Point
Q5 民法改正(平成29年法律44号)により,建築訴訟にどのような影響が及ぶか
Point
■改正民法は令和2年4月1日から施行され,原則として,施行日前に締結された契約関係には改正前民法が,施行日後に締結された契約関係には改正民法が,それぞれ適用される。⃞1
■民法改正に伴って関連法規も多数改正されているが,建築訴訟に関
連するものとしては,品確法における瑕疵の定義,商法における商事法定利率及び商事消滅時効の廃止を押さえる必要がある。⃞2
■民法改正によって,売買の売主の担保責任( ⃞3 (1)),請負の請負
人の担保責任( ⃞3 (2)ア),請負人及び受任者の報酬請求権( ⃞3 (2)イ・(3)),消滅時効の起算点及び時効期間( ⃞3 (4)(5))について改正前と異なる規律がされている。
Answer
⃞1 民法改正の概要と改正民法の適用関係(経過措置)
(1) 民法改正の概要
今般,民法のうち第3編債権及び第1編総則のうち意思表示や消滅時効等に関わる諸規定が改正され(平成29年法律44号),一部の例外(1)を除いて令和2年(2020年)4月1日から施行されることになった。
改正された条の総数は,単純な条番号のみの変更や形式的な用語の変更にとどまるものを含めて257か条であり,新設された条の数は85か条である(2)(合計342か条)。今回の改正の目的は,民法制定以後の
我が国の社会・経済の変化に対応を図り,また,裁判実務において蓄積された判例や確立した学説上の考え方など実務で通用している基本的なルールを明文化して国民一般にとっての分かりやすさを向上させることにあるとされている(3)。
(2) 経過措置の考え方(4)
原則として,法令の適用の結果に関する当事者の予測を保護するものとして,その予測が形成される一定の事象(契約の締結等)が施行日前に生じたときには改正民法を適用しない。つまり,施行日前に締結された契約や施行日前に生じた債権債務には改正前民法が適用される。例外的に取引等の当事者の予測を害するものではなく,法律関係の明確化の必要性が高い等政策的な理由があるものについては,改正民法の規定を適用する。
このような原則例外の考え方に従って平成29年法律44号附則(以下
「附則」という。)2条ないし36条は個別に経過措置を定めている。このうち消滅時効に関する経過措置について若干の説明をしておく。
(3) 消滅時効に関する経過措置
ア 債権の消滅時効の期間に係る規定は,当該債権が発生した時点(5)に着目し,改正民法の施行日前に発生した債権には改正前民法を適用し,施行日以後に発生した債権には改正民法を適用する(附則10
④)。
改正民法の施行日前に当該債権が発生した場合は,施行日後に時効の援用をするときにも改正前民法を適用する(附則10①)。
イ 時効の中断・停止(更新・完成猶予)の事由の効力に係る規定は,中断・停止等の事由が発生した時点に着目し,改正民法の施行前にこれらの事由が発生した場合は改正前民法を適用し,施行日以後に発生した場合は改正民法を適用する(附則10②③)。
(4) 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効に関する経過措置ア 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は後記 ⃞3 (5)の
とおり改正された。20年の長期消滅時効期間について,施行日に改正
前民法下の除斥期間が経過していなければ改正民法が適用される(附則35①)(6)。
イ 人の生命・身体の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間(民724の2)は,施行日において消滅時効が完成していた場合でなければ改正民法が適用される(附則35②)。
⃞2 民法改正に伴う関連法規の改正
民法の改正に当たり,民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律45号。以下「整備法」という。)が制定され,改正民法と同日に施行された。整備法によって整備の対象とされた法律は合計221本である(7)。建築訴訟との関係では,そのうち住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)と商法の規定の改正に注意する必要がある。
(1) 品確法
品確法94条ないし97条は,住宅の新築工事に係る請負契約及び新築住宅の売買契約において,住宅のうち構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分として政令上定めるものに「瑕疵」がある場合に,請負人及び売主が負う担保責任の期間の特則を定めているところ,民法改正に伴い,「瑕疵」を「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態」をいうものと定義した(品確2⑤)。他方で,担保責任期間を10年とし,これに反する注文者又は買主に不利な特約を無効とする旨の定めに変更はない。
なお,品確法のほかにも建設業法19条1項12号も「瑕疵」を契約不適合に改めている。
(2) 商 法
