(https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html)をご参照ください。
業務委託契約作成ガイドライン
「業務委託契約作成ガイドライン」(以下「ガイドライン」)は、業務委託契約締結にあたり特にポイントとなる事項についてI.C.E.が推奨する方針を示すとともに、実際の契約書作成にあたり参考としていただけるよう各項目に対する条項サンプルを掲載するものです。
ガイドラインは、誰でも自由に使っていただけるようダウンロードフリーにしています。広く利用いただくことによってデジタルコンテンツ制作に関わる発注者 ・制作者すべての方々やこの分野を志す方々が、見えない法的リスクを抱えたまま取引に入り、結果的にコスト(損失)を払うことにならないように、適切な経営判断を後押しし業務効率化を推進する一助となることを目指します。
I.C.E.加盟各社をはじめ業界が抱える法的リスクの問題点や改善すべき点ついて解決するために、時流に合わせて、適宜改訂を行っていく予定です。
<注意事項>
● ガイドラインは、契約を締結する際に一般的に留意すべき事項を記載したものです。契約書の文言のサンプルは、そのまま契約書に反映するのではなく、個別の事情や当事者間の交渉内容を踏まえて変更してください。
● 契約書の作成は、利用者の責任において行ってください。ガイドラインを参考にして作成された契約書の内容について、I.C.E.が保証するものではありません。
業務委託基本契約書
○○○○(以下「甲」という)と□□□□(以下「乙」という)は、甲が乙に対して委託する業務に関して、以下のとおり本契約を締結する。
(契約の目的)
省略
(個別契約)
個別契約は、甲が乙に対し、委託業務の内容、成果物の仕様・数量、作業期間、納品日、納品場所、検証期間、委託料を明示した発注書を送付し、乙の注文請書が甲に到達した時点で成立する。ただし、発注書が乙に到達した後、5営業日以内に乙が甲に諾否の回答をしない場合は、個別契約が成立したものとみなす。
甲からの指示により、個別契約成立後に業務内容の変更があった場合、前項の作業期間、納品日及び検証期間は無効とし、改めて両者協議の上で定めるものとする。
本契約の規定と個別契約の規定に齟齬がある場合、個別契約の規定を優先して適用するものとする。
<解説>
特定の企業との間で継続的に取引を行う場合、「基本契約」と「個別契約」に分けて契約を締結することが多くあります。
「基本契約」は、複数の取引に共通して適用される条件を定めるものです。
他方、「個別契約」は、個々の案件ごとに、委託業務の内容や納品日、委託料など具体的な事項を定める契約です。「個別契約書」を作成して当事者双方が押印する場合もありますが、実務的には、「発注書」「注文請書」という形で個別契約を締結する場合も多く見られます。
基本契約の有効期間中に締結された個別契約には、原則として、基本契約の条件が適用されます。個別契約において、基本契約とは異なる条件を記載することもできますが、その場合の優先関係については、基本契約書で明示しておくことが必要です。サンプルでは「個別契約が優先する」としていますが、基本契約の締結時に以後の取引条件を一律に定める趣旨で、「基本契約が優先する」と規定する場合もあります。
基本契約が終了した場合であっても、基本契約の有効期間中に締結された個別契約まで同時に終了するとは限りません。基本契約が終了した時に存在する個別契約については、引き続き基本契約の条項を適用する旨を合意することも多いです。
新規の取引を開始する際に、クライアント側の「雛形」での基本契約の締結を求められることも多いと考えられます。提示された「雛形」に対して変更や修正を要請しても、なかなか受け入れてもらえない場合もあるかもしれません。
しかし、基本契約書の内容は、その後の取引の基本的な条件を定めるものですし、個別契約を締結する段階で自社の希望が反映されるとも限りません。特に、成果物の権利の帰属、守秘義務の範囲、契約不適合責任や損害賠償責任の範囲など基本的な取引条件については、慎重に検討することが必要です。
(履行方法)
省略
(納品等)
乙は甲に対し、個別契約で定める納品日までに、成果物を納品書とともに納品する。
乙は、成果物の納品に際し、甲に対して必要な協力を要請できるものとし、甲は乙から協力を要請された場合には、速やかにこれに応じるものとする。
