企 業 名 ヤマコー株式会社 所 在 地 岐阜県中津川市坂下 275 番地 1 代 表 者 村山 千利 事 業 内 容 ホテル・レストラン向けの調理道具と器や消耗品、組立式什器や屋台等の物販什器・内装設備の他、和雑貨や天然素材生活用品の企画・製造・販売。 資 本 金 9,565 万円 設 立 1973 年 3 月 20 日 第三者評価機関 株式会社 格付投資情報センター評価レポート:https://www.r-i.co.jp/rating/esg/index.html
2024 年 4 月 25 日
ヤマコー株式会社との
ポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結について
岐阜信用金庫(理事長 好岡 政宏)は、持続可能な社会への貢献を共に実現するため、ヤマコー株式会社(代表取締役 村山 千利)と、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結いたしましたのでお知らせします。
岐阜信用金庫は、引き続き、地域金融機関としての責任を果たし、ポジティブ・インパクト・ファイナンスの普及と持続可能な社会を実現するために、お客さまの目標にあわせたサポートを行い、ポジティブな社会的、環境的、経済的なインパクトの実現に積極的に取り組
んでいきます。
記
【契約内容】
実 | 行 | 日 | 2024 年 4 月 25 日 |
融 | 資 金 | 額 | 100 百万円 |
期 | 間 | 5 年 | |
資 | 金 使 | 途 | 事業資金 |
【企業概要】
企 | 業 | 名 | ヤマコー株式会社 |
所 | 在 | 地 | 岐阜県中津川市坂下 275 番地 1 |
代 | 表 | 者 | 村山 千利 |
事 | 業 内 | 容 | ホテル・レストラン向けの調理道具と器や消耗品、組立式什器や屋台等の物販什器・内装設備の他、和雑貨や天然素材生 活用品の企画・製造・販売。 |
資 | 本 | 金 | 9,565 万円 |
設 | 立 | 1973 年 3 月 20 日 | |
第三者評価機関 | 株式会社 格付投資情報センター |
以 上
ヤマコー株式会社
ポジティブインパクトファイナンス評価書
発行日:2024 年 4 月 25 日
発行者:岐阜信用金庫 ソリューション営業部
岐阜信用金庫は、ヤマコー株式会社(以下、「ヤマコー」)に対してポジティブインパクトファイナンス
(以下、「PIF」)を実施するにあたって、同社の事業活動が環境・社会・経済に及ぼすインパクト
(ポジティブインパクトおよびネガティブインパクト)を分析・評価した。この分析・評価は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱したPIF 原則および PIF 実施ガイド(モデル・フレームワーク)、ESG 金融ハイレベル・パネルにおいてポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、岐阜信用金庫が開発した評価体系に基
づいている。
目次
1.企業情報 3
(1)概要 3
(2)沿革 3
(3)経営理念及び各種方針 5
(4)事業内容 7
2.サステナビリティ 10
(1)社会貢献に資する取り組み 10
(2)環境保全に資する取り組み 12
(3)雇用に資する取り組み 14
(4)料理人育成に資する取り組み 15
3.インパクトの特定 16
(1)バリューチェーン分析 16
(2)インパクトレーダーによるマッピング 18
(3)特定したインパクト 22
4.KPI の設定 28
5.モニタリング 30
(1)ヤマコーにおけるインパクト管理体制 30
(2)当金庫によるモニタリング 30
(3)モニタリング期間 30
1.企業情報
(1)概要
企業名 | ヤマコー株式会社 |
本社所在地 | 岐阜県中津川市坂下 275-1 |
代表者 | 村山 千利 |
資本金 | 9,565 万円 |
売上高 | 1,915 百万円(2023 年 9 月期) |
設立 | 1977 年 1 月 |
事業内容 | ホテル・レストラン向けの調理道具と器や消耗品、 組立式什器や屋台等の物販什器・内装設備の他、 和雑貨や天然素材生活用品の企画・製造・販売。 |
従業員数 | 66 名(2024 年 4 月現在) |
資格・認証 | 建設業許可番号 (般-30) 第 700252 号 |
古物商許可番号 第 531190301300 号 |
(2)沿革
1972 年 | 現在地において中日化成工業として設立、資本金220万円。日本 スピンドル(株)の下請工場として、強化プラスチック製クーリングタワーの 製造を開始する。 |
1977 年 | ヤマコー(株)に社名変更、(株)曽南木材工業所との連携のもと、 業務用木製品とギフト用品の総合企画・製造・販売への業種転換を図る。資本金660万円。 |
1978 年 | 資本金1,000万円に増資、販売ルートを全国に拡大。 |
1979 年 | 資本金1,600万円に増資、業務用木製品の総合化を図る。 |
1980 年 | 資本金2,000万円に増資。 |
1981 年 | 台湾省律通企業公司と業務提携し、台湾製品の輸入業務開始。 |
1982 年 | 店装事業部発足、電飾看板と組立式屋台の製造・販売を開始。 |
1984 年 | 本社社屋、店装事業部の配送センター竣工。 |
1985 年 | 福岡営業所開設。資本金3,200万円に増資。 |
1986 年 | 名古屋貿易事務所開設。 |
1987 年 | 大阪営業所開設。本社物流センター竣工。 |
1992 年 | 店装事業部新社屋完成。 |
1993 年 | 名古屋中小企業投資育成(株)の転換社債を株式に転換、新資本金6,590万円。岐阜営業所・ショールーム移転拡張。 貿易部門が分離・独立して「YMCインターナショナル社」を設立。 |
1995 年 | 新倉庫竣工。 |
1996 年 | 東京営業所開設。本社拡張工事。ハウスウエアー事業部設立。 |
1999 年 | 東北出張所開設。 |
