通常の契約は“完備契約: Complete contract”の範疇にあるが、建設契約は“不完備契約:Incomplete contract”と呼ばれ範疇にあり、体系化された専門知識なくして対応できない。
2022年 土木学会 契約管理技術セミナー
倫理・社会規範委員会 建設マネジメント委員会
追加費用と工期延伸請求の実務
請求図書の作成
第8回
2023.04.18.
x x x x
高知工科大学 名誉教授. 東京都市大学
客員教授
Shunji Kusayanagi
11
1
建設契約の特徴“不完備契約”
“完成物品” の取引を対象とした契約
各契約条項が取り扱う事象の確定度が高い。
契約条項は発生する問題に対する“解決方法” を規定するものとなる。 基盤は顕在リスク対応
“想像物品” の取引を対象とした契約
各契約条項が取り扱う事象の確定度が低い。
契約条項は発生する問題に対する“対応方法” を規定するものとなる。 潜在リスク対応が基盤
通常の契約は“完備契約: Complete contract”の範疇にあるが、建設契約は“不完備契約:Incomplete contract”と呼ばれ範疇にあり、体系化された専門知識なくして対応できない。
会計法には“不完備契約”に対する考えがない
2
Shunji Kusayanagi
2
クレーム vs. Claim
①国語辞典
1 商取引で、売買契約条項に違約があった場合、違約した相手に対して損害賠償請求を行うこと。
2 苦情。異議。「―をつける」「―の処理をする」
日本語のクレームは“文句” a complaint と同義
② 英辞典【Claim】
■ A demand for something as one's rightful due ; affirmation of a right.
■ 正当な権利に基づく物事の請求,権利の是認.
■ 日本では追加費用と工期延伸請求に“クレーム”という言葉は使わず、“設計変更”と云う言葉を使ってきた。
■ しかし、最近は“契約変更”という言葉を使う様になってきた。
Shunji Kusayanagi 3
3
契約管理の二つの分析
1. 定性的分析 (契約や法的専門家)
■ 契約条件と異なった事象が発生したか。
■ その事象が追加費用と工期延伸の対象となるか。権利の有無を明らかにするための分析
2. 定量的分析 (技術者)
■ 発生した事象の影響度を明らかにする。
■ 追加費用の大きさと工期延伸の期間は
権利の量を明らかにするための分析。
契約紛争は、コストと時間による代償の受諾
によって終結する
Shunji Kusayanagi
4
4
追加費用と工期延伸請求のプロセスの再考
■ 公共工事標準請負契約約款では、協議期間の基準を14日間と定めている。しかし、2週間程度で、受発注者双方が納得できる交渉結果を得るのは実施的に極めて難しい。
■ 最低条件は、請求者から精緻で、適正で、論理的な追加費用や工期延伸請求図書の提出が成されていること。
■ 契約関連問題の大半は、工事開始後数カ月で顕在化する。請求対象事象の発生が確認されたら、監督員の事実確認を得て、適合契約条項を示し、発注者に請求権を通知する。
■ 請求対象事象ごとに請求図書を作成し、発注者に提出し、協議の開始要求をおこなう。
■ 年度末に一括して協議し解決を図るシステムでは、改定品確法に則した追加費用や工期延伸問題を解決ることは不可能。
対応策は、受注者が迅速に契約担当官宛の追加費用や工期延伸の請求書類を作成し、監督員に提出すること。
Shunji Kusayanagi
5
5
請負者
発注者
中止の対象となる工事内容、工事区域、中止期間の見通し及び工事現場を適正に維持管
討
【基本計画書の作成
】
理するために、最小限必要な 中止の必要あ
管理体制の基本的事項を指示
する。
【発注者の中止指示義務
【】工事を中止すべき場合
り
【増加費用の考え方変更が
】
請負代金・
工期の変更
必要
中止期間
3カ月以
標準積算
受注者協議
中止期間3カ月以上を
超えるなど、標準積
見積積算
【請負代金額
又は工期の変
変更不用更】
たい
発注者積算による追加費用
精算を基本としたシステム
より
契約変更
6
Xxxxxx Xxxxxxxxxx
国交省ガイドラインの工事の一時中止基本フロー
工期変更の請求
工事請負代金・
要因の発見
工事施工不可
要因の発見
工事施工不可
工事完成
工事請負代金・工期変更の検討
工事再開通知
基本計画書の提出
中止の指示・】通知
工事の一時中止を検
工事発注
下
算
が
6
請負者
【基本計画書の作成
】
中止の対象となる工事内容、工事区域
、中止期間の見通し及び工事現場を適正に維持管理するために、最小限必要
な管理体制の基本的事項を指示する。
中止の必要あ
要因の発見
討
【発注者の中止指示義務
【】工事を中止すべき場
り
【増加費用の考え方変更が
】
必要
中止期間
3カ月以
中止期間3カ月以上を
超えるなど、標準積
【請負代金額
又は工期の変
変更不用更】
受発注者協議
より
受注者が提出した工期延伸と追加費用図
書を発注者が査定るシステムへの変更
7
usayanagi
Shunji K
契約変更
工事の一時中止を検
工事施工不可
発注者
本来の工事の一時中止基本フロー
見積積算
標準積算
工期変更の検討
工事請負代金・
工期の変更
請負代金・
工期変更の請求
工事請負代金・
用請求図書の提出
工期延伸と追加費
要因の発見
工事施工不可
工事完成
提出した工期延伸と追加費用請求 図書に基づき協議
工事再開通知
基本計画書の提出
中止の指示・合通】知
工事発注
下
算
がたい
受注者協議
7
追加費用や工期延伸請求図書の作成
記述項目
1. 請求事象に関する概要
2. 請求理由
請求事象の発生過程と影響
請求の根拠となる契約条項
請求に関する通知プロセス
3. 追加費用の算定
「1.請求事象に関する概要」の記述内容が、追加費用と工期延伸請求の成否を決定付ける
4. 工期延長の算定
5. 全ての状況証拠と往復文書の添付
■ 内容は上述の7項目によって構成されていること。
■ 請求図書は1請求項目ごとに完結したものであること。
A工区の遅延 B工区の遅延 C工区の遅延
工事用地確保遅延 + 地下条件の変更 + 他工区との調整
(第16条) (第18条) (第2条)
それぞれ請求基盤条項がことShなunjるi Kuのsayaでnagi合体して請求はできない 8