甲は、成果物の受領後、その内容の確認を行うものとし、成果物の内容について承認に関する通知を電子メール又は文書等により行うものとする。なお、検証期間の経過後5営業日以内に乙宛ての連絡がない場合は、甲により成果物の内容が承認されたものとみなされる。
成果物の滅失、毀損等の危険負担は、納品前については乙が、納品後については甲が、それぞれ負担するものとする。
<解説>
成果物の納品に関する規定です。
委託者は、成果物の納品を受けた後、成果物の内容を確認します。確認に際して「合意した成果物が出来ていない」といった主張が出てきた場合、契約締結時に納品物の内容、仕様や数量が特定されていたか、ということが問題になります(この点は、後述する契約不適合責任とも関係します)。たとえば、プログラムの制作委託の場合、ソースコードや設計図の納品義務の存否を巡って紛争になるケースも多いため、これらが納品対象になっているかどうかは明確に取り決めておくことが望ましいと考えられます。
個別契約を締結する段階で、納品物の内容、仕様、数量は、可能な限り特定して書面化しておくと、万一トラブルが生じた場合に役立ちます。細かい条件まで書面化することが難しい場合には、たとえばFAXやメールの形式であっても、相手方と協議して合意した過程を、後から明確に確認できる形で残しておいた方が良いと考えられます。
また、納品後のデータ保管に関しても協議することが必要です。制作 物に関し、制作会社の側において素材やデータの保管義務を負う場合もあります。委託者(xxxxxx)と受託者(制作会社)の各々が、データの保管に関しどのような義務を負うのか、事前に確認し書面化しておきましょう。
--検証期間について--
検証期間が短過ぎると十分な検証を行うことができないため、適正な検証期間を確保することが必要です。I.C.E.が推奨する検証期間の目安は、次のとおりです。
・キャンペーンサイト 静的 1w-2w
・キャンペーンサイト 動的 2w-4w
・ECサイト 4w-6w
・サービスサイト 2w-4w
・スマートフォン・タブレットアプリ 静的 2w-4w
・スマートフォン・タブレットアプリ 動的 4w-6w
・SNSアプリ 静的 1w-2w
・SNSアプリ 動的 2w-4w
・デジタルサイネージ 静的 2w-4w
・デジタルサイネージ 動的 4w-6w
(委託業務の対価)
【サンプル1】(通常の支払方法)
甲は乙に対し、委託業務の対価として、個別契約で定めた委託料を当該個別契約で定めた方法で支払う。
【サンプル2】(前払金を含んだ分割の支払方法)
甲は乙に対し、委託業務の対価(以下「委託料」という。)として、個別契約で定めた金額を乙の指定する口座に振り込んで支払うものとする。
記
銀行:
口座:
名義:
委託料の支払条件については、以下のとおりとする。
(1)甲は乙に対し、個別契約成立後○○日以内に、前払金として、当該個別契約で合意された委託料の○○%を支払う。
(2)[・・・・]
(3)甲は乙に対し、成果物の納品後○○日以内に、委託料の○○%を支払う。
<解説>
【サンプル1】は通常の支払方法、【サンプル2】は、委託料のうち一定の金額について前払金として支払いを受ける場合のサンプル規定です。
案件が長期にわたる、研究開発の資金が事前に必要である、案件遂行にあたり特殊な機材を購入するといった場合には、成果物の納入前に、委託料の一部について前払金として支払いを受けることが必要である場合があります。そのような場合には、【サンプル2】のような規定を提案することが考えられます。
また、委託者である相手方の資金面に不安がある場合には、「作業を行ったのに全く支払を受けられない」という事態を避けるべく、【サンプル2】のような形を選択し、複数回に分けて委託料の支払いを受けた方が良い場合もあります。
委託料の金額を決める際には、成果物の著作権の譲渡や許諾の対価を含んだ金額なのかどうかを確認するとともに、著作権の譲渡や許諾の対価が委託料に含まれる場合には、その旨を書面上も明確に記載しておくことが必要です。
(経費等)
省略
(秘密保持)
甲及び乙は、本契約又は個別契約に関連して知り得た相手方の技術上及び営業上の情報のうち、開示者が秘密である旨を明示して開示した情報(以下「秘密情報」という。)を、本契約又は個別契約の遂行のためにのみ使用するものとし、第三者に開示、公表又は漏洩してはならない。