2000 年 | ハウスウェアー事業部事務所・配送センター新築工事竣工。ライフスタイル事業部に名称変更。 無償増資により、資本金9,565万円に増資。 店装事業部苗木工場、新築工事起工。 |
2001 年 | 店装事業部苗木工場、新築工事竣工。東京営業所移転拡張。 |
2002 年 | 名古屋中小企業投資育成より株式の譲渡をうける。 |
2003 年 | 古物商許可、建設業許可取得。中津川市苗木新築。 |
2004 年 | 大阪営業所新事務所へ移転。本社外壁工事完成。 |
2005 年 | 現代表取締役が代表取締役へ就任。 |
2008 年 | 障害者研修の受入れ開始。 |
2014 年 | 新倉庫東棟完成。 |
2015 年 | 東京営業所・ショールーム、台東区へ移転拡張。 用美カタログを電子書籍ファイルフォーマット規格(EPUB)へ対応。 |
2016 年 | 岐阜本部・ショールーム、移転拡張。 |
2020 年 | 新千歳空港「ポルトムインターナショナル北海道」家具納入。 |
2021 年 | STARBUCKS Coffee 伊勢内宮前店納入。 |
2021 年 | 用美公式オンラインショップ「YOUBI.shop」開設。 |
2022 年 | 東京青山にて実店舗「青山食演生活」オープン。 |
2023 年 | 豆腐作り器が日本ギフト対象の「岐阜賞」需要。 |
(3)経営理念及び各種方針
①経営理念
②経営ビジョン
③経営理念
貿易部
企画開発部
営業部
営業企画開発本部
➃組織体制
会 ⾧・社 ⾧
取 締 役 会
経営戦略会議
総務部
店装事業部
LS事業部
定番HR事業
別注HR事業
生産管理本部
新商品開発会議
(4)事業内容
同社は岐阜県中津川市に本社を構え、木製品を中心に天然素材を生かしたものづくりを展開している。ホテルや飲食店等で利用される業務用製品を中心に店舗内装・雑貨等を取り扱い、店舗の設計、施工までのトータルプロデュースにより「食」の楽しさを伝え、「賑わい」を演出し、「癒し」の空間を創出している。
同社の天然素材を活用した木製品の展開の根源は、創業当時家庭用向けに販売されていた桶を事業者向けに販売を開始したことがきっかけであり、プロの料理人が使用する調理器具を木製品の製造が盛んな岐阜県中津川市から全国に販売していた。当時は受注生産が中心であったが、全国初の試みとして在庫を保有し即納体制を整えた。
同社は「食の演出のスペシャリスト」として、木製品を中心に天然素材を活用した多様な自社ブランド製品の提供により飲食店、ホテル等を主要顧客としながら「食」の楽しさを伝え、「賑わい」を演出し、「癒し」の空間を提案している。
同社は自社オリジナルブランドである「用美」製品を中心として、ホテルや旅館、レストラン様向けの業務用の器や道具・什器、から店舗の設計、施工まで取り扱い、「食の演出のスペシャリスト」としてさまざまな業態、スタイルの店舗、顧客のニーズにマッチする 25,000 点以上の製品を提供している。
同社では本社を置く岐阜県中津川市周辺が産地である木曽ひのきを始めとし、国内はもとより海外の材料まで製品の特性や機能、ニーズに合わせて最適なものを選択できる環境を整備し、多岐にわたり天然素材の良さを生かした製品を開発している。
同社では営業活動より収集した情報と⾧年培った生産技術を活用し、「本物」にこだわり素材を吟味した「和」のテイストを活かした自社ブランド製品を展開
している。
「和」のテイストを活かした製品づくりを得意とし、伝統の技術を駆使した格調高い空間の演出、賑わいや親しみのもてる雰囲気の演出によりさまざまな「和」の表情をつくりあげ、国内外に向け広く発信している。
同社では卸売事業の展開に加え、メーカー直販 EC サイトの活用により、同社ブランド
「用美」の販売先の拡大、利用事業者の利便性向上を図っている。
また、同社では飲食店やホテル向けの業務用備品の卸売りにとどまらず、顧客ニーズや店舗スペースにあわせた別注品什器や備品から、内・外装の設計・施工まで、店舗空間のトータルプロデュース事業も展開している。
同社店舗空間のトータルプロデュースでは、業務用備品の主要ターゲットである飲食店やホテルに加え、小売店等も対象に顧客ニーズ、店舗スペースにあわせた多様な用途に対応した店舗用什器から店舗内装の設計、製作を実施し、販促ツールまで一貫しプロデュースしている。
店舗空間の調和と陳列される製品を最大限にひきたてることを基本に、"器と道具"造りの経験、ノウハウを活用し、顧客ニーズに合った店舗用什器から店舗内装の設計、製作に取り組んでおり、固定式の什器から移動式の屋台、イベント販売台等まで幅広い用途に対応し、「和」の雰囲気を活かした「賑わい」の空間を演出している。
これらの事業展開を通じ、業務用市場においては 2,000 件を超える取引先を確保するに至っており、提供する製品の品質への評価に加え、カタログ掲載品以外の製品の紹介や、別注品の製作など、顧客ニーズや店舗にあわせた製品の提案体制に高い評価を獲得している。
業務用設備の開発販売を主力事業としてきた同社であるが、近年では一般個人向け BtoC 事業の展開にも注力している。
直営店の運営に加え、展示会等への積極的出店を通じたブランド認知度の向上策の実行に加え、 EC サイトを開設し一般個人顧客との接点を積極的に確保し、今後も製品カタログ、季節パンフレット、新製品ニュース等の情報発信の工夫により BtoC 事業を進展させていく方針としている。
直営店の運営および各種展示会への積極的出店により、顧客との直接の接点を確保し、販路開拓と製品開発へと活かしている。
同社では一般消費者向け小売事業の強化に向けたEC サイトを開設し、天然素材雑貨を中心としたラインナップで販路を拡大している。
2.サステナビリティ
(1)社会貢献に資する取り組み
同社はホテルやレストランなど飲食店を主要顧客とし、調理道具から器、什器、店舗の備品まで、天然素材を用いたオリジナルブランド「用美」の 25,000 点を超える製品ラインナップを中心に提供し、活気のある店舗づくりをサポートしている。
具体的な取り組み内容は下記の通りである。
