Contract
研修委託契約における契約管理ガイドライン
2022 年 3 月版
独立行政法人国際協力機構ガバナンス・平和構築部
目次
本ガイドライン「研修委託契約における契約管理ガイドライン」はじめ、「研修員受入事業及び研修委託契約の概要」「研修委託契約における見積書作成マニュアル」「研修委託契約における経費精算報告書作成マニュアル」及び
「遠隔研修に係る研修委託契約ガイドライン」は、以下 JICA ホームページ
(研修委託契約ガイドライン、契約書雛形、様式)をご参照ください。
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はじめに
「研修委託契約」は、通常、当該研修コースを所管する JICA 国内機関長(以下「契約担当役」という。)と研修受託機関(以下「受託者」という。)の代表者との間で締結されるものです。しかしながら、契約の履行にあたって、研修日程や業務内容の確認や軽微な変更等に至るまで、全てを契約担当役と受託者の代表者の間で契約管理することは、実務上、合理的ではありません。このため、契約担当役から授権された「監督職員」と、受託者の代表者から授権された「業務責任者」の間で、授権された範囲内で契約管理が行えるよう研修委託契約約款に規定されています。
また、業務完了報告書は、契約担当役から別途授権される JICA の検査職員(監督職員の上長)が、業務完了報告書提出日翌日から起算して 10 営業日以内に検査を実施すると規定されていますが、長期に亘り実施される業務の内容と提出される報告書等の内容を検査職員がこの短期間で検査するためには、契約履行過程において、監督職員が適切に業務の履行状況を監督し、業務の完了にあたってはその監督結果を検査職員に報告し、検査職員はその監督結果の報告に基づき検査ができることが前提となります。
JICA と受託者がともに正確な知識を持つことが円滑な契約の履行の前提となることは、「研修委託契約」に携わる者が一致して認識しておくべき事項だと考えます。
本ガイドラインは、適切な契約の履行とその検査に最低限必要となる、監督職員と業務責任者が共同して実施する契約管理について、解説を行うことを目的としています。
【イメージ図】
JICA
研修委託契約
授
権
研修受託機関
(受託者)
授
権
授
権
検査
業務完了
報告書
提出
職 検
員 査
報告
職 監
員 督
契約管理
責 業
x x
者
第1章 契約の管理
(1) 契約の性質
研修委託契約は、約款第1条第2項において、「(略)特別の定めがある場合を除き、業務を実施するために必要な方法、手段、手順については、受託者の責任において定めるものとする」としています。
受託者が行う業務の内容は、研修委託契約書附属書Ⅰ「業務実施要領」に示されており、これに沿って JICA と密接な連絡を取りながら実施することが求められますが、実際の業務実施過程においては、JICA と受託者の間で、業務の進捗に応じ、具体的に確認(必要に応じ、変更を合意)する必要が生じる場合があります。
この業務実施過程における具体的業務の確認(必要に応じ、変更を合意)は、 JICA(監督職員)と受託者(業務責任者)が行います。
(2) 監督職員(JICA)
監督職員は契約担当役から授権された権限の範囲内で、業務の適正な履行を確保するため、監督行為を行います。
【研修委託契約約款第5条第2項】
監督職員は、本契約の履行及び本業務の実施に関して、次に掲げる業務を行う権限を有する。
(1) 第1条第5項に定める書類の受領
(2) 本契約及びその他関係書類(以下「契約書等」という。)に基づく受託者又は受託者の業務責任者に対する指示、承諾、協議及び確認
(3) 契約書等に基づく業務工程の監理及び立会
(4) 業務実施状況についての調査
(5) 業務実施要領に規定されている業務内容の軽微な変更(あらかじめ委託者から権限を与えた範囲に限る。)の承諾及び確認
(6) 経費内訳書に示す直接経費に係る承諾及び確認
(7) 業務従事者に係る承諾及び確認
監督職員は、業務実施要領に基づき業務が実施されているかを確認し、必要 に応じ業務責任者に対して必要な指示や協議を行い、適切な履行を監督します。監督職員の権限は、契約約款第5条第2項に監督職員の業務として以下の項目 が規定されています。
(3) 業務責任者(受託者)
【研修委託契約約款第4条第1項】
