Contract
共
通
くるまの保険
共 通
Ⅰ. 損害保険について
Ⅱ. 損害保険料の仕組みについて
Ⅲ. 損害保険の募集形態について
Ⅳ. 損害保険の契約について
すまいの保険
Ⅴ. 保険金の請求について
Ⅵ. 損害保険と税金について
Ⅶ. 契約者保護の仕組みについて
からだの保険・他
Ⅷ. 損害保険に対する相談・苦情対応について
資
料
1
解 説
➊ 損害保険の役割
メ モ
Ⅰ
損害保険について
共
通
◆わたしたちの日常生活には、交通事故・火災・地震・風水害・盗難など非常に多くの危険(リスク)が潜んでいます。例えば、交通事故であれば 2021年の1年間で305,196 件、1日約837 件発生しており、死傷者数は 364,767 人にのぼっています。これらの危険(リスク)への対処法には4つの手法があります。
➊リスクの発生確率をゼロにする(リスクの回避)。
❷事故の発生を防止し、事故が発生した場合の損害額を軽減するための適切な予防策を行う。また、1 つのリスクを複数に分割して損害額を最小限に抑える(リスクの縮小(防止・軽減・分散))。
くるまの保険
❸自分で貯蓄などして備える(リスクの保有)。
➍直面するリスクを金銭的取引により第三者へ移転する(リスクの移転)。
この➍が保険に該当します。
すまいの保険
◆損害保険は、契約者一人ひとりが少しずつお金を出し合い、事故に遭ったときの損害を補償します。例えば、10,000 人の集団で、10 人にそれぞれ 1,000 万円の損害が発生したとします。この場合、総額1億円の損害が発生したことになりますが、1人あたり1万円を支払えば、その損害を補償することができます。いつ、どこで、誰が事故に遭って損害を被るかは分かりませんが、一人ひとりの負担が1万円で、1,000 万円の補償を受けることができるので、少ない負担で大きな安心を得ることができるといえます。
1,000万円
1,000万円
……
1万円
からだの保険・他
1万円
1万円
…
1万円
1万円
1万円
1万円
…
1万円
1万円
1万円
1万円
…
1万円
1万円
1万円
1万円
…
1万円
資
料
◆保険会社には保険制度を適正に運営していくためのルールがあります。損害保険を販売している会社は、様々な経営基盤を持って事業を行っていることから、契約者保護を図るとともに適正な事業運営を行う必要があります。そのため、損害保険会社を規制する法律(保険業法など)や損害保険会社の経営が健全かを客観的にチェックできる仕組み(ソルベンシー・マージン比率など)、万が一の場合に損害保険会社が破綻したときに契約者を保護する体制(損害保険契約者保護機構)を整えるなどのルールが設けら
2 れています。
メ モ
解 説
❷ 保険の分類と損害保険の種類
保険料負担の公平の原則
○契約者によって事故の発生する確率が異なるため、公平性を保つには、その確率に応じた保険料を設定する必要があります。これを「保険料負担の公平の原則」といいます。一般的には事故の発生確率が高い人は保険料が高く設定され、事故の発生確率が低い人は保険料が低く設定されることになります。
○この発生確率を保険料に反映させるには、正しい情報を契約者自身から提供していただくことが必要になります。これを「告知義務」といいます。また、この条件は契約後に変動することもありますので、その場合にも正しい情報を契約者自身から提供していただくことが必要になります。これを「通知義務」といいます。いずれも保険制度を適正に運営していくうえで大切なルールとなっています。
大数の法則
○いつ、どこで、誰が事故に遭うか予測することはできませんが、事故が発生する確率を算出することはできます。例えば、オセロゲームの駒を投げた際に、数回投げただけでは、連続して白が出るかもしれませんが、何十回、何百回、何千回と投げると、白が出る確率と黒が出る確率は2分の1に近づいていきます。保険会社もこれと同様に、過去の数多くのデータを集積しており、それにより事故の発生する確率を算出しています。これを「大数の法則」といいます。
貯蓄は三角、保険は四角
○いつどこで起きるか予測がつかない事故に遭ったとき、貯蓄の場合、事故が起きた時点でお金(経済的な備え)が十分に貯まっているとは限りません。一方、損害保険は契約したときから万一に備えた十分な補償を得ることができます。損害保険は、保険期間を通じて十分な補償を受けられるので、不測の事故に備えることができます。
〈貯蓄〉 〈保険〉
この分 足りない!
事故
貯蓄期間
事故
保険期間
もしココで
事故が起きたら…
もしココで
事故が起きても…
不足することなく補償されます!
共
通
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
保険金額
損害額
目標金額
損害額
◆保険業法では、保険を生命保険固有分野(いわゆる第一分野の保険)、損害保険固有分野(いわゆる第二分野の保険)、生命保険・損害保険のどちらともいえない分野を第三分野の保険として、3つに大別しています。
1.「生命保険」とは、人の生存または死亡に関してあらかじめ約定された金
メ モ
額を支払う保険のことで、生命保険会社のみが引き受けることができます。
2.「損害保険」とは、一定の偶然な事故によって生じた損害額に応じて保険金を支払う保険のことで、損害保険会社のみが引き受けることができます。
共
通
3.第三分野の保険とは、生命保険、損害保険のいずれにもあてはまらない保険のことをいい、生命保険会社、損害保険会社の双方で取扱うことができます。具体的には、「傷害保険」や「医療保険」などの保険があります。
◆あらかじめ約定された金額を支払うことを「定額払い」といいます。これは、人の身体に値段をつけることはできないという考え方によるものであり、生命保険、傷害保険、医療保険などでは、こうした定額払いが基本となっています。
くるまの保険
◆一方、一定の偶然な事故によって生じた損害額に応じて保険金を支払うことを「実損払い」といい、実際に被った損害額が保険金として支払われます。損害保険は、損害により不当な利益を得ること(いわゆる焼け太り)を防ぐという考え方があり、こうした実損払いが基本となっています。
保 険 法
保険法における保険の分類
○保険業法では、保険を3 種類(生命保険、損害保険、第三分野の保険)に分類していますが、保険法においては、保険業法における第三分野の保険を保険金の支払い方によってさらに2つに分類しています。
○具体的にはケガや病気による入院・通院等のために実際に出費した費用を補償するものを「傷害疾病損害保険契約」、ケガや病気によって入院・通院等をした場合に契約時に定めた一定額を支払うものを「傷害疾病定額保険契約」として区分けしています。
○このように、保険法では、「損害保険契約」「傷害疾病損害保険契約」「生命保険契約」「傷害疾病定額保険契約」の4 種類に保険を分類し、それぞれの契約関係に係る規定を定めています。
×
傷害疾病 定額保険契約
生命保険契約
生命保険
損害保険契約
傷害疾病 損害保険契約
×
損害保険
その他(傷害・疾病)
生命
物(財産)保険
人保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆生命保険会社と損害保険会社は第一分野の保険と第二分野の保険を兼営することを認められていませんが、第三分野の保険はそれぞれ引受けることができます。
生命保険 (第一分野) | 損害保険 (第二分野) | 傷害保険・医療保険など (第三分野) | |
保険取扱い | 生命保険会社 | 損害保険会社 | 生命保険会社および損害保険会社 |
保険事故 | 人の生存・死亡 | 偶然な事故 | 傷害・疾病など |
保険金支払い | 定額払い | 実損払い | 定額払いおよび実損払い(注) |
注 定額払いが基本となっていますが、保険金額を限度に実損払いとする商品もあります。
メ モ
共
通
◆生命保険の保険期間は一般的に20〜30 年と長く設定されていますが、損害保険の保険期間は1年とするものが一般的になっています。引き受けるリスクの違いとともに、このように保険期間にも差異があることが、生命保険事業と損害保険事業の兼営禁止の理由とされています。
自賠責保険
自動車の保険
法律で加入が義務付けられている保険で、他人の身体に損害を与えた場合に補償します。
任意の自動車保険 契約者が任意に加入する保険です。
対人賠償保険対物賠償保険
他人の身体や財物に損害を与えた場合に補償します。
人身傷害保険 搭乗者傷害保険
無保険車傷害保険
自損事故保険
運転者や同乗者などの身体に損害を被った場合に補償します。
車両保険
自分の自動車に損害を被った場合に補償します。
地震・噴火またはこれらによる津波により建物や家財に損害を被った場合に補償します。
からだの保険
医療保険
所得補償保険
ケガや病気などによって就業不能となった場合の所得の損失を補償します。
個人賠償責任保険
ゴルファー保険
ゴルフプレー中に発生した賠償事故やケガなどを補償します。
その他の保険
他人の身体や財物に損害を与えた場合に補償します。
海外旅行保険
国内旅行傷害保険
旅行中にケガをした場合に補償します。なお、海外旅行保険では海外旅行中の病気も補償します。
ケガや病気によって入院した場合に補償します。
傷害保険
偶然・急激・外来の事故によりケガをした場合に補償します。
地震保険
すまいの保険
住宅総合保険
住宅火災保険
火災、落雷、破裂・爆発、風災・雹(ひょう)災・雪災等により建物や家財に損害を被った場合に補償します。
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆わたしたちの暮らしを支える損害保険は様々な種類があり、以下のような商品を扱っています。各保険会社によって商品名や商品内容が異なる場合がありますので、注意してください。
メ モ
?
質問
損害保険と共済の違いは?
答え
損害保険は通常、誰でも契約できますが、共済の契約は原則として組合員に限られています。
共
◆損害保険と共済には次のような相違点があります。
通
1.損害保険は通常、誰でも契約できますが、共済の契約は原則として組合員に限られています。ただし、共済によっては、組合員以外の者が利用できる「員外利用」という制度があり、組合員でなくても一定の枠内で契約が認められることがあります。
くるまの保険
2.損害保険は、保険業法を根拠法として損害保険会社が取扱っています。一方、共済の根拠法は多岐にわたり、その実施団体(地域組合や職域組合など)も多種・多様です。
例えば、JA 共済は農業協同組合法、全労済は消費生活協同組合法を根拠法としています。また、一定の事業の範囲内で少額短期の保険のみを引受ける少額短期保険業者もあります。
3.損害保険の契約対象は、個人から企業まで多岐にわたっていますが、共済は、個人を対象としているものが多くなっています。
?
質問
少額短期保険業者とは?
答え
一定の事業規模の範囲内で、保険金額が少額で、保険期間が短期の保険のみを引受ける業者です。
すまいの保険
4.損害保険には、損害保険会社が破綻した場合に備え、契約者保護のための制度がありますが、共済には損害保険と同じような共済契約者を保護するための制度がありません。
からだの保険・他
資
料
◆少額短期保険業者とは、事業の規模が比較的小さく、保険金額が少額かつ保険期間が短期の保険のみを取扱うことが認められている業者のことをいいます。
メ モ
無認可共済事業者から少額短期保険業者へ
○ 2006年4月1日に改正保険業法が施行され、「少額短期保険業制度」が導入されました。これにより、それまで根拠法がないままに共済事業を運営していた、いわゆる「無認可共済事業者」は、損害保険会社となるか、少額短期保険業者として金融庁に登録するなど、規制が強化されました。これは、それまで法律や主務官庁による規制・監督を受けることのなかった無認可共済事業者にも、保険業法に基づく規制と金融庁による監督を受けさせることにより契約者保護を図ったものです。
共
通
くるまの保険
損害保険会社と少額短期保険業者の違いは以下の通りです。
損害保険会社 | 少額短期保険業者 | |
参入要件など | 免許制 | 登録制 ・50億円以下の収入保険料 ・会社形態(株式会社もしくは相互会社) |
最低資本金 | 10億円 | 1,000万円(供託金) |
取扱商品 | 無限定 | 少額、短期、掛捨に限定 ・保険金額:1,000万円以内 ・保険期間:2年以内 |
資産運用 | 原則自由 | 預貯金、国債、地方債 |
その他 | 情報開示、募集規制、責任準備金、検査・監督 など |
◆損害保険会社を規制する法律には、保険監督法の基本法に位置付けられている保険業法があります。保険業法は、「保険業の公共性にかんがみ、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図ること」を目的として制定されています。また、「保険会社に対する監督」と「保険募集に対する監督」の両面について規定しています。
解 説
❸ 損害保険を規制する法律など
公的保険と民間保険
○日本ではすべての国民が健康保険や年金保険など、何かしらの公的保険に加入しています。例えば、企業に勤めている人はその企業が管掌する組合健康保険に、自営業の人は国民健康保険などに加入しています。これに対して民間保険は、加入するかどうかの判断は各位に委ねられており、加入した場合には公的保険ではカバーできない部分の保障(補償)が得られるというように、役割を分担するとともに補完する機能を果たしているといえます。
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆「保険会社に対する監督」としては、保険業を営むには主務官庁(金融庁)に
一定の書類を提出し、審査を受け、内閣総理大臣の免許を受けることを必
メ モ
要としており、経営形態を株式会社か相互会社に限定しています。また、業務範囲、経理事項、保険商品の審査、保険会社の健全性維持のための措置、保険会社が破綻した場合の契約者保護のための措置など、様々な事項について規定が設けられています。なお、外国保険業者が日本で保険業を営む場合においても同様に、監督する規定が設けられています。
共
通
◆「保険募集に関する監督」としては、保険募集に従事する者についての登録制度に関する事項、保険募集の際の不公正・不当な行為の禁止に関する事項、主務官庁が損害保険代理店等に対して行う検査・命令に関する事項、クーリング・オフ制度に関する事項などの規定が設けられています。
保 険 法
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆保険業法以外にも損害保険に関連する法律は、保険法、民法、商法、消費者契約法、金融商品の販売等に関する法律、個人情報の保護に関する法律などがあります。
保険法 | 2010年4月から施行された法律で、保険契約者と保険会社との間の権利・義務関係等、保険契約(共済契約を含む)に関する基本的事項を定めている。 具体的には、以下の事項である。 ①保険に関する用語の定義(保険契約・保険者・保険契約者・被保険者・保険金受取人など) ②保険契約の目的(被保険利益) ③保険金額と保険価額に関する事項(一部保険・超過保険・重複保険) ④保険契約者等の義務に関する事項(告知義務・通知義務・損害防止義務) ⑤保険者の責任に関する事項(保険金の支払い・保険金支払いの履行期・免責事由) |
商 法 | 1899年に制定されてから保険法が施行されるまでの100年以上にわたり保険契約全般に関する基本的事項を定めていた。 保険法施行に伴い、保険契約全般に関する規定が無くなり、海上保険契約に関する規定のみが残されている。 |
消費者契約法 | 消費者と事業者との間で情報、交渉力の格差があることから、契約締結時における事業者の不実告知等不適切な説明によって消費者に「誤認」が生じた場合や、事業者の不退去等によって消費者が「困惑」した場合には、この契約を取消すことができることとしている。 また、事業者の損害賠償責任等を制限する条項など、消費者の利益を著しく害する条項を無効とするほか、一定の消費者団体に事業者の不当な行為に対する差止請求権を認める消費者団体訴訟制度などにより、消費者保護を図っている。 |
金融サービスの提供に関する法律 | 金融商品販売業者等が金融商品の販売に際して、顧客に対し重要事項 (「価格変動リスク」「信用リスク」等)を説明することを義務付け、この重要事項を説明しなかったことによって顧客に損害が生じた場合、金融商品販売業者等が損害賠償責任を負うことを定めている(重要事項の説明は「顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるものでなければならない」と規定されている。)。また、金融商品販売業者等に対し、商品の販売に関する方針(「勧誘方針」)を策定し公表する義務を課すことによって、顧客の保護を図ることを目的としている。多種多様な金融サービスのワンストップ提供に関するニーズ等に対応するため、2020年に「金融商品の販売等に関する法律」が改正され、金融サービス仲介業に関するルール等が盛り込まれた「金融サービスの提供に関する法律」が2021年11月1日に施行された。 |
個人情報の保護に関する法律 | 高度情報通信社会の進展に伴って、個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、個人情報取扱事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としている。個人情報取扱事業者には、利用目的の特定、適正な取得、利用目的の通知・公表・明示、安全管理措置、従業者・委託先の監督、第三者提供の制限、開示・訂正・利用停止請求への対応等の義務が課せられている。これに加え、2022年4月1日施行の改正法では、利用停止等の権利の拡充、開示のデジタル化推進、漏えい等報告の義務化、提供先において個人データとなることが想定される個人関連情報の第三者提供に関する本人同意等の確認義務など、新たに対応すべき規定が盛り込まれている。 |
損害保険料率算出団体に 関する法律 | 各保険会社が公正な損害保険料率を算出するための基礎資料となる参考純率等を算出・提供する損害保険料率算出団体について、その業務の適切な運営を確保し、損害保険業の健全な発達と保険契約者などの利益保護を目的として制定されたものである。この法律に基づいて損害保険料率算出機構が設けられている。 |
自動車損害賠償保障法 | 自動車による人身事故の場合の損害賠償を保障する制度を確立することによって、被害者保護を図ることを目的として制定されたものである。自動車人身事故の加害者の賠償資力を確保するために、特殊な例外を除き、すべての自動車保有者に対して自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)または自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)の契約締結を強制している。 |
