Contract
平成24年3月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成20年(ワ)第36852号 損害賠償請求事件口頭弁論終結日 平成24年2月10日
判 決
新潟xx市<以下略>
x x x x フ レ イ ズ 株 式 会 社同訴訟代理人弁護士 x x x x
x x x
新潟市<以下略>
被 告 Y1
新潟xx市<以下略>
被 告 Y2
新潟xx市<以下略>
被 告 株式会社キッチンプランニング
被告ら訴訟代理人弁護士 | x | x | x | ||
x | x | x | x | ||
x | x | x | |||
x | x | x | x | ||
x | x | x | |||
x | x | x | 一 | ||
角 | 家 | x | x | ||
x | x | x | x | ||
x | x | x | x | ||
主 | 文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主位的請求
被告らは,原告に対し,各自1億1260万円及びこれに対する平成22年
3月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 予備的請求
被告Y1及び被告Y2は,原告に対し,各自1億1260万円及びこれに対する平成22年3月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,xx株式会社から営業譲渡を受けた原告が,(1)主位的に,「xxxx」シリーズ(特許第3504636号の実施品で,「ドゥ!レミパン」,「プレミアム レミ・パン」などの商標を付した商品)の独占的販売権(特許発明の独占的通常実施権,商標の独占的通常使用権を含む。)を取得したにもかかわらず,被告らによりこれを空洞化され,「xxxx」シリーズの販売から完全に排除された(被告らによる共同不法行為又はxx株式会社の代表取締役であった被告Y1〔以下「被告Y1」という。〕及び営業本部課長であった被告 Y2〔以下「被告Y2」という。〕については選択的に債務不履行)と主張して,各自損害合計3億7439万5396円のうち1億1260万円及びこれに対する平成22年3月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)予備的に,上記営業譲渡に当たり,被告Y1及び被告Y2から,xx株式会社の営業権の内容について虚偽の説明を受け,有限会社ドレミファキッチン(以下「ドレミファキッチン」という。)とxx株式会社との間のライセンス契約に基づく独占的ライセンシーの地位や株式会社オダジマ(以下「オダジマ」という。)とxx株式会社との間の独占的仕入契約に基づく地位(「xxxx」シリーズに係る独占的製造,販売権)を承継することができなかった(被告Y1及び被告Y2による共同不法行為又は債務不履
行)と主張して,同被告らに対し,各自損害合計2億7333万9781円のうち1億1260万円及びこれに対する平成22年3月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
ア 原告は,新潟xx市を本店所在地とし,台所用品,日用雑貨品,玩具,家庭用電気製品の販売等を目的として昭和36年7月6日に設立された株式会社(設立当時の商号は「xx金属株式会社」)である。(甲1)
イ xx株式会社は,新潟xx市を本店所在地とし,金属洋食器及び厨房器具の製造,販売等を目的として昭和22年11月15日に設立された株式会社(設立当時の商号は「株式会社xxxx商店」)であり,被告Y1は,同社の代表取締役(平成13年4月2日から平成17年9月1日まで)を務めていた。(甲2,25)
被告Y2は,同社の名古屋営業所長(平成15年12月から平成16年
10月まで)として,名古屋営業所で勤務していたが,平成15年12月から同社営業本部課長を兼務し,平成16年11月から,同社営業本部商品企画セクションに配属された。(甲2,35,乙28)
なお,xx株式会社は,平成19年3月31日,株主総会の決議により解散し,新潟地方裁判所三条支部の命令(平成19年7月19日付け)により,特別清算手続中である。(甲2)
ウ 被告株式会社キッチンプランニング(以下「被告会社」という。)は,平成18年3月7日,家庭用雑貨,業務用調理器具の開発,販売,仲介業務等を目的とし,A(原告代表者),B,被告Y2,C(以下「C」という。),D,E(オダジマの取締役。以下「E」という。)及びFの7名を発起人として設立された株式会社であり,当初,A,被告Y1及び被告 Y2の3名が取締役に選任され,A及び被告Y1が共同代表取締役に就任
したが,平成19年5月25日,Aが取締役を退任してからは,被告Y1が唯一の代表取締役の地位にある。(甲3,乙1,2)
エ(ア) オダジマは,厨房用器物及び家庭用雑貨の製造,販売等を目的として昭和48年8月1日に設立された株式会社(設立当時の商号は「xxxプレス株式会社」)である。(甲4の1)
(イ) 株式会社クッキング・ライフ(以下「クッキング・ライフ」という。)は,厨房用器具の販売等を目的として平成19年4月2日に設立された株式会社であり,Eがその代表取締役を務めている。(甲4の2)
(ウ) 有限会社xxxx事務所(以下「xxxx事務所」という。)は,音楽,演劇,芸能に関する専門的職業人の出演企画,興行計画の受託業務等を目的として昭和60年9月20日に設立された有限会社(平成18年5月1日以降は特例有限会社)であり,ドレミファキッチンは,「歌手,タレント及び物語,漫画等の登場人物の名前を使用し,若しくはその肖像をデザインに使用した衣料品,衣料用繊維製品,装身具,鞄,時計,文房具,フライパン・鍋・スプーン・フォーク等調理用品の企画,制作,販売」等を目的として平成15年11月19日に設立された有限会社(平成18年5月1日以降は特例有限会社)であり,いずれもG’
(通称「G」,以下「G」という。)が代表取締役を務めている。(甲
4の3,4)
(2)ア xxxxxxxxx事務所は,平成13年6月13日,発明の名称を「鍋類の蓋」とする発明について特許出願し,平成15年12月19日,その特許権(特許第3504636号,以下「本件特許権」という。)設定の登録を受けた。(甲5,23,84)
オダジマは,上記発明(以下「本件特許発明」という。)を実施してフライパンを製造し,これが「ドゥ!レミパン」,「プチレミパン」などの商品名を付されて,「xxxx」シリーズ(レミパン)として販売される
ようになった。(甲24,74)
x xxxx事務所は,平成17年3月31日,別紙1商標目録記載1~3の商標(以下「本件商標1」~「本件商標3」という。)について商標登録出願し,同年12月2日(本件商標1),同月9日(本件商標2,3),別紙2商標権目録記載1~3のとおり,その商標権(以下「本件商標権1」
~「本件商標権3」といい,これらを一括して「本件各商標権」という。)設定の登録を受けた。(甲20~22,85~87)
ウ xxxx事務所は,ドレミファキッチンに対し,本件特許権(ただし,xxxx事務所持分について)及び本件各商標権の管理を委託していた。
(弁論の全趣旨)
また,xxxx事務所は,本件商標権2,3については,平成21年8月24日頃,ドレミファキッチンに譲渡し,その旨の移転登録がされた。
(甲86,87)
(3)ア ドレミファキッチンは,平成16年1月1日,xx株式会社との間で,次の内容(要旨を抜粋。なお,表記は一般的な表記法に準拠したほかは,原則として契約書〔甲6〕の記載に従い, 当事者の表示は本判決のものに置き換えた。)の実施契約(以下「a契約」という。)を締結し,ドレミファキッチンが提供するデザイン及びこれに関連する情報を使用し,ドレミファキッチンが許諾する本件商標1を付した調理用器具について,xx株式会社に対し,これを製造,販売する「独占的実施権」を許諾した。(甲
6)
第1条(定義)
本契約における以下の用語は以下の定義に従う。
1 本地域とは,日本国及び今後ドレミファキッチンが承諾するその他の地域をいう。
2 本デザインとは,本契約の下でドレミファキッチンの任意の選択に
よりxx株式会社に提供されることを前提として,ドレミファキッチンが創作する調理器具についてのデザインをいう。(以下省略)
3 本製品とは,ドレミファキッチンが提供する本デザイン及びそれに関連する情報を使用し,以下に定義する許諾商標を付して製造した調理用器具をいう。
4 許諾商標とは別表1に記載された商標(判決注:本件商標1)をいう。
5 契約年とは,平成16年1月1日から同年12月31日までの期間をいう。
6 契約年の当該販売期間は,平成16年1月1日から平成17年4月
30日までとする。
7項 省略
第2条(実施許諾)
1 ドレミファキッチンは,本契約期間中に本地域内で本製品を製造,販売する独占的実施権をxx株式会社に許諾する。
2 ドレミファキッチンは,xx株式会社が本契約に基づく権利をオダジマ及びxx工業株式会社にサブライセンスすることを許可するものとする。なお,xx株式会社がサブライセンス先を変更する場合,又は新規に追加する場合,xx株式会社はドレミファキッチンに対し事前に書面にて通知をし,ドレミファキッチンの許可を得なければならない。
3 xx株式会社は,ドレミファキッチンの事前承認なしに本契約上の権利を第三者に譲渡,貸与をすることができない。
第3条(許諾商標)
ドレミファキッチンは,xx株式会社に対し,xx株式会社が本製品に付加して利用するパッケージ,レッテル,タグ,ラベル及び包装材料
並びにxx株式会社による本製品の販売,業務及び広告について,本件商標1を使用するための非独占的使用権を許諾し,使用方法については事前にドレミファキッチンと協議するものとする。
第7条(ロイヤリティ)
xx株式会社は,ドレミファキッチンに対し,本契約に基づく許諾の対価として,ロイヤリティを支払う。本ロイヤリティは平成16年1月
1日から平成16年12月31日までを1年度とし,以下の要領にてxx株式会社よりドレミファキッチンに支払われるものとする。
(1) ロイヤリティ
xx株式会社はドレミファキッチンに対し,3か月ごとに本製品の各アイテムごと1個に対し,xx価格の6%のロイヤリティに消費税を加算した金員をドレミファキッチンの指定する銀行のドレミファキッチンの口座に支払うものとする。
(2) オーバーロイヤリティ
xx株式会社はドレミファキッチンに対し,本製品の各アイテムごとに純販売個数が2万個を超えた場合は,超過した販売個数に対してのみxx価格の7%及び消費税を加算した金員をドレミファキッチンの指定する銀行のドレミファキッチンの口座に支払うものとする。
(3) 省略
第10条(特許の申請,保護)
1 本製品に関連して生じた特許については,申請者はドレミファキッチン及びxx株式会社の両者併記とし,その出願申請は,xx株式会社が,ドレミファキッチンの承諾を得て本地域内においてなすものとする。また,申請に要した費用は,ドレミファキッチン及びxx株式会社が総費用の半額ずつ負担をする。
