ver.2.0
オープン
イノベーション促進のためのモデル契約書
ver.2.0
解説パンフレット
新素材編
目次
第 1 章
第 2 章
はじめに •••••••••••••••••••••••••••••••••••• 03
各契約種別のモデル契約書ガイド•••••••••••• 07
モデル契約書(新素材編)における想定シーンの場面設定••••••• 08用語の定義の解説•••••••••••••••••••••••••••••••••• 10秘密保持契約(NDA)••••••••••••••••••••••••••••••• 12
技術検証(PoC)契約 •••••••••••••••••••••••••••••• 14
共同研究開発契約 ••••••••••••••••••••••••••••••••• 16
ライセンス契約 ••••••••••••••••••••••••••••••••••• 18
第 3 章
交渉シーン及び交渉ノウハウの紹介
••••••••• 21
ロイヤリティ対価の交渉シーン 場面設定 ••••••••••••••••• 22ロイヤリティ対価の交渉シーン 第1回交渉 •••••••••••••••• 24第1回交渉のポイント••••••••••••••••••••••••••••••• 28ロイヤリティ対価の交渉シーン VC との相談 ••••••••••••••• 29交渉(VC との相談)のポイント••••••••••••••••••••••••• 33
ロイヤリティ対価の交渉シーン 最終回交渉 ••••••••••••••• 34
最終回交渉のポイント••••••••••••••••••••••••••••••• 36
02 03
はじめに
第 1 章
第
章
1 本パンフレットについて
改めて「オープンイノベーション」を 1
第
章
進める上で大事なこととは
本パンフレットのターゲット(想定読者) 中長期的な目線
本パンフレットは、「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書 ver2.0(以下、「モデル契約書」)」の理解を深めることを目的として、要点のみに絞って記載されています。特に、以下の方々の内、オープンイノベーションの経験がまだ浅い方や、進めるにあたってのノウハウを整理したいという方等を対象に、役立つ情報を掲載しています。
事業会社
(現場担当、知財・法務担当など)
スタートアップ
(特に、新規性のあるコア技術を基に事業を興そうとするスタートアップ)
オープンイノベーションは単発で終わるものではなく、中長期的な価値創造パートナー を探索する活動であり、双方の適切なリスク分配のもと、協調的に協力することでユニークな価値を生み出し、その対価を適切にシェアし、もって新たな活動に繋げていく取組です。そして、そのような好循環を実現することがオープンイノベーションの目指すところです。このため、「次も一緒に協業したい」と思わせるような関係を構築することも重要です。
双方が自社の利益のみを追求
オープンイノベーション(OI)の失敗例の特徴
スタートアップ支援者
(VC など)
スタートアップ X社
片方が不利益を被る不平等な契約
「この企業とは二度と一緒に
単発の協業で終了
やりたくない」と思われ、ネガ
ティブ•レピュテーションに
よって OI の機会を損失
事業
事業会社 Yx
xパンフレットを読むにあたって
本パンフレットは、モデル契約書の概要を紹介するものとなっています。このため、本パンフレットを読んで、より詳細を知りたいと思った場合には、該当するモデル契約書にも目を通すことが望ましいでしょう。
また、本パンフレットは「モデル契約書(新素材編)」の概要について解説していますが、別冊子にて「モデル契約書(AI 編)」の概要を解説しているパンフレットも併せて公表しています。
これらのモデル契約書に関連する情報は下記の特許庁 HP から入手できます。 xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxxx/xxxx-xxxxxxxxxx-xxxxxx/xxxxx.xxxx
意識すべき「価値軸」
上記のような前提のもと、特許庁•経済産業省では、オープンイノベーションにおいて協業する双方において常に意識され、拠り所とすべき価値観=「価値軸」として以下を掲げています。
スタートアップと事業会社の連携を通じ、
知財等から生み出される事業価値の総和を最大化すること
本パンフレットを読む際にも常に上記の価値軸を意識しながら読み進めることで、より内容を理解できるでしょう。
特許庁「オープンイノベーション
04 ポータルサイト」 QR コード
モデル契約書(AI 編)
解説パンフレット 05
1
第 章
モデル契約書を利用する際に留意すべきこと
(ゴールデンスタンダードではなく、新たな選択肢)
前提として、モデル契約書はゴールデンスタンダードではなく、従来の常識とされていた 交渉の落とし所ではない新たな選択肢を提示したものであるということを認識する必要があります。
モデル契約書の「逐条解説あり」バージョンでは、冒頭に「想定シーン」として、当該モデル契約書がどのような状況下での交渉を経たものなのかを示したうえで、各条項についてポイントと解説が詳細に付されています。
