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< 令和4年6月 >
国分寺市公共調達条例の解説
x x 部 契 約 管 財 課
(目的)
第1条 この条例は,国分寺市(以下「市」という。)がxxな事務事業を実施するに当たって,契約自由の原則の下で外部から多種多様なもの及びサービスを調達していることに鑑み,その調達の基本的な在り方を明確にすることにより,実施主体である市と調達の担い手である事業者が共に社会的責任を自覚し,もって
市政及び地域社会の発展に寄与することを目的とする。
【解 説】
市は,地方自治法(以下「自治法」という。)第1条の2において,その役割を
「住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うもの」と規定されている。その役割を果たすために,様々な計画や施策に基づいた事業を実施している。事業を実施するにあたっては,様々なものやサービスを調達し,行政運営を行っている。「調達」は具体的に行政を運営していくための手段の一つである。
本条例は,当市における「調達」について,基本的なあり方を定めたものであり,本条は,この条例制定の目的を規定することにより条例の解釈指針を示したもので ある。
○「契約自由の原則」とは
「契約自由の原則」とは,一般的に,当事者が自由にその契約内容を定めることができること,誰と契約するか,又はその契約をするかしないかということも自由に決められるということをいう。
自治法第234条第1項は,「売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする」と規定している。
一般に市が締結する契約とは,公権力の行使ではなく,市が私人と対等の立場において締結する私法上の行為である。したがって,「契約自由の原則」も適用される。
(定義)
第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
(1) 調達 売買,貸借,請負その他の契約により物品,完成品,成果物,サービス等を得ることをいう。
(2) 公共調達 市が外部から事務事業の運営上必要とするもの(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2(公の施設の設置,管理及び廃止)第3項の規定により市長が指定するもの(以下「指定管理者」という。)により行われる公の施設の管理を含む。)を調達することをいう。
(3) 調達品 公共調達により得るものをいう。
(4) 調達手続 公共調達に関する手続をいう。
(5) 事業者 公共調達の契約等の相手となり得るものをいう。
(6) 受注者 事業者のうち,市と公共調達に係る契約等を締結したものをいう。
(7) 下請負 事業者が他のものに公共調達に係る契約等の業務の一部を請け負わせることをいう。
(8) 再委託 事業者が他のものに公共調達に係る契約等の業務の一部を委託することをいう。
(9) 労働者 次のいずれかに該当する者をいう。
ア 受注者に雇用され,専ら公共調達に係る業務に従事する者
イ 下請負を受注したもの又は再委託を受託したもの(以下「下請負者等」という。)に雇用され,専ら公共調達に係る業務に従事する者
ウ 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
(昭和60年法律第88号)の規定に基づき,受注者又は下請負者等に派遣され,専ら公共調達に係る業務に従事する者
エ 自らが提供する労務の対償を得るため,受注者又は下請負者等との契約により公共調達に係る業務に従事する者
(10)社会的価値 適正な賃金及び労働条件の確保,環境への配慮,障害者雇用,男女の雇用の機会均等その他の社会的に尊重されるべき価値をいう。
【解 説】
本条例に規定されている用語について,その意義を明確にするため,定義を設けているものである。
<第1号関係>
○「請負」とは
「請負」とは,民法第632条に,「当事者の一方がある仕事を完成することを約
し,相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって,その効力を生ずる」と規定されている。
仕事をするだけでは義務を履行したことにはならず,結果として仕事を完成させ
なければならない。建物の建設工事や修繕といった工事等の請負のほかに,講演や演奏など無形なものもある。
○「その他の契約」とは
「その他の契約」とは,具体的に列記されている売買,貸借,請負契約に加え,ソフトウェアの構築,清掃業務,建築等の設計業務等の業務委託をいう。
<第2号関係>
○「地方自治法第244条の2第3項に規定する市長が指定するもの(以下「指定管理者」という。)により行われる公の施設の管理」とは
