㈱IHI と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
2023.3.10
㈱IHI と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱IHI(社長 xx x)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
なお、本件は、シンジケーション方式による「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」として、静岡銀行が一般財団法人静岡経済研究所と共同で構築したフレームワークに基づき評価を実施しています。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 3 月 8 日(水)
2.実行日 3 月 10 日(金)
3.参加金融機関 静岡銀行、七十七銀行、中国銀行、東邦銀行
4.資金使途 運転資金
5.㈱IHI の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、国内 59 社、海外 142 社の関係会社で構成する総合重工業グループとして、「資源・エネルギー・環境事業」「社会基盤・海洋事業」「産業システム・汎用機械事業」「航空・宇宙・防衛事業」の4つのセグメントを主要事業を通じて、脱炭素化や防災・減災の実現、暮らしの豊かさの実現に取り組まれています。
〇今回、同社の企業活動が与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・カーボンニュートラルの実現(「エネルギーバリューチェーンの脱炭素」や「カーボンリサイクルの実現」などの具体的な課題を設定) ・事業活動における CO2 排出量の削減(エネルギーを効率的に使用する省エネ活動、より低炭素なエネルギー使用の推進など) ・事業活動における環境負荷の低減(EMS に基づき、水質汚濁防止法ならびに 各自治体が定める排水基準に対して上乗せした自主基準を設定など) ・資源効率の向上(廃棄物排出量の削減、計画的取水と設備の適切な保全など) |
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社 会面 | ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進(社外での経験を積んだ人材のキャリア採用、女性従業員向けワークショップ開催、外国籍従業員相談窓口の設置等) |
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経済 面 | ・オープンイノベーション(国内の「IHI つなぐラボ」や「i-Base(Ignition Base)」に加えて、シリコンバレーの「IHI Launch Pad」やシンガポールなどの海外拠点と連携によるイノベーションの創出およびイノベーションにつながる先駆的な技術開発) |
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6.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】㈱IHI の概要
所 在 地 | xxxxxxxx 0 xx 0-0 | 創 業 | 1853 年(嘉永 6 年) |
資 本 金 | 1,071 億円 | 売 上 高 | 423,640 百万円(2022 年 3 月期) |
22-D-1576
【当初公表】2023 年 3 月 10 日
【訂 正】2023 年 3 月 13 日
株式会社静岡銀行が実施する株式会社 IHI に対する
ポジティブ・インパクト・ファイナンスに係る第三者意見
株式会社日本格付研究所(JCR)は、株式会社静岡銀行が株式会社 IHI に実施するポジティブ・インパクト・ファイナンスに対し、第三者意見書を提出しました。
<要約>
本第三者意見は、株式会社静岡銀行( 静岡銀行) が一般財団法人静岡経済研究所
( 静岡経済研究所) の評価を踏まえて株式会社 IHI( IHI) に実施するポジティブ・インパクト・ファイナンス( 本ファイナンス)に対して、国連環境計画金融イニシアティブ( UNEP FI) の策定した PIF 原則及び資金使途を限定しない事業会社向け金融商品のモデル・フレームワーク( モデル・フレームワーク)への適合性を確認したものである。株式会社日本格付研究所( JCR)は、PIF 第 4 原則で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、独立した第三者機関として、(1 )IHI に係る PIF評価の合理性及び本ファイナンスのインパクト、並びに(2)静岡銀行及び静岡経済研究所( 以下、総称して「静岡銀行」とする) の PIF 評価フレームワーク及び本ファイナンスの PIF 原則に対する準拠性について確認を行った。
(1) IHI に係る PIF 評価の合理性及び本ファイナンスのインパクト
IHI は、1853 年に創業した石川島造船所の流れをくむ石川島重工業株式会社が、
1907 年に設立された播磨船渠株式会社を祖とする株式会社播磨造船所と、1960 年
に合併し誕生した総合重工業グループである。2007 年には、石川島播磨重工業株式会社から現在の社名である IHI へ社名変更した。
IHI は、資源・エネルギー・環境事業、社会基盤・海洋事業、産業システム・汎用機械事業、航空・宇宙・防衛事業の 4 つのセグメントを主要事業としている。社会とともに発展するよき企業市民であることを第xxとし、「技術をもって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」の経営理念のもと、2020年 11 月に策定した中期経営計画「プロジェクト Change」の中で、「カーボンソリューション」、「保全・防災・減災」、「航空輸送システム」の 3 つを成長事業と定義し、脱 CO2 の実現、防災・減災の実現、暮らしの豊かさの実現を図っている。
また、持続可能な社会を実現し、企業として持続的に成長するために、優先的に取り組むべきことを 16 の重要課題として特定しており、なかでも地球規模の課題である気候変動への対策に取り組むこと、事業を通じて関わる人々の人権を尊重すること、価値創造の原動力となる多様な人材が活躍すること、そして誠実な企業経営によってステークホルダーからの信頼を獲得することを、より重要な課題としている。実際に、燃料アンモニアに関する技術開発やバリューチェーンの構築、カーボンリサイクルに取り組み、オープンイノベーションを推進することで先駆的な実績を残している。ダイバーシティ& インクルージョンも積極的に推進しており、多様な人材が活躍できる職場環境を醸成している。そのほか、事業活動における環境面に対
する配慮も欠かさず、地球環境保全にも貢献している。
本 PIF 評価では、IHI の事業活動全体に対する包括的分析が行われた。IHI のサステナビリティ活動等を分析した結果、ポジティブ面では「水( 入手可能性)」、「教育」、「雇用」、「エネルギー」、「移動手段」、「気候」、「包括的で健全な経済」、
「経済収束」が、ネガティブ面では、「水( 入手可能性)」、「健康・衛生」、「雇用」、「移動手段」、「人格と人の安全保障」、「水( 質)」、「大気」、「土壌」、
「生物多様性と生態系サービス」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」、
「包括的で健全な経済」、「経済収束」がインパクト領域として特定された。その中から、環境・社会・経済に対して同社の活動が最も貢献すべきインパクト領域として 6 つの項目を選定し KPI が設定された。今後、これら 6 項目のインパクトに係る上記 KPI 等に対して、モニタリングが実施される予定である。
JCR は、本 PIF 評価における包括的分析及びインパクト特定の内容について、モデル・フレームワークに示された項目に沿って確認した結果、適切な分析がなされていると評価している。また、本 PIF 評価の KPI に基づくインパクトについて、PIF原則に例示された評価基準に沿って確認した結果、多様性・有効性・効率性・追加性が期待されると評価している。当該 KPI は、上記のインパクト特定及び IHI のサステナビリティ活動の内容に照らしても適切である。さらに、本 PIF 評価におけるモニタリング方針について、本 PIF 評価のインパクト特定及び KPI の内容に照らして適切であると評価している。従って JCR は、本 PIF 評価において、持続可能な開発目標( SDGs) に係る三側面( 環境・社会・経済) を捉えるモデル・フレームワークの包括的インパクト分析( インパクトの特定・評価・モニタリング)が、十分に活用されていると評価している。
(2) 静岡銀行の PIF 評価フレームワーク及び本ファイナンスの PIF 原則に対する準拠性
JCR は、静岡銀行の PIF 商品組成に係るプロセス、手法及び社内規程・体制の整備状況、並びに IHI に対する PIF 商品組成について、PIF 原則に沿って確認した結果、全ての要件に準拠していると評価している。
以上より、JCR は、本ファイナンスが PIF 原則及びモデル・フレームワークに適合していることを確認した。
*詳細な意見書の内容は次ページ以降をご参照ください。
第三者意見
評価対象:株式会社静岡銀行の株式会社IHI に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス
2023 年 3 月 10 日 株式会社 日本格付研究所
目次
<要約> . - 3 -
Ⅰ.第三者意見の位置づけと目的 ..................................................................................... - 5 -
Ⅱ.第三者意見の概要........................................................................................................ - 5 -
Ⅲ.IHI に係るPIF 評価等について................................................................................. - 6 -
1. IHI の事業概要........................................................................................................ - 6 -
1-1 IHI グループ事業概況........................................................................................ - 6 -
1-2 経営理念および目指す姿.................................................................................... - 7 -
1-3 中期経営計画...................................................................................................... - 7 -
2 サステナビリティに関する戦略・方針及び活動実績............................................... - 9 -
2-1 ESG 経営............................................................................................................ - 9 -
2-2 ステークホルダーへの開示方法....................................................................... - 10 -
2-3 マテリアリティの特定 ..................................................................................... - 11 -
2-4 外部評価等........................................................................................................ - 12 -
3 包括的分析及びインパクト特定の適切性評価........................................................ - 15 -
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析........................................... - 15 -
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定 .................................................... - 17 -
3-3 最も貢献すべきインパクト領域の選定............................................................ - 18 -
3-4 JCR によるモデル・フレームワークに示された項目に沿う評価................... - 19 -
4 インパクトの内容及びKPI の設定......................................................................... - 21 -
5 サステナビリティに関するガバナンス体制 ........................................................... - 47 -
6 JCR による評価...................................................................................................... - 52 -
7 モニタリングの頻度と方法..................................................................................... - 58 -
8 モデル・フレームワークの活用状況評価............................................................... - 58 -
Ⅳ.PIF 原則に対する準拠性について ............................................................................ - 59 -