8
1)請求事象に関する概要記述
追加費用及び工期延伸請求の権利に関する概要記述記述項目
1) どの様な事象が発生したか。
2) 発生事象によってどの様な問題が発生したか。
3) 発生事象によって、契約当事者(発注者・受注者)にどのような契約的権利と義務の変化したか。
4) 契約的権利と義務の変化によって生じた時間とコストの変化量はどの程度であったか。
これらの項目を1,000字(A-4半分)以内記述する。
Shunji Kusayanagi
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追加費用と工期延伸問題の発生事例
■ 山間部の道路橋建設工事の契約が2016年5月1日に成立。
■ 受注者は5月8日から工事着工し、現場事務所、宿舎、骨材製造プラントやコンクリートプラン等の仮設工事を6月30日に完了。
■ 受注者が仮設工事を遂行している間、発注者は森林組合や河川漁業組合等の利権者と協議が進めていたが、交渉が難航し,予定した7月1日からの本工事開始が出来ない状態となった。
■ 発注者は受注者に工事中止指示を出した。
■ 発注者と利権者達との協議は約3カ月間を要し、指定施工方法を大幅に変更することで利権者達と合意に至った。
■ 発注者は工事中止指示の解除と共に、受注者に工法変更指示を出し、工事の開始と共に出来る限り遅延を取り戻すよう求めた。
■ 受注者は工事中止や工法変更による工期延伸請求と、建設機械と設備調達費用、生産性低下に伴う追加費用を請求した。
Shunji Kusayanagi
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1.請求事象に関する概要記述例
全て第3人称で記述
■ 2016年5月1日の工事契約成立後、受注者は発注者に着工通知を行い、5月 8日から工事着工し、現場事務所等の仮建物や各種プランと工事を契約工程通り6月30日に完了した。しかし、発注者と森林組合や河川漁業組合等の利権者との協議未完了のため7月1日からの本工事開始が不可能となった。
■ 事態は契約条項第16条(工事用地の確保等)第1項が遂行されない状況に該当し、発注者は第20条(工事の中止)の第1項に基づき受注者に工事中止指示を出した。工事中止指示は10月31日に解除されたが、指定仮設方法(桟橋)を大幅に変更する指示が出された。
■ 指定施工方法の変更は第18条(条件変更等)第1項5 に該当し、設計図書変更は第19条(設計図書の変更)に従ったものとなる 請求基盤条項を記述
■ 受注者は第22条(受注者の請求による工期の延長) 基づき90日間の工期延伸を請求し、発注者は第23条(発注者の請求による工期の短縮等)に基づき 30日間の工期短縮を指示した。
■ 受注者は工事中止と指定工法変更に伴い発生する工期の変更と追加費用
254,000,000円(含む工期短縮非)を第24条及び第25条に従い請求する。
請求内容の定量記述 発生事象は契約条項と結び付け記述
Shunji Kusayanagi 11
号
。
に
11
工期延伸請求の実務 (事例分析)
検討が必要な契約条項
第16条 工事用地の確保等
工事用地が約定工程表に示された本工事着工までに確保されなかった。
第18条 条件変更等
施工条件の変更が発生した
第19条 設計図書の変更
発注者による指定仮設の桟橋の仕様と図面の変更
第20条 工事の中止発注者から工事中止指示が出された
第22条
発注者の請求による工期短縮等
第23条
工期の変更方法
第21条
受注者の請求による工期の延長
第24条
請負代金額の変更方法等
受注者による工期延
伸および追加費用請求図書作成
請求基盤契約条項構造の分析
Shunji Kusayanagi 12
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2-1.請求事象の発生過程と影響に関する記述
請求事象の生起とプロジェクトへの影響の詳細を述べる
1. 生事象の発生経緯を事実に基づき時系列的記述。
2. 発生事象によるプロジェクト遂行への影響を記述。
3. 発生問題による、受発注者の契約的権利と義務の変化。
4. 契約的権利と義務の変化による時間とコストに変化。
2-2.請求根拠となる契約条項の特定に関する記述
1. コストと時間に多大な影響を与える事象が発生した。
2. 発生事象に関連する各種契約条項を特定し、契約的権利と義務の変化を明らかにする。
3. 発生コストと時間の変化が誰に帰責するかを契約条項に従って明らする。
2-3.請求に関する通知プロセス等の記述
発生事象の請求に関する通知をどの様に行ってきたかその
経緯を証拠書類を明示しなSがhunjiらKu述sayaべnagi る。
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3.追加費用の算定
単なる積算ではなく、追加費用請求計算に関する論拠を明らかにすることが必要。
1. 追加費用の算定論理の明示
2. 追加費用の基盤となる単価の算定論理を明示
3. 追加費用算定の基盤となる労務,機械、資材、経費等の設定とその設定理由を明示
4.工期延長の算定
以下の方法に基づき請求する工期延伸(短縮)に関する論拠を明らかにする
1. 約定工程表を基盤にして、発生事象によりどの様な時間的変化が発生したかを工程表に明示する。
2. CPM論理の基づく時間分析は必須条件 (ソフトウエアーの
活用)
Shunji Kusayanagi
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5.全ての状況証拠と往復文書の添付
請求事象の生起、生起の影響、プロセス(請求に基礎となる通知等)、追加費用算定、工期延長算定に関わる全ての証拠書類、記録を添付。
1. 往復文書
2. 議事録
3. 工程表
4. 図面(修正や更新の記録)
5. 現場写真やビデオ記録
6. 現場の外部環境状況の記録
7. 実際の建設リソース投入と費用支出の記録
8. 労務と建設機械の配置記録
9. 労務と建設機械の稼動とアイドリング記録
10. 超過作業とそれに関わる費用の記録
記録を伴わないS請hunji求Kusはxxxx不agi 可能 15
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1)追加費用や工期延伸請求能力の向上策