モデル契約書は、この「想定シーン」の設定があるが故に、各条文において
具体度の高い実践的な考え方の解説が可能となっています。反面、実際には前提条件が異なる様々なケースがあり、それらのケースではモデル契約書が必ずしも最適な契約内容とならない可能性もある点には、十分ご留意いただきたいです。
例えば、モデル契約書(新素材編)では、強い知財を有するスタートアップと自動車業界の事業会社(業界外への事業展開に関心がない)との連携を前提としていますが、必ずしもそのような関係性であるはずもないでしょう。状況に応じて、ひな形を出発点にお互いが win-win となる着地点を探る姿勢が強く求められますので、実務では専門家に必ず相談しつつ、契約書の具体化を行うのが望ましいです。
まずは主な論点となり得る条項の要点を定めた条件規定書(タームシート)を用いた交渉から始めて、相手との目線合わせを行ったうえで、その内容を契約書に反映し、条項の文言レベルでの詳細な調整プロセスに入るのが望ましいでしょう。
06 07
各契約種別の モデル契約書ガイド
第 2 章
2
第
章
概要
第
章
概要
2 モデル契約書(新素材編)における想定シーンの場面設定
登場するプレイヤーの概要 各契約フェーズの概要
技術検証(
スタートアップ X
)契約
共同研究開発契約
PoC
樹脂に添加することで、樹脂の 放熱性能を金属並みに向上させる新素材αを開発したスタートアップ。
部品メーカ Y
自動車用の部品製造メーカ。ヘッドライトカバーのマーケットシェアが高く、この分野での共同研究を検討。
)
NDA
(NDA)
技術検証(PoC)
双方が開示する(特に X 社から提供する)秘密情報の取扱い条件の設定
)
技術検証(
NDA
秘密情報(技術情報)の提供
)契約
PoC
X社 Y社
共同研究開発契約
ヘッドライトカバーの試作品の作成、並びに性能の検証
データ、樹脂、機器等の提供、委託料の支払
新素材α 樹脂(原材料)
契約 検証結果の共有
X社 Y社
ライセンス契約
取り組む開発内容
共同研究開発
自動車用ヘッドライトカバーの研究開発
ライセンス契約
成果報酬の支払
契約 X社
新素材、
X 社技術者の派遣 Y社
ヘッドライトカバーの開発
特有の放熱特性を有する素材を配合した、自動車用ヘッドライトカバー
ライセンス契約
研究成果のテールランプカバーへの活用に関する利用許諾
「3章 交渉シーン」で扱う契約
ライセンス料の支払共同研究成果の
X社 非独占的通常実施権 Y社
08 09
第
章
概要
第
章
概要
2 用語の定義の解説 2
全契約共通
X社
ライセンス契約
)
NDA
本製品1(自動車用ヘッドライトカバー)
)
NDA
樹脂に添加することで、樹脂の放熱性能を金属並みに向上させる新素材αを開発したスタートアップ
研究成果を利用した、ポリカーボネート樹脂組成物からなる自動車用ヘッドライトカバー。当初の共同研究の成果物。
技術検証(
PoC
Y社
)契約
自動車用の部品製造メーカ
本製品2(自動車用テールランプカバー)
技術検証(
)契約
PoC
アクリル系樹脂組成物からなるヘッドライトカバー。
共同研究の成果を新たに利用したいと考えている応用製品。
共同研究開発契約
共同研究開発契約
新素材α
樹脂に添加することで、樹脂の放熱性能を金属並みに向上させる新素材
ライセンス契約
ライセンス契約
自動車用ヘッドライトカバー
XY が共同開発する、特有の放熱特性を有する素材を配合した、自動車用ヘッドライトカバー
知的財産権
特許権、実用新案権、意匠権、著作権その他の知的財産に関して
法令により定められた権利(特許を受ける権利、実用新案登録を受ける権利、意匠登録を受ける権利を含む。)
10 11
第
章
概要
2 case
秘密保持契約(NDA) 2
第
章
概要
01
X 社と Y 社は、X 社が開発した放熱特性を有する新規素材αを自動車用ヘッドライトカバーに用いた新製品の開発を行うか否かを共同で検討するに当たり、双方が相手方に開示等する秘密情報の取扱いについて、秘密保持契約を締結する。
あるある交渉事例
(NDA)
)
NDA
スタートアップX 部品メーカ Y
X 社
技術検証(
Y 社
交渉のポイント
1
秘密保持契約(
秘密情報の範囲設定はどの程度が適切?
)
NDA
秘密情報である旨が明記された情報を秘密情報として定義する方法だけでなく、対象外となる情報を特定するなど、秘匿すべき情報の特性や双方の情報管理体制を鑑みて、秘密情報の範囲の広狭等を定める必要がある。
技術検証(
(参考:1条「秘密情報の定義•開示の方法」)
共同開発の可能性の検討を開始するにあたって、御社の素材に関するデータ等を頂く必要があると思いますので、まずは NDA の内容を検討しましょう。
Y社
秘
PoC
or
)契約
情報内で明記
秘
)契約
PoC
別の文書で明記
X社
はい。
弊社の重要な技術情報が開示情報に含まれますので、秘密である旨を明示した情報を、秘密情報と定義する方針でよいでしょうか。この形であれば御社の情報管理体制における取り扱いもスムーズ
かと思いますので。
1
2
共同研究開発契約
共同研究開発契約
協業の検討開始の事実をスムーズに公表するにはどうすればよい?
