EMILY YIP & CO
香港における商標ライセンス契約の留意点
EMILY YIP & CO
Xxxxx Xxx
(弁護士)
Emily Yip & Co は 2000 年に香港で設立された知財専門法律事務所である。香港、中国、マカオにおける知財業務に従事しており、上海およびマカオにブランチ・オフィスを有する。Yip 氏は事務所の創設者であり、 20 年以上商標および意匠の弁護士として活躍している。
香港において登録商標の所有者(ライセンサー)は、第三者(ライセンシー)に当該商標を使用する許諾を与えることができる。かかるライセンスは書面にされ、ライセンサーまたはその代理人により署名されなければ効力を生じない。ライセンサーが法人である場合、法人印の捺印も認められる。
1. 商標ライセンスの利点
ライセンサーは、苦労して特定の市場を開拓する必要がなく、最小限の投資で新規市場へ自己の事業を拡大し、金銭的利益を得ることができる。ライセンシーは、信頼が確立された商標を用いて市場に参入することができ、新しいブランドを展開するために必要な時間を節約できる。
ライセンス契約において綿密な権利を詳細に定めることにより、ライセンシーがライセンスを受けた範囲内で商標を使用し、ライセンサーである所有者によって提供される商品および、またはサービスと同じ品質を維持することが保証され、当事者間における将来の紛争を回避することができる。
2. 許諾内容
ライセンスの対象となる行為には、一般的に商品の製造が含まれる。ライセンス条件によっては、商品の製造のみならずライセンシー商品の販売、流通、販売促進
または広告もライセンシーにライセンスすることがある。許諾される行為については明確に定めるべきである。
典型的なフランチャイズ契約では、ライセンサーがライセンシーの代わりに販売促進または広告活動を引き受ける場合、xxxxxxは広告費用を分担するよう要求されるのが一般的である。ライセンシーがマーケティングおよび広告活動に責任を負う場合、ライセンサーはかかる義務をライセンス契約に明確に規定するべきであり、さらにライセンシーが費用を負担する場合には、消費者における当該商標のイメージを維持するために、ライセンシーのマーケティングおよび広告支出に最低基準を設けることもできる。
3. ライセンス契約の必須事項 3-1. 契約当事者
ライセンサーおよびライセンシーの名称および住所を明確に示すべきである。
3-2. ライセンスの主題
ライセンシーは、xxxx://xxxxxxxx.xxx.xxx.xx/xxxxx.xxxx の香港知的財産局オンライン検索システムを調べて、ライセンサーが当該商標の実際の所有者であることを確認すべきであり、実際の所有者でない場合、当該商標をライセンス供与する権利を有しているかどうかを確認すべきである。
3-3. ライセンスの範囲
商標に関して付与される権利について、下記を含めて、明記すべきである。 (a)ライセンスは独占的か、非独占的か。
独占的ライセンスは、商標を使用する権限をライセンシーだけに付与し、ライセンサー自身を含めた他のすべての者を排除する。非独占的ライセンスは、複数のライセンシーおよびライセンサー自身による商標の使用を可能にする。
(b)ライセンスは移転可能か否か。
(c)xxxxxxによるサブライセンス(再許諾)は可能か。
ライセンサーは最大限の範囲で監督できるように、サブライセンスの禁止、または契約書に予め承認されたサブライセンシーのリストを含めることなどによって、サブライセンスを制限することができる。
(d)ライセンスは包括的なものか、または当該商標の登録対象である商品もしくはサービスの全部ではなく一部に限定されるものか、あるいは当該商標の使用は特定の方法または特定の地域に限定されるか。
(e)ライセンシーが当該商標の使用を許諾される商品および、またはサービス。 (f)ライセンシーが当該商標の使用を許諾される地域。
(g)ライセンス契約の期間。
(h)侵害訴訟を提起する権利がライセンシーに与えられるかどうか。 (i)契約の準拠法および法域。
3-4. 品質管理