下記各号に定める情報は、秘密情報に含まれないものとする。
相手方から知得する以前に公知となっていた情報
相手方から知得する以前に自らが既に保有していた情報
相手方から知得した後に、自己の責に帰することができない理由により公知となった情報
自己が独自に開発した情報
第三者から、秘密保持義務なしに正当に知得した情報
裁判所その他公的機関から法律の規定に基づきその開示が要求された情報
甲及び乙は、秘密情報を、当該秘密情報を知る必要のある自己の従業員及び役員に限り開示するものとし、同従業員及び役員に対し、本契約における自らの義務と同等の義務を課すものとする。なお、甲及び乙は、秘密情報の開示対象となる従業員又は役員から、当該秘密情報の秘密保持に関する誓約書を取得するものとする。
<解説>
秘密保持義務を定める旨の規定です。秘密保持義務を負う対象となる「秘密情報」の範囲を定義するとともに、秘密情報を第三者に開示・漏洩してはならない旨を定めています。
秘密保持義務の規定は、契約終了後も存続する旨の規定(存続条項)が置かれることが一般的です。開示する機密情報の重要性や性質に応じて、契約終了後も期間の制限なく秘密保持義務が存続するのか、一定の期間に限定するのかなどを検討することが必要です。なお、契約の遂行に際して開示された「個人情報」を「秘密情報」の定義に含める場合もありますが、秘密保持義務の規定の有効期間が終了した後も、「個人情報」は引き続き個人情報保護法に則って取り扱うことが必要ですので、注意してください。
--秘密保持義務条項を確認する際の留意点--
秘密保持義務に関する条項には、
・ 当事者双方が秘密保持義務を負うとするもの
・ 当事者のどちらか一方のみが秘密保持義務を負うとするもの
があります。
一般的には、委託者側から受託者側に秘密情報が開示されることが多いと考えられますが、案件によっては、受託者側から委託者側に対しても秘密情報を開示する場合があります。受託者からも秘密情報を開示するにもかかわらず、受託者のみが秘密保持義務を負うという内容の契約書を提示された場合には、双方向の(甲乙双方を当事者とする)条項とするよう、修正を提案することが望ましいと考えられます。
また、保護の対象となる「秘密情報」の範囲については、大きく分けて
【A】 契約に関連して開示された情報はすべて「秘密情報」に当たるとするもの
【B】「秘密である」旨が明示された情報のみ「秘密情報」に当たるとするもの
があります。
仮に、秘密情報の開示を「受ける」ことの方が多い場合には、一般的には、【B】の方が有利です。「秘密情報」に該当する情報の範囲を特定することによって、秘密保持義務を負う範囲も限定することができるためです。反対に、相手方に秘密情報を「開示する」ことの方が多い当事者や重要度の高い情報を開示する当事者は、相手方に広く秘密保持義務を負わせるため、【A】を希望する場合が多いと言えます。
(個人情報)
省略
(権利の帰属)
【サンプル1】(汎用的な利用が可能なプログラム等の著作権を除き、委託者に権利を譲渡する場合)
成果物(成果物を制作する過程で生じた中間成果物を含む。)に関する著作権(著作xx第27条及び第28条の権利を含む。以下同じ。)は、xxx第三者が従前から保有していた著作物の著作権及び汎用的な利用が可能なプログラム(ルーチン、モジュール、ライブラリ等)の著作権を除き、甲が乙に対し当該個別契約に係る委託料を完済した時に、乙から甲へ移転する。なお、かかる乙から甲への著作権移転の対価は、委託料に含まれるものとする。
乙は甲に対し、前項により乙に著作権が留保された著作物につき、本契約又は個別契約の目的のために必要な範囲で利用(複製、翻案、公衆送信等一切の利用を含む)することを非独占的に許諾する。乙は、かかる利用について著作者人格権を行使しないものとする。
【サンプル2】(受託者に権利を帰属させる場合)
本契約又は個別契約における業務遂行の過程で生じる創作について、著作権(著作xx第27条及び第28条の権利を含む)は、甲又は第三者が従前から保有していた著作物の著作権を除き、乙に帰属するものとする。
乙は甲又は甲が指定した第三者に対し、成果物を本契約又は個別契約の目的のために必要な範囲で利用(複製、翻案、公衆送信等一切の利用を含む)することを非独占的に許諾する。かかる許諾の対価は委託料に含まれるものとする。