■ 追加費用や工期延伸請求は受注者が請求図書作成能
力を向上しなければ解決しない。
■ 発注者側の責務は、提出された請求図書をxxに査定し、請求額の予算管理をすること。
■ 受注者の請求図書作成能力向上の基盤は、をしっかりやること。
ソフトウエアーを使った工程管理
発注者との文書によるコミュニケーション
工事記録保持(歩掛)
積算能力(官積算に合わす積算ではだめ)
Shunji Kusayanagi
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追加費用の算定方法
1) 契約単価(工事内訳書単価)適用法請求金額=契約単価x 工事数量
2) 契約単価修正法
請求金額=契約単価 x 修正係数 x 工事数量、又は請求金額=修正契約単価 x 工事数量
3) エクストラ・コスト法
請求金額=(投入資源数量-計画資源数量) x
資源単価 x (1+経費率)
4) トータル・コスト法(グローバル・請求法)請求金額=請求工事の実費、又は
請求金額=請求工事の実費-契約単価支払額
「建設契約管理の理論と実践(下)」pp223⁻pp230参照
Shunji Kusayanagi
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現場管理費と本社経費
Site office overhead & Home office overhead
国際プロジェクトでの実態(通常は率を適用)
■ 管理及び共通人件費
■ 現場事務所、倉庫、修理工場、共通仮設備、資材置場、宿舎、の建設と管理費
■ 給電、給水、通信設備の建設と管理費
■ 安全、衛生、福利厚生費
■ 一般車両と輸送
+
■ 本社人件費
■ 保険料、保証料
■ 租税公課
■ 金利
■ 利益(注)
■ 発注者が管理可能な事象に関わる請求については、基本的に追加費用は、コストだけでなく、利益も請求対象となる。
■ 国際プロジェクトでは利益率Shuをnji Xxusa約yanag単i 価に特定しておく。 18
本社管理費の構成
現場管理費の構成
18
追加費用の算定方法 基本は一位代価の充実
「一位代価」に示される直接工事費、共通仮設費(仮建物等)、現場経費等は施工計画書と工程表を基に算出するもので、本社経費率と利益率は入札者自身が定める。これらの率はShu追nji K加usa費xxxx用gi 請求にも用いられる。 19
掘削工事の一位代価例
19
追加費用の算定方法
現場経費Sのhun管ji Ku理sayan帳agi 票例
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20
追加費用の算定方法 基本は一位代価の充実
■ 現場経費の管理帳票は工事一時中止等の指示が出されたら迅速に経費を請求できるように毎月管理しておくことが求められる。
■ バブル経済発生以前、建設企業は「一位代価」作りから始め入札金額を算出していた。
■ しかし、施工計画能力を向上させてきた下請企業に託すようになり
、さらに、一般競争入札が導入されると、建設企業の入札時の積算は、当該工事を行うために必要な額を算定するのではなく、発注者側の予定価格を推測するものになって行った。
■ 契約後、受注者は「実行予算」(実施予算ともいう)を作成するが、これも下請企業から提示された単価を基に作成する傾向となっており、「一位代価」から「実行予算」を作ることが希薄になっている。
■ 「技術の空洞化」という問題も勘案し、建設企業はこの実態を真摯に捉え、死活問題である工期延伸と追加費用請求に対応する能力を再構築していくことが求められている。
Shunji Kusayanagi
21
21
追加費用の算定方法 | ||||||||||
1260 | 道路掘削工 | 工事一時中止状態 | 単位 | 数量 | 日単価 | 日費用 | 備考 | |||
1 | 直接工事費 | \ | \ | 一時中止指示:重機は現場に留め、ダンプトラック は運転手と共に他工事に転用し、多能工1名とオペレーター1名を残す | ||||||
1.1. | 労務費 | 重機オペレーター | 人 | 1 | 30,000 | 30,000 | ||||
ダンプ運転手 | 人 | 0 | 28,000 | 0 | ||||||
多能工 | 人 | 1 | 18,000 | 18,000 | ||||||
1.2. | 機械費 | バックホー 1.2m3損料 | 台 | 1 | 13,300 | 13,300 | ||||
油脂・燃料 | 台・日 | 0 | 31,670 | 0 | ||||||
ダンプトラック 15㌧損料 | 台 | 0 | 9,820 | 0 | ||||||
油脂・燃料 | 台・日 | 0 | 16,380 | 0 | ||||||
ブルドーザー 21㌧級損 | 台 | 1 | 16,900 | 16,900 | ||||||
油脂・燃料 | 台・日 | 0 | 29,500 | 0 | ||||||
1.3. | 材料費 | 測量材他 | 式 | 0 | 0 | |||||
2 | 間接工事費 | 共通仮設費等 | 式 | 1 | 94,200 | |||||
3 | 現場経費 | 式 | 1 | 384,333 | ||||||
4 | 本社経費 | (直接工事費+現場経費)×8% | 式 | 1 | 44,539 | |||||
5 | 利益 | (直接工事費+現場経費)×3% | 式 | 1 | 16,702 | |||||
合計 | 617,974 | |||||||||
事例1の追Shun加ji Ku費saya用nagi算出 | ||||||||||
22
22
追加費用の算定方法
新単価 1,354円/㎥÷0.75=1,805円/㎥
事例2のS追hun加ji Ku費saya用nagi 算出
23
23
追加費用の算定事例No.3
事例3の追Shun加ji Ku費saya用nagi算出
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追加費用の算定基盤
■ この3例は追加費用の算出論理を説明するために簡素化したもの
。実際の工事においてはより精緻な計算が必要となる。
