Contract
東京、昭63不65、xx不7・72、平5.4.6
命 令 書
申立人 労働組合東京ユニオン
申立人 X
(xxx年不第7号)
被申立人 xx商事株式会社
主 文
1 被申立人xx商事株式会社は、申立人労働組合東京ユニオン所属組合員X 、同A1、同A2、同A3、同A4、同A5および同A6に対して行った次表記載の各懲戒処分がなかったものとして取り扱い、同処分がなければ受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。
被処分者 | 処分年月日 | 処分の内容 |
X | 63年7月4日 | 出勤停止5日 |
〃7月25日 | 出勤停止5日 | |
〃8月15日 | 出勤停止6日 | |
〃9月2日 | 出勤停止6日 | |
〃9月27日 | 出勤停止7日 | |
〃10月21日 | 出勤停止7日 | |
A1 | 〃7月7日 | 出勤停止5日 |
〃7月29日 | 出勤停止5日 | |
〃8月15日 | 出勤停止6日 | |
〃9月2日 | 出勤停止6日 | |
A2 | 63年11月14日 | 出勤停止5日 |
A3 | 出勤停止1日 | |
A4 | ||
A5 | 〃11月15日 | 出勤停止3日 |
A6 |
2 被申立人会社は、申立人Xに対し、次の措置を含め昭和63年12月20日付解
雇処分がなかったものとして取り扱わなければならない。
(1) ビリヤード部門の他の従業員と同じ業務に従事させること。
(2) 解雇の翌日から復帰するまでの間の賃金相当額を支払うこと。
3 被申立人会社は、申立人組合傘下のxx商事支部組合事務所家賃について、62年1月以降63年6月まではその値上分を、63年7月以降は新家賃全額を支払わなければならない。
4 被申立人会社は、
(1) 休憩室および就労場所に関して、申立人組合組合員と非組合員とを分離すること、
(2) 申立人組合の組合掲示板の組合ビラを撤去すること、
(3) 申立人組合のストライキ時における非組合員に対するビラ配布活動および説得活動などを妨害すること、
によって、申立人組合の運営に支配介入してはならない。
5 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル
×80センチメートル(新聞紙2頁大) の大きさの白紙に下記内容を楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の従業員出入口の見易い場所に10日間掲示しなければならない。
労働組合東京ユニオン執行委員長 A7 殿
記
年 月 日
神谷商事株式会社代表取締役 B1
当社が貴組合および貴組合所属組合員らに対して行った下記の行為は、いずれも不当労働行為であるとxxx地方労働委員会で認定されました。
今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
(1) 屋台営業に従事したとしてまた社長室に乱入したなどとして出勤停止処分あるいは解雇処分にしたこと。
(2) xx商事支部組合事務所家賃について、昭和62年1月以降63年6月までの値上分を支払わなかったことおよび63年7月以降の全額の支払いを打ち切ったこと。
(3) 貴組合員と非組合員との休憩室および就労場所を分離したこと、掲示板のビラを撤去したこと並びに貴組合のストライキ時におけるビラ配布活動および説得活動などを妨害したこと。
( 注、年月日は掲示した日を記載すること。)
6 被申立人会社は、前記第1項、第2項、第3項および第5項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。
理 由
第1 認定した事実
1 当事者等
(1) 被申立人xx商事株式会社( 以下「会社」という。)は、肩書地に地上
9階地下2階のビル( 渋谷東口会館、以下「会館」という。)を所有し、ボウリング、ビリヤード等の遊戯場の経営および同ビルの賃貸を業とする会社であり、本件結審時( 平成4年6月) の従業員数は約70名( うち臨時従業員約40名)である。
(2) 申立人労働組合東京ユニオン( 以下後記「支部」を含め「組合」という。)は、主に都内中小企業で働く労働者の個人加盟により組織されている労働組合で、その組合員数は約850名である。
そして、会社には、後記のように昭和54年11月1日、会社従業員で結成された申立外労働組合東京ユニオンxx商事支部(以下「支部」という。)があり、その組合員数は63年当時は約20名であったが、本件結審時には12名( 退職者5名を含む。)である。
なお、組合は、60年9月22日、総評全国一般東京労連北部統一労働組合の名称を総評全国一般東京ユニオンと改め、さらに平成2年9月30日に現在の名称に改めている。それに伴って、上記支部も60年9月22日、xx商事分会の名称を改めて現在に至っている。
(3) 申立人X( 以下「X」という。)は、49年6月、会社が経営していた麻雀部門の臨時従業員として入社し、51年にボウリング部門に配転され、正社員に採用された。同人は、翌52年に副主任に登用された後、イベントホール部門勤務を経て、62年からビリヤード部門に配転されたが、後記経緯により63年12月20日解雇された。
また、同人は55年組合に加入し、56年に分会の副分会長( 支部に名称変更後は副支部長)となり、63年9月17日支部長となった。
2 分会結成から58年までの労使関係
№ | 期 間 | 紛 争 と な っ た 事 項 |
1 | 第1次紛争 55年4月 55年11月 | (1) サウナ部門組合員3名の雇用契約更新打切 (2) (1)についての団体交渉拒否 (3) サウナ部門深夜営業の廃止 (4) いわゆる同意約款の撤回通知 |
54年11月に、会社サウナ部門勤務の臨時従業員6名によりxx商事分会が結成された。以来58年7月までに、会社と組合の間で次の事項を巡って紛争が生じた。これらについて組合は、当委員会に5件の不当労働行為救済申立てを行ったが、いずれも協定書の締結などにより収束し、全ての申立てを取り下げている。
2 | 第2次紛争 56 年4月 58 年7月 | (1) サウナ部門の廃止 (2) 上記同意約款の破棄通告 (3) 57 年度昇給についての団体交渉 (4) 喫茶部門・麻雀部門の廃止 (5) 定年制の実施 |
なお、第2次紛争終結時(58年7月29日)に締結した協定書の中で、会社がワンフロアーを自社営業のために確保し、組合の意見を徴して業種を決める旨の条項( 以下「自社営業拡大条項」という。)を定め、組合と話合いを持ったりしたが、59年6月6日、会社は組合に対し、同条項を解約する旨通知した。
3 59年以降本件申立て時までの労使関係
(1)① 59年1月、B2総務部長兼営業部次長(以下「B2部長」という。)が就任し、B3営業部長(当時、以下「B3部長」という。)との職場巡回が同年2月1日から行われるようになり、約半年間続けられた。
この巡回の目的は、職場実態および営業状況の把握により改善点を発見し、是正することとされていたが、組合は、この巡回を組合員を監視するものと受け止めていた。
②ア 会社は、分会のA8書記長( 以下「A8」という。)が同年2 月14日に上記職場巡回を揶揄、侮蔑する不穏当な言動を行ったとして同人に対し、同月23日付で注意書を交付した。
イ さらに会社は、同年5月25日、職場巡回中、5階事務室でテレビを見ていたA2副分会長( 以下「A2」という。)にB 3部長が「注意」をしたことに対し、A2が侮辱的言辞を弄し、同部長の腹部を殴打したとして、同年6月2日付でA2をxxから降格させる処分をした。
ウ アおよびイに対し、組合は、同年7月2日、会社の処分理由は事実と異なり、B3部長が暴言・暴行を働いたものであるとして、同処分の撤回等を求める不当労働行為救済申立て(昭和59年不第59号、別件係属中)を行った。
(2) B2部長就任後初めての団体交渉は、同年3月8日に行われた。
その席上、会社は、団体交渉議事録は労使双方が作成し、後日突き合わせの上捺印するという提案を行った。これまで議事録は、組合が作成し、団体交渉直後に会社がこれを確認して捺印するという方式であった。同月15日、労使双方は議事録の突き合わせを行ったが議事確認につい
て平行線のまま終わり、双方が捺印する議事録は作成できなかった。 組合は、3月21日の団体交渉において、議事録に代わるものとしてテ
ープレコーダーを使用したが、会社は、組合が無断でテープレコーダーを使ったとして交渉を中断した。こうしたことを契機に、団体交渉は、およそ3年後の62年4月まで行われなくなった。
(3)① 59年7月12日、組合は会社に対し、上記B3部長の暴言・暴行の謝
罪、第2次紛争終結時締結の自社営業拡大条項の解約通知撤回および団交応諾などを求める闘争宣言を行い、再び組合と会社は争議状態(第
3次紛争) に入り、現在も続いている。
② 闘争宣言直後の59年7月から12月にかけて、組合はビラ貼付闘争を行ったが、会社が東京地方裁判所にビラ貼付禁止の仮処分を申請し、同年12月に同裁判所において和解が成立した。ところが会社は、このビラ貼付に対し、およそ2年半後の62年7月7日に至って、損害賠償
(約150万円)を求めて東京地方裁判所に提訴した。
(4) 59年5月末ころ、会社内で連日、組合員のxxxxが無断で開けられたことについて、組合は、B2部長がロッカー使用者以外には知り得ないはずの事柄を知っていたことなどから同部長の仕業であるとして、社内に「B2部長はロッカー荒らしをやめろ」などと書いたビラを貼付したり、同部長に対し「泥棒」などと抗議した。しかし会社は、この組合の抗議にとり立てて反論をしなかった。
