Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
資料1ー1
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
建設工事標準請負契約約款の改正について(案)
標準請負契約約款の概要
標準請負契約約款は、請負契約の片務性の是正と契約関係の明確化・適正化のため、当該請負契約に おける当事者間の具体的な権利義務関係の内容を律するものとして、中央建設業審議会がxxな立場から作成し、当事者にその実施を勧告するもの。【建設業法第34条第2項】
建設業法(昭和24年法律第100号)(抄)
(中央建設業審議会の設置等)
第34条 この法律、公共工事の前払金保証事業に関する法律及び入札契約適正化法によりその権限に属させられた事項を処理するため、国土交通省に、中央建設業審議会を設置する。
2 中央建設業審議会は、建設工事の標準請負契約約款、入札の参加者の資格に関する基準並びに予定価格を構成する材料費及び役務費以外の諸経費に関する基準を作成し、並びにその実施を勧告することができる。
種 類
① 公共工事標準請負契約約款(S25作成)
対象:国の機関、地方公共団体、政府関係機関が発注する工事の請負契約
(電力、ガス、鉄道等の民間企業の工事も含む)
② 民間建設工事標準請負契約約款(甲)(S26作成)
対象:民間の比較的大きな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約
③ 民間建設工事標準請負契約約款(乙)(S26作成)
対象:個人住宅等の民間の比較的小さな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約
➃ 建設工事標準下請契約約款(S52作成)
対象:公共工事・民間工事を問わず、建設工事の下請契約全般
※ xx・xx他「重要論点実務民法(債権関係)改正」によれば、定型約款の定義は①不特定多数要件と②合理的画一性要件とされているが、建設工事の請負契約についてはこのいずれにも該当しないことから、定型約款に当たらないものと考えられる。
1
○ 令和2年4月1日からの改正民法の施行に向け、建設工事標準請負契約約款の規定について見直しを行うべく、中央建設業審議会の下に建設工事標準請負契約約款改正ワーキンググループを設置。
建設工事標準請負契約約款の概要
○ 中央建設業審議会は、建設工事の請負契約の片務性の是正と契約関係の明確化・適正化のため、xxな立場から「建設工事
○ 現在、「公共工事標準請負契約約款」「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」
「建設工事標準下請契約約款」の4種類が作成されている。
標準請負契約約款」を作成し、受発注者にその実施を勧告している。(建設業法第34条第2項)
委員(令和元年8月1日現在)
xx xx 東京大学社会科学研究所教授
x xx 一般社団法人日本建設業連合会総合企画委員会法務部会長
xx xx 一般社団法人日本建設躯体工事業団体連合会会長xx xx 弁護士・東洋大学法学部教授 【座長】
xx x 独立行政法人都市再生機構技術・コスト管理部長xxx xx 一般社団法人全国中小建設業協会会長
xx xx 一般社団法人不動産協会企画委員長xx見 xx xxx財務局契約調整担当部長
xx xx 一般社団法人全国建設業協会専務理事
xx xx 東日本高速道路株式会社総務・経理本部経理財務部長xx xx 法務省民事xxxx (オブザーバー)
中央建設業審議会建設工事標準請負契約約款改正ワーキンググループについて
スケジュール
4月16日
8月1日 10月3日
10月24日
11月11日
第1回会議
・約款改正WGにおける検討事項(案)について議論
第2回会議
第3回会議第4回会議第5回会議
・とりまとめ(座長一任)
検討事項
○民法の改正内容への対応
・契約不適合責任について(約款第44条 等)
・契約解除について(約款第47条 等)
・譲渡制限特約について(約款第5条、第34条、第36条 等)
○建設業法改正への対応
○その他
・政策的な検討事項(履行保証に関する検討 等)
・技術的な検討事項(改元に伴う修正 等)
(第1回WG 座長挨拶) 2
譲渡制限特約について
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民法
現行 改正後
○ 旧法第466条は、第1項で債権の自由譲渡性の原則を定め、第2項で「当事者が反対の意思を表示した場合」には、この原則を適用しない旨を規定していた。そのため、譲渡制限特約が付された債権の譲渡は無効であると一般に解されていた。
○ 譲渡制限特約が付されていても、債権 の譲渡の効力は妨げられないとされた。
(新法第466条第2項)
出典:xx・xx「一問一答民法(債権関係)改正」
公共工事標準請負契約約款
現行
改正案