1. 原則 1 定義.......................................................................................................... - 59 -
2. 原則 2 フレームワーク........................................................................................ - 60 -
3. 原則 3 透明性...................................................................................................... - 61 -
4. 原則 4 評価.......................................................................................................... - 62 -
Ⅴ.結論 ........................................................................................................................... - 62 -
<要約>
本第三者意見は、株式会社静岡銀行(静岡銀行)が一般財団法人静岡経済研究所(静岡経済研究所)の評価を踏まえて株式会社IHI(IHI)に実施するポジティブ・インパクト・ファイナンス(本ファイナンス)に対して、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則及び資金使途を限定しない事業会社向け金融商品のモデル・フレームワーク(モデル・フレームワーク)への適合性を確認したものである。株式会社日本格付研究所(JCR)は、PIF 第 4 原則で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、独立した第三者機関として、(1)IHI に係るPIF評価の合理性及び本ファイナンスのインパクト、並びに(2)静岡銀行及び静岡経済研究所(以下、総称して「静岡銀行」とする)のPIF 評価フレームワーク及び本ファイナンスのPIF 原則に対する準拠性について確認を行った。
(1) IHI に係るPIF 評価の合理性及び本ファイナンスのインパクト
IHI は、1853 年に創業した石川島造船所の流れをくむ石川島重工業株式会社が、1907 年に設立された播磨船渠株式会社を祖とする株式会社播磨造船所と、1960 年に合併し誕生した総合重工業グループである。2007 年には、石川島播磨重工業株式会社から現在の社名であるIHI へ社名変更した。
IHI は、資源・エネルギー・環境事業、社会基盤・海洋事業、産業システム・汎用機械事業、航空・宇宙・防衛事業の 4 つのセグメントを主要事業としている。社会とともに発展するよき企業市民であることを第xxとし、「技術をもって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」の経営理念のもと、2020 年 11 月に策定した中期経営計画「プロジェクト Change」の中で、「カーボンソリューション」、「保全・防災・減災」、「航空輸送システム」の 3 つを成長事業と定義し、脱 CO2 の実現、防災・減災の実現、暮らしの豊かさの実現を図っている。
また、持続可能な社会を実現し、企業として持続的に成長するために、優先的に取り組むべきことを 16 の重要課題として特定しており、なかでも地球規模の課題である気候変動への対策に取り組むこと、事業を通じて関わる人々の人権を尊重すること、価値創造の原動力となる多様な人材が活躍すること、そして誠実な企業経営によってステークホルダーからの信頼を獲得することを、より重要な課題としている。実際に、燃料アンモニアに関する技術開発やバリューチェーンの構築、カーボンリサイクルに取り組み、オープンイノベーションを推進することで先駆的な実績を残している。ダイバーシティ&インクルージョンも積極的に推進しており、多様な人材が活躍できる職場環境を醸成している。そのほか、事業活動における環境面に対する配慮も欠かさず、地球環境保全にも貢献している。
本 PIF 評価では、IHI の事業活動全体に対する包括的分析が行われた。IHI のサステナビリティ活動等を分析した結果、ポジティブ面では「水(入手可能性)」、「教育」、「雇用」、
「エネルギー」、「移動手段」、「気候」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」が、ネガティブ面では、「水(入手可能性)」、「健康・衛生」、「雇用」、「移動手段」、「人格と人の安全保障」、
「水(質)」、「大気」、「土壌」、「生物多様性と生態系サービス」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」がインパクト領域として特定された。その中から、環境・社会・経済に対して同社の活動が最も貢献すべきインパクト領域として 6 つの項目を選定し KPI が設定された。今後、これら 6 項目のインパクトに係る上記KPI等に対して、モニタリングが実施される予定である。
JCR は、本PIF 評価における包括的分析及びインパクト特定の内容について、モデル・フレームワークに示された項目に沿って確認した結果、適切な分析がなされていると評価している。また、本PIF 評価のKPI に基づくインパクトについて、PIF 原則に例示された評価基準に沿って確認した結果、多様性・有効性・効率性・追加性が期待されると評価している。当該KPI は、上記のインパクト特定及びIHI のサステナビリティ活動の内容に照らしても適切である。さらに、本PIF 評価におけるモニタリング方針について、本PIF 評価のインパクト特定及び KPI の内容に照らして適切であると評価している。従って JCR は、本PIF 評価において、持続可能な開発目標(SDGs)に係る三側面(環境・社会・経済)を捉えるモデル・フレームワークの包括的インパクト分析(インパクトの特定・評価・モニタリング)が、十分に活用されていると評価している。
(2) 静岡銀行のPIF 評価フレームワーク及び本ファイナンスのPIF 原則に対する準拠性
JCR は、静岡銀行の PIF 商品組成に係るプロセス、手法及び社内規程・体制の整備状況、並びに IHI に対する PIF 商品組成について、PIF 原則に沿って確認した結果、全ての要件に準拠していると評価している。
以上より、JCR は、本ファイナンスがPIF 原則及びモデル・フレームワークに適合していることを確認した。
Ⅰ.第三者意見の位置づけと目的
JCR は、静岡銀行がIHI に実施するPIF に対して、UNEP FI の策定したPIF 原則及びモデル・フレームワークに沿って第三者評価を行った。PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関等が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は 4 つの原則からなる。第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認でき、ネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
本第三者意見は、PIF 第 4 原則で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、 JCR が独立した第三者機関として、本 PIF 評価の合理性及び本PIF 評価に基づくファイナンスのインパクト、並びに静岡銀行の PIF 評価フレームワーク及び本PIF 評価のPIF 原則に対する準拠性を確認し、本PIF 評価のPIF 原則及びモデル・フレームワークへの適合性について確認することを目的とする。
Ⅱ.第三者意見の概要
本第三者意見は、静岡銀行がIHI との間で 2022 年 3 月 10 日付にて契約を締結する、資金使途を限定しないPIF に対する意見表明であり、以下の項目で構成されている。
<IHI に係るPIF 評価等について>
1. IHI の事業概要
2. サステナビリティに関する戦略・方針及び活動実績
3. 包括的分析(含むインパクト領域の特定)
4. インパクトの内容及びKPI の設定
5. サステナビリティに関するガバナンス体制
6. モニタリングの頻度と方法
<静岡銀行のPIF 評価フレームワーク等について>
1. 静岡銀行の組成する商品(PIF)が、UNEP FI のPIF 原則及び関連するガイドラインに準拠しているか(プロセス及び商品組成手法は適切か、またそれらは社内文書で定められているかを含む)
2. 静岡銀行が社内で定めた規程に従い、IHI に対するPIF を適切に組成できているか
Ⅲ.IHI に係るPIF 評価等について
本項では、IHI に係る PIF 評価におけるモデル・フレームワークの包括的インパクト分析(インパクトの特定・評価・モニタリング)の活用状況と、本ファイナンスのインパクト
(①多様性、②有効性、③効率性、④倍率性、⑤追加性)について確認する。
1. IHI の事業概要
1-1 IHI グループ事業概況
IHI は、1853 年に創業した石川島造船所の流れをくむ石川島重工業株式会社が、1907 年に設立された播磨船渠株式会社を祖とする株式会社播磨造船所と、1960 年に合併し誕生した総合重工業グループである。2007 年には、石川島播磨重工業株式会社から現在の社名であるIHI へ社名変更した。2022 年 3 月末時点で、国内 59 社、海外 142 社の関係会社でIHIグループを形成しており、下表の 4 つのセグメントを主要事業としている。
図表 1.セグメント別事業内容
セグメント | 事業内容 |
資源・エネルギー・環境 | 原動機(陸用原動機プラント/船用原動機)、カーボンソリューション(ボ イラ/貯蔵設備)、原子力(原子力機器) |
社会基盤・海洋 | 橋梁・水門、交通システム、シールドシステム、コンクリート建材、都市 開発(不動産販売・賃貸) |
産業システム・汎用機械 | 車両過給機、パーキング、回転機械(圧縮機/分離装置/船用過給機)、熱・ 表面処理、運搬機械、物流・産業システム(物流システム/産業機械) |
航空・宇宙・防衛 | 航空エンジン、ロケットシステム・宇宙利用、防衛機器システム |
図表 2.IHI の事業別売上収益(2021 年度)
資料:IHI 統合報告書 2022
1-2 経営理念および目指す姿
IHI グループは、社会とともに発展するよき企業市民であることを第xxとし、「技術を もって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」の経営理念のもと、 IHI グループビジョンに目指す姿を示している。
【IHI グループビジョン】
21 世紀の環境、エネルギー、産業・社会基盤における諸問題を、ものづくり技術を中核とするエンジニアリング力によって解決し、地球と人類に豊かさと安全・安心を提供するグローバルな企業グループとなる。
各事業領域においても目指す姿を策定し、実現に向けた取組みを進めている。
【各事業領域の目指す姿】
資源・エネルギー・環境事業領域
地域・お客さまごとに最適な総合ソリューションを提供することにより”脱CO2・循環型社会”に貢献する
社会基盤・海洋事業領域
橋梁・トンネルを軸に安全・安心な社会インフラの実現にグローバルかつライフサイクルにわたり貢献する
産業システム・汎用機械事業領域
お客さまとともにオペレーションの最適化をライフサイクルで徹底追求することにより、産業インフラの発展に貢献する
航空・宇宙・防衛事業領域
先進技術により、航空輸送、防衛システムおよび宇宙利用のxxを切り拓き、豊かで安全な社会の実現に貢献する
1-3 中期経営計画
IHI グループは、2019 年 4 月より中期経営計画「グループ経営方針 2019」をスタートさせていたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経営環境の変化を受け、2020 年度から 2022 年度までの 3 年間を環境変化に即した事業変革への準備・移行期間と位置付けた「プロジェクト Change」を 2020 年 11 月に策定した。プロジェクト Change は、環境変化に打ち勝つ事業体質への変革や財務戦略の実行を通じた収益基盤のさらなる強化、ライフサイクルビジネスの拡大により成長軌道への早期の回復を目指している。そのために、脱 CO2・循環型社会と快適で安心な自律分散コミュニティを実現する「カーボンソリューション」、強靭で経済性・環境性に富んだ社会インフラの開発による「保全・防災・減災」、安全・快適・経済的で環境にやさしい「航空輸送システム」の 3 つを成長事業と定義し、脱 CO2
の実現、防災・減災の実現、暮らしの豊かさの実現を図っている。
図表 3.中期経営計画の概要
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
2 サステナビリティに関する戦略・方針及び活動実績
2-1 ESG 経営
IHI グループは、将来のありたい姿として「自然と技術が調和する社会を創る」を掲げており、地球環境とそこに暮らす人々が持続可能であるために、自然の脅威から人々を守り、安心・安全で豊かに暮らすことができる社会を創ることを目指している。そのために、2050年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することや事業活動により影響を受けるステークホルダー・ライツホルダーに対する負の影響を予防・低減し、すべての人の豊かな生活を実現すること、多様性を受け入れ、環境の変化を的確に把握・対応し、持続可能な社会を実現すること、同グループが本来有する力を最大限に発揮できるよう基盤を築き、あらゆるステークホルダーとの積極的な対話を行なうなど、事業を通じて、さまざまな社会課題に取り組み、社会価値を創出するとともに、企業価値を向上していく方針を示している。
図表 4.IHI グループのESG 経営
資料:IHI ESG STORYBOOK
2-2 ステークホルダーへの開示方法
IHI グループは、企業活動を継続する上で影響の大きい、お客さま、お取引先、株主・投資家、行政、地域社会、従業員を主要なステークホルダーと捉え、さまざまな方法での対話を実施している。対話のためのツールとして統合報告書やSustainability Data Book を発行しており、2022 年度にはIHI ESG STORYBOOK を発行し、同グループが考えるESG経営の詳細について示している。
図表 5.ステークホルダーとの対話実績
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
2-3 マテリアリティの特定
IHI は、持続可能な社会を実現し、企業として持続的に成長するために、優先的に取り組むべきことを 16 の重要課題として特定している。さらに、ESG 経営においては、地球規模の課題である気候変動への対策に取り組むこと、事業を通じて関わる人々の人権を尊重すること、価値創造の原動力となる多様な人材が活躍すること、そして誠実な企業経営によってステークホルダーからの信頼を獲得することを、より重要な課題としている。
