Contract
[事案 29-350]契約者変更無効請求
・平成 30 年 10 月 9 日 裁定終了
<事案の概要>
契約者と年金受取人が異なる場合は贈与税が課税されるという説明がなかったことを理由に、契約者変更の無効を求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
平成 8 年 4 月に契約した個人年金保険について、平成 11 年 8 月に契約者を配偶者に変更したが、以下の理由により、契約者の変更を無効としてほしい。
(1)本契約は元々、契約者と年金受取人を自分としていたが、契約者を変更した結果、契約者と年金受取人とが異なることとなり、年金受取開始時に贈与税がかかる契約形態になった。
(2)契約者を変更したのは、団体扱いにすることで保険料が割り引かれ、給与引落しになり支払いの手間が省けるという理由で担当者から勧められたためであるが、贈与税については説明されなかった。
<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。
(1)申立人は、契約者の変更をしても贈与税が課税されることはないという錯誤に陥っていたことを理由に、契約者の変更の無効を主張しているものと考えられる。
(2)契約者の変更手続きは、法的には、新旧契約者間(本事案では申立人と申立人配偶者との間)で契約上の地位を譲渡する旨の合意をし、それに当社が承諾を与えるということであるから、申立人が錯誤を主張する相手は、申立人の配偶者となる。
(3)申立人の主張する錯誤は「動機の錯誤」であるため、意思表示を無効とするには、意思表示の相手方(申立人の配偶者)に動機が表示されている必要があるが、現時点でその有無は不明である。
<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会では、当事者から提出された書面にもとづく審理のほか、名義変更時の状況を把握するため、申立人に対して事情聴取を行った。
2.裁定結果
上記手続の結果、保険会社側に説明義務違反があった等の事情は認められないことから、契約者の変更の無効を認めることはできず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。
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