点も問題がない。
⑺ サービサーに対する委託についての問題点
債権者はあくまでも県であり、サービサーに委託した債権についても、最終的な処理までの全体像を描く必要がある。サービサーに対して委託をすることにより、当該債権については事実上処理を停止していないか、少額の弁済継続により完済するケースはいいが完済に至らないケースについては早期に委託を打ち切り債権放棄等の対応をすべきはないか、任意に弁済を求めるだけではなく訴訟提起や差押による回収を実施しているか等検討すべきである。本貸付金のうちサービサーに委託している各債権について取るべき方策は後述する。
6 回収未了の貸付金について取るべき方策
⑴ 回収未了貸付金の概観
平成28 年度末で回収未了となっている債権は、貸付債権本数11 本、10 債務者である。なお、一覧表では元金が残っている貸付についてのみ記載しており、元金を完済し違約金のみ残っている2本(1債務者)が含まれていないため、9件となっている。
債務者ごとに見ると、4件に対する債権は時効期間を徒過しており、6件に対する債権は時効期間を徒過していない。また、5件に対する債権の管理回収業務をサービサーに委託しており、
5件に対する債権は県が管理している。1件に対する債権は元金完済して違約金のみであり、そ れ以外の9件に対する債権は元金が残っている。うち8件に対する債権は昭和年代の貸付であり、
2件に対する債権は平成に入ってからの貸付であるが、いずれも貸付から20 年以上経過している。
⑵ サービサー委託分貸付金の検討
10 中小企業者に対する債権のうち、5債務者に対する債権の管理回収をサービサーに委託している。いずれも主債務者は事実上営業を停止している法人であったり、死亡していたりして、主債務者からの債権回収はできない。そのため、主債務者の相続人や連帯保証人からの回収を試みている。
5件のうち2件については、連帯保証人等が定期的に弁済を行っており、かつおおむね1年以内には元金を完済する見込みであるため、引き続きサービサーが回収を行うことで良いと思われる。
意見1
主債務者の相続人が定期的に弁済を行っているものの、残元金に比して弁済額が少額であ り、元金完済までに約20 年かかる事案については、主債務者の相続人からの回収と並行して、連帯保証人に対して請求すべきである。
5件のうち1件については、主債務者の相続人が定期的に弁済を行っているものの、残元金額に比して弁済額が少額であり、現在の支払金額であると元金完済までに約20 年かかることになる。現在連帯保証人に対しては請求していないとのことであるため、主債務者の相続人からの回収と並行して、連帯保証人に対して請求すべきである。
5件のうち2件については、これまで弁済してきた連帯保証人の相続人が高齢で病気であるなど、回収困難とされている。現在のところはサービサーへの委託を続けることで良いと思われるが、1年度経過しても事態が変わらない場合には、次年度の委託は取りやめ県において債権放棄等の方策を検討すべきである。
⑶ 県が管理している貸付金の検討ア 消滅時効期間が経過しているもの
県が管理している5件のうち4件については、消滅時効期間が経過している。うち2件についてはイ又はウにも該当するため、後述する。
消滅時効期間が経過している場合、県が定める標準マニュアルにおいては、平成25 年度包括 外部監査による提言を受け、「債務者等と実際に面談する場面においては、時効の援用制度のx x及び当該債権の取扱い方針等について教示した上で、権利行使の意思確認を行うこととします。債務者等が援用権を行使する意思表示をした場合は、時効援用申立書の用紙を交付し、必要事項 の記載と署名・押印を求め、同申立書を受領します。」とされている(標準マニュアル131 頁)。
実際に債務者等に送付している通知を確認すると、書類の中に「本件の債権は、上記の通り既に消滅時効が完成しておりますので、お支払いいただくか、または時効を援用して債務を消滅させることも可能です。」と記載されており、債務者等に時効が援用できることがわかりやすく表示されている。
2件とも主債務者の相続人や連帯保証人の1部については時効援用済であり、残る債務者等に対しても通知済みである。しばらくしても回答がない場合には再度通知書を送り、時効援用の意思が確認できた場合には面談にこだわらず時効援用申立書の提出を求めるなどして、速やかに不納欠損処理を行うべきである。
イ 元金を完済し違約金のみ残っているもの
意見2
主債務者である法人が事実上倒産しており、かつ連帯保証人が死亡しており相続人調査が必要な事案については速やかに行い、相続人が所在不明となっている事案については所在不明であることの資料を揃えて債権放棄又は不納欠損処理を行うべきである。