○ 受注者は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡、又は承継させてはならない。ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りでない。
※ 前払金や部分払など資金調達のニーズに対応する制度が既に設けられている
○ 受注者は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りでない。
※ 注において、承諾する場合の例として完成検査に合格した後に請負代金債権を譲渡する場合を記載。
○ 受注者が前払や部分払によってもなおこの契約の目的物に係る工事の施工に必要な資金が不足することを疎明したときは、特段の理由がある場合を除き、発注者は承諾をしなければならない。
○ この場合、受注者は請負代金債権の譲渡により得た資金は当該工事の施工以外には使用してはならず、その使途を疎明する書類を発注者に提出しなければならない。
※上記を付するか契約の当事者が選択して使用 4
民間工事標準請負契約約款(甲・乙)、建設工事標準下請契約約款
○ 発注者及び受注者は、相手方の書面による承諾を得なければ、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させることはできない。
現行
○ 発注者及び受注者は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させることはできない。ただし、あらかじめ相手方の承諾を得た場合又はこの契約の目的物に係る工事を実施するための資金調達を目的に請負代金債権を譲渡するとき(前払や部分払等を設定したものであるときは、前払や部分払等によってもなおこの契約の目的物に係る工事の施工に必要な資金が不足することを疎明したときに限る。)は、この限りでない。
○ 受注者は、上記ただし書の規定により、請負代金債権を譲渡したときは、譲渡により得た資金を当該工事の施工以外には使用してはならない。
○ 発注者は、必要があると認めるときは、受注者に対して、上記に違反していないことを疎明する書類の提出などの報告を求めることができる。
A
○ 発注者及び受注者は、相手方の書面による承諾を得なければ、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させることはできない。
前払や部分払の有無などその建設工事の資金調達の事情などに応じて、AとBを選択して使用する。
B
改正案
公共工事標準請負契約約款、民間工事標準請負契約約款(甲・乙)、建設工事標準下請契約約款
<違反があった場合の対応について>
○ 譲渡制限特約に違反して譲渡した場合
○ 承諾を受けた場合(公共)又はBを選んだ場合(民間(甲・乙)、下請)において、当該工事の施工以外に譲渡により得た資金を使用した場合
○ 暴力団等に譲渡した場合(公共)
無催告解除
として約定解除権を規定
○ 使途に関する資料の提出を求めた場合に、報告を拒否又は虚偽の報告をした場合
催告解除
として約定解除権を規定
○ 改正民法においては、債務者が譲渡制限特約を付する場合の一般的な目的である弁済の相手方を固定する目的は達成することができるように配慮された上で債権譲渡を有効としているため、弁済の相手方を固定するという利益は保護されており、特段の不利益がないにもかかわらず、債権譲渡を行ったことをもって契約解除や取引関係の打ち切りを行うことは権利の濫用にあたり得るものとも考えられるとされている。
出典:xx・xx「一問一答民法(債権関係)改正」
○ 一方で、xx・xx他「実務民法(債権関係)改正」によれば、「新法下で保護される債務者の利益は、弁済先を固定する利益(弁済先が変わることによる二重払の防止、事務手間の回避や、相殺権の確保)である。そのため、譲渡人及び債務者の間で、このような利益とは別の利益を保護する目的 をもって特約が定められ、特約違反に対する特別なサンクションが合意された場合において、それに合理性が認められるときは、合意自体の効力を否定的に解する必要はない。」とされている。
○ 建設工事の請負契約において譲渡制限特約で確保しようとする利益及びその合理性を検討し、その取扱いについて決定する必要がある。
【発注者】
・ 委託とは異なり、請負契約は完成物の引渡しと同時に支払いの義務が生じる。そのため、一定の必要な資金を確保する観点から前金払や部分払などの制度が設けられている一方、建設業者には許可基準に財産要件が課されているなど、長期間に渡る建設工事の請負の契約を着実に履行できる財産的基 礎が求められる。
・ 債権譲渡により工事着手前に資金がほぼ全額調達できることとなった場合、工事着手時点において十分な資力のない者が自転車操業的に受注することが可能となり、適正な施工がなされないおそれが ある。
・ 工事契約は双務契約であることから、請負代金債権の債権者(請負者)は対応する債務(工事完成債務)を負っているが、債権を譲渡した請負者が譲渡後に債務を履行し続けるか懸念される。
・ 工事契約については、通常、債権の発生時期(契約成立時)と支払時期との間の期間が長いため、この間に、設計図書変更等による請負代金債権の変更、解除による請負代金債権の一部又は全部の消滅等が行われることが多いなど、請負代金債権は不確定な要素の多い債権である。