2 許諾された特許についての使用は,ドレミファキッチン及びxx株
式会社両者の合意の下に行われる。
3 許諾された特許に対する侵害があった場合には,これを知ったドレミファキッチン又はxx株式会社は,他の当事者に直ちにその詳細を通知し,かつ,これを解決するために必要な積極的手段を考慮し,二当事者の打合せのための会合を持つものとする。上記侵害に対して訴訟を起こすに至った場合には,当事者たる二者は,必要かつ適切な協力をなすものとする。また,上記侵害に対してドレミファキッチン及びxx株式会社が共同で訴訟手続をしたときは,その費用及びその手続の結果による損害賠償金を損害の割合により負担又は取得するものとする。
第12条(期間)
本契約は,本契約の他の条項により期間満了前に終了しない限り,本契約締結日からは平成16年12月31日をもって期間満了により終了する。ただし,本契約期間満了の7か月前までに相手方に対し,書面により契約終了の意思表示をしないときは,契約は自動的に1年間延長されるものとする。ただし,延長に伴い必要と認められる条項は,その都度ドレミファキッチン,xx株式会社協議の上,別途合意書によりこれを定める。
第13条(終了原因)
1 ドレミファキッチン又はxx株式会社が本契約の規定あるいは条項の履行を怠り又本契約の条項に違反し,かつかかる不履行又は違反がドレミファキッチン又はxx株式会社の書面による通知後30日以内に改められない場合,ドレミファキッチン又はxx株式会社は本契約を解除する権利を有するものとする。
2 ドレミファキッチン又はxx株式会社が保全処分,強制執行を受けた場合,公租公課滞納に関する処分を受けた場合,会社更生,和議,
整理,破産宣告の申立てを受け,若しくは,自らこれを申し立てた場合,支払不能,支払停止その他それに類する信用悪化状態の事由が発生した場合,ドレミファキッチン又はxx株式会社は本契約を直ちに解除する権利を有するものとする。
3 ドレミファキッチン又はxx株式会社が相手方の事前の承諾を得ずして合併をし,若しくは営業の全部又は重要な一部の譲渡をした場合,当該相手方は,本契約を直ちに解除する権利を有するものとする。
第14条(契約終了に伴う手続)
1 本契約の終了により,本契約に基づき許諾された実施権は全て消滅するものとし,xx株式会社は直ちに本製品の製造を中止する。xx株式会社は本契約終了後は,ドレミファキッチンより提供された本デザイン,それに関連する情報及びその他一切の資料並びにそれらから作成された全てのコピーを他に流用しないものとする。
2 xx株式会社は,本契約の販売期間終了の日(当該年4月30日)から180日以内にその所有する本製品の在庫品の販売を完了するよう努力するものとする。
3 xx株式会社は,本契約終了後直ちに本件商標1を使用したパッケージ,レッテル,タグ,ラベル,包装材料及び広告等全てのものをドレミファキッチン又はドレミファキッチンの代理人の立会いによりxx株式会社の費用をもって廃棄し,又はドレミファキッチンに引き渡すものとする。ただし,ドレミファキッチンは,前項に規定する在庫品の販売に必要な限度でxx株式会社にそれらの使用を許すことができる。
4 xx株式会社は,本製品の類似商品につき,本製品に使用した全ての許諾商標を使用してはならない。
第15条(諸規定)
1 本契約のいずれの当事者も相手方の事前の書面による承諾なくして本契約又は本契約に規定された個々の権利を第三者に譲渡しないものとする。また,本条に違反してなされた譲渡は,何ら本契約当事者を拘束しないものとする。
2 本契約は本契約当事者間の最終合意をなすものであり,本契約締結前の本契約に関する全ての口頭又は文書による合意に優先する。また,本契約条項は,両当事者の文書による合意によってのみ修正ないし変更され得るものとする。
3,4項 省略
イ xx株式会社は,平成16年1月1日,オダジマとの間において,次の内容(要旨を抜粋。なお,表記は一般的な表記法に準拠したほかは,原則として契約書〔甲7〕の記載に従い, 当事者の表示は本判決のものに置き換えた。)の実施契約(以下「b契約」という。)を締結し,xx株式会社及びドレミファキッチンがオダジマに提供するデザイン及びこれに関連する情報を使用し,本件商標1を付した調理用器具について,オダジマに対し,これを製造,販売する「独占的実施権」を許諾した。(甲7)
第1条(定義)
本契約における以下の用語は以下の定義に従う。
1 本地域とは,日本国及び今後xx株式会社が承諾するその他の地域をいう。
2 本デザインとは,本契約の下でxx株式会社及びドレミファキッチンの任意の選択によりオダジマに提供されることを前提として,xx株式会社及びドレミファキッチンが創作する調理器具についてのデザインをいう。(以下省略)
3 本製品とは,xx株式会社及びドレミファキッチンが提供する本デザイン及びそれに関連する情報を使用し,以下に定義する許諾商標を
付して製造した調理用器具をいう。
4 許諾商標とは別表1に記載された商標(判決注:本件商標1)をいう。
5 契約年とは,平成16年1月1日から同年12月31日までの期間をいう。
6 契約年の当該販売期間は,平成16年1月1日から平成17年4月
30日までとする。
7項 省略
第2条(実施許諾)
1 xx株式会社は,本契約期間中に本地域内で本製品を製造,販売する独占的実施権をオダジマに許諾する。
2 オダジマは,xx株式会社の事前承認なしに本契約上の権利を第三者に譲渡,貸与をすることができない。
第3条(許諾商標)
xx株式会社は,オダジマに対し,オダジマが本製品に付加して利用するパッケージ,レッテル,タグ,ラベル及び包装材料並びにオダジマによる本製品の販売,業務及び広告について,本件商標1を使用するための非独占的使用権を許諾し,使用方法については事前にxx株式会社と協議するものとする。
第7条(ロイヤリティ)
オダジマは,xx株式会社に対し,本契約に基づく許諾の対価として,ロイヤリティを支払う。本ロイヤリティは平成16年1月1日から平成
16年12月31日までを1年度とし,以下の要領にてオダジマよりxx株式会社に支払われるものとする。
(1) ロイヤリティ
オダジマはxx株式会社に対し,3か月ごとに本製品の各アイテム
ごと1個に対し,xx価格の6%のロイヤリティに消費税を加算した金員をxx株式会社の指定する銀行のxx株式会社の口座に支払うものとする。
(2) オーバーロイヤリティ
オダジマはxx株式会社に対し,本製品の各アイテムごとに純販売個数が2万個を超えた場合は,超過した販売個数に対してのみxx価格の7%及び消費税を加算した金員をxx株式会社の指定する銀行のxx株式会社の口座に支払うものとする。
(3) 省略
第10条(特許の申請,保護)
1 本製品に関連して生じた特許については,申請者はxx株式会社,オダジマ及びドレミファキッチンの三者併記とし,その出願申請は,オダジマが,xx株式会社及びドレミファキッチンの承諾を得て本地域内においてなすものとする。また,申請に要した費用は,xx株式会社及びオダジマが総費用の半額ずつ負担をする。
2 許諾された特許についての使用は,xx株式会社,オダジマ及びドレミファキッチンの三者の合意の下に行われる。
3 許諾された特許に対する侵害があった場合には,これを知ったxx株式会社及びドレミファキッチン又はxxxxは,他の当事者に直ちにその詳細を通知し,かつ,これを解決するために必要な積極的手段を考慮し,三当事者の打合せのための会合を持つものとする。上記侵害に対して訴訟を起こすに至った場合には,当事者たる三者は,必要かつ適切な協力をなすものとする。また,上記侵害に対してxx株式会社,ドレミファキッチン及びオダジマが共同で訴訟手続をしたときは,その費用及びその手続の結果による損害賠償金を損害の割合により負担又は取得するものとする。
第12条(期間)
本契約は,本契約の他の条項により期間満了前に終了しない限り,本契約締結日からは平成16年12月31日をもって期間満了により終了する。ただし,本契約期間満了の7か月前までに相手方に対し,書面により契約終了の意思表示をしないときは,契約は自動的に1年間延長されるものとする。ただし,延長に伴い必要と認められる条項は,その都度xx株式会社,オダジマ協議の上,別途合意書によりこれを定める。
第13条(終了原因)
1 xx株式会社又はオダジマが本契約の規定あるいは条項の履行を怠り又本契約の条項に違反し,かつかかる不履行又は違反がxx株式会社又はオダジマの書面による通知後30日以内に改められない場合,xx株式会社又はオダジマは本契約を解除する権利を有するものとする。
2 xx株式会社又はオダジマが保全処分,強制執行を受けた場合,公租公課滞納に関する処分を受けた場合,会社更生,和議,整理,破産宣告の申立てを受け,若しくは,自らこれを申し立てた場合,支払不能,支払停止その他それに類する信用悪化状態の事由が発生した場合,xx株式会社又はオダジマは本契約を直ちに解除する権利を有するものとする。
3 xx株式会社又はオダジマは相手方の事前の承諾を得ずして合併をし,若しくは営業の全部又は重要な一部の譲渡をした場合,当該相手方は,本契約を直ちに解除する権利を有するものとする。
第14条(契約終了に伴う手続)
1 本契約の終了により,本契約に基づき許諾された実施権は全て消滅するものとし,オダジマは直ちに本製品の製造を中止する。xxxxは本契約終了後は,xx株式会社より提供された本デザイン,それに
関連する情報及びその他一切の資料並びにそれらから作成された全てのコピーを他に流用しないものとする。
2 オダジマは,本契約の販売期間終了の日(当該年4月30日)から
180日以内にその所有する本製品の在庫品の販売を完了するよう努力するものとする。
3 オダジマは,本契約終了後直ちに本件商標1を使用したパッケージ,レッテル,タグ,ラベル,包装材料及び広告等全てのものをxx株式会社又はxx株式会社の代理人の立会いによりオダジマの費用をもって廃棄し,又はxx株式会社に引き渡すものとする。ただし,xx株式会社は,前項に規定する在庫品の販売に必要な限度でオダジマにそれらの使用を許すことができる。
4 オダジマは本製品の類似商品につき,本製品に使用した全ての許諾商標を使用してはならない。
第15条(諸規定)
1 本契約のいずれの当事者も相手方の事前の書面による承諾なくして本契約又は本契約に規定された個々の権利を第三者に譲渡しないものとする。また,本条に違反してなされた譲渡は,何ら本契約当事者を拘束しないものとする。
2 本契約は本契約当事者間の最終合意をなすものであり,本契約締結前の本契約に関する全ての口頭又は文書による合意に優先する。また,本契約条項は,両当事者の文書による合意によってのみ修正ないし変更され得るものとする。
3,4項 省略
