Contract
千葉基礎セミナー講義ノート
2003年12月2日:レインメーカー事件第3回
地震によって石油ストーブが転倒したために発生した火災で、Xは所有する家屋を失った。 Xは、Yと火災保険契約を締結していたため、保険金の支払いを請求した。 ところが、Yは、普通火災保険約款には、
問 地震によっておこる火災について責任を負わない旨 の免責条項があるとして、保険金の支払いを拒絶し題 た。 保険契約を締結する際に、XはYから火災保険についてのパンフレットを受け取っていたが、 約款
自体は契約後、保険契約証書とともにYから送付されただけで、このような条項があることは知らなかった。 Xの請求は認められるか。
被告 原告
前 原告側は重要な事項だから最初に説明してくれと言
回 うが、被告側は説明する事項をどのように考えるの か?説明をしなかったらどういう影響(権利・義課 務)があるのか?契約以外の方法?謝る?
題
地震免責は一般社会の保険においてごく普通に行われており、当然相手方は理解していると考えてい た。それゆえ契約時に説明すべき重要な事項とは思わなかったので、説明しなかった。そのような常識を理解しているかはわからないので、相手方がこちら側に説明を求めるべきであった。
地震免責条項自体について問題はないのか?
火災保険契約に地震免責条項がなぜ入っているのか?
地震免責条項に問題はない。昭和39年新潟地震のとき、政府主導で地震保険制度ができた。地震が起きたときに保険会社には支払える限度があり、足りない場合は政府が負担する(再保険)。それゆえ、火災保険制度と地震保険制度の間に明確な差がなくてはならず、火災保険制度に地震免責条項を認めてもよい。
新潟地震以前からも地震災害の保険制度を作っておいた方がいいという議論があったが、新潟地震の被害が特に大きく実現に向かった。
地震保険と火災保険制度を別々に作っておくべき理由は、地震保険は政府による再保険がされているから。
司会か
ら 地震免責事項が説明すべき重要な事項ではないとすると、説明すべき重要な事項とは何か?の
質問
回 火災保険の料金・期間などの基本的な数値を具体的答 に示すこと、他社の火災保険と違う点、などの基本
的な内容について説明すべき。
司会
か 地震による火災について免責条項があることを常識ら といったが、常識とは何か?
の
質問
回 常識は世間一般に広く知られている事実・知識であ答 る。地震免責事項の存在は常識である。
司会者の質
原告側の考える、保険会社の説明すべき事項は?
問
回答
xx先生の質問
回答
司会者の質問
回答
司会
者 原告側の主張する2点についてどのように考えるの か?
質問
自分たち(原告)が不利益になることは話してほしい。損得がないことや得することは話してくれなくてもよい。約款によって契約が結ばれることも説明してほしい。
利益・不利益の基準は?
契約を結ぶのはなぜかというと保険金をもらうた め。どのような場合に保険金がおりるxxxないかどうかについては、契約を結ぶ際に非常に影響があるので、その事項については説明してほしい。
(1)地震免責事項は常識かどうか、(2)常識と思われることは説明しなくてもいいか。
(1)実際に今回の場合は被告側が常識と考えていることを原告側は知らなかった。常識ではない。
(2)原告側の不利益となることについては、常識であっても説明してほしい。
たとえ原告側の主張するとおり、地震免責が重要事
回 項で説明していないとする。しかしながら、相手方答 は免責条項を同意していないとすると、契約が成立していないことになる。そうであるならば、保険金
を支払う必要はない。
反論
再 (1)地震免責条項だけが無効となるのであれば、一方反 に都合のいいように契約が作り替えられてしまう。論 同意していない部分だけ無効というのは都合がよす
ぎる。
(1)地震免責条項の部分が無効となっただけで、契約全体が無効となったわけではない。したがって、保険金を請求する。
(2)かりに契約が無効であれば、説明義務違反に基づく損害賠償を請求する。
司
会 被告側は約款によって契約をするということを原告者 側に説明していない。それに対して、原告側は、約か 款の内容について反対しているにすぎない。約款のら 内容が契約の内容となっているわけではないが、保の 険契約自体は成立していると考えられるのではない質 か?
問
契約は本来合意に基づく。ところが、当事者の合意に基づかずに契約を成立させる約款という制度が必 要。約款の内容を問わず、「約款によって契約をする」ということを認めざるを得ない。これを認めたとしても、約款に何が書いてあるか、約款の内容がすべて従わなければならないかは別の問題である。
今日の最初にやったように、地震免責条項はそれなりに意味がある。そうだとしたら、それは非常に重要
な事項であるから、契約締結時に情報を伝えなければならないという話になった。
千 常識は、人によってそれぞれ異なりうる。常識は取り引きされる内容によって異なりうる。どういう人に葉 どういう説明をすべきかは考えなければならない。保険においては投資に絡む商品が問題となる。このよ
解 うな場合には、どういう人に売るべきかが議論されている。「常識」というのは非常に難しい。
説 さて、仮に地震免責事項が重要な事項だとしても、保険会社は義務を果たしているのかが議論された。保
険会社(被告側)は、原告側が被った損失は保険料にすぎず、保険金ではないのではないか、と主張して
いる。
主 保険料を返して決着させる。
張
反
論
保険料の支払いしか損害がないとしても、地震免責
条項にいう火災に該当するかどうかわからない。何が地震による火災かわからない。
宿 自分が裁判官だったら、この事例についてどのような判断をするか?(冬休みの宿題)
題