地震保険に関する法律 | 住宅および家財について保険会社が引受けた地震保険の支払責任を政府が一定の条件により再保険として引受けることによって地震保険の普及を図り、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として制定されたものである。 |
共
通
くるまの保険
保険法における任意規定・強行規定・片面的強行規定について
すまいの保険
○保険法の各規定は、「任意規定」「強行規定」「片面的強行規定」「その他の規定」の4つの性質のいずれかに分類されます。このうち、「片面的強行規定」については、保険法の中で条文ごとに規定が置かれていますが、「任意規定」か「強行規定」かについては、保険法の条文を個々に解釈して決められることになっています(「任意規定」か「強行規定」かを定める規定は存在しません。)。
条文の解釈で決まるもの | ①任意規定:契約自由の原則に基づき、当事者同士の約定(約款)で決まるもの (例)損害の発生及び拡大の防止に関する規定(保険法第13条) |
②強行規定:公の秩序(公序良俗)に関する規定で当事者間同士では変更できないもの (例)被保険者の同意に関する規定(保険法第38条) | |
③その他の規定:任意規定にも強行規定にも当てはまらない規定 (例)定義規定(保険法第2条) | |
条文に規定 されているもの | ④片面的強行規定:保険法の規定よりも、保険契約者・被保険者・保険金受取人などに不利になるような変更をすることができない規定 (例)告知義務に関する規定(保険法第4条) |
○従来の商法では、上記のように各条文の性質を定める規定は存在していなかったのですが、契約者保護を図ることを目的として、「特定商取引に関する法律」や「割賦販売法」等の改定において先に「片面的強行規定」が導入されていたこともあり、保険法においても同様の規定が設けられることとなりました。
保 険 法
からだの保険・他
資
●参考文献:東京海上日動火災保険株式会社 編著「損害保険の法務と実務」
料
(一般社団法人金融財政事情研究会、2010年7月発行)214〜216ページ新生綜合法律事務所 監修「新保険法 実務者の必携逐条解説」
(株式会社保険教育システム研究所、2008年12月初版発行)17〜18ページ
解 説
➊ 損害保険料の仕組み
メ モ
Ⅱ
損害保険料の仕組みについて
共
通
◆損害保険の保険料は「純保険料」と「付加保険料」から成り立っています。「純保険料」は事故の発生頻度や損害額など過去の大量のデータに基づき算出され、事故が発生したときに保険会社が被保険者(保険の補償を受ける人または保険の対象になる人)または保険金受取人に支払う保険金の原資となります。したがって、「純保険料」の総額と「保険金」の総額は等しくなっており、これ を「収支相等の原則」といいます。また、保険料は保険会社が引受ける危険(リスク)の度合いに比例する(例えば保険金の支払いが少なくなると純保険料が少なくなるなど)必要があり、これを「給付・反対給付均等の原則」といいます。
利潤
代理店手数料
社費
付加保険料
純保険料
保険料
くるまの保険
◆一方で、この「純保険料」には保険会社の事務等にかかる費用などが含まれていないため、「純保険料」のみで保険会社が事業を営むのは困難となります。そこで保険会社は、事業を運営するために必要な費用(社費)や損害保険代理店に支払う手数料(代理店手数料)、保険会社の利益(利潤)などから構成される「付加保険料」を必要としています。
すまいの保険
からだの保険・他
◆この保険料は、契約者の利益を保護するために「高すぎず」、また、保険会社の担保力を確保するために「低すぎず」、契約者間の公平を確保するために「不当に差別的であってはならない」という3つの原則に基づき、各保険会社が独自に算定しています。ただし、「自賠責保険」と「地震保険」の保険料は「損害保険料率算出団体に関する法律」(注)に基づき運営されている損害保険料率算出機構が算定した料率(これを「基準料率」といいます。)を各保険会社が使用しています。
資
料
◆なお、損害保険料率算出機構では自動車保険や火災保険、傷害保険、介護費用保険の「純保険料」に相当する部分の料率(これを「参考純率」といいます。)も算出していますが、各保険会社には、独占禁止法遵守の観点から参考純率を使用する義務が課されていません。
メ モ
解 説
❷ 積立保険の保険料の仕組み
注 損害保険料率算出団体に関する法律 第1条(目的)
この法律は、損害保険における公正な保険料率の算出の基礎とし得る参考純率等を算出するために設立される損害保険料率算出団体について、その業務の適切な運営を確保することにより、損害保険業の健全な発達を図るとともに、保険契約者等の利益を保護することを目的とする。
共
通
◆積立保険の保険料は、「補償保険料」と「積立保険料」から成り立っています。
「補償保険料」は純保険料と付加保険料に相当する部分で、「積立保険料」は将来の満期返戻金の原資となる部分で「予定利率」により運用されます。
くるまの保険
◆「予定利率」はあらかじめ契約者に運用利回りを約束するもので、保険会社は契約者から集めた「積立保険料」を金融市場や株式市場で運用することになります。なお、「予定利率」は原則として、契約途中で変更できないことになっています。
すまいの保険
◆契約者が満期返戻金を受け取るには「契約が満期まで有効に続いていること」と「保険料が全額払い込まれていること」の2 要件を満たしていることが必要となります。なお、保険期間の途中で契約を解除(解約)した場合や保険金額の全額が支払われる事故が発生した場合には、満期返戻金は支払われません。
予定利率を超える運用部分
予定利率での運用部分
契約者配当金
運用益
満期返戻金
保 険 期 間
〔3年~20年程度〕
保険金額〔補償額〕
その他(補償保険料等)部分
積立保険料部分
からだの保険・他
資
料
満期時の受け取り額
支払った保険料
◆さらに予定利率を超えて運用の収益があった場合は、満期返戻金に加えて契約者配当金が支払われます。
メ モ
満期返戻金が契約時の説明より少なくなる場合
○次のような場合、満期返戻金は契約時の説明より少なくなります。
1.保険料の払込方法が月払いの契約で、最終回分(およびその直前回分)の払込保険料相当額が満期返戻金からの差引きにより充当された場合
2.契約者貸付制度を利用し、満期までにその元利合計が返済されていなかったため、満期返戻金からの差引きによりその返済に充当された場合
3.保険料の振替貸付が行われた契約で、満期までにその元利合計が返済されていなかったため、満期返戻金からの差引きによりその返済に充当された場合
4.保険料の全額が払い込まれた後に保険料率が改定され、保険料が引き上げられたときに、その差額が満期返戻金を減額することで調整された場合
共
通
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆なお、積立保険では、積み立てた保険料の範囲内で一時的に必要となった資金を契約者に貸し出す制度(契約者貸付制度)や、保険料が払い込まれなかった場合に契約が失効しないように積み立てた保険料の範囲内で保険料を貸し付ける制度(保険料の振替貸付制度)が設けられています。
解 説
➊ 損害保険の募集形態
メ モ
Ⅲ
損害保険の募集形態について
共
◆損害保険を募集することができる者は、損害保険会社・損害保険代理店・保険仲立人(保険ブローカー)・金融サービス仲介業者(注)の役員・従業員に限られています。
(注)金融サービス仲介業者とは、1つの登録によって銀行・証券・保険すべての分野で仲介業務を行うことが可能となる業態であり、それぞれの業務において特定の金融機関の委託を受けて取引の媒介を行うか、中立的な立場で契約締結の媒介を行います。なお、2022年1月現在、損害保険商品を取り扱う金融サービス仲介業者はありません。
通
また、損害保険契約の募集形態では、代理店扱が保険料ベースで全体の9割以上を占めています(2021年3月末現在)。
くるまの保険
1. 代理店扱
委託契約 (登録が必要) 保険契約の
締結の代理または媒介
保険契約者
損害保険代理店
保険会社
損害保険代理店を通じて行われる募集形態です。損害保険代理店は、保険会社との間の損害保険代理店委託契約に基づいて、保険会社に代って損害保険の募集を行います(注1)。
注1 保険業法 第2条(定義)第21項
この法律において「損害保険代理店」とは、損害保険会社の委託を受け、又は当該委託を受けた者の再委託を受けて、その損害保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う者(法人ではない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)で、その損害保険会社の役員又は使用人でないものをいう。
すまいの保険
2. 直扱
保険契約の締結
保険契約者
保険会社(役員・従業員)
からだの保険・他
保険会社の役員・従業員が直接契約を募集する形態です。新聞・テレビなどの広告やインターネットを活用して保険会社が直接募集を行う通信販売なども直扱に含まれます。
資
3. 仲立人扱
料
保険仲立人(保険ブローカー)を通じて行われる募集形態です。保険仲立人は、保険会社からの委託を受けることなく、保険契約者と保険会社の間
に立って、中立的な立場で契約締結の媒介を行います。なお、保険仲立人
メ モ
保険契約の締結
媒介
媒介
(登録が必要)
保険仲立人
保険契約者
保険会社
は、損害保険代理店および生命保険募集人との兼営が禁止されています。
共
通
◆損害保険商品は、参入規制の緩和により、銀行や郵便局でも販売されています。ただし、銀行などが代理店となって募集を積極的に行うと、優越的地位を利用した圧力募集(融資をしている立場を利用し、保険商品の購入を迫る)など種々の弊害が生じるおそれがあるため、銀行などによる損害保険商品の販売においては、次のような規制があります。
1.銀行員が、職務上知り得た顧客の預金や資金の借入れなどに関する情報を利用して募集を行う場合は、事前に当該情報の利用について、契約者の同意を得なければ保険の販売ができない。
くるまの保険
2.銀行などは、公正な保険販売を確保するための指針を策定し公表する。
3.融資先の法人や個人事業主を契約者または被保険者とする一定の保険商品については、当該保険商品の販売にあたって手数料などの報酬を得ることができない。
?
質問
代理店と仲立人はどのように違うのですか?
答え
代理店は、契約締結権、保険料領収権および告知・通知受領権を有していますが、仲立人はこれらを有していません。したがって、仲立人に契約の申込みをしても、保険会社が承諾しなければ契約は成立しません。
すまいの保険
◆代理店と仲立人には、次のような相違点もあります。
からだの保険・他
1.仲立人は、保険募集について契約者などに与えた損害については、仲立人自身が損害賠償責任を負うため、契約者保護の観点から、保証金の供託または保険仲立人賠償責任保険の締結が義務付けられています(注2・注3)。
注2 保険業法 第291条(保証金)
保険仲立人は、保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければならない。
資
料
2.契約者にとって最も適切な保険を選択して契約者に提示することは、代理店にも仲立人にも求められていますが、仲立人の場合、このことが義務(誠実義務)として保険業法で定められています(注4)。
メ モ
解 説
❷ 損害保険代理店
注1 保険業法 第276条(登録)
特定保険募集人(生命保険募集人、損害保険代理店又は少額短期保険募集人(特定少額短期保険募集人を除く。)をいう。以下同じ。)は、この法律の定めるところにより、内閣総理大臣の登録を受けなければならない。
注3 保険業法 第292条(保険仲立人賠償責任保険契約)
保険仲立人は、政令で定めるところにより、保険仲立人賠償責任保険契約を締結し、内閣総理大臣の承認を受けたときは、当該契約の効力の存する間、当該契約の保険金の額に応じて前条第1項の保証金の一部の供託(同条第3項の契約の締結を含む。次項において同じ。)をしないことができる。
注4 保険業法 第299条(保険仲立人の誠実義務)
保険仲立人は、顧客から委託を受けてその顧客のため誠実に保険契約の締結の媒介を行わなければならない。
共
通
くるまの保険
◆代理店になるためには、内閣総理大臣の登録を受けなければならず、また、代理店の役員・従業員として販売を行うためには、内閣総理大臣に届出をしなければなりません(注1・注2)。
注2 保険業法 第302条(役員又は使用人の届出)
損害保険代理店、少額短期保険募集人又は保険仲立人は、その役員又は使用人(少額短期保険募集人の役員又は使用人にあっては、特定少額短期保険募集人に限る。)に保険募集を行わせようとするときは、その者の氏名及び生年月日を内閣総理大臣に届け出なければならない。届け出た事項について変更を生じたとき、又は届出に係る役員若しくは使用人が保険募集を行わないこととなったとき、若しくはこれらの者が死亡したときも、同様とする。
すまいの保険
◆代理店は、保険会社との間で締結した損害保険代理店委託契約に基づき、保険会社を代理して損害保険の契約を締結し、保険料を領収することを基本業務としており、主に次のような業務を行います。
1.保険商品の説明
2.契約の意向把握・確認
からだの保険・他
3.契約の締結
4.保険料の領収・領収書の発行
5.契約の変更・解除(解約)などの受付(クーリング・オフの受付を除く。)したがって、通常、代理店と契約を締結した時点で、契約が成立したことになりますが、成立した契約が有効であるためには、保険料の支払いがあることが必要です(保険料の支払いがないと事故が発生しても保険金が支払われません。)。
資
料
◆万が一の場合に代理店が保険募集の際に契約者に損害を与えたときに、保険会社はその損害を賠償する責任を負うことになっています。ただし、保険会社が代理店と委託契約を締結する際に相当の注意をし、かつ、代理店
メ モ
注3 保険業法 第283条(所属保険会社等及び保険募集再委託者の賠償責任)
所属保険会社等は、保険募集人が保険募集について保険契約者に加えた損害を賠償する責任を負う。
2.前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。一.(略)
二.(略)
三.所属保険会社等の委託に基づく特定保険募集人(※)又はその役員若しくは使用人である保険募集人が行う保険募集については、所属保険会社等が当該特定保険募集人の委託をするについて相当の注意をし、かつ、これらの者の行う保険募集について保険契約者に加えた損害の発生の防止に努めたとき。
(※)損害保険代理店、生命保険募集人、少額短期保険募集人をいう。四.(略)
五.(略)
の行う保険募集について契約者に加えた損害の発生防止に努めたときには、その責任は問われません(注3)。
共
通
くるまの保険
◆代理店は、組織形態や営業方法などにより、次の3つに分類することができます。
1. 専業代理店・副業代理店
約18%
■副業代理店
■専業代理店
約82%
すまいの保険
保険販売を専業とする代理店を専業代理店、他の業務と併せて保険販売を行う代理店を副業代理店といい、代理店の約82%が副業代理店です(2021年3月末現在)。副業代理店には、自動車保険等を扱う自動車ディーラーや整備工場、火災保険等を扱う不動産業者、旅行傷害保険等を扱う旅行業者などがあります。
からだの保険・他
2. 法人代理店・個人代理店
■法人代理店
■個人代理店
約58%
約42%
資
料
代理店登録にあたり、法人組織(株式会社など)で登録したものを法人代理店、個人として登録したものを個人代理店といい、法人代理店が約 58%、個人代理店が約42%となっています(2021年3月末現在)。
メ モ
3. 専属代理店・乗合代理店
約23%
約77%
■乗合代理店
■専属代理店
共
通
1社の保険会社のみと委託契約を締結する代理店を専属代理店、2 社以上の保険会社と委託契約を締結する代理店を乗合代理店といい、代理店の約77%が専属代理店です(2021年3月末現在)。
?
質問
答え
保険を契約するときに、代理店からどのような説明があるのですか?
契約する方の意向を踏まえた保険商品の提案と、契約の締結または加入の適否を判断するのに必要な情報に関する説明があります。
くるまの保険
すまいの保険
◆代理店が保険商品を勧める際には、消費者を取り巻く危険(リスク)に配慮し、消費者の意向を把握・確認し、消費者の商品選択に必要な商品情報を提供しながら、適切な保険商品を勧めるように努めています。
損害保険会社・損害保険代理店の勧誘方針
○保険・投資信託・預金などの金融商品の販売を業として行う者(金融商品販売業者など)は、金融商品販売などの勧誘に関する方針を定め、公表しなければなりません(金融サービス提供法第10条)。保険会社・代理店も金融商品販売業者などに該当するので、自社・自店の勧誘方針の策定・公表を義務付けられています。
○金融商品販売業者などの勧誘方針には、次の事項を盛り込むことが求められており、保険業法でいう公正な募集を実施するための具体的方法が述べられています。
1.勧誘対象者(消費者等)の知識・経験・財産の状況およびその目的やその意向を十分に配慮しながら、顧客に適合した商品を販売すること(適合性の原則)
2.勧誘の方法に配慮し、契約の重要事項を十分に説明するとともに、勧誘の時間帯に配慮する(深夜・早朝などの電話・訪問を避ける)こと
3.勧誘担当者の研修を充実し、コンプライアンスを実施するとともに、苦情などに適切に対応すること
○勧誘方針は、各保険会社のホームページにも掲載されています。
からだの保険・他
資
料
(注)金融サービス提供法により、元本欠損等のおそれのある金融商品に関する重要事項説明においては、顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるものでなければならないと規定されています。
メ モ
◆契約の締結または加入の適否を判断するのに必要な情報とは、次の(ア)〜
(ウ)の事項をいいます。具体的な事項は保険商品によって異なりますが、保険会社では、これらの事項を記載した書面「重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報)」を作成しています。
(ア)消費者が保険商品の内容を理解するために必要な事項(保険金の支払い条件、保険期間、保険金額等)
共
(イ)消費者に対して注意喚起すべき事項(告知義務の内容、責任開始期、契約の失効、セーフティーネット等)
通
(ウ)その他消費者に参考となるべき事項(ロードサービス等の主要な付帯サービス、直接支払いサービス等)
?
質問
答え
代理店が保険商品を募集する際に禁止されている事項はありますか?