民法改正により法定利率及び消滅時効の規定が整理されたことに伴い,商事法定利率(改正前商514)及び商事消滅時効(改正前商522)が廃止された。
⃞3 建築訴訟に影響を及ぼす可能性のある民法の改正部分
建築訴訟の主な類型は,①建物の設計監理契約及び建築請負契約に係る紛争,②建物の売買契約に係る紛争,③建物の工事や使用等によって生じる不法行為に係る紛争である。①,②の類型で問題となる請負,準委任(8)及び売買の各規定はいずれも改正されている。他方で,
③の類型で問題となる不法行為の規定は直接的には改正されていない。ただし,法定利率(9)の規定や消滅時効の規定が改正の対象とされているため,その審理に当たっては改正民法の検討は避けられない。改正の影響の詳細は,後に該当の設問で取り上げるので,ここでは概要のみを説明する。
(1) 売買契約
ア 売主の契約不適合責任
改正前民法570条の瑕疵担保責任の規定が改正され,買主は,引き渡された目的物が,種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しない(契約不適合)場合,売主に対し,①損害賠償(民564・415),②契約解除(民564・541・542)に加え,③履行の追完(民562①本文)及び④代金の減額(民563)を請求できるものとされた。改正前民法の瑕疵担保責任の法的性質をめぐっては諸説が対立していたが,改正民法は,売主の契約不適合責任の性質を債務不履行責任と位置付けている。そのため,改正前民法とは要件を異にする(詳細はQ16参照)。
3 売買瑕疵
Q14 建物売買契約における「隠れた瑕疵」とは何か。民法改正の影響はあるか
Point
■「瑕疵」とは,売買目的物である建物が,契約上予定されていた品質・性能を欠くことを意味する(主観的瑕疵概念)。⃞1
■改正民法では「瑕疵」に代えて,「契約の内容に適合しない」との文言が用いられるが,その意義は改正の前後で変わらない。⃞2
■改正により「隠れた」との要件は削除され,買主の瑕疵に関する主観面は契約適合性判断における考慮要素として取り込まれる。⃞2
Answer
⃞1 改正前民法
(1) 瑕疵の意義
売買目的物である建物(以下,単に「目的物」という。)に隠れた瑕疵がある場合,買主は,改正前民法570条,566条により,売主に対し瑕疵担保責任を追及することができる。ここでいう瑕疵とは,目的物に何らかの欠陥があることをいい,何が欠陥に当たるかは,当事者の合意内容,すなわち,契約上予定されていた目的物の品質・性能に基づき定まるとするのが判例・通説である(主観的瑕疵概念)(1)。なお,ここで問題となる目的物の欠陥には,目的物の物理的性状に起因するものに限らず,それ以外の外部的事情(法律上の制限や,建物周辺の環境,建物の来歴等)に起因するいわゆる法律上の瑕疵,環境瑕疵,心理的瑕疵も含むとするのが実務のすう勢である(2)。
(2) 瑕疵の判断枠組み
売買瑕疵担保責任における瑕疵とは,現実に存在する目的物の有する品質・性能が,契約上予定されていた目的物の品質・性能に満たないことを意味する。契約上予定されていた目的物の品質・性能は,①目的物がその種類のものとして通常有すべき品質・性能,又は,②当事者が特に合意した目的物の品質・性能を踏まえて判断される(3)(主張立証上の留意点等についてはQ15参照)。
(3) 「隠れた」の意義
「隠れた」瑕疵とは,当該瑕疵が,取引上要求される一般的な注意では発見できないものであることを意味し,買主は瑕疵について善意無過失であることが要求される(訴訟上は,売主が買主の悪意又は有過失の立証責任を負う。)(4)。
(4) 「隠れた瑕疵」の判断基準時
瑕疵の存在及びこれに対する買主の認識は,いずれも売買契約締結時が判断基準時となり(5),契約後に目的物に損傷等が生じた場合は,瑕疵担保責任ではなく,売主の保管義務違反(改正xx400)又は危険負担(改正xx534①)の問題になる。
⃞2 民法改正の影響
(1) 瑕疵から契約不適合へ
改正前民法は,売主の担保責任をいくつかの類型に分け,その要件・効果を各別に定めていたが,改正民法は,これらを一元化し,「引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことを売主の債務不履行(不完全履行)の要件として定めた(民562①)。
「契約の内容に適合しない」との文言は,改正前民法における「瑕疵」と同一の意味内容を持つものとして用いられており,従前の解釈運用に変更を生じさせるものではない(6)。
上記改正に伴い,売主の責任に関係する他の法令についても所要の改正が行われた。すなわち,「瑕疵」との文言を用いていた商法526条や宅地建物取引業法35条,37条,40条においても同様の改正が行われたほか,消費者契約法8条1項では,債務不履行責任(同項1号,2号)と担保責任(同項5号)とで規定が分かれていたところ,同項5号が削除された。また,新築住宅の売主の責任に関する特則を定めた品確法 95条1項では,「隠れた瑕疵」が「瑕疵」に変更された上,品確法2条5項が追加され,「瑕疵」が「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態」を意味することが明記された。
(2) 「隠れた」要件の削除