成果物の著作権の帰属に関する規定です。【サンプル1】は、成果物に関する著作権を委託者に譲渡する場合の規定例であり、【サンプル2】は、成果物に関する著作権を受託者に残す(留保する)場合の規定例です。委託者にとっては【サンプル1】が有利であり、受託者にとっては【サンプル2】が有利です。
【サンプル1】で進める場合であっても、受託者が独自に開発したライブラリ(特定の案件に限らず汎用的に利用可能なプログラムで独自開発したもの)については、著作権を受託者側に留保する場合が多いです。これらについても著作権を譲渡してしまうと、その後に受託者がライブラリ等を自由に利用することが難しくなる可能性があるためです。
デジタル 制作のうち一部の業務を下請業者に委託する場合、自社と下請業者との間の契約内容が、自社とクライアントとの契約内容と整合しているか、という観点からも確認が必要です。たとえば、クライアント(発注者 )との契約において、著作権をクライアントに譲渡するという契約内容になっている場合には、下請業者と自社との間において、自社に著作権を譲渡してもらうことが必要となります。
なお、著作物を翻案する権利(27条)や、翻案により作成された著作物を利用する権利(28条)は、譲渡の対象であることを明記しない限り、譲渡人側に留保されたものと推定されます。「全ての著作権」、「一切の権利」といった表現では足りず、たとえば「著作権(著作xx第27条及び第28条の権利を含む。)・・・を譲渡する」など、翻案権や二次的利用権も含めて譲渡の対象とすることを明記することが必要です。
--下請法の適用について--
取引の内容や各当事者の規模(資本金の金額)によっては、「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)の適用対象となる場合があります。
下請法の適用がある場合、
・発注に際し、委託の内容、納入日、納入場所、検査完了日、委託料の金額、支払期日などを記載した書面(3条書面)を交付すること
・委託料(下請代金)の支払期日を、給付の受領後60日以内に定めること
などが委託者(親事業者)に求められるとともに、委託者(親事業者)による受領拒否、委託料の不当な減額、不当な給付内容の変更・やり直しなどが禁止されます。
下請法の対象になる取引であるかどうかの詳細は、xx取引委員会のウェブサイト
(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxx/xxxxxxxxxxxxx/xxxxx.xxxx)をご参照ください。
下請法では、親事業者(委託者)が、下請事業者(受託者)に情報成果物を提供させるとともに、作成の目的である使用の範囲を超えて、情報成果物の知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを含んで発注する場合には、3条書面において、下請事業者が作成した情報成果物に係る知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要があるとしています。また、その場合には、下請事業者の給付の内容に知的財産権が含まれることとなるため、下請代金には、知的財産権の譲渡・許諾に係る対価を加える必要があります。
情報成果物作成委託において、給付の内容に知的財産権が含まれている場合、知的財産権の対価について、下請事業者と協議することなく、一方的に通常支払われる対価より低い額を定めることは、下請法で禁止される「買いたたき」に該当する可能性があります。
以上のように、自社が下請法上の下請事業者に該当する場合には、下請法の規定を自社に有利に利用することができます。反対に、自社が親事業者になる場合には、下請法に違反しないよう、下請法の規定に目配りしながら取引を進めることが必要であり、注意が必要です。
--中間成果物について--
成果物の完成前に契約が解除等によって終了した場合、未完成の制作物(中間成果物)の権利関係をどうするか、という問題が生じます。
たとえ未完成であったとしても、中間成果物の権利の譲渡を受けておけば、別の業者にあらためて委託する際に、当該中間成果物を利用して作業を継続することができ、完成までの時間を節約したり、新たに委託した業者に支払う委託料を低額に抑えたりすることができるかもしれません。契約が途中で終了した場合に中間成果物の権利を委託者側に譲渡するのか、その場合の対価はどうするのか、については事前に検討・交渉しておくことが望ましいと考えられます。
