真実の口(Bocca della Verita')
#3
契約とは
真実の口(Bocca della Verita')
男性との約束は守られたことが
ないわ、〝契約〞にしましょ。
君を裏切るようなことは
しないと約束するよ。
ローマの観光名所。「嘘つきが手を入れると、かみ切られる」という言い伝えがある。元はマンホールのふただったという説が有力。
「約束」の意味
強制力のある「約束」
xxxとは、後で返す「約束」をしてお金を借りること、クレジットとは、後で代金を支払う「約束」をして商品などを買うことですが、ここでは、この「約束」のもつ意味について改めて考えてみましょう。
デートの時間に遅れない、友★に借りたCDは返す、というのも守らなければならない“約束”ですが、万一守れなかったとしても、親しい間柄なら許してもらえるかもしれません。
でも、xxxやxxxxxは、恋★や友★ではない他★との「約束」です。なぜ、他★がお金を貸すのか考えてください。必ず返してもらえると信用したから、というのは当然の前提ですが、もうひとつ、万一返してもらえない場合には、返してもらえるように法律上強制することができるからなのです。
このように法律上強制力のある約束のことを「契約」といいます。
「契約」は、一方が「○○してください」と申込み、相手が「○○しましょう」と承諾する、つまり当事者の意思表示が合致(合意)することによって成立します。
たとえば、私たちはふだんお店で商品を買う場合、
「これをください」と現金を添えて申込み、商品をその場で受取っていますが、これも売買契約という「契約」をしているのです。
ただ、売買契約の場合は、お互いの約束(代金の支払いと商品の引渡し)をその場で同時に完了してしまうため、「契約」だと意識しないし、その必要もないだけなのです。
「契約書」を作るワケ
★に対してあることを請求することができる
さいけん
権利を「債権」といい、★に対してあることをす
さ い む
る義務を「債務」といいます。
たとえば、売買契約では、売り主には商品を相手に渡すという債務と代金を支払ってもらうという債権が、逆に買い主には商品を受取るという債権と代金を支払うという債務が発生することになります。
このように債権と債務は表裏の関係にあり、売り主と買い主の両者がある点では債権者(債権をもつ★)になり、ある点では債務者(債務をもつ★)になります。
ただし、ローンやクレジットの場合には、お
金を貸した(借りた)あとは、返済を求める債権
かしぬし
と返済する債務が残るだけなので、貸主を債権
かりぬし
者、借主を債務者と呼んでいます。
現金での買い物に対して、ローンやクレジットは、お金や商品の代金を借りて、後で返すという約束です。つまり、借りたお金を返すという約束が実行されるのは必ず後日になるということです。
# 3
このため、契約の内容を書面(契約書)に記載し、後日お互いに行き違いがないようにする必要があります。逆にいえば、契約書に記載した内容は当事者が約束したという証拠になるわけです。
したがって、契約書にはふつうすべての当事者が署
なついん
名をします(日本ではあわせて捺印をするのが一般的
です)。
契約書に署名する際には、その内容をよく確認し、契約書(またはその写し)は少なくとも契約関係が終了するまで(ローンやクレジットでは、すべての返済が終わるまで)の間は大切に保管しておく必要があります。
契約書に書かれていること
ローンやクレジットの契約書には、さまざまな約束ごとが記載されていますが、そのすべてが貸主と借主の権利と義務を定めるものですから、疑問点があれば必ず確認したうえで署名しなければなりません。
なお、クレジットカードの場合には、「入会申込書」に署名し、「会員規約」を守るというのが契約の内容になります。
ここではローンやクレジットの契約書に一般的に記載されている事項をあげておきます。
(1)借入金額・利用限度額
借入金額または利用限度額〈→ p5〉が記載されています。
(2)利息※
金利や利息の計算方法などが記載されています。変動金利〈→ p18〉の場合には、いつどのような基準で金利を見直すかが記載されています。
※クレジットカードでは、返済のことを「支払い」、利息のことを「手数料」という場合がありますが、実質的な違いはありません。
(3)手数料等
クレジットカードの場合には、毎年年会費がかかることが多いです。また、海外で利用した場合に、外貨か
か わ せ
ら日本円への換算に使う為替レートの基準日や手数料
なども記載されています。
(4)返済方法
分割返済、リボルビング返済などの返済方法〈→ p20 ~ 21〉と毎月の返済額、返済の手続き(銀行口座からの自動引落としによるのが一般的)などが記載されています。
(5)返済期日
いつ返済するのかが記載されています。銀行口座からの自動引落としを利用する場合には、毎月何日時点の残高を基準にして、何日に引落とすのかなどが記載されています。
(6)住所変更などの報告義務
住所変更、カードの紛失・盗難などがあった場合には、カードの発行会社などに届け出ることが義務付けられています。