5件のうち1件は、元金完済時点でxxした違約金のみが残っているものである。貸付債権としては2本あり、いずれも主債務者である法人が事実上倒産しているところ、1本は連帯保証人が死亡しており相続人調査が必要、1本は連帯保証人の相続人が所在不明となっている。相続人調査が必要な事案については速やかに行い、相続人が所在不明となっている事案については所在不明であることの資料を揃えて債権放棄又は不納欠損処理を行うべきである。
ウ 自然人の債務者がその後法人成したもの
5件のうち1件は,自然人が借り入れ、その後法人成したものであるが、法人との間で債務の承継に関する契約を新たに締結していないものである。法人は事実上倒産しており、自然人は無資力となっている。法人との間で債務承継に関する契約を締結していない以上法人に対して請求できないのであるから、通常の自然人に対する債権と同様、連帯保証人等への請求を行うべきである。
意見3
自然人が借り入れ、その後法人成した事案については、通常の自然人に対する債権と同様、連帯保証人等への請求を行うべきである。
エ 連帯保証人が健在だが無資力であるもの
5件のうち1件は、主債務者である法人が事実上倒産し、連帯保証人である自然人3名がいずれも健在ではあるが高齢で年金生活であるなどの状況で無資産証明書の提出も受けており、無資力である。県担当者は履行期限の延長手続きを行い10 年間更新することにより債務免除を行うことを予定しており、かかる手続きを速やかに進めるべきである。
施行令第171 条の6
1 普通地方公共団体の長は、債権について、次の各号の一に該当する場合においては、その履行期限を延長する特約又は処分をすることができる。
一 債務者が無資力又はこれに近い状態にあるとき。
この点、「県方針では、1号要件による履行期限の延長手続を初めて認めたときから、状況に変化がなく毎年の手続が10 年間更新された場合は、地方自治法施行令第171 条の7第1項の規 定に基づき債務を免除することとしています。」と規定されている(標準マニュアル123 頁)。
施行令第171 条の7
1 普通地方公共団体の長は、前条の規定により債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期の特約又は処分をした債権について、当初の履行期限から十年を経過した後において、なお、債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができる見込みがないと認められるときは、当該債権及びこれに係る損害賠償金等を免除することができる。
3 前二項の免除をする場合については、普通地方公共団体の議会の議決は、これを要しない。
7 指摘、意見及びコメント
⑴ 指摘 無
⑵ 意見ア 意見1
主債務者の相続人が定期的に弁済を行っているものの、残元金に比して弁済額が少額であり、元金完済までに約20 年かかる事案については、主債務者の相続人からの回収と並行して、連帯 保証人に対して請求すべきである。
イ 意見2
主債務者である法人が事実上倒産しており、かつ連帯保証人が死亡しており相続人調査が必要
な事案については速やかに行い、相続人が所在不明となっている事案については所在不明であることの資料を揃えて債権放棄又は不納欠損処理を行うべきである。
ウ 意見3
自然人が借り入れ、その後法人成した事案については、通常の自然人に対する債権と同様、連帯保証人等への請求を行うべきである。
⑶ コメント 無
以上
第4 沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金
1 概要
⑴ 一覧表
貸付金名 | 沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金 | |||||
担当部署名( 部及び課) | 商工労働部 中小企業支援課 | |||||
貸付開始年度 | 昭和47年度( 平成26年度貸付事業終了) | |||||
根拠規定( 法律, 条例, 要綱等) | 小規模企業者等設備導入資金助成法( 昭和31年法律第115条) | |||||
マニュアル, 手引き等 | 沖縄xx規模企業者等設備導入資金貸付規則( 昭和47年規則第118号) | |||||
貸付金の目的 | ( 公財) 沖縄県産業振興公社へ, 設備貸与事業に係る原資を貸し付ける | |||||
貸付対象 | ( 公財) 沖縄県産業振興公社 | |||||
財源( 県, 国, その他のいずれか) | 県の資金と国の補助金( 1: 1) | |||||
貸付の方法 ( 県が直接貸すのか, 金融機関や他の団体 等を通じて貸すのか) | 県が( 公財) 沖縄県産業振興公社に原資を貸付け, 公社はそれに公庫からの貸付金を加えて事業資金とし, 企業に事業設備の割賦販売又はリースを行う。 | |||||