・ 建設工事については長期間の契約となることなどその特殊性から、譲渡制限特約により
・建設工事の適正な施工
・最後まで工事を完成させること
などを担保しており、これらの発注者の利益は引き続き保護することが必要。
【元請負人】
・ 元請負人も発注者との関係では工事の受注者であるが、下請負人との関係では工事の注文者であり、 下請負人に適切に工事を完成してもらいたいという期待がある。
・ 建設業法第24条の3では、元請負人が注文者から請負代金の支払を受けたときの下請負人に対する下請代金の支払について規定している。これは下請代金の支払については、本来当事者の合意により 下請契約において定められるべきものであるが、建設工事の請負契約の実態を見ると、元請負人は、その経済的事情により注文者から支払われた工事代金を下請代金の支払に充てることなく他に転用して下請負人を不当に圧迫することが生じかねないことから、このような不xxな取引を排除するために設けられているものである。
・ 加えて、建設業法第24条の6において、特定建設業者の下請指導義務が規定されており、元請負人の視点からも下請負人が適切に賃金の支払い等を行う期待を保護する必要がある。
【下請負人】
・ 下請負人は、工事の受注者として債権譲渡を行い資金を得たいという期待がある一方で、さらに下 請契約を締結する場合は注文者となるため、工事完成への期待から債権譲渡を禁止するメリットがある。
契約不適合責任について
<現行> <改正後>
瑕疵 種類又は品質に関して契約の内容に適合しないこと
・修補
・損害賠償
・修補+損害賠償
・ 履行の追完が不能な場合等は催告無く代金減額請求が可能
・履行の追完請求
・修補
・代替物の引渡し
・(不足分の引渡し)
・ 履行の追完を催告しても応じない場合
・代金減額請求
※ 損害賠償請求と契約の解除の権利行使については上記におい
て妨げられない 11
・ 「瑕疵」という用語については、「契約の内容に適合しないもの」を意味するものとして表現が改められた。
・ 現行法では「瑕疵」があった場合には、修補若しくは損害賠償又は修補と併せた損害賠償を行うことができることとされているが、改正法では修補、代替物の引渡し等の履行の追完請求を行うことができるとされ、催告をしても履行の追完がなされない場合又は追完が不能であるときなどは代金減額請求できることとされた。
・ 履行の追完や代金減額請求は、契約の解除及び損害賠償請求を妨げないとされている。
・ 民法改正の整備法において、建設業法の「工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任」が
「工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任」に置き換えられたことから、約款においても「種類又は品質に関し契約の内容に適合しない」ことを「契約不適合」と定義することとした。
・ 約款においても民法改正を踏まえ、契約不適合の発注者の権利として、修補と代替物の引渡しによる履行の追完請求を規定し、催告しても履行の追完がなされない場合や追完が
不能であるときなどは、代金減額請求できることを規定することとした。 12
契約の解除について
○建物その他の土地の工作物の取扱いについて
完成前 | 完成後 | ||
発注者による契約の解除 | 改正前 | ○ | × |
改正後 | ○ | ○ |
・ 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約目的を達成することができない場合であっても、仕事の目的物が建物その他の土地の工作物であるときは、注文者は契約の解除をすることができないとの規定が削除された。
○軽微性について
・ 改正民法では催告解除について、債務不履行がその契約や取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、契約の解除をすることができない旨の規定が設けられた。
・ 「軽微」な不履行に該当するか否かをどのように判断するかという点については「①不履行のあった債務自体の内容と、②債務の不履行の様態(催告後の様態を含む)の観点から判断することになる」とされている。(xx・xx「重要論点実務民法(債権関係)改正」)
○帰責事由について
発注者に帰責事由 | 双方帰責事由なし | 受注者に帰責事由 | ||
発注者による契約の解除 | 改正前 | × | × | ○ |
改正後 | × | ○ | ○ 1 |
・ 現行約款に解除事由として規定している事項については、催告と無催告のどちらに該当 するかを検討した上でそれぞれ規定し直すこととする。
・ 民法で無催告解除の対象とされているものについては、約款においても同様に規定を行うこととする。
・ 工事完成後に契約を解除できる場合において、催告解除として「正当な理由なく、履行 の追完がなされないとき」を、無催告解除として「契約不適合が目的物を除却した上で再び建設しなければ、契約の目的を達成することができないものであるとき」と明示することとする。