その形であれば問題ありません。
加えて、お互い第三者に情報開示する際にも事前に承諾を取るようにしましょう。
Y社
原則は第三者への情報開示時に相手の事前承諾を必須としつつ、「新素材α を用いた共同研究の検討を開始した事実」については事前承諾を不要とすることを契約時点で 合意しておくことで、スタートアップが投資家などに検討開始の事実をスムーズに公表可能となる。(参考:2条「秘密保持」)
ライセンス契約
ライセンス契約
検討開始の事実
(承諾不要)
X社
それはすべての情報を対象とする想定でしょうか。
御社との検討を開始した事実は、投資家等に対してすぐにでも公表したいと考えていたのですが•••。
2
秘密情報(要事前承諾)
第三者
第三者
3
社内規定で、弊社の名称が出る形での情報公開は、原則社内手続きを必要とします。
一度社内で確認しますね。
Y社
提供データの利用に関するトラブル防止にはどう設定すべき?
X社
連絡お待ちしています。
なお、提供するデータについて、今回の製品開発の共同検討以外の用途での利用、例えば自社単独開発に用いることは避けていただきたいです。
3
第三者への開示の禁止、開示範囲の設定に加え、受領者の組織内での利用目的を今回の共同検討に限定することを明記することで、受領した技術情報を他の目的に流用することを防ぐことが可能となる。
(参考:3条「目的外使用の禁止」)
事業会社側での検討以外の
(例 : ヘッドライトカバー
用途での技術情報の利用
以外の部品の開発)は不可
情報提供
アセスメントへの利用
承知いたしました。
その旨についても契約書で記載させていただきます。
Y社
12 13
第
章
概要
2 case
技術検証(PoC)契約 2
第
章
概要
02
X 社と Y 社による研究開発対象となるヘッドライトカバーに対して、 X 社の開発した放熱特性を有する新素材αを導入•適用することの 可否についての技術検証に関して、PoC 契約を締結する。
あるある交渉事例
(PoC)契約
技術検証
秘密保持契約(
)
NDA
スタートアップX 部品メーカ Y
X 社
技術検証(
Y 社
交渉のポイント
1
秘密保持契約(
知的財産権の帰属先をどう判断すればよい?
)
NDA
本ケースでは作業主体が X 社であること、また 検証結果を得る目的には報告書が利用できれば十分であることから、報告書および本検証で生じた知的財産権は X 社に帰属としてよいだろう。
(参考:11 条「本報告書等の知的財産権」)
技術検証(
X 社に帰属
PoC
PoC にて知財創出
X社
今回の PoC では、
御社から提供いただいたデータや素材を用いて、弊社で試作品を作成し、
その性能の検証結果を報告書で提供する形でよいでしょうか。
はい。
その報告書を含む成果物の知財の帰属は、委託料を負担している弊社に帰属することを想定していますが、
よいでしょうか。
Y社
2
)契約
)契約
PoC
技術検証(PoC)で成果の保証はできるか?
X社
この委託料は弊社の検証作業の費用を負担頂いたものと考えています。
また、導入の可否の検討には報告書を利用できれば問題ないと思いますので、知財の帰属については弊社にして頂きたい
と思います。
1
共同研究開発契約
共同研究開発契約
PoC はあくまで仮説を検証する過程であり、期待していた検証結果にならないことも一つの結果である。そのため、X 社は善管注意義務は負う一方、成 果の達成や特定の結果等を保証しないものと整理するのが妥当であろう。
(参考:5条「甲の義務」)
報告
検証による何らかの成果の達成や特定の
結果等の保証を行わない。
委託
3
確かにそうですね。分かりました。 続いて、報告書に記載いただく検証結果について、一定の成果を保証いただきたいのですが、いかがでしょうか?
Y社
X社
成果の保証は難しいですね。
そもそも PoC は、検証したいポイントについて判断を下すために行うものですし、期待する成果が出ないことも一つの
結果かと思います。
2
ライセンス契約
ライセンス契約
PoC 締結後に、次の契約の検討をスムーズに進めるにはどうすればよいか?
共同研究開発に進むか否かについて、一定期間での通知義務を設定。これにより、仮に次の契約を締結しない場合でも、両社ともに別の企業との協業の検討を迅速に開始することが可能になる。
なるほど。。
なお、委託料について、共同研究開発に進むことを前提として低めに設定するケースもあろうが、その場合は、共同研究開発に進まなかった場合の追加
X社
PoC 実施後についてもご相談したいのですが、共同研究開発へ移行するかどうかの検討結果については、
双方とも一定期間内に連絡する整理と
させて頂けますか。
3
Y社 委託料を条項で設定することも一案である。
(参考:6条「共同研究開発契約の締結」)
共同研究開発契約を締結するか通知
契約締結に向けて最大限努力
どの程度の期間であれば設定可能か、社内で検討して
また結果を共有しますね。
Y社
RD
14 15
第
章
概要
2 case
共同研究開発契約 2
第
章
概要
03
X 社とY 社は、新素材αに関する技術を適用した、高熱伝導性を有するポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるヘッドライトカバーの開発および製品化を共同で実施することに関して、共同研究開発契約を締結する。
あるある交渉事例
共同研究
開発契約
秘密保持契約(
)
NDA
スタートアップX 部品メーカ Y
X 社
技術検証(
PoC
Y 社
まずは、成果物の権利の帰属先を話し合いましょう。両社の研究員が共同でヘッドライトカバーを開発しますので、その権利は共有帰属とする方針でよいでしょうか。
Y社
交渉のポイント
1
秘密保持契約(
成果物の権利の帰属は「とりあえず共有」でよい?
