Contract
第1条(FAの定義)
日本プロフェッショナル野球組織(以下「この組織」という。)にフリーエージェント(以下「FA」という。)制度を設ける。「国内FA」とは,この組織が定める国内FA資格条件を満たし,この組織のいずれの球団とも選手契約を締結する権利を有する選手をいい,「海外FA」とは,この組織が定めるF A資格条件を満たし,外国のいかなるプロフェッショナル野球組織の球団をも含め,国内外のいずれの球団とも選手契約を締結する権利を有する選手をいう
(「国内FA」及び「海外FA」の双方を,「FA」と総称する。)。
第2条(資格取得条件)
1 選手は,入団して初めて出場選手登録された後,その日数がセントラル野球連盟及びパシフィック野球連盟の同じ年度連盟選手権試合期間中( 以下
「シーズン」という。)に145日を満たし,これが8シーズンに達したときに,国内FAとなる資格(以下「国内FA資格」という。)を取得する。ただし,2007年以降に行われた新人選手選択会議により選択されて入団した選手のうち,選択された当時,大学野球連盟又は日本野球連盟に所属していた選手については,上記の8シーズンを7シーズンと読み替えるものとする。
2 選手は,入団して初めて出場選手登録された後,その日数がセントラル野球連盟及びパシフィック野球連盟の同じシーズン中に145日を満たし,これが9シーズンに達したときに(ただし,それ以前に国内FAの権利を行使していた場合を除く。),海外FAとなる資格(以下「海外FA資格」という。国内FA資格及び海外FA資格の双方を「FA資格」と総称する。) を取得する。
3 出場選手登録日数が同年度中に145日に満たないシーズンがある場合は,それらのシーズンの出場選手登録日数をすべて合算し,145日に達したも のを1シーズンとして計算する。
〔注〕セントラル野球連盟及びパシフィック野球連盟の年度連盟選手権試合におけるFA資格についての出場選手登録日数の起算日は,野球協約第84条の規定にかかわらず,それぞれの連盟の年度連盟選手権試合開始予定日とする。
第3条(コミッショナーの公示)
コミッショナーは毎年,セントラル野球連盟及びパシフィック野球連盟の年度連盟選手権試合が終了した後,いずれか遅い方の終了日の2日後に,その年にFA資格を得た選手及びFA資格を持続している選手の名簿を公示する。その際,選手が,海外FA資格を取得している場合は,その旨明示する。
〔注〕セントラル野球連盟又はパシフィック野球連盟の年度連盟選手権試合がその年の日本選手権シリーズが終了した後,なお継続しなければならない場合は,コミッショナーが別途,公示日を決定する。また,その公示日にFA資格を取得するために必要な出場選手登録日数が不足している選手であっても,当該選手の不足日数を満たすことが出来る年度連盟選手権試合を残している場合は,それぞれの選手の不足日数を付し,FA資格取得可能選手として名簿に記載し,当該選手がそのシーズン中に不足日数を満たしたときは,コミッショナーが追加公示する。
第4条(権利行使)
その年FA資格を取得している選手(以下「FA資格選手」という。) がF Aの権利を行使するためには,本規約第6条1号に定める期間内にFAの権利を行使することを表明し,手続きをとらなければならない。所定の期間内に手続きをとらない場合は,FAの権利の行使を保留したものとする。コミッショナーは,FAの権利を行使する旨文書で申請のあった選手(以下「FA宣言選手」という。)名をその年の日本選手権シリーズ試合が終了した日の翌日から土,日,祭日を除く7日間を経た翌日の午後3時にFA宣言選手として公示する。
〔注〕コミッショナーからFA宣言選手として公示された選手は,直前まで在籍していた球団(旧球団)と選手契約を締結する場合又は同選手契約の締結に同意している場合を含み,すべてFAの権利の行使となる。
第5条(資格取得の反復)
FA宣言選手は,その後日本プロフェッショナル野球組織に所属するいず れかの球団で選手として稼動して,1シーズン出場選手登録145日を満たし,これが4シーズンに達したときに,海外FA資格を取得する。この場合におい
て,出場選手登録日数が不足するシーズンがあるときの扱いは,第2条第3項の規定を準用する。
第6条(行使の表明)
1 FA資格選手は,その年の日本選手権シリーズ試合が終了した日の翌日から土,日,祭日を除く7日間以内に,在籍球団に対しFAの権利を行使する意思を表明することができる。