【サンプル1】では、一例として、中間成果物の権利も委託者側に譲渡する旨を規定しています。その他、受託者側の責めに帰すべき事由により契約が途中で終了した場合、中間成果物を委託者に引き渡す旨の規定を設けておくことも考えられます。
(再委託)
乙は、乙の責任において、委託業務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。
乙は、再委託先が本契約及び個別契約の各条項を遵守するよう管理監督するとともに、再委託先による業務の実施に関し、乙が為したものとして、甲に対し一切の責任を負う。
<解説>
デジタル 制作に際しては、受託業務の一部を外部業者に再委託することも多いと思います。委託者側としては、再委託先の信用性を事前に確認し、場合によっては当該再委託先への再委託を拒否する余地を残すため、「再委託には委託者の事前承諾が必要」という規定を希望することが多いです。他方、受託者側は、自らの責任で再委託できる(委託者への事前通知や委託者の承諾は不要)という規定を希望することが多いと言えます。
いずれの形で契約を締結するとしても、再委託先の行為については受託者(再委託者)にも責任が発生し得るため、再委託先の選定や監督は慎重に行いましょう。たとえば、新商品の広告を制作するにあたりクライアントとの間で「情報解禁日」が定められている場合、当該解禁日前に再委託先から情報が漏れることのないよう、再委託先にも周知徹底を図ることが必要です。
--「再委託」に該当するかどうかの判断基準について--
会社内で作業を行っていても、法的には「再委託」に該当する場合もあるので、注意が必要です。
たとえば、自社に雇用されていない社外のデザイナーにウェブページのデザインを業務委託し、当該デザイナーが社内で作業をする場合、「再委託」に当たります。他方、派遣会社から自社に派遣されてきたスタッフについては、自社の指揮命令に従い就業することが予定されているため、「再委託」には当たりません。
再委託の可否や条件については社内で周知し、知らず知らずのうちに契約書に違反しないようにすることが必要です。
(契約不適合責任)
乙の納品した成果物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき(バグも含む。以下本条において「契約不適合」という。)は、甲は乙に対して成果物の修正を請求することができ、乙は、当該契約不適合を無償で修正するものとする。但し、乙がかかる修正の責任を負うのは、成果物の納品後○カ月以内に甲から当該契約不適合を通知された場合に限るものとする。
前項にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合、乙は前項所定の修正の責任を負わないものとし、乙は別途見積をした上で、有償にて修正するものとする。
乙の責によらない事由により、検証期間を十分に確保できなかった場合
契約不適合によっても個別契約の目的を達することができる場合であって、成果物の修正に過分の費用を要する場合
ブラウザ・OS等のバージョンアップ等に伴い不具合が生じた場合
外部API(Facebook、Twitter等のAPIを含む)の仕様変更等の外的要因で成果物に不具合が生じた場合
成果物について、甲自らにおいて改変したことが要因で不具合が生じた場合
第1項の規定は、契約不適合が甲の提供した資料等又は甲の与えた指示によって生じたときは適用しない。但し、乙がその資料等又は指示が不適当であることを知りながら告げなかったときはこの限りでない。
<解説>
納品した成果物が、相手方と合意した内容や水準を満たしていない場合、契約不適合責任が発生します。民法上は、①履行の追完(目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し)の請求、②代金の減額請求、③契約の解除、④損害賠償請求などが予定されていますが、民法の内容とは異なるルールを契約書で合意することもできます。
