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労働問題対処ノウハウ集 44
かながわ労働センター
こんなことに気をつけよう、パート、アルバイトで働くとき
基本のきほん
パート、アルバイト、正社員といった名称は、法律で定義されている用語ではありません。パート・有期労働法(「短時間労働者及び
有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)では労働者を、直接
契約期間 | |||
定めがある | 定めがない | ||
労働時間 | フルタイ ム | 有期雇用労働者 | 通常の労働者 |
短時間 | 有期雇用労働者短時間労働者 | 短時間労働者 |
雇用の形態により、短時間労働者、有期雇用労働者、通常の労働者に分類しています。
どの労働者であっても、各種労働法(労働基準法、労働契約法等)が適用され、一
定の要件を満たせば、各種社会保険法(雇用保険法、
健康保険法等)も適用されま
す。
●通常の労働者(上図二重線内)
いわゆるxx労働者及び無期(期間の定めのない)労働契約を締結しているフルタイム(1週間の所定労働時間が最長の)労働者です。
●短時間労働者(上図点線内)
1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者です(パート・有期労働法第2条)。上図の点線で囲まれている部分が該当します。
●有期雇用労働者(上図実線内)
有期労働契約(期間の定めのある労働契約)を締結している労働者です(パート・有期労働法第2条)。上図の実線で囲まれている部分が該当します。
働き始めるとき
求人情報がどのようなものであっても、原則として、求職者と求人者の間の交渉で双方が合意した内容が、労働条件になります。労働条件通知書または労働契約書の交付を受けましょう。
◎労働条件の明示
労基法(「労働基準法」)第15条・労xx(「労働基準法施行規則」)第5条で、「契約期間」「有期労働契約を更新する場合の基準」「仕事をする場所と仕事の内容」「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇」「賃金の決定・計算・支払の方法」「賃金の締切・支払時期」「退職に関する事項」について、パート・有期労働法第6条・同法施行規則第2条で、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「(雇用管理の改善等に関する事項に係る)相談窓口」について、原則として書面で明示すべきとさ
れています。
※令和6(2024)年4月1日からは、就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限の有無と内容、(「無期転換申込権」が発生する契約の度に)無期転換申込機会・無期転換後の労働条件の明示も必要になります。
◎雇用管理の改善などに関する措置の内容の説明
賃金の決定方法、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、通常の労働者への転換推進措置等の雇用管理上の措置の内容について説明を受けることができます(パート・有期労働法第14条)。
◎就業規則の周知
常時10人以上の労働者を雇用する事業場では、就業規則を必ず作成して、労働基準監督署に届け出たうえ、労働者がいつでも見られる状態にしておかなければいけません。
働いているとき
◎均等・均衡待遇
同一企業内において、正社員と短時間労働者・有期雇用労働者の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることは禁止されています。
●不合理な待遇差の禁止(均衡待遇規定)
①職務の内容(業務の内容と責任の程度)、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情、の内容を考慮して不合理な待遇差を設けることは禁止されています(パート・有期労働法第8条)。
●差別的取扱いの禁止(均等待遇規定)
①職務の内容(業務の内容と責任の程度)、②職務の内容・配置の変更の範囲、が同じ場合は、差別的取扱いが禁止されています(パート・有期労働
法第9条)。
◎待遇に関する説明
通常の労働者との間の待遇の相違内容及び理由並びにその待遇を決定するに当たって考慮した事項の説明を求めることができます。また、説明を求めた労働者に対する不利益取扱いは禁止されています(パート・有期労働法第14条)。
◎通常の労働者への転換推進
使用者には、通常の労働者の転換の推進(登用試験制度導入等)のための措置を講ずる義務があります(パート・有期労働法第13条)。
◎年休(年次有給休暇)
年休は、雇入れ日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に付与され、基準日(年休が付与された日)以降は1年毎に同様に付与されます。付与日数は、週または