(5) 会社は、組合員A6( 以下「A6」という。)に対し、遅番勤務から早番勤務への変更について、59年11月15日一旦認めたが、同月29日になってそれを撤回した。しかしA6は、12月1日から早番として勤務したため、会社は12月分の賃金を支給しなかった。
これに対し組合とA6は、同年12月24日当委員会に「早番勤務とする約束を履行すること」等を求める不当労働行為救済申立て(昭和59年不第89号)を行った。
さらに会社は、60年1月8日付でA6に対し副主任から降格させる処分をし、役付手当10,000円を減給したので、同月16日、組合とA6は、降格処分撤回を求める不当労働行為救済の追加申立てを行った。
この申立てについて、当委員会は平成2年7月31日、全部救済の命令を発した( 現在、中央労働委員会に係属中)。
なお、A6は、当委員会に申立てを行う一方で、東京地裁に降格処分無効確認等の訴えを提起し、その後、平成4年5月25日、最高裁判所上告審で、副主任の地位確認ついては容認された。
(6)① 59年の労使の紛争状況のなかで、組合が求人誌に対し、争議中の求人募集は職業安定法に触れるとの申入れをしたこともあって、会社は、アルバイト募集が求人誌を通じては出来なくなり、縁故募集に頼らなければならなくなった。また会社は、非組合員に対し、アルバイト1人の紹介につき10,000円の手当を支給するなどの方法でアルバイトを集めた。
② 60年3月のストライキ時に、W社から派遣されていたボウリング部門のメカおよびカウンター業務の要員4名が、会社の要請を受けて早出・残業を行った。このことについて組合は、「スト破り」である旨抗議したため、会社は、同年8 月にW社との業務委託契約を解除した。さらに元年2月のストライキ時にも、W社に代わってM社から派遣
された者らが、会社の要請を受けて早出・残業をしたので、組合は再び抗議し、会社は同年3月31日業務委託契約を解除した。
(7)① 会社における昇給と一時金についてみると、昇給は、分会結成当時
( 54年) は月額20,000円であったが、その後は逓減していき57年度には5,000円となった。また、一時金は、57年度まではxxとも100,000円以上であった。
58年度は、第2 次紛争に関する協定書締結の際( 58年7月29日)に、昇給月額4,000円、夏一時金50,000円で会社提案どおり妥結した。このことについて組合は、金額的には不満だが、将来の労使関係を考えて第2次紛争の早期解決を優先させたためであったとしている。さらに同年の冬一時金について会社は、「一律50,000円」を提案し、組合がこれに抗議したところ、会社は社長名で「今回はこの額で我慢をして貰いたい」旨の声明を発表し、結局、60,000円で妥結した。
翌59年組合は、昇給月額15,000円~ 20,000円( 年齢別) を要求したが、会社は、前年の社長声明の趣旨とは異なり、昇給月額は1,000円、夏一時金は一律30,000円と回答した。これについて組合が説明を求めても、会社は、具体的な説明をせず、会社の決定である旨を繰り返すばかりであった。また、前記のとおりテープレコーダーの使用を巡って団体交渉が中断したため妥結に至らなかった。
その後も会社は、毎年度、団体交渉が開催されないまま昇給月額1,000円、夏一時金一律30,000円、冬一時金一律50,000円の回答を文書で行い、組合との間で妥結に至っていない。
一方、非組合員の正社員については、会社が全員を昇格させ、その役付手当によって賃金を補っている。
② 59年以降、A 3副支部長(以下「A3」という。)およびA2 ら5名の組合員は、経済的に堪えられないとしてxx退職した。なお、この
5名は現在も組合員である。
ちなみに、支部組合員数は、第1次紛争終結時には最大の80名であったが、第3次紛争に入った59年には20名となり、本件結審時には会社に在籍する者は、本件および別件で解雇を争っているXおよびA1を含め7名となった。
③ 組合は、昇給・一時金について団体交渉を要求して、61年11月11日から62年1月4日まで連日のように午後2時から5時まで、ストライキを行い、会社正面玄関付近に座り込みを行った。
会社は、組合に対し、座り込みは業務妨害であると再三「抗議および警告書」を発し、61年12月16日付でA3とA4( 以下「A4」という。)を出勤停止1日、X とA2を出勤停止3日の懲戒処分にした。また同月17日付でA6を、19日付でA8をそれぞれ出勤停止3日の懲戒処分にした。
(8)① 62年4月10日、当委員会の仲介により、団交ルールに関する和解協
定および団交時のテープレコーダーの使用に関する覚書が取り交わされた。
同月16日、およそ3年ぶりに団体交渉が再開され、以後同年7月24日までの間に7回開催された。この団体交渉のなかで、前記のとおり59年から未妥結となっている昇給およびxxの一時金について組合は、新たに過去3年間に遡って要求をしたのに対し、会社は、「回答を変える意志はない。」と回答し、また、昇給月額1,000円、夏一時金30,000円、冬一時金50,000円回答について、「諸般の事情を考慮して」、「ゼロというわけにはいかない」などと言うのみで具体的な回答をせず、組合の要求に応じなかった。
② 62年10月14日には団体交渉が予定されていたが、その直前になって会社は、組合側団体交渉メンバーに渋谷地区労議長がいることに異議を唱えたため、この日の団体交渉は開かれなかった。そして会社は、同月16日付で交渉委任状、団交出席者名簿の提出を要求し、組合はこれに応じなかったため、再び団体交渉は開催されなくなった。
③ 会社は、上記団体交渉再開より前の62年1月12日付でA4 に対し、61年12月22日に職場離脱があったとして、出勤停止3日の懲戒処分を行った。
④ 会社は、同年10月20日付でA1 支部長( 当時、以下「A1 」という。)に対し、同年8月22日、9月18日および10月16日の組合集会などにおいて会社秩序を乱し、業務を妨害する行為があったとして、出勤停止
7日の懲戒処分にした。
⑤ 63年1月11日、組合は、上記①~④の会社の対応等について、団体交渉応諾、懲戒処分撤回などを求めて、当委員会に不当労働行為救済申立て(昭和63年不第4号、別件係属中)を行った。
4 組合員と非組合員の分離
(1) テレビカメラの設置
会社は、61年10月ごろ、営業状態の把握、防犯上の必要性から会館内にテレビカメラを、支配人室と事務所にモニターテレビを設置した。さらに62年4月のビリヤード増設にともないテレビカメラを増設し、現在館内17か所にテレビカメラが設置されている。
会社は、このテレビカメラとモニターテレビを使って、組合員と非組合員との接触を見張るようになった。例えば、組合員と非組合員との仕事引継ぎの際、直ちに管理職が8階事務所から降りてきて、仕事以外の話をしないように立ち会ったり、組合員が非組合員に近づくと、直ぐに管理職がその場に駆けつけるという対応が行われていた。
(2) 休憩室の分離〔救済を求める事実( いわゆる「支配介入問題」その1 )〕従来、営業部従業員の休憩室( ロッカー室) は5階にあり、支配人室
とは衝立で仕切られ、組合員も非組合員も一緒に使用していたが、支配人室との仕切りが徐々に移動されて、支配人室が広くなり、休憩室が狭
くなっていった。
この休憩室は約15名で使用していたが、62年に入ると約25名で使用するようになった。会社は、62年2月に休憩室の面積を縮小し支配人室を拡張して、地下2階に休憩室を新設した。そして非組合員である短期臨時従業員( アルバイト)全員をそこへ移し、5階の休憩室には正社員と長期臨時従業員を残した。その結果、5階休憩室は、組合員のほか非組合員のU1人が使用することとなった。
ちなみに、その後Uは、組合が全日ストライキを行った前日、xxx年2月17日、非組合員である短期臨時従業員(アルバイト)に配布されていた封筒入り組合ビラを組合の意思に反して回収したことがあった。また、会社は、防犯上の理由から必要であるとして、地下2階休憩室の前に関係者以外立入り禁止の表示をし、テレビカメラを設置した。なお、拡張された支配人室は、管理職のロッカーや営業用の備品といったものが置かれ、倉庫のように使われていた。
(3) 就労場所の分離〔救済を求める事実( いわゆる「支配介入問題」その
2 )〕
① 62年4月会社は、8階のイベントホールを廃止してビリヤードを増設し、非組合員とXを8階に、6名の組合員を従前どおり5階に配属した。さらに同年7月に8階から6階にビリヤードを移設した際、ビリヤードのB4支配人は、B2部長からの業務命令として、6名の組合員の就労場所は引き続き5階である旨A4に伝えた。
その後、この6名の組合員のうち、4名が次々と退職し、また後記のとおりxxx年3月にA1が解雇されたため、平成2年8月には5階のビリヤード担当はA41人となり、36台を早番の時間帯( 午前10時から午後7時) に1人で担当することとなった。
一方、6階では、正副2人の支配人と常時2人以上の非組合員xxxxxが、フロントと23台のビリヤードを担当していた。
なお、6階にはXも配属されていたが、後記のとおりフロント業務から外されていた。
ところで組合は、62年の春闘では、各職場の適正要員を明示するよう要求したところ、会社の回答は、人員配置については必要に応じて会社が定めるというもので職場の要員を明示するということはなかった。以降、組合は会社に対し、毎年春闘で人員確保の要求をしている。
② 62年12月4日、B3部長は、A6( 3階ボウリング勤務) に対し、以後、3階に支配人かアルバイトが1人でもいるときは4階へ行くように命じた。ちなみに、ボウリング部門では客を先ずフロントのある
3階に入れ、そこが満員になると4階へ入れるので、4階は午後にならないと客がいないのが通常である。
A6は、4階に客がいないときでも行くようにといわれていたので、63年2月23日、4階で待機していたところ、事情を知らないB5総務課
