Contract
(2)特許及びノウハウ実施許諾契約書
・前文は、当事者の意図と契約履行の意思を確認するために設けます。
・契約の当事者が誰であるかを明確にします。
○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)とは、甲が有している特許権及び技術情報について以下のとおり本契約を締結する。
第1条(定 義)
本契約において使用する次の用語の意味は、以下のとおりとする。
(1)「本件製品」とは、本件特許を使用して乙が製造・販売した製品及びその部品をいう。
(2)「本件特許」とは、本件製品に関して甲が本契約締結日現在所有している次の特許をいう。
発明の名称:出願日:
特許番号:
(3)「技術情報」とは、本件製品の製造(及び販売)に関して、甲が本契約締結日現在所有している技術知識、ノウハウ、資料及び図面等を意味し、本契約書の付属書に記載されているものをいう。
・本条項は、契約において、使用頻度の多い用語について説明の反復をさけるとともに、契約で使用される重要な用語を、明確かつ詳細に規定するために設けま
す。
(4)「正味販売価格」とは、本件製品の販売価格から、梱包費、輸送費及び保険料を控除したものをいう。
第2条(実施許諾)
甲は、乙に対し、本契約の有効期間中、本件特許及び技術情報に基づいて、日本国内において本件製品を製造及び販売する非独占的通常実施権及び非独占的実施権を許諾する。
2 乙は、第三者に再実施権を与える権利を有しない。
3 甲は、本件特許について権利放棄、訂正審判、又は訂正請求を行う場合、乙の承諾を得るものとする。
・本条項は、本件特許及び技術情報の実施権の種類を明らかにするために設けます。
・第2項は、実施権者による第三者への再実施許諾の可否を明らかにするために設けます。
・第3項は、令和3年特許法改正(令和4年4月1日施行)に伴い、権利放棄、訂正審判、又は訂正請求の際に通常実施権者の承諾が不要になることに対応しています。改正法施行以降に引き続き承諾を必要としたい場合は、第3項を設けま す。
・ライセンスに係る権利が特許出願の場合は、仮通常実施権に置き換えてくださ
い。
第3条(技術情報の開示及び技術援助)
xは、乙に対し、第4条(1)号のイニシャル受領後30日以内に、技術情報を開示する。
2 甲は、前項の技術情報の開示後乙の要請に基づき、乙の技術者に対し、本件製品の製造に関する技術指導を甲の工場で行うことに同意する。
ただし、乙の技術者の旅費、宿泊費、食費及びその他派遣に要する費用は乙の負担とし、技術指導の範囲、人員、日程等の詳細については、事前の当事者の合意により決定する。
3 甲は、乙の要請に基づき、乙の技術者に対し、本件製品の製造に関する技術指導を乙の工場で行うことに同意する。
この場合、乙は、甲の技術者の旅費、宿泊費、食費及び技術指導料を負担するものとし、技術指導の時期、日程等の詳細については、事前に当事者の合意により決定する。
4 乙が甲に対し、本条2項及び3項以外の特別の技術援助を要請した場合、甲は、事情が許す限り有償で乙の技術援助を行う。
・本条項は、技術情報の開示に関して、技術情報の提供時期と提供の方法を明らかにするため設けます。
・また、技術援助に関して、技術移転を容易にするための技術者受入、技術者派遣
の条件を明らかにするために設けます。
5 本条第3項及び第4項による乙の支払は、甲の請求の日から30日以内に甲の指定する銀行口座に振り込むことによりなされるものとする。これに伴う銀行手数料は、乙の負担とする。
第4条(対価及び支払い方法)
乙は、甲に対し、第2条1項及び第3条 1 項に基づく実施権許諾及び技術情報の開示の対価として、次に指定する時期に次の金額を、甲の指定する銀行口座に振り込むことにより支払う。
(1)イニシャル:本契約の締結日から30日以内に金○○○万円
(2)実施料:毎年3月31日及び9月30日に先立つ6ヶ月間に販売した本件製品について、それぞれ3月31日及び9月30日より30日以内にその正味販売価格の○%の金額
・本条項は、許諾特許の対価及び支払方法を定めるために設けます。
・対価の中身には、定額(特許を活用した事業とは直接リンクしない一時金、一括金、イニシャル等様々な名称)、ランニングロイヤルティ(特許を活用した事業に実績に応じて算出)、その組み合わせがあり、実施の形態により選択します。
・対価に消費税が伴うことに注意が必要です。
(3)本条(1)号及び(2)号で乙から甲に支払われる金額に消費税が加算されるものとし、銀行手数料は乙の負担とする。
第5条(実施報告)