従前は「瑕疵(かし)担保責任」と呼ばれていたものであり、令和2年の民法改正後は「契約不適合責任」と呼ばれるようになりましたが、内容は大きくは変わりません。「契約不適合」とは、納入した成果物が、当事者間で合意した種類、品質や数量を満たしていないということを意味しています。「契約不適合」があるかどうかを判断する前提として、納入すべき成果物の内容が明確に特定されていることが必要です。納品すべき成果物の内容を特定しておくことは、委託者側から修正要望が出てきた場合に、契約不適合責任として無償で修正を行うのか、あるいは、別途有償で対応すべき事柄であるのかの線引きを設けるという観点からも重要です。
--契約不適合責任を追及できる期間について--
民法では、契約不適合責任を追及するには、原則として「(契約)不適合を知った時から」「1年以内」にその旨を相手方に「通知」することが必要であるとされています。ただし、民法の内容とは異なるルールを契約書で合意することもできます。
サンプルでは、「納品」の時点を期間制限の始期としていますが、「委託者が契約不適合を知った時」などから期間制限が始まるとする場合もあります。委託者の側からすれば、契約不適合責任を追及できる期間を長く設定した方が有利ですので、自らが「契約不適合を知った時」を起点とすることを希望することが多いと言えます。
契約不適合責任を追及できる期間については、受託者側で修正等に対応できる現実的な期間や、契約不適合を発見するまでに通常要する期間を踏まえて相手方と交渉していくことが考えられます。
(契約期間等)
省略
(解除)
省略
(損害賠償)
甲及び乙は、本契約及び個別契約の履行に関し、相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合、相手方に対して、(○○○の損害に限り)損害賠償を請求することができる。但し、この請求は、当該損害賠償の請求原因となる当該個別契約に定める納品物の納品日又は業務の終了確認日から○ヶ月間が経過した後は行うことができない。
前項の損害賠償の累計総額は、債務不履行、契約不適合責任、不当利得、不法行為その他請求原因の如何にかかわらず、帰責事由の原因となった個別契約に定める○○○の金額を限度とする。
<解説>
万一、契約に関してトラブルが生じた場合、損害賠償責任の範囲に関する規定は重要な意味を持ちます。個別の事情にもよりますが、受託者側は、成果物に不具合があったなどの理由で委託者に損害が生じた場合に備え、損害賠償責任を制限する方向での規定を希望することが多いです。他方、委託者側としては、委託業務や成果物に関連して損害が生じた場合に受託者側に広く賠償を請求できるよう、損害賠償責任を加重する方向で交渉することが多いと言えます。
デジタル 制作において、制作会社が業務を下請業者に再委託する場合、自社(制作会社)とクライアントとの契約内容と、自社(制作会社)と下請業者との間の契約内容を比較検討するという視点も必要です。仮に、下請業者からの納入物に不備(第三者の権利を侵害していたなど)があり、その結果クライアントに損害が生じた場合、自社(制作会社)はクライアントに対して広い範囲で損害賠償責任を負い、他方で自社(制作会社)から下請業者に対しては限定した範囲でしか損害賠償を請求できないとすると、間に挟まれた制作会社が大きな損害を被ることになります。
--損害賠償責任の限定について--
損害賠償責任を限定する方向で契約書の文言を修正する場合、次のような方法が考えられます。
① 損害賠償の上限額を設定する。
② 損害賠償の範囲を、「直接かつ現実に生じた通常の損害」に限定する。
③ 損害賠償責任が発生する場合を、当事者に故意又は重過失のある場合に限定する。
④ 損害賠償請求の期限を設ける(納品日から○ヶ月以内など)。
①は、たとえば「甲が当該個別契約に基づいて乙に支払った委託料の総額を超えない」など、損害賠償額の上限を設けておくという方法であり、実務上良く用いられます。もっとも、たとえこのような条項を設けていても、損害賠償義務者の故意や重大な過失によって損害が生じたという場合には、上限額に関する規定の適用が認められない可能性もあります。
(反社会的勢力の排除)
省略
(譲渡禁止)
省略
(協議解決)
省略
【秘密保持契約書サンプル】
○○○○(以下「甲」という)と□□□□(以下「乙」という)は、甲が乙に対して委託する業務(以下「委託業務」という)に関し、相互に交換する情報等の取扱いについて、秘密保持契約(以下「本契約」という)を次の通り締結する。
第1条(目的)