長(以下「B5課長」という。)から「4階にお客もいないのに何サボッているのだ。」と注意された。
5 組合の屋台活動と処分
(1) 屋台活動開始前後の労使関係
組合がいわゆる屋台活動(以下「屋台活動」という。)を開始した( 63年5月9日)前後の労使関係は、次のような状況であった。
① 後記経緯のとおり、会社は、支部組合事務所の家賃について、62年
1月分よりその値上分についての支払いを拒否した。
また、前記のとおり、59年のビラ貼付闘争が同年12月に和解したにもかかわらず、会社は、62年7月になってこのビラ貼付について、組合に損害賠償(約150万円) を求めて東京地方裁判所に提訴した。
さらに、59年以降の昇給・一時金は、団体交渉が開催されないこともあって未妥結のまま推移してきている。
このような状況の中で、63年3月12日、組合は会社に対し、昇給は59
~ 61各年度は平均10,000円、62年度は平均17,000円を遡って支給するよう求めるとともに、今年度昇給額平均30,000円のほか8項目( 要員確保など) の要求書を提出した。
これに対し会社は、同月24日、昇給については過年度分は回答(毎年度1,000円)を変更する意思はなく、今年度分も昇給月額一律1,000円、その他の要求については「現行どおり」「必要に応じて会社が定める」などと文書で回答した。そしてこれら昇給などについて前年までと同様、団体交渉は行われず、妥結に至っていない。
② 屋台活動開始後の63年6月14日、組合は会社に対し、63年度夏一時金3か月分とともに59~ 61各年度は年間1.75か月分、62年度は年間6か月分を要求した。
これに対し会社は、同月18日、63年度夏一時金は前年までと同様一律30,000円、過年度分は回答を変更する意思はない旨回答した。
(2) 組合の屋台活動
① 組合は、63年5月9日、N社から屋台を借り受け、会社正面玄関前歩道上において、焼鳥、酒類などを販売する屋台活動を開始した。組合はこの屋台活動について、会社との争議の情宣が主な目的であるとしている。
この屋台は、リヤカーの上に取り付けられ、その周りに客用の丸椅子約10個を置き、プロパンガス、食器類、ポリバケツ、焼鳥材料などを備え、看板用提灯、暖簾などとともに組合旗を掲げ、組合情宣ビラを置いている。屋台活動の準備は、午後3時ごろから組合事務所で手の空いている組合員が行い、販売は午後6時ごろから始まり、終りは午前0時ごろに及ぶこともあり、休日や雨天の日を除きほとんど連日行われた。ちなみに、周辺には、組合の屋台のほかにラーメンやおでんの屋台が営業しており、また本件屋台開始後の会社に出入りする客
の数は、開始前に比べて減少した事実はない。
そして組合は、屋台において客に飲食を提供し、xx商事の争議について訴える活動をしている。また、組合は、組合の各支部や渋谷地区内の他組合に出向いて、争議についての訴えをするとともにカンパを受け、その返礼として額面1,000円と表示された「ユニオン屋台割引券」を渡し、同割引券を持って屋台に来る他組合の組合員に対し、さらに争議について訴える活動も行った。
組合は、屋台販売やカンパなどにより得た収入を、「xx商事支部屋台部」の銀行口座に入れ、支部組合員のストライキや出勤停止処分による賃金カット分、未妥結の昇給・一時金分、支部組合事務所家賃分などの一部に補填している。
② 屋台活動は、Xが中心となり、支部組合員らがこれを補助する形で行っていた。このXの会社における勤務時間は、午前10時から午後7時(休憩は12時から1時)までであって、業務内容は次のようなものであった。
Xは、従前8階イベントホールに勤務していたが、62年4月24日から同イベントホールがビリヤード場に変更された際にB3部長の業務命令により、8階のビリヤードのトイレとフロアー全体の清掃、ゴミ集め、チョーク削り、キューの修理およびタップの調整を1人で行うこととなった。これらの業務のうち、午前中は清掃を行い、午後はフロントから離れたゲームコーナーの隅に設けられた専用の机でチョーク削り、キューの修理およびタップの調整を行った。他方、フロント業務については、Xが与えられた仕事を終えて待機している時にも、会社はXをフロント業務に就かせることはなかった。例えば、フロントの従業員が所用でフロントを離れるとき、他の部署からB6人事課長(以下「B6課長」という。)やボウリング場付きのアルバイトを廻してフロント業務に就かせた。また、Xがアルバイトにトイレ掃除を頼んだとき、それを見ていたB2部長は、X1人でやるよう命じたことがあり、さらに、同人が公休の翌日には2日分のチョーク削りを行い、喉が痛く手もだるくなるなどのこともあった。
なお、従前は、清掃やキューの修理などは従業員が手分けをして行っており、Xが解雇処分された( 63年12月20日)後は、キューの修理などは従業員が手分けをして、それもフロントの中で行い、清掃は業者に委託している。
③ 次に、Xのストライキの状況についてみると、屋台活動を始めた63年5月9日から同月13日まで全日にわたる指名スト(5月11日は全員ストライキ)を行い、以降は午前中指名ストをし、午後就労して、夕方からまた指名ストというパターンが多かった。
解雇処分が取り沙汰された同年11月に入ると、全日にわたる指名ストが多くなり、同年12月には、同月12日を除き全日にわたる指名スト
が解雇の日まで続いた。その結果、同人が、63年5月9日から同年12月19日(解雇の前日) までの就労日に、xxの勤務時間どおりに就労したのは11日となっている。
なお、Xは従前より1時間~全日のストライキ(指名ストを含む。)を頻繁に行っており、本件屋台活動開始直前の63年4月の1か月についてみると、組合会議、当委員会および裁判所などへ出席するため全就労時間の約40% がストライキであった。
そして組合は、X の指名ストの都度、「会社の一連の組合つぶしに抗議し」と記した「ストライキ通告書」で通知し、これに対し会社は、何ら問題にすることなく受け取っていた。
(3) 社xxの使用
① 63年5月24日、会社は、会社隣の喫茶店Tとの境界の細長い空き地
( 入口は、施錠してある。)に、屋台の丸椅子11脚があったので、これを別の場所に保管した。会社が、Xを呼んで事情を聞くと、これについて同人は、喫茶店から鍵を借り受け、これを複製して錠を開け、屋台の丸椅子を入れたが、かつてストライキの終了後、煙草の吸殻等を掃除する道具を入れたこともあったので使っても構わないと思った旨答えて、鍵を会社に返した。これに対し会社は、「あの土地には、火事などに備えて、何も置かないことを隣の喫茶店と約束しているので使用しないように」とXに注意した。
② 同月26日、会社は組合に対し、丸椅子を社xxに置いたことや、鍵の複製などについて不法行為であるとして謝罪を求め、謝罪があった場合に丸椅子を返却する旨文書で通告した。
(4) 「xx商事支部屋台部」の設置
① Xは、屋台の収入を管理するために住友銀行に口座を設け、銀行からの書類等の送付先を同人の就労場所である会社の東口会館6階にした。
そして63年6月22日、会社に住友銀行から、住所を会社の東口会館
6階とする「カミヤショウジ シブ ヤタイブ X」あての書留が届いた。
これについて会社は、同月25日、組合あてに「カミヤショウジ シブ」の「ヤタイブ」なる機関を、会社施設内に無断で設置したことは、不当不法な行為であるとして「抗議および警告書」を発した。さらに同月28日、会社は、Xを呼んで名前が異なっていたので同人のものか確認し、会社が屋台をやっていると誤解されること、また無断で会社内にそのような機関を設けないよう注意した。
なお、これまで会社に届いた支部あて郵便物については、会社は何ら問題にすることなく組合に渡していた。
② 同年11月17日、A 9本部書記長(以下「A9 」または「A9 書記長」という。) は、住友銀行がXの名「X」を「X ’」と名義を間違えたこ
とについて会社に説明するため、同銀行の行員を伴って会社の8階事務所を訪ねた際、B2部長が外に出るように言いながらA9を押した弾みで、A9は机にぶつかり脚を痛めた。
(5) 屋台活動に対する会社の対応と処分〔救済を求める事実(処分その1 )〕
①ア 63年5月28日、会社は組合に対し、「焼鳥屋台営業は、会社の許可なくして行った不当な行為であり・・・速やかにやめる」こと、支部組合事務所を「会社の許可なく・・・不当な・・・焼鳥営業の材料の仕込みや資材等の準備場所として使用」していることについて
「抗議および警告書」を発した。
その後も会社は、組合およびXに対し、同年6 月25日までおよそ10回にわたり、会社の許可なく屋台営業をしていること、隣の喫茶店との境界の社xxを無断で使用したこと、会社にxx商事支部屋台部なる機関を設置したことなどについて抗議および警告をした。
イ これに対し組合は、同年7月1日、屋台はN社が所有し、同社との契約により組合活動に使用しているのであって、屋台活動は、団結強化を目的とする行商などと同様の行為で、誰に担当させるかは会社の許可を要するものではない旨および何が不当な行為に当たるのか釈明を求める旨の「申入書」を会社に提出した。
② 会社が加盟しているxx商店街振興組合では、商店街クリーン作戦の一環として、屋台等を排除することを申し合わせていたが、会社の社長が役員をしている同振興組合の役員会において、他の役員から、会社が焼鳥屋台をやっていると誤解され、釈明に苦慮したという経緯がある。
③ア 会社はXに対し、再三にわたる警告にもかかわらず、同人が「屋台営業」を行い、社xxを無断使用したのは、就業規則第29条に定める「二重就職の制限」、同規則第33条(6)に定める「会社施設の私的利用禁止」に違反しているとして、またその後も引き続き、同人が、「屋台営業」を行い、屋台部なる機関を無断で社内に設置したのは、就業規則第29条に定める「二重就職の制限」、同規則第30条(3)に定める「越権して専断的行為の禁止」に違反しているとして、次表のとおりの懲戒処分を行った。