【自社ブランド「用美」製品提供による飲食店等店舗環境の整備への貢献】
・同社は自社ブランド「用美」によりホテルやレストランで使用される食器をはじめ、什器、備品などの商品展開により、飲食店等における調理から接客までの快適な店舗環境の総合的な整備に貢献している。
※用美とは
同社のオリジナルブランド名である「用美」には次のような意味が込められている。
「用の美」とも称される「民藝運動」に由来する言葉。日本に西洋的な「アート」の思想が導入されてから目を向けられなくなった、日本古来からの名もなき職人達による「簡素ながら機能美に優れた飾らない美しさ」を表現する言葉。私たちが大切にし守り続けてきたこの思考は、なにより料理人の想いをかたちにし、そのお客様方に最高の料理を提供するためのもの。一流の料理人のその所作自体がアートであり「美」であると捉えるなら、その支えたる道具にこそ華美な装飾は必要ない。
【豊富な商品ラインナップによる店内空間づくりへの貢献】
・同社が取り扱う商品の約 8 割は自社オリジナル商品であり、様々な商品展開をしている。その商
品ラインナップは 25,000 アイテムを超え、同社へ依頼すれば揃わないものがないといえるほど、多種多様な商品を取り扱っている。
・多様な商品を活用した店内空間づくりに加え、店装事業の展開により店舗空間設計、演出をトータルプロデュースし、レストランやホテルなどの事業者が思い描く店舗づくりに貢献している。
【店舗向け製品開発経験を活用した一般家庭向け雑貨の開発、提供】
・業務用製品の開発経験を活用し、一般家庭向け雑貨の開発、直営店および EC サイトでの提供に進出し、住居における快適な空間の演出に貢献している。
・BtoC 事業においてはおもてなしのコンシェルジュとして人の想う心を丁寧にサポートし、顧客ニーズにあわせたライフスタイルをより豊かに、より充実させる雑貨を提案している。
【自社商品開発による多様な木製品の提供】
・同社の天然素材を活用した木製品の展開の根源は、創業当時に家庭用向けに販売されていた桶を事業者向けに販売を開始したことがきっかけであり、プロの料理人が使用する調理器具を木製品の製造が盛んな岐阜県中津川市から全国に販売していた。当時は受注生産が中心であった が、同社が全国初の試みとして在庫を保有し即納体制を整えた。
・同社の商品開発の特徴として、全国を飛び回る営業担当者による市場ニーズの把握がある。創業当時より、世にないものは創り出すことを信念に寿司下駄や船盛など、時代に合わせて同社が開発した製品が多くある。近年では 2022 年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた「ヌン活」にあるようにアフタヌーンティーの流行に伴い、鳥かごをリメイクした商品提供用什器がある。
・市場ニーズをいち早くキャッチし、世にないものは同社が開発することで、多種多様な商品を開発してきた。
【竹のアフタヌーンティー篭】
竹を繊細に加工した職人の造り。
やわらかな曲線が、季節と空間を彩る二段のアフタヌーンティー篭。
【商品開発による地域伝統技術職人の仕事創出への貢献】
・創業当時より同社が取り扱っている桶、わっぱはそれぞれ職人の技術により製品製造が支えられており、地域伝統技術を用いた商品が従来からの提供方法、製品開発では市場が縮小していくな か、同社が新たな商品開発、価値創出に取り組むことで木製品を製造する職人の仕事創出、技術の承継に貢献している。
【職人仕事ができる協力会社の開拓】
・同社は創業以来ファブレスメーカーとして、同社が思い描く商品の製造ができる企業との協力関係を構築しており、特に、地元の中津川市坂下町や中津川市付知町、中津川市加子母の木製品メーカーとのつながりが深い。近年では、同社が製品プロデュースを手掛け「職人技術」と「市場ニーズ」を繋ぎ合わせることで、各地の木職人の技術を活かした商品展開を実現しており、地域職人との信頼関係のもとでの製品開発に取り組むことで、地域伝統技術の保全、発展に貢献している。
・海外協力会社に関しても、社⾧自ら現地への訪問を重ね、地場の木材を加工して木製品を製造する工場へアプローチし、信頼できる企業の開拓に取り組んできた。⾧年の協力関係から、協力工場の技術力向上にも貢献してきている。
(2)環境保全に資する取り組み
同社では環境負荷の抑制を志した事業活動の展開を図っている。具体的な取り組み内容は下記の通りである。
【資源の有効利用による廃棄物削減】
・同社はファブレスメーカーとして、製品の運搬が発生する。梱包に使用される段ボールの再利用や新聞紙を緩衝材として利用するなど、再利用の推進により廃棄物の削減に取り組んでいる。また、再生段ボールの利用も推奨し、企業活動を通じた環境負荷低減に取り組んでいる。
・社内に再利用の概念が根付くことで、常に段ボールは廃棄せずストックする体制が整っている。また、再利用品を使用することから、梱包時に異物混入が発生しないように徹底管理している。
・BtoB 事業となるホテル、レストラン向け製品販売においては、製品を保護しながらも過剰梱包を回避し、パッケージを簡易化することで廃棄物の発生を抑制している。
【発注対応による環境負荷低減】
・製造委託先への発注に際し、①素材による発注のタイミング、②大型連休(中国企業の旧正月など)への対応、③工場の生産能力、➃季節商品、を考慮した発注を実施することで、安定供給と不良発生の抑制を両立し、過剰在庫の発生を回避することで過度の製造、製品保管に伴う環境負荷を抑制している。
①素材による発注のタイミングについては、天然素材を扱うため素材によって加工に適した季節が異なる。加工に適さない時期に加工するとカビなどの発生原因となるため、季節を考慮した発注が重要となる。
②大型連休への対応については、製品の需給予想に基づき適正在庫の管理に努めている。大型連休など生産が止まる時期を考慮した発注により、国内への安定供給を実現している。
③工場の生産能力については、各工場の生産能力(品質、生産量、対応品目、保有材料など)を判断し、加工に適した工場への発注を手掛けることで、不良品発生による原材料処分を抑制している。