保険料の割引など特別の利益の提供を約束することや、虚偽のことを告げたり、重要な事項を告げない行為、重要な事項につき虚偽のことを告げることを勧める行為などが禁止されています。
くるまの保険
◆代理店は、「重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報)」等を使用して、消費者に契約の締結または加入の適否を判断するのに必要な情報を適切に説明するか、当該書面をよく読むことが重要であることを説明しなければなりません。
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆保険業法第300 条、保険業法施行規則第234 条では、保険販売に関し次の行為を禁止しています。下記項目の1〜8が保険業法第300 条の規定、9・ 10が保険業法施行規則第234 条の規定になっています。
項目 | 内容 |
1.虚偽のことを告げる行為 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、虚偽のことを告げること、または契約者または被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項(保険料、保険期間、補償内容、保険金を支払わない場合など)を告げないこと。 |
2.重要事項について虚偽のことを告げることを勧める行為 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、重要な事項(住所・氏名、保険の対象、他の契約の有無、事故歴など)について虚偽のことを告げることを勧めること。 |
3.告知義務違反を勧める行為 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、重要な事実を告げるのを妨げること、または告げないことを勧めること。 |
4.不当な乗換募集行為 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、不利益となる事実を告げずに、すでに成立している契約を解除(解約)させて新たな契約を勧めること。 |
項目 | 内容 |
5.特別の利益の提供行為 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、保険料の割引、割戻し、その他特別利益の提供を約束すること、または提供すること。 |
6.契約内容の違法な比較行為 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、他の保険商品との比較の中で有利な部分のみ説明し、不利な部分を説明しないこと。例えば、補償内容を比較せず、保険料のみを比較して他より有利であると説明すること。 |
7.契約者配当・剰余金分配の予想などの行為 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、不確実な事項について、断定的判断を示すこと。例えば、積立型保険の販売において、契約者配当金は予想配当額どおり必ず支払われると説明すること。 |
8.保険会社のグループ会社などによる特別の利益の提供行為 | 保険会社のグループ会社などが、契約者または被保険者に対して、特別利益の供与を約束し、または提供していることを知りながら、契約の申込みをさせること。 |
9.信用または支払い能力に関し、客観的事実に基づかない事実・数値の表示の禁止 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、例えば、保険の勧誘にあたり、客観的事実に基づかない、「業界No1」などの説明を行うことなど。 |
10.保険の種類・保険会社の誤解を招く行為の禁止 | 募集人が、契約者または被保険者に対して、例えば、生損保のセット商品の販売にあたり、生保商品の引受保険会社を説明しない行為など。 |
メ モ
共
通
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆ 2016 年5月29日施行の改正保険業法によって、代理店に対し、次の義務が新たに導入されました。
情報提供義務 (294条) | 契約の締結または加入の適否を判断するのに必要な情報を説明しなければなりません。従来行ってきた重要事項説明(契約概要・注意喚起情報の交付・説明等)が、義務として法令で明文化されたものです。 |
意向把握義務 (294条の2) | 次の事項について、消費者の意向を把握しなければなりません。 (ア)どのような分野の補償を望んでいるか(保険種類) (イ)消費者が求める主な補償内容 (ウ)保険期間、保険料、保険金額に関する範囲の希望、優先する事項の有無等 併せて、契約締結に際しては、消費者が締結しようとしている保険商品が把握した意向に合致しているか等を確認します(従来の意向確認義務)。 |
代理店の体制整備義務 (294条の3) | 代理店は、保険募集の業務に関し、①重要事項説明、②顧客情報の適正な取扱い、③委託先管理、④乗合代理店における推奨販売・比較説明、⑤フランチャイズ代理店における保険募集人指導事業など、健全かつ適切な代理店の運営を確保する観点から、自店の規模・業務特性に応じて体制を整備しなければなりません。 ※上記①〜③は、保険会社に対する体制整備義務(100条の2)として、従来より所属保険会社経由で代理店にも対応が求められていた内容ですが、上記④および⑤は改正保険業法で新たに求められる内容になります。 |
解 説
➊ 損害保険の契約の申込み・成立
メ モ
Ⅳ
損害保険の契約について
◆損害保険の契約の申込み
共
通
損害保険は、通常、保険会社が用意している申込書を使用して代理店を通じて申込むことになります。保険会社や保険の種類によっては、電話やインターネットでの申込みという方法もあります。
◆損害保険の契約はいつ成立するか
保 険 法
注1 民法 第555 条(売買)
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
民法 第559 条(有償契約への準用)
この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
注2 保険法 第2条(定義)第1号・第6号
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 保険契約 保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一
方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。
六 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
1.損害保険の契約は、いわゆる民法上の諾成契約(お互いが口頭で契約について了解するだけで成立する契約)であるとされ(注1・注2)、保険の対象(になる物・人)・保険金額・補償内容などの重要な部分(契約の 要素)が確定し、契約者による申込みの意思表示と保険会社側の承諾の意思表示があれば、契約は成立します。
顧客の意向把握
意向に合致した商品説明
意向確認
申込書などへの署名または記名押印
保険証券の受領
保険料の払込み
申込書写の受領
資
料
2.実務上は、保険会社または代理店が、契約者から提出された申込書が適正であることを確認し、受理した時点で契約が成立します。成立までの手順は、具体的には次のようになります。
メ モ
(1)顧客の意向把握
代理店から、所属保険会社名や募集人の氏名、告知受領権の有無などについて説明を受けます。代理店は、保険加入の意向(ニーズ)について、例えばアンケート等により、情報を求めます。
(2)意向に合致した商品説明
代理店から提案のあった保険に関して、重要事項説明書などをもとに説明を受け、確認します。
(3)意向確認
共
通
契約しようとする保険商品が自分のニーズに合致した補償内容であることを確認するための書面などに記入します。
(4)申込書などへの署名または記名押印
所定の申込書に必要事項を記入し、署名または記名押印のうえ、保険会社または代理店に提出します。保険会社または代理店が、申込書が適正であることを確認し、受理した時点で契約が成立します。
(5)申込書写の受領
くるまの保険
申込書の写を受領します。
(6)保険料の払込み
約款上、契約が成立しても、保険料が払い込まれていない場合、損害が生じても保険金が支払われません。
(7)保険証券の受領
保険会社から契約をした保険の保険証券を受領します。
すまいの保険
なお、自動的に契約を更新するように設定した場合には、契約者が継続を承諾した時点で契約が成立します。
◆損害保険の契約ができない場合
1.損害保険は、原則として金銭に見積もることができる経済的な利益がない場合には、契約することができません(注3)。これがないのにも関わらず保険金が支払われるとなると、犯罪を助長することにつながるおそれがあるためです。
注3 保険法 第3条(損害保険契約の目的)
損害保険契約は、金銭に見積もることができる利益に限り、その目的とすることができる。
【強行規定】
保 険 法
からだの保険・他
なお、人の命は金銭に見積もることが困難であることから、定額払い方式の傷害保険などでは、この利益の存在は要件とはなりません。
資
料
2.また、契約の申込みがあった場合、例えば、事故発生度の高い契約が集中することによって適正な保険料率を維持できなくなり、他の多くの契約者に負担がかかると判断されるようなときには、保険会社は例外的に契
約を断ることがあります。また、このような場合でなくても、故意に事故
メ モ
を起こして不正に保険金を得ようとする可能性がある契約である場合などでは、保険会社の方針として契約を断ることがあります(契約の謝絶)。
注4 地震保険に関する法律 第4条の2(警戒宣言が発せられた場合における地震保険契約の締結の停止)第1項
大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)第9条第1項の規定に基づく地震災害に関する警戒宣言(以下この条において「警戒宣言」という。)が発せられたときは、同法第3条第1項の規定により地震防災対策強化地域として指定された地域のうち当該警戒宣言に係る地域内に所在する保険の目的については、保険会社等は、当該警戒宣言が発せられた時から同法第9条第3項の規定に基づく地震災害に関する警戒解除宣言が発せられた日(当該警戒宣言に係る大規模な地震が発生するに至った場合にあっては、財務大臣が地震保険審査会の議を経て告示により指定をする日)までの間、政府の再保険契約に係る地震保険契約(政令で定めるものを除く。)を新たに締結することができない。
共
通
3.地震保険では、「大規模地震対策特別措置法」(注4)に基づき警戒宣言が発令されたときは、指定された地域内の物件については、警戒宣言が解除されるまでの間は、新規の契約や既存契約の保険金額の増額には応じられないことになっています。
注5 自動車損害賠償保障法 第24条(責任保険及び責任共済の契約の締結義務)第1項 保険会社は、政令で定める正当な理由がある場合を除き、責任保険の契約の締結を拒絶してはならない。
くるまの保険
4.自賠責保険については、交通事故の被害者救済の観点から、ごく一部の例外を除き、保険会社は契約を断ることができないことになっています(注5)。
すまいの保険
◆告知義務
保 険 法
注6 保険法 第4条(告知義務)
保険契約者又は被保険者になる者は、損害保険契約の締結に際し、損害保険契約によりてん補することとされる損害の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第28条第1項及び第29条第1項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。【片面的強行規定】
保険法 第66条(告知義務)
保険契約者又は被保険者になる者は、傷害疾病定額保険契約の締結に際し、給付事由(傷害疾病による治療、死亡その他の保険給付を行う要件として傷害疾病定額保険契約で定める事由をいう。以下この章において同じ。)の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第84条第1項及び第85条第1項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。
【片面的強行規定】
からだの保険・他
資
料
1.告知義務とは、契約者または被保険者(保険の補償を受ける人または保険の対象になる人)が契約締結にあたり(主として申込書を提出するにあたって)、危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)に関する重要な事項のうち保険会社が申込書記載事項とすることなどによって告知を求めた事項(告知事項)について事実を告げる義務をいいます(注6)。
メ モ
2.保険制度は、多くの人々が保険料を出し合うことによって成り立っており、契約者が負担する保険料は「危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)の程度」に見合った公平なものにする必要があります。しかし、「危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)の程度」は個別に異なっており、その情報は契約者などが知っていて保険会社には分からないので、保険料に反映させるには契約者などから正確な情報を提供していただくことが必要になります。
共
通
3.そのために保険会社は、約款で契約者または被保険者に事実を正しく告げる告知義務を求めています。
くるまの保険
従来の商法では、告知義務は契約者が保険会社に対して、「重要な事実」を自主的に告知する義務(自主申告義務)とされていました。しかし、何 が「重要な事実」であるかを契約者が判断することは困難であることから、保険法では、契約者または被保険者が契約締結にあたり、保険会社から告知を求められたものに対して、正しく事実を告げる義務(質問応答義務)に変換しています。
「告知事項」に関する関連項目の索引
▶くるまの保険 116 ページ
▶すまいの保険 191 ページ
▶からだの保険・他 231 ページ
▶からだの保険・他 258 ページ
4.保険会社では、告知事項が明確に分かるように、申込書に「★」や「※」等の印を表示するなど、分かりやすさに努めています。
(1)自動車保険の告知事項の具体例
⇒「くるまの保険」編の「問19」を参照
(2)火災保険の告知事項の具体例
⇒「すまいの保険」編の「問59」を参照
すまいの保険
(3)傷害保険の告知事項の具体例
⇒「からだの保険・他」編の「問76」を参照
(4)医療保険の告知事項の具体例
⇒「からだの保険・他」編の「問86」を参照
「解除」に関する関連項目の索引
▶共通 38 ページ
▶共通 42 ページ
▶くるまの保険 119 ページ
▶すまいの保険 194 ページ
▶からだの保険・他 235 ページ
▶からだの保険・他 263 ページ
◆告知義務違反による解除
からだの保険・他
資
料
1.契約者や被保険者が、告知事項について故意または重大な過失により事実の告知をせず、または事実と異なることを告知した場合(以下「告知義務違反」といいます。)は、保険会社は契約を解除することができます(注7)。
注7 保険法 第28条(告知義務違反による解除)
保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、損害保険契約を解除することができる。
【片面的強行規定】
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、損害保険契約を解除することができない。
一 損害保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
二 保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者(保険者のために保険契約の締結の代理を行うことができる者を除く。以下「保険媒介者」という。)
が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
保 険 法
メ モ
三 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
【片面的強行規定】
3 前項第2号及び第3号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第1項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。【片面的強行規定】
4 第1項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から1箇月間行使しないときは、消滅する。損害保険契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。【強行規定】
保険法 第84条(告知義務違反による解除)
保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、傷害疾病定額保険契約を解除することができる。【片面的強行規定】
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、傷害疾病定額保険契約を解除することができない。
一 傷害疾病定額保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
二 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
三 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
【片面的強行規定】
3 前項第2号及び第3号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第1項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。【片面的強行規定】
4 第1項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から1箇月間行使しないときは、消滅する。傷害疾病定額保険契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。【強行規定】
共
通
くるまの保険
すまいの保険
2.ただし、代理店が、契約者や被保険者の告知を妨害した場合、または事実を告げないこともしくは事実と異なることを告げることを勧めた場合などは、保険会社は契約を解除することはできません。
からだの保険・他
3.また、保険会社が契約解除の原因があることを知ったときから1か月、または契約締結時から5 年を経過すると、保険会社は契約を解除することができません。
◆解除による効果
資
料
1.告知義務違反による契約の解除は、将来に向かってのみ、その効力が生じて契約が終了し、解除前に遡及して契約が終了することはありません。また、契約の解除後に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しては、当然、保険会社は保険金を支払いませんが、契約の解除前に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しても、保険会社は保険金を支払いません。なお、すでに保険金を支払っている場合には保険金の返還を請求できます。
メ モ
2.ただし、告知義務違反にあたる事実と保険事故による損害(または傷害疾病)との間に因果関係が認められない場合は、保険会社は保険金を支払います(注8)。なお、告知義務違反にあたる事実と保険事故による損害
(または傷害疾病)の間の因果関係に関する立証責任は契約者側が負うこととなります。
(1)火災保険において告知義務違反にあたる事実と保険事故による損害との間に因果関係が認められない場合の具体例
⇒「すまいの保険」編の「問59」を参照
(2)傷害保険において告知義務違反にあたる事実と傷害との間に因果関係が認められない場合の具体例
⇒「からだの保険・他」編の「問76」を参照
(3)医療保険において告知義務違反にあたる事実と傷害疾病との間に因果関係が認められない場合の具体例
⇒「からだの保険・他」編の「問86」を参照
注8 保険法 第31条(解除の効力)
損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。【片面的強行規定】
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。
一 第28条第1項 解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
二 第29条第1項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
三 前条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害
【片面的強行規定】
保険法 第88 条(解除の効力)
傷害疾病定額保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。【片面的強行規定】
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により傷害疾病定額保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める事由に基づき保険給付を行う責任を負わない。
一 第84条第1項 解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、同項の事実に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
からだの保険・他
二 第85条第1項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
三 第86条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した給付事由
【片面的強行規定】
資
料
3.告知義務違反により契約が解除された場合、未経過期間に対し保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。
「因果関係が
認められない場合」に 関する関連項目の索引
▶すまいの保険 191 ページ
▶からだの保険•他 231 ページ
▶からだの保険•他 259 ページ
共
通
くるまの保険
すまいの保険
保 険 法
メ モ
保 険 法
告知義務違反の対応のイメージ
1/30
契約開始日 4/1
契約解除日 12/1
契約終了日 3/31
告知事項
×
①
共
〈不告知・不実告知の 事実との因果関係あり〉
事故(※2)
応答
質問
告知事項のすべてに適正な応答があれば
支払われていた保険料の総額
告知義務違反が
発覚
★
(無責)
○
②
事故(※1)
通
☆
(有責)
③
○
保険料の返還
事故(※3)
★
(無責)
解除の効力は将来効
くるまの保険
○保険会社が告知を求めた事項が3項目(①〜③)あり、これらすべての項目に契約者または被保険者が該当しているにも関わらず、①については正しく告知を行わない(不告知・不実告知)ため告知義務違反があり、②・③については正しく告知が行われている契約があったとします。
○このときに、まず②の告知事項と因果関係が認められる保険事故(上記の※1の事故)により損害が発生した場合には、保険会社は保険金を支払います。
すまいの保険
○次に、①の告知事項と因果関係が認められる保険事故(上記の※2の事故)により損害が発生し、保険会社が契約内容を確認したところ、告知義務違反であったことが発覚した場合には、契約が解除され、保険金は支払われません。なお、契約解除日から契約終了日までの期間に相当する保険料については、保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。
○そして、告知義務違反による契約の解除は、将来に向かって効力を及ぼすので、契約解除日以降に発生した保険事故(上記の※3の事故)による損害については、③の告知事項に正しく告知が行われている場合であっても保険金は支払われません。
◆意向把握・確認と情報提供
からだの保険・他
保険会社または保険募集人は、保険の勧誘において、①顧客の意向を把握し、②これに沿った保険契約の締結等の提案、③当該保険契約の内容の説明、④保険契約の締結等に際して顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会を提供することが保険業法(注9)によって求められています(保険会社、保険募集人の意向把握・確認義務といいます)。
さらに、保険会社または保険募集人は、保険の勧誘において、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となる情報を提供することが、保険業法
(注9)によって求められています(情報提供義務といいます)。
資
料
保険募集においては、募集規制(一定の不適切な行為の禁止)に加え、顧客ニーズの把握に始まり保険契約の締結に至る募集プロセスの各段階におけるきめ細やかな対応の実現に向け、積極的な顧客対応を求めるために、保険業法によって二つの義務が明文化されています。
メ モ
注9 保険業法
第294条の2(顧客の意向の把握等)
保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関し、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等(保険契約の締結又は保険契約への加入をいう。以下この条において同じ。)の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際しての顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならない。ただし、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。
第294条(情報の提供)第1項
保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険(団体又はその代表者を保険契約者とし、当該団体に所属する者を被保険者とする保険をいう。次条、第294条の3第1項及び第300条第1項において同じ。)に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為(当該団体保険に係る保険契約の保険募集を行った者以外の者が行う当該加入させるための行為を含み、当該団体保険に係る保険契約者又は当該保険契約者と内閣府令で定める特殊の関係のある者が当該加入させるための行為を行う場合であって、当該保険契約者から当該団体保険に係る保険契約に加入する者に対して必要な情報が適切に提供されることが期待できると認められるときとして内閣府令で定めるときにおける当該加入させるための行為を除く。次条及び第300条第1項において同じ。)に関し、保険契約者等の保護に資するため、内閣府令で定めるところにより、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を行わなければならない。ただし、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。
?
質問
契約者と被保険者の違いとは?
答え
契約者とは、保険会社に契約の申込みをして保険料を支払う人で、契約の当事者です。被保険者とは、保険の補償を受ける人または保険の対象になる人です。契約者と被保険者は同一の人であることもあり、別人であることもあります(注10)。
共
通
くるまの保険
すまいの保険
◆損害保険における契約は、保険会社と契約者との契約です。契約者とは、保険会社に契約の申込みをする人をいいます。契約が成立すれば、保険料の支払義務を負うことになります。契約を申込んだ段階では、申込人といいます。
からだの保険・他
資
料
◆契約者は、保険料の支払義務のほかに、告知義務を負います。また、契約解約権(契約を解除(解約)する権利)や、保険料返還請求権(契約が解除された場合に返還保険料を受領する権利)を有します。
◆一方、被保険者とは、保険の補償を受ける人または保険の対象になる人を
保 険 法
メ モ
注10 保険法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(略)
二 保険者 保険契約の当事者のうち、保険給付を行う義務を負う者をいう。 三 保険契約者 保険契約の当事者のうち、保険料を支払う義務を負う者をいう。
四 被保険者 次のイからハまでに掲げる保険契約の区分に応じ、当該イからハまでに定める者をいう。
イ 損害保険契約 損害保険契約によりてん補することとされる損害を受ける者 ロ 生命保険契約 その者の生存又は死亡に関し保険者が保険給付を行うことと
なる者
ハ 傷害疾病定額保険契約 その者の傷害又は疾病(以下「傷害疾病」という。)に基づき保険者が保険給付を行うこととなる者
五 保険金受取人 保険給付を受ける者として生命保険契約又は傷害疾病定額保険契約で定めるものをいう。
(略)
共
通
くるまの保険
いいます。契約者と同一の人であることもあり、別人であることもあります。被保険者は、原則として金銭に見積もることができる経済的な利益を有している必要があります。被保険者も契約者同様に告知義務を負っています。
(契約者=被保険者の場合)
保険料
保険金
保険会社
契約者被保険者
(契約者≠被保険者の場合)
保険料
契約者
保険会社
保険金
被保険者
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆被保険者が契約者でないときは、この被保険者は契約の当事者ではないため、事故発生の場合の保険金請求権を除いては、契約解約権(ただし、保険法第34 条および第87 条に定める被保険者による解除請求を除く(「問75」 229 ページ参照)。)や、保険料返還請求権はありません。ただし、保険法や約款の規定に基づき、告知義務(「告知義務」22 ページ参照)や通知義務
(「通知義務」37 ページ参照)および損害防止義務(注11)を負っています。
注 1 保険法 第13条(損害の発生及び拡大の防止)
保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。【任意規定】
保 険 法
メ モ
◆契約者、被保険者は、ともに個人に限定せず、法人でも構いません。
契約者と被保険者が異なる契約
○住宅を対象とする火災保険など損害保険では、契約者と被保険者は同一人であることが一般的になっています。しかし、自動車保険や傷害保険などでは契約のしかたによっては、契約者と被保険者が異なる場合があります。例えば、父親が家族全員を補償の対象として家族傷害保険を契約し保険料を支払った場合には、契約者は父親となり、被保険者は父親および配偶者を含む家族全員となります。
共
通
なお、損害保険では、被保険者は基本的に補償の対象になると同時に保険金などの支払いを受けますが、生命保険では、その人の病気やケガなどが保険の対象になっている人のことを被保険者といい、保険金などの支払いを受ける人は受取人として区別しています。
?