ウ xxxx事務所又はドレミファキッチン(契約主体がいずれであるかについて,争いがある。)は,xxxxとの間で,平成16年1月1日付けで,次の内容(要旨を抜粋。なお,表記は一般的な表記法に準拠したほか
は,原則として契約書〔乙6〕の記載に従い, 当事者の表示は本判決のものに置き換えた。)の実施契約を締結し(以下,この契約を「乙6契約」という。なお,乙6契約の締結日が平成16年1月1日であるかについて,争いがある。),xxxx事務所又はドレミファキッチンがオダジマに提供するデザイン及びこれに関連する情報を使用し,本件商標1を付した調理用器具を製造販売する「独占的実施権」をオダジマに許諾した。(乙6)第1条(定義)
本契約における以下の用語は以下の定義に従う。
1 本地域とは,日本国及び今後xxxx事務所又はドレミファキッチンが承諾するその他の地域をいう。
2 本デザインとは,本契約の下でxxxx事務所又はドレミファキッチンの任意の選択によりオダジマに提供されることを前提として,xxxx事務所又はドレミファキッチンが創作する調理器具についてのデザインをいう。(以下省略)
3 本製品とは,xxxx事務所又はドレミファキッチンが提供する本デザイン及びそれに関連する情報を使用し,以下に定義する許諾商標を付して製造した調理用器具をいう。
4 許諾商標とは別表1に記載された商標(判決注:本件商標1)をいう。
5 契約年とは,平成16年1月1日から同年12月31日までの期間をいう。
6 契約年の当該販売期間は,平成16年1月1日から平成17年4月
30日までとする。
7項 省略
第2条(実施許諾)
1 xxxx事務所又はドレミファキッチンは,本契約期間中に本地域
内で本製品を製造,販売する独占的実施権をオダジマに許諾する。
2 オダジマは,xxxx事務所又はドレミファキッチンの事前承認なしに本契約上の権利を第三者に譲渡,貸与をすることができない。
第3条(許諾商標)
xxxx事務所又はドレミファキッチンは,オダジマに対し,オダジマが本製品に付加して利用するパッケージ,レッテル,タグ,ラベル及び包装材料並びにオダジマによる本製品の販売,業務及び広告について,本件商標1を使用するための非独占的使用権を許諾し,使用方法については事前にxxxx事務所と協議するものとする。
第7条(ロイヤリティ)
xxxxは,xxxx事務所又はドレミファキッチンに対し,本契約に基づく許諾の対価として,ロイヤリティを支払う。本ロイヤリティは平成16年1月1日から平成16年12月31日までを1年度とし,以下の要領にてオダジマよりxxxx事務所又はドレミファキッチンに支払われるものとする。
(1) ロイヤリティ
オダジマはxxxx事務所又はドレミファキッチンに対し,3か月ごとに本製品の各アイテムごと1個に対し,xx価格の6%のロイヤリティに消費税を加算した金員をxxxx事務所又はドレミファキッチンの指定する銀行のxxxx事務所又はドレミファキッチンの口座に支払うものとする。
(2) オーバーロイヤリティ
オダジマはxxxx事務所又はドレミファキッチンに対し,本製品の各アイテムごとに純販売個数が2万個を超えた場合は,超過した販売個数に対してのみxx価格の7%及び消費税を加算した金員をxxxx事務所又はドレミファキッチンの指定する銀行のxxxx事務所
又はドレミファキッチンの口座に支払うものとする。
(3) 省略
第12条(期間)
本契約は,本契約の他の条項により期間満了前に終了しない限り,本契約締結日からは平成16年12月31日をもって期間満了により終了する。ただし,本契約期間満了の7か月前までに相手方に対し,書面により契約終了の意思表示をしないときは,契約は自動的に1年間延長されるものとする。ただし,延長に伴い必要と認められる条項は,その都度,xxxx事務所又はドレミファキッチン及びオダジマ協議の上,別途合意書によりこれを定める。
第13条(終了原因)
1 xxxx事務所,ドレミファキッチン又はxxxxが本契約の規定あるいは条項の履行を怠り又本契約の条項に違反し,かつかかる不履行又は違反がxxxx事務所,ドレミファキッチン又はオダジマの書面による通知後30日以内に改められない場合,xxxx事務所,ドレミファキッチン又はxxxxは本契約を解除する権利を有するものとする。
2 xxxx事務所,ドレミファキッチン又はオダジマが保全処分,強制執行を受けた場合,公租公課滞納に関する処分を受けた場合,会社更生,和議,整理,破産宣告の申立てを受け,若しくは,自らこれを申し立てた場合,支払不能,支払停止その他それに類する信用悪化状態の事由が発生した場合,xxxx事務所,ドレミファキッチン又はxxxxは本契約を直ちに解除する権利を有するものとする。
3 xxxx事務所,ドレミファキッチン又はxxxxは相手方の事前の承諾を得ずして合併をし,若しくは営業の全部又は重要な一部の譲渡をした場合,当該相手方は,本契約を直ちに解除する権利を有する
ものとする。
第14条(契約終了に伴う手続)
1 本契約の終了により,本契約に基づき許諾された実施権は全て消滅するものとし,オダジマは直ちに本製品の製造を中止する。xxxxは本契約終了後は,xxxx事務所又はドレミファキッチンより提供された本デザイン,それに関連する情報及びその他一切の資料並びにそれらから作成された全てのコピーを他に流用しないものとする。
2 オダジマは,本契約の販売期間終了の日(当該年4月30日)から
180日以内にその所有する本製品の在庫品の販売を完了するよう努力するものとする。
3 オダジマは,本契約終了後直ちに本件商標1を使用したパッケージ,レッテル,タグ,ラベル,包装材料及び広告等全てのものをxxxx事務所若しくはドレミファキッチン又はxxxx事務所若しくはドレミファキッチンの代理人の立会いによりオダジマの費用をもって廃棄し,又はxxxx事務所若しくはドレミファキッチンに引き渡すものとする。ただし,xxxx事務所又はドレミファキッチンは,前項に規定する在庫品の販売に必要な限度でオダジマにそれらの使用を許すことができる。
4 オダジマは本製品の類似商品につき,本製品に使用した全ての許諾商標を使用してはならない。
第15条(諸規定)
1 本契約のいずれの当事者も相手方の事前の書面による承諾なくして本契約又は本契約に規定された個々の権利を第三者に譲渡しないものとする。また,本条に違反してなされた譲渡は,何ら本契約当事者を拘束しないものとする。
2 本契約は本契約当事者間の最終合意をなすものであり,本契約締結
前の本契約に関する全ての口頭又は文書による合意に優先する。また,本契約条項は,両当事者の文書による合意によってのみ修正ないし変更され得るものとする。
3,4項 省略
(4) xx株式会社は,原告との間で,平成17年7月29日付けで,次のとお り(要旨を抜粋。なお,表記は一般的な表記法に準拠したほかは,原則とし て契約書〔甲9〕の記載に従い,当事者の表示は本判決のものに置き換えた。),xx株式会社の営業を原告に譲渡する旨の契約(以下「本件営業譲渡契約」 という。)を締結した。(甲9)
第1条(目的)
xx株式会社(売主)は,平成17年9月2日(以下「譲渡日」という)をもって,xx株式会社の取り扱う卸売り販売に関する営業を原告(買主)に譲渡する(以下「本取引」)。ただし,譲渡日については手続の進行に 応じて必要あるときは売主買主協議のうえ譲渡日を変更することができる。
第2条(譲渡財産)
前条により譲渡すべき財産(以下「譲渡財産」という)は,譲渡日における本営業に関する別紙3の資産及び負債とする。ただし,譲渡財産のうち不動産については原則として承継しないものとする。
第3条(譲渡価額)
xx株式会社及び原告は,本件営業の対価(以下「譲渡価額」という)を3億5000万円とすることに同意する。ただし譲渡日における譲渡金額に大きな変動が生じた場合は,売主買主間で誠意をもって協議することとする。
第4条(支払方法)
1 原告はxx株式会社に対し,譲渡日に譲渡代金3億5000万円を支払い,後日,別途消費税を支払うものとする。
2 本条に基づく原告のxx株式会社に対する支払の方法は,原告及びxx株式会社により,別途合意されるものとする。送金手数料等の送金費用は,原告の負担とする。
第5条(引渡時期)
譲渡財産の引渡時期は譲渡日とする。ただし,法令の制限,手続上の理由により必要あるときは売主買主協議の上,これを変更することができる。
第6条(譲渡の実行条件)
xx株式会社及び原告は,本契約の営業の承継に必要な手続が完了していることを本営業譲渡の条件とする。
第9条(善管注意義務)
xx株式会社は,本契約締結後引渡し完了に至るまで,善良なる管理者の注意義務をもって譲渡財産を管理しなければならない。譲渡財産に重大な影響を及ぼす行為をなす場合,又はそのおそれがある場合は,あらかじめ原告と協議の上,これを行うものとする。
第12条(株主総会の承認)
xx株式会社及び原告は,譲渡日までにそれぞれ株主総会を開催し,本契約につきその承認を求めるものとする。
第13条(効力の発生)
本契約は,前条に定める売主買主双方の株主総会の承認及び法令の定める関係官庁の承認を得られたときに効力を生じる。
(5) xx株式会社とドレミファキッチンは,平成17年8月1日,a契約を同月31日をもって破棄する旨の合意をした。(甲10。以下,この合意を「本件破棄合意」という。)
(6) 原告は,xx株式会社に対し,平成17年9月2日,本件営業譲渡代金3億5000万円(消費税別途)を支払った。(甲61の1)
(7) 被告Y1及び被告Y2は,上記(4)の営業譲渡に伴い,平成17年9月2日,
原告に入社したが,いずれも平成18年2月28日に退社した。
その後,被告Y1は,平成18年4月1日から平成19年3月31日まで,原告の取締役に就任した。
(8) 原告(ただし,原告代表者であるA自身が原告を代表したか,被告Y1が原告を代理したかについて,争いがある。)とxxxxは,平成17年9月
2日付けで,xxxx事務所又はドレミファキッチンとオダジマが契約(判決注:乙6契約)し,製造している商品の販売に関して,次の内容(なお,表記は一般的な表記法に準拠したほかは,原則として甲11の記載に従い,当事者の表示は本判決のものに置き換えた。)の覚書(以下「本件覚書1」という。)を作成した。(甲11)
第1条
本商品のブランド価値を維持するため,原告は,原告の販売先に対し,販売価格はxx価格を遵守するよう指導する。
第2条
本商品に対する顧客及び販売店からのクレーム等は,従来,xx株式会社で行われていた内容に準じて原告は行う。
第3条
オダジマがxxxx事務所に対して支払うロイヤリティの支払の算出基準になる出荷数量は毎月10日までに前月の数量を原告はxxxx事務所に報告する。
第4条
オダジマは,3か月ごとに第3条の原告の出荷数量に応じたロイヤリティに消費税を加算した金額をxxxx事務所に支払う。
第5条
Gの氏名並びに写真及びxxxx事務所が所有する権利等について原告が使用する場合は,原告はオダジマを通じてxxxx事務所の承認をとる。
第6条
