Contract
調査研究ノート(査読付)
日本放送協会放送受信契約の契約法的論点整理
xx x士1
要 旨
日本放送協会(NHK)がその放送を受信する設備を設置した者と締結する受信契約について、契約法の観点からの問題点を整理した。
本稿では、特に、平成 29 年 12 月6日、受信設備を設置していたにもかかわらず受信契約を締結しない者に対してNHKが受信料の支払を求めた事案において、最高裁判所大法廷が下した判決(受信料訴訟大法廷判決)を採り上げた。その補足意見や反対意見では、契約法の観点から受信契約の問題点が言及されており、それらについて、これまでの主な判例や学説を踏まえ、若干の検討を加えた。
具体的には、①受信契約の契約主体、②その成立方法、③その成立時期及び受信料支払義務の始点並びに④受信料債権の消滅時効の起算点に関する問題点について検討した。
その結果、①受信契約は単位ごとに締結することを法律xxxし、その代表者に契約締結義務を課すなど、契約主体をより具体的に規定してはどうか、②受信契約締結に応じない受信設備設置者に対しては、立法趣旨、実際の運用、これまでの判例等を勘案すると、受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命じる判決の確定をもって契約成立とする受信料訴訟大法廷判決に判示される方法が一般的な方法ではないかと考えるが、ただし、③受信料の初回支払額を受信設備設置時から受信契約成立時までの受信料相当額として受信契約の成立時と受信料支払義務の始点が一致するようにしてはどうであろうか、④そうすることにより、それらの時期が異なる場合の消滅時効の起算点の問題も解消するのではなかろうか、との改善案等を提示した。
キーワード:受信契約の締結義務、受信契約の契約主体、受信契約の成立時期、受信料支払義務の始点、受信料債権の消滅時効の起算点
1.はじめに
放送法(昭和 25 年法律第 132 号)64 条1項では、日本放送協会(以下「NHK」という。)の放送を受信することができる設備(以下「受信設備」という。)を設置した者(以下「受信設備設置者」という。)2は、NHKとその放送の受信についての契約(以下「受信契約」という。)を締結しなければならない、と規定されている。また、同条3項では、NHKは、受信契約の条項について、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない、とされ、放送法施行規則(昭和 25 年電波監理委員会規則第 10 号)23 条に受信契約に定める事項が規定されている。これらの規定を受け、NHKは、総務大臣の認可を受けて日本放送協会放
1 総務省情報通信政策研究所リサーチアソシエイト。
2 ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者は除かれている。
送受信規約(以下「放送受信規約」という。)3を定め、受信設備設置者と受信契約を締結し、契約した種別4に応じて受信設備設置者より受信料を徴収している。
この受信料の法的性格について、昭和 39 年1月、郵政省(当時)は、①契約説(放送サービスに対する対価5)、②税金説(受信機税のような税6)、③許可料説(受信許可手数料7)及び④公用負担説(受益者負担的な公用負担)の四つの考え方を提示した8が、同年3月の
『臨時放送関係法制調査会答申』では、それらのいずれでもなく、「国家機関ではない独特の法人9として設けられたNHKに徴収権が認められたところの、その維持運営のための『受信料』という名の特殊な負担金10と解すべきである。」11と説明されている。
また、昭和 62 年4月に公表された『ニューメディア時代における放送に関する懇談会(放送政策懇談会)報告書』においては、現行の受信料制度は以下の点(同報告書より抜粋)に意義があり、NHKの財源を受信料とすることは適当12との結論が示されている。
(ア)NHKの財源を幅広く国民全体に直接求めることにより、公共放送の高度な自主性、
3 本稿では、平成 31 年4月1日施行の放送受信規約の条項を用いている。
4 受信契約には、地上契約(地上系テレビジョン放送のみの受信契約)、衛星契約(衛星系及び地上系テレビジョン放送の受信契約)、特別契約(難視聴地域又は営業用移動体における衛星系テレビジョン放送のみの受信契約)の3種類がある。
5 受信設備設置者は、実際のNHKの放送の受信いかんにかかわらず、受信契約を締結し、受信料を支払わなければならないため、受信料は、放送サービスに対する対価ではない、と解されている。xxxxx『放送法逐条解説』2版(情報通信振興会、2012 年)173 頁。ちなみに、放送法で受信契約締結のみが義務付けられていることをもって受信料を放送サービスに対する対価として説明しきれないと考えることはできず、対価か否かは、受信料制度全体の構造から判断する必要がある、との考えもある。xxxx『NHK受信料は拒否できるのか 受信料制度の憲法問題』(xx書店、2008 年)48 頁。なお、受信料は、テレビジョン放送受信(視聴可能性)の対価、とする判例もある。東京高判平成 24・2・29 判例時報 2143 号 89 頁。札幌高判平成 24・12・21 判例時報 2178 号 33 頁。
6 NHKの放送は、消費税法施行令(昭和 63 年政令第 360 号)2条1項6号に規定されており、消費税法(昭和 63 年法律第 108 号)2条1項8号に規定される資産の譲渡等に該当し、同法4条1項に基づき消費税が課税されるため、受信料を税とみなすことはできない。前掲注 5・xx、49 頁。
7 例えば、英国では、テレビジョン放送受信設備の使用者は、テレビジョン放送受信許可を受けて許可料(TV Licence Fee)を支払わなければならない。Section 363-365 of the Communications Act 2003。
8 郵政省『放送関係法制に関する検討上の問題点とその分析』(昭和 39 年1月)55-59 頁。
9 例えば、xxは、「日本放送協会は、特別の法律(放送法)に定める手続によって設立された、その限りでは、国のイニシアティブによって形成された法人ではあるが、それは、国の一分肢として国家事務の遂行にあたるものではなく、むしろ、国家の事務とするにはふさわしくないが、何人かがおこなうことがその性格上必要とされる業務を自主的に行う組織体と認識するのが妥当であろう」としている。xxx『行政組織法の諸問題』(有斐閣、1991年)26-27 頁。
10 受信料は、受信設備設置者各自が受ける受益の程度は明確でなく、それを限度とする受益者負担金の原則とは異なるため、特殊な負担金とされている。前掲注 5・xx、174 頁。
11 『臨時放送関係法制調査会 答申書』(昭和 39 年9月8日)15 頁及び 82 頁。
12 『ニューメディア時代における放送に関する懇談会(放送政策懇談会)報告書』(昭和 62
年4月2日)61-63 頁。
中立性を財政面から支えていること13。
(イ)受信契約締結義務はあっても、それが罰則等によって担保されたものではないだけに、NHKが受信料を相当程度収納して存続していくためには、その放送を中心とする業務全般について、大多数の国民から支持、承認を得ることが不可欠となり、このことがNHKに対しその放送を通じて不断に国民の要望、期待にこたえるような経営努力を促すことになること。
このような受信料制度について、平成 29 年 12 月6日、受信設備を設置していたにもかかわらず受信契約を締結しない者に対してNHKが受信料の支払を求めた事案において、最高裁判所大法廷判決(最大判平成 29・12・6民集 71 巻 10 号 1817 頁(判例時報 2365 号