質問
保険料の支払方法は?
答え
保険料の支払いは保険期間1年とする一時払いが基本です。
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
◆保険料の支払いは、保険期間1年とする一時払いが基本ですが、保険期間を3 年、5 年などとする長期契約や、保険料を分割して支払う分割払いもあります。長期契約の場合は、1年ごとに保険料を支払う場合に比べて保険料の総額は安くなります。一方、分割払いの場合は、一時払いに比べて保険料の総額は高くなる場合があります。
◆なお、保険料の支払いにあたっては、保険会社または代理店に現金を持参したり、指定口座への振込み、口座振替などで行われるほか、契約者の利便性から次のような方法が可能な場合もあります。
1. クレジットカードでの支払い
2. 勤務先や所属団体の給与天引き(チェック・オフ)
資
料
3. コンビニエンスストアでの支払い
メ モ
保 険 法
保険料を多く支払った場合の返金
○保険料を多く支払ってしまった場合、保険料の授受が行われたときから3年間は、保険料の返還請求権(注12)があります。この間であれば保険料を返金してもらうことが可能です。ただし、正当な契約がなされた場合には返金されませんのでご注意ください。
注12 保険法 第95 条(消滅時効)第1項
共
通
保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。【強行規定】
クレジットカードで保険料を支払った場合の契約
くるまの保険
○クレジットカードで保険料を支払う場合、保険会社からカード会社に当該クレジットカードが有効かどうか、支払う保険料が利用限度額内にあるかなどを確認し、保険会社がクレジットカード払いを承認した段階で契約は有効となります(ただし、承認した時点が保険期間開始前である場合、契約は保険期間が開始したときから有効となります。)。
○つまり、現金や振込み、口座振替による保険料の支払いと同等に扱われて契約は有効となります。契約時には支払う保険料が利用限度額内にあったものの、引き落としの順序の関係で当月内の利用限度額を超えてしまい、引き落としされなかった場合など、保険会社がカード会社から保険料相当額を領収できなかった場合には、保険会社が直接契約者に対して保険料の請求をすることができます。
○なお、引き落としが不能な期間中に事故が生じた場合でも、支払猶予期間内にカード会社と保険会社との間で決済がされれば、契約は有効です。
すまいの保険
保険料を支払う前に事故を起こした場合の保険金
○損害保険契約は諾成契約であり、契約者の申込みと保険会社の承諾があれば契約は成立します。しかし、実際に契約で使われる約款では、保険料の支払いをもって保険金の支払義務が生じる(支払責任が発生する)としている場合が一般的で、この場合、保険料を支払ってないと保険金の支払いを受けることはできません。
からだの保険・他
資
料
○ただし、保険料を口座振替で支払う特約を付帯(セット)している場合には、保険料の払込期日のある月の翌月末までに保険料が払込まれれば、保険料を払込む前に発生した事故に対しても保険金が支払われるなどの払込期日の猶予規定が設けられています。払込期日の猶予規定については各保険会社が独自に規定しており、「払込期日の属する月の翌々月末」などとしている場合もありますので、確認が必要です。
メ モ
?
質問
損害保険における契約のクーリング・オフとは?
答え
保険期間が1年を超える契約の場合、契約者は一定の条件のもと、契約の申込みを撤回または解約(クーリング・オフ)することができます。
クーリング・オフの申出は、代理店ではなく、保険会社に書面
(例:はがき)で行う必要があります。また、2022 年5月施行予定の改正保険業法によって、電子メールやウェブサイトなどを通じた電磁的記録によるクーリング・オフの申出も可能となります。
共
通
くるまの保険
◆損害保険では、保険期間が1年を超える契約の場合にはクーリング・オフを行うことができます(注13)。
すまいの保険
◆クーリング・オフを行う場合には、契約の申込みをした日、またはクーリング・オフの説明書を受け取った日のいずれか遅い日から起算して8日以内に、書面(例:はがき)で行います。また、2022 年5月施行予定の改正保険業法によって、電子メールやウェブサイトなどを通じた電磁的記録によるクーリング・オフの申出も可能となります。なお、契約を取扱った代理店ではクーリング・オフの申出を受け付けることはできないので、保険会社に対して行うことが必要になります。また、クーリング・オフの効力は、書面を出した日に生じます(注14)。
注13 保険業法(2022年5月施行予定)第309条(保険契約の申込みの撤回等)第1項第4号保険会社等若しくは外国保険会社等に対し保険契約の申込みをした者又は保険契約者(以下この条において「申込者等」という。)は、次に掲げる場合を除き、書面又は電磁的記録
(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第4項第2号において同じ。)によりその保険契約の申込みの撤回又は解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。
(略)
四 当該保険契約の保険期間が1年以下であるとき。
注14 保険業法(2022年5月施行予定)第309条(保険契約の申込みの撤回等)第1項第1号および同条第4項
一 申込者等が、内閣府令で定めるところにより、保険契約の申込みの撤回等に関する事項を記載した書面を交付された場合において、その交付をされた日と申込みをした日とのいずれか遅い日から起算して8日を経過したとき。
4 次の各号に掲げるものにより行う保険契約の申込みの撤回等は、当該各号に定める時に、その効力を生ずる。
一 書面 当該書面を発した時
二 記録媒体に記録された電磁的記録 当該記録媒体を発送した時
からだの保険・他
資
料
◆クーリング・オフを行った場合には、すでに払い込んだ保険料の全額が返還されます。ただし、契約開始後にクーリング・オフした場合には、日割で計算した保険料を差し引いた残額が返還されます(注15・注16)。
メ モ
注15 保険業法 第309 条(保険契約の申込みの撤回等)第6項
6 保険会社等又は外国保険会社等は、保険契約の申込みの撤回等があった場合において、当該保険契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。(以下略)
注16 保険業法施行規則 第242条(保険契約の解除の場合における当該解除までの期間に相当する保険料)第1項
法第309条第5項に規定する内閣府令で定める金額は、当該保険契約に係る保険料として既に受領し、又は受領すべき金銭の額を当該保険契約の保険期間のうち当該金銭の額に対応する期間(以下この項において「保険料期間」という。)の総日数で除した額に、当該保険料期間の開始の日から当該保険契約の解除の日までの日数を乗じた額に相当する金額を限度とする。
共
通
◆クーリング・オフの申込みにあたっては、書面の場合、次のような事項を記載のうえ、保険会社に郵送します。電磁的記録による申込みの場合、その方法等の詳細は加入している保険会社への確認が必要です。
1. クーリング・オフする旨の記載
2. 契約者の氏名(押印)、住所、連絡先電話番号
3. 当該契約の契約申込日
くるまの保険
4. 契約の保険種類
5. 証券番号
6. 保険料領収証番号
7. 当該保険会社の取扱営業店
8. 取扱代理店、扱者
下記の保険契約をクーリングオフします。
・契約者住所○○○○○○○○
・氏名 ○○○○(印)
・電話番号○○○○○○
・契約申込日:平成○年○月○日
・契約の保険種類:○○○○保険
・証券番号:○○○○○○○○
・領収書番号:○○○○○
・取扱営業店:
・取扱代理店名:
○○○損害保険会社
○○係 行
○○区○○○○○-○
郵 便 は が き
すまいの保険
(記入例)
からだの保険・他
◆次の契約は、原則としてクーリング・オフができませんので、注意が必要です(保険業法第309 条、保険業法施行令第45 条、保険業法施行規則第 241条)。
1.営業または事業のための契約
資
2.法人または社団・財団などが締結した契約
3.自賠責保険などの強制保険
料
4.申込者が、あらかじめ訪問日を通知し、契約目的の訪問である旨を明らかにし、保険会社・代理店などの営業所等で申込まれた契約
5.預貯金口座への振込みによる方法で保険料を払い込んだ契約(ただし、
メ モ
保険会社・代理店などに振込みを依頼された場合にはクーリング・オ フができます。)。
6.質権が設定された契約
共
7.更改契約(継続契約) など
?
質問
団体契約とは?
答え
団体契約は、一定の要件に該当する企業などの団体が契約者となって、従業員などを被保険者として締結する契約のことです。
通
くるまの保険
◆団体契約は、個人ではなく、同一企業内の従業員や同業者の団体に所属する従業員などを被保険者として、当該企業や団体が契約者となって締結する契約です。団体契約を行うためには、保険会社が定める対象となる団体の要件や被保険者の要件を充足する必要があります。団体契約のメリットは、契約人数に応じた団体割引の適用や保険料の払込み猶予などがあります。
◆団体契約の場合には、保険証券は契約者となった団体に1通のみ発行されます。保険会社によっては、保険証券の代わりに保険加入証を作成し、契約者である団体を通じて従業員などの被保険者に配付することもあります。
注17 契約者が勤務先を退職しても、契約が終了することはありませんが、分割払い方式で保険料を給与天引きで支払っている場合には、契約満期日までの残りの保険期間に対応する未払いの分割保険料を一括してお支払いいただくこともあります。
保険の契約の流れ
団体契約
保険料の流れ
団体扱契約
団体
団体
個人 個人
個人
個人
(代理店)
(代理店)
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆なお、団体契約に似ている契約形態として「団体扱契約」があります。団体扱契約とは、団体(会社など)で働いている従業員等を契約者とし、その団体が保険料を契約者からの給与天引き(チェック・オフ)などの手段によって保険会社に支払う契約のことをいいます(注17)。
メ モ
◆また、団体扱契約とは異なり、協同組合の組合員などの組織を1つの「集団」として、その「集団」が保険会社との間で保険料の集金契約を締結したうえで、その「集団」に属する人(会員など)が契約者となって契約を締結する「集団扱契約」という契約形態もあります。
解 説
❷ 損害保険の契約で使用される書類
共
◆損害保険の契約にあたって使用される書類
通
1.損害保険の契約では、次の書類が使用されます。内容を確認のうえ、大切に保管しておいてください。
(1)重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報)
(2)約款
(3)保険証券
くるまの保険
(4)保険料領収証(口座振替などの場合を除く。)
2.なお、保険種目により、約款の内容を分かりやすく記載した「契約のしおり」を契約時に配付している保険会社もあります。
◆重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報)
損害保険の契約に際して、契約する保険に関する重要なことがらを記載した「契約概要」と「注意喚起情報」が渡されます。
すまいの保険
「契約概要」には、商品の仕組み、補償内容、付帯(セット)できる主な特約、保険期間、保険金額、保険料に関する事項、保険料の払込みに関する事項、配当金に関する事項、解約返戻金の有無などが記載されています。
注1 保険会社向けの総合的な監督指針 Ⅱ−4-2-2(保険契約の募集上の留意点)
(略)
(2)法第294条、法第300条の2関係(情報提供義務)
(略)
②書面の交付又はこれに代替する電磁的方法により、情報の提供を行うにあたっては、顧客が保険商品の内容を理解するために必要な情報(以下、「契約概要」という。)と顧客に対して注意喚起すべき情報(以下、「注意喚起情報」という。)について、記載しているか。なお、「契約概要」と「注意喚起情報」の主な項目は、以下のとおりとする。
(注1)「契約概要」と「注意喚起情報」について、同一媒体を用いて一体で記載している場合には、以下のア.(ア)及びイ.(ア)について省略したうえで、当該情報を「契約情報」として表示することで足りる。
(注2)法第300条の2に規定する特定保険契約(以下、「特定保険契約」という。)については、法第294条第1項の規定は適用されず、法第300条の2で準用する金融商品取引法(以下、「準用金融商品取引法」という。)第37条の3第1項に規定する書
からだの保険・他
資
料
「注意喚起情報」には、クーリング・オフ、告知義務などの内容、保険期間の開始時期、保険金が支払われない場合の主なもの、保険料の払込猶予期間、契約の失効・復活、解除(解約)と解約返戻金の有無、セーフティネットなど、特に注意が必要な事項が記載されています(注1)。
メ モ
面(以下、「契約締結前交付書面」という。)を交付又はこれに代替する電磁的方法による提供を行う必要があることに留意すること。
ア.「契約概要」の項目
(ア)当該情報が「契約概要」であること。
(イ)商品の仕組み
(ウ)保障(補償)の内容
(注)保険金等の支払事由、支払事由に該当しない場合及び免責事由等の保険金等を支払わない場合について、それぞれ主なものを記載すること。保険金等を支払わない場合が通例でないときは、特に記載すること。
(エ)付加できる主な特約及びその概要
共
(オ)保険期間
(カ)引受条件(保険金額等)
通
(キ)保険料に関する事項
(ク)保険料払込みに関する事項(保険料払込方法、保険料払込期間)
(ケ)配当金に関する事項(配当金の有無、配当方法、配当額の決定方法)
(コ)解約返戻金等の有無及びそれらに関する事項イ.「注意喚起情報」の項目
(ア)当該情報が「注意喚起情報」であること。
(イ)クーリング・オフ(法第309条第1項に規定する保険契約の申込みの撤回等)
くるまの保険
(ウ)告知義務等の内容
(注)危険増加によって保険料を増額しても保険契約が継続できない(保険期間の中途で終了する)場合がある旨の約款の定めがあるときは、それがどのような場合であるか、記載すること。
(エ)責任開始期
(オ)支払事由に該当しない場合及び免責事由等の保険金等を支払わない場合のうち主なもの。
(注)通例でないときは、特に記載すること。
(カ)保険料の払込猶予期間、契約の失効、復活等
すまいの保険
(注)保険料の自動振替貸付制度を備えた保険商品については、当該制度の説明を含む。
(キ)解約と解約返戻金の有無
(ク)セーフティネット
(ケ)手続実施基本契約の相手方となる指定ADR 機関(法第2条第28項に規定する
「指定紛争解決機関」をいう。以下同じ。)の商号又は名称(指定ADR 機関が存在しない場合には、苦情処理措置及び紛争解決措置の内容)
(コ)補償重複に関する以下の事項
(注)補償重複とは、複数の損害保険契約の締結により、同一の被保険利益について同種の補償が複数存在している状態をいう。
からだの保険・他
a.補償内容が同種の保険契約が他にある場合は、補償重複となることがあること
b.補償重複の場合の保険金の支払に係る注意喚起 c.補償重複の主な事例
(サ)特に法令等で注意喚起することとされている事項
資
料
(略)
メ モ
◆約款
1.損害保険は、将来発生するかもしれない経済的損失を補償する商品です。また、多数の人の契約を前提とする損害保険契約においては、契約者ごとに契約内容を定めることは困難です。そこで、保険会社は契約の内容をあらかじめ「約款」として定めています。約款は保険会社が作成するものですが、契約者に対して拘束力を持つと考えられています。
共
2.約款は、保険会社の責任(補償内容)や契約者・被保険者の義務等を定めており、普通保険約款と特約条項で構成されるのが通例です。
通
普通保険約款は、契約の標準的な内容にあたるもので、保険金を支払う場合・支払わない場合、保険の対象、保険金の支払額、告知義務、通知義務、損害発生時の通知義務などを定めています。
くるまの保険
特約条項は、保険の対象となる物や人の危険(リスク)の実態や必要に応じて、標準的な契約内容である普通保険約款を修正・変更するもので、補償範囲を変更したりします。この特約条項は普通保険約款に優先して適用されます。
◆保険証券
1.保険証券には、保険の対象、保険金額、保険料などが記載され、契約の成立および契約内容の証拠と解されています。
すまいの保険
2.保険法上、保険会社は、契約締結後、遅滞なく、保険証券を交付しなければならないとされています(注2)。(自賠責保険については自賠責保険証明書が交付されます。)
なお、自動的に契約を更新させるように設定した場合には、新たな保険証券は発行されず、保険契約継続証が送付されます。
保 険 法
注2 保険法 第6条(損害保険契約の締結時の書面交付)
保険者は、損害保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 保険者の氏名又は名称 二 保険契約者の氏名又は名称
三 被保険者の氏名又は名称その他の被保険者を特定するために必要な事項四 保険事故
五 その期間内に発生した保険事故による損害をてん補するものとして損害保険契約で定める期間
六 保険金額(保険給付の限度額として損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)又は保険金額の定めがないときはその旨
七 保険の目的物(保険事故によって損害が生ずることのある物として損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)があるときは、これを特定する
からだの保険・他
資
料
3.仮に保険証券を紛失・焼失などした場合であっても、保険会社へ契約者の氏名、住所、生年月日などを申し出ていただくことにより、保険会社の定める手続きを取れば、保険金の支払いを受けることができます。
解 説
❸ 損害保険の契約の変更
メ モ
ために必要な事項
八 第9条ただし書に規定する約定保険価額があるときは、その約定保険価額九 保険料及びその支払の方法
十 第29条第1項第1号の通知をすべき旨が定められているときは、その旨十一 損害保険契約を締結した年月日
十二 書面を作成した年月日
【任意規定】
2 前項の書面には、保険者(法人その他の団体にあっては、その代表者)が署名し、又は記名押印しなければならない。【任意規定】
保険法 第69条(傷害疾病定額保険契約の締結時の書面交付)
保険者は、傷害疾病定額保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 保険者の氏名又は名称 二 保険契約者の氏名又は名称
三 被保険者の氏名その他の被保険者を特定するために必要な事項
四 保険金受取人の氏名又は名称その他の保険金受取人を特定するために必要な事項五 給付事由
六 その期間内に傷害疾病又は給付事由が発生した場合に保険給付を行うものとして傷害疾病定額保険契約で定める期間
七 保険給付の額及びその方法八 保険料及びその支払の方法
九 第85条第1項第1号の通知をすべき旨が定められているときは、その旨十 傷害疾病定額保険契約を締結した年月日
十一 書面を作成した年月日
【任意規定】
2 前項の書面には、保険者(法人その他の団体にあっては、その代表者)が署名し、又は記名押印しなければならない。【任意規定】
共
通
くるまの保険
◆通知義務
1.保険においては、一般的な売買契約のように商品を購入した時点で契約内容が完結するものではなく、保険期間が終了するまで継続するという特徴があり、契約を締結した時の保険料計算の前提となった状態が、保険期間の途中で変わることも想定しなければなりません。
2.そのために保険会社は、約款で契約者および被保険者に契約条件の変更に関する通知を求めています。このような通知を求めた事項(通知事項)について事実を告げる義務のことを、通知義務といいます。
(1)自動車保険の通知事項の具体例
⇒「くるまの保険」編の「問19」を参照
(2)火災保険の通知事項の具体例
⇒「すまいの保険」編の「問59」を参照
(3)傷害保険の通知事項の具体例
⇒「からだの保険・他」編の「問76」を参照
すまいの保険
からだの保険・他
「通知事項」に関する関連項目の索引
▶くるまの保険 117 ページ
▶すまいの保険 192 ページ
資
料
▶からだの保険•他 232 ページ
メ モ