改正前民法では,買主の瑕疵に対する認識又は認識可能性(悪意又は有過失)に関する事情を「隠れた」要件において考慮することで,一定の場合に,売主の瑕疵担保責任を否定するという構造になっていたところ,改正民法においては,買主の目的物の品質・性能に対する認識又は認識可能性に関する事情は,契約上予定された目的物の品質・性能を判断する際の考慮要素に位置付けられることとなり,その結果,「隠れた」要件は削除されるに至った(7)。従前「隠れた」要件の中で考慮されてきた事情が契約適合性の判断に取り込まれることで,具体的事案における判断にいかなる影響が生じるかは明らかでなく,今後の議論及び裁判例の蓄積が待たれるところである。
(3) 契約不適合の判断基準時
改正前民法と異なり,目的物の契約適合性は,危険移転時である引渡時(民567①)を基準に判断するものと解され,契約後引渡時までに発生した瑕疵についても債務不履行(不完全履行)責任の対象になると解される(8)。
コラム | 買主の売買目的物の不具合に対する認識又は認識可能性と改正民法における契約適合性の判断との関係 |
買主の売買目的物の不具合に対する認識又は認識可能性に関する事情は,契約上予定された目的物の品質・性能を判断する際にどのように考慮されることになるか。 まず,買主が目的物の不具合につき悪意であった場合について考えてみると,このような事実は,通常,当該不具合を含めて契約上予定された目的物の品質・性能が定められたことを強く推認させる事実として位置付けることが可能であるから,かかる推認を覆すに足りる事情がない限り,現実の目的物と契約上予定された目的物の品質・性能に不一致はなく,契約不適合は認められないことになると思われる。そうだとすれば,買主の悪意は,売主の責任を否定する方向に働くという意味では,改正前後で変わらない意義を有するといえよう。 有過失についてはどうか。目的物の不具合について買主の過失が問題となる場面は,当事者の認識していなかった不具合が顕在化した場合のリスク分配に関わる合意内容が問題になる場面といえる。例えば,当該不具合について「存在しない」という前提で契約が締結されたと評価できる場合(例:売主による品質保証がされている場合。例:新築建物売買における雨漏り)には,仮に買主において当該不具合の存在を認識し得たと評価できる事情がある場合でも,契約適合性は否定されることがあり得るように思われる(ただし,損害賠償請求の場合にはさらに過失相殺の可否が問題になり得る。)。また,事案によっては,何らかの不具合が「存在する可能性がある」との前提で契約が締結されたと評価できる場合もあると考 えられ(例:中古建物の売買),この場合には,さらに,当該不具合 |
の存在可能性に関するリスクを誰がどのように負担することが予定
されていたのか(買主においていかなる調査・検査義務を負うことが予定されていたのか)を探求し,契約適合性を判断することになるのではないかと思われる。改正前民法の「隠れた」要件の検討においても買主の調査・検査義務の有無・内容が問題にされてきたところ,以上述べたところを踏まえると,民法改正後も,実質的な検討の枠組みは変わらないと考えることができるのではなかろうか。
(1) 最三小判平22・6・1民集64・4・953,法曹会編『最高裁判所判例解説民事篇平成22年度(上)』341頁〔xxxx〕(法曹会,2014)
(2) xxxx編『最新裁判実務大系(6)建築訴訟』551頁〔xxxx〕(青林書院, 2017)。法律上の制限については,最一小判昭41・4・14民集20・4・649,最三小判昭56・9・8裁判集民133・401。その他,心理的瑕疵や環境瑕疵に関する裁判例については,xxxx=xxxxx編『論点大系判例民法[第2版](5)契約Ⅰ』198頁〔xxx〕(第一法規,2013)が詳しい。
(3) 法曹会・前掲348頁
(4) 司法研修所編『民事訴訟における要件事実(1)[増補版]』214頁(法曹会, 1986),大判昭5・4・16民集9・376,大判大13・6・23民集3・339
(5) 司法研修所・前掲214頁,大判大13・6・23民集3・339
(6) xxxx=xxxx編『一問一答 民法(債権関係)改正』275頁(商事法務,2018)
(7) xx=xx・前掲280頁。「隠れた」要件が削除されるに至った経緯については,xxx「「債権法改正」の文脈― 新旧両規定の架橋のために〔第22回〕第九講 売主の担保責任:一般債務不履行との関係を中心に(その1)」法学教室 446号87頁,同「「債権法改正」の文脈― 新旧両規定の架橋のために〔第22回〕第九講 売主の担保責任:一般債務不履行との関係を中心に(その3)」法学教室448号80頁参照。また,削除の背景にある考え方については,上記のほか,商事法務編『民法(債権関係)の改正に関するxxxxの補足説明』407頁(商事法務,2013)も参照
(8) xx=xx・前掲287頁,xxxx『民法(債権関係)改正法の概要』269頁
(きんざい,2017),xxxx編『新民法(債権関係)の要件事実Ⅱ』442頁〔xxx〕(青林書院,2017)
Q52 設計契約が中途で終了した設計業務報酬請求の主張立証上の留意点は何か
Point