図表 6.IHI が特定した 16 の重要課題
カテゴリー | 重要課題 | ESG 経営において特に重要な課題 |
環境 | 気候変動への対策 | 気候変動への対策 |
資源循環型社会の形成 | ||
地球環境の保全 | ||
社会 | 人権の尊重 | 人権の尊重 多様な人材の活躍 |
お客さまとの関係強化 | ||
多様な人材の活躍 | ||
労働安全衛生水準の向上 | ||
サプライチェーン・マネジメントの強化 | ||
地域社会との共存共栄 | ||
働き方改革、業務プロセスの改革 | ||
ガバナンス | コーポレート・ガバナンスの強化 | ステークホルダーからの信頼の獲得 |
コンプライアンスの徹底 | ||
リスク管理の徹底 | ||
情報セキュリティの強化 | ||
適時・適切な情報開示 | ||
イノベーション・マネジメント |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
2-4 外部評価等
IHI のサステナビリティに関連する活動は、国際的・全国的な動きと連動させているとともに、外部から高い評価を受けている。
図表 7.外部評価一覧
外部評価名 | 内容 |
S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数 | S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数の構成銘柄に選定。 S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数は環境情報の開示状況や炭素効率性(売上高当たり炭素排出量)の水準に着目して構成銘柄のウエイトを決定している。 |
ESG 投資のための株価指数 FTSE Blossom Japan Sector | |
FTSE Blossom Japan Sector Relative Index | Relative Index の構成銘柄に選定。 グローバルインデックスプロバイダーである FTSE Xxxxxxx により構築された FTSE Blossom Japan Sector Relative Index は、各セクターにおいて相対的に、環境、社会、ガバナンス(ESG)の対応に優れた日本企業のパフォーマンスを反映するインデックス |
で、セクター・ニュートラルとなるよう設計されている。 | |
CDP 気候変動 | CDP の気候変動に関する質問書に毎年回答しており、2021 年度の評価は B−(マネジメントレベル)を受けた。 CDP は、世界の大手投資家が共同で設立した非営利団体で、企業や自治体などに対して質問状を送付し、回答を評価・公表することで、気候変動問題への取組みを促している。 |
デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX 銘柄)2022 に選定。 | |
デジタルトランスフォーメーション銘柄 2022 | DX 銘柄とは、経済産業省が東京証券取引所と共同で、東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながる DX を推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の |
実績が表れている企業を選定するもの。 | |
xxxん認定 | 2007 年、2011 年、2015 年、2020 年に子育てサポート企業として厚生労働大臣から認定され、xxxんマークを取得。 xxxん認定とは、次世代育成支援対策推進法に基づき、行動計画を策定した企業のうち、目標を達成し、一定の要件を満たした企業を認定する制度。 |
えるぼし認定 | 2017 年に厚生労働大臣からえるぼし(2 段階目)の認定を取得。えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づき、一定基準を満たし、女性の活躍促進に関する状況などが優良な企業を認定する制度。 |
健康経営優良法人 2022(ホワイト 500)の認定を取得。 | |
健康経営優良法人 2022 (ホワイト 500) | 健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が日本健康会議と共同で開始したもので、社員の健康管理を経営的な視点で考え、健康 の保持・増進につながる取組みを戦略的に実践する法人を顕彰す |
る制度。 | |
社会インフラを支える企業としてさらなる事業継続力の向上を図 | |
るため、2016 年にレジリエンス認証を取得し、継続的に更新。 | |
レジリエンス認証とは、一般社団法人レジリエンスジャパン推進 | |
レジリエンス 認証 | 協議会が、国土強靭化貢献団体の認証に関するガイドラインに基 |
づき、国土強靭化の趣旨に賛同し事業継続に積極的に取り組んで | |
いる事業者に対して国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証) | |
を与える制度。 | |
PRIDE 指標 2021 において、最高位のゴールドを受賞。 | |
LGBTQ+に関わる人事制度や相談窓口の設置、アライ活動の展開、 | |
理解促進教育などが評価され、4 年連続での受賞となった。 | |
PRIDE 指標 2021 ゴールド賞 | PRIDE 指標とは、work with Pride が策定した LGBTQ+などの性的少数者の働きやすい職場づくりを目指す指標であり、行動宣 |
言、当事者コミュニティ、啓発活動、人事制度・プログラム、社会 | |
貢献・渉外活動のカテゴリーで企業の取組みを評価している。 |
図表 8.賛同・署名一覧
賛同・署名 | 内容 |
TCFD | TCFD とは、企業などに対し、気候変動関連リスク及び機会に関するガバナンスや戦略、リスクマネジメント、指標と目標の項目について開示することを推奨する枠組み。 2019 年 5 月に、取締役会での決議を経て、この提言の趣旨に 賛同。 戦略立案のツールとして役立てることで、リスク管理の強化や事業機会の創出につなげることを標榜している。 |
国連 グローバル・コンパクト | 健全なグローバル社会を築くためのイニシアチブである国連グローバル・コンパクトに署名し、2022 年 2 月 6 日付で参加企業として登録された 国連グローバル・コンパクトが定める 4 分野(人権・労働・環境・腐敗防止)に関する 10 原則に賛同し、その実現に取り組むことを標榜している |
3 包括的分析及びインパクト特定の適切性評価
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析
IHI について、セグメント、エリア、サプライチェーンの観点から、インパクトを生み出す要因を包括的に検討した。
まず、セグメントについては、直近年度の連結売上収益ベースで、資源・エネルギー・環境 29.4%、社会基盤・海洋 14.3%、産業システム・汎用機械 32.1%、航空・宇宙・防衛 22.6%となっている。セグメントによる大きな偏りはないため、IHI の主要事業全般について分析を行った。
図表 9.2022 年 3 月期 セグメント別売上収益
セグメント | 2022 年 3 月期 | 2021 年 3 月期 | ||
売上収益(百万円) | 構成比(%) | 売上収益(百万円) | 構成比(%) | |
資源・エネルギー・ 環境 | 344,449 | 29.4 | 317,675 | 28.5 |
社会基盤・海洋 | 167,350 | 14.3 | 157,952 | 14.2 |
産業システム・ 汎用機械 | 376,989 | 32.1 | 374,260 | 33.6 |
航空・宇宙・防衛 | 265,289 | 22.6 | 251,519 | 22.6 |
その他・調整額 | 18,827 | 1.6 | 11,500 | 1.0 |
合計 | 1,172,904 | 100.0 | 1,112,906 | 100.0 |
資料:2022 年 3 月期有価証券報告書
次に、エリアに関しては、直近年度の連結売上収益ベースで、日本が 57.7%、次いでアジ ア 21.5%、北米 13.1%となっている。日本国内での売上収益が過半数を占めるものの、国 外の割合も相応に認められるため、中国やアメリカなどを含めた上位3地域の日本、アジア、北米を中心に評価した。
図表 10.2022 年 3 月期 地域別売上収益
地域 | 2022 年 3 月期 | 2021 年 3 月期 | ||
売上収益(百万円) | 構成比(%) | 売上収益(百万円) | 構成比(%) | |
日本 | 677,318 | 57.7 | 698,918 | 62.8 |
アジア | 252,154 | 21.5 | 218,511 | 19.6 |
北米 | 153,940 | 13.1 | 126,158 | 11.3 |
ヨーロッパ | 67,059 | 5.7 | 52,827 | 4.7 |
中南米 | 13,495 | 1.2 | 8,503 | 0.8 |
その他 | 8,938 | 0.8 | 7,989 | 0.7 |
合計 | 1,172,904 | 100.0 | 1,112,906 | 100.0 |
資料:2022 年 3 期有価証券報告書
そして、サプライチェーンにおいては、産業や社会を支える製品の製造から販売、エンジ ニアリング、据付、サービスまで一貫して担っている。IHI の製品を用いて事業を展開する 取引先、さらには取引先の顧客である消費者は多岐にわたり、環境・社会・経済へ与える影 響は大きいことから、主に取引先事業者を中心とするxxにおけるサプライチェーンへの インパクトが重要と考えられる。このような中、同社では IHI グループ調達基本方針やIHI グループ人権方針などを定めて活動を進めることで、同社へ原材料等を供給するサプライ ヤーから同社の製品を利用する顧客までサプライチェーン全体へインパクトを与えている。
以上の観点から、UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析を実施した結果、ポジティブ・インパクトとして「水(入手可能性)」、「雇用」、「エネルギー」、「移動手段」、「情報」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」の、ネガティブ・インパクトとして「健康・衛生」、
「雇用」、「移動手段」、「文化・伝統」、「水(質)」、「大気」、「土壌」、「生物多様性と生態系サービス」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」、「経済収束」の発現が確認された。
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定
UNEP FI のインパクト評価ツールを用いたインパクト分析結果を参考に、IHI のサステナビリティに関する活動を公表資料等から網羅的に分析し、同社が環境・社会・経済に対して強いインパクトを与える活動について検討した。なお、原則として、同社による公開資料を基にインパクト分析を実施しているが、重要な事項については根拠資料の提示あるいはヒアリング調査により補完している。
このように、IHI の個別要因を加味して同社のインパクト領域を特定した結果、メディアなどを通じた情報へのアクセス性を高める活動がないことや文化的な生活へのアクセスに支障の出る事業内容ではないことなどから、インパクト分析ツールで抽出されたインパクト領域のうち、ポジティブ・インパクトの「情報」と、ネガティブ・インパクトの「文化・伝統」を削除した。一方で、同社のサステナビリティ活動に関連のあるポジティブ・インパクトとして「教育」、「気候」を、ネガティブ・インパクトとして「水(質)」、「人格と人の安全保障」、「包括的で健全な経済」を追加した。
図表 11.特定されたインパクト領域
UNEP FI のインパクト分析ツールにより抽出されたインパクト領域 | |||
ポジティブ | ネガティブ | ||
入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 (一連の固有の特徴がニーズを満たす程度) | |||
水 | |||
食糧 | |||
住居 | |||
健康・衛生 | |||
教育 | |||
雇用 | |||
エネルギー | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
文化・伝統 | |||
人格と人の安全保障 | |||
xx | |||
強固な制度・平和・安定 | |||
質(物理的・化学的構成・性質)の有効利用 | |||
水 | |||
大気 | |||
土壌 | |||
生物多様性と生態系サービス | |||
資源効率・安全性 | |||
気候 | |||
廃棄物 | |||
人と社会のための経済的価値創造 | |||
包括的で健全な経済 | |||
経済収束 |
個別要因を加味し 特定されたインパクト領域 | |
ポジティブ | ネガティブ |
後述の通り、IHI は、カーボンニュートラルの実現に向けた取組みやダイバーシティ&イ ンクルージョンの実践、オープンイノベーションの推進、事業活動における CO2 排出量の 削減、各種環境汚染対策による環境負荷低減、資源効率を高める活動などに努めているため、
「雇用」、「エネルギー」、「気候」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」に関するポジティブ・インパクトの増大や、「水(質)」、「大気」、「土壌」、「生物多様性と生態系サービス」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」に関するネガティブ・インパクトの低減への貢献は、十分に評価できる。
また、ダム用水門設備の建設による水の利用可能性の向上や多様な人材の活躍につながる人材育成の実施、各種民間機用エンジンの開発・供給による移動手段を提供していることなどから、「水(入手可能性)」や「教育」、「移動手段」のポジティブ・インパクトの増大に資すると認められる。
さらに、IHI グループ安全衛生基本方針に基づく従業員の安全と健康を確保する取組みや多様な働き方・新しい働き方の推進・創造、従業員へのxx・適切な処遇、各種航空エンジンの整備事業、自社だけでなくサプライチェーン全体で人権を尊重する取組み、xxxxな取引を宣言するIHI グループ調達基本方針などから、「健康・衛生」、「雇用」、「移動手段」、
「人格と人の安全保障」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」のネガティブ・インパクトの低減へ寄与していることが確認できる。
3-3 最も貢献すべきインパクト領域の選定