年間の所定労働日数と継続勤務年数に応じて、下表のとおりです。10日以上(下xx枠内)付与された労働者に、使用者は期間中に5日以上年休を取得させなければいけません。年休は、事前に時季指定することによって、理由によらず取得できます。
●週所定労働日数が5日以上または週所定労働時間が30時間以上
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5 以上 |
一般の労働者 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
●週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満
週 所 定労働日数 | 年間所定労働日数 (週所定労働日数が決 まっていない場合) | 継続勤務年数 | ||||||
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5 以上 | ||
4日 | 169 ~ 216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121 ~ 168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73 ~ 120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48 ~ 72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
◎健康診断
常時使用される労働者(通常の労働者及び次のいずれの要件も満たす労
働者)には、健康診断が実施されます。
①1年以上継続勤務(または継続勤務が予定されている)
②1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上
◎無期転換
通算5年を超える有期労働契約を結んだ労働者は、その契約期間中に申し込むことにより、次期の労働契約が、無期労働契約に転換されます(労働契約法第18条)。原則として、労働条件は変わりませんが、異なる合意をすることは可能です。
社会保険と税金
一定の条件を満たすと、社会保険料や税金を負担しなければなりません。労災保険(労働者災害補償保険)加入は事業主の義務ですが、労働者に保険料負担はありません。
●雇用保険
一定の要件(①1週間の所定労働時間が20時間以上、②31日以上の雇用が見込まれ
る、等)を満たす労働者は、雇用保険に加入しなければなりません。失
業等給付や育児休業給付分の保険料を労使折半で負担します。
●健康保険、厚生年金保険(被用者保険)
適用事業所(すべての法人等の事業所と一定の個人事業所)の常用の労働者(フ
ルタイムの労働者と、1週および1か月の所定労働時間が事業所の通常の労働者の4分の3以上の短時間労働者)と、特定適用事業所(常用の労働者が101人(令和6年10月以降は51人)以上の法人)等の一定の短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上かつ月額賃金が8.8万円以上かつ2か月以上の雇用見込みかつ学生でない)は被
用者保険に加入しなければなりません。保険料負担は労使折半です。
●住民税
前年の収入等に応じた税額を6月~翌年5月までの12回に分けて天引きされ、1月1日の住所地の市町村に納入される地方税です。
●所得税
支払われる給与等の額に応じて天引きされ、事業所所管の税務署に納入される国税です。
◎年収の壁
労働者の年収額によって社会保険や税等の扱いが変わり、手取りが減ったり増加ペースが落ちたりすることです。(本人が60歳以上または障害者の場合(130万→180万)、配偶者が高収入の場合(配偶者の所得控
除がなくなる)は、下記の説明と一致しません。)
【短時間労働者の年収の壁】(〇は課税または控除あり)
●150万円超(一定の通勤手当等は含まれません)
配偶者の配偶者特別控除額が減り始めます。本人が常用の労働者に該当する場合は、被用者保険の被保険者になります。
●201.6万円超(一定の通勤手当等は含まれません)
配偶者の配偶者特別控除がなくなります。
辞めるとき
短時間労働者・有期雇用労働者契約が職を離れる事由には、主に雇止め、合意退職、辞職、解雇(他に定年退職等)があります。
●雇止め
期間の満了により労働契約が終了することです。一定の基準(「有期労
働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」)が定められています。
●雇止め予告
有期労働契約を3回以上更新したり1年を超えて継続勤務したりしている労働者には、あらかじめ契約更新しない旨が明示されている場合を除き、少なくとも30日前までの雇止め予告が必要です。