乙は、甲に対し、本契約締結後、毎年3月31日及び9月30日に先立つ6ヶ月間に販売した本件製品の型式、販売数量、総販売額、控除すべき項目と金額、正味販売価格、実施料及び消費税を記載した実施報告書を、それぞれ3月31日及び9月30日より30日以内に提出する。
・本条項は、実施料の発生源とその妥当性及び実施状況を明らかにするために設けます。
・一般に、企業にとって原価(特に個別製品の原価)と利益は企業秘密であり、決して外部に出そうとはしないものです。他方で、ランニングロイヤルティを受け取る側としては、正確に対価が積算されたか確認したいと考えます。その間で、
両当事者が納得できる項目について報告書を作成することになります。
2 乙は、甲に対し、当該期間に本件製品の販売実績がない場合も、その旨を記載した報告書を提出する。
第6条(対価の不返還)
・本条項は、実施料を受け取った後に、特許権が第三者からの無効審判等により無効になった場合等においても、これを返還しないことをあらかじめ約束するため
に設けます。
本契約に基づき、乙から甲に支払われた対価は、いかなる事由による場合でも乙に返還しない。ただし、明白な誤計算の場合は、無利子で差額を返還する。
第7条(帳簿の保管と閲覧)
乙は、本契約期間中及び終了後○年間、第4条の実施料支払いの基礎となる会計帳簿、その他の関係書類を保管する。
2 甲は、前項の会計帳簿その他の関係書類を閲覧・検査(複写を含む。)できる。
・本条項は、実施料が正確に支払われているか確認することができるようにするために設けます。
・ライセンサーが、自らかあるいは指定する専門家(公認会計士等)に監査させる
ように規定することもあります。
第8条(表 示)
乙は、本契約の期間中、本件製品に許諾特許の表示を付すことができる。
・本条項は、特許番号等を表示することで許諾製品の信頼性と侵害防止の効果を上げ
るために設けます。
第9条(秘密保持と流用禁止)
乙は、本契約の期間中、甲から提供された技術情報を、本件製品の製造(・販売)のためにのみ使用する。
2 本契約の期間中及びその終了後○年間、乙は、本契約期間中に甲から提供された技術情報を第三者に開示又は漏洩してはならない。
ただし、次のものは秘密保持対象から除外される。
(1)甲から開示を受けたとき、すでに公知であったもの
(2)甲から開示を受けた後、乙の責によらないで公知になったもの
(3)甲から開示を受けたとき、すでに乙の所有にあり、その旨を立証できるもの
・本条項は、甲から乙に提供された技術情報に関して乙の秘密保持義務を明らかに
するとともに、乙による技術情報の流用を禁止するために設けます。
(4)甲から開示を受けた後、乙が第三者から入手したもので、その旨を立証できるもの
第10条(改良技術)
・本条項は、契約期間中に許諾特許に関する改良があったときの取扱いを明らかにするために設けます。
・例文は、xxxxxxとライセンサーの両方に改良技術の提供を義務付けていま
すが、ライセンシーだけがその義務を負うケースもあります。
甲及び乙は、本件製品に関する改良技術をなしたときは、直ちにその内容を相手方に通知するものとし、通知を受けた当事者は、これを本契約期間中無償で実施することができる。
第11条(保 証)
甲は、乙に提供する技術情報が甲の実際に使用しているものと同一のものであることを保証する。
・本条項は、ライセンサーとライセンシーとの間で紛争を生じないよう、ライセン
シーの実施に伴う責任の所在を明らかにするために設けます。
ただし、甲は、本件製品の製造・販売から生じる乙のいかなる損害についても法律上及び契約上一切責任を負わない。
第12条(特許等侵害の回避・排除)
甲は、本件製品が第三者の特許xxを侵害した場合、甲は乙からの要請に応じ、当該侵害の回避について、乙に協力する。
・本条項は、xxxxによる実施が第三者の特許xxを侵害する場合、あるいは第三者が許諾特許を侵害する場合の通知義務等の措置を定めるために設けます。
・ライセンサーとxxxxxxが協力して対処できるようにします。
2 乙は、第三者が許諾特許を侵害し又は侵害しようとしていることを知ったときは、直ちにその旨を甲に通知し、侵害の排除又は予防について甲に協力する。
第13条(不争義務)
乙が、直接又は間接に許諾特許の有効性を争う場合、甲は、本契約を解除できる。
・本条項は、ライセンサーがライセンシーに対して、許諾特許の有効性が阻害される場合に解除事由を明らかにするために設けます。
・ライセンサーにとって、ライセンシーから、対象特許を無効にする行為をとられることは好ましいことではありませんので、対象特許についてその有効性を争わないことをあらかじめ取り決めておくようにするものです。
第14条(譲渡禁止)