本契約は、委託業務に関し、甲及び乙が相手方当事者に対して開示する秘密情報の取扱いに関して取り決めることをその目的とする。
第2条(秘密情報)
1【例1:「秘密情報」の範囲を限定しない場合】
本契約における秘密情報とは、甲及び乙が相手方に対し書面又は口頭その他方法の如何を問わず開示する技術上及び営業上の情報その他一切の情報をいう。
【例2:「秘密情報」の範囲を限定する場合】
本契約における秘密情報とは、甲及び乙が相手方当事者に対して開示した技術上及び営業上の情報のうち、「秘密情報」として指定したものをいう。ただし、甲及び乙は、口頭で秘密情報として開示したものについては、相手方当事者に対し、当該開示後○日以内に当該情報を明示した書面を送付するものとする。
2 前項の規定に拘わらず、次のいずれかに該当するものについては、本契約の規定は適用しない。
1相手方から知得する以前に公知となっていた情報
2相手方から知得する以前に自ら既に保有していた情報
3相手方から知得した後に、自己の責に帰することができない理由により公知となった情報
4自己が独自に開発した情報
5第三者から、秘密保持義務なしに正当に知得した情報
6裁判所その他公的機関から法律の規定に基づきその開示が要求された情報
第3条(秘密保持)
1 甲及び乙は、相手方の秘密情報を相手方の事前の書面による承諾なく、第三者に開示、公表又は漏洩してはならない。
2 甲及び乙は、相手方の秘密情報を委託業務以外の目的に使用してはならない。
3 甲及び乙は、相手方の秘密情報を、当該秘密情報を知る必要のあるそれぞれの従業員及び役員に限り開示するものとし、同従業員及び役員に対し、本契約における甲及び乙の義務と同等の義務を課すものとする。
4 甲及び乙は、相手方から開示を受けた秘密情報を相手方の書面による事前の承諾を得た上で、委託契約先及びその再委託契約先(以下総称して「委託契約先」という)に開示できる。但し、この場合、甲及び乙はその委託契約先に対し自己の責任において本契約に定める義務と同様の義務を遵守させるものとする。
第4条(秘密情報の保管)
1 甲及び乙は、相手方の秘密情報を委託業務上必要な範囲でのみ複製することができる。
2 甲及び乙は、秘密情報を善良なる管理者の注意を持って保管する。
第5条(知的財産権)
委託業務の過程で生じた特許などの知的財産権については、甲乙協議の上、その帰属等を決定し、相手方の開示した秘密情報に関し、開示者の事前の書面による承諾なくして出願、登録してはならない。
第6条(損害賠償)
【例1:損害賠償の範囲を「通常生じる損害」に限定する場合】
甲及び乙は、相手方又は相手方から情報の開示を受けた第三者が本契約に基づく秘密保持義務に違反した場合、当該違反行為により通常生じる損害の賠償を相手方に請求することができる。
【例2:損害賠償の範囲を広く設定する場合】
甲及び乙は、本契約の条項に一にでも違反し、相手方に損失・損害を与えたときは、その一切の損失・損害を賠償する。
第7条(本契約の解除)
甲及び乙は、相手方が本契約の条項のいずれかに違反したときは、何らの催告を要せず直ちに本契約を解除することができる。
第8条(開示された情報の返還)
甲及び乙は、秘密情報が委託業務に不要となったとき、相手方が返還を要求したとき又は本契約が終了若しくは解除された場合には、直ちに秘密情報に関する全ての書面及び媒体並びにそれらのあらゆる形態の写しを開示者に返還し、引き渡さなければならない。なお、甲及び乙は、相手方が秘密情報の廃棄を要求した場合は、当該秘密情報を再利用できない方法で廃棄する他、廃棄したことを書面にて相手方に証明するものとする。
第9条(有効期間)
本契約の有効期間は本契約締結の日から○年とする。但し、甲及び乙は、委託業務を継続することを合意することにより必要に応じてこの期間を延長できるものとする。
第10条(管轄)
本契約に関連して生じた一切の紛争については、東京簡易裁判所又は東京地方裁判所をもって第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
第11条(疑義の処理)
甲及び乙は、本契約にない事項又は本契約の各条項の解釈に疑義を生じた事項については、誠意を持って協議のうえ解決にあたるものとする。
以 上
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