前項において金融機関や他の団体等を通じて貸す場合の県の債権管理方法 | 四半期に一度, 貸付事業実施報告書を徴求する。 | |||||
当該貸付が単年度貸付であるか否か | 否 | |||||
過去の内部監査等の指摘事項の有無及び内容 | 無 | |||||
貸付業務及び債権管理業務に従事する職員 | 1名 | |||||
広報の有無及び内容 | 平成26年度に貸付事業終了のため無 | |||||
債権管理業務に関する個別研修の有無 | 無 | |||||
貸付の条件 | ( 公財) 沖縄県産業振興公社が, 小規模企業者等の創業や経営基盤の強化に必要な設備を購入し, 企業に割賦販売又はリースを行うための貸付であること。 | |||||
利息の有無 | 無 | |||||
利息の利率( 年) | - | |||||
遅延損害金規定の有無 | 有 | |||||
遅延損害金の利率 | 10.75% | |||||
保証人の要否 | 否 | |||||
物的担保の要否 | 否 | |||||
担保価値の把握方法 | - | |||||
償還方法( ex1年据置半年賦償還) | 2年据置年賦償還( 8年以内) | ※ 例外規定有り | ||||
償還猶予規定の有無 | 有 ( 貸付規則第10条第1項) | |||||
償還免除規定の有無 | 有 ( 貸付規則第10条第1項) | |||||
期限の利益喪失規定の有無 | 有 ( 貸付規則第9条) | |||||
本貸付金の貸付実績及び回収状況等 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | |
予算額( 円) | 4,000,000 | 39,375,000 | 35,100,000 | 0 | 0 | |
申請件数( 件) | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | |
貸付実績 | 貸付金額( 円) | 4,000,000 | 39,375,000 | 35,100,000 | 0 | 0 |
貸付件数( 件) | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | |
回収すべき金額( 当年度分) A | 9,931,500 | 8,791,500 | 7,656,500 | 6,406,500 | 7,072,500 | |
回収済み金額( 当年度分) B | 9,931,500 | 8,791,500 | 7,656,500 | 6,406,500 | 7,072,500 | |
回収すべき金額( 過年度分) C | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収済み金額( 過年度分) D | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
回収率 | ( B+D)/( A+C) | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 |
総貸付残高( 円) | 46,259,000 | 76,842,500 | 104,286,000 | 97,879,500 | 90,807,000 | |
総貸付件数( 件) | 7 | 7 | 7 | 7 | 6 | |
不納欠損額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
不納欠損件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
債権放棄( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除額( 円) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
免除件数( 件) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
⑵ 本貸付金の概要
第3で述べた沖縄県中小企業設備近代化資金貸付金が、中小企業者に対して設備購入資金を貸し付けるのに対し、沖縄xx規模企業者等設備貸与資金貸付金(以下「本貸付金」という。)は、公益財団法人沖縄県産業振興公社(以下「公社」という。)に対して、小規模企業者等設備貸与事業(公社が、小規模企業者等が必要とする設備を購入し、小規模企業等に対して割賦販売等を行う事業,以下「設備貸与事業」という。)に必要な資金を
貸し付けることにより、小規模企業者等の経営基盤の強化等を図ることを目的としている。全国一律の制度としての設備貸与事業は、本土復帰の昭和 47 年度から開始したが、制
