Case 14-01
2015年度民法第4部「債権各論」第14回 好意型契約
第14回 無償契約(好意型契約)
【贈与契約】(210-212頁)
2015/11/30
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Case 14-01
①XはYに対して土地甲の贈与を約束したが後悔している。贈与をやめることはできないか。
②XはYの釣果から一匹の鯖をもらったが、その鯖はすでに傷みかけていた。XはYに代わりを請求できるか。食して食中毒になったらXはYに責任が追及できるか。
③死期が迫ったと感じたXは、13歳の長男に自己所有の土地・建物を与えたい。この
場合、贈与と死因贈与と遺贈では、どこに長短があるか。
1 贈与契約の意義・法的性質・社会的作用
・無償・片務・諾成契約(549条)←→諸外国の立法例は要式行為とするものが多い
・多様な社会実態を含む(互酬的贈与、相続の前倒し、寄付、扶養 etc.)
参考
DCFR Ⅳ.-H.-2:101条は書面を要するとの原則を定め、同Ⅵ.H.-2:102条で現実贈与・事業者による贈与・放送や出版物による公衆への贈与を例外とする
2 贈与契約の成立と撤回
(1) 贈与契約の成立
・他人物の贈与契約は有効か疑義有
改正法
「自己の財産」⇒「ある財産」
・背景事情・動機は考慮されるか→4: フランス法ならコーズの問題の1つ。
(2) 書面によらない贈与の「撤回」
改正法
「撤回」⇒「解除」
・撤回とその限界(550条)←①贈与意思の明確化、②軽率な贈与の防止
・「書面」要件の意義と例 | 判例 | P159(司法書士への移転登記手続依頼の手紙) |
・「履行」要件の意義と例 | 判例 | P160(所有権移転と間接占有の移転) |
※所有権移転は? | P161(建物の所有権移転登記、引渡し未了) |
3 贈与契約の効力
・財産権移転義務、引渡し・移転登記協力義務、善管注意義務(400条)
・贈与者の弱い担保責任(551条)
改正法
新551条: 担保責任⇒引渡義務等、1項: 特定時の状態での引渡し・権利移転の意思を推定
判例
4 特別事情による贈与契約の失効(撤回ないし解除)
・受贈者の忘恩行為や贈与者の窮乏
5 特殊な贈与契約とその周辺
P162(負担付贈与?忘恩行為?)
(1) 定期贈与(552条) ※定期行為(542条)の「定期」とは意味が違うので注意
(2) 負担付贈与(553条) | 判例 | P164(負担履行済の死因贈与は1022条による撤回不可) |
(3) 死因贈与(554条) | 判例 | P163(方式を除き1022条の準用を肯定) |
(4) 寄付-最終的な受領者のための信託的譲渡
(5) 遺贈(964条以下)
(6) 「相続させる」遺言
【使用貸借契約】(228-230頁)
Case 14-02
①XがYから無償で借りている家の外壁に欠陥があり雨漏りが生じた。XはYに対して修繕を要求できるか。雨漏りによりXの家具が傷んだ場合はYに何らかの請求ができるか。
②使用借主Xは、貸主Yから目的物の所有権を取得したZの立退請求を拒めるか。
③契約に期間も目的も定めていない場合、貸主は、どういう状況になれば契約関係を終了させて返還を請求できるか。
1 使用貸借の意義・法的性質・社会的作用と成立要件
・返す債務を中心に構成された片務・無償・要物契約(593条)
改正法
諾成契約化( 新593条) +書面によらない貸主の交付前の解除権( 新593条の2)
←経済取引の一環として行われる場合の貸主の貸す義務を肯定。贈与との均衡
判例
・親族間などの特殊関係(人的な信頼関係)に基づく場合には合意の認定は容易でない最判平8・12・17民集50巻10号2778頁(遺産分割前の共同相続建物の利用)
2 効果
※借地借家法の適用の余地がないことにも注意
(1) 貸主の義務と責任
・借主の使用・収益の忍容義務
・例外的な瑕疵担保責任( 596条→551条1項)※ 改正法により551条1項が変わっていることに注意
(2) 借主の権利義務
・用法遵守義務・譲渡転貸の原則禁止(594条)
・通常の必要費と特別な必要費や有益費の区別(595条)
・契約終了時の原状回復返還義務と収去権(593条・598条)
(3) 第三者に対する関係
・使用借権には対抗力が欠け、不法妨害者に対しても占有訴権のみ。
3 終了
・①返還時期の定めがある場合(597条1項=新597条1項)
②返還時期の定めがない場合(597条2項=新597条2項・新598条1項・2項)
イ 目的の定めがある場合(1) 目的達成時(同条本文)
(2) 相当期間経過後は解約・即時返還請求可能(ただし書)
判例
ロ 目的の定めがない場合(597条3項=新598条2項) 貸主は随時返還請求可能最判昭42・11・24民集21巻9号2460頁(家族間紛争による目的の喪失)
最判平11・2・25判時1670号18頁( 使用収益をするのに足るべき期間の経過の肯定例)
③借主の死亡(599条=新597条3項)←→賃貸借なら相続
改正法 ①契約の当然終了の場合(新597条)と解除による終了(新598条)に再編借主による随時の契約解除を新設(新598条3項)
②終了時の収去義務・収去権・損傷の原状回復義務を詳細化(新599条)
・後始末関係の短期期間制限(600条)
改正法
貸主の損害賠償請求の期間制限について時効の完成停止を追加(新600条2項)