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総価契約単価合意方式の実施状況と課題
社団法人日本建設業連合会 土木第一部長 xx xx
1. はじめに |
日建連では,建設業に関する基礎的な調査研究,広報活動,環境対策などの土木・建築一体となった総合的な活動のほか,土工協および建築協が多年にわたって担ってきた事業を継承し,その実績の上に新たな時代に即した活動を実施することとしている。
本文では,土工協時代から主要な活動テーマに位置付けている,総価契約単価合意方式ついて,アンケート調査結果や現在実施している調査の概要,今後の課題等について述べる。
2. 受注者から見た総価契約単価合意方式の必要性 |
建設業界では,価格と品質に優れた構造物を提供するとともに,わが国の複雑な地形や多発する自然災害の中で培ってきた高度な建設技術力の発展と次代への継承に取り組んでいるが,そのためには,個々の建設現場における適正な利益の確保により,企業としての体力を維持し続けることが必要である。
しかし,公共投資に加え民間設備投資の減少に
よる,市場規模の大幅な縮小に伴う受注競争の激化により,建設業界の経営環境が極めて厳しい状況にある中,日建連会員企業においては,個々の工事において生産性のさらなる向上による利益の確保とキャッシュフローの適正な管理が喫緊の課題となっており,土工協においても,発注者との意見交換を行いながら,解決に向けた調査研究活動を行ってきたところである。
こうした中,国土交通省では,施工から監督・検査,支払いといった施工プロセス全般の抜本的改善や国際標準化を図るために,本方式をはじめ,施工プロセスを通じた検査,出来高部分払いといった新たな施策の本格的な導入を進めている。日建連としても,これらの施策は現場の生産性向上やキャッシュフローの改善に大きな効果が期待されることから,その普及拡大に向け,受注者としても積極的に取り組むべきと考えている。
3. 総価契約単価合意方式に関する調査結果 |
調査概要
建設現場における生産性の向上を図り,工事品質と適正利益を確保するため,国交省直轄工事において本格導入された本方式や施工プロセスを通じた検査等の実施状況について調査を実施した。
建設マネジメント技術 2011 年 12 月号 21
アンケート調査は,国(国土交通省および内閣府沖縄総合事務局),高速道路会社(東日本/中日本/西日本/首都/阪神),機構・事業団(水資源/鉄道・運輸/都市再生/下水道),地方公共団体(31都道府県/17政令指定都市)から土工協の積算・資材委員会に所属する会社(39社)が平成21年4月から平成22年10月の間に契約した工事価格3億円以上の公共土木工事を対象に実施し,79の建設現場から回答を得た。
発注機関別の回答件数の割合は,国交省が約41
%(328件),地方公共団体が約36%(289件),機構・事業団が約12%(96件),高速道路会社が約
11%(86件)であった。
調査結果(直轄工事における総価契約単価合意方式)
本方式については,単価合意の方式,単価協議
(出席者,協議期間,使用資料,単価合意の上下限値,発注者からの積算根拠提示の有無,一式計
上や間接費の合意方法),合意結果,設計変更や支払い円滑化への効果,単価合意方式の評価等を調査した。
以下に国の直轄工事(河川・道路・海岸工事等
29件,港湾・空港工事41件)を中心に調査結果を示す(北海道開発局と沖縄総合事務局発注工事は全て河川・道路・海岸工事等に含めた)。
② 図―1のとおり,直轄工事では,ほとんどが個別合意方式を採用しており,また,図―2のとおり,単価協議では2週間以内に合意書を締結している。またレベル4での合意については妥当であるという回答となっている。全体として見れば協議は円滑に実施されていると考えられる。
A しかしながら,協議結果を見ると,発注者単価のおおむね±10%の範囲で合意がなされているとはいえ,図―3のとおり,受注者の単価で
図―1 単価合意方式
図―2 単価協議に要した日数(協議開始~単価合意書締結)
2 建設マネジメント技術 2011 年 12 月号
図―3 単価協議の結果
図―4 単価設定根拠提示状況
図―5 単価合意方式の評価
合意した割合は,河川・道路・海岸工事等では
〈受注者単価〉〈受注者単価の近辺〉〈発注者単価へ引き上げ〉の合計で約58%,港湾・空港工事で約24%にとどまっている。また,図―4のとおり,発注者から単価設定の根拠が示された割合は河川・道路・海岸工事等では約14%,港湾・空港工事では約19%(ただし,工事全体の種別・細別にわたって発注者単価が提示される場合が多い)に過ぎない。
単価協議に当たって発注者から提示してほしい資料は,レベル4の価格算定上の構成要素
(使用機械,歩掛り,運搬費等)や材料単価,施工条件明示書,見積参考資料等である。
® 図―5のとおり,評価については,設計変更や支払いの円滑化といった具体的効果が把握できる段階に至っていない現場がほとんどであったことから,「わからない」という意見が最も
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多い。単価合意と施工プロセスを通じた検査・出来高部分払いの一体的運用が必要であり,今後再検証が必要である。
なお,機構・事業団や地方公共団体では,単価合意方式はほとんど普及しておらず,一部の試行工事においてもほとんど全てが包括合意方式となっている。個別合意方式を含めた単価合意方式の普及拡大が必要である。
Ж 発注者との意見交換
上記の結果について,5月から6月にかけて全国の主要な公共工事発注者との間で開催した「公共工事の諸課題に関する意見交換会」において報告し,意見交換を行った。
本方式に関する日建連の要望に対し,各地方整備局から「単価協議に関する工事事務所,受注者への理解促進に努める」「フォローアップを通じて有効性を確認しつつ,総価契約単価合意方式,施工プロセスを通じた検査,出来高部分払いの三つの施策の一体的な運用を進めていく」など,理解ある回答をいただいている。
4. 実施中のアンケートの概要 |
日建連では,昨年度の調査を踏まえて調査項目の見直しを行うとともに,昨年度の調査では把握できなかった項目についてアンケート調査を実施している。具体的には,発注者から提示されるべき単価設定の根拠資料,一式計上項目や間接費,
新規工種の合意方法等単価協議のあり方に関する事項や,単価変更や設計変更に関する事項がその主な内容である。
特に,本方式の評価については,「わからない」という意見が最も多かったことから,設計変更や支払いにどのような効果があったか等を中心に調査を実施している。単価合意は施工プロセス全般を円滑に進めるに当たって欠くことができないツールであり,施工プロセスを通じた検査・出来高部分払いと一体的に運用することにより,その効果が発揮されるものである。日建連としてもこれら三つの施策の推進に向けて取り組みの強化を図っていきたいと考えている。
5. おわりに |
本方式は,国土交通省直轄工事では全面実施されているが,地方公共団体で取り組んでいる団体はなく,「公共工事の諸課題に関する意見交換」においても国交省や他団体の動向を注視していくといった回答がほとんどであった。総価契約単価合意方式の得失を明らかにし,改善を進めながら,全国の発注者に速やかに普及拡大を図る必要がある。
単価数量精算方式は国際標準とされているが,総価契約を基本とするわが国において定着を図るためには,現場における適用実態を踏まえた改善が必要である。日建連としても,双務性,透明性の高い単価協議が受発注者協働で推進できるよう努力していきたい。
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