式� m3
公共工事における総価契約単価合意方式の試行状況(中間とりまとめ)
国土交通省国土技術政策総合研究所総合技術政策研究センター
xxxx xx x
建設システム課長 xx xx
1
はじめに
我が国の公共工事は,基本的に会計法令に基づく総価のみの契約で,おのおのの工種の単価については甲乙間で合意しておらず,総価内で工事が完成すればよい仕組になっている。
こうした中, 設計変更があった場合の金額算定において,甲の積算単価が優先されがちとなり双務性が不足している, 甲乙間で各工種の単価の考え方が異なるまま工事が進捗し,契約変更時に初めてお互いの考え方の違いに気付き,契約変更時の金額協議が円滑に進まない,などの問題が
指摘されてきている。
これらの問題を踏まえ,国土交通省では,多様な入札・契約方式の試行の一つとして,「総価契約単価合意方式」の試行を,平成13年度に2件,平成14年度12件,平成15年度22件の計36件の工事で実施してきている。
これらの試行工事において,双務性,作業性等の観点から,効果の検証,合意方法・手順等の課題の整理とその改善等を目的にフォローアップを行っており,今回,平成15年度末までに工期を迎えた16件の試行工事について,調査結果を中間的にとりまとめたので報告する。
費目�
工種�
種別�
細別� 単位� 数量� 施工単価� 金額�
当初積算�
道路土工�
当初契約�
総価契約で数量と�総額のみを契約�
式�式�
式� m3
1
1
1
24,100
2,260
単価協議・合意�
甲乙間の協議により�
1
※出来高部分払を行う場�
合,ここで部分払を行う�
変更契約�
総価契約の内訳として�1,020単価を協議・合意� 650
舗装工�
新規等の契約変更項目�に関する単価協議・合意�
(新規等の契約変更項目がある場合)�
共通仮設費�
合意単価を基に�金額を算出�
精算変更�
現場管理費�
完成�
工事費計�
一般管理費等�
式�式� m2 式�式�式�式�式�式�
式�
1
1
16,770
1
1
1
1
1
1
1
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
…�
工事価格�
図―1 総価契約単価合意方式�
46 建設マネジメント技術 2005 年 1 月号
2
「総価契約単価合意方式」の概要
「総価契約単価合意方式」は,予決令第80条第
1項の規定に基づき,入札・契約は,まず,これまでどおり総価で行う。契約後,その内訳として工種ごとの単価について,乙が提出した単価表
(総価の内訳書)の金額を基に,甲乙間で協議・合意し,その合意単価について書面により締結する。そして,この合意単価に基づき,工期途中に設計変更が生じた場合の変更金額の算定・決定等を行うものである(図―1)。
なお,欧米諸国では,工種ごとの単価を契約する「単価契約」が一般的であり(それらの単価と発注者が与える数量を掛けて得られる金額の総額が入札額(総価)),変更があった場合には,この契約単価を用いて金額の算定・決定がなされている。「総価契約単価合意方式」は,総価契約の内訳としての単価を合意するものとい
3
う点で欧米との相違点があるが,類似した方式であるといえる。
期待される効果
「総価契約単価合意方式」は,基本的にすべての工事において適用可能である。特に,乙側からの技術提案を受けるタイプの入札・契約方式
(設計施工一括発注方式,VE 方式
等)や出来高部分払方式の工事で,より高い効果が発揮されることが期待される。
「総価契約単価合意方式」では,これまで実施していなかった,工種ごとの単価を甲乙間で協議・合意しておくことにより,以下の効果が期待される。
される。
契約変更時等の円滑な金額協議
設計変更および部分払があった場合の金額算定
4
・決定は,合意された単価を基に算出するため,出来高金額が明確になるほか,設計変更案件の金額変更時に,甲乙間での認識の相違から,協議がスムーズにいかないといったリスクの回避等が進み,円滑な金額協議が期待される。
試行状況とフォローアップ
併用なし,�
5件,29%�
出来高部分払�
方式,7件,� 41%�
その他(総合�
評価,契約後� VE),3件,� 18%�
設計施工一括�
発注方式,�
2件,12%�
※複数回答分もそれぞれカウント�
設計施工一括発注+その他(1件)�
図―2 試行対象工事の併用した入札・契約方式�
試行対象工事(16件)における併用した入札・契約方式の状況�
試行は,平成13年度に開始し,平成15年度までに計36件の工事を対象にしている。その試行工事に対し,発注者,受注者双方へアンケート形式の調査票によるフォローアップを行った。今回,平成15年度末までに工期を迎え,最終(完成時)アンケートまで回収した16件の工事を対象にデータを集計した(図―2)。
5
主な効果に関する フォローアップ結果
双務性の向上
契約変更協議において発注者の積算単価が優先されがちといった片務性は,発注者側81%,受注
双務性の向上
契約当初に,工種ごとの単価について,甲乙間で協議・合意を実施することから,これまで,契約変更時の金額協議において甲の積算単価が優先されがちといった片務性が改善できることが期待
者側75%で「かなり改善」または「やや改善」されたと回答(図―3)し,片務性は,受発注者双方で改善されたとの認識を持つ結果となった。これより,従前に比べ双務性の向上は図られているといえる。
建設マネジメント技術 2005 年 1 月号 47
契約変更時等の円滑な金額協議
契約変更時等の金額協議がスムーズにいかないといったリスクの回避については,発注者側81
%,受注者側75%で「かなり回避できた」または
「やや回避できた」と回答(図―4)した。
これは,単価に含まれる費用内容等の整合が単価合意時に図られ,見込み違いが早期に発見・是正できたとの効果が多くみられたこともあり,発注者側,受注者側とも従前に比べ変更協議はスムーズになったとの認識が確認された。
契約変更時等において,事前に協議を行い,合意した単価を利用することにより,従前に比べ円滑な金額協議が図られたといえる。
受発注者のコスト意識の向上
コスト意識については,発注者側75%,受注者側81%で,従前に比べコストを「かなり意識する
ようになった」または「やや意識するようになった」と回答した。そのうち,受注者側においては,「かなり意識するようになった」が50%となっており,発注者側より受注者側で,工種ごとの単価を協議・合意することを通じて,コスト意識の向上という傾向が多くみられた。
変わらな�
かった� 19%�
かなり改�
善された� 25%�
変わらな�
かった� 25%�
かなり改�
善された� 31%�
やや改善� やや改善�
された� された�
56%� 44%�
【具体的な意見】(●:発注者側,■:受注者側)�
●協議・合意することで,お互いの考えがわかり,双務性に向上が図られ�た。�
■官側の積算の考え方を理解できた。�
図―3 片務性の改善度�
変わらなかった�
(今後も変わら�ない) 6%�
変わらなかった�
(今後は期待で�
かなり回避�
された� 25%�
変わらなかった�
(今後も変わら� かなり回避�ない) 6%� された�
37%�
変わらなかった�
(今後は期待で�
きる) 13%�
やや回避さ�
れた 56%�
きる) 19%�
やや回避さ�
れた 38%�
【具体的な意見】(●:発注者側,■:受注者側)�
●当初合意単価を利用したので。�
■事前の単価協議により契約変更時の作業(金額算定)が容易。�
■単価を合意しておくことでは,受注者にとっては契約変更時の積算等が�早く行える利点がよかった。�
図―4 設計変更に伴う契約変更を巡るリスクの回避�
受注者側 n =16
発注者側 n =16
【設問】�
「契約変更を巡る協議がスムーズにいかない」といったリスクは回避�されたと考えられますか。�
受注者側 n =16
発注者側 n =16
【設問】�
「契約変更協議において発注者の積算単価が優先されがち」といった�片務性が改善(双務性が高まる)されましたか。�
6
課題の有無に関するフォローアップ結果
単価協議・合意および契約変更の作業量
作業量については,発注者側は,
「やや増加」または「増加」との回答(図―5)が81%を占めていた。また,受注者側では,「変わらない」が55%と最も多く,回答の傾向に受発注者間で違いがみられた。これは,発注者側においては,単価協議時の補助資料作成において積算システムが対応していないことや,合意実施手順・手法について不明確な部分があったこと等が要因であった。
このため,積算システムの改良,実施手順・手法の改善等を行うことで,発注者側の作業量は低減され,解決できる課題と考えられる。
単価協議・合意の状況