■設計契約が中途で終了した設計業務報酬請求における訴訟物,要件事実は,契約の法的性質の捉え方によって異なっていたが,民法改正により変更があることに注意を要する。⃞1
■設計業務の出来高の算定方法は,積算方式と割合方式がある。実務
上,割合方式が採用されることが多いが,難点もあり,専門的知見の導入などの工夫を要する。⃞2
■施主から施工予算超過の主張がなされた場合に,それが債務の本旨に従った履行といえるか否かは,設計契約における施工予算の位置付けを踏まえて判断する必要がある。⃞3
Answer
⃞1 設計契約が中途で終了した設計業務報酬請求
設計契約が中途で終了した場合に,設計者が施主に対して設計業務の出来高に応じた報酬を請求できるかが問題となることがある。なお,設計業務の出来高が問題となるのはもっぱら設計施工分離方式の場合であり,設計監理業務委託契約が締結された場合において,設計業務段階で契約が中途で終了し,設計監理者が設計業務報酬を請求してその出来高が争われることが多く,監理業務報酬の出来高が争われることはほとんどない(xxxxx=xxxxx編『リーガル・プログレッシブ・シリーズ14 建築訴訟』322・323頁(青林書院,2015))。
その訴訟物は,Q49で述べた設計契約の法的性質によって異なると
ころ,準委任契約説を前提とすると,準委任契約に基づく割合報酬請
388 11 設 計
求権であるが,その要件は,民法改正前後で規律が異なっているため,以下,分けて説明をする(なお,準委任に関する準用規定(民656)の摘示は省略する。)。
(1) 改正前民法下における規律
ア 改正前民法下における割合報酬請求権の要件事実
受任者(設計者)の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは,受任者(設計者)は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされ(改正xx648③),ここでいう「受任者の責めに帰することができない事由」とは,委任者と受任者の双方に帰責事由がない場合と,委任者に帰責事由がある場合の双方を含むと解されている(xxx=xxxx編『新版注釈民法(16)債権(7)』 260頁(有斐閣,1989))(設計契約において,この規定により割合報酬を認めた裁判例として東京高裁昭和59年12月11日判決(判タ552・176)などがある。)。
これに対し,設計契約が中途で終了したことにつき,設計者に帰責事由がある場合に設計者が出来高の報酬を請求することができるかについては,肯定説もあったが,その条文の文言や趣旨(1)から,これを否定する見解が一般的であった(2)(xxxx=xxxx編『一問一答 民法
(債権関係)改正』350頁(商事法務,2018),xxxx編『最新裁判実務大系(6)建築訴訟』107頁(青林書院,2017)。なお,監理契約について同310頁)。
以上によれば,改正前民法648条3項に基づく割合報酬請求権の要件
事実は,①設計契約の締結,②報酬支払の合意,③委任事務(設計)の中途終了事由,④委任事務の終了が設計者の責めに帰することができない事由によることを基礎付ける事実,⑤終了時点までに設計者がした事務の内容及びその割合となると解される(詳しくは,xxxxほか編『専門訴訟講座(2) 建築訴訟[第2版]』769頁(民事法研究会,2013),xxx
x『民法講義Ⅳ― 1 契約』718頁以下(有斐閣,2005)参照)。
イ 割合報酬請求権の根拠規定
委任者等に帰責事由あり | 受任者等に帰責事由あり | 双方に帰責事由なし | |
委任 | 報酬全額の請求が可能(改正xx536②) | 割合報酬の請求は不可(改正xx648③参照)。た だし,設計契約に関しては肯定説もある。 | 割合報酬の請求が可能(改正xx648③) |
請負 | 同上 | 割合報酬の請求が可能(解釈) | 割合報酬の請求が可能(解釈) |
雇用 | 同上 | 割合報酬の請求が可能(解釈) | 割合報酬の請求が可能(解釈) |
改正前民法の下で委任・請負・雇用が中途で終了した場合の報酬請求権の根拠規定を整理すると,以下の表のとおりである。
もっとも,同規定は任意規定であり,四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款(以下「四会連合約款」という。)では,設計者の帰責事由がある場合を含む同約款による契約解除の効果に関する規定において,解除後の取扱いについて,受託者は,委託者に対し,設計業務等について契約が解除されるまでの間,債務の本旨に従って履行した割合に応じた業務報酬の支払を請求することができる(四会連合約款27①四。なお,双方の責めに帰することができない事由による履行不能につい
ては,四会連合約款19②)とされている(3)。
(2) 改正民法下における規律
ア 改正民法下における割合報酬請求権の要件事実
改正民法648条3項は,委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき,又は,委任が履行の中途で終了したときには,受任者は,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとしている。これは,①受任者に