Contract
令 和 2 年 1 月 1 4 日公契約制度に関する研修会八 戸 市 資 料
八戸市における公契約制度の検討状況について
1 公契約制度とは
公契約制度とは、国、県、市町村が発注者となる工事や業務委託等の契約(公契約)において、厳しい価格競争に起因するダンピング受注等による労働者や下請業者へのしわ寄せ等の防止や、公共サービスの品質の確保等を目的に、契約条項に労働者の賃金下限額を定める等の労働環境の適正化に関する措置内容を規定する制度である。
2 制度検討の背景・経緯
これまで当市では、条件付き一般競争入札の拡大並びに低入札価格調査制度及び一 抜け方式の導入等、あらゆる機会を捉えて入札制度の改正に取組んできたところである。
しかしながら、昨今の建設工事における発注件数の減少等を背景とした、事業者間の価格競争の激化が入札価格の低下を招き、その結果、公契約に従事する労働者の労働環境の悪化や下請業者へのしわ寄せ等に繋がることが全国的に懸念されている。
このような中、国では二省労務単価の引上げや低入札価格調査制度における調査基準価格の引上げ、働き方改革の推進に向けた取組等を進めているが、当市においても、公契約における労働者の適正な労働環境の確保に向け、より実効性の高い取組を推進する必要があると考え、平成 30 年7月から令和元年 10 月にかけて有識者・労使関係団体等で構成する「八戸市公契約制度研究会議」を計6回開催し、「公契約制度に関する事業所アンケート調査(平成 30 年 11 月実施、対象:市内の建設工事登録業者)」の結果等を踏まえながら、当市独自の公契約制度の内容・方向性等について意見交換を実施した。
【委員意見(主なもの)】
・元請・下請関係の適正化を踏まえ、市として最低限の制度は必要である。
・事業者への意識啓発等の観点から、条例での制度実施が望ましい。
・深刻な人手不足であるという現状等を踏まえ、国で定める最低賃金額よりも高い賃金下限額を市が独自に設定し、労働者を確保する必要があると思う。
・賃金下限額の設定には事業者・関係団体等との合意が必要であるが、事業者の制度理解が進んでいない現状では、設定は困難であると思う。
【アンケート結果(主なもの)】
・約8割の事業所が制度内容を「知らない」と回答。
・何らかの制度設計をするのであれば下請業者に配慮した制度を望む。
・深刻な人手不足であり、国で定める最低賃金額の2倍以上の条件で求人を募集しても労働者を確保できない状況であり、業種別の賃金下限額の設定が必要である。
・労働者の保護を優先し賃金下限額を設定した結果、会社の体力が奪われ、倒産してしまうのであれば本末転倒であると思う。
3 制度方針(案)
これまでの研究会議での検討の結果、賃金下限額を設定せず、制度の周知を図る観点から、公契約に関する基本方針、受発注者双方の責務等を盛り込むとともに、制度の実効性担保のため、労働者の労働環境の確認を行うことを規定する条例の制定を目指す。
(条例(案)は資料4頁~6頁参照)
<制度内容>
対象契 約 | 予定価格1億5千万円以上の工事請負契約 (=議会の議決を要する契約) |
適用労働者 | 対象契約を受注した元請業者、及び下請契約を締結した一次下請業者のいずれかに雇用されており、公共工事設計労務単価で区分される 51 職種に該当する労務者 ※元請業者(又は一次下請業者)が市外業者の場合も、制度の 対象 |
確認手 続 | (1)賃金台帳による確認報告対象:元請業者 報告時期:対象工事に関する労働賃金を最初に支払った月の翌月 確認内容:対象契約に従事する自社の労務者への賃金額が最低賃金額以上であるか 等 (2)労働環境報告書による確認 報告対象:元請業者・一次下請業者報告時期:契約締結後 確認内容:「労働条件」「安全衛生」「賃金」等の労働環境が 適正であるか 等 (詳細は資料3頁参照) |
<制度内容に対する考え方>
元請・下請関係の適正化を図る観点から、まずは、契約規模が大きく、多重下請構造となっている建設工事を対象に制度を実施する。
事業者に対し労働環境の報告を求める等の実効性を担保することにより、公契約における労働環境の確保に一定の効果が期待できる。
制度の拡充(対象範囲の拡大等)については、制度の実施状況等を踏まえながら、必要に応じて検討する。
4 今後のスケジュール(予定) | |
年 度 | x x |
令和2年度 | ・パブリックコメント(※)の実施 ※条例案等に対し、広く市民の意見・提案等を伺い、出された意見等を考慮した上で、意思決定を行う手続 ・条例案の議会への提出 ・制度説明会の開催(条例案の議決後) |
令和3年度 | ・条例の施行(制度開始) |
参 考
参考
労 働 環 境 報 告 書 (案)
契約件名(工事名) | |
受注者等 (受注者・下請負者) | (住 所) (商号又は名称) (代表者氏名) 印 |
1.法定帳簿の整備 | |