度の根拠法であった小規模企業者等設備導入資金助成法(昭和 31 年法律第 115 号,以下
「本法」という。)が廃止されたことに伴い、平成 26 年度末に設備貸与事業は終了した。そのため、現在は債権の管理回収業務のみを行っている。
⑶ 根拠規定
設備貸与事業は、昭和 47 年に制定された中小企業設備貸与資金貸付金規則(平成 12 年に小規模企業者等設備導入資金貸付規則へと改題、以下「本規則」という。)を根拠規定としている。その根拠法は、昭和 31 年に中小企業近代化資金等助成法として制定され、
平成 11 年に小規模企業者等設備導入資金助成法に改題されている。なお、この根拠法は、中小企業設備近代化資金貸付金と同じである。
⑷ 目的
公社に対し、設備貸与事業を行うのに必要な資金(設備貸与資金)を貸し付けることを目的としている(本規則第1条)。
本法第2条第6項
この法律において「設備貸与事業」とは、次に掲げる設備又はプログラムについて、その譲渡し若しくは貸付け又はプログラム使用権の提供(プログラム使用権を契約に基づき取得させることをいう。以下同じ。)を行う事業をいう。
一 創業者の事業の用に供する施設又はプログラムであって、その事業を行うために必要があると認められるもの
二 小規模企業者等の事業の用に供する設備又はプログラムであって、その経営基盤
の強化を図るために新たに導入する必要があると認められるもの
なお、公社は、県内中小企業等の経営基盤強化及び創業の促進に関する事業並びに産業振興に必要な諸事業を行い、もって本県産業の健全な発展に寄与することを目的として昭和 46 年に設立された団体である。
⑸ 貸付対象
県が貸付をする対象者は公社である。
⑹ 財源
本貸付金の財源については、県の資金と国の補助金の割合が1:1とされている。
⑺ 貸付の方法
県が公社に原資を貸付け、公社がそれに公庫の資金を加えて事業資金とし、小規模企業者等に対して事業設備の割賦販売又はリースを行っていた。
⑻ 設備貸与事業の流れ
設備貸与の流れについては次のとおりである。
①小規模企業者等が公社に対して設備貸与の申込みを行う。
②公社が小規模企業者等の企業調査を行う。
③審査会が公社に対して貸付可否の審査を行う。
④小規模企業者等と公社との間で割賦販売等の契約を行う。
⑤公社が機械メーカー又は商社から設備を導入する。
⑥機械メーカー又は商社が小規模企業者等に対して設備を搬入する。
⑦公社が機械メーカー又は商社に対して代金を支払う。
⑼ 当該貸付が単年度貸付か否か 否
⑽ 過去の内部監査等の指摘事項の有無及び内容 無
⑾ 貸付業務及び債権管理業務に従事する職員数 1名
⑿ 広報の有無及び内容
設備貸与事業については、平成 26 年度に事業終了しているため、広報は行っていない。
⒀ 債権管理業務に関する個別研修の有無 無
2 本貸付金の内容
⑴ 貸付の条件
本規則第1条の規定から、公社が、小規模企業者等の創業や経営基盤の強化に必要な設備を購入し、企業に割賦販売又はリースを行うための貸付であることが条件である。
⑵ 利息の有無及び内容 無
本規則第3条第1項本文の定めにより無利息とされている。
⑶ 遅延損害金規定の有無及び内容
本法第9条第1項の規定により、貸与機関が支払期日までに貸付金を償還しなかった場合等には、支払期日の翌日から支払の日までの日数に応じその延滞した額につき年 10.75パーセントの割合で計算した違約金を支払うべきことを請求することができるとしてい る。
⑷ 保証人の要否及び内容 否
⑸ 物的担保の要否及び担保価値の把握方法 否
⑹ 償還方法
本規則第3条の規定により、据置期間1年以上2年以内、原則8年以内の年賦均等償還とされている。なお、本規則第3条第1項ただし書きにおいて、鉱害及び公害を防止するための施設に係る貸付金の場合、例外的に償還期間が 13 年以内とされている。
⑺ 償還猶予規定の有無 無
⑻ 償還免除規定の有無 x
x規則第 10 条の規定により、災害その他小規模企業者等の責に帰することができない理由により設備が滅失した場合に貸付金の全部又は一部の償還を免除することができるとされている。
⑼ 期限の利益喪失規定の有無
本規則第9条の規定により、公社が本規則の規定に違反したとき、虚偽の報告をしたとき及びその他不正の手段により貸付金の支払を受けたときには、貸付けの決定の全部又は一部を取り消し、又は既に貸し付けた貸付金の全部又は一部の返還を求めることができるとしている。
3 県と公社との間の本貸付に係る契約内容等
⑴ 貸付金の申請
本貸付金は、県が公社に対して貸し付けるものであり、既述のほか、本規則及び金銭消費貸借契約書において次のとおりその内容が規定されている。
⑵ 報告義務
公社は、県に対して、4半期ごとに事業実施状況報告書、会計年度ごとに事業実績報告