■ これまで、契約条件の変更に伴う追加費用は、発注者が自身の「積算基準」を基にした算出した値(官積算値)を示し、受注者と協議するxxxが基本であった。
■ 受注者がしっかりとした「一位代価」を作成し、契約時に発注者と契約的位置付けを確定しておけば、本来の姿である「請求する側が請求書を作り提示する」という形になり、追加費用の算出は論理的、且つ、迅速に行うことが可能となり、契約変更のxx性、透明性が高まる。
■ 本来、受注者は入札時に施工計画書を作成し、これに基づく「工程表」をし、この二つの図書を基に入札金額を積算することが求められている。この原則に従えば、必然的にしっかりした「一位代価」が作成されることになる。
Shunji Kusayanagi
25
【工事資源の変化分析】
工事資源(労務・材料・機械)の変化による工事進捗への
影響量を分析する
工事コストの変化
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システム構築によるマネジメント精度の向上
コスト管理と工程管理及び契約管理の連携
コスト管理
契約管理
相
関
管理
工程管理
Shunji Kusayanagi
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時間・進捗の変化
【工事進捗の変化分析】
工事進捗変化による工事資源
(労務・材料・機械)への影響量を分析する
工事コストの変化
【工事資源の変化分析】
工事資源(労務・材料・機械)の変化による工事進捗への
影響量を分析する
【工事進捗の変化分析】
工事進捗変化による工事資源
(労務・材料・機械)への影響量を分析する
時間・進捗の変化
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Work sequence 造園工事 Free float | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
工事項目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |||||||||||||||||||||
1 | 塀残材片付 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2 | 旧塀撤去 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 植栽工事 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4 | 植栽決定・調達 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5 | テラス工事 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
6 | テラス基礎 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
7 | 計画 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
8 | 設計 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
9 | 池の掘削 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
10 | 庭石据付 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
11 | 池底コンクリート工事 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
12 | 片付 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
備考 | Critical Path | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
CPMスケジュール管理
Shunji Kusayanagi
27
15. クリティカルパスをバーチャート上に表示 #1
P-28
プロジェクトマネジメントソフトウェアー
MSプロジェクトは各アクティビティーに100以上の作業資源(Resources)を組み込むことが可能
Shunji Kusayanagi 28
MicrosoftProject2000Demonstration
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計約変更・設計変更に関連する問題の分析
1)追加費用精算への落札率適用
2)追加費用30%制限と
WTO政府調達協定第15条の限定入札問題
3)設計施工契約の問題点分析
4)技術委員会の決定事項
5)「設計変更ガイドライン」の特記仕様書への組み込み
6)契約に関わる基本原則
Shunji Kusayanagi
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29
1)追加費用精算(請負代金額変更)への“落札率”適用の妥当性分析
■ “落札価格”という言葉は物品の競売やせり売りの論理に基づくもの。建設工事の入札の理論にはそぐわない。入札価格は“提案価格”であり、契約までの経過的な価格でしかない。
■ 建設産業で落札価格と同意語となるのは、発注者と受注者が互いに合意した“契約価格” ということになる。
設計変更や契約条件の変更に伴う追加費用の精算(請負代金額変更)に“落札率” を適用することが通常化している。
■ 第25条は内訳書単価の適用を原則とし、内訳書によることが不適当の場合は変更時の単価を基礎とすると明快に述べている。
■ 追加費用請求等の論争基盤となるのは内訳書の単価(契約図書)であり、予定価格や落札率の適用は契約的論拠はない。
■ 問題は、第3条に定められた内訳書の契約的拘束力。
Shunji Kusayanagi 30
30
1)追加費用精算への落札率適用
■ 公的発注者は、追加費用精算に「落札率」を適用する規定を定めており、この規定が企業の収支に大きく影響を及ぼしている。
■ 落札率の意味
■契約的拘束力あり
契約価格(落札価格)
落札率=
予定価格
発注者側の積算値
契約的拘束力なし