●雇止め理由証明書
雇止めの理由について証明書を請求した場合、交付されます。
●合意退職
使用者と労働者が合意の上で労働契約を途中終了させることです。退職日は合意によって決まります。
●辞職
労働者が労働契約を一方的に途中終了させることです。無期労働契約では、辞職を申し出た日から2週間を経過すると労働契約が終了します(民法627条)。一方、有期労働契約では、就労を継続できないやむを得ない理由がないかぎり、辞職はできません(民法628条)。
●解雇
短時間労働者の年収 | 本人の収入に応じて必要となる公租公課 | 配偶者の所得控除 (年収≦1195万円) | ||||
住民税 (均等割) | 住民税 (所得割) | 所得税 | 社会保険料 | 配偶者控除 | 配偶者特別控除 | |
93万 円超 | △ (自治体による) | × | × | × | ○ | × |
100万 円超 | ○ | ○ | × | × | ○ | × |
103万 円超 | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ |
105.6万 円超 | ○ | ○ | ○ | △ (働き方等による) | × | ○ |
130万 円超 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ |
150万 円超 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ (控除額が減る) |
201.6万 円以上 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
使用者が労働契約を一方的に途中終了させることです。合理性・相当性を欠く解雇は無効とされています(労働契約法16条)。解雇予告や解雇予告手当が必要な場合があります
(詳細は、労働問題対処ノウハウ集№26
を参照ください)。有期労働契約の場合は、加えてやむを得ない事由がな
ければ、労働者を解雇することができません(労働契約法第17条)。
◎離職時の手続
●社会保険・税の手続
雇用保険の被保険者で在職中に受領していなければ、雇用保険被保険者証を受領しましょう。また、離職票
●93万円超(一定の通勤手当等は含まれません)
少額(年額5,000円程度)ですが、住民税の均等割がかかる自治体がでてきます。
●100万円超(一定の通勤手当等は含まれません)
住民税の所得割がかかり始めます。課税所得(年収-所得控除)に税率を掛けます。
●103万円超(一定の通勤手当等は含まれません)
所得税がかかり始めます。配偶者の配偶者控除が配偶者特別控除に変わりますが、まだ控除額に変更はありません。配偶者の家族手当等が支給されなくなることが多くなります。
●105.6万円超(通勤手当等は含まれません)
企業規模と働き方によっては、被用者保険に加入することになります。
●130万円超(通勤手当も含まれます)
被用者保険の被保険者でない場合、配偶者の被扶養者からはずれ、何らかの医療保険・年金保険に自ら加入せねばならず保険料がかかります。本人が常用の労働者に該当する場合は、被用者保険の被保険者になります。配偶者の家族手当等が支給されなくなることが増えます。
(雇用保険の基本給付を受けるのに必要)
を発行してもらえます。資格喪失手続の前に請求しましょう。健康保険の被保険者であれば、退職日以降に健康保険証を返還します。所得税を源泉徴収されていたのなら1か月以内に源泉徴収票が交付されます。住民税の精算方法は退職時期によって異なります。
●賃金その他金品の精算など
賃金および労働者の権利に属する金品(積立金・貯蓄金等)は、請求すれば7日以内に支払われます(労基法第23条)。就業規則等に規定があれば、退職金を貰えることもあります。定期代など交通費等の精算が必要な場合があります。社員証や社章、貸与された制服、取引先の名刺や社内文書、文房具などは返却しましょう。
●退職証明書
請求すれば、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職(解雇の理由を含む。)についての証明書が交付されます(労基法第22条)。
確かめましょう
□労働条件通知書または契約書をもらいましたか。
□就業規則を見せてもらえましたか。
□労働条件に応じて社会保険に加入させてもらえそうですか。
□xx労働者への登用制度はありますか。
お問合せ、ご相談は、下記の労働センターの労働相談窓口まで。 URL xxxxx://xxx.xxxx.xxxxxxxxxx.xx/xxxx/x0x/xxx/x0000/xxxxx.xxxx本 所(045)633-6110(代) xx支所(044)833-3141 発行 神奈川県かながわ労働センターxx支所(046)296-7311 湘南支所(0463)22-2711(代) xxxxxxx0-0 x000-0000x和6年4月発行