処分年月日 | 処分の内容 | 処分理由 |
63年7月4日 | 出勤停止5日 | 屋台活動 会社施設無断占有 |
〃7月25日 | 出勤停止5日 | 屋台活動継続 屋台部無断設置 |
〃8月15日 | 出勤停止6日 | 屋台活動継続 屋台部無断設置継続 |
〃9月2日 | 出勤停止6日 |
〃9月27日 | 出勤停止7日 | |
〃10月21日 | 出勤停止7日 |
なお、出勤停止処分の限度は就業規則により7日間である。
さらに会社は、同人を後記のとおり同年12月20日付普通解雇処分にした。
処分年月日 | 処分の内容 | 処分理由 |
63年7月7日 | 出勤停止5日 | 屋台活動 (機関責任) |
〃7月29日 | 出勤停止5日 | 屋台活動継続 屋台部無断設置 (ともに機関責任) |
〃8月15日 | 出勤停止6日 | 屋台活動継続 屋台部無断設置継続 (ともに機関責任) |
〃9月2日 | 出勤停止6日 |
イ また、会社はA1に対し、再三にわたる警告にもかかわらず、同人がXをして「屋台営業」を行わせたとして、支部長としての機関責任を問い、またその後も引き続き「屋台営業」をさせ、屋台部なる機関を無断で社内に設置させたとして、会社は次表のとおりの懲戒処分を行った。
さらに会社は、同人を後記のとおり翌元年3月24日付普通解雇処分にした( 平成2年不第9号、別件係属中)。
(6) 屋台撤去の警告書など
xxx年2月3日および同月21日、渋谷警察署と都第三建設事務所(当時)の連名で屋台撤去の警告書が屋台に貼付された。次いで翌2年3月15日、渋谷警察署名で、さらに翌3年11月22日および12月20日、xx警察署と都第七建設事務所の連名で、即時撤去の命令文がそれぞれ屋台に貼付された。
そして3年12月25日に屋台は撤去され、xx警察署および都第七建設事務所の連名で、同事務所に保管されている旨、路上にチョークで記されてあった。これは、屋台の車輪のチューブが何者かによって切られ、動かせなくなったので、放置物件として撤去されたものであった。
組合は、同事務所から屋台を受け取り、翌4年1月17日から、会社玄関前で屋台活動を再開した。
平成4年3月には渋谷警察署長と都第七建設事務所長との連名で、屋台を禁止する旨の看板4枚が屋台周辺に立てられた。
この看板については、xx商店街振興組合、xxおよび会社が渋谷署に屋台等の対策を要請したことによるもので、文案は渋谷署が決め、作成・設置は同振興組合が行うこととなった。そして、会社の紹介による A社が看板の作成・設置の作業を請負い、設置には渋谷署は立ち会わず、
会社のB6課長と同振興組合役員2名( 1名は町会長の兼務) が立ち会った。ちなみに、A社は、会社ビルの地下2階に入居し、会社の正面玄関改装工事を請け負った業者である。
6 63年10月24日の社長室「乱入」事件などと処分〔救済を求める事実( 処分その2 )〕
(1) 渋谷地区労議長の出席を巡って62年10月14日から中断していた団体交渉が、63年10月22日、1年ぶりに開催された。しかし、この団体交渉においても、組合が59年に遡って賃上げおよび一時金の増額要求をしたが、会社は、「過去のものは終わっている。回答を変えるつもりはない。」と従前の団交態度を崩さなかった。次回団交開催日について会社が同月24日に回答するということで、その日の団体交渉は終了した。
10月24日午後2時20分ごろ、組合は、飯田橋での「求人誌規制対策会議」の集会に参加するため、3時からストライキに入ることを会社に通告した。B6課長から組合のスト通告を聞いたB2部長は、当日が次回団体交渉期日の回答日になっていたことから、5階にいる組合員に電話をし、それを受けてA1は8階事務所のB2部長のところに行った。他方、他の組合員は、集会に出発するため5階に集合して来た。
5階の集合場所に現れたA9書記長は、「団交議事録について」の申入書とXに対する前記屋台活動についての懲戒処分に対する抗議書を持ち、社長か副社長に会って、これからの団体交渉に出席を依頼するため9階社長室へ行くと言いだした。同行したX、A6、A4、A2、A5(以下「A5」という。)、A3ら組合員6名は社長室の外室で待ち、A 91 人が社長室の中扉をノックして入室し、B 7副社長(以下「B 7副社長」という。)に申入れがある旨を伝えたが、同副社長は8 階事務所に行くようにと答え、文書受取を拒否した(なお、この種の抗議書や申入書は、これまでは8階事務所で手渡すのが通常であった。)。
B7副社長は、電話で8階事務所にA9が社長室にきている旨連絡し、やがてB8総務部次長(以下「B8次長」という。)、B 2部長らが社長室に入室した。そこで、「申入れがある」とする組合員側と退去を命じる会社側とで中扉周りで揉み合いとなったが、結局組合員らは社長室に入った。そして後から入ったA1がB7副社長に、争議解決に向けて話合いをしてくれるよう土下座をして懇願した。A1の意外な行動に皆が驚いていると、A4がB9常務の机の上に、2種類の組合ビラがあるのを見つけた。そのビラは、求人誌法規制会議用のビラと「支部ニュース」で、前者は関係組合に、後者は支部組合員だけに配布したものであった。
(2) 組合は、59年5月末の「ロッカー荒らし」事件( 前記3(4))以降、ビラ等組合資料の管理を厳重にしていたため、これは会社が盗んだのではないかと考え、入手経路を追求したが、会社側は言う必要ないなどと答えた。
このためA9は、警察に調べてもらうと言いながら社長の机の電話を
取ろうとしたが、B7副社長らに阻止され、それがきっかけで組合員らと会社側との間で揉み合いとなり、社長室内は喧騒となった。
午後3時30分ごろ、A9は、社長室を出て8階から110番電話をし、会社側も、B8次長がxx警察署に電話した。やがて到着した渋谷署の署員から組合側と会社側は、それぞれ事情聴取を受け、円満に解決するように言われた。
(3) 会社は、社長室「乱入」について翌25日、組合に対し抗議書を発した。25日午後5時から、組合はストライキに入り、A2、A6、A5、A4、 A3らは、およそ10分間にわたり、8階事務所に行き、24日の件についての「申入書」を読み上げた後、階段を使って2階までデモ行進をした。また、翌26日、前日同様、組合は午後5時からストライキに入り、同 人らは、およそ10分間にわたり、8階事務所に行き、24日の件についての「申入書」を読み上げた後、階段を使って2階までデモ行進をした。
(4) 会社は、この社長室「乱入」に加えて10月25日午後5時ごろおよび翌26日午後6時ごろ8階事務所から2階まで大声を上げて行進して業務を妨害したなどとして、同年11月14日付で、A2を出勤停止5日、A3とA
4については、それぞれ出勤停止1日の懲戒処分にし、また11月15日付でA5とA6を出勤停止3日の懲戒処分にした。
(5) 会社は、63年11月上旬の役員会でXを解雇することを決定し、同年11月7日、組合に対し同人の解雇についての団体交渉を申し入れた。組合は、同月16日に団体交渉を開催することを回答したが、その前日になってA9書記長の都合がつかなくなり、延期の申出をした。
11月24日、A9は会社に対し、10月24日の社長室での会社管理職の組合員に対する暴行事件および11月17日の前記B2部長の暴行について謝罪を求め、謝罪しなければ、Xの解雇の件についての団体交渉には応じないと言った。また、A9は、Xの解雇の件だけでなく、争議全体についても議題にするよう要求した。結局、団体交渉は行われず、会社は、同年12月13日までにX解雇について組合の意見を出すよう申し入れたが、組合からの回答はなかった。
同年12月13日、会社はXに対し、同月15日に出社するよう通知し、再度、17日には出社するよう通知をしたが、Xはいずれも応じなかった。そして会社は、Xが屋台営業を行い、屋台部なる機関を無断で社内に 設置したことおよび10月24日の社長室乱入事件において組合員の先頭に立って乱入し、会社幹部社員に暴行したとして、このことが就業規則第
4条、同第26条、同第29条、同第30条(3)(7)、同第31条(1)(9)(1)および同第33条(6)に違反するとの理由から、Xを17日付文書( 内容証明郵便) をもって12月20日付普通解雇処分にした。
さらに会社は、A1に対しても、xxx年3月24日付普通解雇処分にし、これに対し組合とA1は、当委員会に不当労働行為救済申立て(平成2年不第9号、別件係属中)を行った。
なお、会社の就業規則( 抜粋)は、次のとおりである。
( 遵守義務)
第4条 従業員は、職務上の責任を自覚し、誠実にこの規則ならびに関係諸規定を遵守し、所属上長、又は所属長の指示に従い、職場の秩序を保持し、互いに協力して、その職務を遂行しなければならない。
( 基本的心得)
第26条 従業員は、この規則並びにその他の諸規定及び業務上の命令を遵守し、職場の風紀秩序の維持に努め、xx活発で誠実な勤務を旨として業務を遂行しなければならない。
( 二重就職等の制限)
第29条 所属上長の命令又は、許可を受けないで在籍のまま他の事業に従事したり又は、その他の業務、公職に服したりしてはならない。
( 服務心得)
第30条(3) 自己の業務上の権限を超えて専断的なことを行わないこと。
(7) 会社の諸規則、諸規定に反する行為、及び所属上長、所属長の指示に反する行為をしないこと。
( 社内秩序保持)
第31条(1) 会社の善良な習慣を破り、行事を妨げ、若しくは業務を直接、間接を問わず阻害する行為をしないこと。
(9) 会社構内で、みだりに放歌をする等、喧騒な行為をしないこと。
(10) 会社構内で、窃盗、暴行、脅迫、賭博、監禁等の不法行為、並びに公序良俗に反する行為をしないこと。
( 勤務規律)