・ 民法の規定を踏まえ、催告解除の場合に、「その期間を経過した時における債務の不履行がこの契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は解除できないこととした。
・ 工事完成後における契約の解除について、解除に伴う措置は一律に標準約款で規定することは困難であるため、除却の費用負担など、解除に伴って必要となる措置については発注者及び受注者が民法の規定に従って協議して決めることとする。
○公共約款における催告解除と無催告解除の規定
【催告解除】
・ 譲渡した資金の使途を疎明する書類を提出せず若しくは虚偽の記載をしてこれを提出したとき。
・ 正当な理由なく、工事に着手すべき期日を過ぎても工事に着手しないとき。
・ 工期内に完成しないとき又は工期経過後相当の期間内に工事を完成する見込みがないと認められるとき。
・ 監理技術者等を設置しなかったとき。
・ 契約不適合があった場合において、正当な理由なく履行の追完がなされないとき。
・ 前各号に掲げる場合のほか、この契約に違反したとき。
【無催告解除】
・ 譲渡制限特約に違反し、請負代金債権を譲渡したとき。
・ 請負代金債権を譲渡した場合においてその譲渡により得た資金を当該工事の施工以外に使用したとき。
・ この契約の目的物を完成させることができないことが明らかであるとき。
・ 引き渡された工事目的物に契約不適合がある場合において、その不適合が目的物を除却した上で再び建設しなければ、契約の目的を達成することができないものであるとき。
・ 受注者がこの契約の目的物の完成の債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
・ 受注者の債務の一部の履行が不能である場合又は受注者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
・ 契約の目的物の性質や当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、受注者が履行をしないでその時期を経過したとき。
・ 上記に掲げる場合のほか、受注者がその債務の履行をせず、発注者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
・ 暴力団又は暴力団員が経営に実質的に関与していると認められる者に請負代金債権を譲渡したとき。
・ 発注者の解除権の規定によらずに発注者がこの契約の解除を申し出たとき。
※上記のほか、暴力団が受注した場合など暴排の観点の解除を規定。
契約不適合責任期間について
5年
工作物又は地盤の瑕疵
10年
引渡し
現行民法
瑕疵担保の存続期間(第638条)
改正民法(第166条)
権利を行使出来るとき
10年
知った
どちらか短い方が適用
石造、土造、れんが 造、コンクリート造、金属造その他これら に類する構造の工作 物
時から 5年
される
瑕疵による滅失・損傷
1年以内に修補又は損
改正民法(第637条)
害賠償請求
不適合の事実を知ったとき
1年
1年以内に
通知
※目的物を引き渡した時において、請負人が不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは適用しない。
→1年以内に通知していなくても権利行使可能
1年
2年
引渡し
原則
瑕疵による滅失・損傷
6月以内に修補又は損害賠償請求
木造の建物等・設備工事等
コンクリート造等の建物等又は土木工作物等
<短縮の例外>
※瑕疵が受注者の故意又は重大な過失により生じたものである場合には、請求を行うことのできる期間は10年
※住宅品確法施行令第5条に定める部分の契約不適合についての担保期間は10年
10年
※発注者は、工事目的物の引渡しの際に瑕疵があることを知ったときは、その旨を直ちに受注者に通知しなければ、当該瑕疵の修補又は損害賠償の請求をすることはできない。ただし、受注者がその瑕疵があることを知っていたときは、この限りでない。(公共・民間(甲))
(民間(甲))
・機器、
室内装飾、家具等
(民間(乙))
・造作、装飾、家具
引渡しから1年(隠れた瑕疵に限る。)
引渡しから6月(隠れた瑕疵に限る。)
※検査で瑕疵があるときは直ちに修補又は取替を請求しなければならない
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引渡し
原則
引渡しから2年以内に請求
設備機器、室内装飾、家具等
引渡しから1年以内に請求(検査で発見出来なかった契約不適合に限る)
2年(設備機器等については1年)以内に通知を行えば通知を行ってから1年間請求等を行うことができ、その場合は上記の期間内に請求等を行ったものとみなす。
通知 ※契約不適合責任期間の終了直前に契約不適合が見つかった場合に請求まで行うことは困難であり、その救済措置を規定
・受注者の故意又は重過失により生じたものであるとき