「地方自治法第244条の2第3項に規定する市長が指定するもの(以下「指定管理者」という。)により行われる公の施設の管理」とは,市が指定する法人その他の団体に公の施設の管理を行わせようとする制度で,指定管理者制度といわれるものである。その制度の導入目的は,多様化する住民ニーズに効果的,効率的に対応し市民サービスの向上を図るとともに,経費の縮減を図ることにある。
指定管理者制度においては,事業者から価格その他の要素について提案書等により提出させ,最も優れていると市が選定したものを指定管理者として指定するものである。
市では,国分寺市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例(平成17年 条例第31号)を制定し,平成18年度から指定管理者制度を導入している。現在では,自転車駐車場,体育施設,一部の学童保育所・児童館をはじめ,様々な公の施設を 指定管理者により運営している。
< 第5 号関係>
○ 「事業者」とは
本条例では,「事業者」を「公共調達の契約の相手方となり得るもの」とし,株式会社等の民間企業のみならず,社会福祉法人,財団法人,社団法人,学校法人,特定非営利活動法人(NPO法人),市民活動団体等も含めて「事業者」と定義している。
これは,「公共調達」を「市が外部から事務事業の運営上必要とするものを調達するために締結すること(指定管理者により行われる公の施設の管理も含む)」としており,相手方の形態や営利・非営利の如何を問わないためである。
なお,国分寺市自治基本条例(平成 20 年条例第 43 号)第2条で「事業者等」を
「市内で事業活動又は公益的な活動を行う団体」とし,市内での活動を行う団体に限定した定義となっている。本条例では,活動の場について市の内外を問う必要はないため,同様の語句であるが,その定義は異なっている。
第5条見出しは「事業者等」としているが,同条の対象となるものが本条に定義する「事業者」のほか,「受注者」及び「下請負者等」であるため,「等」という言葉により集約したものであり,国分寺市自治基本条例でいう「事業者等」と同一
の意ではない。
○「相手方となり得る」とは,契約の意思がないあらゆる団体を指すのか。
契約において相手方となり得るためには,競争入札参加資格者としての登録が あることが原則である。そのため,契約の場合には自ずから相手方となり得る範 囲は限定される。ここで,原則と述べているのは,事業の性質等により競争入札 参加資格者としての登録がないものと契約をせざるを得ない場合があるためであ る。このような場合にあっては,相手方となる団体の契約意思の有無に関わらず,ここでいう「事業者」に該当することとなる。契約における誘因となる行為いわ ゆる指定したときから「相手方となり得る」といえる。
指定管理者により行われる公の施設の管理における協定においては,契約制度とは異なり,応募又は申請する際に前提となる登録制度はない。したがって,応募又は申請をした時点から,協働事業においては市民活動団体として登録した時点から「事業者」に該当することとなる。
<第7号関係>
「下請負」とは,工事請負契約において使用される語句であり,建設業法(昭和 24年法律第100号)第22条で一括下請負を禁止している。本市においても工事請負契約約款第6条において一括下請負を禁止している。そのため,本条例の定義においては,一部を請け負わせることと限定して表示している。
<第9号関係>
○「専ら」とは
「専ら」とは,本条では「主に」という意味で使用している。本市以外の仕事に も一部従事しているとしてもその大部分が本市の仕事に従事している状態であれば,本条にいう労働者である。
○第9号エについて
第9号エは,いわゆる「ひとり親方」(個人事業主)について述べている。受注者等との契約形態は,受注者等と請負契約を締結する場合と日雇として受注者等に雇用される場合の二つが考えられる。労働関連法において,名目上の契約体系ではなく,その実態に即して労働者か否かを判断している。市においても,同様の判断として扱うものである。
<第10号関係>
○「社会的価値」について
本来,「社会的価値」とは,非常に広い概念を持ち,その価値を測ろうとする対象によって視点は異なる。本条例における「社会的価値」について第10号として説明したものである。
(基本理念)
第3条 市は,次に掲げる事項を基本理念として調達を実施するものとする。
(1) xx性,透明性及び競争性が確保されること。
(2) 調達品における良好な品質が確保されること。
(3) 良好な市民サービスが確保されること。
(4) 調達における適正な手続が確保されること。
(5) 良好な調達実績を有する事業者及び地域社会の発展に寄与する事業者を適正に評価すること。