以上のように、IHI のインパクトの特定においては、インパクト分析ツールを用いた分析、同社の公開資料に基づくサステナビリティ活動の網羅的分析、及び同社が設定したマテリアリティや中期経営計画等を総合的に評価し、8つのポジティブ・インパクトの増大と 14のネガティブ・インパクトの低減を確認した。その中から、同社の活動が、対象とするエリアやサプライチェーンにおける環境・社会・経済に対して、最も貢献すべきインパクト領域として、次章以降の6つの取組みを選定した。
3-4 JCR によるモデル・フレームワークに示された項目に沿う評価
モデル・フレームワークの確認項目 | JCRによる確認結果 |
事業会社のセクターや事業活動類型を踏まえ、操業地域・国において関連のある主要な持続可能性の課題、また事業活動がこれらの課題に貢献するかどうかを含めて、事 業環境を考慮する。 | 事業セグメント・エリア、サプライチェーンの観点から、IHIの事業活動全体に対する包括的分析が行われ、インパクト領域が特定されている。 |
関連する市場慣行や基準(例えば国連グローバル・コンパクト10原則等)、また事業会社がこれらを遵守しているかどうかを考 慮する。 | IHIは、国連グローバル・コンパクトへの署名、健康経営優良法人2022認定、各 ESG指数への選定等により、各対応を進め ていることが確認されている。 |
CSR報告書や統合報告書、その他の公開情報で公に表明された、ポジティブ・インパクトの発現やネガティブ・インパクトの抑制に向けた事業会社の戦略的意図やコミットメントを考慮する。 | 「IHIグループのESG経営」の基本方針や中期経営計画「プロジェクトChange」等を踏まえ、経営層や多様なステークホルダーの意見を十分に反映しながら、重要課題の特定を行っている。重要課題・インパク ト領域が特定されている。 |
グリーンボンド原則等の国際的イニシアティブや国レベルでのタクソノミを使用し、ポジティブ・インパクトの発現するセクター、事業活動、地理的位置(例えば低中所得国)、経済主体の類型(例えば中小企 業)を演繹的に特定する。 | UNEP FIのインパクト分析ツール、グリーンボンド原則・ソーシャルボンド原則のプロジェクト分類等の活用により、インパクト領域が特定されている。 |
PIF商品組成者に除外リストがあれば考慮する。 | IHIは、静岡銀行の定める融資方針等に基づく不適格企業に該当しないことが確認さ れている。 |
持続可能な方法で管理しなければ、重大なネガティブ・インパクトを引き起こし得る事業活動について、事業会社の関与を考慮する。 | IHIの事業で想定し得る重要なネガティ ブ・インパクトとして、CO2排出量、廃棄物排出量等が特定されている。これらは、 IHIのマテリアリティ等で抑制すべき対象と認識されている。 |
JCR は、本ファイナンスにおける包括的分析及びインパクト特定の内容について、モデル・フレームワークに示された項目に沿って以下のとおり確認した結果、適切な分析がなされていると評価している。
事業会社の事業活動に関連する潜在的なネ | 静岡銀行は、原則としてIHIの公開情報を |
ガティブ・インパクトや、公表されている | 基にインパクト領域を特定しているが、重 |
意図と実際の行動(例えばサプライチェー | 要な項目に関しては、その裏付けとなる内 |
ンの利害関係者に対してや従業員の中での | 部資料等の確認及びヒアリングの実施によ |
行動)の明らかな矛盾を特定するため、考 | り、手続きを補完している。なお、JCRは |
え得る論点に関する利用可能な情報を検証 | 静岡銀行の作成したPIF評価書を踏まえて |
する。 | IHIにヒアリングを実施し、開示内容と実 |
際の活動内容に一貫性があることを確認し | |
ている。 |
4 インパクトの内容及びKPI の設定 4-1 カーボンニュートラルの実現
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>エネルギー、気候
<SDGs との関連性>
7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
・2024 年度までに、温室効果ガス排出量を 20%削減するアンモニア混焼ガスバーナーを開発・実用化
・2025 年度までに、温室効果ガス排出量を 100%削減するアンモニア専焼ガスタービン
(2,000kW 級)を開発・実用化
・2030 年までに、メタン合成量(10N ㎥/h 規模)において、エネルギー変換効率 60~ 65%(補器損込)を実現
<インパクトの内容>
気候変動に伴うリスクの低減に向けて、日本政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」をはじめとする、脱炭素を求める動きが高まっている中、IHIグループは、2050年に向けたエネルギー構成が、水素やアンモニア、再生可能エネルギーの利用を中心とする社会へと移行し、同時に原子力発電が再生可能エネルギーの普及に応じて、ベース電源として活用されると想定している。そして、2050年までの移行期を支えるのはCO2を回収・利用する脱炭素技術であると考えている。同グループでは、こうした社会課題を自社が解決すべき課題として捉え、環境性と経済合理性を両立する脱炭素の実現を目指しており、「エネルギーバリューチェーンの脱炭素」や「カーボンリサイクルの実現」などといった具体的な課題を設定している。
図表12.IHIグループが想定するエネルギー源のバランス
資料:IHI統合報告書2022
エネルギーバリューチェーンの脱炭素については、既存のエネルギー源に代わるカーボンフリーのエネルギーとしてアンモニアに着目している。アンモニアは、燃焼時にCO2を排出せず、燃料として利用することで火力発電などの脱炭素につながるため、IHIグループでは、アンモニアバリューチェーン全体の構築に挑んでいる。こうしたアンモニアプロジェクトは、燃料アンモニアに適した設備の技術開発に留まらず、燃料アンモニア普及に必要な規格や仕組みの構築を官民で連携して推進することで、アンモニア市場の拡大に貢献していく方針である。
図表13.アンモニアバリューチェーン
資料:IHI統合報告書2022
図表14.燃料アンモニア社会実装のためのアクション
資料:IHI統合報告書2022
こうした取組みの中でも、特に技術開発での寄与度は大きく、ボイラやガスタービンの燃焼技術に関しては世界をリードする技術を保有している。
アンモニアは燃える速度が遅く、ボイラで安定して燃焼させるには工夫が必要であり、適切に燃焼させなければ窒素酸化物などの酸性雨や地球温暖化の原因となる物質が発生してしまう。アンモニアを安定して燃焼させる条件と有害物質の出やすい条件はトレードオフの関係にあり、この課題を解決するために、IHIはバーナーの開発と適した燃焼条件の特定を進め、世界に先駆けて実機ボイラでの実証試験に取り組むことを可能にした。実機実証試験では、株式会社JERA(JERA)と共同で、大型の商用石炭火力発電ユニットにおける石炭と気体アンモニアの混焼による発電の実証に取り組んでおり、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、JERAのxx火力発電所4号機において、2024年度に燃料アンモニアを20%混焼する技術の確立に向けて実証事業を進めている。この実証事業は、日本をはじめとした火力発電を必要とする国々にとって、低コストかつスピーディーに脱炭素を進める第一歩となる重要なプロジェクトとなっている。
一方、さらなる混焼率の向上を目指しており、NEDOのグリーンイノベーション基金を活用して、50%以上のアンモニア混焼が可能なバーナーの新規開発を2024年度までに、実証を2028年度までに達成することを目指して開発を進めている。アンモニア専焼を目指した開発も並行して進めており、2022年5月には、IHI相生工場内の小型燃焼試験設備において、人体に有害なNOx(窒素酸化物)を抑制した状態でのアンモニア専焼に成功し、火力発電用ボイラにおけるアンモニア専焼技術の実用化が大きく前進した。今後は、バーナー構造の改善やボイラ性能に与える影響の評価を実施し、専焼バーナーの実証については2025年の実証試験を目指すとしている。
ガスタービンの燃焼技術に関しても、アンモニアを液体状態のまま専焼できるといった世界で唯一の技術を有しているため、液体状態で貯蔵されているアンモニアを気化させずに直接使用することで、付帯設備が不要になるほか、制御性向上などのメリットを享受でき
る。通常、液体アンモニアは天然ガスやアンモニアガスよりも燃焼性が低く燃えにくいため、アンモニア混焼率を高めた際、安定的なアンモニア燃焼と排気ガス中の温室効果ガスの排出抑制が課題となる。これまでは、70%を超える高いアンモニア混焼率での運転時に、温室効果ガスの一種であり、CO2の約300倍の温室効果をもつ亜酸化窒素(N2O)が発生し、 CO2排出量を削減できても温室効果ガスの削減にはつながらないことが課題となっていた。 IHIでは、新たな燃焼器と燃焼条件に関する開発に取り組み、IHI横浜事業所の2,000kW級ガスタービンで、新たに開発した燃焼器を搭載した試験を実施。70~100%の高いアンモニア混焼率でも温室効果ガス削減率99%以上を達成し、液体アンモニアのみの燃焼で定格出力での発電ができることを実証した。今後の開発では、さらにNOxを削減していくとともに運用性の向上や長時間の耐久性評価を行ない、2025年の液体アンモニア100%燃焼ガスタービン実用化に向けた取組みを進めていく方針を示している。
図表15.液体アンモニアの専焼を実現する2段階燃焼方式
資料:IHI統合報告書2022
アンモニアバリューチェーンの構築に関する取組みとして、アンモニア製造から利用に至るカーボンフットプリントを記録・可視化する「アンモニアCO2トレーサビリティプラットフォーム」を開発し、2022年10月から実証試験を開始した。データ追跡信頼性の高いブロックチェーン技術を用いて、アンモニアの「つくる」、「はこぶ・ためる」、「つかう」の各段階におけるCO2排出量を算出、記録、ならびに可視化するなど、各プロセスにおけるCO2トレーサビリティを実現している。このシステムにより、バリューチェーン上の各プレーヤーやアンモニアの需要家が、脱炭素の取組みに関する情報を必要とする各ステークホルダーに対して、CO2排出量や削減量を証明できるようになる。IHIでは、今後、この仕組みを世界中のアンモニアバリューチェーンに携わる誰もが参加可能なプラットフォームとして整備を進め、社外とコンソーシアムを形成した実証試験を予定している。これらの活動を通
して、燃料アンモニアを含めたカーボンニュートラル燃料の社会実装の早期実現と質の高いインフラ提供によるグローバルな環境負荷の低減に貢献していくとしている。
図表16.アンモニアCO2トレーサビリティプラットフォームの概要図
資料:IHIプレスリリース(2022年10月31日)
カーボンリサイクルの実現に関する事業では、CO2の回収技術だけでなく、水素を効率的に製造する技術、CO2を水素との反応により有価物に変換する技術の開発を行い、脱炭素手段としてCO2回収が求められている業界やカーボンニュートラルな燃料・原料が求められている業界をターゲットにCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素の回収、有効利用、貯留)技術を提供していくと標榜している。
図表17.IHIグループが目指すカーボンリサイクルロードマップ
資料:IHI統合報告書2022
CO2分離回収技術は、実機火力発電所において13,000時間を超える運転時間で性能を実証しており、経済性に優れたCO2分離、回収装置を顧客に提供している。メタン製造技術では、長寿命を特徴にもつ触媒の開発に取り組み、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:
二酸化炭素の回収、貯留)とメタン製造技術をセットで提供することで、CO2分離からメタン製造までのプロセス全体を効率化している。
さらに、実装のためのエンジニアリング力を強みに、NEDOのグリーンイノベーション基金事業として、2022年度から2030年度の9年間を実施期間とする「低温プロセスによる革新的メタン製造技術開発」の実施予定先に、東京ガス株式会社と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共に選定された。IHIは、画期的なメタン製造方法を社会実装するためのエンジニアリングを担当することとなっている。
図表18.合成メタン製造の主な研究開発内容
資料:IHI統合報告書2022
そのほか、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)傘下の研究機関である ISCE2(化学・エネルギー・環境サステナビリティ研究所)と共同で研究開発を行うジョイントセンターを設立するための基本合意書に調印し、カーボンソリューション関連の開発の一環として、メタネーションや低級オレフィン、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)に代表される CO2 からの有価物転換のほか、循環型社会に必要となる技術の開発を加速させている。
また、メタネーション装置の一般産業への利用促進も図っており、2022 年 10 月には、1時間に 12.5N ㎥の合成メタンを製造する小型メタネーション装置の販売を開始した。この装置は、工場や研究所、事業所などにおけるカーボンニュートラル実現に向けた検討のため
に同社のメタネーション装置を試験運用したいという多数のニーズから製品化したものであり、設計を標準化することで導入コストの削減や納期の短縮を実現した。メタン合成に必要な機器をコンパクトな筐体にパッケージ化しているため、短期間で容易な据付や複数導入によるメタン製造量の拡張を可能にしている。
図表 19.パッケージ化された小型メタネーション装置
資料:IHI プレスリリース(2022 年 10 月 21 日)
このように、IHI では、エネルギーバリューチェーンの脱炭素やカーボンリサイクルの実現に取り組むことでカーボンニュートラルの実現に挑戦しており、これらは経済産業省が示している電力分野の脱炭素化に向けたトランジション・ロードマップなどにも整合していると評価できる。こうした取組みは、環境面におけるポジティブ・インパクトの増大に資するものであり、インパクトレーダーの「エネルギー」や「気候」に該当する。また、SDGsのゴール 7 や 13 に関連する。
静岡銀行は、IHI のカーボンニュートラルの実現に関する取組みを定量的に確認するために、同社が KPI として設定した、アンモニア混焼ガスバーナーの開発・実用化状況やアンモニア専焼ガスタービンの開発・実用化状況、メタン合成におけるエネルギー変換効率をモニタリングしていく方針である。
4-2 ダイバーシティ&インクルージョン
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>雇用、包括的で健全な経済
<SDGs との関連性>
5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)>
・2030 年までに、役員に占める女性比率 30%を達成
<インパクトの内容>