➃季節商品については、需要量を適切に判断した上での発注に加え、デザインを可能な限り通年利用可能なデザインとすることで大量廃棄とならないようにしている。
【製品輸送方法による環境負荷低減】
・製品の輸送に関しては、運送会社への適切な陸送依頼により、適時効率的な輸送方法を判断している。また、輸入に関しては船便にて一定量をまとめて輸送することで、環境負荷低減を図っている。
・一定量をまとめて輸入できる背景には、年間計画に基づく発注を実行していることに加え、商品の動きや営業担当者の注文状況に応じて注文量を調整していることが挙げられる。
【製品保管における環境負荷低減】
・早期納品体制に向け、一定量の製品在庫を保管する必要があるが、同社では需要予測、在庫管理の徹底により過剰在庫の保有を回避することで、製品保管における無駄を排除している。ま た、一定期間在庫した製品は値下げによる売り切り対応など、⾧期保管に伴う資産効率の低下を抑制している。これら各種取り組みを通じて、倉庫等で発生する電力消費を抑制している。
・製品保管倉庫においては立体的な収納に取り組むことで空間効率を高め、倉庫 1 か所での運営体制を可能とすることで在庫製品の同社内での運搬回数を削減するとともに、倉庫集約に伴い電力消費量等の過剰使用を回避している。
【製品カタログの電子対応】
・500 ページにおよぶ製品カタログは、同社が取り扱い可能な製品 すべてが記載されており、顧客が求める製品の検索に貢献してい る。従来通り、紙による発行を大切にしつつ、電子版によるペーパーレス化に対応することで、廃棄物削減に貢献している。
(3)雇用に資する取り組み
同社では一人ひとりの従業員がやりがいを持ち、いつまでも安心して働くことのできる職場づくりに取り組んでいる。
具体的な取り組み内容は下記の通りである。
【多様な人材の雇用促進】
・再雇用制度の制定、活用により 65 歳を超える従業員を 7 名採用しており、高齢者就業機会を創出している。また、産休・育休制度(男性従業員においても育休制度の活用実績)、時短勤務制度の制定、活用により育児との両立支援を推進している。結果として女性従業員は全体の約 30%となっている。
・人材紹介会社と提携した多様なバックグラウンドを持つ人材の確保を推進しつつ、地元での雇用を重視している。
・美術大学出身のデザイナーやシステムエンジニア、貿易実務経験者など、専門性の高い従業員を積極的に雇用し、そのうえで各人材が適材適所で能力を発揮できる職場環境を整えている。
【QC 活動を通じた社内改善】
・同社では部署別に編成された QC 活動により業務上の課題改善に継続的に取り組んでいる。 QC 発表会と呼ばれる同社独自の取り組みとして、QC 活動の結果を発表する場を年 2 回設け、活動の見える化を実施し、全従業員が業務改善に取り組む意識を醸成している。
・社内 QC 活動においてはグループ内の役割についても従業員の持ち回り制とし、改善活動のみでなく集団での取り組みにおける多様な役割の研修の場としても活用している。
・QC 発表会は 40 年以上継続しており、時代の変遷に合わせて企業の変革に取り組んでいる。
【教育体制の整備によるスキルアップ】
・同社では社内研修、社外研修を取り入れ、業務上必要となるスキルを身に着ける機会を創出している。
・社内研修で代表されるのは、新人研修であり商品知識や業務スキームなど業務上欠かすことのできないスキル習得の場を設け、現場では OJT によるスキル習得を促している。
・社外研修については、中小機構や投資育成会社のセミナーなどを活用し学びの場を提供している。また、展示会視察に積極的に派遣することで、エンドユーザーのニーズを把握する機会を創出するとともに、自社製品の活用のされ方を体験する場を提供している。
【従業員が心身ともに健やかに働き続けられる職場環境の形成】
・働き方改革の実現に向けた人事管理システムの導入、システム上での従業員への定期的な会社に対する意識の確認を通じた従業員の意見を取り入れた労働環境改善に取り組んでいる。また、業務効率化を通じて獲得した利益を従業員へ還元する人事考課制度の制定、定期的見直しを推進することで、働き続けられる職場環境の形成に取り組んでいる。
・年 1 度の自己申告表による振り返りを通じて、個々の適正に応じた人員配置を推進している。
(4)料理人育成に資する取り組み
【同社製品を活用した盛り付けイメージ等の伝達にも活用できる製品カタログ】
・同社の製品カタログの特徴として、商品写真だけではなく、料理の盛り付けをイメージした写真を掲載していることにある。盛り付けはプロの料理人が行っており、商品使用イメージの創出に留まらず、マナーとして器などをどのように扱うべきか分かりやすく掲載されている。
3.インパクトの特定
(1)バリューチェーン分析
インパクトの特定のため、同社主力事業についてバリューチェーン分析を実施した。同社は HR 事業部、店装事業部、LS 事業部の 3 事業から成り立っている。
○HR 事業部
ホテル、レストラン向けの調理道具や器を中心に、紙製品や演出小物、消耗品など各種取り扱っている。
○店装事業部
惣菜やデリカコーナー等の演出道具、物販什器や内装設備など、ニーズに応える店舗什器、内装設備のトータル提案を実施している。
○LS 事業部
天然素材を生かした和雑貨やバッグ、生活用品やアジアンテイストの家具等、ライフスタイルにこだわった商品を取り揃えている。
同社のバリューチェーン図(図は同社提供資料をもとに岐阜信用金庫にて作成)
(2)インパクトレーダーによるマッピング
先述のバリューチェーン分析の結果をもとに、インパクトマッピングを実施する。
同社の事業および川上・川下の事業を国際産業標準分類(ISIC)上の業種カテゴリに適用させた上、UNEP FI が提供するインパクトレーダーを用いて「ポジティブインパクト」(以下 PI)と「ネガティブインパクト」(以下 NI)を想定する。