〔注1〕FAの権利を行使する意思のないFA資格選手は,本規約第4条の規定によりその年はFAの権利の行使を保留したものとする。
〔注2〕本条1項の7日間のコミッショナー事務局業務日は,毎年FA資格選手名簿公示の日に各球団に通知する。
2 FAの権利を行使する意思を表明したFA資格選手は,第1項に規定する期間内に,在籍している球団の代表者と連名によりコミッショナーあてその旨文書で申請しなければならない。
〔注1〕本条2項に定めるコミッショナーあて申請文書の送付はファクシミリによる送信も受け付けるが,その原本は送信日から3日以内にコミッショナー事務局に届けなければならない。
3 FA宣言選手は,コミッショナー公示の翌日から,直前まで在籍していた球団(以下「旧球団」という。)を含めいずれの球団とも次年度選手契約締結交渉を行うことができる。
4 いずれの球団も,FA宣言選手と選手契約締結に合意したときは,統一契約書の写し又は契約合意書を添付しその旨を遅滞なくコミッショナーに通知しなければならない。xxxxxxxは通知を受け付けた場合,その都度これを公示する。
5 本規約第2条第1項により国内FA資格を取得したが、同条第2項により海外 FA資格を取得していない選手が、本条第1項の規定により、FAの権利を行使した場合、当該選手は、この組織のいずれの球団とも選手契約を締結することができるが、それ以外の国内外のいかなる球団(プロフェッショナル野球組織又はいわゆる「独立リーグ」に属するものをすべて含む。)とも選手契約を締結することはできない。
6 本規約第2条第1項により国内FA資格を取得したが、同条第2項により海外
FA資格を取得していない選手が、本条第1項の規定により、FAの権利を行使した場合、当該選手は、野球協約第68条の規定にかかわらず、この組織のいずれの球団とも選手契約について交渉し、選手契約を締結することができるが、それ以外の国内外のいかなる球団(プロフェッショナル野球組織又はいわゆる
「独立リーグ」に属するものをすべて含む。)とも選手契約について交渉し、又
は、選手契約を締結することはできない。なお、この場合、当該選手が、旧球団以外のこの組織のいずれかの球団と新たな選手契約を締結し、かつ、支配下選手の公示手続が完了するまでは、当該選手は、旧球団の契約保留選手と見做され、その全保留選手名簿に記載されるものとする。
第7条(選手契約の条件)
FA宣言選手と選手契約を締結する球団は,当該選手の参稼報酬年額を日本プロフェッショナル野球組織に所属する球団での同選手の直前シーズンの統一契約書に明記された参稼報酬年額(以下「前参稼報酬年額」という。)を超える額とすることはできない。ただし,球団が当該選手の前参稼報酬年額及び稼働成績に関する特別な事情をコミッショナーに文書で申請し,コミッショナーがこれを認めた場合は,本条の制限を超える参稼報酬年額で選手契約を締結することができる。
第8条(FA宣言選手の参稼報酬の減額制限)
FA宣言選手が選手契約を締結する場合は,野球協約第92条(参稼報酬の減額制限)の規定にかかわらず,同条所定の限度を超えて減額することも妨げない。
第9条(金銭調停の不請求)
球団及びFA宣言選手は,選手契約の締結交渉において参稼報酬額等金銭に関する調停を求めることはできない。
第10条(球団の補償)
1 この組織に所属する他の球団(旧球団)に在籍していたFA宣言選手と選手契約を締結した球団(以下「獲得球団」という。)は,本条に定めるところにより,当該選手の旧球団に対し金銭及び選手を補償する(以下「FA補償」
という。)。
2 FA補償は,FA宣言選手の当該年度の参稼報酬の額に基づく旧球団における以下のランク付け(外国人選手を除く。なお,野球協約82条(4)号に規定する者は,本規約においては,「外国人選手」と見做す。)に従い行う。なお,ある選手の参稼報酬の額が他の選手の参稼報酬の額と同じである場合には,出場登録日数の総数が多い選手のほうを順位が下とし,出場登録日数の総数も同じである場合には,年齢が上の選手を順位が下とする。
(1) Aランク 上位1位~3位
(2) Bランク 上位4位~10位
(3) Cランク 上位11位以下
3 当該FA宣言選手(前項の定めによるAランク又はBランクに属する者に限る。)が最初にFAの権利を行使する場合は,獲得球団は,旧球団に対し,旧球団の選択によるところに従い,下記(1)又は(2)のいずれかの補償をする。
(1) 選手による補償がある場合ア 選手による補償