)
技術検証(
)契約
NDA
PoC
スタートアップである X 社は、第三者への自由なライセンスを通じて事業拡大を志向するものであり、権利の扱いについて常に Y 社の事前許諾が必要だと、事業スピードや経営判断に悪影響が及ぶ。他方、Y 社としても必要な領域で利用する権利は確保しつつ、X 社の成長と将来的な協業可能性を期待する方が合理的な選択肢となることもあろう。そこで、権利の帰属を X 社単 独としつつ、Y 社へ独占的通常実施権を設定することや、Y 社が条件付きで X 社から知財譲渡を受けられるように配慮するなど、双方が合意できる条件を模索することが重要である。
(参考:7条「xx的財産xxの帰属および成果物の利用」)
共同研究開発契約
)契約
成果物の権利は
X社
弊社としては、今後も他分野の協業パートナー等の外部企業とのスピーディな協業を通じて成長していくことが大前提となります。今回の権利が共有帰属だと御社の事前許諾が必要になり、事業計画に不都合が生じうるので、弊社の単独帰属とさせて頂き、御社にライセンスする形としたいのですが。。
共同研究開発契約
X 社に帰属
ライセンス
•X 社バックグラウンド情報:非独占的通常実施権
•成果物に係る特許:独占的通常実施権
2
うーむ 。競合会社にライセンスされるリスクがある上、万が一御社の事業継続が困難になった際、ライセンスが維持されるのか不透明になるため、受け入れ難いです。。
1
Y社
X社
そこで、本製品の設計•製造•販売においては、一定期間の御社の独占的な実施権を設定したうえで、別途競業避止義務を設定するとしつつ、弊社に経済的不安が生じた際には権利の譲渡も検討できるようにする方針でいかがでしょうか。
ライセンス契約
ライセンス契約
研究開発に関する対価はどうやって設定すればよい?
なるほど、その形であれば受け入れられるかもしれません。
社内で相談してみます。また、共同研究の対価について、その実費を支払う形でいかがでしょうか。
Y社
X社
独占的な実施権を設定することを考慮して、研究成果への報酬も支払いいただきたいです。この製品の商圏を獲得する金額としては、決して高い金額ではないかと思われます。
2
両社は、双方の事業戦略に不都合が生じないように対価と成果の帰属を検討 するべきである。例えば、Y 社は特許権が帰属しなくとも独占的な利用権があれば事業戦略上は問題ないため、共同研究による発明は X 社の単独帰属としている。他方、Y 社は事業化ができていないタイミングでの高額な支払いは受け入れ難いため、X 社への支払いは、頭金の一部支払いと、残りを開発成果に応じたマイルストーン形式で支払う形式を採用している。
報酬と言いましても、事業化時の収益が不透明な状況で、高額な対価設定には応じがたいところです。事業化ができ次第、支払う形でどうでしょう。
Y社
(参考:5条「経費負担」、10 条「研究成果に対する対価」)
対価、報酬
X社
事業化まで恐らく相当程度の時間がかかると思われるので、報酬については、頭金で一部を支払い、残りを事業進捗に応じて段階的に支払う方式はどうでしょうか。
2
•研究に係る実費と人件費の支払い
その支払い方法であれば検討の余地がありそうです。詳細について相談しましょう。
Y社
•成果物の開発に関する報酬の支払い
(頭金の支払いとマイルストーン•ペイメントの併用)
16 17
第
章
概要
2 case
ライセンス契約 2
第
章
04
X 社 Y 社間で締結した共同研究開発契約に基づいて
概要
X 社に単独帰属した特許xxの応用製品に関する実施許諾の条件等を定めるため、ライセンス契約を締結する。
ライセンス
契約
秘密保持契約(
)
NDA
スタートアップX 部品メーカ Y
Y 社
技術検証(
X 社
1
あるある交渉事例
秘密保持契約(
第三者の権利侵害に対する、X 社による保証は必要?
)
技術検証(
NDA
交 渉 の ポ イ ン ト
知財を侵害しない旨を保証することはX 社にとって非常に大きなリスクとなり得るため、スタートアップと事業会社の適切なリスク分配という観点からは熟慮が必要である。第三者から警告が出た場合にX 社が情報提供に努めることや、「X 社が知る限り権利侵害はない」といった表明をする等にとどめるべきであろう。(参考:9条「第三者の権利侵害に関する担保責任」)
X社
ご無沙汰しております。今回は、御社で今後開発予定の応用製品(テールランプカバー)に、先の共同研究の成果の特許権を利用する際のライセンス条件を検討するという認識でよいでしょうか。
PoC
通知
はい、その通りです。
ライセンス対象の特許について先に確認しておきたいのですが、第三者の権利侵害のリスクは避けたいので、非侵
害の保証は可能ですかね?
1
Y社
)契約
訴訟の防禦活動に必要な情報を提供
権利侵害を理由とした
警告
)契約
PoC
第三者
2
共同研究開発契約
共同研究開発契約
共同研究の成果物に係るライセンスの条件をどのように設定する?