同社の事業については「その他の家庭用品卸売業(ISIC:4649)」、「通信販売またはインターネットによる小売業(ISIC:4791)」を、川上の事業については「その他の木製品、コルク、わら及び編み物素材製品製造業(ISIC:1629)」を、川下の事業については「レストラン及び移動式飲食業
(ISIC:5610)」をそれぞれ適用し、発生するインパクトの検証を行った。
◎:主要カテゴリ ○:関連カテゴリ
川上の事業 | 同社の事業 | 川下の事業 | ||||||
① | ② | |||||||
国際産業標準分類 インパクトカテゴリ | 【1629】 その他の木製品、コルク、わら及び編み物素材製品製造業 | 【4649】 その他の家庭用品卸売業 | 【4791】 通信販売またはインターネットによる小売業 | 【5610】 レストラン及び移動式飲食業 | ||||
PI | NI | PI | NI | PI | NI | PI | NI | |
水 | ||||||||
食糧 | ○ | |||||||
住居 | ○ | |||||||
健康・衛生 | ○ | ○ | ||||||
教育 | ||||||||
雇用 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
エネルギー | ||||||||
移動手段 | ||||||||
情報 | ||||||||
文化・伝統 | ◎ | |||||||
人格と人の安全保障 | ||||||||
正義・公正 | ||||||||
強固な制度・平和・安定 | ||||||||
水(質) | ○ | ○ | ||||||
大気 | ○ | ○ | ||||||
土壌 | ||||||||
生物多様性と生態系サービス | ○ | |||||||
資源効❹・安全性 | ○ | |||||||
気候 | ○ | ○ | ||||||
廃棄物 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
包括的で健全な経済 | ○ | ○ | ○ | |||||
経済収束 | ○ |
上表のうち、同社事業における「経済収束」については同社事業活動との関連性が希薄と判断されるため分析を省略している。また、川上の事業は同社事業活動が与える影響については軽微なものとな
るため、分析を省略している。川下の事業は「健康・衛生」「文化・伝統」のみ分析対象とし、その他のカテゴリは同社事業活動が与える影響は軽微なものとなるため、分析を省略している。
同社の事業① その他の家庭用品卸売業(ISIC:4649)
PI | 「健康・衛生」「雇用」 |
NI | 「雇用」「水(質)」「大気」「生物多様性と生態系サービス」「気候」「廃棄物」 |
【社会面】
◆「健康・衛生」
高品質な調理器具、食器、什器備品等の提供により、健康的な生活基盤に貢献するという PIが発現する。
同社では HR 事業におけるホテル、レストラン向けの自社ブランド製品「用美」や LS 事業における一般家庭向け高品質雑貨など、25,000 点を超える製品を提供することで、利用者のニーズを満たすことでPI を拡大している。
上記は SDG3「すべての人に健康と福祉を」に該当する。
◆「雇用」
従業員の雇用の創出というPI と、労働形態によっては労働者の健康状態が脅かされるという NIが発現する。
同社では再雇用制度による高齢者就業機会を創出し、65 歳を超える従業員の 7 名採用実績や育休制度の利用推進により、男性従業員においても育休制度の利用実績がある。また、産 休・育休制度や時短勤務制度などにより育児との両立を支援し、女性従業員の活躍の場を設けている。これらの取り組みにより多様な人材がワーク・ライフ・バランスを確保しながら働き続けられる職場環境の形成に努めることで PI を拡大している。さらに、教育体制の整備により従業員のスキルアップ支援を実施し、PI を拡大している。
その他、QC 活動による業務改善や働き方改革の実現に向けた人事管理システムの導入による労働環境改善を通じて NI を緩和している。
上記は SDG5「ジェンダー平等を実現しよう」、SDG8「働きがいも経済成⾧も」に該当する。
□「8.5:2030 年までに、若者や障害者を含むすべての女性と男性にとって、完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい仕事を実現し、同一労働同一賃金を達成する。」
□「8.8:移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある人々を含め、すべての労働者を対象に、労働基本権を保護し安全・安心な労働環境を促進する。」
【環境面】
◆「水(質)」「大気」「生物多様性と生態系サービス」「気候」
製品輸送に伴い、水質汚染や大気汚染が発生する可能性があり、生態系に悪影響を与える可能性が発生するという NI が発現する。
同社では、運送会社への適切な陸送依頼により、適時効率的な輸送方法を判断していることに加え、輸入に関しては船便にて一定量をまとめて輸送することで、効率的な輸送を手掛け環境負荷の低減を図ることでNI を緩和している。
上記は SDG12「つくる責任つかう責任」、SDG13「気候変動に具体的対策を」に該当する。
□「12.4:2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクル全体を通して化学物質や廃棄物の環境に配慮した管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小限に抑えるため、大気、水、土壌への化学物質や廃棄物の放出を大幅に減らす。」
◆「廃棄物」
卸売り販売時の過剰なパッケージングは廃棄物の増加を招くという NI が発現する。
同社では製造委託先への発注に際し、①素材による発注のタイミング、②大型連休(中国企業の旧正月など)への対応、③工場の生産能力、➃季節商品、を考慮した発注を実施すること
で、安定供給と不良発生の抑制を両立し、過剰在庫の発生を回避することで過度の製造、製品保管に伴う環境負荷を抑制している。
その他、製品運搬時の段ボールや緩衝材の再利用推進や製品カタログの電子化対応により廃棄物発生を抑制しNI を緩和している。