3頁、判例タイムズ 1447 号 49 頁)。以下「受信料訴訟大法廷判決」という。)が下された。
ここにおいて、放送法 64 条1項が日本国憲法(昭和 21 年憲法。以下「憲法」という。)13条(個人の尊重)、21 条(知る権利)、29 条(財産権)等に違反しないという判断が下されただけでなく、①「放送法 64 条1項は、受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり、原告(NHK。以下同じ。:著者追記)からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には、原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当」、②「受信契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項」「を含む受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合、同契約に基づき、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生」、③「受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は、受信契約成立時から進行するものと解するのが相当」といった、受信契約の解釈に関する判断も下されている。ただし、この判決には、xx裁判官、xx裁判官、xx裁判官及びxx裁判官の補足意見とともに、xx裁判官の反対意見が付されている。
そもそも、受信料支払に関する訴訟に関しては、受信料制度に関する憲法適合性14や租税法の観点からの見解15だけでなく、受信契約に着目した契約法の観点からの議論16もあると
13 xxxは、NHKが広告料を収入とした場合、視聴率競争を激化させ、番組の画一化が推し進められることになり、一方、電波利用料による場合、NHKはその財源を政府により管理されることになるだけでなく、民間放送事業者も電波利用料額をめぐる政府からの圧力に弱い立場に置かれる、としている。xxxxx『テレビの憲法理論-多メディア・多チャンネル時代の放送法制』(弘文堂、1992 年)154 頁。
14 例えば、xxxx「放送の二本立て体制とNHK受信料」『法学教室』通巻 454 号(2018年7月1日)52-58 頁、xxxx「放送法 64 条1項の合憲性」『法学教室』通巻 450 号(2018年3月1日)137 頁、xxxx「放送法 64 条1項による受信契約強制の合憲性」『法学セミナー』第 63 巻第3号/通巻 758 号(2018 年3月1日)94 頁、xxxxx「公共放送の財源
-NHK受信料訴訟大法廷判決をうけて」『論究ジュリスト』25 号(2018 年4月 25 日)39-
46 頁、xxxxx「受信契約制度の合憲性-最高裁 2017 年 12 月6日大法廷判決」『法律時報』90 巻2号(2018 年2月1日)4-6 頁。
15 例えば、xxxx「NHK受信料訴訟大法廷判決の検討」『ジュリスト』通巻 1519 号(2018
年5月1日)45-50 頁。
16 例えば、xxxxxx「NHK受信契約の締結強制による受信料債権成立及び同債権の消滅時効の起算点」『法学教室』通巻 452 号(2018 年5月1日)135 頁、xxxx「放送法
ころ、特にxx裁判官の反対意見は、契約法の観点からの疑義を表明していると考えられる。また、xx裁判官の補足意見にあっても、受信契約締結が強制されるにもかかわらず、当該 義務を負う者が特定されていないことなどを問題としている。
実際、受信契約締結に関しては、宿泊施設や賃貸物件に設置された受信設備の設置者やテレビジョン放送を視聴できるワンセグ機能付き携帯電話の「設置」該当性について、その後も訴訟が継続し、最高裁判所の判断がなされたところである17。
受信契約を契約法の観点から議論しようとする考え方に対しては、そもそも受信料は特殊な負担金であり、受信契約という形式がとられていることを過度に重視すべきではない
18、という見解もある。
しかし、放送法では、受信設備設置者に受信契約締結義務を課しているとはいうものの罰則の担保はなく、受信契約に基づく受信料の徴収を通じてNHKの経営努力を促すといった、先に述べたような意義を現行制度に見いだすのであれば、受信契約という形式にも一定の整合性を持たせなければならないであろう。すなわち、特殊な負担金ということを殊更強調し、受信契約という形式が軽んじられるのであれば、受信料徴収を通じてNHKの経営努力が促されることはなく、受信契約という形式がとられている意義がないことになる。
そこで、受信契約という形式がとられている意義をもかんがみ、受信料訴訟大法廷判決における受信契約の契約法の観点からの論点について、これまでの判例や主な学説も含め、まとめてみることとする。
なお、本稿においては、あくまで現行制度を所与と考え、特に契約法の観点からどのようにすれば疑念が払拭されるのか、を整理するにとどめる。
2.契約法の観点からの論点整理
受信契約について、まず、その契約主体、次にその成立方法、そして、その成立時期及び受信料支払義務の始点、最後に、受信料債権の消滅時効の起算点に関する論点を整理し、それぞれについて若干の検討を加えることにする。
なお、表に掲げる判例を、これまでの主な判例として採り上げることとする。
64 条1項の受信契約締結義務及び受信料支払義務の成立時期ならびに時効起算点」『新・判例解説 Watch』vol. 22(2018 年4月 25 日)85-88 頁、xxxx「NHK放送受信契約の締結をめぐる諸問題-最大判平成 29 年 12 月6日の検討」『ジュリスト』通巻 1519 号(2018年5月1日)39-44 頁。
17 平成 30 年2月9日、客室等にテレビを設置しているホテル運営会社の受信契約締結義務が争われた訴訟で、最高裁判所第三小法廷(xxxx裁判長)は、ホテル運営者側の上告を棄却(平成 30 年2月 10 日付け朝日新聞(朝)38 面等)。令和元年7月 24 日、㈱東横イン及びグループ会社の客室に設置した受信設備に係る受信契約締結義務が争われた訴訟で、最高裁判所第二小法廷(xxxx裁判長)は、㈱東横イン側の上告を棄却(令和元年7月 26日付け東京新聞(朝)28 面等)。また、平成 30 年8月 29 日、テレビ付きの賃貸住宅の入居者の受信契約締結義務が争われた訴訟で、最高裁判所第xx法廷(xxx裁判長)は、入居者側の上告を棄却(平成 30 年8月 31 日付け毎日新聞(朝)29 面等)。さらに、令和元年3月 12 日、テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話の受信契約締結義務が争われた4件の訴訟で、最高裁判所第三小法廷(xxxx裁判長)は、支払義務はないとする携帯電話所有者側の上告をいずれも棄却(令和元年3月 14 日付け産経新聞(朝)1面等)。
18 前掲注 16・xx、86 頁。
表.主な判例一覧
略称 | 判例集等 | 備考 | |
① | 札幌地判平成 22・3・19 | 判例時報 2073 号 98 頁 判例タイムズ 1329 号 155 頁 | |
② | 千葉地判平成 22・10・28 | 判例タイムズ 1344 号 200 頁 | |
③ | 札幌高判平成 22・11・5 | 判例時報 2101 号 61 頁 判例タイムズ 1349 号 170 頁 | ①の控訴審 |