仕入れ,返品等についてはオダジマがxx株式会社と取り交わした条件に準じて行う。
第7条
原告は本商品の管理担当者及び責任の所在を明確にし,オダジマに報告するとともに,販売管理,仕入れ及びクレーム等に対応する。
(9)ア ドレミファキッチンは,平成18年7月1日,xxxxとの間で次の内容(要旨を抜粋。なお,表記は一般的な表記法に準拠したほかは,原則として契約書〔甲12の1〕の記載に従い,当事者の表示は本判決のものに置き換えた。)の「商標権使用許諾契約」を締結した。(甲12の1,甲
20~22) 第1条(定義)
本契約における以下の用語は以下の定義に従う。
1 「許諾商標」とは,ドレミファキッチンの所有する以下の登録商標をいう。
(1) 登録第4911700号商標(判決注:本件商標1)
(2) 登録第4914072号商標(判決注:本件商標2)
(3) 登録第4914073号商標(判決注:本件商標3)
2 「本製品」とは,上記「許諾商標」を付した商品であって,かつ,本契約別紙1に特定される商品をいう。
3 「商標の使用」とは,商標法第2条第3項各号及び第4項に定める行為をいう。
4 「許諾地域」とは,日本国内をいう。
5 「契約年」とは,平成18年7月1日から同年12月31日までの期間をいう。
6項 省略
第2条(使用許諾)
1 本契約に従い,ドレミファキッチンは,オダジマに対し,オダジマが契約期間中に許諾地域において本製品について本件商標1~3を使用する独占的通常使用権を許諾する。
2 オダジマは,xxxxxxxxxの事前の書面による許諾を得て,本契約の契約期間内に,契約地域内で,本製品を製造し,販売する権利を有し,また,第三者に再許諾できる。xxxxは,再許諾契約の相手先を変更し,又は内容を変更する場合には,事前にドレミファキッチンの書面による許諾を得なければならない。
3 オダジマは,本製品に付加して利用するパッケージ,レッテル,タグ,ラベル及び包装材料についての本件商標1~3の使用方法について事前にドレミファキッチンと協議し,ドレミファキッチンの許可を得るものとする。
第6条(ロイヤリティ)
xxxxは,ドレミファキッチンに対し,本契約に基づく使用許諾の対価として,ロイヤリティを支払う。本ロイヤリティは平成18年7月
1日から同年12月31日までをその期間とし,以下の要領にてドレミファキッチンの指定する銀行口座にオダジマの締日から1か月以内に振込送金にて支払うものとする。
(1) ロイヤリティ
オダジマはドレミファキッチンに対し,3か月ごとに本製品の各アイテムごと1個に対し,xx価格の6%のロイヤリティに消費税を加算した金員を支払うものとする。
(2) オーバーロイヤリティ
オダジマはドレミファキッチンに対し,本製品の各アイテムごとに純販売個数が2万個を超えた場合,超過した販売個数に対してのみ,
xx価格の7%及び消費税を加算した金員を支払うものとする。
(3) 省略
第11条(期間)
本契約の有効期間は,本契約の他の条項により期間満了前に終了しない限り,本契約締結日から平成18年12月31日までとする。ただし,ドレミファキッチン及びxxxxは,本契約期間満了日の2か月前までに,その相手方に対し,書面により更新拒絶の意思表示をしないときは,本契約は自動的に半年間延長されるものとする。
別紙1
本製品として特定される商品
1 「ドゥ!レミ・パン」
2 「プチ・レミ・パン」
3~9 省略
イ ドレミファキッチンとxxxxは,平成19年7月1日付けで,上記アと同内容の「商標権使用許諾契約」(期間は同日から平成20年6月30日まで)を締結した。(甲12の2)
(10)ア ドレミファキッチンは,平成20年6月30日,オダジマとの間で締結した上記(9)の商標権使用許諾契約を合意解除した上,同年7月1日,クッキング・ライフとの間で,次の内容(要旨を抜粋。なお,表記は一般的な表記法に準拠したほかは,原則として契約書〔甲18〕の記載に従い,当事者の表示は本判決のものに置き換えた。)の契約を締結し,ドレミファキッチンが提供するデザイン及びこれに関連する情報を使用し,ドレミファキッチンが許諾する商標を付した調理用器具について,クッキング・ライフに対し,これを製造,販売する「独占的実施権」を許諾した。(甲1
7,18)
第1条(定義)
本契約における以下の用語は以下の定義に従う。
1 「本デザイン」とは,本契約の下でドレミファキッチンの任意の選択によりクッキング・ライフに提供されることを前提として,ドレミファキッチンが創作する調理器具についてのデザインをいう。(以下省略)
2 「本製品」とは,ドレミファキッチンが提供する本デザイン及びそれに関連する情報を使用し,ドレミファキッチンの所有する許諾商標を付して製造した調理用器具をいう。
3 「商標の使用」とは,商標法第2条第3項各号及び第4項に定められる行為をいう。
4 「許諾地域」とは,日本国内をいう。ただし,ドレミファキッチンが承諾するその他の地域も含まれるものとする。
5 「契約年」とは,平成20年7月1日から平成21年6月30日までの期間をいう。
6項 省略
第2条(実施許諾)
1 ドレミファキッチンは,クッキング・ライフに対し,クッキング・ライフが契約期間中に許諾地域において本製品を製造,販売する独占的実施権をクッキング・ライフに許諾する。
2 クッキング・ライフは,ドレミファキッチンの事前の書面による許諾を得て,本契約の契約期間内に,契約地域内で,本製品を製造し販売する権利を有し,また,第三者に再許諾できる。クッキング・ライフは,再許諾契約の相手先を変更し,又は内容を変更する場合には,事前にドレミファキッチンの書面による許諾を得なければならない。
3 クッキング・ライフは,本製品に付加して利用するパッケージ,レッテル,タグ,ラベル及び包装材料についての許諾商標の使用方法に
ついて事前にドレミファキッチンと協議し,その許可を得るものとする。
第6条(ロイヤリティ)
1 クッキング・ライフは,ドレミファキッチンに対し,本契約に基づく使用許諾の対価として,ロイヤリティを支払う。本ロイヤリティは,平成20年7月1日から平成21年6月30日までをその期間とし,クッキング・ライフの月ごとの純販売個数の報告に基づき,以下の要領にて,ドレミファキッチンの指定する銀行口座にクッキング・ライフの締め日より1か月以内に振込送金にて支払うものとする。
(1) ロイヤリティ
クッキング・ライフは,ドレミファキッチンに対し,3か月ごとに本製品の各アイテムごと1個に対するロイヤリティとして,xx価格の6%に消費税を加算した金員を支払うものとする。
(2) オーバーロイヤリティ
クッキング・ライフは,ドレミファキッチンに対し,本製品の各アイテムごとに純販売個数が2万個を超えた場合,超過した販売個数に対してのみ,xx価格の7%及び消費税を加算した金員を支払うものとする。
(3) 省略
2項 省略
第11条(期間)
本契約の有効期間は,本契約の他の条項により期間満了前に終了しない限り,本契約締結日からは平成21年6月30日までとする。ただし,ドレミファキッチン及びクッキング・ライフは,本契約期間満了の2か月前までに,その相手方に対し,書面により更新拒絶の意思表示をしないときは,本契約は自動的に1年間延長されるものとする。
第12条(終了原因)
1 ドレミファキッチン又はクッキング・ライフが本契約の規定,条項の履行を怠り,又,本契約の条項に違反し,かつ,かかる不履行,違反がドレミファキッチン又はクッキング・ライフの一方の相手方に対する書面による通知到着後30日以内に改められない場合,ドレミファキッチン又はクッキング・ライフは,本契約を解除する権利を有するものとする。
2 ドレミファキッチン又はクッキング・ライフが保全処分,強制執行を受けた場合,公租公課滞納に関する処分を受けた場合,会社更生,和議,整理,破産宣告の申立てを受け,若しくは,自らこれを申し立てた場合,支払不能,支払停止その他それに類する信用悪化状態の事由が発生した場合,ドレミファキッチン又はクッキング・ライフは,本契約を直ちに解除する権利を有するものとする。
3 ドレミファキッチン又はクッキング・ライフが相手方の事前の承諾を得ずして合併をし,若しくは営業の全部又は重要な一部の譲渡をした場合,一方の相手方は,本契約を直ちに解除する権利を有するものとする。
第13条(契約終了に伴う手続)
1 本契約の終了したときは,本契約に基づき許諾されたクッキング・ライフの実施権は全て消滅するものとし,クッキング・ライフは,直ちに本製品の製造を中止する。クッキング・ライフは,本契約終了後は,ドレミファキッチンより提供された本デザイン,それに関連する情報及びその他一切の資料並びにそれらから作成された全てのコピーを他に流用しないものとする。
2 クッキング・ライフは,本契約の販売期間終了の日から6か月以内に,その所有する本製品の在庫品の販売を完了するよう努力するもの
とする。
3 クッキング・ライフは,本契約終了後直ちに,許諾商標を使用したパッケージ,レッテル,タグ,ラベル,包装材料,広告等全てを,ドレミファキッチン又はドレミファキッチンの代理人の立会いにより,クッキング・ライフの費用をもって廃棄し,又は,ドレミファキッチンに引き渡すものとする。ただし,ドレミファキッチンは,前項に規定する在庫品の販売に必要な限度でクッキング・ライフにそれらの使用を許すことができる。
4 クッキング・ライフは,本製品に類似する商品を製造,販売してはならず,かつ,本製品に使用した全ての許諾商標を使用してはならない。
第14条(諸規定)
1 ドレミファキッチン及びクッキング・ライフは,その一方の相手方の事前の書面による承諾なくして本契約又は本契約に規定された個々の権利を第三者に譲渡しないものとする。また,本条に違反してなされた譲渡は,何らドレミファキッチン及びクッキング・ライフを拘束しないものとする。
2 本契約はドレミファキッチン及びクッキング・ライフの最終合意をなすものであり,本契約締結前の本契約に関するドレミファキッチン及びクッキング・ライフの全ての口頭又は文書による合意に優先する。また,本契約条項は,ドレミファキッチン及びクッキング・ライフの文書による合意によってのみ修正,変更され得るものとする。
3,4項 省略
イ クッキング・ライフは,平成20年7月1日,xxxxとの間でサブライセンス契約を締結し,本製品(判決注:ドレミファキッチンがクッキング・ライフに提供することを前提として創作するデザイン及びそれに関連
する情報を使用し,ドレミファキッチンが有する許諾商標を付して製造した調理用器具)を製造,販売する権利をオダジマに再許諾した。(甲19)
(11) 原告は,平成20年11月27日,新潟地方裁判所三条支部に本件訴訟を提起し,同支部は,同年12月4日,本件を当庁に移送する旨の決定をした。
3 争点
(1) xx株式会社は,本件営業譲渡契約締結当時,「xxxx」シリーズに係る独占的製造,販売権を有していたか
(2) 被告らは,「xxxx」シリーズに係る原告の独占的販売権を空洞化したか(主位的請求)
