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得 法務編
解雇等の雇用契約終了の基礎知識
解雇等の雇用契約終了の基礎知識
栃木県弁護士会 xxx中央法律事務所 弁護士 xx xx x
企業では、定年退職、有期雇用契約の期間満了、辞職、解雇などによって、労働者との雇用契約が終了します。中でも、解雇は法律上の厳格な制限があり、有効性について争われて訴訟等に発展するケースもあります。
今回は、事業主の側から見た解雇等の雇用契約終了の基礎知識について、ご紹介します。
第1 雇用契約が終了する場合
1 雇用契約の終了
雇用契約が終了する場合には、主に以下のものがあります。
(1)有期雇用契約の期間満了
有期雇用契約は、原則として契約の際に決めた期間の満了により雇用契約は終了します。しかし、契約が反復更新された場合などには更新拒絶は制限される場合があります(労働契約法19条)。
(2)合意解約
合意解約は、労働者と使用者が合意によって雇用契約を解消するものです。
(3)辞職
辞職は、労働者による雇用契約の解約です。期間の定めのない雇用の場合、労働者は2週間の予告期間を置けばいつでも契約を解約できます(民法627条1項)。
(4)定年退職
定年は、労働者が一定の年齢に達したときに雇用契約が終了する制度です。
事③主が定年を定める場合、定年年齢は60歳を下回ることはできません。他にも65歳までの雇用確保措置の義務付け、70歳までの雇用確保措置の努力義務があります(高年齢者雇用安定法8条、10条の2)。
(5)労働者の死亡
労働者が死亡した場合、雇用契約は終了します。
(6)解雇
解雇は事③主による雇用契約の解約です。後記第2で説明します。
(7)その他
上記(1)から(6)のほか、厚生労働省が公表しているモデル就③規則(令和5年7月版)は「休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき」を退職事由に挙げています。
2 解雇が限定的に認められること
上記1(3)のとおり、労働者からの辞職は広く認められる一方、事③主からの解雇は、後記第2のとおり限られた場合にのみ認められます。
第2 解雇xxxの整理
1 解雇できる場合
(1)法令の定め
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利濫用として無効となります(労働契約法16条)。
(2)解雇の有効性
上記(1)の「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」は、概ね次のとおり分類・整理ができます。ア 「客観的に合理的な理由」は、主に次のように分類できます。
① 労務提供できない場合や、労働能力・適格性がない場合
② 規律違反等がある場合
③ 経営上の必要がある場合
①の場合、通常「普通解雇」がされます。②は「懲戒解雇」又は「普通解雇」がされます。③は「整理解雇」と呼ばれます。
イ 「社会通念上相当」は、解雇の事由が重大で、解雇以外の手段が取り得ないような場合に限って認められます。
ウ このように、解雇の有効性は厳格に判断される傾向にあります。
(3)解雇に伴う手続
解雇する場合、30日前の予告又は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払が必要です。また、労働者から解雇理由証明書の交付を請求された場合には交付する義務があります(労働基準法
20条、22条2項)。
2 解雇が制限される場合
(1)労働者が③務上の傷病で休③する期間とその後30日間は、解雇が制限されます(労働基準法19条1項)。産前・産後の女性労働者の休③期間とその後30日間も同様です(同項)。
(2)他にも、差別的取扱い、性別、障害者であること、産休・育休の取得等、労働組合への所属や正当な組合活動、公益通報をしたこと等を理由とした解雇が、各法律で制限されています。
3 類型ごとの整理
(1)普通解雇
病気や怪我のため働くことができない、勤務成績が著しく悪い、欠勤が一定期間以上継続する、といった事由が普通解雇の事由となります。
また、後記(2)の非違行為や規律違反がある場合に、懲戒解雇ではなく普通解雇が選択される場合もあります。
(2)懲戒解雇
懲戒解雇は、懲戒の中で最も重い処分です。通常、解雇予告手当の支払もなされず、退職金の支給も制限されます。
具体的な懲戒事由には、経歴詐称、職務怠慢(無断欠勤、遅刻過多、職場離脱など)、③務命令違反、会社の③務妨害、職場の規律違反、犯罪行為その他の非行などがあります。懲戒事由に該当し、中でも特に程度が重い場合に、懲戒解雇が有効と認められます。
(3)整理解雇
整理解雇は、企③の経営上の必要から人員削減のために行う解雇です。
整理解雇の有効性は、主として、①人員削減の必要性があるか、②解雇回避努力を尽くしたか、③解雇される者の選び方が妥当か、④労働者との協議など妥当な手続を経たか、の4つのポイントから判断されます。
第3 解雇の有効性が争われる場合と無効となった場合の対応
1 解雇の有効性が争われる場合
事③主が労働者を解雇した場合、労働者から解雇の有効性が争われることがあります。
最初は、労働者本人や代理人弁護士から内容証明郵便が送られてくるケースが多いです。他に、労働局におけるあっせん、裁判所を通じた仮処分、労働審判、訴訟などが提起されることがあります。
2 解雇が無効となった場合の事業主の対応
(1)訴訟で解雇が無効と判断された場合、事③主は、次のような対応を要します。
① 解雇した従③員を復職させるなどする
② 解雇期間中の賃金を支払う
③ 無効な解雇をしたことの慰謝料を支払う
(2) 訴訟となった場合、判決が出るまでに1年以上かかることも多く、上記(1)の支払総額が数百万円超となることもあります。
もっとも、訴訟になった場合でも、必ず判決となるわけではなく、和解をして解決するケースも多くあります。事③主が解雇を行う際や、解雇をした後に有効性が争われた場合、弁護士に対応をご相談ください。
以上
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