旧球団が,選手による補償を求める場合は,獲得球団が保有する支配下選手のうち,外国人選手及び獲得球団が任意に定めた28名を除いた選手名簿から旧球団が当該FA宣言選手1名につき各1名を選び,獲得することができる。前記の選手名簿の旧球団への提示はFA宣言選手との選手契約締結がコミッショナーから公示された日から2週間以内に行う。選手による補償が重複した場合は,当該FA宣言選手と選手契約した球団と同一連盟の球団が他の連盟の球団に優先する。また同一連盟内においては,当該年度連盟選手権試合の勝率の逆順をもって,球団の優先順位とする。
イ 金銭による補償
旧球団は,獲得球団に対し,前号の選手による補償のほか,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求めることができる。
① 当該選手がAランクに属する場合 50%
② 当該選手がBランクに属する場合 40%
(2) 選手による補償がない場合
旧球団が,選手による補償を求めない場合,旧球団は,獲得球団に対し,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求める
ことができる。
① 当該選手がAランクに属する場合 80%
② 当該選手がBランクに属する場合 60%
4 当該FA宣言選手(第2項の定めによるAランク又はBランクに属する者に限る。)が第5条の定めによるFAの権利を行使する場合は,獲得球団は,旧球団に対し,旧球団の選択によるところに従い,下記(1)又は(2)のいずれかの補償をする。
(1) 選手による補償がある場合
ア 旧球団が,選手による補償を求める場合は,獲得球団が保有する支配下選手のうち,外国人選手及び獲得球団が任意に定めた28名を除いた選手名簿から旧球団が当該FA宣言選手1名につき各1名を選び,獲得することができる。この場合において,前項(1)アの規定を準用する。
イ 旧球団は,獲得球団に対し,前号の選手による補償のほか,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求めることができる。
① 当該選手がAランクに属する場合 25%
② 当該選手がBランクに属する場合 20%
(2) 選手による補償がない場合
旧球団が,選手による補償を求めない場合,旧球団は,獲得球団に対し,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求めることができる。
① 当該選手がAランクに属する場合 40%
② 当該選手がBランクに属する場合 30%
5 前2項に規定されたすべての補償は,コミッショナーから当該選手の契約締結の公示が行われた後,40日以内に完了しなければならない。ただし,金銭による補償については,旧球団の同意がある場合は,期間を延長することができる。
6 FA宣言選手がFA宣言した年の翌々年の11月30日までにこの組織に所属するいずれの球団とも選手契約を締結せず,FA宣言した年の翌々年の
12月1日以降,この組織に所属するいずれかの球団と選手契約を締結した場合,そのFA宣言選手と契約した球団は旧球団に対して補償することを要しない。
7 本条3項及び4項の規定により,旧球団から指名された獲得球団の選手は,その指名による移籍を拒否することはできない。当該選手が,移籍を拒否した場合は,同選手は資格停止選手となり,旧球団への補償については,本条第3項(2)号又は本条第4項(2)号を準用する。
第11条(球団の獲得選手数)
1 球団がFA宣言選手のうち直前シーズンまでこの組織に所属する他の球団に在籍していた選手と次年度の選手契約を締結できるのは2名までとする。ただし,公示されたFA宣言選手数が21名から30名の年度は3名まで,同31名から40名の年度では4名まで,同41名以上の年度では5名まで選手契約を締結することができる。
2 前項に定める人数の制限は,Cクラスの選手には適用しない。
第12条(FA宣言選手の稼働期間)
FA宣言選手と公示された選手といえども,当該選手が旧球団とかわした統一契約書により11月30日までは旧球団及びこの組織が指定する行事に参加する義務を負う。
第13条(ポスティング手続の不採用)
獲得球団は,国内FAの権利を行使したFA宣言選手について,同選手が当該国内FAの権利を行使しなかったとしたら海外FA資格を取得したであろう時点までは、日米間選手契約に関する協定8項ないし12項所定のポスティングの手続を採らない。