受託者は、本業務の履行に先立ち、受託者の管理・監督に基づき本業務に従事する者(以下「業務従事者」という。)の中から業務責任者を定め、書面により委託者に通知しなければならない。また、業務責任者を変更するときも同様とする。業務責任者は、本業務の実施についての総括管理をつかさどるほか、本契約に基づく受託者の権限(ただし、契約金額の変更、作業項目の追加等本業務の内容の重大な変更、履行期間の変更、損害額の決定、本契約に係る支払請求及び金銭受領の権限並びに本契約の解除に係るものを除
く。)を有するものとする。
業務責任者は、契約変更が必要と考えられる契約内容の変更等を除き、受託者の権限(第4条第1項)を有するものとし、監督職員と協力して、適切に業務を実施する責任を負います。約款に基づき、契約締結後速やかに「業務責任者届」を委託者(JICA)へ提出願います。
(4) 打合簿
【業務実施要領第4 打合簿の作成】
研修委託契約約款第5条に定義する監督職員等の指示、承諾、協議及び確認は、その内容を打合簿(委託者指定様式)に記録し、業務責任者と監督職員等がそれぞれ一部ずつ保管するものとする。
監督職員と業務責任者の間の打合せ事項(指示、承諾、協議及び確認)を記録として残すものが「打合簿」となります。
受託者(業務責任者)にとっては、業務内容の軽微な変更(※)や経費の流用
(5ページの費目間流用の説明を参照)に係る事前の合意を証明する文書とな ります。監督職員との指示や承諾等に基づいて業務が履行されたことを確認するなど、円滑な精算を行うためにも、JICA(監督職員)又は受託者(業務責任者)が記録として残すべきと判断したものは、必ず打合簿を作成してください。打合せは、事態が発生する前に行うこととし、打合簿の日付は、実際に打合
せ(電話やメールのやり取り、担当者等を通じた打合せを含む。)を行った日付としてください。打合簿は、監督職員名と業務責任者名で2部作成し、それぞれの押印が必要です1。押印後、双方が1部(オリジナル)を保管します。
1 押印の取扱いは以下参照。
研修委託契約ガイドライン、契約書雛形、様式 | 事業・プロジェクト - JICA
※ 軽微な変更とは、附属書Ⅰ「業務実施要領」に定める業務内容自体に変更はないものの、JICA(監督職員)又は受託者(業務責任者)が記録として残すべきと判断した事項をいいます。
(5) 契約管理に関する文書
業務責任者は、以下に掲げる文書を常に整理し、契約管理の基礎資料として、参照できるようにしてください。
1) 契約書(契約書本体、研修委託契約約款、附属書Ⅰ、Ⅱ)
2) 打合簿
3) 研修委託契約における契約管理ガイドライン
4) その他関連書類
監督職員と業務責任者が共同で業務を実施(契約を管理)していくにあたって、常に認識しておかなければならないことは、監督職員と業務責任者にそれぞれ授権されている権限の範囲です。この権限の範囲を超えた事項については、打合簿による対応ではなく、契約担当役及び受託者の代表者による契約変更を行う必要があります。なお、契約変更にあたっては、2(3)のとおり、協議・合意内容について事前に打合簿で確認します。
以下、監督職員に授権されている権限の範囲を整理します。
監督職員の権限の範囲を、①業務の内容(契約書附属書Ⅰ「業務実施要領」)に係ること、②契約金額の内訳(契約書附属書Ⅱ「経費内訳書」)に係ることに分け、契約変更で対応すべきもの、打合簿で対応すべきもの、受託者の裁量によるものに分類/整理したものが下表です。
監督職員の権限の範囲(概要)
業務内容 | 契約金額内訳 | |
契約変更 (契約担当役の承認)国内機関長職 | ・附属書Ⅰ「業務実施要領」に定める業務内容の軽微でない変更 ・契約履行期間の変更 ・監督職員が契約変更の必要があると判断した事項 | ・契約金額の変更 |
打合簿 (監督職員の権限)国内機関課長職 | ・附属書Ⅰ「業務実施要領」に定める業務内容の軽微な変更及び確定 ・業務従事者の変更 ・業務進捗にかかる情報共有の過程で、監督職員及び業務責任者が記録に残すべきと判断した事項 | ・費目(中項目)注)間流用 |
事後報告 (受託者の裁量) | ・附属書Ⅰ「業務実施要領」に定める業務内容に変更が生じない業務方法、手法、手順の変更及び確定 | ・費目(小項目)注)間流用 |
注)費目の分類については、7ページ「費目の構成」を参照してください。
(1) 業務の内容(業務実施要領)の変更に係ること
業務実施要領(契約書附属書Ⅰ)に記載されている業務の内容を変更する場合、原則、契約変更での対応となります。業務内容自体に変更はないものの、監督職員又は業務責任者が記録に残すべきと判断した軽微な変更については、打合簿で対応することとします。
