Contract
【事案Ⅰ-6】契約無効および掛金返還請求
・平成 29 年 7 月 20 日 和解解決 (X案件)
・平成 29 年 11 月 17 日 和解解決 (Y案件)
<事案の概要>
申立人らの父親が死亡後に、申立人らを共済契約者または被共済者として締結され、更に転換された終身共済契約 2 件、養老生命共済契約 1 件が発見されたため、これら の共済契約は申立人らの同意を得ずに締結されたものであり、無効であるとして、契 約成立(転換時)以降の共済掛金の累計額、原契約(転換前の契約)からの充当額お よび遅延利息を求めて申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、共済契約を無効と認め、契約時からの共済掛金累計額および年 5%の遅延利息を支払え、との判断を求める。
(1)平成 26 年 11 月、申立人らの父が死亡し、申立人Aを契約者とする契約 2 件、申
立人Bを被共済者(契約者は父)とする契約 1 件、計 3 件の共済証書が見つかった。
(2)申立人Aを契約者とする契約は、①昭和 55 年に養老生命を契約し、平成 8 年に終
身共済に転換がされている共済契約および②平成 15 年に養老生命を契約し、平成
20 年に転換されている養老生命契約の 2 契約。申立人Bを被共済者とする契約は、
③昭和 55 年に契約者は父親で養老生命を契約し、平成 10 年に終身共済に転換され
ている共済契約の 1 件。
(3)これらの契約は、申立人らの同意を得ず、無断で成立させたものであり、無効である。また、③の共済契約締結時に申立人Bは未xxであったが、契約転換時はxxであり、被共済者の同意を得ず行われた転換契約であり無効である。これらの契約が無効となる根拠は、関係法令による。
(4)父親が申立人らの代理人であったとする証拠書類は存在していないし、父親を代理人として同意をしたことはない。関係書類を郵送しただけでは追認・同意したことにはならない。
(5)父親が支払っていた無効な契約に対する掛金については、相続人として返還請求をする。
<共済団体の主張>
申立人の請求は認められない、とする判断を求める。
(1)申立人が主張する関係法令に規定する禁止行為を行った事実はなく、また、これらの禁止行為があったとしても、直ちに共済契約が無効となる理由とはならない。
(2)共済契約①②は、父親が申立人Aの代理人として同意を得たうえで手続きを行ったものであり、有効である。仮にこの手続きが無権代理行為として無効であったとしても、共済掛金払込証明書等の書類はAに郵送しており、契約の存在を知らなかったとは考えられないことから、追認ないし事後的な同意があったと考えられるため、有効である。
共済契約③については、父親が契約者として転換前にBの入院共済金の請求を行なっており、また共済証書貸付も行っており契約は有効に成立している。
(3)これらの共済契約が無効であったとしても、不当利得として共済掛金の返還を求めることができるのは、共済掛金を支払っていた父親である。共済契約者あるいは被共済者の同意がなかったことが事実ならば、父親はその事実を認識していたはずである。したがって、非債弁済により父親およびその地位を相続した申立人らも共済掛金の返還を求めることはできない。
<裁定の概要>
【審議経過】
審議途中で共済契約内容・関係当事者に応じて案件を分離し審議をおこなった。
「X案件」として申立人Aを契約者とする共済契約(①②)について、申立人Aとの間で審議をおこなった。
「Y案件」として申立人Bを被共済者とする共済契約(③)について、契約者(父親)の相続人全員が申立人となり審議をおこなった。
【審議結果】
[X案件]
共済契約①②については、契約無効と契約解約による掛金返還の内容を整理し試算結果を示したところ、申立人Aが契約を追認して有効な共済契約とした上で父親の死亡時点に遡って共済契約を解約し解約返戻金相当額を支払う内容で合意し、和解解決となった。
[Y案件]
共済契約③については、被共済者が同意した経緯が確認できないため、転換契約については、約款・事業規約第 26 条により被共済者の同意が無い共済契約として無効とし、原契約を満期まで継続した場合に必要な掛金と受取満期金額と転換後の払込済掛金の差額分を相続人全員に返還する内容で合意し、和解解決となった。
(約款・事業規約第 26 条)<抜粋> 1.次のいずれかの場合には、共済契約は、無効とします。
・他人を被共済者とし、その者以外の者を死亡共済金受取人とする共済契約を締結する場合
に、共済契約者が被共済者となる者(-省略-)の同意を得なかったとき