ライセンサーは、ライセンスした許諾商品もしくはサービスの品質レベルを維持し、許諾商標の評判および業務上の信用を維持するために、ライセンシーによる商標の使用を監督することが重要である。また、許諾商標の使用に関して使用する際のガイドラインをライセンシーに提示すべきである。例えば、許諾商標を適正に複製する方法、当該商標を使用および広告する際の書体、サイズ、色彩など、更に当該商標の適切なフォーマットと表示についてもガイドラインとして定めておくべきである。
ライセンサーが製造施設、原材料、完成品を検査するためにライセンシーの施設に立ち入り、販売記録を含むライセンシーの記録を入手できるようにすべきである。ライセンサーは、ライセンシーにより市場に出される前に商品のサンプルを承認する権利を希望することもできる。
3-5. ライセンシーの引受事項
ライセンサーは、下記を含めた約束または義務をライセンシーに要求することができる。
(a)当該商標に関するライセンサーの所有権の範囲を確認すること。
(b)ライセンサーの商標の有効性に異議を唱えないこと、またはライセンシーが当該商標の有効性に異議を唱える場合はライセンスが解除されること。
(c)ライセンシー自身の名前で許諾商標または関連するドメイン名を登録しないこと。
(d)ライセンシーによる当該商標の使用から生じるあらゆる業務上の信用はライセンサーに利益をもたらし、かかる業務上の信用は要求に応じてライセンサーに譲渡されることを確認すること。
(e)当該商標のあらゆる潜在的侵害、実際の侵害または侵害のおそれについて、所定の期間内にライセンサーに通知すること。かかる侵害の可能性に対処する手順も含めるべきである。一般的にxxxxxxはかかる情報の把握を希望し、xxxxxxの支援と協力を要求する。
(f)ライセンス終了後も存続する特定の義務について同意すること。
3-6. ライセンサーの補償
ライセンサーは、商標権侵害または当該商標の使用権に関するあらゆる申立から生じるあらゆる損失および費用についてライセンシーに補償するよう要求される可能性がある。
ライセンサーは訴訟費用および和解を承認する権利を掌握しやすいように、自分自身の弁護士の起用を要求することができる。さらにxxxxxxは、xxxxxxが主張する逸失利益についてあらゆる責任を否定する条項を加えることができる。また、ライセンシーの許諾商品の売れ残った在庫を原価で買い取るというライセンサーの義務を前提として、侵害の申立が生じた場合はいつでもライセンシーから許諾商標を取り下げる条項を契約書に含めることができる。
3-7. 対価
ライセンスの付与に対する適切な対価は、ライセンサーとxxxxxxの判断に委ねられている。通常は当該商標を付して販売された商品の売上高または当該商標
を付して提供されたサービスの量に応じた、定期的なロイヤルティ形式が取られる。独占的ライセンスの場合、最低額のロイヤルティの支払いをライセンシーに義務づ けることが望ましい。かかる対価は、固定額の一括払いのライセンス料であっても よい。
3-8. 終了
ライセンスの期間、ライセンスを更新するための条件、ライセンスを解除する明確な条件、さらに当該商標を付した商品または当該商標と関連づけられたサービスについて、契約終了後にどのように取り扱うべきかについて、契約書に明記すべきである。また、契約終了後も当該商標を付した商品の販売またはサービスの提供が継続される場合は、ライセンサーは、前ライセンシーに対し、差止命令などの即時の法的救済を受けることができるという条項も、契約に含めることができる。
3-9. 秘密保持
xxxxxxがライセンス期間中にライセンサーから提供された秘密情報については、xxxxxxがこの秘密情報をいかなる第三者にも開示しないように制限することが挙げられる。また、ライセンス終了後にかかる秘密情報を保護する方法についても規定しておく必要がある。
4. ライセンス契約の登録
商標の許諾契約を商標登録簿に登録することができる。かかる登録は義務ではないが、登録しておくことが望ましい。ライセンス契約を登録していない場合、侵害が生じた場合に損害賠償または不当利得の返還を受けるライセンシーの権利が損なわれるおそれもある。xxxxxxは、xxxxxの登録申請が提出されるまでは、商標侵害訴訟を提起する権利を含めた、商標条例に基づくライセンシーの権利を与えられない。また、登録されたライセンス契約における変更は、速やかに商標登録簿に登録すべきである。
(編集協力:日本技術貿易株式会社)