■ “予定価格”は発注者側が算出した予算額(標準値)であり、競争入札の結果よる契約価格(限界値)とは形成論理や精度が異なる。
■ 落札率は、契約価格(限界値)を発注者側の積算値(標準値)で除した値であり、発注者側の予算値の精度を測る指数といった程度の意
味しか持たない。
Shunji Kusayanagi
31
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落札率適用問題の対応策
■ 官積算は契約的拘束力がないから,追加費用精算(請負代金額の変更)に適用することは不可能とは言えない。
■ 第24条では“発注者と受注者とが協議して定め”とあり、受注者が官積算に基づく追加費用額算出方法を受け入れれば,落札率の適用という議論が発生して来る。
■ 受注者が実費算出といった方法で追加費用額を請求した場合は落札率の適用と云った議論は発生してこないことになる。
落札率適用の論理
契約価格÷予定価格= 落札率
問題は契約時と
同条件の適用
受注者の実
施限界値
官積算によ
る標準値
標準値×落札率=実施限界値
官積算による
追加費用額
Shunji Kusayanagi
受注者が実施出
来ると思われる値
32
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追加費用精算への落札率適用の論理性
■ 契約範囲外の仕事が必要となった場合は、「変更契約」、「追加契約」を行うことが必要。
■ この実態からすると「設計変更」や「契約変更」とは、元契約では想定していなかった、または含まれていない事象が発生したことを発注者が認めたということになる。
■ 契約範囲外の工事であることを認める一方で、それを元契約と同条件で行うことを強要するのは契約論理から逸脱した主張であることは明らか。
追加費用精算への落札率適用の論理
■ 商店が、通常は1箱300円のティッシュペーパーを一人3箱までは260円で販売するというキャンペインを行った。3箱買った人がさらに2箱欲しいので、同価格の260円で売れと要求した。
■ 総価一式請負契約における追加費用への落札率適用はこの要求と同じ論理。
Shunji Kusayanagi 33
33
「予定価格」に関する分析 予定価格の機能
会計法第4章契約第29条6項
契約担当官等は,競争に付する場合においては,政令の定めるところにより,契約の目的に応じ,予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする.
予定価格は単なる予算額ではなく“契約限度価格”と同意義.
予算決算及び会計令79条(予定価格の作成).
契約担当官等は,その競争入札に付する事項の価格(第91条第1項の競争にあっては交換しようとするそれぞれの財産の価格の差額とし
,同条第2項の競争にあっては財務大臣の定めるものとする。
以下次条第一項において同じ.)を当該事項に関する仕様書,設計書等によって予定し,その予定価格を記載し,又は記録した書面をその内容が認知できない方法により,開札の際これを開札場所に置かなければならない.
Shunji Kusayanagi 34
34
予定価格の策定と扱い
策定方法は第80条(予定価格の決定方法)の規定.
1.予定価格は,競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし,一定期間継続してする製造,修理,加工,売買,供給,使用等の契約の場合においては,単価についてその予定価格を定めることができる。
2.予定価格は,契約の目的となる物件又は役務について,取引の実例価格,需給の状況,履行の難易,数量の多寡,履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。
■ 予定価格は発注者が自身の基準に従い算出した価格。これを一般に「官積算値」という。
■ 注視すべきは予定価格の契約的位置づけ.公共工事標準請負契約約款の中に予定価格に関し記した条項はない。
■ 契約的には予定価格は何ら拘束力を持たないもの。
Shunji Kusayanagi
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35
国際契約約款FIDICの追加費用精算概念受注者の工事遂行責務の変化
契約条件の変化によって発生した作業遂行に必要
な費用と時間
原契約の範囲
約束した方法と単価で仕事をする義務
国際建設仲裁事例に見られる
原契約の論理
は直接適用することは出来
ない
追加契約の範囲
新たな方法と単価で仕事をする権利
追加費用精算の判断基準
Shunji Kusayanagi
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36
会計検査院の示す「落札率適用」の論理
■ 2009年10月に会計検査院が各公的発注者に『競争入札により契約した前工事に引き続き随意契約もより行う後契約の予定価格の算定について』という意見書を出した。
■ この意見書に以下のような「落札率適用」の論理が記されている。
■ 本来、一つの契約で行うべき工事を二つに分割し、後工事を随意契約で行うというケースが見られる。
■ この場合、一般競争入札で契約した前工事の価格(競争価格
)が、随契契約の後工事にも反映されなければならない。
■ 各公的発注者は自身で定めている落札率の適用を随契契約の後工事の予定価格の算出にも勘案されるべきである。
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会計検査院の示す「落札率適用」の論理
留意すべきこと
■ 会計検査院が落札率の適用を主張しているのは「調達論」に基づくものであり、「契約論」に基づくものではないこと。
■ この意見書を読む限り、会計検査院が落札率の適用が必要であると述べているのは、一つの契約で行うべき工事を二つに分割し、後工事を随意契約で行うという場合の落札率を掛けた官積算を行うべきということ。
■ 同一工事の中で発生する設計変更や追加工事によって発生する費用に対して落札率の適用が必要と言っているわけではない。
2020年10月に会計検査院に確認したことは、会計検査で検査員が追加工事への落札率の適用を問題視する権限はないということ。