3.契約内容の変更によって危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)が増加する場合、その危険増加が引受けの範囲内であれば、追加保険料を支払うことにより契約を継続することができます。ただし、危険増加が引受けの範囲外であれば、保険会社の判断により契約が解除されることになります(他の商品に加入することにより対応するケースもあります。)。
共
通
4.保険料の変更が必要となる場合には、危険増加が発生した日を基準として、変更前の保険料と変更後の保険料を比較し、差額を請求することになります。
くるまの保険
5.なお、従来の取扱いとして商法では危険増加の事実を「あらかじめ」保険会社に通知することになっていたのですが、保険法では「遅滞なく」通知すれば足りるとされました。また、危険増加の起算点については、一義的には「危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)が増加した時」となります。
「解除」に関する関連項目の索引
▶共通 23 ページ
▶共通 42 ページ
▶くるまの保険 119 ページ
▶すまいの保険 194 ページ
▶からだの保険•他 235 ページ
▶からだの保険•他 263 ページ
◆通知義務違反による解除
1.危険増加が引受けの範囲内であって追加保険料を支払えば契約を継続することができるときであっても、契約者や被保険者が、通知事項について故意または重大な過失により遅滞なく通知しなかった場合(以下「通知義務
違反」といいます。)は、保険会社は契約を解除することができます(注1)。
注1 保険法 第29条(危険増加による解除)
保 険 法
すまいの保険
損害保険契約の締結後に危険増加(告知事項についての危険が高くなり、損害保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいう。以下この条及び第31条第2項第2号において同じ。)が生じた場合において、保険料を当該危険増加に対応した額に変更するとしたならば当該損害保険契約を継続することができるときであっても、保険者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、当該損害保険契約を解除することができる。
一 当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なくその旨の通知をすべき旨が当該損害保険契約で定められていること。
からだの保険・他
二 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前号の通知をしなかったこと。
【片面的強行規定】
2 前条第4項の規定は、前項の規定による解除権について準用する。この場合において、同条第4項中「損害保険契約の締結の時」とあるのは、「次条第1項に規定する危険増加が生じた時」と読み替えるものとする。【強行規定】
保険法 第85 条(危険増加による解除)
資
料
傷害疾病定額保険契約の締結後に危険増加(告知事項についての危険が高くなり、傷害疾病定額保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいう。以下この条及び第88条第2項第2号において同じ。)が生じた場合において、保険料を当該危険増加に対応した額に変更するとしたならば当該傷害疾病定額保険契約を継続することができるときであっても、保険者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、当該傷害疾病定額保険契約を解除することができる。
メ モ
一 当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なくその旨の通知をすべき旨が当該傷害疾病定額保険契約で定められていること。
二 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前号の通知をしなかったこと。
【片面的強行規定】
2 前条第4項の規定は、前項の規定による解除権について準用する。この場合において、同条第4項中「傷害疾病定額保険契約の締結の時」とあるのは、「次条第1項に規定する危険増加が生じた時」と読み替えるものとする。【強行規定】
共
通
2.なお、保険会社が契約解除の原因があることを知ったときから1か月、または危険増加時から5 年を経過すると、保険会社は契約を解除することができません。
◆解除による効果
くるまの保険
1.通知義務違反による契約の解除は、将来に向かってのみ、その効力が生じて契約が終了し、解除前に遡及して契約が終了することはありません。また、契約の解除後に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しては、当然、保険会社は保険金を支払いませんが、契約の解除前に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しても、保険会社は保険金を支払いません。なお、すでに保険金を支払っている場合には保険金の返還を請求できます。
すまいの保険
2.ただし、通知義務違反にあたる事実と保険事故による損害(または傷害疾病)との間に因果関係が認められない場合は、保険会社は保険金を支払います(注2)。なお、通知義務違反にあたる事実と保険事故による損害
からだの保険・他
資
料
(または傷害疾病)の間の因果関係に関する立証責任は契約者側が負うこととなります。
注2 保険法 第31条(解除の効力)
損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。【片面的強行規定】
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。
保 険 法
一 第28条第1項 解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
二 第29条第1項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
三 前条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害
【片面的強行規定】
保険法 第88 条(解除の効力)
傷害疾病定額保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。【片面的強行規定】
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により傷害疾病定額保険契約の解除をした場合に
メ モ
は、当該各号に定める事由に基づき保険給付を行う責任を負わない。
一 第84条第1項 解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、同項の事実に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
二 第85条第1項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
三 第86条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した給付事由
【片面的強行規定】
共
通
3.通知義務違反により契約が解除された場合、未経過期間に対し保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。
保 険 法
通知義務違反の対応のイメージ
くるまの保険
契約開始日 4/1
契約終了日 3/31
通知の期限 | |
危険(損害の発生の | |
可能性)の増加時点 | |
危険増加の通知がなくとも、当初の条件に対応する危険(損害の発生の可能性)については保険事故による損害に対して保険金が支払われる。
危険増加の通知(契約条件の変更)があれば、保険金を支払う。通知がない場合には、因果関係のある保険事故による損害に対して保険金が支払われない。
危険増加後の条件による保険料の総額
当初の条件による
保険料の総額
遅滞なく
すまいの保険
○保険期間の途中のある時点で、契約当初と比べて危険(損害の発生の可能性)が増加した契約があったとします。
契約者または被保険者は危険増加後に遅滞なく保険会社に危険(損害の発生の可能性)が増加したことを通知する必要があり、通知を受けた保険会社は危険(損害の発生の可能性)が増加した時点から、その増加分に見合うだけの保険料を追加で請求することとなります。
からだの保険・他
○契約者または被保険者が通知義務違反をした場合は、通知義務違反にあたる事実と保険事故による損害の間に因果関係が認められない場合には保険金が支払われますが、通知義務違反にあたる事実と保険事故による損害の間に因果関係が認められる場合には保険金が支払われません。
保険料を収受していない増加した危険(損害の発生の可能性)について補償を行うことは、保険料負担の公平の原則(「保険料負担の公平の原則」3ページ参照)に反することから、このような取扱いとしています。
資
料
●参考文献:「新保険法(損害保険・傷害疾病保険)逐条改正ポイント解説」(保険毎日新聞社、2008年7月発行)94ページ
解 説
➍ 損害保険の契約の終了
メ モ
満期通知
○保険会社には契約者に対し契約の満期時に通知をする義務はありません。満期管理(満期日のチェックと継続手続)については、契約者自身の責任で管理していくことが必要です。
○しかし、保険会社では、契約の継続手続きの忘れを防ぐために、サービスの一環として満期通知を行う場合があります。
○なお、自動的に契約を継続させるように設定した場合には、満期通知ではなく、満期前に契約の継続を確認する書面が送付されます。
共
通
◆損害保険の契約の終了、無効、取消し、失効、解除
1. 終了
契約の終了事由には、次のようなものがあります。
くるまの保険
①定められた保険期間が満了となったとき
②保険事故により支払われた保険金が、あらかじめ定められた保険金額に達したとき
「無効」に関する関連項目の索引
▶くるまの保険 118 ページ
▶すまいの保険 193 ページ
▶からだの保険•他 233 ページ
▶からだの保険•他 262 ページ
2. 無効
例えば、次のような場合には契約は無効となります。
すまいの保険
①契約者が、保険金を不法に取得する目的または第三者に保険金を不法に取得させる目的をもって契約を締結したとき(注1)
注1 民法 第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
からだの保険・他
資
料
②契約を締結する前に発生した保険事故による損害を補償する(または傷害疾病による治療•死亡等に基づき保険金を支払う)契約(遡及保険)について、当該契約の申込み•承諾をした時において、契約者等がすでに保険事故(または傷害疾病による治療•死亡等)が発生していることを知っていたとき(注2)
注2 保険法 第5条(遡及保険)第1項
損害保険契約を締結する前に発生した保険事故(損害保険契約によりてん補することとされる損害を生ずることのある偶然の事故として当該損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)による損害をてん補する旨の定めは、保険契約者が当該損害保険契約の申込み又はその承諾をした時において、当該保険契約者又は被保険者が既に保険事故が発生していることを知っていたときは、無効とする。【強行規定】
保 険 法
保険法 第68 条(遡及保険)第1項
傷害疾病定額保険契約を締結する前に発生した給付事由に基づき保険給付を行う旨の定めは、保険契約者が当該傷害疾病定額保険契約の申込み又はその承諾をした時において、当該保険契約者、被保険者又は保険金受取人が既に給付事由が発生していることを知っていたときは、無効とする。【強行規定】
「取消し」に関する
関連項メ目のモ索引
▶くるまの保険 118 ページ
▶すまいの保険 193 ページ
▶からだの保険•他 234 ページ
▶からだの保険•他 263 ページ
3. 取消し
例えば、次のような場合には契約を取消すことができます。
①未成年者が、法定代理人の同意を得ないまま契約を締結したとき(注3)
注3 民法 第5条(未成年者の法律行為)
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
共
通
②保険会社が、契約者等の詐欺または強迫によって契約を締結したとき(注4)
「失効」に関する関連項目の索引
▶くるまの保険 119 ページ
▶すまいの保険 194 ページ
▶からだの保険•他 234 ページ
▶からだの保険•他 263 ページ
注4 民法 第96条(詐欺又は強迫)
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
くるまの保険
4. 失効
すまいの保険
保険事故以外の事故によって保険の対象になる物や人が滅失したり死亡したりした場合などについては、契約の当事者の意思表示がなくても、原則として契約は失効します。
「解除」に関する関連項目の索引
▶共通 23 ページ
▶共通 38 ページ
▶くるまの保険 119 ページ
▶すまいの保険 194 ページ
▶からだの保険•他 235 ページ
▶からだの保険•他 263 ページ
5. 解除
契約者は、いつでも契約を解除( 解約)することができます(注5)。
また、保険会社は、例えば、次のような場合には契約を解除することができます。
①告知義務違反があったとき
②通知義務違反があったとき
からだの保険・他
③保険料不払い(保険料の分割払いにおける保険料未納の場合等)があったとき(注6)
保 険 法
注5 保険法 第27条(保険契約者による解除)
保険契約者は、いつでも損害保険契約を解除することができる。【任意規定】
保険法 第83条(保険契約者による解除)
保険契約者は、いつでも傷害疾病定額保険契約を解除することができる。【任意規定】
資
料
④保険会社の契約者等に対する信頼を損ない、契約の存続を困難とするような重大な事由(以下「重大事由」といいます。)があったとき(注7)
注7 保険法 第30 条(重大事由による解除)
保険者は、次に掲げる事由がある場合には、損害保険契約を解除することができる。
保 険 法
一 保険契約者又は被保険者が、保険者に当該損害保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として損害を生じさせ、又は生じさせようとしたこと。
二 被保険者が、当該損害保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。
三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者又は被保険者に対する信頼を損ない、当該損害保険契約の存続を困難とする重大な事由
【片面的強行規定】
保険法 第86 条(重大事由による解除)
保険者は、次に掲げる事由がある場合には、傷害疾病定額保険契約を解除することができる。
一 保険契約者、被保険者又は保険金受取人が、保険者に当該傷害疾病定額保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として給付事由を発生させ、又は発生させようとしたこと。
二 保険金受取人が、当該傷害疾病定額保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。
三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者、被保険者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該傷害疾病定額保険契約の存続を困難とする重大な事由
【片面的強行規定】
メ モ
途中で解除(解約)する際の手続きの進め方と注意点
○契約を保険期間の途中で解除(解約)する場合には、契約者は保険会社に対して所定の書面により通知する必要があります。
○保険期間の途中で解除(解約)した場合は、残りの保険期間に応じて保険料が返還されます。ただし、保険会社の経費に充てられる部分が差し引かれる場合があるため、残りの保険期間分の保険料がすべて返還されるとは限りません。例えば、保険期間が1年・保険料一括払いの契約で契約から6か月後に解除(解約)しても、必ずしも払い込んだ保険料の半分が返還されるわけではないということです。
○契約を解除(解約)する場合には、次のような点に注意することが必要です。
1. 火災保険の保険金請求権に質権または譲渡担保権が設定されているときは、あらかじめ質権者または譲渡担保権者の書面による同意を得る必要があります。
2. 積立型の保険の保険料には、保険会社の経費に充当される部分が含まれていますので、解約返戻金が既払保険料の合計額より少なくなる場合があります。とりわけ、保険料の払込方法が一括払い以外で、契約後、短期間のうちに解除(解約)した場合には、解約返戻金が全くないこともあります。
注6 民法 第541条(催告による解除)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
共
通
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
メ モ
保 険 法
重大事由による契約解除
○重大事由
1. 保険の契約成立の前提として、当事者間に信頼関係があることが求められます。故意に事故を起こすなど、契約者側に保険会社との信頼関係を破壊するような行為(重大事由)があった場合には、従来の商法では解除の規定がなかったのですが、保険法では保険会社が契約を解除することができると規定されています(これを「重大事由解除」といいます。)。
共
2. 重大事由によって保険会社が契約を解除することができるのは、次のような場合です。
通
①契約者等(被保険者、保険金を受け取るべき者(以下「保険金受取人」といいます。)を含む。)が、契約に基づく保険金を支払わせることを目的として損害(または傷害疾病による治療・死亡等)を生じさせ、または生じさせようとした場合
②被保険者または保険金を受け取るべき者が、この保険契約に基づく保険金の請求について、詐欺を行い、または行おうとした場合
③①〜②のほか、契約者等に対する保険会社の信頼を損ない、契約の存続を困難とする事由を生じさせた場合
くるまの保険
3. 上記のほか、他の保険契約等との重複によって、被保険者に係る保険金額等の合計額が著しく高額となり、保険制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがある場合にも契約を解除することがあり、特に傷害保険・医療保険などでは、この旨が約款に明記されているのが一般的です(注8)。
注8 傷害保険普通保険約款 第19条(重大事由による解除)
(1)当会社は、次の①から⑤までのいずれかに該当する事由がある場合には、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。
①保険契約者、被保険者または保険金を受け取るべき者が、当会社にこの保険契約に基づく保険金を支払わせることを目的として傷害を生じさせ、または生じさせようとしたこと。
すまいの保険
②被保険者または保険金を受け取るべき者が、この保険契約に基づく保険金の請求について、詐欺を行い、または行おうとしたこと。
③保険契約者が、次のア.からオ.までのいずれかに該当すること。ア.反社会的勢力(注1)に該当すると認められること。
イ.反社会的勢力(注1)に対して資金等を提供し、または便宜を供与する等の関与をしていると認められること。
ウ.反社会的勢力(注1)を不当に利用していると認められること。
エ.法人である場合において、反社会的勢力(注1)がその法人の経営を支配し、またはその法人の経営に実質的に関与していると認められること。
からだの保険・他
オ.その他反社会的勢力(注1)と社会的に非難されるべき関係を有していると認められること。
④他の保険契約等との重複によって、被保険者に係る保険金額、入院保険金日額、通院保険金日額等の合計額が著しく過大となり、保険制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがあること。
⑤①から④までに掲げるもののほか、保険契約者、被保険者または保険金を受け取るべき者が、①から④までの事由がある場合と同程度に当会社のこれらの者に対する信頼を損ない、この保険契約の存続を困難とする重大な事由を生じさせたこと。