(2) 契約金額の内訳の変更に係ること
契約金額の内訳は、経費内訳書(契約書附属書Ⅱ)に記載されています。契約金額の内訳の変更とは、「費目間流用」のことです。「費目間流用」とは、
他の費目で余剰となった経費を、業務実施上不足している費目において、契約書の経費内訳書に示されている当該費目の金額を超えて支出することを認めることを言います。
費目間流用は、「余った経費は他経費に使うことができる。」という考え方ではなく、「予定を超えて必要となった経費に対し、本来的には契約変更を行っ
て契約金額を増額するところだが、幸い他の費目の中で余っている経費があるので、運用として当該経費を利用する。」というのが基本的な考えです。このため、監督職員が費目間流用を承諾するにあたっては、「他の費目が余っていなければ、契約変更を行うのか?」を一つの判断基準とし、合理的な理由があるかどうかで判断します。
「費目間流用」の取扱いは、以下のとおりとします。
1) 大項目間の流用は認められません。これら費目の額を変更する場合は、契約変更が必要です。
2) 中項目間の流用については、監督職員の権限で対応できる範囲であり、打合簿の取り交わしを条件とし、流用が可能です(契約締結時において計上することが合意されていない費目への流用は除く)。
ただし、流用先費目(中項目)額の 10%を超えない場合は、受託者の裁量で流用が可能であり、打合簿の作成は不要です。
3) 小項目間の流用については、業務実施の柔軟性を担保する観点から、費目間流用の範囲を制限せず、受託者の裁量により流用が可能であり、打合簿の作成は不要です(契約締結時において合意されていない費目への流用は除く)。
なお、会議費の流用は認められません。
【費目の構成】
契約変更が必要 打合簿にて対応 受託者の裁量で流用可
費目 (大項目) | 費目 (中項目) | 費目 (小項目) | |
直接経費 | 一般謝金 | 10%超の流用は監督職員の承諾打合簿必要 10%以内の流用 は受託者の裁量打合簿不要 | 講師xx |
検討会等参加謝金 | |||
原稿謝金 | |||
見学謝金 | |||
講習料(法人等技術研修対策 費) | |||
旅費 | 研修旅費 | ||
交通費 | |||
国外講師招聘費 | 航空賃 | ||
本邦滞在費 | |||
内国旅費 | |||
講師謝金 | |||
研修諸経費 | 資材費 | ||
教材費 | |||
施設機材借料損料 | |||
損害保険料 | |||
施設入場料 | |||
通訳傭上費 | |||
遠隔研修費 | |||
会議費(費目間流用は不可) | |||
業務人件費 | ― | ― | |
業務管理費 | ― | ― |
(3) 契約変更に係ること
監督職員の権限の範囲は、上述2.の記載のとおりであり、記載の権限を越える事項は契約変更にて対応する必要がありますが、変更契約にあたっても、監督職員は一定の役割を果たします。
具体的には、契約変更を行うにあたり、監督職員と業務責任者が①契約変更の経緯と理由、②変更される業務内容等、③変更業務実施要領(案)、④変更経費内訳書(案)について、協議、合意し、その内容を事前に打合簿にて確認
することとします。
監督職員が事前に確認しておくことにより、打合簿締結後速やかに、契約担当役は変更契約を締結することができます。
なお、この場合、上記の打合簿のみでは契約変更の効力は発効しませんので、打合簿締結後、速やかに契約変更手続きを進める必要があります。
不可抗力や天災(大規模なデモ、大規模な洪水被害、地震等)が発生し、予定どおりの業務が困難となった場合も、受託者は合理的に実行可能な限りにおいて、業務の履行を続ける努力を行う必要がありますが、契約期間に業務を完了することができない場合の契約期間の延長や、不可抗力により生じた追加的経費についての措置、業務内容の変更については、監督職員と業務責任者が協議し、打合簿により基本的な対処方法について合意形成を図ったうえで、必要に応じ契約変更の手続きを行います。
第2章 研修実施における留意事項
(1) 概算払
契約書の規定に基づき概算払が必要な場合は、業務の実施に先立ち必要な経費を算定したうえで、研修実施経費請求書を提出してください。JICA は、内容を確認のうえ、研修実施経費請求書を受領した日から起算して 30 日以内に支払いを行います(複数年度契約を締結する場合は、契約締結時に初年度分の経費を請求し、次年度の 4 月 1 日以降に次年度分の経費を請求することが可能です)。