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2)追加費用30%制限と
WTO政府調達協定第15条の限定入札問題
■ 発注者が「歩切」を求めることは建設業法に違反する。
「xx値引き要求」も同じ。
独禁法の「優越的地位の濫用規制」に抵触する行為。
「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」参照
■ 発注者が追加費用の支払いを契約金額の30%までとする主張は出来ない。これは国土交通省と財務省との会談で話されたことで、「設計変更ガイドライン」で否定されている。
■ 発注者が、WTO政府調達案件であるから、追加費用は契約額の50%以上は支払わないと主張することはできない。
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(1)追加費用30%制限
■ 改正品確法の基本理念に「請負契約の当事者が対等の立場における合意に基づいてxxな契約を適正な額の請負契約代金で締結」が示されているとともに、「設計図書に適切に施工条件を明示するとともに、必要があると認められたときは適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金又は工期の変更を行うこと」が規定されている。
■ また、変更見込金額が請負代金額の30%を超える場合においても、一体施工の必要性から分離発注できないものについては、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金又は工期の変更を行うこととする。(但し、変更見込金額が請負代金額の30%を超える場合は追加する前に本局報告を行うこと。)
■ この場合において、特に、 指示等で実施が決定し、施工が進められているにも関わらず、変更見込金額が請負代金額の30%を超えたことのみをもって設計変更に応じない、もしくは、設計変更に伴って必要と認められる請負代金の額や工期の変更を行わないことはあってはならない
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(2)WTO政府調達協定第15条の限定入札問題
公共機関発注の道路建設工事に於ける契約紛争事例
■ 土地収用遅延、地域住民や関係機関からの要求、地質条件変更、設計変更等が発生し、受注者側に追加費用が発生した。
■ 受注者は、契約図書に基づき追加費用の請求図書を作成し、最終的に追加費用請求総額が当初の契約金額の65%となった。
■ 発注者は、追加費用請求の妥当性を認めたが、WTO政府調達協定の条項に従い追加費用は当初の契約金額の50%の額まで、これを超えた額は支払いできないと受注者に伝えた。
■ 受注者は契約条件に従った正当な請求であり、50%を越えた追加費用は支払いできないということは納得できないと伝えた。
■ 発注者は当該案件はWTO政府調達協定に従った案件であり、受注者はそれを承知で入札し契約が成立した。従って、当初の契約額の50%を超える追加費用額支払いできないと主張。
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WTO政府調達協定を基にした発注者側の主張
1. 当該プロジェクトはWTO政府調達に関する協定に則した調達によって遂行されるものである。
2. WTO協定の15条に限定入札の手続(随意契約による入札)規定があり、設計変更のよる追加費用は随意契約を結び、支払が成されるため、この条項が適用されることになる。
3. 15条の限定入札の手続では、原契約の50%を超えてはならいとしているので、追加費用の支払いは原契約の50%までであり、これ以上の支払はできない。
■ 発注者の主張は、受注者のどれだけ追加工事を指示しても原契約の50%までしか支払しなくてよいというもの。
■ WTOは160カ国以上が参加している自由貿易促進の国際組織。
■ 考えるべきは、こうした不合理な条件を決定するかということ。
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WTO政府調達協定第15条1項(f)の解釈
アクセス道
路工事契約
周辺道路整
備工事契約
xxxxトン
ネル工事契約
当該ダム
本体工事契約
発電所建設
工事契約
河川護岸
工事契約
元契約の50%以上の額の別発注工事の合体は不可という規定
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河川護岸
工事契約
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なぜ発注者はWTO15条を誤解したのか
■ 我が国の公共工事は総価一式請負契約で行なわれているため、契約条件の変更や追加工事によって生じた追加費用請求額
(Claim amount)を原契約の範囲で処理し支払うことが難しい。
■ 追加費用請求額は“設計変更工事” という形で対処し、随意契約の形で追加契約として支払いがなされることになる。
■ 発注者は、こういった実務実態に従って WTO条項15条を理解し、原契約金額の50%以上の追加費用が発生しても支払が出来ないという論理が形成されたと思われる。
■ 問題は、発注者側にWTO政府調達協定がこの様な片務条件を強要する訳がないとう考えが生まれなかったこと。
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3)設計施工契約の問題点分析
設計は以下の段階を踏んで成される。
実施計画立案:要求サービス内容と水準に適合する実施計画を立案し、計画内容の法令・法規の適合性検証。
第1段階 概念設計(Conceptual Design)
施工目的物の概念と要求性能(事項と水準)を決める
第2段階 基本設計(Basic Design)
要求性能を満足する設計を行い、要求仕様決定を行う。
第3段階 詳細設計(Detail Design)
要求仕様を満足する設計と仕様書の完成。
第4段階 製作設計(Manufacturing Design)
詳細設計・仕様書に基づいた製品制作の設計
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設計・施工契約に関する留意点
国際建設プロジェクト