(3) 被告Y1及び被告Y2は,原告がxx株式会社から「xxxx」シリーズに係る独占的製造,販売権の譲渡を受けることを妨げたか(予備的請求)
(4) 原告の損害
(5) 消滅時効の成否
4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(xx株式会社は,本件営業譲渡契約締結当時,「xxxx」シリーズに係る独占的製造,販売権を有していたか)について
ア 原告
xx株式会社は,本件営業譲渡契約締結(平成17年7月29日)当時, a契約,b契約のほか,オダジマとの間で平成16年1月1日付けで締結した独占的仕入契約(b契約に基づいてオダジマが製造する製品をxx株式会社が独占的に仕入れることを定めた契約。以下「c契約」という。なお,c契約に係る契約書が存在しない場合には,c契約はb契約の一部となっている。)に基づき,Gのブランドを使用した「xxxx」シリーズと称されるフライパン(レミパン)について,独占的製造,販売権(本件特許発明の独占的通常実施権,本件各商標の独占的通常使用権)を有していた。
なお,乙6契約は,ドレミファキッチンとxxxxとの間で締結されたものであるが,a契約,b契約とは矛盾する内容であり,a契約,b契約と同時に存在することはあり得ない。すなわち,乙6契約は,被告Y1が原告の代理人として本件営業譲渡後の「xxxx」シリーズの製造,販売についてオダジマと協議した際(平成17年8月1日以降),オダジマの代表者Hに対し,「本件営業譲渡についてドレミファキッチンの事前の承諾が得られなかったためa契約は破棄され,今後は,xxxxがライセンシーになる」などと説明して,乙6契約に係る契約書を示し,これに押印させたものである。また,その契約日を平成16年1月1日に遡らせたのは,後日,「xxxx」シリーズの製造,販売について原告と紛争になった場合に,原告に対し,もともとライセンシーはオダジマであり,xx株式会社は単なる販売会社にすぎなかったと弁明するためであったと思われる。
x 被告Y1及び被告Y2 原告の主張は否認する。
xx株式会社は,平成16年1月1日,a契約に基づき,本件商標1を付した調理用器具(レミパン)について,ドレミファキッチンから独占的実施(製造,販売)権を許諾されたが,同日,オダジマに対し,上記独占的実施(製造,販売)権を再許諾し,ドレミファキッチンに対するロイヤリティもxxxxが負担していた。また,xxxxは,同日,xxxx事務所との間で乙6契約を締結して,「xxxx」シリーズに係る独占的実施(製造,販売)権の許諾を受けていた。したがって,「レミパン」についての独占的実施権を有していたのはオダジマであり,xx株式会社には実質的に独占的実施(製造,販売)権がなかった(原告が主張する「c契約」は存在せず,その趣旨が「b契約」の一部となっていたということもない。)。
なお,a契約に基づく独占的実施権の実質(内実)は,商標権については非独占的通常使用権のみであり(a契約3条),特許権についての実施権はなかったから,xx株式会社は,本件営業譲渡契約締結当時,「xxxx」シリーズ(本件特許発明の実施品)を単独で製造,販売し得る地位にはなかった。本件営業譲渡契約締結当時,xx株式会社が有していたのは,オダジマから「xxxx」シリーズを購入(仕入れ)する第1次卸業者としての地位にすぎず,実施者としての実体を有していなかった。
(2) 争点(2)(被告らは,「xxxx」シリーズに係る原告の独占的販売権を空洞化したか)について
ア 原告
(ア) 原告は,平成17年9月2日以降,本件覚書1に基づき,オダジマから「xxxx」シリーズを独占的に仕入れて,これを独占的に販売してきたが,被告らは,xxxxと共謀の上,「xxxx」シリーズに係る原告の独占的販売権を空洞化しようとして,以下のとおり,種々の画策をし,遂にはドレミファキッチンにも働きかけて,「xxxx」シリーズのライセンシーを平成20年7月1日にオダジマからクッキング・ライフに変更させて,「xxxx」シリーズから原告を完全に排除した。
すなわち,
a 被告Y1は,平成18年4月20日頃,E(オダジマの当時の常務取締役)とともに,テレビ通販の大手xxxxを訪問し,「xxxx」シリーズの新商品(プレミアムレミパン)を原告を通さずに同年7月から先行販売すると約束し,被告会社との取引口座を開設してほしいとの申出をした。
なお,この企ては,xxxxが原告に相談したことから未遂に終わり,xxxxは,原告から「プレミアムレミパン」を仕入れることになったが,原告は,被告Y1らがxxxxに行った約束を盾に取られ,
「プレミアムレミパン」をディノスに同年7月24日から11月末日まで先行販売せざるを得なくなった。
b 本件覚書1に期間の定めや契約解除条項を入れなかったことに気付いた被告Y1,被告Y2及びxxxxは,本件覚書1の骨抜きを図るべく,ドレミファキッチンとの契約をスムーズに進めるためと称して,原告にxxxxとの間で平成18年9月1日付け覚書(甲13。締結日は同年9月12日。以下「本件覚書2」という。)を締結させた。本件覚書2には,原告の独占的販売権についての期間が定められたほか,「xxxx」シリーズの販売に関してはドレミファキッチンの意向を尊重する旨の規定,オダジマがドレミファキッチンから損害賠償請求を受けたら原告がこれを補償する旨の規定が記載されていた。
その上で,被告らは,同日,ドレミファキッチンの意向であるとして,東急ハンズに対し,今後,原告ではなく被告会社から「プレミアムレミパン」を仕入れることになったと原告に連絡させた。
その後,原告の抗議を受けて,xxxxは,東急ハンズへの販売は原告を通して行うなどと約束したが,現在まで実現していない。
c 原告は,上記bの事態に危機感を持ち,xxxxが本件覚書2に押印を求めた際,今後も原告を唯一の販売会社としていくと約束していたことを書面化するため,オダジマに対し,平成18年9月15日,
「オダジマが『xxxx』シリーズを製造している間は原告の同意なしに原告以外の者に販売しない」等と記載した覚書への押印を求め,オダジマは,同月20日(ただし,覚書上の日付は同月5日となっている。),この覚書(甲14。以下「本件覚書3」という。)に押印した。本件覚書3により,原告の独占的販売権を確認したオダジマ及び被告らは,しばらく鳴りを潜めていたが,平成20年1月に原告が
「xxxx」シリーズの販売秩序を乱すことを理由としてカタログ掲
載を中止させたタマハシに対し,被告会社を通して,「xxxx」シリーズの販売を始めた。xxxxは,原告の抗議を受け,原告を通し て販売すると原告に約束したが,この約束もいまだ実現していない。 d オダジマは,平成20年5月14日,同年9月から販売予定の新商品を株式会社ワイ・ヨット(原告の従前の取引先。以下「ワイ・ヨッ ト」という。)の展示会に出品したが,ワイ・ヨット及び被告らは, 原告の取引先に対し,「新商品はワイ・ヨットが先行販売する。原告 は新商品を販売できない。」として,xx・xxxとの取引口座を開
設するよう働きかけた。
原告は,このようなxx・xxx及び被告らの行動について取引先からの抗議が殺到したため,xxxxに対し,xx・xxxの新商品の展示会への出品の説明を求め抗議したところ,xxxxは,新商品も従前どおり原告のルートで販売すると約束した。そのため,原告は,平成20年5月28日,xxxxに対し,上記約束の書面化(確認書)を求めたところ,xxxxはこれに応じた。(甲16)
e 上記確認書によりxxxxが新商品をワイ・ヨットに販売することができなくなったことから,オダジマ及び被告らは,ドレミファキッチンを巻き込んで,
(a) 平成20年6月30日にドレミファキッチンとオダジマは両者間の商標権使用許諾契約を合意で破棄し(甲17),
(b) 同年7月1日付けでドレミファキッチンとクッキング・ライフ(xxxxと法人格が同一と認められる。)は,「xxxx」シリーズの製造,販売の独占権をクッキング・ライフに許諾するとの平成2
0年7月1日付け契約(甲18)を締結し,
(c) クッキング・ライフは,同日付けで,オダジマに「xxxx」シリーズを独占的に製造する権利を許諾した(甲19)。
その上で,クッキング・ライフは,原告に対し,ライセンシーの変更を理由として,現行商品は平成21年6月30日までは販売するが,平成20年9月頃から予定している新商品は販売しないとの方針を示し,平成20年9月以降,原告に新商品を販売せず,かつ,現行商品も発注の約70%程度しか販売しないという態度に出た。
(イ) 被告Y1は,xx株式会社の代表者として,被告Y2は,xx株式会社の営業本部課長として,原告がxx株式会社からxx株式会社が有していた「xxxx」シリーズの独占的販売権の譲渡を受けたことをよく知っている者である。
したがって,被告らがオダジマと共謀してした上記の独占的販売権の空洞化,排除(奪取)は,背信行為であり,債権侵害の不法行為である。 (ウ) 被告Y1はxx株式会社の代表取締役として,被告Y2は同社の営業本部課長として,xxx上,本件営業譲渡契約により,原告が「xxx
x」シリーズを独占的に販売することを妨げてはならない債務を負ったものであるが,被告Y1及び被告Y2は,上記のとおり,この債務の履行を怠った(債務不履行)ものであるから,これにより原告に生じた損害を賠償する責任があるというべきである。
原告は,被告Y1及び被告Y2に対し,選択的に,上記債務不履行による損害賠償を求める。
イ 被告ら
(ア) 原告の主張は否認ないし争う。
(イ) 本件覚書1(甲11)は,原告に独占権を認めたものではなく,そもそも原告は,xx株式会社から独占的販売権の譲渡を受けていないし,ライセンサーであるドレミファキッチンとの間でも,「xxxx」シリーズに関する権利を取得していない。
(ウ) 原告が独占的販売権の空洞化として主張する事実については,次のと
おりである。
a 平成18年5月1日,原告本社2階会議室において,原告から代表取締役を始めとする会社幹部,担当者,E(オダジマ専務),被告会社から被告Y1,C,被告Y2が出席し,新製品のプレミアムレミパンの販売方法,戦略,品質について話合いがされた。その結果,同年
7月からディノス先行販売,同年9月から一般の一斉販売をすることに決定し,Eがドレミファキッチンに確認し,了解も取った。
しかし,原告の担当者は,xxxxに対して「年内ディノスだけの先行販売」という告知を入れることを承諾した。また,同年7月13日にディノステレビショッピングの収録があり,同月24日に放送されたが,その際,ビデオ収録の放映でなくライブで放送する部分で説明をする女性が「年内ディノスだけの販売」という誤った告知をした。以上の経緯から,原告は,年内はディノスだけに先行販売せざるを 得ない状況になったもので,原告が先行販売の義務を負ったのは,原
告のミスによるものである。
b 本件覚書2(甲13)は,Xの意向に従って原告に商品を販売させるため,オダジマと結んだ業務委託契約に基づいて被告会社の被告Y