X社
うーん、
特許侵害調査だけで高額な上、非侵害の保証をするとなると非常に高い経営リスクを負うことになってしまい、事業計画が立ち行かなくなってしまいます。。
共同研究の成果物に係る特許をライセンスする際、特許の重要性や、製品の 市場規模、本製品の付加価値を踏まえて、実施権の設定(独占 / 非独占、有償
まぁ、仰る通りですね。
非侵害保証はしない方向で結構です。続いて、応用製品の開発に対して、先の特許権にかかる独占的な実施権を設定いただけますでしょうか。
Y社
ライセンス契約
ライセンス契約
/ 無償、(有償の場合)支払タイミング)を検討する必要がある。本契約では、非独占的通常実施権を設定し、有償でのライセンスとしたうえで、一時金とランニングロイヤリティに分けてライセンス料を支払うとしている。
(参考:2条「権利の許諾」、4条「本製品 2 に関するライセンス料」)
X社
共同研究開発で発明された特許は、 汎用成果が高く、今後弊社でも他分野で利用するため、非独占的な実施権の設定でもよいでしょうか。
2
ライセンス
ライセンス料
3
なるほど、、この点はライセンス料の金額設定と併せて議論する必要があるため、追って議論しましょう。なお、どちらかの会社がライセンスされた特許を基に改良技術を開発した場合、どのように取り扱う形にしましょうか。
Y社
ライセンス対象の特許に係る改良技術をどう取り扱うのが良い?
分かりました。
その方針で問題ありません。それでは、共同研究成果のライセンス料の設定に関する議論を始めましょう。
Y社
X社
弊社のコア技術に関するものであるため、御社が改良技術を開発した場合、その通知および情報開示をお願いできますでしょうか。当社で開発した場合にも、可能な限りでの通知、及び御社の要請に応じて開示する方針です。
3
共同研究の成果やバックグラウンド情報など、X 社のコア技術及びその周辺技術を確保しつつ、双方が納得のいく改良技術に関する条件を設定するのが良い。本契約では、改良技術について双方に対して非独占的な実施権を設定しつつ、Y 社が開発した場合、通知義務•開示義務の設定、及び Y 社によるその技術に係る特許を出願した際には、X 社に対して特許の優先買い取り交渉権を設定するよう規定している。(参考:7条「改良技術」)
ライセンス
通知•開示義務
応用製品に関するライセンスについて、ロイヤリティの金額設定の詳細は、第3章をご参照いただきたい。
改良技術の開発
18 19
交渉シーン及び
交渉ノウハウの紹介
注)3章に記載されている内容は、特許庁オープンイノベーション•ポータルサイトにて公表されている、「対価交渉のケーススタディβ版「モデル契約書(新素材編)」をより深く理解するために」の内容に沿って作成しております。
第 3 章
20 21
3
1
3
1
第
章
概要
第
章
概要
ロイヤリティ対価の交渉シーン場面設定
第
第
登場人物 利用条件の交渉の流れ
との相談
VC
スタートアップ X
最終回
新素材αを開発したス タートアップ X 社。
共同研究開発の成果物に関する特許xxの帰属先。
ヘッドライトカバー開発x
x素材αを配合して製造された透明性樹脂組成物からなるヘッドライトカバーの製造に関する特許
に共同発明された特許
ライセンスフィー
IP のライセンス
部品メーカ Y
アクリル系樹脂組成物からなるテールランプカバー。この量産プロセスの IP やノウハウ、生産設備をY 社が所有
テールランプカバー
自動車用の部品メーカY 社。研究成果を用いて、新素材αを組み込んだ自動車用テールランプカバーの開発を検討。
第1回交渉
VC との相談
回交渉
回交渉
各交渉のポイント
との相談
VC
事業を展開する業界や
最終回
事業者の事業計画を踏まえた対価の検討
国内外のマーケットを考慮した段階的ロイヤリティの検討
投資リターン
出資、
アドバイス
IP のサブライセンス
樹脂の納品
最終回
イニシャルペイメントおよび
ロイヤリティレートの合意状況の確認
X 社に投資しているVC Y社の関連会社である化学メーカY社
テールランプカバー用の樹脂製造設備を保有
22 23
3
1
1
第
章
ロイヤリティ対価の交渉シーン第1回交渉
概要
X 社のCEOとY 社の事業部長は、テールランプカバー(応用製品)を対象としたライセンス契約の対価の内、イニシャルフィーに関する交渉を開始した。
第
X 社 Y 社
3
第
章
概要
第
X 社 Y 社
そうですか•••。
御社にとってイニシャルペイメントが重要であることは理解しています。 それでは、イニシャルフィーは900 万円ということでいかがでしょうか。
回交渉
1
回交渉
X社の
CEO
本日はイニシャルペイメントとロイヤリティをまとめて交渉できればと思っています。
ここまで共同開発も順調に進んできたので、ライセンス契約まで無事に締結したい。。
との相談
との相談
VC
VC
Y 社の事業部長
まずは、イニシャルフィーとしてどの程度の額が相当かという議論をしましょう。単刀直入に、500 万円でいかがでしょうか。
事業部長
Y 社の
共同研究開発では、交渉に手間取ってしまったので、今回はスムーズに交渉を進めたい。
X社の
CEO
御社と合意に至って、ビジネスを進める方がよりよいと思われますので、
投資家にもご納得いただく必要がありますが一旦それで検討を進めていければと思います。
考えてみれば、この 2 年間で開発費の面も含めていろいろとお世話になっているし、この条件で受け入れるとしよう。