設計範囲は「概念設計段階」で決まる (リスク集約型)
(Risk intensive type)
第1段階 概念設計
Conceptual design
第2段階 基本設計
Basic design
第3段階 詳細設計
Detail design
第4段階 製作設計 Manufacturing design
国内建設プロジェクト
設計範囲は「詳細設計段階」で決まる (リスク拡大型) (Risk extensive type)
第4段階 施工設計
Manufacturing design
リスク範囲の相違
第3段階 詳細設計
Detail design
第2段階 予備設計
preparatory design
設計業務の切り離し
第1段階 概略設計
Rough design
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設計施工契約の構造
法令・法規
実施計画(要求サービス内容と水準を充足する方策の設定)
概念設計(性能設定)
基本設計(性能設計)
(要求仕様決定)
受注者の責任範囲詳細設計(仕様設計)
製作設計
(要求仕様適合)
施設建設
(施工)
要求仕様と品質確保
維持管理
施設運営
要求サービス水準の確保
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設計・施工一括及び詳細設計付工事発注方式の実態
実施マニュアル 設計・施工一括及び詳細設計付工事発注方式の役割分担図(橋梁)
根幹問題は設計業務構造の曖昧さと契約形態と発注形態の混同
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業務内容 発注方式 | 道路予備設計 | 橋梁予備設計 | 橋梁詳細設計 | 工事製作・施工 | |
路線を決定し、縦断線形、橋梁やトンネル等の主要構造物位置、ルートの中心線を決定する。 | xxx、下部工及び基礎工に付いて比較検討を行い、最適橋梁形式とその基本的諸元を検討する | 計算設計・一般図作成 | 詳細図面 | 詳細設計の照査及び設計結果に基づき、構造物の作成・施工を行う。 | |
構造の設計・構造一般図作成 | 詳細図・施工計画図作成 | ||||
設計・施工分離 | 設計者の業務範囲 製作・施工者の業務範囲 詳細設計付工事はFIDICの「設計施工契約」に相当 設計者の業務範囲 製作・施工者の業務範囲 橋梁形式、橋梁諸元 自社技術提案の製作・施工法に基づく詳細設計 設計者の業務範囲 製作・施工者の業務範囲 設計計算、構造一般図作成 主桁詳細図、キャンバー図、施工計画等作成 設計・施工一括工事は「EPC/ターンキー契約」に相当 設計者の業務範 製作・施工者の業務範囲 位置、活荷重条件 自社技術提案の橋梁形式に基づく詳細設計 | ||||
詳細設計付工事 | |||||
設計・施工一括 |
囲
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参考文献
1)落札率の適用
■ 交渉の出発点としては有り得るが、契約的根拠もないし、その強要は発注者自身の責に帰すべき要因に目を向けない論理.
参考資料 xxxx「追加費用精算への落札率適用に関する考察」
土木学会論文集F4(建設マネジメント), Vol. 70, No. 4, I_127-I_136, 2014
2)総価契約単価合意方式の導入による対応
■ 単価数量精算契約の変形であり、この方式の導入でだけではxxな追加費用と工期延伸請求処理はできない。
参考資料 xxxx「追加費用精算への落札率適用に関する考察」
土木学会論文集F4(建設マネジメント), Vol. 70, No. 4, I_127-I_136, 2014
3)WTO案件の追加費用150%限界論理の適用
■ 契約的根拠なし。WTO条項の解釈ミスで国際的にも適用不可
参考資料 xxxx「WTO政府調達協定対象プロジェクトにおける
追加費用精算方法に関する考察」土木学会論文集F4(建設マネジメント)
, Vol. 70, No. 4, I_137-I_144, 2014
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4)発注者が設置する「委員会」による問題
■ トンネル、ダム等で高度な施工技術を必要とされる工事では契約成立後に発注者が「技術委員会」を設置するケースがある。
■ これらの「技術委員会」は発注者が招聘した当該技術に関する専門家によって構成される。
■ 問題は、ほとんどの専門家が、自身の専門分野の知識と経験を持っているが、契約に関する知識と経験がないこと。
日本の専門家はSpecialist であるが Professionではない。
■ このため、「技術委員会」の具申する意見は契約的観点からの問題分析が欠如し、実践面からすると非生産的なもとなるケースが多くみられる。
■ 更ないる問題は、その意見に契約的位置付けが明確にされないまま工事が遂行されること。
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4)発注者が設置する「委員会」による問題
■ 発注者が「技術委員会」の意見に従い工事を遂行するように受注者に指示した場合、その指示は第19条「設計図書の変更」に基づく「指示」ということになる。
■ 従って、受注者はこの指示に従って工事を遂行する義務を負いうことになり、物理的に不可能でない限りこれを拒否することは出来ない。受注者は第19条「設計図書の変更」に基づく「指示」であることを発注者に伝えておかなければならい。
■ 受注者は、発注者から第19条「設計図書の変更」に基づく「指示
」に従って工事を遂行するわけであるから、追加費用や工期延伸が必要となって場合、受注者は第19条「設計図書の変更」に基づきその請求権を持つことになる。
■ 留意すべき点は、受注者が「技術委員会」のメンバーとして意見の作成に加わった場合は、事前に追加費用や工期延伸の請求権を発注者に通知し、合意を得ておくことが求められる。
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5)設計変更ガイドラインの契約図書への位置づけ
■ 「設計変更ガイドライン」は公的発注機関が自身の職員に課した「行動規範」 。
■ 「設計変更ガイドライン」は契約図書には含まれないので契約的拘束力は持たない。