④ | 東京高判平成 24・2・29 | 判例時報 2143 号 89 頁 | |
⑤ | 横浜地裁相模原支部判 平成 25・6・27 | 判例時報 2200 号 120 頁 | |
⑥ | 東京地判平成 25・7・17 | (判例時報 2210 号 56 頁参考) | |
⑦ | 東京地判平成 25・10・10 | 民集 71 巻 10 号 1891 頁 | 受信料訴訟大法廷判決 の第xx |
⑧ | 東京高判平成 25・10・30 | 判例時報 2203 号 34 頁 判例タイムズ 1396 号 96 頁 | ⑤の控訴審 |
⑨ | 東京高判平成 25・12・18 | 判例時報 2210 号 50 頁 | ⑥の控訴審 |
⑩ | 東京高判平成 26・4・23 | 民集 71 巻 10 号 1916 頁 | 受信料訴訟大法廷判決 の控訴審 |
⑪ | 東京地判平成 28・3・9 | (判例時報 2330 号 23 頁参考) | |
⑫ | 東京高判平成 28・9・21 | 判例時報 2330 号 15 頁 | ⑪の控訴審 |
⑬ | 東京地判平成 28・10・27 | (判例時報 2354 号 24 頁参考) 『消費者法ニュース』第 110 号 (2017 年1月 13 日)268-270 頁 | |
⑭ | 東京高判平成 29・5・31 | 判例時報 2354 号 20 頁 | ⑬の控訴審 |
2.1.受信契約の契約主体
まず、受信契約の契約主体について、受信料訴訟大法廷判決におけるxx裁判官の補足意見及びxx裁判官の反対意見を概説した上で、これまでの判例や主な学説を紹介し、考察することにする。
2.1.1.受信料訴訟大法廷判決等の概要
受信契約の契約主体については、受信料訴訟大法廷判決では争いはなく、同判決では、「放送法 64 条1項は、受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり、原告からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には、原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当」と説示するのみである。
しかし、xx裁判官は、先にも述べたとおり、補足意見において、「放送受信規約第2条第1項は、(略)原則として世帯を単位として契約を締結することとしているが、これは、放送法 64 条1項の規定から直ちに導かれるとはいい難い。さらに、放送受信規約は、受信契約を世帯ごととしつつも、受信契約を締結する義務が世帯のうちいずれの者にあるかに
ついて規定を置いていない。任意に受信契約が締結される場合は別であるが、受信契約の締結が強制される場合には、締結義務を負う者をxxで特定していないことには問題があろう。」と指摘している。
また、xx裁判官は、「放送法 64 条1項が定める契約締結義務については、多数意見と異なり、意思表示を命ずる判決を求めることのできる性質のものではないと解する。」と反対意見を述べている。その理由の一つとして、「放送受信規約は、受信設備設置者が設置後遅滞なく受信契約書を提出して(略)受信契約が成立することを前提としている。」しかし、例えば、「同一の世帯に夫婦と子がいる場合、放送受信規約第2条は、住居が1である限り、受信設備が複数設置されても受信契約は1とするが、夫婦と子のそれぞれが受信設備を設置しあるいは廃止すると、判決が承諾を命ずるべき者が誰なのかは、不明である。それぞれが設置した受信設備の種類が異なる場合、判決が承諾を命ずる契約の種別が何なのかも、不明である。」と説明している。
2.1.2.これまでの判例及び主な学説
(1)主な判例
受信契約の契約主体が争われた事案として、受信設備が設置された賃貸住宅について、入居者が受信設備設置者に該当するかが争われたことがある。東京地判平成 28・10・27 では、受信設備設置者とは、「物理的・客観的に被告の放送を受信することができる状態を作出した行為者」として当該賃貸住宅入居者の受信設備設置者該当性を否定したが、その控訴審判決である東京高判平成 29・5・31 では、受信設備設置者とは「受信設備を物理的に設置した者だけでなく、その者から権利の譲渡を受けたり承諾を得たりして、受信設備を占有使用して放送を受信することができる状態にある者も含まれると解される。」と判示された。本件は、平成 30 年8月 29 日、最高裁判所第xx法廷において上告が棄却され19、控訴審の判決で確定した。
なお、直接、受信契約の契約主体そのものが争われたわけではないが、受信設備設置者の 妻が夫名義で受信契約を締結した行為が日常家事行為に該当するかが争われた事案として、札幌地判平成 22・3・19(該当性否定)、その控訴審の札幌高判平成 22・11・5(該当性肯 定)、及び千葉地判平成 22・10・28(該当性肯定)がある。
(2)主な学説
東京高判平成 29・5・31 について、xxは、受信設備設置者は当該設備の処分権限の有無により判断すべき20と批判し、放送法 64 条1項が訓示規定(努力義務規定)であれば柔軟な解釈を認めても問題はないが、受信契約締結を強制する規定であるのであれば、要件の柔軟化には慎重な判断が求められる21、と問題提起している。
また、同判決について、xxは、租税法の観点から、受信料は、NHKが徴収し、その運
19 前掲注 17。
20 xxxx「テレビ付き賃貸の入居者は放送法 64 条1項の『受信設備を設置した者』に当たるとされた事例」『新・判例解説 Watch』vol. 22(2018 年4月 25 日)67-68 頁。
21 xxxx「テレビ付き賃貸物件の入居者は放送法六xxx項の『受信設備を設置した者』に当たるとされた事例」『判例時報』2380 号(2018 年 11 月1日)158 頁(『判例評論』717号、12 頁)。
営経費に充てられていることから、いわゆる「租税」22ではないが、負担者が広範囲にわたり、徴収の強制性が強いものであれば、その負担者に関する規定はxx的に定められることが必要23、との見解を示している。
2.1.3.検討
放送受信規約第2条では、受信契約の単位は世帯ごと、同一世帯に属しても2以上の住居に設置する場合は住居ごと(以上第1項)、事業所等住居以外の場所に受信設備を設置する場合はその設置場所ごと(第2項)、種類の異なる2以上の受信設備を設置した者は衛星契約を締結(第5項)などと規定されている。したがって、受信設備設置者であっても、同種の受信契約を締結した受信設備設置者と同居していれば、別途、受信契約を締結する必要はないことになる。これは、すべての受信設備設置者に受信契約締結義務は課されているが、同居している同種の放送を受信する受信設備を設置している他の受信設備設置者に対しては、NHKに受信契約締結の意思がなく、したがって、このような受信設備設置者は受信契約を締結しなくてよい、ということなのであろう。放送受信規約は総務大臣が認可しているが、法律においてすべての受信設備設置者に受信契約締結義務を課しながら、一方で、NH Kにはある種の受信設備設置者に対しては契約を締結する意思がなく、それらの受信設備設置者は受信契約を締結しなくてよいというのは、そのような受信設備設置者としては受信契約を締結しなくてよいのであるから文句をいう筋合いではないが、何とも分かりづらい規定のように思われる。