第33条(6) 従業員は、就業時間中はもちろん、それ以外の時間であっても、自己の勤務場所以外の場所に正当な事由なく立ち入ってはならない。
又、会社の施設を私用に利用しないこと。
7 情宣活動の妨害〔救済を求める事実( いわゆる「支配介入問題」その3 )〕組合は、前記会社の各処分に抗議するためxxx年2月18日から一斉ス
トライキを含む闘争に入ることを決めた。
(1) ストライキ時の非組合員に対する説得活動の妨害
① 組合は、xxx年2月18日以降、断続的に一斉ストライキに入り、ストライキ当日はタイムカードのある2階入口付近で、出退勤してくる非組合員に対して協力を求めるなどのいわゆる説得活動を行った。これに対し会社は、前記テレビカメラで組合員の行動を知ると管理職が直ちに説得活動の現場に現れて、組合員と非組合員との間に割って入ったり、ビラの回収を行ったりした。
また、会社は、組合員と接触させないように非組合員の出退勤に付
添ったり、車で送迎したこともあった。
② 元年6月には、会社は、従来2階裏の従業員出入口にあったタイムカードのうち、非組合員であってアルバイトの分を6階ビリヤードフロント内に移し、タイムカードホルダーで名前を遮蔽することも行った。
このため組合は、一斉ストライキ時の説得活動の場所を、1階正面玄関前や就業中の館内に移したが、これまでと同様会社管理職らが組合員と非組合員との間に割って入り、ときには非組合員の腕をとって、連れて行くこともあった。
③ア 同年6月30日、組合は会社に対し、過去6 年間にわたる昇給1,000円、夏一時金30,000円、冬一時金50,000円の会社回答などに抗議し、
7月1日からの無期限ストライキを通告した。
このストライキは7月末まで続き、この間、組合は出退勤の非組合員に対し説得活動を続けたが、会社管理職らは、これら組合の活動に際し、前記のような割り込むなどの行動をとったため、組合員と会社管理職との間で、7月1日には6件、同月2日には2件、3日には3件、8日、9日にはそれぞれ1件、12日には2件、15日、30日にはそれぞれ1件の掴み合いや揉み合いが生じた。
イ 7月2日、会社裏の路上において、ビラ配布をしていた組合員の中にB2部長とB5課長が割って入り、B5課長が本部組合員A10に対し「邪魔だ、退け、」「A 10、あんまり張り切るんじゃないぞ」といって体当たりした。
ウ 7月3日、会社4階通路において、B5課長は、組合員らに対し
「てめえらみんなクビにするからな」「いつまでもストなんかやってんじゃねえよ」と言った。
エ この頃、X0が新しく入ったアルバイトに対し、自己紹介をして名前を尋ねるとそのアルバイトは、「会社から組合員に名前をいうなといわれている」と返事した。
④ アルバイトDの採用面接の際、B5課長は「うちの組合は乱暴なので気を付けて欲しい、ストライキ中など君達にちょっかいをしてくるが、無視して取り合わないように」といった。そして、就労初日の元年8月15日にDは、ボウリングの支配人から「うちの組合は、暴力的で困る。組合には住所、氏名を教えるな」といわれた。
(2) 組合掲示板からのビラ撤去
xxx年3月組合は、「勤務希望の方へ」「来館の皆様へ」などと題する後記内容のビラを組合掲示板に貼った。
これに対し会社は、3月11日に「このビラは、事実に反し、掲示板貸与協定(56年1月23日協定) 違反なので撤去するよう」組合に通告し、
4月21日にも重ねて撤去を求め、同月25日までに撤去しなければ会社が撤去する旨通告した。しかし、組合はこれに応じなかった。
5月8日、何者かにより組合掲示板から組合のビラが剥がされた。組合は、同月24日、会社に対し、勝手に組合ビラを組合掲示板から取り外すことは、同掲示板貸与協定に定めはなく、もし取り外したならば協定違反である旨の抗議文書を発した。
ところが、6月12日にはB8次長が、7月7日および12日にはB5課長が、組合掲示板から「勤務希望の方へ」と「来館の皆様へ」というビラを剥がした。
「勤務希望の方へ」と題するビラの内容は「xx商事㈱では傷害暴行事件や職安法違反、労組法違反や不当解雇等多くの事件により争議中です。各新聞社、リクルートや学生援護会など求人関係機関はxx商事㈱への求人は一切中止し、禁止されています。不当な手段で応募したり求人の紹介等を行った場合は職安法違反、労組法違反でその責任の追求を受け損害の請求を受ける場合がありますから右警告します。」という文面であり、「来館の皆様へ」の内容は、「渋谷東口会館はxx商事㈱が所有しており、労使間で自社営業の拡大に努める旨の確認をしています。当労組は労組法違反につながる業務委託やテナント化について許していません。不当解雇など争議中の現在、新たな業務委託やテナント入居に類する行為で介入し当組合の要求を阻害した場合は労組法違反や詐害行為等としてその損害について請求や直ちに退館を要求することがあるから事前に警告します。」という文面であった。
この掲示板は、2階の会社裏口( 従業員出入口) 近くの階段口の側にあり、あまり一般客の目には触れない所にある。
掲示板貸与協定には、「以下の基準を遵守する。会社はこれに反する掲示については撤去を要求できる。掲示物は、組合活動のために限定する。掲示の内容については事実のみを掲示し、個人を誹謗したり、中傷にわたるものは掲示しない。(以下省略)」とある。
なお、58年7月29日付和解協定中の自社営業拡大条項は、61年11月27日、東京地裁における和解の成立により、解約したことが確認されている。また、ボウリングのメカおよびフロント要員を派遣していたM社との業務委託契約を元年3月末日で解約するとの通知を会社から受けた組合は、同年3月4日、会社に対し「自社営業の拡大を要求します。・・・また自社営業を前提として当組合としても業種に対し提案を行う用意がある。」と要求している。
8 支部組合事務所家賃の値上げ分不払いと打切りについて〔救済を求める事実〕
(1) 会社と組合は、第1次紛争終結に際して、組合事務所の供与についての交渉を行い、その設置場所について組合は社内を、会社は社外をそれぞれ主張したが、55年11月17日に締結した第1次紛争全体に関する協定書第3項で「会社は分会に対し、社外に最小限度の広さの組合事務所の設置使用の便宜をはかる。但し敷金礼金及び家賃は会社が負担するもの
とする。なお外線電話1台の設置及び最少限度の備品の購入費用は会社で負担する。電話料其他の諸経費は分会で負担する。」と定めた(以下「55年11月協定」という。)。
その後、組合事務所設置についての事務折衝の中で、会社は、会社名義で借り上げて組合に転貸する旨の意向を示したが、結局、転貸に伴うトラブルを防ぐため、組合が翌56年1月13日、会社からおよそ500メートル離れたビルの一室( 25平方メートル) を期間2年、家賃月額85,000円などを契約の内容として直接借り受けることになった。そして同日、組合と会社は「組合事務所に関する協定」(以下「56年1 月協定」という。)を締結した。
その内容(抜粋) は次のとおりである。
第1 条 会社は組合が分会の事務所として借りた事務所家賃として月額85,000円を限度として月末までに分会に支払う。
第2条 会社は組合が事務所を賃借するについて組合及び分会に対して賃貸借契約時の礼金を支払い敷金を貸付ける。敷金は賃貸借契約終了と同時に返済する。
第3条 事務所にかかる管理費・電話料・電気・ガス・水道その他の費用は一切組合が負担する。
第4条 会社は分会に対し事務所の備品として下記の物品を貸与する。
( 中略)
第7条 この協定書の有効期間は賃貸借同時の昭和56年1月13日から昭和58年1月12日までとする。
なお、この協定には更新料についての定めはない。
(2) 第2次紛争中の58年1月、会社と組合とが喫茶・麻雀部門の廃止と定年制を巡って対立状態にある中で、組合事務所賃貸契約の更新の時期を迎え、家賃は90,720円に値上げされた。会社は、上記協定が失効していることを理由に、従前の85,000円については労使慣行を尊重し支払うとしたが、値上分についての支払いは拒否した。
(3) 58年7月29日、第2次紛争について和解協定が締結され、その協定の第5項において、「家賃については90,720円に値上げする。但し、支払いは解決したその日より支払う。」と定められ、会社から組合に解決金335万円が支払われた。組合は、この解決金には58年1月から同年7月までの組合事務所家賃の差額を含むと理解しているが、会社は、家賃差額は含まず、35万円という端数があるとおり和解協定の中の定年制実施に伴う厚生年金負担分を含めるという趣旨であるとしている。
(4) 60年1月13日、組合事務所家賃は95,720円に値上げされた。組合が家賃値上げに伴う新家賃を督促したのに対して、 会社は、 同年2月1日、95,720円を支払う旨回答したが、これは協約ではなく労使慣行を確認するものであると付言した。
(5) 組合は、昇給・一時金について団体交渉を要求して、61年11月11日か
ら62年1月4日まで連日のようにストライキを行い、会社正面玄関付近に座り込んだ。会社は、組合に対し、座り込みは業務妨害であると再三
「抗議および警告書」を発し、6名の組合員を出勤停止処分にした。 このように労使が激しく対立した62 年1月13 日、組合事務所家賃
が112,710円に値上げされると、組合の家賃支払い要求に対し、会社は、これまでどおりの95,720円を支払う旨回答し、値上分差額の支払いを拒否した。
組合は、新家賃による会社負担を要求して、62年2月分から63年1月分まで、会社が提示する月額95,720円の受取を拒否した。
この間、組合は、再三新家賃による差額負担を要求し、会社が家賃差額を支払わないのは、組合の弱体化を目指す策動であるとして会社に抗議した。
また、組合は、月額95,720円の範囲で新たな組合事務所を探すことについて提案したが、会社は、「合意しない。」と拒否の回答をした。