上記は SDG12「つくる責任つかう責任」に該当する。
□「12.5:2030 年までに、廃棄物の発生を、予防、削減(リデュース)、再生利用(リサイクル)や再利用(リユース)により大幅に減らす。」
同社の事業② 通信販売またはインターネットによる小売業(ISIC:4791)
PI | 「雇用」「包括的で健全な経済」 |
NI | 「雇用」「廃棄物」「包括的で健全な経済」 |
上記のうち、「雇用」については同社の事業①と重複するため記載を省略する。
【環境面】
◆「廃棄物」
通信販売時における過剰な梱包は廃棄物の増加につながるという NI が発現する。
同社では通信販売時の発送資材について製品を保護しながらも最低限の資材活用に努め、NIを緩和している。
上記は SDG12「つくる責任つかう責任」に該当する。
□「12.5:2030 年までに、廃棄物の発生を、予防、削減(リデュース)、再生利用(リサイクル)や再利用(リユース)により大幅に減らす。」
【経済面】
◆「包括的で健全な経済」
通信販売の活性化や成⾧は地域における健全な経済の維持に貢献するという PI が発現する一方で、地域における中小小売業の発展を阻害する可能性を発生させるという NI が発現する。 同社では業務用製品のBtoB 事業が中心であり、BtoB 事業で培った技術・ノウハウを活用し、新事業展開している。BtoC 事業にてEC サイトで製品を入手できる機会を創出し、PI を拡大している。
PI | 「健康・衛生」「文化・伝統」 |
上記は SDG9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。川下の事業 レストラン及び移動式飲食業(ISIC:5610)
【社会面】
◆「健康・衛生」
レストランなどで食事が提供されることで、幸福感がもたらされるという PI が発現する。
同社では、「食の演習のスペシャリスト」として、木製品を中心に天然素材を活用した多様な自社ブランド製品を提供している。⾧年、レストランやホテルなどの業務用製品を開発、提供すること で、事業者が思い描く店舗づくりの実現に貢献し、さらには、レストランなどを利用する人に対して、味わいだけではなく、食器や什器により「食」の楽しさを伝え、「賑わい」を演出することで幸福感をもたらしPI を拡大している。
上記は SDG3「すべての人に健康と福祉を」、SDG9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。
◆「文化・伝統」
「和食」は 2013 年 12 月にユネスコ無形文化遺産に登録されているように、料理を中心に日本文化が発信されるという PI が発現する。
同社では、「職人技術 × 天然素材」によるホテルや飲食店で利用される業務用製品を製造しており、食の味わいだけではなく、伝統技術を発信することで日本文化に触れられる機会を創出することでPI を拡大している。
上記は SDG12「つくる責任つかう責任」に該当する。
□「12.b:雇用創出や地域の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して、持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。」
(3)特定したインパクト
下図は「バリューチェーン分析」「インパクトマッピング」の結果を踏まえて、同社のバリューチェーンが与えるインパクトを可視化したものである。
以上を踏まえて同社のインパクトを下記の 3 つに特定した。
【重要なインパクト】
「職人技術や天然素材を活かした自社ブランド製品展開」
「環境に配慮した事業活動の推進」
「社員の働きがい創出と働きやすい職場環境の形成」
① 職人技術や天然素材を活かした自社ブランド製品展開:SDG3、9、12
同社ではホテルやレストランなど飲食店を主要顧客としたBtoB 事業において、調理道具から器、什器、店舗の備品まで、オリジナルブランド「用美」製品を中心に 25,000 点を超える製品ラインナップを提供する HR 事業と、店舗空間をトータルプロデュースする店装事業を展開しており、また近年ではBtoB 事業で培ってきた製品企画開発力、提案力を活用しBtoC 事業にて一般家庭向け雑貨をも手掛け、住居における快適な空間の演出に取り組み、食の演出、環境向上を通じた健やかな生活環境の創出に貢献している。
同社を取り巻く事業環境に関して、BtoB 事業では主要顧客層であるホテルやレストランにおいても食事サービスの高付加価値化に向けて、提供されるメニューのみでなく提供方式、提供空間にも特別感を演出する傾向が見られている。同社では、「職人技術 × 天然素材」により、食の味わいだけではなく、伝統技術を発信することで日本文化に触れられる機会を創出している。
同社に対しても受注先より既成ラインナップ製品のみでなく、高付加価値なサービス提供のためのオーダーメイド食器、什器等へのニーズが高まっており、顧客ニーズを捉えながらの製品開発、提供にてこれらの高付加価値化ニーズに応えていく方針としている。
また、BtoC 事業においても直営店、直営 EC サイトの展開を通じてエンドユーザーのニーズを直接的に確認しながら、ライフスタイルの変化にあわせた新製品を継続的に投入していく方針としてい る。
同社の新製品開発においては、死蔵在庫、売れ残りの回避のため数量限定での新製品テスト投入、季節性商品としての投入、定番商品としてのカタログ掲載品としての投入と段階を分けて製品を市場に投入しており、各段階において継続的に製品改良を図ることで顧客ニーズにあわせた製品開発を目指している。
事業機会となっている BtoB 事業における高付加価値オーダーメイド製品ニーズや、BtoC 事業における新たなライフスタイルに関する製品ニーズを捉えた製品開発においても、製造委託先との連携を強化しながら段階を分けた製品投入、製品改良に取り組み、同社製品を用いて演出する食の空間の更なる向上、これによる人々の健やかな生活の実現につなげていく方針としている。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「健康・衛生」「包括的で健全な経済」