技術研修期間終了後、精算確認の結果、概算払額に対して余剰金が生じた場合は、返納していただきます。
⚫ 契約履行期間が5か月を超える場合
契約履行期間が5か月を超える場合において概算払を行う場合は、契約締結時に契約金額の 10 分の7を上限に請求することができます。残額については、履行期間の中間に属する月の末日以降に請求することができます。JICAは、内容を確認のうえ、研修実施経費請求書を受領した日から起算して 30 日以内に支払いを行います。
⚫ 複数年度契約の場合
複数年度契約で概算払を行う場合は、それぞれの年度において、契約金額の当該年度分全額を請求することができます(複数年度契約かつ契約履行期間が 5 か月を超える場合も年度毎の請求となります)。この場合、初年度末に業務進捗報告書及び経費実績報告書を、次年度業務完了後に業務完了報告書及び経費精算報告書を提出し、契約期間全体に対する精算を行います(「経費精算報告書作成マニュアル」第1章参照)。業務完了後の確定払とする場合は、すべての経費をまとめて精算します(年度区分は不要)。
(2) 見積書の取付け
研修諸経費(施設入場料を除く)においては、見積書の取付けを原則とします。支払いの総額が 10 万円以上になる場合は必ず、10 万円未満の支払いとなる場合は可能な限り2者以上から見積書を取付けのうえ、見積価格が低い業者に発注してください。ただし、支払いの総額が 10 万円以上になる場合において、特段の事情により2者以上の見積の取付けが困難な場合は、経費精算報告書に当該事情を記入してください。
(3) 納品の確認
資材、書籍等の物品購入、機材借上げにあたっては、納品書による納品確認を必ず行うようお願いします(受託者以外の協力機関が使用する場合でも、必ず受託者が納品確認を行ってください)。納品確認後、納品書に検収確認印を捺印し、日付、確認者氏名を記入してください。
なお、小額の物品や書籍の店頭購入等、見積書及び納品書を取付けられない場合は、領収書に検収確認印を捺印し、日付、確認者氏名を記入してください。
《検収確認印サンプル》
検 収 確 認 印
年 月 日氏名 印○
(4) 契約関連書類の押印等の取扱い
見積書、請求書等、従来の押印済みの原本による手続きに加えて、押印の省略等も可としています。詳細、以下ご参照ください。
■JICA ホームページ(研修委託契約ガイドライン、契約書雛形、様式)
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(1) 未定事項の確定・業務内容の変更
契約締結後、JICA 国内機関より研修実施状況について、随時報告を求めることがあります。また、研修日程を含む研修内容の変更や未定事項の確定時には、 事前に JICA 国内機関にご連絡ください。監督職員又は業務責任者が記録に残すべきと判断した場合には、打合簿の取り交わしが必要です。
やむを得ない理由(技術研修期間の変更、研修員人数の変更等)により、契約金額の増額もしくは減額が必要となった場合には、事前に打合簿により合意のうえ、契約変更が必要となります。
(2) 技術研修期間中の研修員への生活情報提供及び生活に係る助言・支援必要に応じ、研修場所への移動に便利な宿舎や研修員が利用可能な昼食場所
など、研修員の生活面における情報提供について、受託者の協力をお願いすることがあります。
(3) 緊急時の対応
万一、自然災害、研修員に病気、事故、違法行為などが発生した場合には、研修監理員と連携のうえ、速やかに JICA 国内機関に連絡し、適切な措置をとるようご協力をお願いします。休日の場合等は、JICA 国内機関フロントへ連絡のうえ、対応につきご相談ください。
なお、即座の対応が必要な場合において、受託者の判断で対応いただいた場合は、事後、速やかに JICA 国内機関にご報告願います。
(4) 遠隔研修における契約管理
本ガイドラインに沿うこととします。運用の目安については、「遠隔研修に係る研修委託契約ガイドライン」をご参照ください。(以下 URL 参照)
■JICA ホームページ(研修委託契約ガイドライン、契約書雛形、様式)
xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxx/xxxxxxx/xx_xxxxx/xxxxxxxxx.xxxx