IHI グループは、経営戦略の一環としてダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいる。その背景には、多様な個性・価値観を有する一人ひとりが、個人の属性に関わらず、互いを尊重し、認め合い、持てる能力を最大限に発揮できる組織風土を醸成するという目的がある。そして、その組織風土により、多様な考え方を結び付け、社会課題解決のためのイノベーションを生み出し、新たな価値を創造していくとしている。
多様な人材の具体的な活躍推進策としては、社外での経験を積んだ人材のキャリア採用に積極的に取り組んでいる。事業環境の変化が激しい現代では、事業戦略や技術戦略に基づき求められる資質を持った人材を柔軟かつタイムリーに採用することが不可欠であり、定期的な新卒者の採用だけでなく、事業に必要な経験や専門性を持った人材をさまざまなチャネルを活用して採用している。
女性従業員に対しては、優秀人材の採用・育成や管理職・経営層への登用などに取り組み、ワークショップやセミナーなども積極的に開催している。女性管理職が等身大のロールモデルとして活動の中心となる「ネットワークリーダー活動」では、女性従業員同士のネットワーク作りを促しており、ライフイベントを含めてキャリアを前向きに考えられ、悩みを抱えた時に相談できるメンバーが身近にいる環境整備に注力することで、女性の活躍を推進している。このほか、外部講師によるセミナーの開催や女性管理職のキャリア開発、上司に
よる育成・コーチング、ライフイベントを踏まえたキャリア継続を支援している。
外国籍従業員の活躍も推進しており、国籍を問わず、優秀な従業員がいきいきと働けるよう環境整備に努めている。日本語によるコミュニケーション能力を向上させるための研修や異文化交流会などによるネットワーク作り、外国籍従業員相談窓口の設置など、外国籍従業員が働きやすく、持てる能力を最大限に発揮できるよう支援している。
海外現地採用従業員には、「グループ人材マネジメント方針」のもと、各国の労働市場や慣行を考慮し、地域に根付いた人材の採用・登用を進めているほか、マネジメント力強化のための現地マネージャー育成の研修やグローバル調達人材の育成など、現地従業員の人材育成にも注力している。2021 年度は、Leadership Development Program や問題解決研修などを実施しており、今後もグループ・グローバル全体で育成し、活躍推進に取り組む方針を打ち出している。
図表 20.グループ人材マネジメント方針
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
障がいのある従業員については、「適切なサポートと職場の理解があれば、障がいがあっても、持てる力を最大限発揮できる」との認識のもと、専門サポートスタッフの配置による業務や会社生活全般にわたる支援や一人ひとりのキャリア開発、上司による育成・コーチングなど、各種支援体制を整備することで活躍を推進している。
年齢や雇用形態に縛られない体制も整えられており、満 60 歳から 65 歳の間で自ら定年年齢を選択できる選択定年制度に加え、年齢によらない挑戦を奨励することを目的に制定した 60 歳以降においても昇進を可能とする制度や高度専門家・高度技能者任命制度のほか、
希望する期間従業員の中から一定の基準を満たした従業員をxx従業員に登用する仕組みを導入し、60 歳を超えた多くのシニア従業員や期間従業員が活躍している。
そのほか、性的少数者の従業員が持てる能力を最大限に発揮できる職場環境の整備も進めている。性的志向や性自認にとらわれない職場作りの一環として、勤務や社宅などに関する制度を整備するとともに、アライ活動(ALLY 活動:LGBTQ ではない人がLGBTQ を理解し、支援する活動)などのネットワーク活動や研修会を通じて、性的少数者への理解促進を図る活動を実施している。2021 年度は、IHI グループLGBTQ アライカンファレンスを開催し、LGBTQ について、映画を題材に当事者を交えて学び、意見交換を行った。
さらに、さまざまなバックグラウンド、経験、異なる視点を持った多様な人材が活躍できる環境の整備にも力を入れており、従業員一人ひとりがより幅広い視野・経験を身に付けるための制度の拡充や機会の提供に努めている。
<多様な経験の機会の提供例>
採用 |
長期の事業の姿とそれに向けた事業戦略・技術戦略上、必要とされる業務・人材を明確にし、キャリア採用と新卒採用とを戦略的に組み合わせています。通年採用・グローバル採用を進めるとともに、採用ルートの多角化を図っています。 |
異動・配置 |
異部門間ローテーションや社外研修派遣、パートナー企業・官公庁・スタートアップ企業への派遣、大学・研究機関や他社との共同開発への参加など、多様な経験・異なる視点を身に付ける機会を増やしています。また、従業員一人ひとりの自律的なキャリア形成に対応するためのグループ内公募(キャリアチャレンジ)にも継続的に取り組んでいます。 |
研修 |
社外研修派遣や社外活動・学会への派遣など、社外の人材との積極的な交流を通じて、多様な経験・異なる視点を身に付ける機会を提供しています。 |
社外での兼業、社内での副業 |
社内外での多様な経験を促し、多様な視点・発想を経営に活かしていく目的で社外での兼業(セカンドジョブ)や社内での副業に取り組んでいます。一例では、大学改革や産学連携アドバイザーとしての社外兼業や、画像認識技術と AI・SNS を活用したアプリケーションの開発に関する社内副業があげられます。2021 年度時点で社外での兼業約 80 件、社内での副業約 80 件の活動が登録されています。 |
両立支援制度・相談窓口 |
仕事と育児・仕事と介護・仕事と病気治療の両立による従業員の活躍を支援するため、ソフト・ ハードの両面からさまざまな支援体制を整えています。支援制度の周知と活用を呼びかけるハンドブックやリーフレットの作成や、外部講師によるセミナーの実施、一人ひとりの事情やニーズに応じた支援を行なうための外部専門機関を含む相談窓口を設置しています。2021 年度は、特に男性従業員に向けた育児との両立ハンドブックを作成しました。また不妊治療のために利用できる制度を周知するリーフレットを作成し、子どもを望む従業員を支援しています。 |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
このように、IHI では、キャリア採用の積極的推進や女性従業員、外国籍従業員、海外現地採用従業員、障がいのある従業員、シニア従業員などが十分に活躍できる環境を整備するだけでなく、育児・介護などとの両立支援や LGBTQ をはじめとする性的少数者への支援も欠かさないことで、ダイバーシティ&インクルージョンを実現している。こうした取組みは、社会面におけるポジティブ・インパクトの増大に資するものであり、インパクトレーダーの「雇用」や「包括的で健全な経済」に該当する。また、SDGs のゴール5や8に関連する。
静岡銀行は、IHI のダイバーシティ&インクルージョンに関する取組みを定量的に確認するために、同社が KPI として設定した、役員に占める女性比率をモニタリングしていく方針である。
4-3 オープンイノベーション
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>経済
<インパクトレーダーとの関連性>経済収束
<SDGs との関連性>
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
9.5 2030 年までにイノベーションを促進させることや100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
<KPI(指標と目標)>
・GX 実現に向けた産学官民のオープンな連携による、協働ソリューションの実現・実用化
<インパクトの内容>
IHI グループは、SDGs の達成に貢献し、持続可能な社会をつくるため、強みである幅広 い基盤技術力を最大限に発揮することでイノベーションの創出に取り組んでいる。コンセ プト検証を短期間で行なう活動や部門を横断したメンバーが集うプロジェクト体制の構築、オープンイノベーションを推進し、技術開発スピードを加速させ、新たな成長事業に資する 技術の早期実用化を目指している。
とくに、オープンイノベーションに関しては、国内の「IHI つなぐラボ」や「i-Bas(e Ignition
Base)」に加えて、シリコンバレーの「IHI Launch Pad」やシンガポールなどの海外拠点で連携を進め、イノベーションの創出及びイノベーションにつながる先駆的な技術開発に取り組んでいる。
図表 21.IHI のオープンイノベーション拠点
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
IHI つなぐラボと i-Base は、オープンイノベーションの拠点や早期事業化に向けたデザイン思考の実践の場として活用しており、IHI Launch Pad は北米のエコシステム(投資家、スタートアップほか)と連携し、新しいビジネスの創出に取り組んでいる。シンガポールでは、現地のシンガポール科学技術研究所 A*STAR と連携した先駆的な技術開発を共同で進めている。IHI グループ単独で解決を目指すのではなく、ステークホルダーと企画段階から連携・協業を進め、スピーディーなイノベーションの創出に取り組んでいる。
このようなオープンイノベーション拠点における連携は、民間企業だけでなく国や自治体、大学等の研究機関など、多岐にわたり、IHI グループの中期経営計画であるプロジェクト Change で成長事業として掲げている航空輸送システム、カーボンソリューション、保全・防災・減災を中心にさまざまな技術開発に挑戦している。
<主要な連携一覧>
官民連携の取組 | CO2 フリーアンモニアを直接配合 |
NEDO 先導研究プログラム/新技術先導研究プログラムのエネルギー・環境新技術先導研究プログラムに参画し、水と窒素から CO2 フリーのアンモニアを直接合成する技術の実現を目指す。水素・アンモニア製造及び利用技術の開発を積極的に推進し、カーボンフリーバリューチェーンの構築に取り組む。 |
水素利用 | |
オーストラリアのコーガン水素実証プロジェクトにおいて、デモプラントの設計・調達・建設業務を受注。xxxの再エネ電力からカーボンフリー水素を製造して販売するとともに、余剰の再エネを電力市場に販売することを目指す。2018 年に開設した、そうま IHI グリーンエネルギーセンターにおける開発・運用で培った知見を生かし、本デモプラントの建設を通じてCS Energy 社と共にオーストラリアにおける脱炭素化をリードする。 | |
スタートアップ企業との取組み | 北米 |
IHI とグループ会社である IHI 物流産業システムが、ボストンを本拠地とする Neurala 社と共同で、物流倉庫に入出荷される食品段ボールケースの賞味期限をコンベア搬送中に自動で読み取るシステムを世界で初めて開発。深層学習(AI)による文字認識技術を搭載することで、省人化に寄与するだけではなく、食の安全確保やフードロス削減にも貢献。また、IHI グループでは脱炭素化関連技術を持つ北米のスタートアップ企業の情報収集と連携検討を進めている。 | |
アジア | |
先進製造技術で連携しているシンガポール科学技術研究所 A*STAR 傘下の ARTC (Advanced Remanufacturing and Technology Centre)が運営するスタートアップチャレンジへ参加するとともに、東南アジアのスタートアップ企業の調査活動を推進。 | |
欧州 | |
新しいビジネスの創出を狙い、IHI グループ会社にオープンイノベーションの推進拠点を新設し、主に AI、IoT 関連の欧州のスタートアップ企業の調査活動を推進している。 | |
産学連携の取組み | 国内 |
横浜国立大学の人工知能研究拠点に共同研究講座を開設し、IHI のさまざまな製品・サービスや製造現場でのAI 技術の適用拡大につながる技術開発に取り組んでいる。また、持続的な開発推進のため、IHI グループ内の AI 人材育成に関する連携も進めている。2022 年 9 月には、東北大学の産学連携先端材料研究開発センター(MaSC)に IHI×東北大学アンモニアバリューチェーン共創研究所を設置。燃焼時に CO2 を排出しないクリーンなエネルギー源であるアンモニアを利用したカ |
ーボンニュートラル社会の実現のために、アンモニアの製造から輸送・貯蔵、利用までのバリューチェーン構築を目指して、課題を探索し、技術による解決策を見出していく。 | |
北米 | |
MIT Energy Initiative やMIT CEEPR、ベンチャーキャピタル、スタートアップ企業とのネットワークを生かし、カーボンソリューション関連の新技術及び共同研究テーマや北米におけるエネルギー・環境政策動向などの情報をすばやく入手している。 | |
アジア | |
シンガポールでは、CO2 から有価物であるメタンや低級オレフィン、SAF を生成するためのIHI 独自の触媒技術をはじめ、次世代交通及び先進製造技術など、シンガポール科学技術研究所 A*STAR と多岐にわたる共同開発を実施。中国においては、主要大学などとの連携により、中国市場での事業化案件を生み出している。 | |
欧州 | |
英国に積層造形の開発拠点(IHI Additive Manufacturing Lab)を設立し、開発を進めている。また、技術・事業戦略策定にロードマッピングの活用を推進するため、ケンブリッジ大学の産学連携機関 IfM Engage が主催するロードマッピング研究のコンソーシアムである Strategic Technology and Innovation Management Consortium(STIM)に加盟。 |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
IHI のオープンイノベーションを積極的に推進する姿勢は、地方創生にも貢献している。xx県xx市においては、xxx発電電力の地産地消の実現と、地域振興・発展に寄与することを目的としたスマートコミュニティ事業を 2018 年4月に開始し、「そうま IHI グリーンエネルギーセンター」を開所した。この事業では、xxx発電で作った電気をゴミ焼却場と下水処理場に供給し、余った電気を熱と水素に変えて貯蔵することでエネルギーの地産地消を実現している。熱は、下水処理場の下水汚泥を乾燥させ、バイオマス燃料や肥料の製造に活用される。水素は、災害時に再び電気に変換して利用されるほか、都市ガスやプラスチックの原料を作ることにも活用することが検討されている。こうした水素のさまざまな活用方法は、2020 年 9 月に開設された「そうまラボ」にて、外部の企業や研究者とともに研究・開発が進められている。この取組みは、xxx発電電力を自営線やエネルギーマネジ
メントシステムにより一般送配電系統への逆潮流防止を図りながら供給しているほか、xxx余剰電力を水素の製造などに利用することで、来る水素社会に向けた研究や非常時の燃料電池発電に使用するなど、再エネの最大有効利用と災害対応を行っており、他地域への展開も期待できるとして、令和2年度の新エネ大賞において最高賞である経済産業大臣賞を受賞した。