法定3帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)が整備されていますか。 | はい ・ いいえ |
2.労働条件 | |
ア 就業規則、労働契約、労使協定等の労働条件について、適正な内容となっていますか。 | はい ・ いいえ |
イ 時間外及び休日の労働に関する協定(36協定)を労働基準監督署に届け出ていますか。 | はい ・ いいえ |
ウ 就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ていますか。また労働者に周知していますか。 (常時10人以上の労働者を使用する場合に限る。) 周知方法【 1.掲示・備え付け 2.交付 3.その他( )】 | はい ・ いいえ ・ 対象外 |
エ 労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を書面等で明示していますか。 | はい ・ いいえ |
3.労働時間 | |
ア 労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録していますか。 | はい ・ いいえ |
イ 休日及び年次有給休暇を適切に付与していますか。 | はい ・ いいえ |
4.安全衛生 | |
ア 安全衛生管理体制は、適正に整備・運用していますか。 | はい ・ いいえ |
イ 事故報告書等の記録・報告など、業務災害への対策は適正に行っていますか。 | はい ・ いいえ |
ウ 労働安全衛生法に基づく健康診断を適正に実施していますか。 | はい ・ いいえ |
5.各種保険等 | |
ア 労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険への加入等の手続を適正に行っていますか。 | はい ・ いいえ |
イ 建設業退職金共済制度又はこれに類似する退職金制度への加入等の手続を適正に行っていますか。 | はい ・ いいえ |
6.賃金 | |
ア 賃金台帳等により適正に計算された給与を毎月、一定の期日を定めて通貨で支払っていますか。 | はい ・ いいえ |
イ 時間外・休日・深夜勤務等がある場合、割増賃金を適正に支払っていますか。 | はい ・ いいえ |
ウ 最低賃金法に定める青森県の地域別最低賃金額以上の賃金を労働者に支払っていますか。 | はい ・ いいえ |
エ 本工事に従事する労務者の賃金について最低の賃金単価(時給)はいくらですか。 | 職種: 賃金: 円/h |
7.下請契約(当該工事について下請契約等があった場合のみ回答) 対象外 | |
ア 下請契約等を行う場合、協議により代金を決定し、書面による契約締結を行いましたか。 | はい ・ いいえ |
イ 下請代金について,工事完了後に契約書等の定めにより,速やかに支払いを行いましたか。または、行う予定ですか。 | はい ・ いいえ |
(その他特記事項) ※上記チェック項目で「いいえ」がある場合は、該当する項目番号と理由を記載すること |
参 考
(仮称)八戸市公契約条例(案)
本条例案は、研究会議で検討した内容であり、今後、この案を基に、市内部での検討結果や、パブリックコメントの結果等を踏まえ、内容を調整する予定です。
(目的)
第1条 この条例は、公契約に係る基本的な事項を定め、市及び受注者等の責務を明らかにするとともに、労働者等の適正な労働環境の確保を図り、もって公共サービスの品質の確保及び地域経済の活性化に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 公契約 市が発注する工事又は製造の請負、業務委託その他の契約及び指定管理者
(地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 244 条の2第3項に規定する指定管理者をいう。)と市が締結する公の施設の管理に関する協定をいう。
(2) 特定公契約 公契約のうち、別に定める種類及び金額の要件に該当するものをいう。
(3) 受注者 市と公契約を締結する者をいう。
(4) 下請負人 下請、再委託その他いかなる名義によるかを問わず、受注者その他市以外の者から公契約に係る業務の一部を請け負う者をいう。
(5) 受注者等 受注者及び下請負人をいう。
(6) 下請契約等 次に掲げる契約をいう。
ア 下請、再委託その他いかなる名称によるかを問わず、受注者その他市以外の者から公契約に係る業務の一部を請け負う契約
イ 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和 60 年法律第 88 号。以下「労働者派遣法」という。)に基づき、自己の雇用する労働者を受注者又は下請負者へ派遣し、公契約に係る業務に従事させることを内容とする契約
(7) 労働者等 次に掲げる者のうち、規則で定めるものをいう。
