RETIO 特定紛争案件/平成15年度第5号のあらまし
RETIO. 2004. 11 NO.59
RETIO 特定紛争案件/平成15年度第5号のあらまし
建築条件付土地売買契約の解除をめぐるトラブル xx xx
1 事案の概要
買主甲は、平成15年9月14日、売主業者乙と建築条件付土地を代金3,260万円で購入のため不動産売買契約を締結し、手付金160万円を、また、同日付で請負代金1,220万円とする建築工事請負契約を締結し、手付金100万円を支払った。
甲は、売買契約を締結する前に、乙と建築設計に関する打合わせを行い、1階を和室とするよう要望し、乙も了解した。売買契約当日、乙は設計図案を甲に渡した。
甲は、建築工事請負契約締結後の同年10月
5日、乙から正式にもらった設計図を見たら、契約時にもらった設計図案では1階が6畳の和室だったのに、納戸になっていたので乙に苦情を言ったところ、乙は建築基準法上は納戸扱いになるが、甲が希望する和室仕様として建築すると回答した。
甲は、乙の回答に不信が募り、構造上できないものをできるとする乙の建築工事は信用できないとして、乙に対して、同年10月19日、契約の白紙解除と支払った手付金260万円の全額返還を要求した。
これに対して乙は、甲とは事前に間取り等の仕様について打合わせをし、設計図も作成し、134万余円の費用もかかっている、白紙解除は受け入れることはできないとし、同年 10月14日付内容証明郵便で、①契約を履行するか、②手付金260万円放棄による契約解除するよう通知した。
xは、同年10月17日付内容証明郵便で、乙
の通知書は何ら法的な効力はないとして、白紙解除による手付金260万円の全額返還を主張した。
乙は、同年10月21日付内容証明郵便で、甲の白紙解除による手付金の返還は約定にはないとして、白紙解除の法的根拠・事由を明らかにするよう主張した。
甲は、請負契約の設計仕様で1階和室が納戸になるのは契約の前提条件が異なり、要素の錯誤(民法95条)により無効となる、また、消費者契約法4条1項により契約の取消しが可能と主張したため、紛争になった。
2 紛争調整の経過
委員3名(弁護士1名、建築1名、一般行政1名)により4回の調整を行った。調整の過程で、甲は、①契約前の図面では1階が洋室になっていたので和室仕様にするよう要望したところ、乙も了解した、②契約締結後、確認申請の段階で正式な設計図をもらったが、1階が和室ではなく、納戸となっていた、構造上採光の関係で和室では確認申請が通らないということだった、③乙に苦情を言ったところ、建築基準法上は1階は納戸になるが和室仕様にするということだった、④契約前に1階が納戸となるという説明があれば購入しなかった、⑤契約の前提条件が違うので、契約の白紙解除と手付金260万円の全額返還して欲しい、等と主張した。
これに対して乙は、①事前に1階が納戸になるという説明はしていないが、1階の採光が厳しいということは伝えている、②契約解
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除は認める、③甲とは、事前に何度も設計について打合わせをし、設計費用として116万円かかっているので、その費用を差し引いた金額を返還する、等と主張した。
委員より、甲に対しては、乙の設計費用の請求は法的には根拠はないが、甲も打合わせの段階で、和室への変更、収納庫の変更、階段の変更等を要求しており、乙はそれに応じた設計のやり直しなど努力をしているので、本案件を解決するため、いくらかの解決金の支払ったらどうかと説明し、一方、乙に対しては、甲と設計契約を締結していないこと、設計図書も見せていないこと、設計について報酬を支払う約束をしていないこと、成果品がないこと、等から法的に設計費用を求める根拠がないこと、等を指摘した。
委員より、諸般の事情を勘案して、甲は解決金として20万円を乙に支払い、乙は240万円を返還するよう提示したところ、双方納得し、本案件は和解に至った。
3 和解の内容
① 甲と乙は、甲乙間の平成15年9月14日付不動産売買契約及び建築工事請負契約がいずれも本日合意解約されたことを相互に確認する。
② 乙は、甲に対し、甲が乙に対して前条の不動産売買契約に基づく手付金として支払った金160万円及び前条の建築工事請負契約の手付金として支払った100万円の返還義務があることを認める。
2 甲は、乙に対し、本案件の解決金として、金20万円の支払義務があることを認める。
3 甲と乙は、本日合意により、第1項記載の乙が甲に対して返還義務のある合計金260万円と前記記載の甲が乙に対して支払義務のある解決金20万円とを対等額
において相殺する。
4 乙は、甲に対し、前項による相殺の結果、なお残存する金240万円の金員を次のとおり2回に分割して支払う。
盧 本日金120万円を支払う。
盪 平成16年7月31日限り120万円を、甲の指定する預金口座に振り込む方法により支払う。振り込みに要する費用は乙の負担とする。
蘯 乙が前項の金員の支払を怠った時は、未払の金員のほか、遅滞の日の翌日から支払済みに至るまで未払額に対して日歩5銭の割合により遅延損害金を支払う。
③ 甲乙間には、本案件に関し、本和解条項に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
④ 甲及び乙は、今後互いに本案件に関し、裁判上であると裁判外であるとを問わず、一切の請求及び異議申立てをしないものとする。
⑤ 甲は、xxxへなした本案件に関する苦情申立てを取り下げる。
⑥ 甲及び乙は、第三者に対し、本案件の内容を積極的に公表しないものとする。