最終回
最終回
X社の
CEO
ご提示ありがとうございます。
ただ、事業計画では5 年後に売上規模は 20 億円を超える想定であり、この規模のビジネスを独占するための権利金である点を踏まえ、金額を再考いただければ幸いです。
想定より
金額の桁が一つ違ったな。。
ではイニシャルフィーはいったん交渉終了としましょう。
続いて、ロイヤリティレートの交渉を行いましょう。
Y 社の事業部長
X社の て1千万円程度とするのが妥当だと思っ
うーん。。
当社としては本製品の期待収益と当社素材の貢献度合い等を加味すれば、せめ
CEO
ています。
当社テールランプカバーに御社素材を採用したことを大々的に宣伝するなど、御社のプレゼンスを高めるための側方支援もしますので、ご考慮いただけないでしょうか。
事業部長
Y 社の
X社の
CEO
これに関しては、我々の素材が世界に類を見ない画期的なものであることに鑑みると、5 % 未満はあり得ないというのが当社の技術コンサルの意見でして・・
その数値では受け入れるのは厳しいですね。。
少なくとも業界の相場は 0.1%程度であり、この数値を想定しています。
事業部長
Y 社の
製薬業界のように限界利益率が 20 % を超えるようなビジネスであればともかく、自動車部品業界の限界利益はそこまで大きくはないので、5%以上は厳しい。
24 25
3
1
第
章
第
章
ロイヤリティ対価の交渉シーン 3
2
概要
概要
第1回交渉
第
第
X 社 Y 社 X 社 Y 社
0.1%!? それでは我々も合意するのは難しいです。
当社として妥協できるロイヤリティレートの下限は 1%までですね。。
X社の
CEO
さすがに 0.1%程度で締結したとなれば、投資家の説得は絶対できないな。。
お話自体は納得します。それでは何% だとお考えなのでしょうか。
回交渉
回交渉
1
との相談
最終回
との相談
最終回
VC
VC
X社の CEO
1% でもテールランプカバーの素材の IP に対するロイヤリティとしては破格なので、その条件では厳しいです。
なぜ、1%が最低ラインなのでしょうか。
事業部長
Y 社の
残念ながら 0.1% 強だというのが我々の試算です。
ただ、それでは、御社の投資家も納得させられないことはわかっているので、0.5% でお願いしたい、と思っています。
事業部長
Y 社の
上っ面だけを見て、近年取り沙汰されている事業会社によるスタートアップ技術の買いたたきと評されるのは、今後のためにも避けたいので一定の譲歩はしよう。
いや••それは、
本来 5% を希望していたものなので••どんなに減額してもそれくらいかなと。。
X社の CEO
要するに、あまり確固たる数字の根拠は示せない、ということですね。
分かりました、、
一旦持ち帰って検討させてください。。
X社の
CEO
0.5% で投資家を説得できるだろうか、さすがに想定外だった。。
投資家に相談してみよう。。
Y 社の事業部長
ロイヤリティレート 1% に固執されますと、我々もお客様である自動車会社に高値で卸さなければならず、製品採用も一部の超高級車限定となるなどの制約が出てきます。
場合によっては、全く売れず、御社のロイヤリティ収入も0となるケースも想定されます。
そう考えると、当社の売上と御社の利益を最大化できる、合理的なロイヤリティレートを探るべきなのではないでしょうか。
事業部長
Y 社の
•••
X社の CEO
この日は交渉終了。X 社の CEO は投資家(VC)のもとに駆け込む。
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1
第
章
概要
第1回交渉のポイント
第
回交渉
ロイヤリティレートを左右する要因については、下記の通り多数存在する。その中で最も強く影響するのが、ライセンシーの事業計画である。
との相談
VC
ライセンシーからすると、スタートアップとのオープンイノベーションによって赤字事業をいくつも作り出すことは絶対に避けなければならないし、そのようなオープンイノベーションは、我が国の競争力を生み出すものではない。
最終回
双方が交渉でビジネス情報を開示しあい、このビジネスで双方が Win-Win になるためにあるべきライセンス条件についてしっかりと論じ合うことが必要である。
なお、ロイヤリティレートを決める際の参考文献として例えば以下がある。ただし、双方が描くビジネスモデルによって全く変わりうるものなので、参考文献に固執することなく、真伨に交渉を重ねて双方が納得のいく妥協点を探る行為が不可欠である。
ロイヤリティ料率データハンドブック(現代産業選書―知的財産実務シリーズ)、経済産業省知的財産政策室編、経済産業調査会
実施料率―技術契約のためのデータブック、発明協会研究センター編、発明協会
ロイヤリティ対価の交渉シーン 3
1
第
章
VCとの相談
概要
X 社の CEO は投資家(VC)に、
Y 社との交渉の状況を共有して、今後の検討方針の相談を始めた。
第
X 社 X 社に投資している V C
以前相談しましたY 社との交渉が難航しています。ロイヤリティ料率として、 0.5%を提示されており、譲歩してもらうのが難しそうです。
X社の
CEO
この数値で
納得いただけるだろうか。。
回交渉
との相談
最終回
VC
1
なるほど。
ちなみに、ここまで御社として開発に投入してきたコストはどの程度ですか?