また、契約1口で居住者全員の需要をまかない、1つの住居で1口の契約となっている場合が多いと考えられる電気、ガス、水道等の公共料金と異なり、受信料にあっては、同一世帯に複数の者が居住している場合、各自がそれぞれ受信設備(テレビジョン放送受信機能付き携帯電話を含む。)を設置(携帯)している場合が多いように思われる。特に、東京高判平成 29・5・31 のように、受信設備設置者は「受信設備を物理的に設置した者だけでなく、その者から権利の譲渡を受けたり承諾を得たりして、受信設備を占有使用して放送を受信することができる状態にある者も含まれる」ということであれば、自らは受信設備を設置していなくても、同一世帯に居住して生計をともにしている者は、受信設備設置者となるであろう。放送受信規約には世帯の特定の者を受信契約の主体とする規定はなく、受信契約締結を拒む者と同居して生計ともにする他の受信設備設置者がいれば、その者と受信契約を締結することも考えられる。これは、受信契約を締結しやすくしている反面、それが被扶養者や未xx者などの場合も考えられ、本当にそれでよいのか、疑問も残る。
放送受信規約では、受信契約の契約主体ということで受信設備設置者に着目した規定となっているのであろうが、例えば、受信設備自体に着目し、それを保有、管理する単位(世帯や事業所など具体的には放送受信規約で別途規定。)ごとに契約する旨を法律上規定し、その代表者(又は代理人)に契約締結義務を課すなど、より分かりやすい規定にはできないのであろうか。
22 xxは、租税とは、「国家が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付」
(xxx『租税法〔第 22 版〕』(弘文堂、2017 年)8-9 頁)との定義を用いている。
23 xxxx「NHK受信料の法的性質と放送法 64 条1項の要件明確性」『ジュリスト』通巻 1512 号(2017 年 11 月1日)10-11 頁。
2.2.受信契約の成立方法
次に、受信契約の成立方法について、受信料訴訟大法廷判決、xx裁判官の補足意見、xx裁判官の反対意見、これに対するxx裁判官及びxx裁判官の補足意見を概説した上で、これまでの判例や主な学説を紹介し、考えてみることにする。
2.2.1.受信料訴訟大法廷判決等の概要
先にも述べたとおり、受信料訴訟大法廷判決では、「原告からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には、原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当」と判示された。
この判決について、xx裁判官は、放送法 64 条1項「の規定を読めば、①受信設備を設置したこと、②原告による受信契約申込みの意思表示がなされたことという二つの要件を充足することによって、原告が当該受信設備を設置した者に対して受信契約承諾請求権を取得することになると理解できる。原告がその取得した受信契約承諾請求権を行使しても相手方が承諾しないときには、民法 414 条2項ただし書の規定によって意思表示を求める訴訟を提起することができる。そして、判決の確定によって承諾の意思表示をしたものとみなされたときに受信契約が成立する。」と補足意見を述べている。
これに対し、xx裁判官は、「放送法 64 条1項が定める契約締結義務については、多数意見と異なり、意思表示を命ずる判決を求めることのできる性質のものではないと解する。」
「判決によって受信契約を成立させようとしても、契約成立時点を受信設備設置時に遡及させること、また、判決が承諾を命ずるのに必要とされる契約内容(契約主体、契約の種別等)の特定を行うことはできず、受信設備を廃止した受信設備設置者に適切な対応をすることも不可能である。」と反対意見を述べている。
一方で、xx裁判官は、「受信契約により生ずる受信料が原告の運営を支える財源であり、これが、原告について定める放送法の趣旨に由来することから契約締結義務が定められているのであるから、受信設備を設置する者に受信契約の締結義務が課せられていることは、
『受信契約を締結せずに受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態が生じない』ことを原告の利益として法が認めているのであり、この原告の利益は『法律上保護される利益』
(民法 709 条)ということができる。受信契約の締結なく受信設備を設置することは、この 利益を侵害することになり、それに故意過失があれば、不法行為が成立し、それによってx xに生ずる損害については、受信設備設置者に損害賠償責任が認められると解される。」(不 法行為構成)としている。また、「同様に『受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態 となること』は、受信設備設置者にとって、原告の役務による利益であり、受信契約という 法律上の原因を欠くものである。それによって原告に及ぼされる損失については、受信設備 設置者の不当利得返還義務が認められると解される。」(不当利得構成)と意見を述べている。
これに対し、xx裁判官及びxx裁判官は、「不当利得構成については、受信設備を設置 することから直ちにその設置者に受信料相当額の利得が生じるといえるのか疑問である上、受信契約の成立を前提とせずに原告にこれに対応する損失が生じているとするのは困難で あろう。不法行為構成については、受信設備の設置行為をもって原告に対する加害行為と捉 えるものといえ、公共放送の目的や性質にそぐわない法律構成ではなかろうか。また、上記 のような構成が認められるものとすると、任意の受信契約の締結がなくても受信料相当額
を収受することができることになり、放送法 64 条1項が受信契約の締結によって受信料が支払われるものとした趣旨に反するように思われる。」と反論している。
2.2.2.これまでの判例及び主な学説
(1)主な判例
受信契約の成立方法については、これまでの判例は二つに分かれていた。
受信料訴訟大法廷判決と同じく、横浜地裁相模原支部判平成 25・6・27、東京地判平成 25・7・17、東京地判平成 25・10・10、東京高判平成 25・12・18、東京高判平成 26・4・
23 及び東京高判平成 28・9・21 は、NHKは受信契約締結に応じない受信設備設置者対して承諾の意思表示を命じる判決を求め、その判決の確定により受信契約が成立する、と判示している。
一方、次の判例は、正当な理由なく受信契約締結に応じない受信設備設置者に対してNH Kが受信契約締結の申込みを行い、これに対して受信設備設置者が承諾の意思表示を行わないときは、相当期間経過後に、受信契約が成立する、と判示している。
・東京高判平成 25・10・30:相当期間は、「長くとも2週間」。
・東京地判平成 28・3・9:相当期間は、「1週間が相当」。
(2)主な学説
xxは、契約締結を義務付ける行政法の各種規定を分析し、その法律上の効果は一律に論ずることはできず、当該義務に応じない者に対しては、罰が課せられ、又は賠償責任が認められるにとどまることもあれば、その意思如何にかかわらず一方的行為により契約が成立したとみなされることもあり、あるいは、承諾の意思表示に代わるべき判決を得て契約を成立させ得ることもあり、各規定の趣旨に応じて吟味するほかはない24、としている。
受信契約は、契約当事者の一方があらかじめ定めている約款(放送受信規約)に従い他方が締結する付合契約(付従契約)と考えられるが、その締結を義務付ける放送法 64 条1項を強制規定と捉えるか、訓示規定と捉えるかにより解釈が大きく二つに分かれている。
・放送法 64 条1項は強制規定