(2)当会社は、次の①または②のいずれかに該当する事由がある場合は、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約(注2)を解除することができます。
資
①被保険者が、(1)③ア.からウ.までまたはオ.のいずれかに該当すること。
料
②被保険者に生じた傷害に対して支払う保険金を受け取るべき者が、(1)③ア.からオ.までのいずれかに該当すること。
メ モ
重大事由による契約解除(つづき)
(3()1)または(2)の規定による解除が傷害(注3)の発生した後になされた場合であっても、第21条(保険契約解除の効力)の規定にかかわらず、(1)①から⑤までの事由または(2)①もしくは②の事由が生じた時から解除がなされた時までに発生した傷 害(注3)に対しては、当会社は、保険金(注4)を支払いません。この場合において、既に保険金(注4)を支払っていたときは、当会社は、その返還を請求することができます。
共
(注1)反社会的勢力
通
暴力団、暴力団員(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を含みます。)、暴力団準構成員、暴力団関係企業その他の反社会的勢力をいいます。
(注2)保険契約
その被保険者に係る部分に限ります。
(注3)傷害
(2)の規定による解除がなされた場合は、その被保険者に生じた傷害をいいます。
(注4)保険金
くるまの保険
(2)の②の規定による解除がなされた場合は、保険金を受け取るべき者のうち、(1)③ア.からオ.までのいずれかに該当する者の受け取るべき金額に限ります。
○解除による効果
1.重大事由による契約の解除は、将来に向かってのみ、その効力が生じて契約が終了し、解除前に遡及して契約が終了することはありません。
すまいの保険
また、契約の解除後に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しては、当然、保険会社は保険金を支払いませんが、重大事由が生じた時から契約が解除されるまでの間に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しても、保険会社は保険金を支払いません。なお、すでに保険金を支払っている場合には保険金の返還を請求できます。
2. 重大事由により契約が解除された場合の保険料返還の取扱いは、以下のとおりです。
①自動車保険・火災保険・傷害保険など
未経過期間に対して保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。
②医療保険
保険料払込期間が終了している場合には、解約返戻金が返還されます。保険料払込期間中に契約が解除となる場合においては、保険料が返還されないこととしている商品もあります。
からだの保険・他
3. なお、保険法においては、不正利用事案に適切に対処するという重大事由解除の制度趣旨にかんがみ、重大事由と保険事故による損害(または傷害疾病)との間の因果関係が認められない場合に保険会社が保険金を支払う旨の規定や、保険会社の契約解除権の行使期間を制限する旨の規定は設けられていません。
●参考文献:萩本修 編「一問一答保険法」(商事法務、2009年5月発行)99〜104ページ
資
料
●参考文献:東京海上日動火災保険株式会社編著「損害保険の法務と実務【第2 版】」(一般社団法人金融財政事情研究会、2016 年7 月発行)368〜398 ページ
解 説
➊ 保険事故
メ モ
Ⅴ
保険金の請求について
保 険 法
注1 保険法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 六 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることの
ある損害をてん補することを約するものをいう。
共
通
◆保険事故とは、保険会社が保険金を支払う要件となる事故のことで、自動車保険における人身事故や火災保険における火災などがこれにあたります。保険法では保険事故を「一定の偶然の」事故と限定しており(注1)、次の要件を満たさなければ保険事故とは認められません。
偶然性 | 客観的に契約成立時において保険事故が発生する可能性が不確定であること |
一定性 | 一定の基準に基づいてその範囲が限定されていること |
公序良俗に反しない | 保険事故は公序良俗に反するものであってはならないこと |
保 険 法
注2 保険法 第14条(損害発生の通知)
保険契約者又は被保険者は、保険事故による損害が生じたことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。【任意規定】
保険法 第79条(給付事由発生の通知)
保険契約者、被保険者又は保険金受取人は、給付事由が発生したことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。【任意規定】
くるまの保険
すまいの保険
◆契約者、被保険者、保険金を受け取るべき者(以下「保険金受取人」といいます。)は、損害(または傷害疾病による治療・死亡等)が発生したことを知ったときは、遅滞なく保険会社に通知しなければなりません。これは、保険法第14 条および第79 条で規定されています(注2)。
からだの保険・他
「重複保険の
保険金支払い」に関する関連項目の索引
▶すまいの保険 188 ページ
資
料
▶からだの保険•他 217 ページ
◆同じ損害を補償する保険契約を複数にわたり締結している場合(傷害保険や医療保険などの傷害疾病定額保険を除く。)、約款に特段の定めがない限り、どの保険会社に対しても契約に基づき損害額の全額を請求することができます(注3)。
ただし、その保険会社の契約に基づき支払い可能な範囲を超えて保険金は支払われません。したがって、支払われた保険金では損害額の全額に満たない場合などには、他の保険会社に請求する必要があります。
なお、保険金について実損払いを基本とする損害保険では、被保険者は損害額を超えて保険金を受領することはできませんので、他の契約から保険
注3 保険法 第20条(重複保険)
損害保険契約によりてん補すべき損害について他の損害保険契約がこれをてん補することとなっている場合においても、保険者は、てん補損害額の全額(前条に規定する場合にあっては、同条の規定により行うべき保険給付の額の全額)について、保険給付を行う義務を負う。
【任意規定】
2 二以上の損害保険契約の各保険者が行うべき保険給付の額の合計額がてん補損害額
(各損害保険契約に基づいて算定したてん補損害額が異なるときは、そのうち最も高い額。以下この項において同じ。)を超える場合において、保険者の一人が自己の負担部分(他の損害保険契約がないとする場合における各保険者が行うべき保険給付の額のその合計額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額をいう。以下この項において同じ。)を超えて保険給付を行い、これにより共同の免責を得たときは、当該保険者は、自己の負担部分を超える部分に限り、他の保険者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。【任意規定】
保 険 法
メ モ
金が支払われた場合には、その支払われた額を差し引いた残額を請求することになります。
共
通
くるまの保険
◆事故が発生した場合における保険金請求手続きの流れは、概ね次のとおりです。
1. 事故の連絡
(1)契約者または被保険者(以下「契約者など」といいます。)は、事故が発生した場合、契約している保険会社または代理店にできるだけ早く連絡をします。
(2)保険会社は、事故の連絡を受け付けた後に、契約内容の確認を行います。
すまいの保険
2. 保険金の請求から受け取りまでの説明と保険金請求の案内
(1)保険会社から、事故の内容などに応じて次の事項などについて説明があります。
○保険金の受け取りまでの流れ
○契約の保険で補償される内容(受取れる保険金など)
○契約の保険では補償されない場合はその理由
○一般的な賠償責任の範囲や示談交渉(損害賠償事故の場合)
からだの保険・他
(2)保険会社から、保険金請求書と保険金の請求に必要な書類について案内があります。
3. 保険金の請求に必要な書類の提出
(1)契約者などは、保険金の請求に必要な書類を取揃え、保険会社に提出します。
資
(2)契約者などから保険金請求書の提出がない場合には、契約している保険会社から請求の意思確認が行われる場合があります。
料
4. 損害調査と損害調査への協力
(1)保険会社は、適切な保険金の支払いのために、事故の状況や損害の
メ モ
状況、治療の経過などについて確認のための調査を行います。契約者などはこの調査に協力してください。
(2)調査は、保険会社が専門の調査会社に委託して行うことがあります。また、ケガの場合は、本人の同意を得たうえで、医療機関に治療内容などを照会することがあります。
5. 支払う保険金の説明
共
(1)保険会社から、調査の結果と契約内容に基づく支払保険金について説明があります。
通
(2)契約者などは、上記内容を確認します。
(3)事故の内容によっては、保険金が支払われない場合があります。このような場合には、保険会社から、その理由について約款や調査の結果などに基づき説明があります。
6. 保険金の受け取り
くるまの保険
(1)保険会社から、被保険者または保険金受取人の指定の口座に保険金を支払います。
(2)保険金の支払いにあたっては、保険会社から書面などで支払額などの案内があります。
保険契
約
の
締結
・「 ・ ・
契 保 保
約 険 険
概 約 証
要 款 券
」「注意喚起情報
」
2
保険
金
の
請
求
か
ら
受
け
取
り
ま
で
の
説明
4
損害調
査
へ
の
協力
6
保険
金
の
受
け
取
り
契約者など
事 故(損害
)
発生
保険会社
書
類
の
受付
い
払
支
の
金
保険
損害調査
契約内容確認
・
付
受
の
故
事
求
請
金
険
保
案内
の
求
保険金請
説明
の
金
5
支払う保険
必要な
に
求
出 請
提 の
の 金
類 険
3
書 保
連絡
の
故
1
事
すまいの保険
(3)契約者、被保険者、保険金受取人は、上記案内と振り込まれた保険金について、確認します。
からだの保険・他
資
料
◆損害保険は偶然な事故による損害に対して保険金が支払われますが、保険の種類によっては、損害に対する補償(損害保険金)に加えて、その損害に伴う諸費用に対する保険金(費用保険金)が支払われる場合があります。詳しくは保険金の請求の際に、保険会社または代理店にご確認ください。
メ モ
◆保険金の請求に必要な書類には次のようなものがあります。必要書類は、保険金の請求内容により異なりますので、詳しくは保険会社または代理店にご確認ください。
1. 保険金請求書(保険会社所定のもの)
2. 事故を証明する書類
○交通事故証明書(自動車安全運転センター発行)
○罹災証明書(消防署または市区町村発行)
3. ケガ・病気の症状、入院・通院の確認書類
共
○医師の診断書、診療報酬明細書
通
4. 修理費用を確認する書類
○修理見積書、損害状況がわかる写真
5. 相手との責任内容を明確化する書類
○示談書、損害賠償に関する承諾書
?
質問
事故が発生したときの契約者などの義務とは?
答え 損害防止義務、損害発生の際の通知義務などがあります。
くるまの保険
すまいの保険
◆契約者などは、事故が発生した場合、損害の発生および拡大の防止に努めなければなりません。これを「損害防止義務」といい、保険法第13 条で規定されています(注4)。
注4 保険法 第13条(損害の発生及び拡大の防止)
保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。【任意規定】
保 険 法
からだの保険・他
◆通常、約款においても、損害の発生および拡大の防止に努めなければならないとし、正当な理由がなく損害防止義務に違反した場合には、損害の発生や拡大を防止することができたと認められる額を損害額から差し引きする旨が規定されているのが一般的です。
資
◆契約者、被保険者、保険金受取人は、損害(または傷害疾病による治療・死亡等)が発生したことを知ったときは、遅滞なく保険会社に通知する義務を負っています。これを「損害発生(または給付事由発生)の通知義務」といい、保険法第14 条および第79 条で規定されています。
料
正当な理由なく損害発生(または給付事由発生)の通知義務を怠った場合には、約款でそのことによって保険会社が被った損害の額を差し引きする旨が規定されているのが一般的です。
メ モ
?
質問
保険金の支払期限はいつですか?
答え
原則として保険金の請求が完了した日を含めて30日以内です。ただし、特別な照会や調査が必要な場合には延長されます。
共
通
◆また、保険会社は、保険金請求に必要な所定の書類以外の追加必要書類の提出や保険会社が行う調査への協力を求めることがあります。この場合には、書類などを速やかに提出し、協力をする必要があります。契約者、被保険者、保険金受取人が、正当な理由がなく協力しない場合や書類などに事実と異なる記載をした場合には、約款でそれによって保険会社が被った損害の額を差し引きする旨が規定されているのが一般的です。
くるまの保険
◆保険法では、保険金の支払期限を定める場合、保険金の支払いのために必要な事項を確認するための合理的な期間(これを「相当の期間」と規定しています。)を経過する日を保険金の支払期限とするとしています(注5)。この合理的な期間について、損害保険の約款では一般的に、請求完了日からその日を含めて30日と定めています。
すまいの保険
この期間は、生命保険の約款(一般的には5日)と比べると損害保険の方が長いということになりますが、その理由は、損害保険では、保険金支払いを行うにあたり事故の原因や発生状況の確認、損害額の算定など、損害調査に時間を要するという事情があります。
からだの保険・他
◆また、損害調査のために特別な照会や調査が不可欠な場合もあり、そのような場合にはこの期間(30日)を延長します。例えば、以下の場合における延長期間を約款で定めています。なお、延長する場合には、保険会社は被保険者または保険金受取人に対して、保険金支払いを行うために確認が必要な事項と確認が終了する時期を通知することとしています。
1.警察・検察・消防等の機関による捜査・調査結果の照会を行う場合
2.専門機関による鑑定等の結果の照会を行う場合
3.災害救助法が適用された災害の被災地域において必要な調査を行う場合
4.日本国外における調査を行う場合
資
料
◆保険金の支払時期は、請求完了日(当日を含む。)から起算することとなります。請求完了日とは、保険金の請求に必要なすべての書類が保険会社に提出された日となります。
◆なお、支払期限を過ぎて保険金が支払われる場合には、原則として遅延損
害金が支払われます。
注5 保険法 第21条(保険給付の履行期)
保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、保険事故、てん補損害額、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが損害保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。【片面的強行規定】
2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る保険事故及びてん補損害額の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。【任意規定】
3 保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者又は被保険者が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。【片面的強行規定】
保険法 第81条(保険給付の履行期)
保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、給付事由、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが傷害疾病定額保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。【片面的強行規定】
くるまの保険
2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る給付事由の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。【任意規定】
3 保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者、被保険者又は保険金受取人が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。
保険事故発生
相当の期間
(原則30日・延長する場合あり)
遅延損害金の発生
支払期限
請求完了日
すまいの保険
【片面的強行規定】
メ モ
共
通
保 険 法
自賠責保険の被害者請求
○自賠責保険の被害者請求の場合については、保険金支払いではなく損害賠償額の支払いとなり、保険法第21条(保険給付の履行期)第1項の規定が適用されないこととなります。
資
料
○被害者請求の場合には、自動車事故の事実関係、損害の程度、因果関係の有無、過失割合等の確認を要する事由が必ずしも明らかにされずに請求されることがあり、損害賠償額の支払いのために確認を要する事由とこれに要する期間が事案ごとに異なってきます。このため、具体的な支払期限は規定されておらず、個別の事実関係に照らして、確認に必要な期間が経過後に支払うこととされています。
「被害者の請求権」に関する関連項目の索引
からだの保険・他
▶共通 52 ページ
▶くるまの保険 76 ページ
▶くるまの保険 78 ページ
▶くるまの保険 91 ページ
▶くるまの保険 143 ページ
▶からだの保険•他 278 ページ
メ モ
?
質問
保険金請求の時効とは?
答え 保険法に基づき、3 年を経過すると時効となります。
保 険 法
注6 保険法 第95 条(消滅時効)
保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。【強行規定】
共
通
◆一般的に、事故から相当の時間が経過すると事故の調査などが困難となり、適正・迅速な保険金支払いができなくなるおそれがあります。このため、保険会社の保険金支払義務は、3 年を経過した時点で時効によって消滅するとされています(注6)。
くるまの保険
◆保険金請求権の消滅時効の起算日は、保険法に規定が設けられていないので、民法の一般原則により判断することになりますが、保険商品や保険金の種類などにより異なりますので、注意が必要です。
「被害者の請求権」に関する関連項目の索引
▶共通 51 ページ
▶くるまの保険 76 ページ
▶くるまの保険 78 ページ
▶くるまの保険 91 ページ
▶くるまの保険 143 ページ
▶からだの保険•他 278 ページ
注7 自動車保険や火災保険では、事故発生時の義務として、他の保険契約等の有無・内容を遅滞なく保険会社に通知することなどが約款で規定されているのが一般的です。
自賠責保険の請求
○保険会社への加害者請求(被害者が加害者に損害賠償額を請求)の場合は、保険法第95条の規定が適用され、保険金の請求は加害者が被害者に損害賠償金を支払った日から3年で時効となります。
○保険会社への被害者請求(被害者が保険会社に損害賠償額を請求)の場合は、自動車損害賠償保障法第19条の規定(注8)が適用され、損害賠償額の請求は事故の発生日から3年(ただし、死亡の場合は死亡日から3年、後遺障害の場合は症状固定日から3年)で時効となります。なお、「症状固定」とは、一般的な医療行為の効果が期待できず、その傷病の回復・改善が見込めなくなった状態のことをいいます。
注8 自動車損害賠償保障法 第19条(時効)
第16条第1項及び第17条第1項の規定による請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び保有者を知った時から3年を経過したときは、時効によって消滅する。
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆事故発生のときの保険会社への通知と同様に、保険金の請求についても失念しないよう、事故発生後、すみやかに行ってください(注7)。
メ モ
?
質問
免責と免責金額とは?