1が作成し,オダジマに渡したものであるが,原告の独占的販売権を認めたものでも,その期間を定めたものでもない。
また,被告会社がオダジマから仕入れ,東急ハンズに販売するようになった経緯は次のとおりである。
(a) 上記aのとおり,原告は,平成18年中は,ディノス以外にプレミアムレミパンを販売することができなくなった。
(b) 平成18年8月初旬,ドレミファキッチン代表者のGが,東急ハンズの売場で,同従業員に対し,プレミアムレミパンはいつから売場展開するのかと質問したことから,東急ハンズの従業員は,原告
東京店に赴き,プレミアムレミパンの販売を依頼した。
(c) これに対し,原告は,年内はプレミアムレミパンを販売できないという対応をしたが,東急ハンズは,Gに嫌われたくないことから,被告会社に販売を依頼した。
(d) 被告会社は,原告がディノスの問題でプレミアムレミパンを年内は販売することができないことをドレミファキッチンに伝えることもできず,東急ハンズに商品展開することはライセンサーであるドレミファキッチンの代表者G個人の希望でもあることから,ライセンシーであるオダジマの承諾を取った上,平成18年9月以降,オダジマから仕入れ,東急ハンズに販売することになった。
この販売は,飽くまでも原告が平成18年中はディノス以外で販売することができないことに対応した臨時の措置であり,被告Y2は,平成19年1月,東急ハンズに対し,今後,原告でも対応できることを伝えたが,東急ハンズは,かつての原告の対応に腹を立てていたため,原告からの仕入れには応じなかった。
(e) また,その1年後,被告Y2とE(オダジマ専務)が東急ハンズ本部に行き,原告からの仕入れを再度依頼したが,受け入れてもらえなかった。
c タマハシは,自社カタログを利用する卸業者であり,従前は明道株式会社と共同でカタログを利用してレミパンの販売をしていたが,本件営業譲渡後は,原告がタマハシにレミパンを販売していた。
タマハシは,原告代表者から,平成18年中に「オダジマとGがもめてオダジマが契約を切るので,カタログには載せないでほしい」と依頼を受けたことから,その後,自社カタログにレミパンを載せていなかったが(ただし,タマハシは卸業者であるから,自社カタログにレミパンを載せないだけで,原告からレミパンを仕入れて販売するこ
と自体は継続していた。),その後,被告Y1に対し,レミパンを自社カタログに載せることができるか確認を求めたところ,被告Y1は,ドレミファキッチンの承諾を得た旨の回答をした。
すると,タマハシは,仕入先が明道株式会社から原告に代わってから対応が悪くなったと感じていたため,被告会社からレミパンを仕入れることを希望した。
このように,被告会社がタマハシにレミパンの販売をすることになったのは,タマハシの意向によるものである(なお,前記のとおり,原告には「平野レミ」シリーズの独占的販売権がないから,被告会社がレミパンをタマハシに販売したとしても,何ら原告の権利を侵害するものではない。)。
d ワイ・ヨットは,卸業を営む業者であるところ,オダジマが,平成
20年5月14日,ワイ・ヨットの主催する展示会に出品したのは,新商品ではなく,新商品を検討するためのモックアップという木型である。
なお,被告らは,原告が新商品を販売することができないとして,原告の取引先に対し,ワイ・ヨットとの取引口座を開設するように働きかけたことはない。
(3) 争点(3)(被告Y1及び被告Y2は,原告が明道株式会社から「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権の譲渡を受けることを妨げたか)について
ア 原告
(ア) 明道株式会社は,上記(1)アのとおり,「平野レミ」シリーズと称されるフライパン(レミパン)について独占的製造,販売権を有していたにもかかわらず,被告Y1は,原告に対し,a~c契約の存在を秘匿し,
「オダジマがドレミファキッチンから独占的製造,販売の許諾を受けて
おり,明道株式会社は,オダジマから独占的販売の許諾を受けている」などと虚偽の説明をした上,平成17年9月16日,原告を代理して,オダジマとの間において,従前の明道株式会社とオダジマとの取引内容と同一のものであるとして,本件覚書1(甲11)を作成した。
他方,ドレミファキッチンは,平成17年8月1日,a契約について,明道株式会社と破棄合意(本件破棄合意)をし,平成18年7月1日,オダジマとの間で商標権使用許諾契約(甲12の1)を締結して,オダジマに対し,「平野レミ」シリーズの独占的製造,販売権を許諾した。以上の結果,本件営業譲渡契約締結(平成17年7月29日)後,明 道株式会社が有していたライセンシー(独占的実施権者)の立場にオダ
ジマが就くこととなり,原告は,明道株式会社が有していた「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権のうち,独占的販売権のみを取得するにとどまった。
これは,被告Y1及び被告Y2の共謀によるものであり,被告Y1及び被告Y2のかかる行為は,詐欺的な不法行為である。
(イ) 被告Y1は明道株式会社の代表取締役として,被告Y2は同社の営業本部課長として,信義則上,本件営業譲渡契約により,同社が有していた「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権を原告に承継させる債務を負ったものであるが,被告Y1及び被告Y2は,上記のとおり,この債務の履行を怠った(債務不履行)ものであるから,これにより原告に生じた損害を賠償する責任があるというべきである。
原告は,被告Y1及び被告Y2に対しては,上記(ア)の不法行為と選択的に,上記債務不履行による損害賠償を求める。
(ウ) a契約が1回限りの自動更新規定しか有しないとの主張は争う。
仮に,a契約の自動更新が1回に限られるとしても,「平野レミ」シリーズは,平成17年当時,年間13億円以上を売り上げる一番の売れ
筋商品で,ドレミファキッチンに多額のロイヤリティ収入をもたらしていたものであり,ドレミファキッチンが平成17年12月31日をもって契約更新を拒否して,その販売をやめることは考えられない。また,原告が当初からa契約の存在を知っていたら,ドレミファキッチンとの間で当然にその更新をしていたはずである。
被告Y1及び被告Y2が,本件営業譲渡契約締結の際,原告にa契約の存在を秘匿し,原告による契約更新交渉の機会を奪っておきながら, a契約に再更新規定が存在しないことを理由としてa契約の終了を主張するのは,信義則に反するものとして許されない。
イ 被告Y1及び被告Y2
(ア) 原告の主張は否認ないし争う。
(イ) 別紙3のとおり,本件営業譲渡契約の対象財産に「平野レミ」シリーズの独占的実施(製造,販売)権は含まれておらず,「平野レミ」シリーズに係る独占的実施(製造,販売)権は,本件営業譲渡の対象財産となっていない。
本件覚書1(甲11)は,被告Y1が原告を代理して作成したものではなく,原告代表者A自身が作成し,その結果を被告Y1に報告したものであるが,これは,原告代表者において,オダジマが乙6契約により平野レミ事務所から直接に独占的実施(製造,販売)権を与えられていることを認識した上で,原告とオダジマとの間の取引方法を定めた合意文書である。すなわち,原告は,「平野レミ」シリーズに関する独占的実施(製造,販売)権が本件営業譲渡の対象となっていなかったことを認識し,それを前提とした上で,オダジマとの間の取引を開始したものである。
(ウ) ドレミファキッチンは,原告にライセンシーとしての地位を与えることを認めていなかったことから,a契約13条3項の規定に基づき,本
件破棄合意をしたもので,実質的には,ドレミファキッチンによるa契約の解除である。
したがって,仮に本件営業譲渡契約の対象財産に「平野レミ」シリーズに係る独占的実施(製造,販売)権が含まれていたとしても,原告がこれを承継できなかったのは,被告Y1及び被告Y2が妨害したためではない。
(エ) a契約12条によれば,a契約の有効期間は平成16年12月31日までであり,1年間に限り自動更新規定があるものの,「その後も同様とする」という規定がないため,自動更新は1回限りである。
明道株式会社は,平成17年1月1日以降も従前の取引を行っていたから,同年12月31日までの更新はあったと解されるが,その後の更新は存在しないから,平成18年1月1日以降,a契約は何ら効力を有しない。
したがって,原告がa契約の承継を根拠にする主張のうち,平成18年1月1日以降のものは,失当である。
(4) 争点(4)(原告の損害)についてア 原告
(ア) 「平野レミ」シリーズに係る独占的販売権の空洞化(被告らの不法行為又は被告Y1及び被告Y2の債務不履行)による損害(主位的請求に係る損害)
a 東急ハンズ,タマハシへの販売行為による損害
2358万1544円
被告らは,クッキング・ライフと共謀の上,「平野レミ」シリーズ
5895万3862円相当を東急ハンズ(平成18年9月頃から平成
20年7月31日まで)及びタマハシ(平成20年1月頃から同年7月31日まで)に販売することによって,少なくとも2358万15
44円の利益を上げた。
特許法102条2項の規定の準用により,被告らの上記利益は,原告の損害と推定される。
b 平成20年7月1日のライセンシー変更による売上減少に伴う損害
1億5141万3852円
被告らは,クッキング・ライフが新たに「平野レミ」シリーズのライセンシーとなった平成20年7月以降,クッキング・ライフやオダジマと共謀の上,原告に新製品を全く販売しなかったばかりか,現行品の販売も大幅に減らし,かつ,新商品をワイ・ヨット,被告会社に販売したことにより,原告が「平野レミ」シリーズについて有する独占的販売権を侵害した。
その結果,平成20年9月1日から平成21年7月31日までの原告の売上げは3億7701万1381円にとどまり,前年同期(平成
19年9月1日から平成20年7月31日まで)の売上げ(12億5
656万4096円)と比較して,8億7955万2715円の減少となった。
原告の粗利益率は20.512%であるから,上記売上減のうち,1億8041万3852円(=879,552,715 円×0.20512)が原告の損害であるが,原告は,その後,オダジマから,上記損害のうち2900万円の填補を受けたので,原告の損害額は,1億5141万3852円である。
c ワイ・ヨット,被告会社への販売による損害
1億8680万円
被告らは,クッキング・ライフやオダジマと共謀の上,平成20年
8月1日以降,「平野レミ」シリーズに係る新製品を被告会社及びワイ・ヨットに7万3400個売却し,これによって,少なくとも1億
8680万円の利益(製品1個当たり2000円の利益)を上げた。特許法102条2項の規定の準用により,上記利益は,原告の損害
と推定される。
d 弁護士費用 1260万円
原告は,上記a~cの損害合計3億6179万5396円のうち1億円の支払を求めるために,弁護士を選任して本件訴訟を追行しているところ,その弁護士費用のうち1260万円が被告らの不法行為又は被告Y1及び被告Y2の債務不履行と相当因果関係のある損害である。