「文化・伝統」のカテゴリに該当し、社会的側面、経済的側面のPI を拡大すると考えられる。
② 環境に配慮した事業活動の推進:SDG13
同社では製造委託先への需要予測に基づく効率的発注と仕入・発送における配送効率化への取り組み、製品保管における保管環境の集約化、空間効率向上への取り組みを通じて、製品の安定提供と環境負荷抑制を両立している。
また、社内照明設備のLED 化推進等を通じた消費電力の抑制や製品カタログの電子媒体への移行推進により環境負荷を抑制している。
加えて、製品販売時のパッケージングにおいても梱包資材の再利用やパッケージング自体の簡略化により廃棄物の発生を抑制している。
今後においては本社および倉庫環境の見直し・再構築を契機に、社内CO2 排出量の見える化を図っていく。CO2 排出量の現状把握を通じてSBT 認定も取得し、削減計画の策定に取り組んでいく方針である。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「気候」のカテゴリに該当し、環境的側面の NI を緩和すると考えられる。
③ 社員の働きがい創出と働きやすい職場環境の形成:SDG8
・QC 活動を中心とした従業員のスキルアップと業務効率化
同社では社内外の研修利用、OJT 体制の整備を通じて従業員がスキルアップに取り組むことのできる環境を整備するとともに、40 年以上にわたり継続している社内 QC 活動を通じて従業員の自発的な業務改善への姿勢の醸成、従業員間のコミュニケーション促進、社内課題の解決へとつなげている。
今後においても QC 活動のなかで提案される業務効率化に資するシステム化や業務改善に継続的に取り組むとともに、人材の適正配置の推進、業務の標準化を図っていくことで特定の従業員への業務負荷の集中を回避しながら、すべての従業員がやりがいを持ちながら働き続けやすい職場環境の形成に取り組んでいく方針である。
・多様な人材の雇用促進、従業員が心身ともに健やかに働き続けられる職場環境の形成
同社では再雇用制度、育休制度、産休制度等の整備活用や、時短勤務制度の活用等通じて多様な人材が働き続けやすい職場環境の形成に努めており、また専門性の高い従業員の積極採用、活用により多様な人材の雇用を促進し、地域における雇用創出に貢献している。
さらに、働き方改革の実現に向けた人事管理システムの導入活用、ファン付き作業着の導入をはじめ従業員の意見を採用した労働環境改善に積極的に取り組み、従業員が心身ともに健やかに働き続けられる職場環境形成に努めている。
今後においても、多様な人材が働ける環境の整備、改善に継続的に取り組み、健康経営優良法人の認定取得を通じて従業員の健康管理、健康増進にも努めていくことで、地域の雇用を守り、持続可能な地域経済への貢献を強化していく。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「雇用」のカテゴリに該当し、社会的側面の PI を拡大し、社会的側面の NI を緩和すると考えられる。
(4)インパクトニーズの確認
① 日本におけるインパクトニーズ
同社売上の大半は日本国内におけるものであり、国内における SDG インデックス&ダッシュボードを参照し、そのインパクトニーズと同社のインパクトとの関係性を確認した。
本 PIF において特定したインパクトに対応する SDGs のゴールは、以下の 5 点である。
「 3:すべての人に健康と福祉を」
「 8:働きがいも経済成⾧も」
「 9:産業と技術革新の基盤をつくろう」
「12:つくる責任つかう責任」
「13:気候変動に具体的な対策を」
国内における SDG ダッシュボード上では、「9」に関しては「達成に近づいている」とされているものの、
「12」「13」に関しては「大きな課題が残る」、「8」に関しては「課題が残る」とされており、同社における自社ブランド製品の展開を通じた空間演出への取り組み、雇用機会の創出と職場環境整備への取り組み、環境負荷低減の取り組みなどが、日本国内におけるインパクトニーズと一定の関係性があることを確認した。
(出典:SDSN)
② 岐阜県におけるインパクトニーズ
同社の事業活動は立地する岐阜県を中心に行われていることから、「岐阜県 SDGs 未来都市計画」を参照し、岐阜県内における SDGs 達成に向けての課題を確認した。
下記の通り、岐阜県では「<環境>美しい清流とそれを育む豊かな森の保全と活用」、「<経済>
「清流の国ぎふ」ブランドと変化に強い地域経済の確立」、「<社会>誰もが活躍し生きがいを感じられる地域社会の構築」を 2030 年のあるべき姿と設定しSDGs 達成に向けた課題を設定しており、同社における自社ブランド製品の展開を通じた空間演出への取り組み、雇用機会の創出と職場環境整備への取り組み、環境負荷低減の取り組みなどが、岐阜県におけるインパクトニーズと一定の関係性があることを確認した。
(出典:岐阜県第 2 期 SDGs 未来都市計画の概要)
③ 岐阜信用金庫との親和性
◆「ぎふしんSDGs 宣言」
以下の 3 項目をSDGs 達成に向けた重点課題としている。
(1)持続可能な地域の経済成⾧のための活動
(2)持続可能な地域産業の基盤構築のための活動
(3)持続可能なまちづくりのための活動
◆親和性の確認
本件 PIF の取り組みに際し特定した当社のインパクトである「職人技術や天然素材を活かした自社ブランド製品展開」については、「ぎふしんSDGs 宣言」の(1)、(2)、(3)と、「環境に配慮した事業活動の推進」については「ぎふしんSDGs 宣言」の (2)、(3)と、「社員の働きがい創出と働きやすい職場環境の形成」については、「ぎふしんSDGs 宣言」の (3)と親和性があり、相互に協力しあうことで、「経済」「社会」「環境」の 3 つの側面に渡り、持続可能な開発に関する枠組みとして、良質な効果が発生するものと思われる。