単価協議において合意する事項は, 数量総括表の各項目に含まれる費用内訳, 数量総括表の各項目の単価, 単価を変更する場合のルールとし,これらの事項を実施手順・手法のマニュアルにおいて設定した。それに基づき協議を実施した結果,発注者側94%,受注者側87%で「問題なし」または「大きな問題なし」との回答(図―
6)を得た。
一方,単価協議の出席者は,発注者側が積算担当者,受注者側が現場代理人の2名によるものが最も多く,協議時間は,3時間以下が68%となり,比較的短時間で協議は,実施されていた。
48 建設マネジメント技術 2005 年 1 月号
【設問】�
受注者側 n =16
発注者側 n =16
合意に要する協議,契約変更の要する協議など全体を通しての作業量は。�
せた事例がみられたほか,この範囲を超えていた単価について,最終的に「甲側から単価を提示した結果,
減少した
�
やや減少�
増加した� 減少した�
甲の提示した単価で合意」が47%を
増加した� 38%�
0%�
13%�
変わら�
やや増加�
13%�
6%�
13%�
やや減少�
占めていた(図―7)。
やや増加� 43%�
ない�
6%�
変わら�ない� 55%�
13%�
このため,±10%は,単価協議に
あたっての一つの判断材料であり,あくまで単価設定の理由を確認する
【具体的な意見】(●:発注者側,■:受注者側)�
●手順,手法が明確でないため,局との調整で作業量が増加した。�
●土木積算システムに対応していないため,単価比較,新工種等において,�作業量が増加した。�
●本来,数量の増減程度にとどまる工事であれば,作業量は減少すると考�えられるが,新工種がでた場合には作業量が増大する。�
■変更時の積算は,詳細な積上げをしなくてもよいので,作業量はやや減�少した。�
■官積算の単価項目に合わせるのは,大変な作業だ。�
図―5 単価協議・合意および契約変更の作業量�
目安であるという位置付けをより明確にして運用していくことが有効であると考えられる。
7
おわりに
本稿で「総価契約単価合意方式」
【設問】�
受注者側 n =16
発注者側 n =16
当初の単価協議・合意の状況(感想)は。�
の効果および課題について,平成15年度末までに工期を迎えた16件の試
やや難航�難航した�
やや難航�
難航した�
行工事を通じて検証を行った。まだ
6%�
大きな� 問題なし� 50%�
0%�
問題なし� 44%�
13%� 0%�
大きな� 問題なし� 49%�
問題なし� 38%�
データ数は少ないが,期待される効果については,受注者側,発注者側の双方において確認された。
また,今後,導入するユニットプ
【具体的な意見】(●:発注者側,■:受注者側)�
●±10%枠にこだわらず,可能な限り乙単価でいいのではないかと考えら�れる。�
●特異単価(低い単価)工種を束縛する恐れがある。�
■発注者から工事費構成書の提示を受け参考にし,協議を実施した。�
図―6 単価協議・合意の状況�
【設問】�
受注者が提出した「協議単価」と「官積算単価」との乖離が「10%を超�えた」単価項目について,合意に至った経緯は。�
ライス型積算方式では,「総価契約単価合意方式」を用いることになる。これは,当該工事において,設計変更が生じた場合に,合意単価に基づき変更金額の算定を行うほか,合意単価を蓄積し,分析・検証・補正を行い,次回以降の積算で利用す
n =13
乙に再提出を依頼�し,その結果乙の�
乙に再提出を�依頼したが,�
るものである。
単価で合意
38%�
�
甲側から単価を 提示したが,結�果,乙の提示し�た単価で合意�
15%�
結果的に甲の�
提示した単価� 甲側から単価を提示し�で合意 0%� た結果,甲の提示した�
単価で合意 47%�
甲乙間で合意した工種ごとの単価を設計変更が生じた場合の変更金額の算定・決定等に利用することで,価格の透明性,説明性の向上といっ
図―7 単価合意の経緯�
実施手順・手法のマニュアル中で,単価合意の目安として発注者積算単価に落札率を掛けた金額の±10%程度として設定していた。こうした中,受注者側は,発注者からの工事費構成書等を参考にして目安の枠内に単価を合わせることを優先さ
た効果も期待される本方式は,基本的にすべての工事に適用可能であり,有効なものであると考えられる。これからも試行を通じて,本方式がより効果的になるよう,改善を加えていくことが重要である。
建設マネジメント技術 2005 年 1 月号 49