書を提出しなければならない(本規則第 11 条、12 条)。
⑶ 事故の届出
公社は、貸付け及び設備貸与の対象設備について事故が生じたときは、速やかに事故報告書を県に提出し、その指示を受けなければならない(本規則第 13 条)。
この規定に基づき、公社は、小規模企業者等が弁済期に弁済を行わなかった場合等は県に対して事故報告書を提出している。
4 本貸付金の貸付実績及び回収状況等
設備貸与事業については、平成 26 年度に事業終了しており、現在は償還のみとなっている。
⑴ 一覧表
⑵ 予算額
予算額は、平成 24 年度 400 万円、平成 25 年度 3937 万 5000 円、平成 26 年度 3510 万円,
平成 26 年度に設備貸与事業を終了しているため、平成 27 年度以降の予算は措置されていない。
⑶ 貸付実績
県の公社に対する貸付実績は,平成 24 年度 400 万円(1件)、平成 25 年度 3937 万 50
00 円(1件)、平成 26 年度 3510 万円(1件)、平成 26 年度に設備貸与事業を終了して
いるため、平成 27 年度以降の貸付実績はない。
⑷ 回収率
平成 24 年度から 28 年度において、県の公社からの回収率は 100%となっており、総貸付残高は漸減している。またこれまで公社から償還期限までに償還がなされなかったことはなく、過年度分の未収金はない。
⑸ 不納欠損額及び不納欠損件数 無
⑹ 債権放棄額及び債権放棄件数 無
⑺ 免除額及び免除件数 無
5 事故が生じた場合について
既述のとおり、本貸付金については公社から県に償還期限までに償還がなされなかったことはなく、回収率は 100%となっている。しかし、実際には公社から小規模企業者等に対する貸付が履行期限までに弁済されなかったり、回収が困難であるとして断念することはしばしばある。そのような場合、どのような処理がされているかについて述べる。
⑴ 事故の届出
中小企業者から公社に対して、履行期限までに弁済されないなどの事故が生じたときは,公社は県に対して速やかに事故報告書を提出する義務がある。
⑵ 弁済が遅滞した場合
小規模企業者等の弁済が遅延した場合に、公社が県に対して提出している「未収企業状況調査票」を見ると、貸与額、未収残高、現在回収額等の延滞状況、企業の概要、2期分の貸借対照表及び損益計算書の比較、遅延の主要因、今後の回収方針等詳細に記載されている。単に設備貸与を行うだけではなく、常日頃から公社が小規模企業者等に対して経営支援を行っていることが伺える。
⑶ 小規模企業者等との契約を解除した場合
公社が、小規模企業者等との間で締結した設備等についての割賦販売契約等を解除した場合、公社の業務方法書の規定に基づき県に対して通知されることとなっている。契約解除についての通知には、契約解除理由、損害賠償額(割賦償還金、損料、違約金)、契約解除年月日及び今後の方針(連帯保証人に対して請求を行う等)が記載されている。
⑷ 損失補償契約
設備貸与事業について未収が生じた場合については、あらかじめ県の貸付財源負担分
(貸与額の2分の1)について公社との間で損失補償契約を締結しており、その契約によって処理されることとなる。損失補償契約の概要は次のとおりである。
ア 県は、県及び公庫から貸与設備の購入資金の貸付けを受けて設備貸与事業を行ったことにより、貸付けから 10 年度以内に公社が受ける損失について、限度額の範囲内で補償する。
イ 損失とは、公社が当該年度に行った設備貸与事業について、各事業年度ごとに生じた未収債権のことをいう。
ウ 公社は、未収債権を各事業年度終了後3カ月を経過してもなお回収ができなかった場合において、貸与に係る未収債権の償却を行うことにより、欠損を生じることとなるときは、県に対し当該債権の償却額の範囲内で、10 年度以内の間に損失補償の請求を行うことができる。公社が請求できる額は、未収債権の額から貸与契約の際に徴した補償金の残額を差し引いた額の 10 分の8の範囲内とする。
エ 公社は、県から損失補償を受けた後も、善良な管理者の注意をもって、強制執行その他あらゆる方途により、債権の保全回収に努めなければならない。県は、公社が故意又は重大な過失によって債権の保全回収を怠ったと認めたときは、公社に対し、填補額の全部又は一部を返還させることができる。
オ 公社は、県から損失の填補を受けた後において、設備貸与にかかる回収があったときは県に報告し、その回収額から当該返済にかかる諸費用を控除した額のうち損失補償した割合を県に納付しなければならない。
⑸ 単年度事故率
県が公社に対して貸し付けた金額のうち、償還がされずに損失補償することとなった金額(事故総額)及び割合(事故率)は次のとおりである。なお、損失補償期間が 10 年度