以上から、本 PIF の取組みは追加性のあるPI 創出支援を行うものであり、その本源的目的との合致を確認したうえで SDGs 達成に向けた資金需要と資金供給とのギャップを埋めることを目指すものである。
4.KPI の設定
特定したインパクトの発現状況を今後も継続的に測定可能なものとするため、先に特定したインパクトに対し、インパクトの種類、インパクトカテゴリ、関連する SDGs、内容・対応方針および目標と KPI を整理、設定する。
■職人技術や天然素材を活かした自社ブランド製品展開
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 社会的側面においてポジティブインパクトを拡大経済的側面においてポジティブインパクトを拡大 |
インパクトカテゴリ | 「健康・衛生」「包括的で健全な経済」「文化・伝統」 |
関連する SDGs |
|
内容・対応方針 | ・HR 事業、店装事業におけるハイエンドニーズ、オーダーメイドニーズ確保に向けた営業活動の推進、ニーズにあわせた社内外の新製品開発体制整備の推進 ※HR 事業とは、ホテル、レストラン向けの調理道具や器を中心に、紙製品や演出小物、消耗品など各種取り扱う事業。 ・LS 事業の認知度向上に向けた販路開拓策、営業活動の推進 ※LS 事業とは、天然素材を生かした和雑貨やバッグ、生活用品やアジアンテイストの家具等、ライフスタイルにこだわった商品を取り扱う事業。 ・社内全従業員を対象とした新製品開発へのアイディア募集の継続実施 ・これらを通じ、食の環境演出による健やかな生活への貢献、法人・個 人の商品へのアクセス向上を図る |
目標とKPI | ・2028 年 9 月期までに、売上高 27 億円以上を達成する。 ・2028 年 9 月期までに HR 事業部の売上高を 20 億円規模とする (2023 年 9 月期実績:14.8 億円)。 ・2028 年 9 月期までに店装事業部の売上高を 5 億円規模とする (2023 年 9 月期実績:2.7 億円)。 ・2028 年 9 月期までに LS 事業部の売上高を 2 億円規模とする (2023 年 9 月期実績:1.7 億円)。 ・2028 年 9 月期まで継続的に新商品開発に取り組み、毎年 200 アイテムの新商品を市場に導入(既存製品との入替含む)する。 |
■環境に配慮した事業活動の推進
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 環境的側面においてネガティブインパクトを緩和 |
インパクトカテゴリ | 「気候」 |
関連する SDGs | |
内容・対応方針 | ・本社および倉庫環境の見直し・再構築を契機に社内CO2 排出量の見える化を図る。 ・社内 CO2 排出量を基に脱炭素化計画を策定し、計画に沿った対策 を実施していく。 |
目標とKPI | ・2025 年 9 月期までに、社内 CO2 排出量の見える化を図り、測定結果に基づく脱炭素化計画を策定する。 ・脱炭素化計画に基づき 2026 年 9 月期までに、SBT 認定を取得 し、計画に沿って年 4.2%以上の削減を進める。 |
■社員の働きがい創出と働きやすい職場環境の形成
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 社会的側面においてポジティブインパクトを拡大社会的側面においてネガティブインパクトを緩和 |
インパクトカテゴリ | 「雇用」 |
関連する SDGs | |
内容・対応方針 | ・多様な人材が働き続けられるように従業員の意見を取り入れるなど、労働環境の継続的な整備、改善を推進 ・健康経営優良法人認定の取得、これに伴う労働環境の整備改善 ・QC 活動(従業員による業務上の課題改善)を通じた業務負荷の 軽減、業務改善に向けた参画姿勢の醸成、スキルアップの促進 |
目標とKPI | ・2028 年 9 月期までに新規雇用者を 10 名採用する。 ・2026 年 9 月期までに健康経営優良法人認定を取得し、継続する。 ・QC 活動による年間 12 件内外の現場改善実施を継続する。 |
5.モニタリング
(1)ヤマコーにおけるインパクト管理体制
同社では、村山社⾧を中心に自社業務の棚卸を行い、本 PIF におけるインパクトの特定、並びに KPI の設定を行った。
今後については、以下の体制を中心とした同社プロジェクトチームが柱となって SDGs の推進、本 PIF で設定したKPI の進捗管理を行っていく方針である。
【モニタリング体制】
村山 千利
代表取締役社⾧
統括責任者
(2)当金庫によるモニタリング
本 PIF で設定したKPI および進捗状況については、同社と岐阜信用金庫の担当者が定期的な場を設けて情報共有する。情報共有については、少なくとも年に 1 回実施することに加え、日々の情報交換や営業活動を通じて実施していく。
(3)モニタリング期間
下記の通り融資返済期限と同一期間にて定める。
5 年間
(2029 年 4 月 20 日)
モニタリング期間
(返済期限)
【留意事項】
1.本評価書の内容は、岐阜信用金庫が現時点で入手可能な公開情報、ヤマコー株式会社から提供された情報や同社へのインタビューなどで収集した情報に基づいて、現時点での状況を評価したものであり、将来における実現可能性、ポジティブな成果等を保証するものではありません。
2.岐阜信用金庫が本評価に際して用いた情報は、岐阜信用金庫がその裁量により信頼できると判断したものではあるものの、これらの情報の正確性等について独自に検証しているわけではありません。岐阜信用金庫は、これらの情報の正確性、適時性、網羅性、完全性、および特定目的への適合性その他一切の事項について、明示・黙示を問わず、何ら表明または保証をするものではありません。
3.本評価書に関する一切の権利は岐阜信用金庫に帰属します。評価書の全部または一部を自己使用の目的を超えての使用(複製、改変、送信、頒布、譲渡、貸与、翻訳及び翻案等を含みます)、または使用する目的で保管することは禁止されています。