Contract
製品や原材料などの供給契約において、製造物責任についての条項が盛り込まれることがあり(むしろ盛り込むのが一般的ですが)、その内容と製造物責任(PL)法の関係について聞か
れることがあります。例えば次のようなものです。
弊社はある化学製品の製造業者である。弊社の製品をO EMで提供してほしいとの依頼があり商談を進めている。委託者である企業からは、製造物責任法が適用される事故が発生した時の損害賠償責任は供給者である弊社に全て負ってほしいと言われている。製造物責任法ではこのような場合、どちらが負うことになっているのか。
OEM製品の供給者と委託者の関係ですが、供給者は直接製造を行っていますので、もちろん製造業者です。委託者は製造を行っていませんが、自社ブランドとして製品を販売しており表示製造業者に該当します。従って両者とも製造物責任が問われます。
このように、一つの製品に関連して複数の債務者が存在する場合、その内部関係は、不真正連帯債務関係と言って双方に賠償義務があり、それぞれの事故との関わりの深さによって内部の負担関係が決まります。また、損害を被った者(例えば一般消費者)との関係においては、双方が発生した損害の全額について連帯して責任を負わなければなりません。
PL法は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法律です。これに対し契約はある取引を継続的に行う企業間の決め事ですので、契約の条文に製造物責任についての取り決めがあったとしても製造物責任を逃れることができる訳ではありません。
例えば、事例1のOEM製品の場合、欠陥による製品事故が発生し、製品の使用者である消費者が損害を被った場合、一般的にはOEM委託者たる企業に損害賠償請求を行うでしょう。これを、契約を盾に供給者たる企業に振ることは出来ません。賠償を行う場合には、その全額を賠償した上で、供給者に対して、その負担割合に応じて求償することになります。
それでは契約にはどのような意味があるのでしょうか。製品事故が起こった際は、被害者への対応、製品事故の原因究明と迅速に動かないといけないことは言うまでもありません。また、不真正連帯債務関係にある事業者が、両者の責任の割合に応じて損害賠償を行うといっても、事故が起こってから話し合いの場を持つのでは、迅速な対応は望めません。そこで、製品事故があった場合の対応について事前に取り決めておくことが望まれます。
OEM契約の場合、委託者と供給者の欠陥に対する関与の程度、例えば技術の提供の有無、原材料の供給の有無、設計への関与、製造に関する指示の程度等々により、発生した損害に対する負担割合は変わってきます。委託者を“乙”、供給者を“甲”として、“乙”の関与が低い場合は「第三者に対する損害賠償責任が生じた場合は、その原因が“甲”の責めに帰すべき事由による場合を除いて、すべて“乙”の負担とする」といった内容になるでしょう。しかし、“乙”の関与度が高い場合には「第三者に対する損害賠償責任が生じた場合は、その費用分担は“甲”、“乙”が協議して決める」と言った内容が適当でしょう。
また、PL保険のxxについても取り決め、場合によっては保険料を折半するといった内容とするとよいでしょう。
契約を交わすとなると、少しでも自社に有利な内容にしたいという態度になりがちです。
製造物責任法の目的は、製造物の欠陥をなくし、もし欠陥が発見された場合は、その製品を回収する等の措置を講じることで事故の発生を未然に防ぎ、万が一事故が生じた場合は、速やかにその救済を行うということです。同じ製品に関わる立場から、xx性と被害者救済の精神を忘れずに、双方にとって前向きの契約を締結するよう心がけましょう。