そのほかにも、アンモニアサプライチェーン構築に向けた検討をxx県xx市と出光興産株式会社と共同で取り組む合意や、静岡県沼津市及び富士通 Japan 株式会社、株式会社明電舎、IHI の 4 者で沼津版スマートシティの推進に向けた包括的な連携協力に関する協定を締結するなど、地域とともに持続可能な社会の実現に資する活動に取り組んでいる。
図表 22.そうまIHI グリーンエネルギセンターにおけるエネルギーの地産地消の流れ
資料:IHI の HP「IHIing」 エネルギーの地産地消《そうま IHI グリーンエネルギーセンター》
このように、IHI では、オープンイノベーション拠点を整備し、国や自治体との連携、スタートアップ企業との連携、大学等の研究機関との連携を通してオープンイノベーション
を推進することで経済的付加価値を生み出している。また、地方を巻き込んだイノベーションを促進することで、地方創生にも貢献している。こうした取組みは、経済面におけるポジティブ・インパクトの増大に資するものであり、インパクトレーダーの「経済収束」に該当する。また、SDGs のゴール 8 や 9、17 に関連する。
静岡銀行は、IHI のオープンイノベーションに関する取組みを確認するために、同社が KPI として設定した、GX 実現に向けた産学官金とのオープンな連携による、協働ソリューションの実現・実用化をモニタリングしていく方針である。
4-4 事業活動におけるCO2 排出量の削減
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>気候
<SDGs との関連性>
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
・工場・事業所等におけるCO2 排出原単位を 2018 年度の 22.2t-CO2/億円から4%削減する※
※「IHI グループ環境活動計画 2019」に基づく 2022 年度までの KPI、2023 年度以降更新予定
<インパクトの内容>
IHI グループでは、気候変動は社会や経済に与える影響が非常に大きく、企業にとっては持続可能性が問われる社会課題であるとの認識のもと、重要な経営課題のひとつとして位置付け、対策を進めている。2050 年までに、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することを宣言しており、自社の事業活動によって直接・間接的に排出される温室効果ガス(Scope1・2)だけでなく、同グループの上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減にも取り組み、カーボンニュートラルを目指すとしている。また、IHI グループでは、環境委員会を中心に気候変動への対策を含む環境活動に取り組 む体制が整えられている。2021 年度には、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラ
ルの取組みを推進するため、ESG 経営推進会議の下部にタスクフォースチームを設置した。このタスクフォースチームは、事業領域及びコーポレート部門から選抜されたメンバーで構成されており、2021 年度はCSR 担当役員、2022 年度からは経営企画部長がリーダーを務め、総務部及び経営企画部が事務局となって活動している。活動状況は、ESG 経営推進会議をはじめとした経営層の出席する会議で報告され、経営層から指示を受けて取組みを加速している。
事業活動における CO2 排出量の削減に向けた取組みとして、エネルギーを効率的に使用する省エネ活動と、より低炭素なエネルギー使用を推進する活動が挙げられ、これらを組み合わせることで、工場・事務所などから排出されるCO2 の削減に取り組んでいる。
省エネ活動は、設備の運用改善と投資の両面で取り組んでおり、運用改善を進めるためにエネルギー管理標準を整備し、最適な運転条件を目指して運転管理の検討を行っているほか、外部専門家による省エネ研修を実施して、管理担当者の資質向上に努めている。
より低炭素なエネルギー使用を推進する活動としては、老朽化した設備から省エネ型設
備への更新及び再生可能エネルギーの導入を計画的に実施している。輸送については、積載率の向上や船舶の積極的な使用によるモーダルシフト推進などに取り組んでいる。
こうした取組みを進めた結果、工場・事務所などにおける CO2 排出量は順調に削減されている。なお、IHI グループが算出した CO2 排出量は、一般財団法人日本品質保証機構から第三者検証を受け、正確に算定されていることが保証されている。
図表 23.工場・事務所などにおけるCO2 排出量の推移
項目 | 2018 年度 | 2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | |
CO2 排出量(Scope1+Scope2)※1 (t-CO2) | 329,602 | 254,227 | 225,066 | 220,138 | |
Scope1(t-CO2) | 80,032 | 64,724 | 58,517 | 64,270 | |
Scope2(マーケット基準)(t-CO2) | 249,570 | 189,503 | 166,549 | 155,868 | |
CO2 排出原単位※2 (t-CO2/億円) | 22.2 | 18.3 | 20.2 | 18.8 |
※1 原単位の分母は売上高
※2 各項目を四捨五入して合計しているため内訳の合計と一致しない場合がある
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
このように、IHI では、事業活動において排出される CO2 に対して、社内体制を整備し、さまざまな対策を講じることで排出量を抑制している。こうした取組みは、環境面におけるネガティブ・インパクトの低減に資するものであり、インパクトレーダーの「気候」に該当する。また、SDGs のゴール 13 に関連する。
静岡銀行は、IHI の CO2 排出量の削減に関する取組みを定量的に確認するために、同社がKPI として設定した、工場・事業所等におけるCO2 排出原単位をモニタリングしていく方針である。なお、目標値の更新についても、公表資料をもとに確認していく。
4-5 事業活動における環境負荷の低減
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>
水(質)、大気、土壌、生物多様性と生態系サービス
<SDGs との関連性>
6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。
11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
・環境法令違反と重大な環境事故発生件数を0件で維持する
<インパクトの内容>
IHI グループは、事業活動を行なう上で、環境法令の遵守と環境事故発生防止をグループ拠点における環境活動の最優先課題と位置付けるとともに、事業活動に伴う環境負荷の低減も重要な課題と捉え、グループ拠点における環境目標のひとつとして掲げている。事業活動を行なうそれぞれの地域で、行政や地域住民と公害防止協定を交わすなど、地域との連携を重視し、その地域の実情に合った環境保全活動を進めている。
環境保全に関する取組み方針や重要事項については、ESG 関連事項担当役員を委員長とする全社委員会である環境委員会で審議・決定している。また、事業所・工場などにおいても、それぞれ環境委員会などを組織しており、全社方針を踏まえた上で、それぞれの地域に応じた方針を掲げている。
IHI グループの工場・事業所などは、水域に面した立地条件が多く、水質汚濁防止への取組みが欠かせないため、拠点ごとに定められた EMS(Environmental Management System:環境マネジメントシステム)に基づき、水質汚濁防止法ならびに各自治体が定める排水基準に対して上乗せした自主基準を定め、定期的な採水・分析から、その基準を満たしていることを確認している。各拠点においては、排水口・沿岸部を担当者が定期的に巡回し、目視によって油などの浮遊や水質の異常がないか監視しており、万が一、工場・事業所
内から水域へ異物の漏洩が発生した場合は、EMS で定められた手順に従って拡散防止処置などの初期対応、被害の拡大防止、関係部門への連絡などの緊急対応を行ない、原因調査及び再発防止に努めることとなっている。
また、事業所・工場などの敷地内で使用する油、薬品などの漏洩による土壌汚染を防止するための対策や、廃棄物の適正な処分も重要であり、これらの活動は拠点ごとに定められているEMS に基づき、定期的な内部監査・環境パトロール・外部審査を通して管理レベルの向上を図っている。
<環境保全に関する主な取組み>
水質汚濁の防止 |
事業所・工場などからの排水の水質を監視。排水基準よりも厳しい自主基準を定め管理することで排水基準を遵守し、放流先である海域・河川などの公共水域の水質を保全している。 排水処理設備のメンテナンス、更生も欠かさず、老朽化した設備や機器・計測器を計画的に更新。普段目につかない埋設配管からの漏洩防止を重点課題とし、一定区間の水量チェックや計画的な埋設配管の更新、埋設配管図の作成にも取り組んでいる。 工場で使用する化学物資による環境汚染、災害を未然に防止するため、原則として各環境管理拠点におけるEMS に基づき化学物質管理に関する規程を定めている。化学物質を取り扱う上では有害性、生物毒性、揮発性、爆発性などの性質に基づいて分類し、設備や取扱基準を定めて、環境への漏洩防止を管理している。 |
土壌汚染の防止 |
事業所・工場などにおいて有害物質などを使用する区域を特定し、作業手順の確立・定期的なパトロールを通して、化学物質の漏洩を防止。 工場跡地などを含む 68 の生産拠点を対象に特定有害物質(土壌汚染対策法第 2 条に規定される鉛・六価クロム・水銀などの物質)や油脂類の使用履歴調査結果をデータベースで管理し、工場の形質を変更する際の事前調査に適宜活用。 |
有害廃棄物(PCB 含有廃棄物) |
PCB(Poly Chlorinated Biphenyl:ポリ塩化ビフェニル)含有廃棄物の処理について、本社主導で専門チームを組織。法律の期限内に確実に処分するよう対応を進めている。 2022 年 3 月 31 日現在、高濃度 PCB 使用電気機器は 99.9%、低濃度 PCB は 94.0%の処理が完了。一方、蛍光灯安定器は処分待ちのものが多く、処理完了は 58.8%にとどまる。 |
化学物質 |
購入時や搬出時の漏洩防止及び貯蔵所の防液提や内側床面の劣化、移送配管の腐食の確認・点検を定期的に実施。点検の結果、劣化・老朽化した設備については定期的に補修工事を行なっている。 法令の改正による規制物質の変更に伴うSDS(Safety Data Sheet:化学物質の危険有害性等を記載した文書)の更新準備を工場単位で進めている。 製品に含まれる化学物質について、年々増加する規制対象物質や対象物質の見直しに対応。サプライチェーンを通じて製品含有化学物質情報を入手し、使用禁止物質が含まれていないことや許容濃度以下であることを確認。さらに、顧客にその情報を提供する仕組みづくりを進め、事業リスクのひとつとして製品単位で該当する規制の有無を確認し、必要な対応を行っている。 事業所・工場などにおけるPRTR 法(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)対象化学物質については、大気・公共水域・土壌への排出量と下水道・廃棄物への移動量を適切に管理し、法令に基づく届出を行なっている。VOC (Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)についても、所属する日本産業機械工業会の循環型社会形成自主行動計画に則り、大気への排出抑制に取り組んでいる。 |
生物多様性 |
事業所・工場などの近隣地域と連携した環境保護活動を通して、周辺環境の回復や保全に努めている。環境月間を定めて役員・従業員に対する啓発を進め、生物多様性保全への意識向上も図っている。 |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
こうした取組みに努めたことで、IHI グループは重大な環境事故や重大な環境法令違反などを発生させずに事業を継続することができている。
図表 24.環境事故と法令違反の発生件数
項目 | 2018 年度 | 2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 |
重大な環境事故の発生件数 | 0 | 0 | 0 | 0 |
重大な環境法令違反の発生件数 | 0 | 0 | 0 | 0 |
罰金・違約金などを支払った 件数 | 0 | 0 | 0 | 0 |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
このように、IHI では、事業活動において、水質、大気、土壌汚染対策を講じることで環境負荷を低減している。こうした取組みは、環境面におけるネガティブ・インパクトの低減に資するものであり、インパクトレーダーの「水(質)」や「大気」、「土壌」、「生物多様性と生態系サービス」に該当する。また、SDGs のゴール6や 11、12 に関連する。
静岡銀行は、IHI の環境負荷低減に関する取組みを定量的に確認するために、同社が KPIとして設定した、環境法令違反と重大な環境事故発生件数をモニタリングしていく方針である。
4-6 資源効率の向上
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類> 環境、社会
<インパクトレーダーとの関連性>
水(入手可能性)、資源効率・安全性、廃棄物
<SDGs との関連性>
6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
・廃棄物排出量は 2018 年度の実績(29,010 トン)を上回らない※
・取水量は 2018 年度の実績(4,182 千㎥)を上回らない※
※「IHI グループ環境活動計画 2019」に基づく 2022 年度までの KPI、2023 年度以降更新予定
<インパクトの内容>
IHI グループは、持続可能な社会の実現に向けて廃棄物や水資源を適切に管理することで、資源効率の向上と環境負荷の低減を図っており、資源循環の取組み方針や重要事項については、ESG 関連事項担当役員を委員長とする全社委員会である環境委員会において審議・決定している。
廃棄物に対しては、工場生産における歩留まり向上や分別による再資源化などにより、排出量の削減に取り組むなど、3R(Reduce、 Reuse、 Recycle)を推進している。同時に、廃棄物の収集・運搬や処分に関する委託契約の確認、電子マニフェストによる確実な最終処分の確認、廃棄物の中間処分・最終処分場の現地訪問などを通して、廃棄物が適正に処分されていることを確認しており、各環境管理拠点で発生した廃棄物の適正な管理・処分に努めている。こうした活動をより高い次元で実践するために専門のコンサルタントとも協働し