・住宅品確法施行令第5条に定める部
知った時から
10年
どちらか短い方が適用
5年
10年
分の契約不適合
引渡しから10年の担保期間
※発注者は、工事目的物の引渡しの際に契約不適合があることを知ったときは、その旨を直ちに受注者に通知しなければ、当該契約不適合に対する履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求又は契約の解除をすることはできない。
ただし、受注者がその契約不適合があることを知っていたときは、この限りでない。 20
○ 建設工事は、監督員の立会い、検査等、監理者による工事監理のもとに施工されるものであり、契約内容と不適合な部分が生じるおそれは少なく、また、工事完成検査の際に専門家により厳重な確認がなされることにより、不適合部分はほとんど修補されて引渡しが行われる。さらに、実際上、長期間経過すれば それが施工上の瑕疵か使用上の瑕疵かをめぐって争いを生じ、請負者が速やかに修補請求に応じることも期待しがたいところであり、また、請負者を長期間不安定な地位に置くことも過酷なことと考えられる。そこで、約款においては、瑕疵担保責任の存続期間を木造の建物等の建設工事又は設備工事等の場合には
1年に、コンクリート造等の建物等又は土木工作物等の建設工事の場合には2年に短縮することが望ましいとしていたところ。
○ 一方で、木造とコンクリート造等の区別は民法において廃止されることとなり、これを引き続き約款においても保持することに合理性はない。ただし、設備機器や家具等はこれまでもその性質により担保期間が縮減されてきたところであり、これらについては引き続き維持する必要がある。
○ 現行の約款において設けられている期間制限は、建設工事の特性から導かれるものであり、民間工事の建築設備の機器、室内装飾、家具等(民間甲)や造作、装飾、家具(民間乙)の契約不適合については、これらの品質が維持される期間を瑕疵担保期間としたものである。
この実態は、民法改正後であっても変わるものではないため、改正後の約款において、引き続き、契約不適合責任に関し期間の制限を設けることは、消費者契約法第10条の規定には違反しないものと考えられる。
○ 改正案では、木造とコンクリート造等の区別は廃止した上で、これまで民法で10年とされていたものを約款では2年としていたことも踏まえ、原則2年の契約不適合責任期間とする。また、設備機器等については1年の契約不適合責任期間とする。発注者は原則上記の期間内に請求を行う必要があることとし、期間終了直前に契約不適合が発覚したときの発注者保護の観点から、通知をすればそこから1年間請求す
ることが可能とすることとする。 21
その他民法改正に伴う改正事項について
個人根保証
その他民法改正に伴う改正事項について
○ 民間工事標準請負契約約款(甲)・(乙)、建設工事標準下請契約約款については、契約書の署名欄に保証人を立てる場合に保証人が記名、押印する欄が設けられている。
○ 民法改正を踏まえ、上記の保証が個人根保証である場合に記載する極度額の欄を設けることとする。
受領遅滞
○ 民法改正により、受領遅滞の場合は、
・引渡しまでの間は自己の財産に対するのと同一の注意で保存すれば足りること
・同一の注意をもって管理したにもかかわらず生じた損害及び受注者が管理のために特に要した費用は発注者の負担とすること
が明記された。
○ 民法改正を踏まえ、受領遅滞の場合の上記取扱いを約款にも明示的に記載することとする。
その他改正事項について
(公共約款のみ)
・ 破産管財人による解除の場合についても、受注者において違約金支払義務が生じる事由に当たる旨改正が行われた(平成29年)が、契約を保証する証券において、破産管財人による解除が保証の対象となっていない場合があり、発注者が違約金を保険会社から受け取ることが出来ない可能性がある。
・ このため、約款において、保証契約は破産管財人等による解除についても保証するものであることを求めることを明示することとする。
請負契約
発注者
受注者
債務の不履行を保証する証券を付さなければならない
③違約金の請求
➃保険金の支払い
②契約の解除
保証契約
破産管財人等による解除も保証の対象とするよう義務づけ
①破産
保険会社
破産管財人等
建設業法の改正に伴う措置について (R2.10.1施行)
○ 建設業法第19条(契約書に記載すべき事項)に、「工事を施工しない日又は時間帯を定めるときはその内容」が追加されたことを踏まえ、約款の契約書部分に当該事項を追加することとする。
○ 今回新たに監理技術者を補佐する者について規定されたところ。現行の約款においても監理技術者やxx技術者、専門技術者の名前を発注者に通知することとしており、監理技術者補佐についても配置する場合はその氏名を通知することとする。
○ 改正建設業法において、著しく短い工期による請負契約の締結が禁止されたことを踏まえ、変更契約においても、変更後の契約が通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とすることを禁止することを規定することとする。