放送法 64 条1項は、NHKからの受信契約申込みに対し、受信設備設置者に承諾の意 思表示をする義務を課していると解し、受信契約の締結に応じない受信設備設置者に対 しては、NHKは民法 414 条2項ただし書及び民事xxx(昭和 54 年法律第4号)177 条1項に基づき、受信契約締結に応諾する意思表示を命ずる判決を求め、当該判決が確定 し、受信設備設置者が応諾の意思表示をしたとみなされることにより受信契約が成立す ると考える。先に見た受信料訴訟大法廷判決等の解釈。xx(xx)及びxx25、荘26並 びにxx27は、この説を提示しており、また、xx28は、受信料訴訟大法廷判決における 受信契約の成立時期の検討において、その成立方法については、この考えを是としている。
24 xxx「契約の締結の強制」『法と契約』(岩波書店、1960 年)349 頁。
25 xxxx、xxxx『放送行政法概説』(電波振興会、1960 年)123 頁。
26 xx『放送制度論のために』(日本放送出版協会、1963 年)256 頁。
27 xxxx「NHK受信契約」『現代契約法大系第7巻 サービス・労務供給契約』(有斐閣、1984 年)251 頁。
28 行政判例研究会(xxxxx)「行政判例研究 994」『自治研究』第 92 巻第3號(2016 年
3月 10 日)127-130 頁。
・放送法 64 条1項は訓示規定
放送法 64 条1項は、受信設備設置者に対し任意に受信契約を締結するよう努力義務を定めた訓示規定に過ぎないと考える。裁判例には、この見解に立つものは見当たらない29が、xxは、罰則規定が設けられていないことから、放送法 64 条1項は訓示規定30と解
している。また、xxは、判例や学説を分析し、放送法 64 条1項は訓示規定としての行為義務程度の効力しか認められないと考えるべき31と結論している。また、xxも、判例や学説を分析し、放送法 64 条1項は訓示規定に過ぎないと解するのが論理的、整合的であり、強制規定と考えた場合、基本的人権に対する過剰介入該当性を比例原則(適合性の原則32、必要性の原則33、均衡性の原則34)により判断すると同項は均衡性の要件を満たしてないため違憲35、と述べている。
なお、xxは、受信設備設置によりその設置者はNHKの放送を受信できる状態となっており、そうであるにもかかわらず受信契約に応じない受信設備設置者には、不法行為の要件である権利・利益の侵害を、更にはその損害をどのようなものとして把握するかには困難が伴うが、不法行為による損害賠償義務を受信料と同一額で契約締結義務違反の始点になるべく近い時点で生じさせるべき36、としている。
その他、xxは、受信契約は、①付合契約、②締結強制、③国会審議を通じた参加原則が妥当、④透明性原則やアカウンタビリティーが妥当、とこれまで国や地方公共団体の制度にみられるような性質を有し、「制度的契約」と解すべき37、と提言している。
2.2.3.検討
放送法 64 条1項は、受信設備設置者に受信契約締結を義務付けているのであり、受信契約の承諾の意思表示をしたものとみなす規定ではないため、受信設備を設置したという行為以外にも何らかの意思表示を認めていると考えられるところ、東京高判平成 25・10・30等にみられるNHKによる受信契約申込みを形成権の行使と構成する考え方は、受信設備設置者による受信設備設置という行為に重きを置き過ぎているように思える。
また、「制度的契約」というのは、その特徴が述べられているだけで、どのような解釈がなされ、具体的に何がどのように異なってくるのか、まったく理解できなかった。
29 『判例時報』2365 号(2018 年)4頁。xxxx「NHK受信料訴訟大法廷判決の解説」
『ジュリスト』通巻 1519 号(2018 年5月1日)33 頁。
30 xxxx「締約強制の私法上の効果」xxxx、xxx、xxxx、xxxx編『会社法・金融法の新展開』(中央経済社、2009 年)435-439 頁。
31 xxxx「放送法 64 条1項と民法 414 条2項但書-契約と制度と私的自治-」『法学研究』第 87 巻第1号(2014 年1月 28 日)34 頁。
32 適合性の原則とは、手段の目的達成への適合性を判断。
33 必要性の原則とは、他の手段による目的実現可能性を判断。
34 均衡性の原則とは、目的と手段の均衡性を判断。
35 xxxx『締約強制の理論-契約自由とその限界』(成文堂、2016 年)151 頁及び 162- 163 頁。
36 xxxx「NHKのテレビジョン放送受信契約の締結に応じない者に対する受信料支払請求のために、まず契約の承諾の意思表示を命ずる判決を得ることが必要か」『私法判例リマークス』50 号(2015 年2月 25 日)16-17 頁。
37 xxxx「日本放送協会放送受信契約の締結強制と法的性質」『学習院大学大学院法学研究科法学論集』第 24 号(2017 年3月 20 日)29-64 頁。
ちなみに、公共料金(電気料金、ガス料金、水道料金等)は、契約しても使用量に応じて支払額が設定される実費償還契約が多い。一方、受信料は、NHKの放送の受信いかんにかかわらず、受信可能な放送の種別に応じて一定額を支払わなければならない定額契約である。
一般的特徴として、実費償還契約にあっては、使用量を確定した後に支払額が決まるため役務の供給を停止しても、使用者は基本料金以上の負担はなく、その分、役務提供に当たり生じるリスクは使用者側も負担することになるが、定額契約は、利用するに当たって利用料を先に支払うこととなり、役務提供に生じるリスクはすべて役務提供者側に転嫁することができる。逆に、利用者は、役務提供者側のコスト削減により提供される役務の品質が劣化する可能性を負うことになるし、また、利用者の都合により一切利用しなくても、利用したときと同額の利用料を支払わなければならない。したがって、定額契約を締結へといざなうことは、実費償還契約でそうすることよりも難しくなるであろう。
このような定額契約として受信契約を考えると、受信契約締結拒否の背景には、一般に想定される定額契約のデメリットを解消するためにNHKの放送の実際の視聴やその良否等を判断して受信料を支払う実費償還契約にすべきという要望があるようにも思える。NH Kの放送にスクランブルをかけて実際の視聴に応じて受信料を徴収すべき38、というような意見にはその特徴が顕著なのではなかろうか。
しかし、電気、ガス、水道にあっては需要量に応じて供給するのに対し、NHKの放送は、視聴を欲する者だけでなく、あまねく日本全国におけるテレビジョン放送を受信したい者
(受信設備設置者)全てに提供することとなっており39、実費償還契約には合わない役務のように思える40。
そして、受信契約を定額契約と捉えるならば、その締結をしない受信設備設置者に対して不当利得構成を採って不当利得返還を請求することは難しくなる。定額契約は、実費償還契約ほど利得が明確ではないからである。また、不法行為構成にあっては、NHKの利益を害する故意又は過失を説明するのは難しいように思う。
受信料訴訟大法廷判決に述べられている立法趣旨、実際の運用、これまでの判例を勘案すると、受信料訴訟大法廷判決に説示される方法が、受信契約を締結しない受信設備設置者に対する一般的な対応方法ではないかと考える。
2.3.受信契約の成立時期と受信料支払義務の始点
受信契約の成立時期及び受信料支払義務の始点について、受信料訴訟大法廷判決、xx裁判官の補足意見、xx裁判官の反対意見、この反対意見に対するxx裁判官及びxx裁判官の補足意見を概説した上で、これまでの判例や主な学説を紹介し、考えてみることにする。
