Contract
223 買手が商標権者に支払うロイヤルティに課せられる所得税
A:ライセンス契約において、買手Bがライセンサーである売手Sに支払うべきロイヤルティの額は、100万円です。
源泉所得税20万円は、買手Bが売手Sに代わり、本邦の税務当局に納税したものであり、買手Bと売手Sとの間で支払うことが合意されたロイヤルティの額には影響しません。
したがって、当該源泉所得税として納付した20万円は、関税定率法第4条第1項第4号に基づき、輸入貨物の課税価格の一部となります。
なお、買手Bが納付した源泉所得税は、製品に対してではなく、ロイヤルティに対する課税であることから、現実支払価格に含まないこととされている関税定率法施行令第1条の4第3号に規定する「本邦において当該輸入貨物に課される関税その他の公課」には該当しません。
関係法令等:関税定率法第4条第1項第4号、関税定率法施行令第1条の4第3号、関税定率法基本通達4-13、「関税評価に関する取扱事例について(事例33)」(平成19年6月26日 財関876号)
<所得税法における特許xxの対価の取扱い>
所得税法では、非居住者及び外国法人の場合、日本国内で生ずる所得は課税所得となり、原則として、源泉徴収により納税することとなっています。
一方、租税については「xx課税の原則」に立って、課税もれを防止すると同時に同一人の同一所得について、二重の課税をしないということが各国を通じた考え方となっています。
そこで我が国は、各国と租税条約を締結し、所得税に特例規定を設けています。この租税条約とは「所得に対する租税に関する二重課税の回避(及び脱税の防止)のための日本国と○○○国との間の条約(協定)」という名称の二国間の条約をいいます。
租税条約には所得税に規定されている非居住者等に対する源泉徴収についての特例などが具体的に定められており、その特例は国内法である所得税法に優先して適用されます。
つまり、所得税法では非居住者等に特許xxの対価を支払う者は、その支払の際、支払金額に20%の税率を乗じた額を所得税として徴収し、納付することとなっていますが、租税条約の多くは税率を10~15%と規定していますので実際には10~15%の税率が適用されることとなります。
売買・ライセンス契約
製品
【本邦】
買手B
貨物代金
売手S
(商標権者)
【E国】
源泉所得
【本邦】
税務当局
(輸入貨物の国内販売価格の5%相当額)
ロイヤルティ
Q:本邦の卸売業者B(買手B)は、特殊関係にないE国の商標権者S
(売手S)との間で締結した売買契約に基づき、売手Sの商標が付された製品を購入(輸入)します。
買手Bは、売手Sとの間で締結したライセンス契約に基づき、貨物代金の支払に加えて、当該製品に係る商標使用権の対価として、本邦における当該製品の販売価格の5%のロイヤルティを売手Sに支払うこととなっています。
買手Bは、当該製品を2,000万円で販売したことから、上記ライセンス契約に基づき、販売価格の5%である100万円のロイヤルティを売手Sに支払うこととなりました。
輸入貨物が商標を付したものであることから、当該ロイヤルティは、
「輸入貨物に係る」ものであり、また、商標権者である売手に対して買手が支払うものであることから、「輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により支払われるもの」です。
したがって、当該ロイヤルティは、関税定率法第4条第1項第4号に該当し、課税価格に含まれるものです。
買手Bは、当該ロイヤルティの20%に相当する額の源泉所得税20万円を本邦の税務当局に納付し、当該所得税分を差し引いた80万円を貨物代金とは別に売手Sに支払いました。
なお、ライセンス契約において、当該源泉所得税を買手Bが負担するとの規定はありません。
上記輸入貨物の課税価格を関税定率法第4条第1項の規定により計算するにあたり、買手Bが納付した源泉所得税20万円はどのように取
り扱われますか?
Q:本邦の買手Bは、売手Sと売手が権利を所有する特許品である光学機器に関するライセンス契約を締結し、真正見本1台を輸入(購入)し、当該光学機器の複製品を製造し、国内販売することとしました。また、ライセンス契約では、複製品1台につき$1,000のライセンス料を買手が売手に支払うこととなっています。
このたび、ライセンス契約に基づいて見本(光学機器)を輸入します。この場合、買手が売手に支払うライセンス料は、輸入貨物の課税価
格に算入されますか?
224 特許品を輸入し、本邦で複製する場合のライセンス料 225 輸入貨物(著作物)を用いて書籍を出版する場合のライセンス料
Q:本邦の買手Bは、写真家S氏の写真集を出版することを企画し、 S氏から写真を輸入(購入)しました。当該輸入取引において、買手は、写真代金とは別にS氏との契約により、写真集の国内販売価格の1%をライセンス料としてS氏に支払うこととしています。
このたび、写真集用の写真が輸入されます。
この場合、買手が売手に支払うライセンス料は、輸入貨物の課税価格に算入されますか?
A:輸入貨物に係る特許xx(当該輸入貨物を本邦において複製する権利を除く)の使用に伴う対価で、かつ、取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により支払われるロイヤルティ又はライセンス料等は加算要素です(定率法第4条第1項第4号)。
本事例の場合、買手Bが売手Sに支払うライセンス料は、輸入貨物(特許品である光学機器の真正見本)の複製品を本邦において製造する権利の使用の対価として支払うものであり、当該輸入貨物の輸入取引をするために支払われるものではありませんので、加算要素には該当しません。
したがって、買手が売手に支払うライセンス料は、輸入貨物の課税価格に算入されません。
ポイント
輸入貨物を本邦において複製する権利の使用に伴う対価は、加算要素から除外されている。
「輸入貨物を本邦において複製する権利」とは、輸入貨物に化体され、又は表現されている考案、創作等を本邦において複製する権利をいう。
例えば、動画や楽曲等の著作物が記録されたマスターテープを輸入し、本邦においてダビング(複製)する権利等がこれに該当する。
関係法令等:関税定率法第4条第1項第4号、関税定率法基本通達4-13
A:輸入貨物に係る特許xx(当該輸入貨物を本邦において複製する権利を除く)の使用に伴う対価で、かつ、取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により支払われるロイヤルティ又はライセンス料等は加算要素です(定率法第4条第1項第4号)。
本事例の場合、買手Bが写真家S(売手)に支払うライセンス料は、輸入貨物(写真家Sの著作物である写真)を本邦において編集、印刷し、写真集として出版するために必要な権利(複製する権利)の使用に伴う対価であり、当該輸入貨物の輸入取引をするために支払われるものではありませんので、加算要素には該当しません。
したがって、買手が売手に支払うライセンス料は、輸入貨物の課税価格に算入されません。
ポイント
写真、フィルム、録音テープ等の著作物を輸入し、本邦において複製又は上映等の表現形式によりそれらの原著作物の再生(発行、興業等)をする権利は、「輸入貨物を本邦において複製する権利」に該当する。
関係法令等:関税定率法第4条第1項第4号、関税定率法基本通達4-13