イニシャル 1000 万円に加えて、ざっ
と計算して年間 1000 万円のロイヤリティだとして、コスト回収に何年かかりますか?
VC
交渉時のロイヤリティレートの決定要因
■ ライセンシーの事業計画(利益率などを含む)
■ 業界慣習
■ 業界の平均利益率
■ 製品の市場規模
■ 特許技術の革新性
■ 特許の安定性(容易に無効になったりしないか)
■ 特許技術がその製品の中に占める位置づけ
いままでの人件費やその他外注費をあわせて、2 億円は投下しています。
ロイヤリティ レートに対して
最も影響力が大きい
X社の CEO
回収に 20 年はかかる計算ですね、、 分かりました。それでは視点を変えて、御社技術を用いると、Y 社に対してどういう変化が起きますか?
その変化によりY社、加えて自動車メーカにどういう新しい付加価値を与えることができますか?
VC
この技術を自動車ランプに適用する選択が間違っている可能性もあるか、、
より詳細に確認する必要があるな。
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1
第
章
第
章
ロイヤリティ対価の交渉シーン 3
2
概要
概要
VCとの相談
X社の
CEO
より明るく、より遠くまでライトの明かりを届けることができるという特徴をもつ、新しいハイエンド製品の製造が可能になります。
また、この技術なしでの完成は難しいかと思われます。
第
回交渉
X 社 X 社に投資している V C
第
X 社 X 社に投資している V C
X社の
CEO
グローバルを前提にざっと計算すると•••
国内と合わせて 5,000 万円になります。
回交渉
との相談
最終回
との相談
最終回
VC
VC
1
そうすると、この新しい付加価値のために、御社の技術を使わざるを得ない可能性が高いですね。もしこの製品が完成した場合、Y 社の 5 年後のシェアは 20%のままなんですかね?
VC
コストも回収したうえで利益も生み出せそうですね。
また、先方のシェア拡大に寄与できる可能性が高いとなれば、ロイヤリティ設定も再検討いただける可能性も高いと思われます。
VC
X社の
CEO
そういえば、現時点では取引のない自動車メーカからも、今回の Y 社のハイエンド製品が完成したら商談をしたいという打診を受けているという噂を聞いたことがあります。
であれば、御社の技術を利用することでハイエンド製品を完成させ、Y 社はそれをフックに新規の取引先を開拓できるかもしれませんね。
シェアは 20%を超えてくるかもしれません。
VC
X社の
CEO
Y 社がうちの IP を利用して製造したハイエンド製品を、グローバルに投入する計画があるか、そして新規取引先を開拓する予定かどうかを確認するのがポイントですね。
確かに今までの議論では、国内の既存取引先しかスコープに入れていなかったな。。
X社の
CEO
確かにそうですね。
Y社の事業拡大ステージを段階に分けて想定し、各段階に応じたロイヤリティ設定を提案することも妥当性が見いだせそうです。
そうですね。
しかもY社はグローバルメーカー。 シェアが数% 上がるだけでも売上規模
はだいぶ変わると思いますが、例えば、グローバルも含めた場合のロイヤリティはどの程度でしょうか?
VC
目線合わせの際には、できれば契約のスケジュールや目的にその旨を記載しておきたいですね。
少なくとも、提案資料など何かしら形に残るものに、グローバル展開の意思について確認的に記録しておきたいところです。
VC
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3
3
1
第
章
概要
ロイヤリティ対価の交渉シーン VCとの相談
第
回交渉
X 社 X 社に投資している V C
そうします!
との相談
VC
X社の CEO
3
第
章
概要
交渉(VC との相談)のポイント
第
回交渉
ロイヤリティの具体額の検討にあたっては、下記の事項を考慮する必要がある。 1
スタートアップの知的財産(IP)の希少性•革新性、競争力
との相談
VC
スタートアップの IP の価値が最終(中間)製品の付加価値に占める割合•寄与度最終(中間)製品の市場規模、業界の平均利益率
最終回
最終回
本ケーススタディで言及された金額は、下記の条件の下で試算されている。あくまで一つの考え方である点に留意されたい。
あと、契約書をよく読むと、
製品1(ヘッドライトカバー)について、本発明は、Y 社に独占的通常実施権が設定されていますが、
バックグラウンド IP や製品2(テールランプカバー)については非独占的通常実施権なんですね。
つまり、ヘッドライトカバー以外の本素材を成型してなる製品(本製品2を含む)については、本発明を他の企業に実施許諾することも可能なので、やれることは色々ありますよね。
VC 応用製品(テールランプカバー)の年間販売総額の試算
国内の自動車販売台数
X社の
ありがとうございます!
その点も併せて弁護士先生に相談してみようと思います。
CEO
今の内容を弁護士先生と具体化したうえで、Y 社との交渉に臨めば、交渉の妥結も可能になりそうだ…!