38 前掲注 5・xx、52-53 頁。xxxx「NHKとの受信契約締結義務をめぐって」『新・判例解説 Watch』vol. 19(2016 年 10 月 25 日)77-78 頁。
39 放送法 15 条。
40 xxは、スクランブル・解読という技術的方法によると、NHKの放送の受信者は、そのために特別の行為をした人々になり、この場合、現行法がNHKの組織運営に対して国会の関与を中心とする各種の特別の配慮をしている意味を理解することはかなり困難になるであろう、と述べている。xxx『放送法制の課題』(有斐閣、1989 年)290 頁。
2.3.1.受信料訴訟大法廷判決等の概要
受信料訴訟大法廷判決では、「受信契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項」「を含む受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合、同契約に基づき、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生するというべきである。」と判じた。
xx裁判官の補足意見として、「放送受信規約第4条第1項は、受信契約は受信設備設置の日に成立するものとする旨を規定しているところ、その趣旨は、受信設備の設置の時からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約が、意思表示の合致の日に成立する旨を述べていると解すべきである。」と補足している。
これに対し、xx裁判官は、「意思表示を命ずる判決によって意思表示が効力を生ずるのは、民事xxx 174 条1項により、その判決の確定時と定められている。承諾を命ずる判決は過去の時点における承諾を命ずることはできないのであり、承諾が効力を生じ契約が成立するのは判決の確定時である。したがって、放送受信規約第4条第1項にいう受信設備設置の時点での受信契約の成立はありえない。受信料債権は定期給付債権である(最高裁平成 25 年(受)第 2024 号同 26 年9月5日第二小法廷判決・裁判集民事 247 号 159 頁)が、定期給付債権としての受信料債権を生ぜしめる定期金債権としての受信料債権は、受信契約によって生じ、その発生時点は判決の確定時である。受信契約が成立していなければ定期金債権としての受信料債権は存在せず、支分権としての受信料債権も生じない。したがって、放送受信規約第5条にいう受信設備の設置の月からの受信料支払義務の負担はありえない。」と反対意見を述べている。また、「仮に、既に受信設備を廃止した受信設備設置者に対して判決が承諾を命ずるとすれば、受信設備の設置の時点からその廃止の時点までという過去の一定の期間に存在するべきであった受信契約の承諾を命ずることになる。これは、過去の事実を判決が創作するに等しく、到底、判決がなしうることではない。」と指摘している。
この反対意見に対し、xx裁判官及びxx裁判官は、「多数意見が、民事xxx 174 条1項本文により承諾の意思表示を命ずる判決の確定時に受信契約が成立するとしつつ、受信設備の設置の月からの受信料を支払う義務が生ずるものとしていることについて、問題がある旨の指摘がされているが、この点については、xx裁判官の補足意見で述べられているとおり、上記判決の確定により『受信設備を設置した月からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約』が、上記判決の確定の時(意思表示の合致の時)に成立するのであって、受信設備の設置という過去の時点における承諾を命じたり、承諾の効力発生時期を遡及させたりするものではない。」「また、受信設備を廃止した場合の問題点も指摘されるが、過去に受信設備を設置したことにより、それ以降の期間について受信契約を締結しなければならない義務は既に発生しているのであるから、受信設備を廃止するまでの期間についての受信契約の締結を強制することができると解することは十分に可能であると考える。」と反論している。
2.3.2.これまでの判例及び主な学説
(1)主な判例
これまでの主な判例においては、いずれも、受信設備設置者は、受信契約成立時ではなく、受信設備を設置した月より受信料の支払義務を負うとしているが、受信契約の成立は、意思
表示を命じる判決の確定時とするものと、受信設備設置時に遡るとするものとがある。
[判決確定時に受信契約成立]
・東京地判平成 25・7・17:「放送受信契約(本稿でいう「受信契約」。以下同じ。:著者追記)が成立するのは本判決の確定時であるが、同契約の内容となる受信規約(本稿でいう「放送受信規約」。以下同じ。:著者追記)5条1項が、放送受信契約者は、受信機(本稿でいう「受信設備」。以下同じ。:著者追記)の設置の月から(略)受信料の支払義務があると定めていることからすると、(略)契約成立の時期にかかわらず、受信機設置の月の次の月(略)から受信料支払義務を負うものと解される。」
・東京地判平成 25・10・10:「民事xxx 174 条1項によって、(略)判決が確定した時に、放送受信契約が成立するところ、放送法の規定に受信料支払債務の成立時期を明記したものはないが、(略)放送法が放送受信契約締結義務の履行について特別の担保手段を規定していないことも考慮すれば、放送法 64 条1項は、受信料の支払に係る潜在的かつ抽象的な債権債務関係は受信機設置時点で成立することとした上で、受信契約の現実の締結(成立)によって放送受信契約関係を具体的に確定し、受信料の支払に係る具体的な債権債務関係もまた受信機設置の時点に遡って確定することを前提とした規定であると解するのが相当である。」
・東京高判平成 25・12・18:「放送受信契約の承諾の意思表示を命じる判決の確定により
(略)放送受信契約が成立することになるが、(略)同契約の条項を定める受信規約
4条1項に基づき、受信契約が受信機の設置の日に遡って効果を有することになり、同規約5条1項により、受信機の設置の月から受信料の支払義務を負うことになる」。
[受信設備設置時に遡り受信契約成立]
・東京高判平成 28・9・21:「意思表示を命ずる民事裁判の判決が確定することにより、放送受信契約は、規約(本稿でいう「放送受信規約」。:著者追記)4条1項に基づき受信機の設置の日に遡って成立したこととされ、受信設備設置者は、被控訴人(NH K。以下同じ。:著者追記)に対しての同日からの放送受信料(本稿でいう「受信料」。以下同じ。:著者追記)を支払う義務を負うとともに、口頭弁論終結前に受信機を撤去した場合には、その設置から撤去までの間、放送受信契約を締結すべきであったのにこれをしなかったのであるから、被控訴人の損失において法律上の原因なく放送受信料の支払を免れるという利益を得たものとして、被控訴人に対して当該期間の放送受信料に相当する金員を不当利得として返還する義務を負うものというべきである。」
(2)主な学説
xxは、受信設備設置時点からNHKの放送を受信できる状態が作出されており、受信契約締結時にその時点に遡及して受信料支払債務を生じさせることは可能41、としている。
一方、xxは、契約は申込みと承諾により成立するのが原則であり、その効力は契約成立時以降に生じる(契約がなければ義務を負うことはない。)と考えるのが自然であり、また、放送法も受信設備設置者に契約締結義務は課してはいるが、その効力(受信設備設置者の受信料支払義務)を受信設備設置時まで遡らせることまでは定めていないにもかかわらず、放
41 前掲注 27・xx、250 頁。