注;「設計変更ガイドライン」を特記仕様書に含むとしている契約があるので注意。
■ 「設計変更ガイドライン」は契約図書には含まれず契約的拘束力は持たないが、公的発注機関が自身に課した「行動規範」であるので、発注者はこれに基づき公共工事の設計変更・契約変更を行う公的義務を負うことになる。
■ 従って、契約図書に含まれていなくとも、受注者が発注者に対し、公的規範の順守という方向から「設計変更ガイドライン」に記されている内容を遵守すべきであると主張することは可能となる。
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(6)設計変更ガイドラインの契約図書への位置づけ
契約の一事項として扱うこととし、特記仕様書へその旨記載する。運用の徹底を図るため特記仕様書に記載し、契約の一事項として扱うこととした。
変更基準の明確化
「設計変更ガイドライン」、「工事一時中止 ガイドライン」の運用徹底 (特記仕様書に明記 (義務化))
土木工事特記仕様書○○条設計変更等については、契約書第18条から第24条及び土木工事共通仕様書共通編1‐ 1‐1‐13から1‐1‐1‐15に記載しているところであるが、その具体的な考え方や手続きについては、「工事請負契約における設計変更ガイドライン(総合版):平成30年3月」(国土交通省関東地方整備局)によることとする。
5)設計変更ガイドラインの契約図書への位置づけ
2019年9月 P115
■ 留意点:「設計変更ガイドライン」は契約図書ではないということ。
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5)設計変更ガイドラインの契約図書への位置づけ
2019年9月 P115
■ 「設計変更ガイドライン」、その記述内容を見れば分かるように、発注者の職員に向けた指導図書であり、これをそのまま契約図書とすることはできない。
■ 建設業法第18条では、工事契約について「当事者の対等な立場における合意に基いてxxな契約を締結」と定めている。この原則からすると、一方の当事者が自身の職員のために作成した図書をそのまま契約図書に含むことはできない。
■ こうした理由から、特記仕様書には「その具体的な考え方や手続きについては、「工事請負契約における設計変更ガイドライン」によることとする」といった記述とするようにしている。
■ 「設計変更ガイドライン」に記された内容は、契約条件ではないが、発注者と受注者にとって設計・契約変更の基本指針という位置付けになる。
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国土交通省の設計変更ガイドラインの記述
(3)設計変更の現状 2019年9月
~次のような業界からの意見がみられる~
「設計成果」 設計と現場があっていない。現場に即した設計としてほしい。
「発注時の条件整備」 関係機関との協議が整ってから発注してほしい。
「条件明示」 施工上影響がある条件については条件明示をしてほしい。施工条件を明示し、施工条件に変更が生じたら適切な設計変更をしてほしい。
「照査の範囲外」 照査の範囲を超える設計変更の業務に対して対価を支払ってほしい。
「設計変更」 設計変更に伴う増加費用として、一体性のある工事であれば、30%を超える増加費用の変更を認めてほしい。
「一時中止」 工事中止時の増加費用を適切に見込んでほしい。
受注者側が“ほしい”と言っている状態では契約の対等性確保は無理。
2023/4/21
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6)契約図書の解釈に関する基本認識
契約に関する法的教義(legal doctrine)
1.起草者の不利に解釈する法則(Contra Proferentem)
契約条文で曖昧な部分がある場合、その契約書を起草した側に不利になるように解釈する。
2.提供役務相当額の請求 (Quantum Meruit)
提供した役務に見合った報酬を受ける権利。発注者の指示書に従って受注者が工事を遂行した。発注者は工事金額が合意されていないという理由等で支払を拒否することは出来ない。
3.妨害原理 (Prevention Principle)
自分の契約不履行に起因した事象によって契約上の利益を 享受してはならない。用地引渡しや図面発給遅延、追加工事、工事中断等が発生しているにも拘わらず、発注者が工期延長を拒否し、受注者に遅延損害賠償金を課すことは出来ない。
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6)契約図書の解釈に関する基本認識
契約に関する法的教義(legal doctrine)
4.時間無拘束 (Time at Large):
受注者が工期延長の権利を有することが明確であるにも関わらず、発注者が工期延長を行わなかった。
この場合、受注者は妥当な期間内に工事を完成すればよく、また遅延損害賠償金は課されない。
5.禁反言 (Estoppel):
表示事実または約束に反する主張は出来ない。
受発注者間で金額合意が成され、受注者が発注者の変更命令書に基づきで工事を遂行した後、発注者が再査定し工事金額を減額することは出来ない。
Shunji Kusayanagi
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まとめ
契約に従った透明性の高い建設工事遂行を実現するためには何が必要か。
■ 透明性の根幹は変更の可視化。(追加費用と工期の延伸)
■ 追加費用と工期延伸請求は当然の権利の主張。
■ 主たる請求者となる、受注者側の請求技術の向上が不可欠。
■ 受注者は、発注者依存の意識を改めることが必要。
■ 契約管理は、事務系の仕事ではない。
問題発生事象の実態と事実を知っている技術者の仕事。
■ 発注者、受注者、コンサルタントの技術者が同じ場で、
「公共工事標準請負契約約款」を学び、議論する場を作る。
国民(納税者)の信頼を獲得するために、建設技術者は
契約管理の知識・能力を向上させていくことが求められている。
2023/4/21
SHUNJI KUSAYANAGI
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