ており、有価物化につながる有用成分の含有が認められるものや産廃管理の工夫で減量化 の余地が残されているものを洗い出し具体的な減量化の取組みを一部の拠点で始めている。
水資源に関しても、安定的な水源からの計画的な取水と設備の適切な保全を通じて、適正な水利用の管理や汚染物質の流出防止に努めている。IHI グループが使用する水資源は、市水である上水や工業用水が中心である一方、地下水や良質な河川水が潤沢な地域では市水との併用を図り、取水リスクの低減に留意している。このため、工場・事業所内で使用する水の用途と必要とする水質や水量を検討し、最適な取水源を選択している。具体的には、飲用可能な地下水の使用が可能な地域では地下水を比較的簡易な方法で上水化し配水する、熱処理炉などの冷却水には飲用可能な上水ではなく河川水または海水を熱交換器の使用により排水時の汚染リスクを回避した状態で使用するといった工夫を凝らしている。また、敷地内の散水は市水ではなく、三次処理した処理水等を可能な範囲で再利用するなど、徹底した水資源の管理を行っている。
そのほか、2021 年度には 6 拠点で水リスク(主として工場・事務所などからの排水が公共水域を汚染させてしまうリスク)を中心に、エネルギー管理体制や PCB の処分状況などについて調査を実施している。拠点を訪問して担当者とヒアリングを行ない、実際に現場を点検することで、適切に管理されていることの確認と、水リスクに関する認識の共有化を図っています。また、PCB の無害化処理が計画どおり処理されているかの確認も行なっており、今後も現地訪問を実施していない工場などの水リスクの有無についてxx調査する方針を示している。
さらに、IHI グループでは、各環境管理拠点の月もしくは 2 カ月ごとの取水量を年度別にグラフ化し、経年比較することで水使用量削減の意識向上を図っている。同じ時期の取水量の経年変化を観察することで、漏洩があった場合の早期発見につながることも期待される。
図表 25.工場・事務所などにおける廃棄物の排出量・リサイクル量
及び取水量・排水量の推移
項目 | 2018 年度 | 2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | ||
廃棄物 | 廃棄物排出量 (トン) | 29,010 | 27,564 | 20,912 | 23,633 | |
有害廃棄物排出量※1 (トン) | ― | 164 | 182 | 255 | ||
リサイクル量※2 (トン) | ― | 61,799 | 15,064 | 16,164 | ||
水 | 取水量※3 (千㎥) | 4,182 | 4,251 | 4,008 | 4,195 | |
上水 (千㎥) | ― | 750 | 651 | 664 | ||
工業用水 (千㎥) | ― | 868 | 799 | 792 | ||
地下水 (千㎥) | ― | 1,948 | 1,731 | 1,691 | ||
雨水、河川、湖など (千㎥) | ― | 685 | 827 | 1,047 | ||
排水量 (千㎥) | ― | ― | 3,373 | 3,265 |
※1 特定有害廃棄物と特別管理廃棄物のうち感染性廃棄物の合計
※2 有価物化した廃棄物
※3 各項目を四捨五入して合計しているため内訳の合計と一致しない場合がある
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
このように、IHI では、事業活動において排出される廃棄物や利用される水資源に対して、全社的な取組みを講じることで資源効率の向上を果たしている。こうした取組みは、環境面におけるネガティブ・インパクトの低減に資するものであり、インパクトレーダーの「水(入手可能性)」や「資源効率・安全性」、「廃棄物」に該当する。また、SDGs のゴール 6 や 11、 12 に関連する。
静岡銀行は、IHI の資源効率の向上に関する取組みを定量的に確認するために、同社が KPI として設定した、工場・事業所等における廃棄物排出量及び取水量をモニタリングしていく方針である。なお、目標値の更新についても、公表資料をもとに確認していく。
5 サステナビリティに関するガバナンス体制 5-1 サステナビリティ推進体制
IHI グループでは、持続可能な社会を実現するために、環境と社会に対する貢献と責任、それらを実現するためのガバナンスに関して、明確な価値観を示した経営を行う必要があると考えており、ESG 経営の基本方針や施策を検討し、実施状況を評価・改善することを目的としたESG 経営推進会議を設置した。この会議は、最高経営責任者を議長、経営企画部を事務局とし、取締役や執行役員、統括本部長、本社本部長、本社部長が出席することとなっている。2021 年度は、2 回開催され、サステナビリティに関する基本方針やその施策などが討議された。
図表 26.サステナビリティ推進体制図
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
ESG 経営推進会議の下部にはタスクフォースチームも組織されており、経営企画部長がリーダーを務め、総務部及び経営企画部が事務局となってカーボンニュートラルの取組みを推進している。
5-2 マテリアリティの特定プロセス
IHI グループは、プロジェクト Change の中で、xxxに創りあげたい社会を「自然と技術が調和する社会」とし、同グループが取り組むべき社会課題や提供できる価値を明確にした。その中で、社会課題とした、脱 CO2 や防災・減災、暮らしの豊かさの実現のために“重要なことは何か”という観点で、重要課題を特定し直している。具体的なプロセスとしては、
①サステナビリティ情報開示のガイドラインや SDGs などを参考に国内外で認識されている課題を網羅的に抽出、②そこで抽出された課題と社内方針などとの整合性を確認、③それ
らを踏まえた重要課題の特定、という 3 つのステップを経ることで、16 の重要課題、4 つの特に重要な課題を整理している。
図表 27.重要課題の特定プロセス
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
5-3 コーポレート・ガバナンス
IHI は、コーポレート・ガバナンスを「本来有する力を最大限に発揮するように経営の効率性を高め、持続的成長と企業価値の最大化を担保するシステム」と定義している。このシステムを実現するために、経営監視監督機能と業務執行機能を明確に区分して企業内意思決定の効率化と適正化を図るとともに、関連諸規定の整備やそれを運用する体制を構築し、 IHI グループ全体における業務の適正を確保している。同社は、コーポレート・ガバナンスの不断の改善を進めることで、株主をはじめとするステークホルダーに長期にわたって信頼され、愛顧されることを目指している。
<コーポレート・ガバナンス基本方針>
1.株主の権利を尊重し、平等性を確保します。 2.株主をはじめとするステークホルダーとの適切な協働に努めます。 3.会社に関する情報を適切かつ積極的に開示し、ステークホルダーへの説明責任を果たすとともに、透明性を確保します。 4.取締役会、監査役および監査役会が経営監視監督機能を充分に果たせるよう、それぞれの役割・責務を明確化します。 5.中長期的な株主の利益と合致する投資方針を有する株主との間で建設的な対話を行ないます。 |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
IHI は、監査役会設置会社であり、取締役の職務の執行を監査するため監査役 5 名(うち社外監査役 3 名)を選任している。取締役会は、議長を取締役会長が務め、取締役 12 名(うち社外取締役 4 名)で構成されており、同社の経営上の重要事項とグループ経営上の重要事項に関する意思決定を行なうとともに、取締役の業務執行についての監督も行っている。社外取締役は、経営者としての豊富な経験と幅広い見識を有する者及び高度な専門知識と多面的な経験を有する者を選任しており、業務執行を行なう経営陣から独立した立場で取締役会の意思決定に参加し、同社の経営に対して助言・提言を行っている。
図表 28.経営機構図
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
5-4 コンプライアンス体制
IHI グループは、「IHI グループコンプライアンス基本規程」などに従い、適切なコンプライアンスの運用に努めている。これらは、法令遵守に留まらず、変化する社会の価値観や社会からの要請を的確に把握し、社会の期待に応えるための取組みとなっている。
2019 年の民間航空機エンジン整備事業における不適切事案後は、リスク管理活動における注力項目としてコンプライアンス体制及び品質保証体制の強化などを掲げ、再発防止に向けた取組みを進めてきた。全役職員が日常の業務で守るべき規範として「IHI グループ行動規範」を定め、2021 年度からは、毎年5月 10 日をコンプライアンスの日と制定し、この日に合わせたトップメッセージの配信や職場対話などが行われている。IHI グループでは、コンプライアンスの日をきっかけに、一人ひとりが民間航空機エンジン整備事業における不適切事案をはじめとする過去の不適切事案を風化させずに自分事としてとらえ、継続的にコンプライアンス意識を向上させることを目指している。
<IHI グループコンプライアンス基本規程>
コンプライアンスは、社会の中で企業が活動を行なうための基盤となるものです。 IHI グループは、「IHI グループ基本行動指針」に則り、次の行動を実践することと定義しています。 ●法令や社内規定などのルールを大切にし、守ること ●企業人としてxxで、かつ責任ある行動をとること |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
<IHI グループ行動規範>
1.私たちは、ルールを理解し、守ります。 2.私たちは、決して不正な行為を行ないません。 3.私たちは、人権を尊重します。 4.私たちは、お客さまにお届けする安全と品質を最優先にします。 5.私たちは、xx・xxな取引を行ないます。 6.私たちは、自らならびに仲間の安全を決して損ないません。 7.私たちは、情報を厳格に管理します。 8.私たちは、問題が起きたら直ちに報告します。 |
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
また、IHI グループには、リスク管理会議の下部機関となる全社委員会組織としてコンプライアンス委員会が設置されている。同委員会は、グループコンプライアンス担当役員を委員長、各部門のコンプライアンス実施推進責任者を委員として構成しており、コンプライアンスに関わる重要な方針を審議・立案し、活動を推進している。委員会の決定事項は委員を通じて各部門に展開され、事業形態に応じたコンプライアンス活動に反映、各部門の活動状況は委員会で共有し、PDCA を回しながら活動している。2021 年度は5回開催され、事務局である法務部がコンプライアンス委員会で定めた活動方針に沿ってコンプライアンス活動を企画・実施するとともに、各部門の活動状況をフォローしながら必要な指導や支援を行なっている。
図表 29.コンプライアンス体制図
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
5-5 環境マネジメントシステム
IHI グループでは、ESG 経営推進会議のもと、全社を統合する環境委員会が工場・事務所における環境活動を担っている。環境委員会の決定事項は、事業領域・地区事業所の環境管理責任者連絡会に展開され、実務的な協議を経た後、国内及び海外グループ会社まで周知・展開されている。事業領域や戦略的事業単位では、グループ全体のリスク管理活動のひとつである環境リスク低減のための環境設備投資や法規制への対応、省エネ、廃棄物排出量の削減など環境負荷低減に取り組んでいる。これらの個別テーマに沿った環境活動計画を年度初めに立案し、進捗を含めて環境委員会においてフォローアップし、PDCA サイクルを回している。
図表 30.環境管理体制図
資料:IHI Sustainability Data Book 2022
6 JCR による評価
① | 多様性:多様なポジティブ・インパクトがもたらされるか |
本PIF評価に基づくファイナンスは、IHIのバリューチェーン全体を通して、多様なポジ | |
ティブ・インパクトの発現及びネガティブ・インパクトの抑制が期待される。 | |
各KPIが示す6項目のインパクトは、以下のとおりそれぞれ幅広いインパクト領域に亘っ | |
ている。 | |
①カーボンニュートラルの実現 | |
「エネルギー」「気候」に係るポジティブ・インパクト | |
②ダイバーシティ&インクルージョン | |
「雇用」「包括的で健全な経済」に係るポジティブ・インパクト | |
③オープンイノベーション | |
「経済収束」に係るポジティブ・インパクト | |
④事業活動におけるCO2排出量の削減 | |
「気候」に係るネガティブ・インパクト | |
⑤事業活動における環境負荷の低減 | |
「水(質)」「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」に係るネガティブ・イン | |
パクト | |
⑥資源効率の向上 | |
「水(入手可能性)」「資源効率・安全性」「廃棄物」に係るネガティブ・インパクト | |
また、これらをバリューチェーン全体で見ると、例えば調達段階・使用段階では「カー | |
ボンニュートラルの実現」への取組み、製造・廃棄段階では「事業活動におけるCO2排 | |
出量の削減」「事業活動における環境負荷の低減」への取組み等が挙げられる。 | |
② | 有効性:大きなインパクトがもたらされるか |
本PIF評価に基づくファイナンスは、多様なポジティブ・インパクトの発現及びネガテ | |
ィブ・インパクトの抑制が期待される。 | |
IHIの事業範囲の観点では、資源・エネルギー・環境、社会基盤・海洋、産業システ | |
ム・汎用機械、航空・宇宙・防衛の4つの事業分野を有する総合重工業グループとし | |
て、国内だけでなく、アジア、北米、欧州、中南米などの各国においてグローバルに事 |
JCR は、本 PIF 評価のKPI に基づくインパクトについて、PIF 原則に例示された評価基準に沿って以下のとおり確認した結果、多様性・有効性・効率性・追加性が期待されると評価している。当該KPI は、上記のインパクト特定及びIHI のサステナビリティ活動の内容に照らしても適切である。
業を展開している。 IHIの事業および取組みの観点では、例えば「気候」について事業活動(Scope1・2)におけるCO2排出量の削減に取り組むとともに、Scope3をカバーする事業として「アンモニア」や「カーボンリサイクル」にもフォーカスしている。IHIは、アンモニアのバリューチェーン構築をはじめとする成長事業創出に際して相当の投資が必要と考えてお り、2023年度以降は設備投資・研究開発投資・M&A等の投融資として年間1,500億円を維持していくとしている。また、そのうち3割以上を成長事業に優先的に割り当てる予 定であり、今後10年間で5,000億円規模の成長投資を継続的に行う方針である。 IHIの先進的かつxxな取組みは、大きなインパクトをもたらすことが期待される。 |