(6) 組合は、63年1 月26日、旧家賃による月額95,720円を62年2 月分から63年1月分まで一括して受領した。ところが同月29日、会社は、組合事務所の郵便受けが「CU東京ユニオン」と表示されていることについて、協定に違反し、使用範囲を逸脱して使用しているので直ちに止めるよう申し入れるとともに、会社の家賃負担額を変更する意思のないことを伝えた。その後組合は、xx商事支部名に表示を変えた。
(7) 組合が会社玄関前で、屋台活動を始めると、会社は63年5月28日、6月11日および同月18日、組合事務所を屋台の準備のために使用してはならない旨、組合に対し抗議と警告を行った。
同月25日会社は、7月1日以降も組合事務所を屋台の準備のために使用した場合は、組合事務所家賃会社負担額の支払いを打ち切る旨、組合に通告した。しかし、組合が、屋台活動はもとより屋台の準備も止めなかったので、7月4日会社は、7月分からの家賃負担額の支払いを打ち切る旨組合に通告した。このように62年1月から支部組合事務所家賃値上分の支払いを拒否していたのに続き、家賃支払いそのものを打ち切った。
なお、その後支部組合事務所家賃は、xxx年1 月から120,000円になり、平成3年1月からは133,000円となった。
第2 判 断
1 組合員と非組合員との分離等について〔いわゆる「支配介入問題」その
1~3〕
(1) 当事者の主張
① 申立人の主張
会社は、62年頃から現在まで、従業員休憩室および就労場所( フロア)について組合員と非組合員とを分離し、組合員が非組合員に接触できないようにしている。
また、会社は、xxx年2月から7月に行なわれたストライキ時を中心に、組合の非組合員に対する情宣・説得活動を妨害する目的で、次のような言動を行った。
ア 組合員と非組合員との間に割って入ったり、ビラを回収したりした。
イ 非組合員を社用車で送迎した。
ウ 非組合員のタイムカードを2階から6階に移設した。
エ 7月に、ほぼ連日にわたり、管理職が組合員に対して暴言・暴行を行った。
オ 管理職が非組合員に対し、組合員と話をしないよう言うなどの反組合的言辞を行った。
カ 組合掲示板に貼付した組合文書を実力で撤去した。
これら会社の休憩室、就労場所の分離および各言動は、いずれも組合員と非組合員との分断を狙って非組合員の組合加入を阻止し、組合活動を妨害することにより、組合の弱体化を狙った明白な不当労働行為である。
② 被申立人の主張
従業員休憩室は、アルバイト従業員の増加により既存の休憩室では収容不可能となったために増設し、地下2階をアルバイト専用としたものであり、従業員就労場所の指定については、同人らに何ら不利益を課するものでなく、従来からの取扱いに基づき必要に応じて行ったものである。
また、アルバイト従業員のタイムカード設置場所の変更、社用車によるアルバイト従業員の送迎は、組合員の嫌がらせや恫喝行為を恐れたアルバイト従業員等の退職により、業務に著しい支障が生じることを防ぐために行った当然の措置である。
なお、会社が非組合員に対し、組合員と接触しないように指示した事実はない。
会社は、組合が組合掲示板に「掲示板貸与に関する協定」に反する内容の掲示物を掲示したため、組合に撤去するよう文書で申入れ、再三にわたり警告したが組合がこれに応じないため、自力撤去を行い同掲示物を保管した。
会社管理職らが、暴言・暴行を行ったことはない。逆に、就業中のアルバイトらにビラ受取を強要し、恫喝した組合員らに注意した管理職らが同組合員らから暴行を受けたり、アルバイトらを乗せた社用車の発進を妨害した組合員らを止むなく排除したことはあるが、これら組合員の行為は、ビラ配布に藉口して会社業務を妨害するもので、組合活動の正当性を超えることは明らかであり、会社の自衛行為が非難されるいわれは些かもない。
(2) 当委員会の判断
① 組合員と非組合員の分離ア 休憩室の分離
会社が従業員の増加に伴う休憩室の狭隘化により、休憩室を一室増設し、正社員とアルバイトとに分けて使用させたことにはxx正当性が認められる。しかし、休憩室を狭くしてまでも支配人室を拡張したことには、その後の支配人室の利用状況をみても必然性は見い出せない。また、2つの休憩室への人員の割り振りについても、通常考えられる部門( ビリヤードとボウリング)別などの方法をとらず、敢えて組合員と非組合員とに分ける方法をとっている(第1 、
4(2))ことは、後記判断の就労場所の分離と併せ考えると、会社による休憩室の増設および人員の割り振りには、組合員と非組合員を別々にすることによって組合員が非組合員に接触できないようにする意図があったと認められる。
イ 就労場所の分離
ビリヤード部門の就労場所についてみると、会社は62年4月のビリヤード増設時に、5階に組合員のみ6名を配置した。
その後xx組合員が退職し、平成2年8月に同階の勤務者がA4
1人になっても、組合の要求にもかかわらず会社は人員の補充をしていない( 第1、4(3)① )。
また、ボウリングの就労場所についても、会社はA6に対し、3階に支配人かアルバイトが1人でもいるときは4階に行くよう命じている(第1、4(3)④前段)が、これはB5課長の「4階にお客もいないのに何サボッているのだ」との注意発言( 同後段)からも判るように業務上の合理性がないものである。
このような実情からすると、従来の取扱いに基づき必要に応じて人員を配置している旨の会社主張は認められず、結局、上記休憩室の分離と同様、就労場所においても組合員と非組合員とが接触しないよう配置したものと判断せざるをえない。
② 説得活動、情宣活動の妨害
ア 会社は、xxx年2月から始まった組合のストライキ時において、アルバイト従業員のタイムカード設置場所を変更したことなどは、組合員らがアルバイト従業員に対して嫌がらせや恫喝行為を行った故であると主張する。
しかし、組合が入口付近で行った説得活動は、物理的、肉体的行為を伴うものではなく、争議中の言論の許される範囲内のものと認められる。これに対し会社役職者らは、組合が説得活動を始めるとその現場に直ちに現れて、組合員と非組合員との間に割って入ったり、ビラを回収し、非組合員の出退勤に付添い、車で送迎し、また会社がタイムカードを6階に移設するなどした。これらの各行為(第
1、7(1)①②) は、B5課長の「てめえらみんなクビにするから
な」「いつまでもストなんかやってんじゃねえよ」などの発言(第
1、7(1)③イウ)を併せ考えると、組合が主張するように会社役職者らによる暴力行為があったとまではいえないが、過剰な自衛行為であり、組合の非組合員への説得活動に対する支配介入と判断せざるをえない。
また、会社管理職の発言(第1、7(1)④ ) についても組合活動に対する介入といわざるをえない。
イ 組合が組合掲示板に貼付したビラの内容( 第1、7(2))には、必ずしも正確でない表現の部分( 例えば、かつて自社営業の拡大につき労使間で協定が締結された経緯はあるがその後解約され、現在組合は要求をしているにすぎないのに「自社営業の拡大に努める旨確認をしています」と表示している。)もあるが、総じて見れば組合の意見表明にすぎず、掲示板貸与協定にいう事実に反し誹謗中傷に当たるとする会社主張は採用できない。
従って、会社のビラ撤去には理由がなく、組合の運営に対する介入とみざるをえない。
③ 以上、会社が休憩室および就労場所に関し組合員と非組合員とを分離したこと、また、ストライキ時に組合の非組合員に対する説得活動を妨害したことおよび組合掲示板からビラを撤去したことは、いずれも組合の組織運営に対する支配介入に当たる。
2 屋台活動および「乱入」事件などによる15件の懲戒処分とXの解雇処分
(1) 当事者の主張
① 申立人の主張
ア 屋台活動について
59年以降組合と会社は争議状態に突入し、実質的な団交も開かれず、会社は毎年昇給1,000円回答などの極端な低額回答を繰り返し、あらゆる手段で組合の弱体化を図ってきた。組合は、このような会社の攻撃に対抗するため、長期的で、効果的な、しかも平和的に情宣活動ができる争議行為の一手段として屋台活動を採用した。
会社は、屋台活動を会社の許可を受けない不当な行為であり、会社の秩序を乱す行為であるとしているが、屋台活動は、社内ビラ貼りや抗議集会のように会社施設管理権と衝突することもなく、また屋台活動に従事する組合員は指名ストライキにより職場を離脱して組合活動に入るのであり、就労中の組合活動とは異なり、職場秩序との抵触の問題も生じない。
また会社は、道路法および道路交通法との関係において、屋台活動は、違法な行為である旨主張する。たしかに、屋台が一時期、xx警察署および都第七建設事務所によって撤去されたことがあるが、それは、何者かによって屋台車輪のチューブが切られ移動不能になったことによるものであって、xx警察署および都第七建設事務所
は、本件屋台を移動屋台として扱っていたことも明らかである。のみならず本件では、屋台活動の労働法上の評価が問われているのであり、行政法規上あるいは刑事法上どのように評価されるかとは本来無関係である。
イ 屋台部の設置について
会社は、Xが無断で会社内に「xx商事支部屋台部」なる機関を設置したと主張するが、処分のためのこじつけである。
従来から会社を宛て先に郵送された組合支部への文書を会社は、組合に受け渡している。
ウ 社長室「乱入」について
63年10月24日、組合のA9書記長および支部組合員らが、9階社長室に団交促進の申入れとXに対する処分の抗議と釈明要求のため出向いたところ、在室していたB7副社長は、文書を受け取らず、 A9に対し、挑発的な言動を行った。
また、社長・常務の机の上に組合のビラが大量に置いてあったことから、A9らが釈明を求めたところ、専務および会社管理職らはこれに答えないばかりか、A9らに対し、体当たりをしたり引きずり回すなど暴行を行った。