送受信規約で遡らせているのは、消費者契約法(平成 12 年法律第 61 号)10 条に違反するのではないか42、との疑問を呈している。
また、xxも、①放送法は、受信契約の成立時期や受信料支払債務の発生時期に関する規定を設けていない、②放送受信規約は契約約款に過ぎず、契約の成立時期について規定しても法的意味がない、③民事xxxは、判決確定時に意思表示は擬制しているが、擬制により生じる契約の効果を過去の時点に遡及させる場合についての規定は設けていないなど43、と意思表示を命じる判決確定により生じる契約の効力を遡及させることを批判している。
なお、xxは、受信料訴訟大法廷判決におけるxx裁判官及びxx裁判官の補足意見について、受信設備設置時点で受信契約締結義務は生じており当該設備を廃止ししてもそれまでの期間の受信契約締結を構成することは可能としているが、「契約の締結強制が認められるのは、将来に向かって当事者間に契約上の法律関係を生じさせるため」であり、「したがって、契約という法形式を採用する以上、過去における受信契約の締結を強制することはできないと解するべき」44、と批判している。
2.3.3.検討
契約の効力が契約締結時に発生するのは、受信料訴訟大法廷判決もxx裁判官の反対意見も、その他学説も一致するところであろう。また、一般に、合意が成立して実際の取引が先行し、契約締結が後日になる場合、契約を遡及適用することはあるであろう。同様に考えると受信契約を遡及適用させることは考えられる。
受信設備設置者が受信契約締結に応じない場合の問題は、受信設備設置者は契約成立まで受信料支払義務に応じていないことである。この場合において、契約の成立により受信設備設置者に負わせる契約成立以前の受信料支払義務は、契約成立時点で課されると考えるのか、契約成立により遡及して課されると考えるのか、で見解が分かれているのではないかと考えられる。
xx裁判官及びxx裁判官の補足意見を参考に考えるならば、受信設備設置時に受信料支払義務を生じさせるのではなく、受信料の初回支払は、受信設備設置時から受信契約締結時までの受信料に相当する額とすればよいのではなかろうか。
このように規定すれば、仮に受信契約成立時までに受信設備を廃止しても、受信契約成立とともに、受信設備設置時から受信設備廃止時までの受信料を支払うことになると考えられる。この場合、あくまで、受信料支払義務が生じるのは受信契約成立時以降であり、一方で、受信設備設置時から受信契約成立時までの受信料相当額の支払義務もその時に課すことができると考える。
なお、消費者契約法との関係については、受信契約締結義務の合憲性が争われた事案において、東京高判平成 22・6・29 判例時報 2104 号 40 頁は、受信契約締結を義務付ける放送法 64 条(当時は 32 条)1項は、消費者契約法 11 条2項にいう「別段の定め」に該当する
ため適用除外と判示し、平成 23 年5月 31 日、最高裁判所第三小法廷で上告が棄却され45、
42 xxxx「NHK放送受信規約等についての申込活動について」『消費者法ニュース』第
104 号(2015 年7月 31 日)202 頁。
43 xxxx「放送受信契約の強制的成立」『東海法学』第 49 号(2015 年3月 30 日)177 頁。
44 前掲注 16・xx、42 頁。
45 平成 23 年5月 31 日、受信料支払を拒否した3人に未納分の支払を求めた2件の訴訟で、
確定している。
2.4.受信料債権の消滅時効の起算点
最後に、受信料債権の消滅時効の起算点について、受信料訴訟大法廷判決及びxx裁判官の反対意見を概説した上で、これまでの判例や主な学説を紹介し、検討することにする。
2.4.1.受信料訴訟大法廷判決等の概要
受信料訴訟大法廷判決では、「受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は、受信契約成立時から進行するものと解するのが相当である。」と判示している。すなわち、受信設備設置時より受信料支払義務は生じるが、当該債務の消滅時効の起算点は受信契約成立時としている。
これに対し、xx裁判官は、「受信設備設置者は、多数意見のいうように、受信契約の締結義務を負いながらそれを履行していない者であるが、不法行為による損害賠償義務であっても行為時から 20 年の経過により、債権者の知不知にかかわらず消滅し46、不当利得に
よる返還義務であっても発生から 10 年の経過により、債権者の知不知にかかわらず消滅する47ことと比較すると、およそ消滅時効により消滅することのない債務を負担するべき理由はない。」と反対意見を述べている。
2.4.2.これまでの判例及び主な学説
(1)主な判例
受信料債権の消滅時効の起算点について、少なくとも東京高判平成 24・2・29、東京地判平成 25・7・17、東京高判平成 25・12・18 及び東京高判平成 26・4・23 は、受信契約が成立するのは承諾の意思表示を命じる判決の確定の日であるから、その日から受信料債権の消滅時効は起算されるとする。
一方、東京地判平成 25・10・10 は、当該訴訟では消滅時効の援用の主張はないので判断しない、としながらも、(前述のとおり、放送法 64 条1項は、受信料の支払に係る潜在的かつ抽象的な債権債務関係は受信設備設置の時点に成立するとした上で、受信契約の現実の締結によって受信契約関係を具体的に確定し、受信料支払に係る具体的な債権債務関係もまた受信設備設置時点に遡って確定することを前提とした規定と解するのが相当とし、)
「放送受信契約の現実の締結によって、受信機設置の時に遡って受信料支払債務が具体的に確定されても、既に潜在的に進行していた消滅時効の効果を妨げるものではないと解される」と説示している。
(2)主な学説
東京高判平成 24・2・29 について、xx(xx)は、当時、NHKは受信設備設置者の任意の履行に期待して訴訟により未払いの受信料を請求してきていなかったという事実を前提に受信設備設置者は受信契約を締結しているのであるから、当該受信契約には裁判上請求されないという意思が含まれていると解され、したがって、NHKが訴訟により未払い
最高裁判所第三小法廷(xxxx裁判長)は、未納者の上告を棄却(平成 23 年6月2日付け毎日新聞(朝)27 面等)。
46 民法 724 条。
47 民法 167 条1項。
の受信料を請求する(請求しなければならなくなった)ときに受信料債権が発生する48、と解している。
受信料訴訟大法廷判決に対し、独立行政法人国民生活センターは、「契約の成立まで時効が一切進行しないとすると、過去に受信設備を設置したが受信契約をしていない者は、何十年分でもいきなり全額請求されることになる。民法 166 条1項について、権利行使の期待可能性を考慮するとしても、受信設備設置を認識して承諾を求めることができるようになった時点から時効を起算する余地もあるように思われる。」49としている。
民法 166 条1項は、消滅時効は権利を行使することができる時から進行する、と規定する。当該規定は、令和2年4月1日以降、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間(改正後 166 条 1 項 1 号)、又は権利を行使することができる時から 10 年
間(改正後 166 条1項2号)行使しないときに消滅する、と改正される。改正後にあっても、受信契約成立時と受信料債権発生時が異なる場合、権利行使することができる時はxxxという問題は生じる。