答え
免責とは、損害が発生しても保険会社が保険金支払責任を負わない場合をいい、免責金額とは、損害が発生した場合に被保険者等が自己負担する額として契約時に設定する額をいいます。
共
通
◆「免責」とは、保険金が支払われないことを指し、免責となる特定の事項を免責事項といいます。保険会社は、損害が発生した場合には、契約に基づいて保険金支払義務を負いますが、特定の事項により発生した損害については、保険金支払義務を負わないことを約款上規定しています。例えば、契約者などの故意による場合や戦争による被害などについて、免責事項として規定しているのが一般的です。
くるまの保険
なお、通常の場合には保険金支払いの対象となるものであっても、保険料負担の軽減のため、特約により免責とする場合もありますので、ご注意ください。
◆「免責金額」とは、損害の一定額部分について、契約者などが自己負担するものとして、契約時に設定する金額のことです。これは契約者などの保険料負担の軽減、少額の損害に対する保険会社の損害調査などの事務負担の軽減および契約者などのモラルハザードの抑止などを目的としています。
すまいの保険
◆保険を契約する際には、この免責となる特定の事項(保険金を支払わない場合)と免責金額(自己負担額)について、しっかりと確認することが重要になります。保険を契約しても、万が一の場合に保険金支払いがなされないということがないように十分な検討が必要です。
火災保険の鑑定人
○鑑定人は、保険会社からの委嘱を受け、建物や動産の保険価額の評価、損害額の算定、事故の原因・状況などの調査を行う専門家です。
自動車保険のアジャスター
○アジャスターは、保険会社から委嘱を受け、事故で損傷した自動車の損害額や事故の原因などの調査を行う専門家です。また、弁護士の指示のもと、物損事故調査員として損傷車両に対する損害賠償の示談交渉を行うこともあります。
からだの保険・他
資
料
そのためには契約締結時点において、損害保険募集人は契約概要や注意喚起情報で説明することが義務付けられていますので、その内容が自らのニーズと合致しているかも含めて確認することが大切です。
解 説
➊ 保険金と税金の関係
メ モ
Ⅵ
損害保険と税金について
注1 所得税法 第9条1項18号、所得税法施行令 第30条1項1号〜3号
所得税基本通達9-20、相続税基本通達3-10、1999年10月18日付国税庁法令解釈通達
「人身傷害補償保険金に係る所得税、相続税及び贈与税の取扱い等について」
共
通
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆事故により支払われる次のような保険金は、所得税法上、非課税となります(注1)。
自動車保険 | 対人賠償保険 | 対人事故により支払われる保険金 |
対物賠償保険 | 対物事故により支払われる保険金 | |
人身傷害保険 | ①損害賠償的要素の保険金 被保険者の死亡・後遺障害・傷害に対する保険金のうち、加害者の過失による部分 ②傷害保険的要素部分の保険金 被保険者の過失による部分として支払われる後遺障害保険金・医療保険金 | |
搭乗者傷害保険 | 被保険者が受け取った後遺障害保険金・医療保険金 | |
無保険車傷害保険 | 無保険車による事故により被保険者や被保険者の父母、配偶者、子が受け取る保険金 | |
自損事故保険 | 被保険者が受け取った後遺障害保険金・医療保険金 | |
車両保険 | 車両事故により被保険者に支払われる保険金 | |
火災保険 | 火災・爆発などの事故により支払われた保険金 | |
傷害保険 | 本人または家族の傷害により受け取った後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金、通院保険金など |
メ モ
共
通
◆ただし、死亡保険金については、次のように、相続税や贈与税などが課税されます。
自動車保険(人身傷 害 保 険、搭乗者傷害保険、自損事故保険のうち被保険者自身の過失部分) | 被相続人が保険料を負担している場合 | 保険金を受け取った者が被保険者の相続人である場合は相続により、保険金を受け取った者が被保険者の相続人以外の場合は遺贈により、保険金を取得したものとみなして相続税が課税されます(注2)。 |
保険金受取人が保険料を負担している場合 | 所得税法上の一時所得として取り扱われ、他の一時所得と合算して所得税が課税されます(注3)。 | |
第三者が保険料を負担している場合 | 保険金を受け取った者が第三者から贈与を受けたものとみなされ、贈与税が課税されます(注4)。 | |
傷害保険 | 被保険者が保険料を負担している場合 | 保険金を受け取った者が被保険者の相続人である場合は相続により、保険金を受け取った者が被保険者の相続人以外の場合は遺贈により、保険金を取得したものとみなして相続税が課税されます(注2)。 |
保険金受取人が保険料を負担している場合 | 所得税法上の一時所得として取り扱われ、他の一時所得と合算して所得税が課税されます(注3)。 | |
第三者が保険料を負担している場合 | 保険金を受け取った者が第三者から贈与を受けたものとみなされ、贈与税が課税されます(注4)。 |
解 説
❷ 満期返戻金、契約者配当金と税金の関係
注2 相続税法 第3条1項1号、相続税基本通達5-5(- 1)
注3 所得税法 第34条
注4 相続税法 第5条1項 相続税施行令 第1条の5、相続税基本通達5-5(- 2)
くるまの保険
すまいの保険
◆積立型保険における満期返戻金、契約者配当金(契約者と満期返戻金などの受取人が同一である場合)は、原則として、一時所得として扱われ、他の一時所得と合算して課税額が計算されます(注1)。
注1 一時所得の金額は、他の一時所得が無い場合には、次の計算式により求められます
(所得税法第34条)。
一時所得の金額 ={ 満期返戻金、契約者配当金(受取金額)− これまでに支払った保険料又は掛金の額(※1)
− 特別控除額(※2) }×1/2
※1 すでに剰余金の分配や割戻を受けている場合には、その額を差し引きます。
※2 特別控除額は最高50万円(所得を限度)です。
からだの保険・他
資
料
なお、契約者と満期返戻金などの受取人が異なる場合には贈与税が課されます。
メ モ
◆ただし、次の3つの要件すべてに該当する場合には、源泉分離課税の対象になり、他の所得と区分して20%(国税15%、地方税5%)の源泉徴収だけで課税関係が完了します(注2)。
①保険料の支払方法が一時払いの場合
②保険期間が5 年以下(保険期間が5 年超で5 年以内に解除(解約)したものを含む。)の場合
③保険金額が満期返戻金の5 倍に満たない場合
注2 所得税法 第174条1項8号、所得税法施行令 第298条5項、6項2号、7項
なお、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に生ずる所得については、源泉徴収すべき所得税額に2.1%の税率を乗じて求めた復興特別所得税も併せて源泉徴収されます。
共
通
解 説
❸ 保険料と税金の関係
くるまの保険
◆「地震保険料控除の対象となる損害保険契約」で支払った保険料の一定額を差し引くことができる「地震保険料控除制度」があります(注1)。
「地震保険料控除の対象となる損害保険契約」とは、「地震保険」と「経過措置が適用される長期損害保険(注2)」になります。
「地震保険」の保険料控除の対象は、保険料を支払っている者またはその者と生計を一にしている配偶者その他の親族が所有している居住用建物・生活用動産を保険の対象とするものに限られています。
すまいの保険
「経過措置が適用される長期損害保険」の保険料控除の対象は、保険期間が 10 年以上で満期返戻金のある損害保険契約で、2006 年12 月31日までに契約した場合、かつ、2007 年1月1日以後に保険料が変更となる異動がない場合の保険としています。
地震保険料控除制度により、所得税は最高50,000円を、住民税は最高 25,000円を所得金額から差し引くことができるようになりました。また、
からだの保険・他
「経過措置が適用される長期損害保険」の保険料控除は、所得税について最高15,000円、住民税について最高10,000円を所得金額から差し引くことが認められています(注3)。
ただし、地震保険契約と長期の損害保険契約の両方がある場合には合算して所得税は50,000円、住民税は25,000円が限度となります。
注1 所得税法第77条
注2 経過措置が適用される長期損害保険の保険料は、地震保険の保険料ではありませんが、控除制度の名称は地震保険料控除になります。
資
料
なお、従来の火災保険などの損害保険料控除制度(所得税について最高控除額15,000円、住民税について最高控除額10,000円)は廃止されております。
注3 2006年法律10号改正附則10および取引等に係る税務上の取扱い等に関する国税庁への文書照会結果(2006年12月27日回答)
メ モ
◆地震保険料控除制度の保険料控除限度額は、下表のとおりとなります。
共
通
○所得税の場合
区分 | 1年間の支払保険料(注2)の合計 | 控除額 |
地震保険料(A) | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
旧長期損害保険料(B) | 10,000円以下 | 支払金額の全額 |
10,000円超 20,000円以下 | 支払金額×1/2+5,000円 | |
20,000円超 | 15,000円 | |
(A)と(B)の両方がある場合(注1) | ― | (A()B)それぞれの方法で計算した金額の合計額 (最高50,000円) |
くるまの保険
(注1)(B)に(A)が付帯(セット)された(または中途付帯された)契約においては、(A)か
(B)のいずれか一方を選択して適用を受けることができます。
(注2)1年間の支払保険料とは、その年の「1月1日から12月31日まで」に保険会社に支払った保険料から、保険会社から受領した返れい金等を控除したものをいいます。
すまいの保険
○住民税の場合
区分 | 1年間の支払保険料(注2)の合計 | 控除額 |
地震保険料(A) | 50,000円以下 | 支払金額×1/2 |
50,000円超 | 一律25,000円 | |
旧長期損害保険料(B) | 5,000円以下 | 支払金額の全額 |
5,000円超 15,000円以下 | 支払金額×1/2+2,500円 | |
15,000円超 | 10,000円 | |
(A)と(B)の両方がある場合(注1) | ― | (A()B)それぞれの方法で計算した金額の合計額 (最高25,000円) |
からだの保険・他
(注1)上記 所得税の(注1)に同じ。
(注2)上記 所得税の(注2)に同じ
例えば、所得税率20%、個人住民税率10%とすると、地震保険料控除により所得税で10,000 円(50,000円の20%)、個人住民税で2,500円
(25,000円の10%)税負担が軽減されます。
資
料
◆控除を受けるためには、各保険会社が発行する「地震保険料控除証明書」もしくは「損害保険料控除証明書」を、「課税所得の確定申告書」または給与所得者の年末調整の際の「保険料控除申告書」に添えて所轄税務署に提出する必要があります。
メ モ
?
質問
生命保険料控除制度とは何ですか?
答え
生命保険、介護保険、医療保険、個人年金保険等の保険料を支払った場合に、その保険料の一定額が所得から控除される制度です。
共
通
くるまの保険
◆生命保険料控除には、「一般生命保険料控除(生存又は死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約等に係る保険料を対象とする)」と「介護医療保険料控除(疾病又は身体の傷害等により保険金が支払われる保険契約のうち、医療費支払事由に基因して保険金等が支払われる保険契約等に係る保険料を対象とする)」と「個人年金保険料控除(一定の要件を満たした個人年金保険契約等に係る保険料を対象とする)」の3つがあります。 従来は一般生命保険料控除および個人年金保険料控除の2つでしたが、 2010 年度の税制改正において、新たに介護医療保険料控除制度が創設されました。
すまいの保険
地震保険料控除とは別に、損害保険会社が扱う一部の保険契約(第三分野の保険契約)もこの生命保険料控除の対象となります。具体的には、医療保険、介護保険、所得補償保険およびこれらに係る積立型保険などが対象となります。なお、従来は「一般生命保険料控除」に該当していましたが、現在は「介護医療保険料控除」に該当することになります。
この改正は、2012 年1月1日以降に、損害保険会社または生命保険会社等と締結した保険契約から適用されます。
制度の概要は以下のとおりです。
〈制度概要〉
(1)2012 年1月1日以後に締結した保険契約等(新契約)に係る生命保険料控除
からだの保険・他
新たに介護医療保険料控除を設け、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除のそれぞれの適用限度額を所得税 40,000円、住民税28,000円とします(控除の合計適用限度額は所得税120,000円、住民税70,000円となります。)。
資
料
(所得税の場合)
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
メ モ
(住民税の場合)
年間支払保険料等 | 控除額 |
12,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
12,000円超32,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超56,000円以下 | 支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
共
通
(2)2011年12 月31日以前に締結した保険契約等(旧契約)に係る生命保険料控除
従来の一般生命保険料控除、個人年金保険料控除(それぞれの適用限度額:所得税50,000円、住民税35,000円)を適用します。
くるまの保険
(所得税の場合)
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
すまいの保険
(住民税の場合)
年間支払保険料等 | 控除額 |
15,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
15,000円超40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+7,500円 |
40,000円超70,000円以下 | 支払保険料等×1/4+17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
(3) 新契約と旧契約の双方に加入している場合の生命保険料控除
注(1)〜(3)による各控除額の合計額が生命保険料控除額となります。なお、新・旧あわせた生命保険料控除額全体の適用限度額は所得税で120,000円、住民税で70,000円となります。
からだの保険・他
資
料
適用する生命保険料控除 | 控除額 |
新契約のみ生命保険料控除を適用 | (1)に基づき算定した控除額 |
旧契約のみ生命保険料控除を適用 | (2)に基づき算定した控除額 |
新契約と旧契約の双方について生命保険料控除を適用 | (1)に基づき算定した新契約の控除額と(2)に基づき算定した旧契約の控除額の合計額 (所得税:最高40,000円、住民税:最高28,000円) |
解 説
➊ 契約者保護の仕組み
メ モ
Ⅶ
契約者保護の仕組みについて
1. 早期是正措置
共
◆保険会社の経営破綻を未然に防ぐための行政による監督手法で、契約者の保護を図ることを目的としています。
通
保険会社のソルベンシー・マージン比率が200%を下回った場合に、早期に経営の健全性の回復を図るため、金融庁長官によって早期是正措置がとられます。
(ソルベンシー・マージン比率)
くるまの保険
保険会社は、保険金支払いや積立型保険の満期返戻金の支払いに備えて、準備金を積立てています。保険会社は、仮に巨大な災害や保険会社の資産価格の大幅な下落などによって通常の予測を超える危険(リスク)が発生した場合であっても、十分な支払能力を持っていなければなりません。この通常の予測を超える危険(リスク)に対しては、「自己資本」・「準備金」で対応することになります。保険会社がどれだけ「自己資本」・「準備金」などの支払余力を持っているかを数字で示したものが「ソルベンシー・マージン比率」です。各保険会社のディスクロージャー誌に掲載されています。
ソルベンシー・
マージン比率(%)
資本金(または基金)および通常の予測を超える危険(リスク)のために積立てている準備金などの額の総額
=
× 100
通常の予測を超える危険(リスク)の総額
×1/2
すまいの保険
この比率は、通常の予測を超える危険(リスク)に相当する金額に対し、これに備えて保険会社が用意している資本金など(正味資産)の割合です。
からだの保険・他
(早期是正措置)
資
料
ソルベンシー・マージン比率は、通常200%以上であれば、その保険会社の経営の健全性に問題はないとされています。したがって、支払能力も問題ないということになります。200%を下回った場合には、金融庁長官はその状況に応じて、業務改善命令などの早期是正措置をとります。
ソルベンシー・マージン比率 | 措置の内容 |
200%未満 | 経営の改善計画の提出・実行の命令 |
100%未満 | 予定利率の変更などの命令 |
0%未満 | 業務の全部または一部の停止命令 |
メ モ
2. 損害保険契約者保護機構
◆保険会社の破綻に対処するための仕組みとして損害保険契約者保護機構
(以下「保護機構」といいます。)があります。保護機構は、破綻した保険会社の契約が健全な保険会社に円滑に移転できるように資金援助をしたり、保護機構自体が契約を引き継いだりして、契約が継続するようにします(注)。
共
通
◆日本国内において損害保険業免許を受けたすべての保険会社(外国会社を含む。再保険契約のみの会社など、保険業法により加入義務のない一部の会社を除く。)が保護機構に加入しています。
注 保険業法 第259 条(目的)
保険契約者保護機構(以下この節、次節、第5編及び第6編において「機構」という。)は、破綻保険会社に係る保険契約の移転等における資金援助、承継保険会社の経営管理、保険契約の引受け、補償対象保険金の支払いに係る資金援助及び保険金請求権等の買取りを行う等により、保険契約者等の保護を図り、もって保険業に対する信頼性を維持することを目的とする。
くるまの保険
すまいの保険
◆補償対象契約と補償割合は損害保険の種類などによって異なりますが、いわゆる「共済」や少額短期保険業者の引受けた契約は保護機構の補償の対象にはなりません。
【損害保険契約者保護機構による補償対象】
保険金支払い | 解約返戻金・満期返戻金など | ||
損害保険(下記以外) | 自賠責保険、家計地震保険 | 補償割合100% | |
任意の自動車保険 ★火災保険 ★その他の損害保険 (賠償責任保険、動産総合保険など) | 破綻後3か月間は補償割合100% 3か月経過後は 補償割合80% | 補償割合80% | |
疾病・傷害に関する保険 | 短期の傷害保険 特定の海外旅行保険 | ||
年金払型積立傷害保険財産形成貯蓄傷害保険確定拠出年金傷害保険 | 補償割合90% | 補償割合90% | |
その他の疾病・傷害保険 (上記以外の傷害保険、所得補償 保険、医療・介護(費用)保険など) | 補償割合90% (積立型保険の場合、積立部分は80%) |
からだの保険・他
★印の保険については、契約者が個人・小規模法人・マンション管理組合の契約に限る。
資
料
なお、詳細については損害保険契約者保護機構のホームページ(http://www.sonpohogo. or.jp/)か損害保険契約者保護機構のパンフレットでご確認ください。
メ モ
?
質問
答え
損害保険会社が破綻したら補償はどうなりますか?