・本条項は、一方の当事者の都合で、相手方が変わることになれば経営上に大きな影響を及ぼすことになりますので、双方の意思によらない許諾特許等の譲渡を禁
止するために設けます。
甲及び乙は、本契約から生じる権利若しくは義務の全部又は一部を、相手方の書面による事前の承諾なしに第三者に譲渡し又は担保に供してはならない。
第15条(解 除)
甲又は乙は、相手方が本契約に違反した場合、相手方に対しその是正を催告し、相手方が催告後30日以内に当該違反を是正しないときは、本契約を解除できる。
2 甲又は乙は、相手方が次に該当する場合、直ちに本契約を解除できる。
(1)支払いの停止となったとき
(2)破産・会社更生・民事再生等の申立てを行ったとき又は他から受けたとき
(3)差押・仮差押・仮処分を受けるなど信用が著しく悪化したとき
(4)営業を停止したとき
・本条第1項は、相手方の契約違反に対する防衛措置として設けます。
・第2項は、一定の事由が生じたとき又は事情変更により契約をそのまま履行することがxxx上不当ないし不xxとなる場合を想定して設けます。
第16条(契約の有効期間)
本契約の有効期間は、本契約の締結日から○年間とする。
・本条項は、契約に規定された権利義務の発生、終了に関する期間及び終期を定めるために設けます。
・例文は、ライセンスが継続できるように自動延長条項を設けています。
ただし、期間満了の○ヶ月前までに一方の当事者から終結の申し出がない場合には、自動的に○年間延長され、その後も同様とする。
第17条(契約終了後の措置)
乙は、本契約期間の満了、解約、その他理由のいかんを問わず本契約が終了したときは、本件製品の製造・販売を直ちに中止し、甲から提供された技術情報を甲に返還するものとし、これらの複写物も保有してはならない。
・本条項は、契約終了に伴う特許・ノウハウの取扱等、契約終了の際に処置を要する事項をあらかじめ定めておくために設けます。
・例文のただし書は、仕掛品の扱いについて規定しています。
ただし、本契約期間満了の場合には、乙は、本契約満了後○ヶ月間に限り、本契約満了の日の手持ちの本件製品を販売し、又は製造中の本件製品を完成して販売することができる。この場合、乙は、第4条の実施料の支払い及び第5条の報告を本契約満了○ヶ月以内に行う。
第18条(協 議)
・本条項は、契約条文の解釈をめぐり疑義が生じた場合等に、協議により解決していく旨の精神を規定するために設けます。
・契約締結時点で想定していなかった事態がその後生じたときに、当事者間で円滑
に話し合いができるようにします。
甲及び乙は、本契約に定めのない事項又は解釈に疑義ある事項については、xxxxの原則に従って甲乙協議の上、これを解決する。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲及び乙が記名押印の上、各自1通を保有する。
令和××年×月×日
(住所)
甲 ○○株式会社
代表取締役社長 (氏名) 印
(住所)
乙 △△株式会社
代表取締役社長 (氏名) 印
・契約書の末尾には、当事者の代表者の記名押印をします。契約書が作成権限のある者によって正当に作成されたことを明確にし、後日、契約について紛争が生じ
た場合に契約書に証拠能力を与えることを目的に設けるものです。
特許及びノウハウ実施許諾契約書チェックリスト
条文 | チェック項目 |
前 文 | |
第1条 定義 | ①用語の定義 |
第2条 実施許諾 | ①種類 ②範囲 ③再実施権 |
第3条 技術情報の開示及び技術援助 | ①技術情報の開示時期 ②技術指導 ③費用負担 |
第4条 対価及び支払い方法 | ①支払方式 ②金額 ③支払時期 ④消費税 ⑤銀行振込手数料 |
第5条 実施報告 | ①報告内容 ②報告時期 ③実績無い場合の報告義務 |
第6条 対価の不返還 | ①返還金額 |
第7条 帳簿の保管と閲覧 | ①閲覧者 ②閲覧できる帳簿 ③閲覧時期 ④帳簿の保管 |
第8条 表示 | ①表示内容 |
第9条 秘密保持と流用禁止 | ①秘密情報の特定 ②秘密保持 ③流用禁止 ④適用除外 |
第10条 改良技術 | ①改良技術の範囲 ②改良技術の取扱い |
第11条 保証 | ①保証内容 ②救済 |
第12条 特許等侵害の回避・排除 | ①排除義務 ②協力内容 |
第13条 不争義務 | ①義務の内容 |
第14条 譲渡禁止 | ①権利・義務の譲渡禁止 |
第15条 解除 | ①事由 |
第16条 契約の有効期間 | ①始期 ②終期 ③適用除外条項 |
第17条 契約終了後の措置 | ①在庫品の販売の可否 |
第18条 協議 | ①疑義ある事項の処理方法 |
後 文 |