(2019 年度)
国内市場 | 320万台/年 | 20% | 10% | 3 万円/台 | 約20億円/年 |
海外市場 ※1 | 2500万台/年 | 10% | 10% | 3 万円/台 | 約75億円/年 |
上記の前提を踏まえたロイヤリティ総額(ロイヤリティ料率は 0.5% とした)※2
国内市場のみの場合:約 20 億円/年 × 0.5% = 年間 1,000 万円
海外市場を含む場合:約 100 億円/年 × 0.5% = 年間 5,000 万円
(=20+75 億円)
※1 米国、中国、ドイツ、インドに展開(特許出願済み)
※2 なお、イニシャルペイメントとしては年間のライセンス料金と同等の水準である 1,000 万円を目安とした。
終了
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Y 社製品
全体の
市場シェア
Y 社製品が
新素材αを
使用する割合
(/自動車1台)
製品価格
テールランプ
カバーの
販売総額
3
1
第
章
ロイヤリティ対価の交渉シーン最終回交渉
概要
X 社とY 社は、ライセンス条件の内、
段階的ロイヤリティレートに関する条件の議論を開始した。
第
X 社 Y 社
3
第
章
概要
第
X 社 Y 社
回交渉
1
ご配慮ありがとうございます。投資家も喜んでおりました。
X社の 本日はその最終確認をさせてください。
前回から、御社製品の利益構造について情報提供をいただき、メール/ウエブベースでの交渉を通じて、お互いが Win-Win となるライセンス条件を模索して、ほぼ合意に至りました。
CEO
ところで、
「段階的ロイヤリティレート」は、製品の立ち上げ時は競合も少なく高値販売も可能で限界利益も圧縮されにくいが、普及期に入ると限界利益が圧縮されるという量産製品の利益構造に叶っていますね。
事業部長
Y 社の
との相談
最終回
回交渉
との相談
最終回
VC
VC
X社の CEO
X社の
CEO
わかりました。
次の通りの認識です。
「本製品2(テールランプカバー)について売上規模が 20 億円までは売上の
0.5% をロイヤリティレートとし、
それを超えた場合、20 億超の部分については同 0.25% とする。
諸経費等、売上から控除される項目等の詳細は別途協議に従う。」
わかりました。
まず、「段階的ロイヤリティレート」の設定で合意に至りましたが、改めてご説明をお願いできますか。
事業部長
Y 社の
X社の
CEO
ライセンスをお出しするスタートアップの立場からすると、売上が少ない段階でのロイヤリティレートは大きくて、売上が伸びてくれさえすればロイヤリティレートは小さくても十分なロイヤリティ収入が見込めるので、関係者を説得しやすかったです。
VC や顧問弁護士に状況を共有してアドバイスをいただいておいて よかった。。
はい、大丈夫です。
続いてイニシャルペイメントも確認しましょう。
X社の
CEO
最後に、メールでもお伝えしましたが、今回のハイエンド製品をグローバルに展開することもぜひ契約に含めていただくように検討をお願いします。
具体的には、グローバル展開の検討に関する努力義務を契約書に入れてもらいたいです。
あと、参考になればと思い、こちらでグローバル展開に関する簡単な提案資料を作ってきたので説明してもよろしいでしょうか?
Y 社の 事業部長
X社の
わかりました。
「当初 900 万円で合意したイニシャルペ
イメントについては、これを 1000 万円とする」ですね。
CEO
量産時のロイヤリティレートを 0.25%という我々が希望するレートで承認いただきましたので、イニシャルペイメントについては最大限配慮をさせていただいたという趣旨です。
事業部長
Y 社の
ありがとうございます。
海外展開はいままさに検討を進めようとしているところです。
ぜひお話を伺いたいです。
事業部長
Y 社の
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3
1
第 章
概要
最終回交渉のポイント
第 回交渉
との相談
VC
ロイヤリティレート等の条件交渉も、他の条件と併せて交渉していくことが重要である。「段階的ロイヤリティレート」は、普及している方法論ではないが、ロイヤリティレートを売上高と関係なく固定するよりも事案を解決できる場合がある。
最終回
ロイヤリティレートを検討する際に加味すべき前提条件は様々なものがあり得るが、同じ条件下でも、スタートアップとしてイニシャルペイメントとロイヤリティのどちらを重視するか(どちらの対価を重くするか)という経営判断によってロイヤリティレートは変化し得る。
今回の交渉におけるスタートアップの検討要素
スタートアップにおける
各対価への考え方
ライセンスの開始初期に一定の収入が欲しい。。
スタートアップにとっては、
条件検討にあたっての
ポイント
販売先に海外市場を含めると、収益は既存の計算より拡大する可能性新製品販売により、Y社製品の市場シェア、及び新素材αの利用割
X社の CEO
イニシャルで対価をいただくことが重要
合が、既存の条件より拡大する可能性
ランニングロイヤリティ
量産期以降は、一定額の収入が入れば、料率が低くとも問題ない。
イニシャルペイメント
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資金不足のため、1,000 万円未満の支払いだと経営上受け入れがたい。
【本交渉における解消策】
イニシャルペイメント :1,000 万円に設定
ランニングロイヤリティ:段階的ロイヤリティレートの採用(右図参照)売上規模 20 億円までの部分:ロイヤリティ料率は売上の 0.5%
20 億円を超過した部分 :ロイヤリティ料率は売上の 0.25%
段階的ロイヤリティレートの設定
ロイヤリティ料率 0.5%
0.25%
20億円 売上
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