契約者が個人などである場合、保護機構による補償の対象となります。自賠責保険や地震保険、任意の自動車保険などはすべての契約が補償対象となります。
共
通
◆契約者が、個人・小規模法人・マンション管理組合である場合、保護機構による補償の対象となります。
なお、自賠責保険や地震保険、任意の自動車保険などはすべての契約が保護機構による補償の対象となります。
責任準備金とは
○保険会社は契約時に契約者から保険料を収受し、保険期間中に発生した損害の補償を約束していますが、この保険料のうち、将来の保険金の支払いなどに備え「責任準備金」という準備金を積立てることが法律で義務付けられています。
○責任準備金は、その積立てる目的別に普通責任準備金、払戻積立金、異常危険準備金、契約者配当準備金などに分かれます。
○普通責任準備金は、消費者と契約した補償型保険のうち保険期間が終了していない契約の将来の保険金支払いに備えて積立てています。
○また、近年、地震・台風等の巨大自然災害が発生し、各地に甚大な被害をもたらしています。こうした発生の時期・規模の予測が困難で、いったん発生すると巨額な損害を与えるような危険(リスク)に対しても、確実な保険金支払いを行うため、保険会社は異常危険準備金を積立てることにより、経営破綻という事態に至らないようにするとともにお客様への保険金のお支払いに対して万全を期しています。
くるまの保険
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
◆補償割合は、保険契約毎に異なりますので、ご注意ください。
解 説
➊ 損害保険相談の特徴
メ モ
Ⅷ
損害保険に対する
相談・苦情対応について
共
通
◆損害保険は「偶然な事故によって生じた損害」を補償する保険です。私たちの日常生活や企業活動は、様々な危険(リスク)にさらされていることから、保険会社は、万が一の場合の備えとして補償を提供するために、数多くの保険商品を開発し販売しています。
このような損害保険に関する相談の特徴としては、次の点が挙げられますので、留意が必要です。
相談対応にあたっての心得
3ヵ条 ─❶
くるまの保険
➊「損害保険商品は、事故後に保険会社からサービスの提供を受けて、初めて商品内容が具現化する」ことなどもあり、相談者が商品内容を十分に理解していない可能性があることを念頭に入れて、相談対応を行う必要があること
すまいの保険
損害保険は、多くの方に契約いただいている身近な商品です。しかし、次の点を勘案すると、契約内容を十分に理解していない契約者もいるかもしれません。このため相談対応にあたっては、保険会社や代理店からどのような説明を受けたのか、約款などを読んで補償内容を確認したかなどを相談者に質問して、契約内容の理解度合いを確認することが必要です。十分ではないと推察される場合には、保険会社等から説明を受け、それでも納得できない場合に再度相談するようアドバイスすることが考えられます。
(1)「損害保険商品は、事故に遭ったときに保険会社からサービスの提供を受けて、初めて商品内容が具現化する」ものであること
からだの保険・他
損害保険商品は無形の商品でもあり、平素、その存在や内容を認識する機会が少なければ、契約時に受けた商品説明に関する記憶は薄れがちとなります。このため、事故に遭った契約者の中には、実際の補償内容が自分の考えていたものと異なることに不満足を感じて相談される方もいます。
(2)約款は、契約内容(契約者と保険会社の権利・義務など)を詳細に規定しているものであること
資
料
約款は、契約内容を詳細に規定しており、非常に重要なものですが、契約に基づく各種サービスを公平かつ的確に契約者へ提供できるよ
メ モ
うにしているため、約款の条項や文章量が多くなりやすい傾向にあります。契約者が上記(1)のような不満足を感じないようにするためにも、約款を読んでもらう必要がありますが、その内容を正確かつ詳細に規定すればするほど、契約者は読むことを敬遠してしまうのかもしれません。
(3)付帯(セット)されている特約条項によって、約款の内容が一部変更されることがあるため、これらをあわせ読みする必要があること
共
通
くるまの保険
約款は、各保険契約に共通する契約条件などを規定していることもあり、個々の契約者のニーズを完全に満たすことは難しいといわざるを得ません。このため、これらの契約条件などを追加・変更・削除する種々の特約条項が用意されています。しかし契約者にとっては、読むべき文章量が増え、さらに、特約条項による契約条件などの変更などを念頭に入れつつ約款を読まなければならないことから、負担感をさらに感じるかもしれません。
このことから保険会社は、契約時における重要事項(契約概要や注意すべき契約条件など)の説明の徹底に加えて、約款をより分かりやすい内容にするための見直しや、数多くあった特約条項の統合・削減などの対応を行っています。
相談対応にあたっての心得
3ヵ条 ─❷
すまいの保険
❷「損害保険商品の補償内容・範囲は、同じ保険種目であっても、保険会社によって異なる可能性がある」ことを前提に、相談対応を行う必要があること
保険会社は、契約者のニーズに応えるため、損害保険商品の開発・改良に努めています。このため、自賠責保険と地震保険以外の損害保険商品は、同じ保険種目であっても、各保険会社によって補償内容・範囲が異なることがあります。
からだの保険・他
このため、相談者から説明のあった損害保険商品の名称や保険種目からだけでは、当該契約の補償内容・範囲と結びつきにくくなることも考えられます。
資
料
よって、「損害保険商品の補償内容・範囲は、同じ保険種目であっても、保険会社によって異なる可能性がある」ことを前提に、まず、相談者から、契約している損害保険商品の概要をよくお聞きしたうえで、相談対応を行う必要があります。ただし、相談者も説明できない場合もありますので、関係資料(パンフレット、約款、保険証券など)を手元に用意するようお願いすることが望ましいといえます。
❸自動車保険(対人・対物賠償責任保険)などの賠償責任保険の保険金支払いに関しては、契約の当事者でも関係者でもない第三者(被害者)からも相談が寄せられること
ケース1
①示談交渉
③示談金の支払い
②示談交渉についてアドバイス
④保険金 ⑤保険金の
請求
支払い
加 害 者
(契約者・被保険者)
被 害 者
賠償責任保険は、契約者や被保険者が「法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害」を補償する保険です。したがって、下記「ケース1」にあるとおり、加害者(契約者・被保険者)が被害者に示談金を支払った後に、保険会社は加害者に保険金を支払うので、保険会社は、基本的には、第三者である被害者と直接話し合う立場にないことになります。
相談対応にあたっての心得
メ モ
共
通
3ヵ条 ─❸
ケース2
①示談交渉を依頼
②示談交渉
③示談金の支払い
加 害 者
(契約者・被保険者)
被 害 者
くるまの保険
すまいの保険
しかし、自動車保険(対人・対物賠償責任保険)のように、保険会社による被害者との示談交渉サービスが付帯(セット)されている契約であれば、保険会社は、加害者に代わって示談交渉の当事者として被害者と話し合い、保険金を示談金として被害者に支払います(下記「ケース2」参照)。また、自動車損害賠償保障法第16 条(注)に基づき、被害者が保険会社に保険金を直接請求する場合もあります。このようなことから、契約の当事者でも関係者でもない第三者(被害者)からも、補償内容や範囲に関する相談が寄せられることがあります。
からだの保険・他
資
料
なお、賠償責任保険の補償内容や範囲に関する相談に対応するには、商品内容の知識よりも、民法(不法行為責任)や自動車損害賠償保障法などに関する知識が必要となります。このため、相談者から、賠償事故における法的な補償内容や範囲に関する相談が寄せられた場合には、弁護士会が行って
いる法律相談などを案内することも考えられます。
解 説
❷ 日本損害保険協会の相談・苦情・紛争対応体制
メ モ
注 自動車損害賠償保障法 第16条(保険会社に対する損害賠償額の請求)第1項
第3条(※)の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払いをなすべきことを請求することができる。
※ 自動車損害賠償保障法 第3条(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。
共
通
くるまの保険
◆日本損害保険協会は、保険業法に基づき内閣総理大臣からの指定を受けて、2010 年10月から、指定紛争解決機関としての業務を開始しています。この指定紛争解決機関としての業務は、「そんぽADR センター」(正式名称 は「損害保険相談・紛争解決サポートセンター」)において実施していますが、その主な役割は次のとおりです。
1. 相談対応
損害保険に関する一般的なご相談(自動車保険および自賠責保険のご説明や保険金請求手続のご案内等)に対応しています。
2. 苦情対応
すまいの保険
契約者や交通事故の被害者等(以下「契約者等」といいます。)から、そんぽADRセンターと手続実施基本契約を締結した保険会社(以下「保険会社」といいます。)に対する苦情の申し出があったときは、その相談に応じ、必要な助言をし、保険会社に対して苦情の内容を通知して迅速な対応を求めます。〈苦情解決手続〉
3. 紛争対応
からだの保険・他
契約者等または保険会社から、紛争の解決を図るため、紛争解決手続の申立てを受けたときは、紛争解決手続を実施する専門の委員(紛争解決委員)を選任し、中立・公正な立場から和解斡旋を行います。〈紛争解決手続〉
資
料
(紛争解決手続の詳細は、解説3(68ページ参照)をご覧ください。)
メ モ
〈参考〉日本損害保険協会の相談・苦情・紛争対応体制(概略)
0570-022808
ナビダイヤル(全国共通)〈通話料有料〉 受付日:月~金曜日(祝日・休日および12/30~1/4を除く)
受付時間:午前9時15分~午後5時
※ナビダイヤルでは、各電話会社の通信料割引サービスや料金プランの無料通話は適用されませんので、ご注意ください。
※電話リレーサービス、IP電話からは直通電話(283ページ参照)へおかけください。
〈2022年3月現在〉 そんぽADRセンター
全国10か所に窓口を設置来訪による相談等にも対応
(損害保険相談・紛争解決サポートセンター) (要事前予約)
相談・問合せ
〈助言〉
相談 損害保険全般に関する相談・問合せ
対応 出張相談の実施
(そんぽADRセンター所在地以外の地域で実施)
お
保険会社
③対応
客
様
※当協会と手続実施基本契約を締結している保険会社
解決に至らない場合
苦情 保険会社の業務に関する「不満足の表
①苦情の申出
共
対応 明」の受付
お客様からの希望に基づき、保険会社に苦情内容を通知して対応を要請〈苦情解決手続〉
②通知
通
苦情解決手続
苦情解決手続では、お客様と保険会社との話し合いによるトラブルの解決促進を図ります。
④対応
報告
専用のデータベースを活用し、保険会社に対応を要請した苦情事案の進捗状況を把握・管理
一定期間を経過しても解決しないもの等については、紛争解決手続の利用を案内
(注)自賠責保険のお支払いに関する紛争については、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構をご案内します
指定紛争解決機関とは
○金融商品取引法のほか、銀行法・保険業法などの金融関連法で共通の枠組みを横断的に整備するために、2009年6月17日に成立した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」に基づき創設された、金融分野における裁判外紛争解決機関(Alternative Dispute Resolution)です。
一定の要件を満たす機関が、銀行・保険・証券等の業態ごとに、主務大臣の指定を受けて指定紛争解決機関となります。
○指定紛争解決機関は、契約者等から苦情の申し出を受けたときは、その相談に応じ、必要な助言をし、苦情に係る事情を調査するとともに、相手方の金融機関に対し、苦情の内容を通知して迅速な対応を求めます。また、当該苦情が解決せず、契約者等または相手方の金融機関から紛争解決手続の申立てを受けたときは、弁護士や消費生活相談員等からなる紛争解決委員が、紛争解決手続を実施します。なお、紛争解決手続には、時効の完成猶予および訴訟手続の中止の法的効果が付与されます。
○金融機関は、自らが属する業態の指定紛争解決機関と手続実施基本契約(①苦情解決手続・紛争解決手続の応諾義務、②事情説明・資料提出義務、③提示された特別調停案の受諾義務、などを規定)を締結しなければならないなど、指定紛争解決機関が実施する苦情解決手続や紛争解決手続の実効性が確保されています。
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
※お客様からの損害保険に関する相談や苦情等は、保険業法に基づく指定紛争解決機関である「そんぽADRセンター」で一元的に受け付けています。
紛争 専門的な知識・経験を有する紛争解決委
⑤紛争解決手続の申立て
くるまの保険
対応 員(弁護士・消費生活相談員・学識経験者
等)が和解案を作成・提示〈紛争解決手続〉
紛争解決手続
和解成立の見込みがない場合等には、和解案が提示されずに手続終了となることがあります。
紛争解決手続は非公開で実施
契約者・被保険者と契約先保険会社との紛争のほか自動車事故等による損害賠償に関する紛争(保険会社と契約関係のない被害者からの申立て)にも対応
メ モ
◆また、日本損害保険協会に寄せられた苦情の分析・フィードバックや、個人情報保護法に基づく認定個人情報保護団体としての苦情対応業務も実施しています。
1. 苦情の分析・フィードバック
共
保険会社のサービス向上等に役立てるため、日本損害保険協会に寄せられた会員会社に対する苦情を分析し、フィードバックするとともに、「そんぽ ADRセンター統計号」等として取りまとめて公表しています。
通
2. 個人情報保護法に基づく認定個人情報保護団体としての苦情対応業務 会員会社などによる個人情報の取扱いに関する苦情について、認定個人情報保護団体として、当該会社などに解決を依頼します。
解 説
❸ そんぽADRセンターが実施する紛争解決手続
くるまの保険
◆解説2(66ページ参照)で説明したとおり、そんぽADR センター(損害保険相談・紛争解決サポートセンター)では、損害保険に関する苦情をお受けし、相手方の保険会社(そんぽADR センターと手続実施基本契約を締結した保険会社。以下「保険会社」といいます。)に解決を依頼していますが、苦情を申し出られた方(以下「苦情申出人」といいます。)と保険会社との間で問題の解決に至らないことがあります。
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
このような場合のために、そんぽADR センターでは、中立・公正な立場から紛争の解決を図ることを目的に、法令に基づく紛争解決手続の仕組みを設けています。なお、紛争解決手続は、苦情申出人と保険会社の主張を踏まえ、互譲の精神をもって解決を図ることを目的としています。したがって、例えば、保険会社や代理店の行為が法令に違反しているかどうかの判断、保険会社や代理店に対する指導要請等には対応していません。
メ モ
◆そんぽADRセンターが実施する紛争解決手続の概要等は、次のとおりです。
1. 紛争解決手続の対象事案と実施場所、紛争解決手続の申立人の範囲
注 面談による意見聴取(実施しない場合もあります)については、申立人の利便性等を勘案し、手続実施委員が相当と認める場合には、紛争解決手続の実施場所以外のそんぽADRセンターの事務所内に設置するテレビ会議システムを利用して実施することがあります。なお、②の紛争については、テレビ会議システムを利用した意見聴取は実施していません。
共
通
くるまの保険
(1)紛争解決手続の対象となる主な紛争事案およびその実施場所•手続方法は、次のとおりです。
主な紛争事案 | 紛争解決手続の実施場所 | 手続方法 |
①契約者または被保険者等と保険会社間の契約に関する紛争(契約内容の訂正、保険料の返還等)や保険金の支払い等に関する紛争 | 東京、大阪 | 書面および面談(注) |
②交通事故等の被害者と保険会社との損害賠償に関する紛争(ただし、自賠責保険の支払い等に関する紛争を除きます。また、直接請求権がある場合に限られます。) | 東京 | 書面および面談(注) |
(2)紛争解決手続の申立人の範囲
(2022年3月現在)
苦情申出人のみならず、保険会社も申立てを行うことができます。
2. 紛争解決手続の実施者および提示する和解案
すまいの保険
事案の性質や内容等に応じて、弁護士、消費生活相談員および学識経験者である紛争解決委員が、1名または複数で担当します。
紛争解決委員は、紛争解決を図るため書面や面談等を通じて争点を明確にし、中立•公正な立場から和解案を申立人と保険会社に提示し、受諾を勧告します。なお、紛争解決手続を進める中で、そもそも和解が成立する見込みがないと判断したなど、紛争解決委員が手続を進行することは適切でないと判断した場合には、終了となります。
からだの保険・他
また、事案の性質等を踏まえ相当であると紛争解決委員が認めるときは、特別調停案を作成し、理由を付して提示することができます。この特別調停案については、原則として保険会社に受諾義務が課せられることになります。
3. 紛争解決手続にかかる費用
紛争解決手続にかかる費用は原則として無料ですが、以下のような費用は紛争解決手続を申立てられた方の負担となります。
(1)意見聴取に出席するための交通費や宿泊費
資
(2)紛争解決手続に必要な書類の作成や取得に要する費用
料
(3)資料の送付費用や電話等の通信費
メ モ
◆紛争解決手続の流れ
※標準的な手続の進行例です。
《お客様》
そんぽ ADRセンター
《保険会社》
苦情解決手続の開始
共
苦情のお申出 解決を依頼 手続応諾義務
通
電話等により申し出ます。
お客様と保険会社とで話し合い
✓お客様と保険会社との話し合いで解決しない場合は紛争解決手続をご案内(書面を郵送)します。
くるまの保険
✓自賠責保険の保険金等のお支払に関する紛争など紛争解決手続をご利用になれない場合があります。詳しくは、そんぽADRセンターまでお問い合わせください。
内容を確認
解決
(手続終了)
対応報告
紛争解決手続申立書の提出
必要な関係書類も併せて提出します。
紛争解決手続のご案内
申立書の受付
✓申立書の記載内容に不明な点がある場合には補正等をお願いすることがあります。
✓申立書を受け付けたときは苦情解決手続は終了します。
紛争解決手続の開始
すまいの保険
紛争解決委員の選任
反論書等の提出
中立・公正な第三者である弁護士、消費生活相談員、学識経験者等が手続を実施します。
資料の提出依頼(必要に応じて)
手続応諾義務答弁書等の提出
意見聴取に出席
からだの保険・他
和解案受諾書の提出
提示された和解案を 受諾する場合に提出します。
意見聴取の実施※1
和解案(特別調停案)の作成・提示※2
意見聴取に出席
和解案受諾書または和解案不受諾理由書の提出
和解成立(解決) 不調ほか(終了)
※1 意見聴取は実施しない場合もあります。
資
料
※2 和解案が提示された場合、保険会社はその内容を尊重することとされています。
メ モ
?
質問 そんぽADRセンターが行う紛争解決手続と、損害保険関連の他の紛争解決機関(公益財団法人
交通事故紛争処理センター(以下 交通事故紛争処理センター)、一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構(以下 自賠責保険・共済紛争処理機構))の違いは何ですか?
共
通
答え 取扱いの対象としている事案のほか実施場所などに関して次のとおり違いがあります。
○そんぽADRセンター(紛争解決手続)
対象事案:損害保険に関する紛争全般(ただし、自賠責保険の支払いに関する紛争を除く。)
くるまの保険
実施場所:東京、大阪(交通事故等に伴う損害賠償に関する紛争に関しては、東京のみ)
(注)紛争解決委員が「和解成立の見込みがない」ことを理由に手続終了した場合において、一定の条件を満たした場合、時効の完成猶予の効力が付与されます。
○交通事故紛争処理センター
対象事案:交通事故に伴う損害賠償に関する紛争
すまいの保険
(ただし、自賠責保険の支払いに関する紛争を除く。)
実施場所:全国8 支部3 相談室
○自賠責保険•共済紛争処理機構
対象事案:自賠責保険の支払いに関する紛争実施場所:東京、大阪
からだの保険・他
◆損害保険に関する紛争解決機関において対象となり得る事案について、参考までに紛争の関係者が契約している保険種目別に整理すると、次ページのとおりとなります。詳細は、各紛争解決機関のホームページなどでご確認ください。
交通事故紛争処理センター:https://www.jcstad.or.jp/
資
料
自賠責保険•共済紛争処理機構:http://www.jibai-adr.or.jp/
メ モ
注1 示談交渉サービスが付いていない賠償責任保険の場合、基本的には、保険会社は、第三者である被害者と直接話し合う立場になく、契約者(または被保険者)である加害者が、被害者に示談金を支払った後に、加害者に保険金を支払うことになることから、対象外となります。ただし、加害者が、被害者から保険会社への損害賠償額の直接請求権、示談交渉サービスが付いている賠償責任保険に加入している場合には、保険会社も紛争の当事者性を有することになることから、対象となります。
共
通
くるまの保険
(○:対象 −:対象外)
対象となり得る事案 | 相手方事業者 | ||||||||
自動車(任意) | 自賠責 | 火災 | 傷害 | その他 (医療など) | |||||
契約 | 支払い | 契約 | 支払い | ||||||
対人対物 | 左記以外 | ||||||||
そんぽADRセンター | ○ | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ (注1) | 日本損害保険協会と法令に基づく手続実施基本契約を締結した損害保険会社 |
交通事故紛争処理センター | − (注 | ○ 2) | − | − | − | − | − | − | 損害保険会社、全国共済農業協同組合連合会、全国労働者共済生活協同組合連合会 |
自賠責保険・共済紛争処理機構 | − | − | − | − (注 | ○ 3) | − | − | − | 自賠責保険(共済)を販売している損害保険会社(共済) |
注2 自動車事故による対人・対物損害賠償に関する被害者と相手方事業者の紛争が対象となります。ただし、交通事故の被害者からの申立てであっても、ケガの治療中や後遺障害の等級が決まらないうちは、斡旋手続などを停止します。なお、例えば、次の事案は対象外となります。
(1)自転車の対歩行者・対自転車事故による損害賠償に関する紛争
(2)搭乗者傷害保険や人身傷害保険など、自分が契約している損害保険会社(共済)との保険金(共済金)に関する紛争 など
注3 自賠責保険(共済)の支払いに関する紛争事案、例えば、次の事案が対象となります。
(1)過失の有無、被害者の重大な過失による減額がある場合の過失割合
(2)事故と損害との因果関係
(3)後遺障害等級認定
(4)休業損害など、個々の損害の認定額
すまいの保険
からだの保険・他
資
料
●参考文献:「交通事故紛争処理センター利用規定」(交通事故紛争処理センター)、「組織の概要と申請のご案内」(自賠責保険•共済紛争処理機構)