以内のため、貸し付けた年度から 10 年経過しなければ事故総額は確定しない。下記は平
成7年度から 15 年度については事故総額が確定しているものである。
平成7年度から平成 15 年度の単年度事故率は平均 14.9%となっている。
⑹ 信用保証制度における事故率との比較
設備貸与事業の事故率の高低を評価するに当たり、損失補償の場合における事故率について公表されている適切な資料が見当たらないため、直接単年度事故率の高低を比較するのは困難である。そのため、類似の制度として、全国的に実施されており、かつ対象が同じ中小企業者である信用保証制度との比較が有用と考えられる。信用保証制度とは、信用力に乏しい中小企業・小規模事業者が民間金融機関から借入を行う際に、信用保証協会が保証を行うことにより、その信用力を補完し、資金繰りを円滑化するものである。
(平成 27 年 11 月 19 日中小企業庁「信用補完制度の現状と指摘」から)
かかる信用保証制度について、公表されている平成 23 年度から平成 28 年度の事故率=代位弁済額÷保証債務残高(平均)を計算すると次のとおりである。1.67%から 2.50%で平均が 2.11%となっている。
(全国信用保証協会連合会「信用保証実績の推移」から算出)これに対して、同じ平成 23 年度から平成 28 年度の間、設備貸与事業について同様の方 法で計算した事故率は次のとおりである。信用保証制度における事故率(代位弁済率)は、代位弁済額÷保証債務平均残高で計算されており、設備貸与事業とは事故率の計算方法が異なる。そのため、同様の方法で計算を行うこととすると、事故率=事故総額÷貸付平均
残高となる。
信用保証制度の事故率(平成 23 年度から平成 28 年度)が、1.67%から 2.50%で平均が
2.11%であるのに対して、設備貸与事業の事故率(平成 23 年度から平成 28 年度)は 0.0
0%から 0.43%で平均が 0.16%であり、信用保証制度の事故率と比較して設備貸与事業の事故率は低い。
⑺ 損失補償支払後の返納額
既述のとおり、県が損失補償をした後も、公社は債権の保全回収に努める義務があり、回収した場合には回収金から当該返済にかかる諸費用を控除した額のうち損失補償した 割合を県に返納しなければならない。損失補償額と返納額をまとめたのが次の表である。こちらも同様に、貸し付けた年度から 10 年経過しなければ損失補償支払額が確定せず、
返納はさらにその後の場合もある。下記表は、平成 28 年度末現在の損失補償支払額及び
返納額一覧であり、平成 19 年度分まで損失補償支払額が確定している。
上記表のうち、損失補償支払額が確定している平成 19 年度貸付分までの損失補償支払 額、返納額及び返納率をまとめたのが下記表である。損失補償支払が0の年度もあるた め損失補償支払がある年度のみ取り上げると、平成12 年度以前貸付分の返納率が35.63%、平成 13 年度貸付分の返納率が 21.49%、平成 15 年度貸付分の返納率が 8.65%、平成 19 年度貸付分の返納率が 61.47%、平均すると 34.74%である。なお、下記表は平成 28 年
度末までの返納実績についてまとめたものであるが、返納には期限はないので今後も返納される可能性がある。
(平成 28 年度末現在)
返納率の高低自体については比較すべき適切な指標が見当たらないため評価が難しい。ただ、平成 23 年度から平成 28 年度にかけて損失補償を行った貸付金について今後も返 納が見込まれることを考えあわせると、設備貸与事業の事故率は低いと評価できる。
6 指摘、意見及びコメント
⑴ 指摘 無
⑵ 意見 無
⑶ コメント
本貸付金は、県が公社に貸し付けた債権については全て償還期限通りに償還されている。ただ実際には、本貸付金によって公社が実施する設備貸与事業において、公社は中小企業者から全て回収できているわけではなく、回収できなかった金額の一部については、県が損失補償を行っているため、事故率や返納率も含めて評価すべきと考える。
この点、信用保証制度の事故率(平成 23 年度から平成 28 年度)は 1.67%から 2.50% で平均が 2.11%であるのに対して、設備貸与事業の事故率(平成 23 年度から平成 28 年度)は 0.00%から 0.43%で平均が 0.16%であり、信用保証制度の事故率と比較して設備貸与事業の事故率は低い。さらに、損失補償を行った貸付金について今後も返納が見込まれることを考えあわせると、設備貸与事業の事故率は低いと評価できる。
以上から、設備貸与事業の回収について特に問題はない。
設備貸与事業については、平成 26 年度に貸付事業を終了しているため、今後はこれまでどおりに償還を受けることで足りると言える。
以上