そして会社は、上記会社の行為を逆に「組合員らが社長室に乱入し、占拠した」などとし、支部xxxx組合員らに対し懲戒処分を行った。これらの処分は、いずれも処分を目的としたもので、組合員に対する不利益取扱いであり組合の弱体化を狙った支配介入である。
エ Xに対する解雇処分について
組合が行っている屋台活動は正当な組合活動であり、また63年10月24日の社長室においても、会社管理職らが暴力行為に及んだもので、上記Xに対する処分理由は処分を目的として画策されたもので、会社がXの組合活動を嫌悪するが故になされた不当解雇であり、組合の弱体化を狙ってなされた不当労働行為である。
② 被申立人の主張
ア 屋台活動について
本件の行為は、一般のいわゆる屋台営業と異なることがなく、申立人らは、本件屋台の営業主体は組合本部にあり支部やXの責に帰すべきではないと主張するが、屋台には支部旗を掲げ、Xを中心とする支部組合員が屋台の準備および営業を行っているのである。
62年巨額の資金を投じて正面玄関の美観を高めた直後に、社前において薄汚い屋台が煙と臭気を発しているのは、サービス業である当社にとっては、企業イメージの著しいダウンをもたらすもので、組合の会社に対する嫌がらせである。
また、xx商店街振興組合は、かねてから美化運動の一環として
屋台等の排除を申し合わせており、同組合から会社に苦情を申し込まれ弁明に苦慮したこともあった。
xxx年から3年にかけて数回にわたって、xx警察署と都第七建設事務所との連名で本件屋台に対し、撤去を命ずる文書が貼付された。そして実際3年12月には撤去された。
このように屋台が道路法および道路交通法に違反した行為であることは明白であり、正当な組合活動になりえないことは論を待たない。
イ 屋台部の設置について
Xが、会社に無断で会社内に「xx商事支部屋台部」なる機関を設置したことは不当、不法な行為である。
ウ 社長室「乱入」について
63年10月24日午後3時過ぎ、社長室においてB7副社長( 当時専務)が執務中、組合のA9書記長および支部組合員らが、社長室に強引に押し入ろうとしたことから、同副社長との間で押し問答となった。
そして連絡を受け、駆けつけたB8次長が、申入れがあるなら従前どおり8階事務所へ行くように指示したが、同書記長および同行した支部組合員らはこれを無視し、社長室に強引に入ろうとした。さらに加わったB2部長ら管理職らがこれを阻止しようとしたが、同書記長と支部組合員らは退去指示に従わず、罵声をあげ、管理職らに対し小突いたり、体当たりなどして社長室に乱入し、占拠し、業務を妨害した。
また、支部組合員A2 、同A 3 、同A 4 、同A 5および同A6は、翌25日には8階事務所に押しかけ大声を上げ10分間にわたり業務を妨害し、その後、2 階までの階段をデモ行進し、さらに26日にも、25日同様に社内デモ行進をしたことをも併せて処分したものである。
組合は、申入れに藉口した乱入の事実を正当化しようとしているが、それは集団暴力行為であり、その暴挙はいかなる詭弁をもってしても正当化しえない。
従って会社としては、これらの行為を見過ごす訳にはいかないことから処分を行ったもので、何ら不当労働行為には当たらない。
なお、A2は平成2年8月に、A3は3年2月にそれぞれ退職しており、両名に係わる申立ては救済の利益が消滅したのであるから棄却を免れない。
エ Xに対する解雇処分について
支部が行っている本件屋台営業は、ほとんどXが専従して行っていることから、会社は実行者である同人に対し、就業規則違反であるから直ちに中止するよう繰り返し警告したが、同人はこれを無視し、その後6回もの懲戒処分を受けたにもかかわらず、何ら反省す
ることなく屋台営業行為を続けた。
また、63年10月24日に組合員が社長室に乱入した際、同人は、組合員らの先頭に立って社長室に押し入り、占拠し、大声で罵声を上げ、退去を求める会社管理職らに対し、突き飛ばすなどの暴行を行った。
これら同人の行為は、就業規則に照らし懲戒解雇に値するが、同人の将来に配慮した結果、普通解雇処分にしたものであり、何ら不当労働行為に当たるものではない。
(2) 当委員会の判断
① 労使関係の経緯と会社の対応について
ア 組合が、屋台活動を開始した63年5月9日以前の労使関係をみると、前記認定のとおり次のような経緯と状況にあった。
(ア) 組合と会社は、58年7月、協定書の締結により、それまでの第
2次紛争を全面的に解決させた。ところがB2部長が就任した翌59年の始めごろから紛争が再び生じ、同年7月には、組合が会社に対し、暴言・暴行の謝罪、自社営業拡大条項解約通知の撤回および団交応諾を求める闘争宣言を行い、再び争議状態となり現在まで続いている(第1、3(3)① )。
(イ) 昇給およびxx一時金の経緯についてみると、59年度以降61年度までは、団体交渉が開催されなかったこともあって妥結に至らず、また当委員会の仲介でおよそ3年ぶりに開催された62年4月の団体交渉においても、会社が「諸般の事情を考慮して」、「ゼロというわけにはいかない」などと言うのみで具体的な説明をせず、結局妥結していない。この結果、組合員の賃金は、59年度以降据え置かれたまま徒過している(第1、3(7)① )。
(ウ) 会社は、62年2月より組合事務所家賃の値上分の支払いを拒否し( 第1、8(5))、59年度の組合によるビラ貼付に関して一旦は同年に和解で解決したとみられたが、62年7月に、損害賠償を求める提訴を行った(第1、3(3)② )。
(エ) 62年10月14日、渋谷地区労議長の団体交渉出席を巡って団体交渉が開催直前に中止となり、以降団体交渉は開催されていない。翌63年3月にも会社は昇給について前年と同様、昇給1,000円、その他の要求についても「現行どおり」「必要に応じて会社が定める」などという回答を文書で行うのみで相対しての団体交渉は開催されず妥結していない( 第1、5(1)① )。
(オ) また前記判断( 第2、1(2)①アイ)のとおり、会社が休憩室および就労場所について組合員と非組合員とを分離することによって、両者を接触させないように配置していた。
(カ) そして屋台活動開始時には、会社のA8 、A2 に対する処分(第
1、3(1)②、昭和59年不第59号)、A 6に対する賃金カットおよ
び降格処分(第1、3(5)、同第89号)並びにA1に対する処分および団交拒否問題(第1、3(8)⑤、昭和63年不第4号)などについて不当労働行為救済申立てが当委員会に係属しており、またA6に対する同処分に関する訴訟も裁判所において係属中であった( 第1、3(5))。
イ(ア) 上記労使関係の経緯からすると、63年5 月当時、組合と会社は、長期にわたる深刻な対立・紛争状態にあったと認められるが、これらに加えて、さらに組合の屋台活動が社屋前において行われたことにより会社が当時、組合およびその活動を著しく嫌悪していたことは推認するに難くない。
(イ) 会社が組合員に対して嫌悪の念を抱いていたことについても、前記(ア)と同様に判断される。
殊にXに対しては、前記認定(第1、5(2)②)のとおり会社は他の従業員と扱いを異にし、62年4月以降ビリヤード部門のフロント業務に就かせず、清掃および用具の修繕などに専ら従事させていたこと、他方、Xは、屋台活動開始時(63年5月9日) には副支部長として、同年9月17日からは支部長として組合の中心的活動家であり、また屋台活動を主に行っていたことからすれば、会社がとくに同人を嫌っていたことは明らかである。
② 屋台活動について
ア(ア) 会社は屋台活動について一般の屋台営業と異なることがない旨主張し、Xがこれに従事したことに対する出勤停止処分および解雇処分の主な理由としている。しかし、屋台活動の態様をみると、屋台に組合旗を掲げるとともに組合ビラを置いて、客にxx商事の争議についての情宣を行い、販売やカンパなどにより得た収入を、賃金カット分、未妥結の昇給・一時金分、組合事務所家賃などの一部に補填している。
これらのことからみれば、明らかに一般の屋台営業とは異なるものである( 第1、5(2)①後段)。
(イ) 他方Xの指名ストは、前記認定( 第1、5(2)③)のとおり、屋台活動が開始された63年5月9日から解雇されるまでの間行われ、その間、xxの勤務時間どおり就労した日は11日に過ぎなかった。その期間とやり方だけをみる限り、いささか正常なものとはいえない。
しかしながら、同人の指名ストは前記(第2、2(2)①ア) のとおり、組合と会社とが長期にわたって対立・紛争状態にある中で、会社のかたくなな交渉態度に対して抗議するために行われたことを考慮する限り、無理からぬ抗議手段と認められる。さらに、会社はXの「ストライキ通告書」を何ら問題にすることなく受け取っていたこと(第1、5(2)③)も合わせ考えると、このXの
指名ストは、会社の態度との関連においては行き過ぎであったとまでは評価できない。
イ また会社は、サービス業である会社にとっては、本件屋台活動が、企業イメージの著しいダウンをもたらす旨主張するが、周辺には、組合の屋台の他におでんやラーメンの屋台が営業しており、また組合の屋台活動により会社に出入りする客の数が減少した事実もない
( 第1、5(2)①中段)。
ウ 以上ア、イを総合してみると、組合の屋台活動は、長期にわたる会社との紛争状態において、会社が紛争解決に対しかたくなに拒否する姿勢を示している本件に限ってみれば、会社に対する抗議の意思を表すある種の情宣活動とみることができ、その方法においても、特に社会的に批難されるべきものではなく、正当な組合活動と認められる。従って就業規則で禁止している「他の事業」に形式的には該当するとしても屋台活動を「許可を受けないで在籍のまま他の事業に従事した」として処分の理由とすることは、妥当でない。
なお、会社は、組合の屋台を道路法および道路交通法に違反しているから正当な組合活動になり得ないと主張する。しかし、そもそも会社は、この主張を本件各処分の理由としてはいないのであるから、前記の結論を左右するものではない。