ア 受注者等に雇用され、公契約に係る業務に従事する労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)
イ 労働者派遣法の規定により公契約に係る業務に派遣される者
ウ 自らが提供する労務の対価を得るため、受注者等との請負契約により公契約に係る業務に従事する者
(8) 労働環境 公契約に係る業務に従事する労働者等の労働条件(職場における安全衛生、労働賃金、労働時間等)をいう。
(基本方針)
第3条 公契約は、市及び受注者等の双方が次に掲げる事項を基本として締結し、履行されなければならない。
(1)xx性、透明性及び競争性を確保すること。
(2)契約内容の適正な履行及び品質を確保すること。
(3)労働者等の適正な労働環境を確保すること。
(4)市内事業者の育成及び活用に資すること。
(市の責務)
第4条 市は、次に掲げる事項等に留意し、公契約に関する施策を総合的に推進するものとする。
(1)労務及び資材等の取引価格等を考慮した積算に基づき、適正な予定価格を定めるとともに、契約の規模、履行の難易、労働者の労働環境の確保等を踏まえ、適正な履行期間を設定すること。
(2)公契約の締結後、やむを得ない事由により設計図書を見直す必要が生じた場合で、契約金額又は履行期間に変動が生じる場合は、契約の相手方と契約金額又は履行期間を変更する契約を締結すること。
(3)地域経済の健全な発展に配慮し、市内事業者の受注機会の確保に努めること。
(受注者等の責務)
第5条 受注者等は、労働基準法その他関係法令を遵守し、労働者等の適正な労働環境を確保しなければならない。
2 受注者等は、次に掲げる事項等に留意し、公契約を適正に履行するとともに、市が実施する施策に協力するものとする。
(1)適正な価格による契約を締結すること。
(2)公契約の履行における、市内事業者の積極的な活用を図ること。
(3)下請負人との契約に当たっては、下請負人との対等な立場における合意に基づいたxxな契約を締結すること。
(労働環境等の報告)
第6条 受注者等は、自らが締結した公契約が規則で定める範囲の契約(以下「特定公契約」という。)に該当するときは、市長に対し、規則で定めるところにより、労働者等の適正な労働環境を確保するための取組について必要な報告を行わなければならない。
(労働者等への周知)
第7条 受注者等は、特定公契約に従事する労働者等に対し、次に掲げる事項について業務が実施される作業所等の見やすい場所に掲示し、又は書面を交付すること等により労働者等に周知しなければならない。
(1)条例が適用される公契約の名称
(2)第8条の規定による申出をする場合の申出先
(3)第8条の規定による申出を行った労働者等への不利益な取扱いの禁止
(労働者等の申出等)
第8条 公契約のうち特定公契約に従事する労働者等は、受注者等が関係法令又はこの条例に違反している疑いがあるときは、市長にその旨を申し出ることができる。
(不利益な取扱いの禁止)
第9条 受注者等は、前条の規定による申出があったときは、当該申出をした労働者等に対し、誠実に対応するとともに、当該申出を理由に解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(報告の要求及び立入調査)
第 10 条 市長は、第8条の規定による申出があったとき、その他この条例の規定に違反している疑いがあるときは、受注者等に対し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又は市の職員に受注者等の事業場等に立ち入り、書類の閲覧その他必要な調査をさせることができる。
(是正措置)
第 11 条 市長は、前条の規定による報告若しくは資料の提出又は立入調査の結果、受注者等がこの条例に違反していると認めるときは、当該受注者等に対して、当該違反を是正するために必要な措置を講ずることを求めるものとする。
2 受注者等は、前項に規定する措置を講ずるよう求められた場合は、速やかに当該措置を講ずるとともに、市長が指定する期日までに当該措置の内容を市長に報告しなければならない。
(公契約の解除等)
第 12 条 市長は、受注者等が次のいずれかに該当するときは、公契約の解除又は指名停止等の必要な措置を行うことができる。
(1)第 10 条の規定による報告又は資料の提出がないとき、又は、同条の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
(2)前条の規定による是正措置を講じないとき又は報告された是正内容では指導に対する是正が図られないと認めるとき。
2 前項の規定により市に損害が生じたときは、受注者等はその損害を賠償しなければならない。ただし、市長がやむを得ない事由があると認めるときは、この限りではない。
(公表)
第 13 条 市長は、前条の規定により公契約を解除したときは、その旨を公表するものとする。
2 公表する事項及び方法については、規則で別に定める。