(イ) 「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権の譲受けを妨げられたこと(被告Y1及び被告Y2の不法行為又は債務不履行)による損害
(予備的請求に係る損害)
a 営業譲渡契約における虚偽説明に基づく損害
6452万8458円
被告Y1及び被告Y2の虚偽説明により,原告は,本件営業譲渡契約を締結し,明道株式会社に対し,営業譲渡代金3億5000万円を明道株式会社に支払ったほか,明道株式会社の営業債務11億961
4万円余を承継した。
上記営業譲渡代金のうち3億6750万円(消費税1750万円を含む。)及びオダジマに対して承継した債務2億7778万4580円の合計6億4528万4580円の1割(6452万8458円)が,原告が取得することができなかった独占的製造権の対価に相当するもので,原告の損害である。
b a~c契約の秘匿と新たな契約関係の構築に基づく損害
1億9621万1323円(主位的主張)
5505万2945円(予備的主張)
原告は,本件覚書1の下で「平野レミ」シリーズを以下のとおり売り上げ,以下の粗利益(平均20.532%)を上げてきた。
期 間 売 上 げ 粗 利 益
H17.9.2~H18.8.31 | 14億0300万4970円 | 2億9617万1725円 |
H18.9.1~H19.8.31 | 16億4903万1266円 | 3億3047万2714円 |
H19.9.1~H20.8.31 | 13億3944万3694円 | 2億7497万8740円 |
合 計 | 43億9147万9930円 | 9億0162万3179円 |
原告が明道株式会社から「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権をそのまま引き継いでいれば,少なくとも25%の粗利益を上げることができたと考えられるから(原告は,オリジナル商品,ライセンス商品について,従来25%~30%の粗利益を上げてきた),原告は,a~c契約の秘匿と新たな契約関係の構築によりライセンシーの地位を奪われたことにより,少なくとも上記売上げの4.468%
(=25%-20.532%)相当の1億9621万1323円(=4
3億9147万9930円×0.04468)の損害を受けた(主位的主張)。
また,原告は,平成17年9月2日以降,オダジマの要求によるプレミアムレミパンの値上げに伴い,5505万2945円を従前価格に上乗せして支払うことを余儀なくされたが,これも,原告が明道株式会社から独占的製造,販売権を承継していれば避けられた値上げであり,原告の損害である(予備的主張)。
c 弁護士費用 1260万円
原告は,上記a,bの損害合計2億6073万9781円のうち1億円の支払を求めるために,弁護士を選任して本件訴訟を追行しているところ,その弁護士費用のうち1260万円が被告Y1及び被告Y
2の不法行為又は債務不履行と相当因果関係のある損害である。
(ウ) まとめ
原告は,主位的に,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求として(被告Y1及び被告Y2に対しては,選択的に債務不履行による損害賠償請求として),連帯して上記(ア)a~cの損害(合計3億6179万
5396円)のうち1億円及び同dの損害(1260万円)の合計1億
1260万円並びにこれに対する平成22年3月9日(原告の平成22年3月5日付け第12準備書面の被告らに対する送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,被告Y1及び被告Y2に対し,不法行為又は債務不履行による損害賠償請求として,連帯して上記(イ)a,bの損害合計2億6073万9781円のうち1億円及び同cの弁護士費用の合計1億1260万円及びこれに対する平成22年3月9日から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払を求める。イ 被告ら
(ア) 原告の主張は否認ないし争う。
(イ) 原告は,本件覚書1により「平野レミ」シリーズに係る独占的販売権を取得したことを自認しているのであるから,明道株式会社が有していた「平野レミ」シリーズに係る独占的販売権を承継できなかったとしても,それによる損害は存在しない。
(5) 争点(5)(消滅時効の成否)についてア 被告ら
原告が明道株式会社から「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権の譲渡を受けることを妨げられたこと(被告Y1及び被告Y2の不法行為)による損害賠償請求権については,原告が損害及び加害者を知った時から3年間を経過しているから,時効により消滅する。
被告Y1及び被告Y2は,本訴において,上記時効を援用する。
イ 原告
原告が「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権の譲渡を受けることを妨げられたことを知ったのは,原告とオダジマとの間で係属した仮処分事件(当庁平成20年(ヨ)第22054号)において,オダジマが平成20年8月29日付けの答弁書で明らかにした時であり,原告は,その後,同年11月27日に本件訴訟を提起しているから,上記不法行為による損害賠償請求権については,いまだ時効が完成していない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(明道株式会社は,本件営業譲渡契約締結当時,「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権を有していたか)について
(1) 原告は,a~c契約に基づき,明道株式会社が「平野レミ」シリーズに係るフライパン(レミパン)について独占的実施権(独占的製造権及び独占的販売権)を有していたと主張するので,以下に検討する。
(2)ア a契約(甲6)は,ドレミファキッチンが明道株式会社に対し,調理用器具を製造,販売する「独占的実施権」(a契約第2条)を許諾することを目的として,ドレミファキッチンと明道株式会社の間で締結されたものである(a契約前文)。
そして,ドレミファキッチンは,a契約の締結により,明道株式会社に対し,a契約の期間(平成16年1月1日~同年12月31日)中,日本国及びドレミファキッチンが承諾するその他の地域内において,「ドレミファキッチンがa契約の下で明道株式会社に提供することを前提として創作するデザイン及びそれに関連する情報を使用し,本件商標1を付して製造した調理用器具」を製造,販売する「独占的実施権」を許諾した(a契約第1条1項,第2条1項)。
このように,a契約において上記「独占的実施権」として許諾されているのは,本件商標1の使用についてであり,明道株式会社は,a契約の締
結によって,本件商標1の付された商品(調理用器具)を製造すること(調理用器具に本件商標1を付すこと)及び当該商品(本件商標1の付された調理用器具)を販売することに係る独占権について許諾を得たものと解するのが相当である。
他方,a契約においては,「本製品に関連して生じた特許」の出願等についての定め(a契約第10条)はあるものの,本件特許発明の実施については何ら言及されていない。したがって,明道株式会社は,少なくとも a契約によっては,本件特許発明の実施に係る許諾を得ていたものとは認められない。
イ b契約(甲7)は,a契約第2条2項の規定に基づき,a契約に基づいて許諾された明道株式会社の権利のサブライセンスとして,明道株式会社がオダジマに対し,調理用器具を製造,販売する独占権を許諾することを目的として,明道株式会社とオダジマとの間で締結されたものである(b契約前文)。
そして,明道株式会社は,b契約の締結により,オダジマに対し,b契約の期間(平成16年1月1日~同年12月31日)中,日本国及びドレミファキッチンが承諾するその他の地域内において,「明道株式会社及びドレミファキッチンがb契約の下でオダジマに提供することを前提として創作するデザイン及びそれに関連する情報を使用し,本件商標1を付して製造した調理用器具」を製造,販売する「独占的実施権」を許諾した(b契約第1条,第2条1項)。
このように,b契約においても,許諾の対象となっているのは本件商標
1の使用についてであり,オダジマは,b契約の締結によって,本件商標
1の付された商品(調理用器具)を製造すること(調理用器具に本件商標
1を付すこと)及び当該商品(本件商標1の付された調理用器具)を販売することに係る独占権の許諾を得たものと解するのが相当である。
なお,b契約においても,a契約と同様,「本製品に関連して生じた特許」の出願等についての定め(b契約第10条)はあるものの,本件特許発明の実施については言及がない。したがって,オダジマは,b契約によって本件特許発明の実施に係る許諾を得たとは認められないが,本件特許権の共有者であるから(甲84),本件特許発明の実施(製造,販売等)をすることができる(特許法73条2項)。
ウ 原告は,明道株式会社とオダジマとの間には,b契約のほか,b契約に基づいてオダジマが製造する製品を明道株式会社が独占的に仕入れる旨の契約(c契約)が存在する旨主張するが,かかる契約の成立を証する契約書が証拠として提出されておらず,その他,本件全証拠を検討しても,c契約の存在を認めることはできない。
また,原告は,c契約に係る契約書が存在しないとしても,その旨の合意(独占的仕入れに係る合意)はb契約に含まれる旨の主張をするが,b契約の契約書(甲7)には,オダジマが本件商標1の付された商品(調理用器具)を明道株式会社に対してのみ独占的に販売することを定めた条項は存在しないから,b契約の中に上記合意(独占的仕入れに係る合意)が含まれると認めることもできない。
(3) b契約において,オダジマが本件商標1の付された調理用器具を製造し,これを販売するに当たり,ドレミファキッチンの提供するデザインに忠実に製造することや,Gの品位,イメージ,名声,名誉等を傷つけるような販売方法を採らないことなどの制約は受けるものの,オダジマが明道株式会社以外の第三者の発注を受けて本件商標1の付された調理用器具を製造することや,上記調理用器具を明道株式会社以外の第三者に販売することを禁止するような規定は存在しない。したがって,オダジマは,b契約に基づき,自らの判断により,本件商標1の付された調理用器具を製造し,これを販売することができることになる。
このように,明道株式会社は,a契約に基づき,本件商標1の付された調理用器具を製造,販売することについて独占権の許諾を得ていたものの,本件特許発明の実施に係る許諾を得ていない以上,本件特許発明の実施品である「平野レミ」シリーズのフライパン(レミパン)を製造することはできないし,また,本件商標1の付された調理用器具を販売すること(なお,本件特許権の共有者であるオダジマが製造したレミパンを仕入れ,これを販売することについては,本件特許権は消尽し,その効力が及ばないから,明道株式会社も適法にこれを行うことができる。)については,オダジマもb契約に基づき同様に販売することができるのであるから,明道株式会社がこれを独占して行うことができるわけではない。