(7)カードと暗証番号の管理責任
クレジットカードやローンカードは、他★に使わせたりすることはできません。また、ATM〈→ p5〉などの機械で利用する場合に本★確認のために入力する暗証番号は、他★に知られないように十分注意して厳重に管理することが義務付けられています。誕生日など他★に推測されやすい番号は避けるようにしましょう。
(8)保険
クレジットカードの紛失・盗難による被害について保険が付いている場合には、その条件が契約書に記載されています。
りゅうほ
(9)所有権の留保
クレジットで買った商品の所有権は、その返済が終了するまでの間は、クレジット会社にある、という約束です。つまり、返済が終了していない商品を勝手に売ったり、質に入れたりすることはできないということです。
そうしつ
(12)期限の利益の喪失
返済期限を過ぎても返済しないなど、借主の信用に問題が生じた場合に、貸主がまだ返済期限がきていない分についても直ちに返済するように求めることができる、という約束です。つまり、借主が「返済期限が来るまでは返済しなくてよい」という「期限の利益」を失うというものです。
xxんそんがいきん
(13)遅延損害金
約束の期日に返済できない場合には、ペナルティとして借入金利より高い金利で計算した遅延損害金を支払うように定めておくのがふつうです。期限の利益を喪失したことにより一括返済を求められた分に対しても遅延損害金はかかります。〈→ p17〉
(14)個人信用情報の登録と利用の同意
ローンやクレジットの契約を結ぶと、利用者の信用情報が個★信用情報機関〈→ p30 ~ 31〉に登録され、その会員(銀行など)によって利用されることになります。登録と利用については契約書などにより本★の同意を得ることになっています。
取消は原則としてできない
いったん成立した契約を後から取消すこと(解約)は、原則としてできません。
例外的に解約できるのは、次のような場合です。
く あ
(10)繰り上げ返済
約束の期日より前に返済することを繰り上げ返済といいますが、この繰り上げ返済の条件などが記載されています。繰り上げ返済をする場合には手数料がかかることが多いですが、利息は借りている期間に対してかかるので、余裕があれば繰り上げて返済することによって利息の支払いを少なくすることができます。
(11)担保〈→ p11〉
万一返済できない場合の備えについて記載されています。
①当事者が解約することで合意した場合(あらかじめ
解約の条件を契約内容に入れておく場合もあります)
②契約で定めた約束を相手が守らない場合
しんけんしゃ
③未婚の未xx者が親権者(一般的には親)の同意を
得ないで債務を負う契約をした場合(これは民法で未xx者には単独で有効な法律行為をなしうる能力がないとされているためですが、未xx者であるに
いつわ
もかかわらずxx者であると偽ったり、親権者の合
意を得ていると偽ったりした場合などには、取消せなくなることがあります)
おど
④だまされたとか、脅かされたなどの事情があって、
正常な意思表示による契約ではないと認められる場合
⑤クーリング・オフが認められる場合〈→ p37〉
⑥消費者契約法により認められる場合〈→ p37〉
契約に違反すると…
契約で定めた約束を相手が実行してくれない
けいや く ふ り こ う
(「契約不履行」という)場合には、裁判所に訴えて約束
を守るように強制してもらうことができます。これを
きょうせいしっこう
強制執行といい、約束を守らない★の財産を差し押さ
えて売却するなどの方法があります。
また、相手が契約で定めた約束を実行してくれないために損害を受けた場合には、その賠償金を支払うように求めることもできます。ローンやクレジットの返
済が遅れた場合の賠償金(遅延損害金)の計算方法は契約で定めておくのがふつうです〈→ p17〉。
# 3
保証★も連帯保証★も、借主が返済できない場合に代わって返済するよう貸主から求められます〈★的担保→ p11〉が、両者には大きな違いがあります。保証★の場合は、貸主からの請求に対し、まず借 主に返済させるよう求めることや借主に資力があることなどを証明すれば強制執行するよう求めること
ができます。
これに対し、連帯保証★は借主とほぼ同等の責任を負うため、貸主から返済請求があれば、返済する義務があります。
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会の調査
(xxxx)によると、破産者の 10.61%が保証★や連帯保証★となったための借金の肩代わりが原因となっています。
なお、保証★が借主に代わって債務を返済した場
きゅうしょう
合には、借主に求償する(立替えた金額を返してく
俺が裏切らない
よう担保だと 思って受取ってくれよ。
すごい!
こんな高価なもの受取れ ないわ!
れるように求める)ことができます。
◆多重債務におちいった主な原因
※資料:日本弁護士連合会消費者問題対策委員会
「2002年破産事件及び個★再生事件記録調査」