③ 効率性:投下資本に比して大きなインパクトがもたらされるか |
本PIF評価に基づくファイナンスは、効率的なポジティブ・インパクトの発現及びネガティブ・インパクトの抑制が期待される。 IHIは、気候変動や多様性などサステナビリティに関する課題については経営上の重要なテーマであると認識しており、適宜、社外取締役も含めた役員での議論の場を設けている。また、経営戦略の一環としてダイバーシティ&インクルージョン推進に取組み、女性など経営幹部候補の多様化や、若い世代の多様な視点・発想を経営に活かしていく取組みを進めている。 本PIF評価の各KPIが示すインパクトは、主としてIHIの特定したマテリアリティに係るものであり中期経営計画「プロジェクトChange」とも整合している。従って、本PIF評価に基づくファイナンスの後押しによって、インパクトの効率的な発現・抑制が期待される。 |
➃ 倍率性:公的資金や寄付に比して民間資金が大きく活用されるか |
カーボンニュートラル社会に向けた取組みのなかで一部公的資金を活用した実績があ り、今後も活用可能な公的資金を申請していく方針であるが、投資全体に占める割合では民間資金の活用が主体となる。 |
⑤ 追加性:追加的なインパクトがもたらされるか |
本PIF評価に基づくファイナンスは、以下(次ページ)にリストアップしたとおり、 SDGsの17目標及び169ターゲットのうち複数の目標・ターゲットに対して、追加的なインパクトが期待される。 |
(1) 「カーボンニュートラルの実現」に係るSDGs 目標・ターゲット
目標 7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
ターゲット 7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
ターゲット 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
ターゲット 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
目標 13:気候変動に具体的な対策を
ターゲット 13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
(2) 「ダイバーシティ&インクルージョン」に係るSDGs 目標・ターゲット
目標 5.ジェンダー平等を実現しよう
ターゲット 5.1. あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
ターゲット 5.5. 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
目標 8:働きがいも 経済成長も
ターゲット 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。
ターゲット 8.8 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。
(3) 「オープンイノベーション」に係るSDGs 目標・ターゲット
目標 8:働きがいも 経済成長も
ターゲット 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
ターゲット 8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
目標 9:産業と技術革新の基礎をつくろう
ターゲット 9.5 2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
目標 17:パートナーシップで目標を達成しよう
ターゲット 17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
(4)「事業活動におけるCO2 排出量の削減」に係るSDGs 目標・ターゲット
目標 13:気候変動に具体的な対策を
ターゲット 13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
(5)「事業活動における環境負荷の低減」係るSDGs 目標・ターゲット
目標 6.安全な水とトイレを世界中に
ターゲット 6.3 2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
目標 11:住み続けられる街づくりを
ターゲット 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
目標 12:つくる責任、つかう責任
ターゲット 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
(6)「資源効率の向上」に係るSDGs 目標・ターゲット
目標 6.安全な水とトイレを世界中に
ターゲット 6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
目標 11:住み続けられる街づくりを
ターゲット 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
目標 12:つくる責任、つかう責任
ターゲット 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
ターゲット 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
ターゲット 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
7 モニタリングの頻度と方法
本ファイナンスで設定したKPI の達成及び進捗状況については、静岡銀行とIHI の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金及びその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行とIHI が協議の上、再設定を検討する。
8 モデル・フレームワークの活用状況評価
JCR は上記 2~7 より、本 PIF 評価において、SDGs に係る三側面(環境・社会・経済)を捉えるモデル・フレームワークの包括的インパクト分析(インパクトの特定・評価・モニタリング)が、十分に活用されていると評価している。
Ⅳ.PIF 原則に対する準拠性について
JCR は、静岡銀行の PIF 商品組成に係るプロセス、手法及び社内規程・体制の整備状況、並びに IHI に対する PIF 商品組成について、PIF 原則に沿って以下の通り確認した結果、全ての要件に準拠していると評価している。
1. 原則 1 xx
xx | XXX による確認結果 |
PIF は、ポジティブ・インパクト・ビジネスのための金融である。 | 本ファイナンスは、静岡銀行が IHI のポジティブ・インパクト・ビジネスを支援するために実施する PIF と位置付けられてい る。 |
PIF は、持続可能な開発の三側面(経済・環境・社会)に対する潜在的なネガティブ・インパクトが十分に特定・緩和され、一つ以上の側面でポジティブな貢献をもたら す。 | 本ファイナンスでは、経済・環境・社会の三側面に対するネガティブ・インパクトが特定・緩和され、ポジティブな成果が期待される。 |
PIF は、持続可能性の課題に対する包括的な評価により、SDGs における資金面の課 題への直接的な対応策となる。 | 本ファイナンスは、SDGs との関連性が明確化されており、当該目標に直接的に貢献 し得る対応策である。 |
PIF 原則は、全カテゴリーの金融商品及びそれらを支える事業活動に適用できるよう 意図されている。 | 本ファイナンスは、静岡銀行の IHI に対するローンである。 |
PIF 原則はセクター別ではない。 | 本ファイナンスでは、IHI の事業活動全体 が分析されている。 |
PIF 原則は、持続可能性の課題における相互関連性を認識し、選ばれたセクターではなくグローバルなポジティブ及びネガティブ・インパクトの評価に基づいている。 | 本ファイナンスでは、各インパクトのポジティブ・ネガティブ両面が着目され、ネガティブな側面を持つ項目にはその改善を図る目標が、ポジティブな側面を持つ項目にはその最大化を図る目標が、それぞれ設定 されている。 |
2. 原則 2 フレームワーク
原則 | JCR による確認結果 |
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。 | 静岡銀行は、ポジティブ・インパクトを特定しモニターするためのプロセス・方法・ツールを開発した。また、運営要領として詳細な規程を設けており、職員へのxxxxと評価の一貫性維持に有効な内容となっている。一方、今後案件数を重ねる中で、融資判断の参考となるポジティブ・インパクトの尺度、ガバナンス体制の評価項目につき具体的な基準を検討していくことで、 PIF としてより効果的な融資を実行し得る ものと考えられる。 |
事業主体は、ポジティブ・インパクトを特定するための一定のプロセス・基準・方法を設定すべきである。分析には、事業活動・プロジェクト・プログラムだけでなく、子 会社等も含めるべきである。 | 静岡銀行は、モデル・フレームワークに沿って、ポジティブ・インパクトを特定するためのプロセス・基準・方法を設定しており、子会社等を含む事業活動全体を分析対 象としている。 |
事業主体は、ポジティブ・インパクトの適格性を決定する前に、一定の ESG リスク管理を適用すべきである。 | 静岡銀行は、ポジティブ・インパクト分析に際し、UNEP FI から公表されているインパクト・レーダー及びインパクト分析ツー ルを活用している。 |
事業主体は、金融商品として有効な期間全体に亘り意図するインパクトの達成をモニターするための、プロセス・基準・方法を確 立すべきである。 | 静岡銀行は、モニタリングのためのプロセス・基準・方法を確立している。 |
事業主体は、上記のプロセスを実行するために、必要なスキルを持ち、然るべき任務を与えられたスタッフを配置すべきであ る。 | 静岡銀行には、上記プロセスを実行するために必要なスキルを持つ担当部署・担当者が存在している。 |
事業主体は、上記プロセスの導入について、必要に応じてセカンド・オピニオンや第三 者による保証を求めるべきである。 | 静岡銀行は、今般 JCR にセカンド・オピニオンを依頼している。 |
事業主体は、プロセスを随時見直し、適宜更新すべきである。 | 静岡銀行は、社内規程によりプロセスを随時見直し、適宜更新している。本第三者意見に際し、JCR は 2022 年 1 月改定の同行 社内規程を参照している。 |
ポジティブ・インパクト分析は、例えば商 | 静岡銀行は、ポジティブ・インパクト分析 |
品・プロジェクト・顧客に関する研修や定 | に際し、参考となる基準等が明記された |
期的なレビューの際、既存のプロセスと同 | UNEP FI のインパクト・レーダー及びイン |
時に行うことができる。ポジティブ・イン | パクト分析ツールを活用している。 |
パクト分析は、一般に広く認められた既存 | |
のツール・基準・イニシアティブがあれば、 | |
それらを有効に活用することができる(例 | |
えばプロジェクト・ファイナンスでは、赤 | |
道原則は一般に広く認められたリスク管理 | |
基準である)。 |
3. 原則 3 透明性
原則 | JCR による確認結果 |
PIF を提供する事業主体(銀行・投資家等)は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。 ・ポジティブ・インパクトとして資金調達する活動・プロジェクト・プログラム・事業主体、その意図するポジティブ・インパクト(原則 1 に関連) ・適格性の決定やインパクトのモニター・検証のために整備するプロセス(原則 2 に関連) ・資金調達する活動・プロジェクト・プログラム・事業主体が達成するインパクト(x x 4 に関連) | 本ファイナンスでは、本第三者意見の取得・開示により透明性が確保されている。また、 IHI はKPI として列挙された事項につき、統合報告書およびウェブサイト等で開示していく。当該事項につき、静岡銀行は少なくとも年に 1 回会合を設け、定期的に達成状況を確認することで、透明性を確保していく。 |
4. 原則 4 評価
原則 | JCR による確認結果 |
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIFは、実現するインパクトに基づいて評価されるべきである。 | 静岡銀行は、PIF の実施にあたり、PIF 第 4 原則に掲げられた 5 要素(①多様性、②有効性、③効率性、④倍率性、⑤追加性)に基づき評価している。JCR は、本ファイナンスのインパクトについて第三者意見を述べるに際し、十分な情報の提供を受けてい る。 |
Ⅴ.結論
以上より、JCR は、本ファイナンスがPIF 原則及びモデル・フレームワークに適合していることを確認した。
(担当)xx xx・xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が付与し提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、本 PIF がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、本 PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本 PIF における KPI の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、国連環境計画金融イニシアティブが策定した以下の原則及びガイドを参照しています。
ポジティブ・インパクト金融原則
資金使途を限定しない事業会社向け金融商品のモデル・フレームワーク
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCRが保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■その他、信用格付業者としての登録状況等
・信用格付業者 金融庁長官(格付)第 1 号
・EU Certified Credit Rating Agency
・NRSRO:JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラ スのうち、以下の 4 クラスに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地 方自治体。米国証券取引委員会規則 17g-7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示はJCR のホームページ(xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xx/)に掲載されるニュースリリースに添付しています。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000