xx(壯太)は、受信契約締結の意思表示を命じる判決の確定により契約が成立する場合にあっては、受信料債権の消滅時効の起算点は当該判決の確定時と解され、それ以前(受信設備設置時から受信契約成立時まで)の受信料相当額は不当利得として容認する解釈も成り立ち得るのではないか50、としている。
xxは、裁判例によれば、NHKは受信設備設置時に受信契約締結を請求することができ、受信契約が成立して効力が生じると受信料支払を請求することができるようになり、また、受信契約締結請求と受信料支払請求は併合することができると解されているので、受信料 支払を請求できる権利の消滅時効は受信設備設置時から進行すると解すべき51、としている。
xxは、消滅時効の起算点を受信設備設置時とすることに賛意を表しながらも、民法改正後にあっては、受信設備が設置された時にNHKxxxxxことを知ることができず、権利行使ができる時から 10 年となると倍増する可能性52を指摘している。
xxは、民法 166 条1項(改正後の 166 条1項2号)の権利行使可能性について、権利の性質によっては権利行使の現実の期待可能性を必要とし、受信契約締結義務は不断に存続し、時効は考えられないが、受信料支払義務は、受信設備設置を確認し、受信契約締結の強制を期待しうるようになったときからの起算を認めるべきである53、としている。
48 xxxx「日本放送協会(NHK)の放送受信料債権を巡り、改正前の放送法の下でもケーブルテレビ加入者に受信契約の締結義務があるとされ、同債権について、民法一六九条により五年の短期消滅時効が認められた事例」『判例時報』2163 号(2012 年 12 月1日)168- 169 頁(『判例評論』646 号、22-23 頁)。
49 独立行政法人国民生活センター「NHKとの放送受信契約の成立時期、受信料支払義務の発生時期と消滅時効の起算点」『国民生活』NO. 69(2018 年4月 16 日)35 頁。
50 判例紹介プロジェクト(xxxx)「NBL 判例紹介〔No.29〕115」『エヌ・ビー・エル』No. 1009(2013 年9月 15 日)85 頁。
51 xxxx「放送受信契約の強制的成立」『東海法学』第 49 号(2015 年3月 30 日)176- 177 頁。
52 xxxx「NHK受信料債権の消滅時効期間」『私法判例リマークス』52 号(2016 年2月 25 日)19 頁。
53 前掲注 16・xx、88 頁。
2.4.3.検討
受信料訴訟大法廷判決では、受信料債権の消滅時効は、その契約成立以後に始まるとしており、受信設備設置時と受信契約成立時とが異なる場合、問題となる。これは、先に検討したとおり受信料支払義務の始点を受信設備設置時とするからであり、受信料支払義務は受信契約成立時から生じるとして、初回支払額を受信料設置時から受信契約成立時までの受信料相当額と放送受信規約を改正すれば、受信料債権の消滅時効の起算点を受信契約成立以降としても問題は生じないように思われる。
なお、独立行政法人国民生活センターが懸念している、受信設備設置時から受信契約成立時まで何十年もかかり、初回支払分が高額になるという点は、消滅時効の問題ではなく、受信料の在り方(金額や支払方法等)の問題であり、別の考察に譲ることにする。
3.おわりに
以上、受信契約について契約法の観点からの論点を整理してみた。
改めて受信料制度を考えてみるに、受信料訴訟大法廷判決において説示されているとおり、受信設備設置者は、放送法によるNHKと民間放送事業者の二本立て体制の下で公共放送を担うNHKの財政的基盤を安定的に確保するために受信料を支払うことになる。現在のところテレビジョン放送を受信できる設備で民間放送事業者のテレビジョン放送のみを視聴することはできず、当該設備を設置した者は、必ず受信設備設置者として、NHKと受信契約を締結する義務が生じる。
提供される役務の利用を強制する例として、下水道法(昭和 33 年法律第 79 号)10 条1
項及び同法 11 条の3第1項があるが、テレビジョン放送の受信にあっては、受信設備の設置自体を義務付けているわけではない。あくまで、受信設備設置者に受信契約締結義務を課しているだけであり、受信料制度に納得した者のみが受信設備設置による便益を享受すればよいという趣旨とも考えられる。すなわち、当該便益(NHKの役務提供による便益ではなく、NHKの財政的基盤が確保され、NHKと民間放送事業者の二本立て体制が存続することによる便益を含む。)の対価の支払先がNHKというようにも考えられるのである。
一方、放送法に受信料支払義務違反に対する罰則は規定されておらず、このことより、N HKは、受信料を相当程度収納し続けていくためには、受信契約締結の申込みに当たり、受信料支払への理解を得ていかなければならない。
ところが、受信料は、NHKによるテレビジョン放送の単なる対価ではなく、したがって、 NHKは、その放送の受信によりもたらされる便益だけでなく、その受信如何にかかわらず、その放送を受信することができる環境にある者全体に支えられる事業体であるべきこと、 すなわち、NHKと民間放送事業者の二本立て体制の下で公共放送を担うNHKの存在意 義をも示していく必要があることになるであろう。
しかし、そこには、高度な政策的判断もあるように思われる。例えば、xxxは、「受信料を財源とする放送機関の併存が(略)、視聴者全体の利益に貢献している以上、実際に個々の視聴者がNHKを視聴するか否かにかかわらず、受信設備を設置した者すべてに受信契約義務を課する現在の法制には、合理的な根拠があると思われる。」54「NHKに受信料の
54 前掲注 13・xxx、152 頁。
徴収を認める実質的な理由は、NHKのみが公共放送である点ではなく、むしろ、受信料を財源とするNHKが商業放送と併存する体制が、基本的情報の平等な提供という全体としての放送制度が果たすべき役割を効率的に実現しうる点にある。」55と述べている。また、受信料訴訟大法廷判決でも、「公共放送事業者と民間放送事業者との二本立て体制の下において、前者を担うものとして原告を存立させ、これを民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体たらしめるためその財政的基盤を受信設備設置者に受信料を負担させることにより確保するものとした仕組みは、(略)憲法 21 条の保障する表現の自由の下で国民の知る権利を実質的に充足すべく採用され、その目的にかなう合理的なものであると解されるのであり、かつ、放送をめぐる環境の変化が生じつつあるとしても、なおその合理性が今日までに失われたとする事情も見いだせない」としている。
受信設備設置者が、NHKよりこのような説明を受けても、すべての者がにわかに理解できるようには思われず、加えて、政策的判断の理解までをもNHKの説明に委ねるのということに違和感を覚える者も多いのではないだろうか。
結果的に、xxxがいうように、「公共放送を支える財源として何が最も適切か(最も不適切さの小さいものは何か)が真の論点であり、不適切な制度を消去していった結果、現状の受信料制度が導かれるのであって、最初に何らかの法的性格づけがあり、そこから受信料制度が論結されるわけではない。」56ということなのであろう。
しかし、よりよい制度を検討していくことはこれからも必要であり、最高裁判所の判断が下ったからそれでよしとするのではなく、契約法の観点も含め、そのための議論は今後も続けられていくべきであると思う。
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(掲載決定日:令和2年1月8日/オンライン掲載日:令和2年1月 21 日)