したがって,a契約とb契約を総合して解釈すれば,明道株式会社は,本件営業譲渡契約締結当時,実質的には,オダジマから「平野レミ」シリーズに係る商品を購入(仕入れ)する第1次卸業者としての地位を有していたにすぎないものと認められる。
そして,以上のことは,本件営業譲渡契約の締結に先立ち,監査法人によって行われたデュー・デリジェンスの際にも,「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権の存在が指摘された形跡が窺われないこと,また,明道株式会社と原告との間で取り交わされた本件営業譲渡に関する覚書(甲8)や本件営業譲渡契約書(甲9)に添付された別紙「和平フレイズ株式会社が明道株式会社より譲り受ける資産及び負債」と題する書面(別紙3)のいずれにおいても,上記独占的製造,販売権が営業譲渡の対象財産として掲げられておらず,本件営業譲渡の対価(3億5000万円)を算定する際の前提とされていないことからも裏付けられるというべきである。
(4) 以上検討したところによれば,本件営業譲渡契約締結(平成17年7月2
9日)当時,明道株式会社は「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権を有していたものとは認められない。
2 争点(2)(被告らは,「平野レミ」シリーズに係る原告の独占的販売権を空洞化したか)について
(1) 原告は,本件営業譲渡後,本件覚書1に基づき,オダジマから「平野レミ」シリーズ(レミパン)を独占的に仕入れ,これを独占的に販売してきたと主張する。
(2)ア 本件覚書1(甲11)は,原告とオダジマとの間において,平成17年
9月2日付けで作成されたものであるところ,本件覚書1においては,オダジマが平野レミ事務所との契約に基づき製造している商品のブランド価値を維持するため,原告の販売先に対し,販売価格は上代価格を遵守するよう指導すること(第1条),当該商品に対するクレーム等の処理については,従前,明道株式会社が行っていた内容に準じて原告が行うこと(第
2条,第7条),原告が当該商品の出荷数量を平野レミ事務所に報告し(第
3条),オダジマが当該出荷数量に応じたロイヤリティを平野レミ事務所に支払うこと(第4条),原告がGの氏名,写真等を使用する場合には,別途,平野レミ事務所の承認を得る必要があること(第5条),仕入れ,返品等については,オダジマが明道株式会社と取り交わした条件に準じて行うこと(第6条)などが取り決められているにとどまり,原告が「平野レミ」シリーズに係るフライパン(レミパン)をオダジマから独占的に仕入れることや,これを独占的に販売することを許諾するような文言は存在しない。
これは,平成18年9月1日付けで原告とオダジマとの間で作成された本件覚書2(甲13)についても同様であり,本件覚書2の各条項をみても,原告に対し,「平野レミ」シリーズ(レミパン)を独占的に仕入れ,これを独占的に販売する権限を許諾するような文言は存在しない。
イ なお,平成18年9月5日付けで原告とオダジマとの間で作成された本件覚書3(甲14)には,オダジマがドレミファキッチンとの契約に基づ
き製造する製品について,オダジマが同製品を製造している間は,原告との合意なしに,オダジマが原告以外の者に同製品を販売しないことを約する規定(第1条)が存在する。そして,オダジマは,その当時,ドレミファキッチンから,「平野レミ」シリーズのフライパン(レミパン)に本件商標1~3を付して販売等することについて,独占的通常使用権の許諾を得ていたこと(甲12の1)を併せ考慮すると,原告は,本件覚書3により,オダジマから「平野レミ」シリーズ(レミパン)を独占的に仕入れ,これを独占的に販売する権利を取得したものと解する余地がある。
しかしながら,仮に本件覚書3によって原告が「平野レミ」シリーズに係る独占的販売権を取得したとしても,これは原告とオダジマとの間の合意に基づく債権関係にすぎないから,被告らが同合意に拘束されるいわれはない。
また,上記のとおり,仮に原告に独占的販売権が認められるとしても,それは本件覚書3に由来するものであり,明道株式会社から本件営業譲渡契約により承継したものではないのであるから,被告Y1及び被告Y2において,原告による独占的販売の実現を妨げてはならない旨の義務を負う理由もない。
(3) 原告の主位的請求は,原告が「平野レミ」シリーズの独占的販売権(本件特許発明の独占的通常実施権,本件各商標の独占的通常使用権)を取得したにもかかわらず,被告らの前記第2の4(2)ア(ア)a~eの行為によりこれを空洞化されたとし,これらの行為が被告らの共同不法行為又は被告Y1及び被告Y2については選択的に債務不履行であると主張するものである。しかし,被告Y1及び被告Y2において原告による独占的販売の実現を妨げてはならない旨の義務を負う理由がないことは上記のとおりであるから,債務不履行の主張はその前提を欠き,失当というほかない。また,仮に原告に独占的販売権が認められるとしても,これは原告とオダジマとの間の合意に基づ
く債権関係にすぎないから,被告らが原告と競合して「平野レミ」シリーズに係る製品の販売に関与したとしても,それが自由競争の範囲を逸脱するような特段の事情がない限り,原告に対する関係で不法行為を構成するものではない。そして,本件全証拠を検討しても,被告らについて,原告の主張する上記第2の4(2)ア(ア)a~eに至る「平野レミ」シリーズの取引をめぐり,自由競争の範囲を逸脱するような行為があったと評価し得るような特段の事情は認められない。したがって,原告の不法行為の主張も採用することができない。
以上検討したところによれば,原告の独占的販売権を空洞化させたことを理由とする原告の不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求(主位的請求)は,いずれも理由がない。
3 争点(3)(被告Y1及び被告Y2は,原告が明道株式会社から「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権の譲渡を受けることを妨げたか)について
(1) 原告の予備的請求は,本件営業譲渡に当たり,被告Y1及び被告Y2から,明道株式会社は「平野レミ」シリーズについて独占的製造,販売権を有していたにもかかわらず,a~c契約の存在を秘匿し,「オダジマがドレミファキッチンから独占的製造,販売の許諾を受けており,明道株式会社は,オダジマから独占的販売の許諾を受けている」などと虚偽の説明を受けた,ドレミファキッチンは,平成17年8月1日,a契約について,明道株式会社と破棄合意(本件破棄合意)をし,平成18年7月1日,オダジマとの間で商標権使用許諾契約(甲12の1)を締結して,オダジマに対し,「平野レミ」シリーズの独占的製造,販売権を許諾した結果,本件営業譲渡契約締結(平成17年7月29日)後,明道株式会社が有していたライセンシー(独占的実施権者)の立場にオダジマが就くこととなった,これらは被告Y1及び被告Y2の共謀による詐欺的な不法行為又は債務不履行であるなどと主張するものである。
(2) しかしながら,本件営業譲渡契約締結(平成17年7月29日)当時,明道株式会社は「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権を有していたと認められないことは,上記1(4)に説示したとおりであり,原告の主張は前提において誤りである。また,a契約及びb契約については,本件営業譲渡契約の締結に先立ち監査法人によってデュー・デリジェンスが実施されているのであるから,被告Y1及び被告Y2がこれを秘匿したものと認めることはできないし,c契約の存在が認められないことは前記1(2)ウに説示したとおりである。そして,ほかに被告Y1及び被告Y2が原告主張の虚偽の説明をするなどの詐欺的な行為を働いたとの事実を認めることもできない。
さらに,本件破棄合意についても,証拠(乙27,被告Y1本人)によれば,被告Y1及び被告Y2がa契約に基づく明道株式会社の地位の承継を妨害したものではなく,ドレミファキッチンが原告にライセンシーとしての地位を与えることを許諾しなかったことから,a契約13条3項の規定に基づき,a契約を終了させることになったものと認められるから,これををもって,原告に対する不法行為を構成するものとは認められない。
(3) 上記1(4)に説示したとおり,明道株式会社は「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権を有していたとは認められないのであるから,被告Y1及び被告Y2が上記権利を原告に承継させる債務を負っていたということはできない。したがって,原告の債務不履行の主張も理由がない。
(4) 以上検討したところによれば,被告Y1及び被告Y2が原告が明道株式会社から「平野レミ」シリーズに係る独占的製造,販売権の譲渡を受けることを妨げたことを理由とする原告の不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求(予備的請求)も,いずれも理由がない。
4 結論
以上のとおり,原告の本訴主位的請求及び予備的請求は,その余の点について検討するまでもなく,いずれも理由がないから,これを棄却することとして,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
岡 本 岳
裁判官
鈴 木 和 典
裁判官
坂 本 康 博
別紙1
商 標 目 録
1
2
3
別紙2
商 標 権 目 録
1 | 登録番号 | 第4911700号 |
出願日 | 平成17年3月31日 | |
登録日 | 平成17年12月2日 |
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第21類 なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具
登録商標 別紙1商標目録1のとおり
2 登録番号 第4914072号 出願日 平成17年3月31日登録日 平成17年12月9日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第21類 なべ類
登録商標 別紙1商標目録2のとおり
3 登録番号 第4914073号 出願日 平成17年3月31日登録日 平成17年12月9日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第21類 なべ類
登録商標 別紙1商標目録3のとおり
別紙3<添付省略>