Contract
日本とドイツにおける職務発明
欧日政策セミナー
2016年11月22日
ヨーロッパにおける職務発明
▪ 統一的な法律はない
ローマI規則第8条:「個々の雇用契約は、当事者によって選択された法律に準拠す
るものとする[・・・]」
欧州特許条約第60条:「発明者が従業者である場合には、欧州特許を受ける権利は、従業者が主に雇用されている国の法律に従って決定される[・・・]」
▪ 特別な成文法
ドイツ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、・・・
▪ 特許法内で規定
イギリス、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、オーストリア、・・・
▪ 判例法
ベルギー、(米国、カナダ)
職務発明に関するドイツの法律の基本的な規則
• 被雇用者エンジニア、主要人員(+)
従業者と
は?
• 管理職、フリーランサー、協力パートナー(-)
発明とは?
• 職務発明(+)
• 自由発明(-)
移転とは?
• 雇用主による発明の権利請求(みなし)(+)
• 雇用主による権利放棄(-)
効果は?
• 雇用主による(ドイツ国内での)知的財産出願
• 従業者に対する十分な報酬
▪ 民間企業における従業者
(i) 雇用契約
(ii) 指揮命令の下で従事
(iii) 経営者の権限下にある
(iv) 個人に依存
→ 管理職、フリーランサー、協力パートナーに関して(-)
→ 開発者、エンジニア、主要人員に関して(+)
→ 一時的な従業者に関して、通常は(+)
→ 「外国人」従業者に関して(+/-):労働の「中心地」がドイツである場合には、保護効果
▪ 期間
雇用の完全な法的満了まで早期の退職は無関係
従業者の義務が存続する可能性(競業避止義務条項)?
▪ 公共サービス機関の従業者
民間企業の従業者と同じ「分類」
唯一の違い:雇用主が公共部門である
▪ 公務員、軍の構成員
公共サービス機関の従業者と同様の扱い
▪ 大学
科学者を含む、大学の従業者(+)教授、研究助手、講師(+)
客員教授、学生、博士課程学生(-)
発明とは?
▪ 発明
技術的手段によって技術的課題を解決する創作
特許性(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)、又は、
実用新案として登録可能(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)
!!「技術的な改善」:報酬の可能性!!
▪ 職務発明
「任務」:従業者の労働によって生じる、又は、
「経験」:企業内に存在するノウハウに基づいて生じる
▪ 自由発明
職務発明に該当しないすべての発明
業務範囲外で生じたもの
!!雇用主に対する通常実施権の「優先交渉権」!!
▪ 権利の所有者
従業者=権利の所有者
NO「契約上の目的」、NO「Mission内発明」、NO「職務著作物」
利用可能な権利の移転性↔人格権
▪ 従業者による通知
課題、解決方法、及び「発明に至る状況」の説明
判例法:雇用主が全ての情報を保有している場合には、書面は不要(すなわち申請書)
▪ 雇用主による発明の権利請求
(従業者による通知から)4ヶ月以内
書面での権利放棄、又は、発明の権利請求(みなし)
▪ 2009年10月1日より前に行われた発明
従業者に
よる通知
4ヶ月以内
に権利請求
発明が移転
される
4ヶ月以内に雇用主からの反応がない場合:発明は従業者に留保
▪ 2009年10月1日以降に行われた発明
従業者によ
る通知
4ヶ月以内
に権利放棄
発明は移転
されない
4ヶ月以内に雇用主からの反応がない場合:発明は雇用主に移転される
▪ 雇用主によるドイツ国内での知的財産出願特許又は実用新案を主として出願する義務 PCT出願又はEP出願も含まれる
例外:貿易又は産業機密の保護
▪ 雇用主による外国での知的財産出願
外国での知的財産権に対して出願する権利
「未使用の領域」に対する発明の権利を放棄する義務
▪ 従業者へ発明の再移転
出願を取り下げる又は放棄する場合には、
従業者に再移転を申し出る義務
義務の放棄は「購入」することが可能
▪ 従業者に対する十分な報酬
基本的な考え方:従業者は、雇用主の金銭的利益の分け前を受け取る!
報酬を算定するためのガイドライン:
報酬=発明価値×比例係数
価値:ライセンス類推(高い売上げに対する還元率を含む)又は内部利益比例係数:従業者の地位、及び、雇用主の貢献度
▪ 発明者が複数いる場合
報酬の分割:一人当たり、又は、割合に応じて
▪ 報酬の決定
基本的な考え方:雇用主と従業者との間で取り決め
取り決めがない場合には、雇用主は書面にて決定
従業者は2ヶ月以内に書面にて異議を申し立てる権利を有する
問題点:国際企業では、それぞれの法的背景が異なる-発明の所有権及び報酬に関する規則が著しく異なるおそれがある
▪ 発明の管理
「発明に優しい」内部組織
情報の適切な収集、及び、発明の適切な管理
追加的な動機付け(発明者の内部表彰);メディア関連
▪ インセンティブ・システム
一括支払いに関する内部規則-「すべての発明者に対してxxな扱い」か?例: 1.従業者による通知:300ユーロ/35,000円
2.特許出願:500ユーロ/60,000円
3.利用開始:800ユーロ/90,000円
問題点:法律に照らし合わせて精査すべき(ドイツでは:利益と報酬の間に不均衡がないように;「著しく不利な契約」に対する制限)
▪ 公共サービス機関の場合
発明の権利を主張する代わりに、雇用主は金銭的な関与に同意することがある:
→ 発明は発明者によって利用され、雇用主は売上げの分け前を受け取るのみ
「公共の利益」の場合には、発明の利用が制限される可能性がある
▪ 大学の場合
「教育及び研究の自由」が優先される
→ 発明者は、教育及び研究の理由から発明を開示する権利を有する
→ 発明者は、発明に関して雇用主に通知しない権利を有する
→ 教育及び研究のための法定の通常実施権
(売上げの30%の法定報酬)
▪ 著作権に関するドイツの法律の基本的な規則
著作権物:文章、音楽、写真、コンピュータプログラム
著作権の所有者は、創作者自身(すなわち雇用主ではない)
著作権を移転することはできないが、使用権の許与は可能
▪ 従業者に対する一般的な規定
「雇用関係又は職務関係の内容及び本質」に基づく権利の許与
従業者は、「職務上の作成物」に対する権利を許与する義務を有する
「契約の目的」に基づいて権利の許与が含意される
▪ コンピュータプログラム
「自身の任務の遂行において、又は、雇用主の指示に従って」作成された作成物
雇用主に対する法定の専用実施権
全ての利用権に対して雇用主は排他的に利用可能
→ (雇用)契約における別段の(明示的な)規定が可能
▪ 報酬
著作者は、「十分な報酬」の支払いに対する権利を有する
利益と報酬が不均衡である場合には、追加的な報酬が支払われる
給与に加えて?
→ 判例法:給与に「すべて含まれる」
→ (通常の労働義務を超えた)余分な労力に対する追加報酬
→ コンピュータプログラムに関して追加報酬に対する権利はない
Dr. Christian Kau Preu Bohlig & Partner
Couvenstrasse 4, Düsseldorf, Germany