③ 支部屋台部の設置について
会社は、Xが銀行からの書類等の送付先を会社内にしたことを捉えて、xx商事支部屋台部なる機関を会社施設内に無断で設置したものであり、就業規則に定める「越権して専断的行為の禁止」に違反するとしてこれをXとA1に対する処分理由の一つとしている(第1、5 (5)③ )。
しかし、支部屋台部の設置とは、単に銀行取引の決済手段に供されたものにすぎず、他方、会社はこれまで会社に届いた支部あての郵便物を何ら問題にすることなく組合に渡しており、あて名もxx商事「支部」屋台部となっている(第1、5(4)①)のであるから、これをもって組合の機関を会社施設内に無断で設置したとするのは失当である。
従って、このことをXおよびA1に対する処分理由とすることは行き過ぎである。
④ 社長室「乱入」について
63年10月24日の状況についてみると、前記認定のとおり、当日A9 書記長が1人でノックをして社長室に入室した行為は、これまで8階事務所で組合文書を手渡していたことからすれば軽率の謗りは免れないが、従来の会社側交渉員では団体交渉が進展しないので、これからの団体交渉に会社の経営陣も出席して貰いたいとの思いからのものであり、無理からぬものであったといえる。
そして、B7副社長が申入れの受取りを拒否したこと、また組合の
ビラが常務の机の上にあったことについても会社が「言う必要はない。」などと言うだけで、特に説明をせず、A9が警察に電話をするのを阻止しようとしたことから揉み合いになったとみざるをえない(第1、
6(1)(2))。
以上の状況にもかかわらず会社は、社長室内にXらが組合員の先頭に立って乱入し、同室を30分にわたり占拠し、その間会社幹部職員らに暴行したとして、これを処分理由としている。しかし、これは上記事実の一面のみしか見ないものであって、誇張に過ぎ正当といえない。また、会社は、10月25日および26日にも組合員らが8階事務所に押
しかけ、大声をあげて業務を妨害したなどとしてA2、A3、A 4、 A5およびA6の出勤停止処分(第1、6(4)) の理由の一つとしている。たしかにこれら組合員の行動は会社の営業中のことではあるが、組合のストライキ中に、A2ら数名が短時間に「申入書」を読み上げた後デモ行進をしたもの(第1、6(3)) であって、当時の会社の組合に対する対応を考えると、この程度のことを処分理由の一つとすることは相当ではない。
⑤ 以上のとおり、会社が各処分の理由としている屋台活動、屋台部の設置および社長室「乱入」などについてはいずれもその理由となりえない。とすれば、本件各処分は、前記判断(第2、2(2)イ)のとおり会社が組合および組合員を嫌悪して、就業規則違反に藉口して行った処分であるといわざるをえない。すなわち、会社がなした、(ア)屋台活動および屋台部の設置などを理由とするX( 6件)およびA 1( 4件) の各「出勤停止」処分(第1、5(5)③ )、(イ)社長室「乱入」などを理由とするA2、A3、A4、A5およびA6に対する「出勤停止」処分(第1、6(4))、(ウ)屋台活動、屋台部の設置および社長室
「乱入」などを理由とするXに対する普通解雇処分(第1、6(5))は、いずれも組合員らに対する不利益取扱いに当たり、組合の組織運営への支配介入と判断せざるをえない。
⑥ア(ア) なお、会社はXに対する63年7月4日付懲戒処分(出勤停止5 日)の理由として屋台営業を行っていることの外に、社xxの無断使用(鍵を無断複製し、丸椅子を社xxに置いたこと。第1、
5(3)① )を挙げている。たしかにXが喫茶店Tから鍵を借受け、これを会社に無断で複製し、屋台の丸椅子を社xxに置いたことは、会社から問題にされてもやむをえない。
しかし、同日付処分は、屋台営業を主たる理由としているのであるから主文のとおり命ずることとする。
(イ) また、A1の各「出勤停止」処分において、会社は、機関責任を問うているが屋台活動および屋台部の設置が処分理由とならないのであるからこれを論ずるまでもない。
(ウ) ところで、会社は、A2およびA3はすでに退職しているので
救済の利益が消滅し、棄却を免れない旨主張するが、両名は、退職しても組合員の身分を保持しており( 第1、3(7)② )、救済を求める利益を失っていない。
イ Xの復帰先については、前記認定(第1、5(2)② ) のとおり、会社が同人を解雇時において、他の従業員と比べて正常な取扱いをしていたとは認められないので、主文のとおりビリヤード部門において他の従業員と同じ業務に就かせるよう命じることとする。
3 支部組合事務所家賃打切り
(1) 当事者の主張
① 申立人の主張
組合事務所の家賃は、55年11月協定、貸借契約のあった56年1月協定および58年7月協定からも明らかなとおり、会社が全額を負担することになっている。しかるに会社は、不当にも62年1月分から契約更新にともなう値上分について支払わず、また63年7月分からは、屋台活動の準備に同事務所を使用したとして、家賃支払いを打ち切った。
このような会社の行為は、これまでの協定に違反するとともに、低賃金や不当懲戒処分の乱発を行ってきた会社がさらに、家賃不払いによって組合の財政負担を増すことにより、組合を壊滅せしめようとする組合の運営に対する支配介入である。
② 被申立人の主張
現在の組合事務所は、56年1月の協定により設置されたもので、会社が借りた事務所を組合に転貸するという55年11月協定内容を、組合が借りた事務所家賃の一定額を会社が負担すると言う内容に変更されたもので、家賃全額を会社が負担することはなくなったものである。
そして、この協定は58年1月に失効したが、会社としては同協定の趣旨を労使慣行として尊重し、その後も労使双方合意のもとに一定額を負担してきた。しかし、組合が同事務所を屋台営業の準備という目的外に使用し、支部自らが会社との信頼関係を破壊する背信行為を行い、再三の警告も無視したため、会社は、63年7月からの家賃負担を打ち切ったものであり、何ら不当労働行為に該当するものではない。
(2) 当委員会の判断
①ア 支部組合事務所供与の交渉経過をみると、当初は、(ア)55年11月協定締結にあたり、組合は社内に設置を求めたが、会社は拒否し、同協定において会社主張のとおり「会社は分会に対し、社外に・・・設置」するとされ、(イ)その後の事務折衝の中で、会社は会社名義で借り上げて組合に転貸する旨の意向を示したものの、(ウ)結局、組合が直接借り受けることになり、その契約内容に合わせる形で、家賃として月額85,000円の支払いおよび有効期間を賃貸借期間と同時とする56年1月協定が締結された事実が認められる(第1、8(1))。
このことからすると、会社が家賃を全額負担することについて明
示のやりとりがあったとの疎明はないが、会社と組合は、会社の家賃全額負担を当然の前提として話を進めてきたとみられる。
現に会社は、家賃について56年1月以降本件で問題となる62年1月の更新時までの6年間、56年1月からの家賃( 85,000円)は上記協定により、58年1月からの新家賃( 90,720円)は当委員会での和解によって、また60年1月からの新家賃( 95,720円) は団体交渉が開かれない状況下にあり協定化されないまま会社が慣行であるとして、それぞれ全額を組合に支払っている( 第1、8(3)(4))。
イ ところが会社は、62年1月の新家賃( 112,710円) について、これまでの家賃( 95,720円) に限り支払うとして値上分の支払いを拒否した( 第1、8(5))。しかも会社は事実上、長期にわたり支払ってきた家賃値上分の支払いを、一方的な通告のみで拒否し、組合との協議を行うなど一定の手続きを経ていない。また、当時、会社にとって家賃値上分の支払いを拒否する特段の事情があったという主張も疎明もない。このことは、前年の11月11日から62年1月4日までの組合による会社正面玄関付近の座り込み(第1、3(7)③ ) を営業妨害と捉えた会社が、これを嫌って、家賃値上分の支払い拒否にでたものと推測される。
② 次いで会社は、組合が組合事務所を屋台営業の準備のために使用したとして63年7月分より家賃負担額の全額を打ち切った(第1、8(7))。
ところで、使用者が組合事務所の使用方法に問題があるとして、便宜供与を打ち切ることは、組合との交渉の範囲内とみられる面も存する。しかし、長期にわたり組合事務所家賃を支払ってきた本件経緯を考慮すると、会社が、支部組合事務所を組合が屋台営業の準備に使ったからとして警告を発しただけで協議の申入れもせず、その家賃支払を打ち切ることには正当性は見い出しえない。
③ 以上の考察によれば、会社が、62年1月より家賃値上分の支払いを拒否したことおよび63年7月から全額の支払を打ち切ったことは、59年7月以降続いている労使紛争状態の中で、会社が組合の活動を、とりわけ上記正面玄関の座り込みおよび屋台活動を嫌って、その拠点となる支部組合事務所の家賃を打ち切ることにより、組合の財政を圧迫し、その弱体化を狙ったものとみられ、組合に対する支配介入であると判断せざるをえない。
第3 法律上の根拠
以上の次第であるから、被申立人会社が、①申立人組合員A1ら7名に対する延べ15件の各「出勤停止」処分および申立人Xに対する解雇処分は、いずれも労働組合法第7条第1号および第3号に該当し、②支部組合事務所家賃について62年1月以降63年6月までの値上分および63年7月以降の全額の支払いを拒否したこと並びに休憩室、就労場所を組合員と非組合員とに分離したこと、支部組合掲示板のビラを撤去したことおよび非組合員に対する争
議中の組合の説得活動を妨害したことは、いずれも同法第7条第3号に該当する。
よって同法第27条および労働委員会規則第43条を適用して、主文のとおり命令する。
平成5年4月6日
xxx地方労働委員会会長 xxx