【解 説】
第1条を受けて,国分寺市が目指す公共調達のあり方について,その基本となる視点を列記したものである。調達を実施するにあたっては,各号に掲げる視点が確保されるよう,調達の当事者である市及び事業者がともにその実現に努めるものである。
<第5号関係>
○「地域社会の発展に寄与する」とは
「地域社会の発展に寄与する」とは,適正な人件費や労働条件の確保,就労機会の向上などに努めるとともに,地球環境への配慮又は防犯・防災への協力などを通じて,地域社会の発展に貢献していることをいう。
本条例における「地域社会」の「地域」とは,行政区としての国分寺市を指している。以下,本条例にいう「地域」は,同様の考え方による。
(市の責務)
第4条 市は,公共調達を伴う施策を立案する場合においては,前条に規定する基本理念をもとに,地域経済の活性化が図られるよう努めなければならない。
2 市は,公共調達が税金その他の公的な財源で賄われていることを踏まえ,公共調達を適正に執行しなければならない。
3 市は,公共調達を伴う施策を立案する場合においては,環境に配慮するものと
する。
【解 説】
市は,住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うことを責務としている。その責務の実現に向けて施策を策定し,各事業を執行している。
本条では,公共調達を伴う施策の立案の段階から本条例第3条に規定する基本理念を踏まえ,計画・積算等を行うことにより,市が目指す調達のあるべき姿の実現に向けて,地域経済の活性化及び環境への配慮に留意しつつ,より効果的に事業実
施できるよう常に努力をする必要があることを述べている。
併せて,当該事業の実施に当たっては,市の歳入が主に市税で賄われていることを常に意識し,公共調達を適正に実施すべきであることを明記している。
<第1項関係>
○「地域経済の活性化」とは
調達を行うに当たっては,「地域で調達できるものは,地域」でという考え方を従前から取り入れているところである。本条例が施行されることにより,特に次のような点で,「地域経済の活性化」を図ることができると考えられる。
① 営業活動の拠点(本・支店)の所在地を本市に置き地域に精通していること,下請負や再委託において市内の事業者との契約があること,防犯・防災への協 力をしていること等,地域社会へ貢献している事業者の社会性・信頼性を,総 合評価時の評価において点数化し加点することにより,当該事業者の受注機会 が増えることが考えられる。
② ①にもあるように地域社会への貢献度を評価することにより,事業者の地域貢献への取組みが更に促進されることが期待できる。それにより地域コミュニティの活性化がなされる一つの要因となることが考えられる。
③ 雇用される労働者の賃金が一定基準において保証されることにより,生活の安定が図られることにより,そこで行われる地域の経済活動にも還元されるものがあると考えられる。
<第2項関係>
○「税金その他の公的な財源」とは
「税金その他の公的な財源」とは,住民税,固定資産税をはじめとする税金の他,地方消費税交付金,国や都からの支出金等を指す。
市は,公共調達が上記の財源により賄われていることを常に意識し,公共調達の事務執行手続きを適正に行わなければならない旨を明記したものである。
<第3項関係>
○「環境に配慮」とは
市は,国分寺市環境基本条例(平成 16 年条例第 21 号)を策定し,第 3 条の基本理念の中で「市民が健康で恵み豊かな環境を享受し,これを将来世代へ引き継ぐため,人と自然が共生し,環境負荷の少ない持続可能な社会を構築すること」を目的として定めている。
市は,同条例の定めるところにより,環境基本計画及び環境基本指針を策定し,それに基づき,事業の立案・実施に当たっている。
調達においても,平成 18 年 10 月に策定された「国分寺市グリーン購入基本方
針」に基づき,平成 19 年4月より特定の調達品目について判断基準を定めた「国
分寺市グリーン購入ガイドライン」に沿って物品の調達を行っている。その判断基準は,国の判断基準に準じて作成している。このように価格のみでなく,品質そのものに配慮する視点も取り入れ,調達を行う必要がある。
「グリーン購入」とは,「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成1 2年法律第100号)」の趣旨を踏まえ,事務事業を実施する上で必要となる物品やサービス及び原材料等について,環境負荷の少ない製品を優先的に購入しようとすることをいう。
(事業者等の責務)
第5条 事業者は,公共調達に関わるものとして社会的責任を十分自覚し,この条例を遵守するとともに,第3条に規定する基本理念が実現されるよう市に協力しなければならない。
2 受注者は,下請負又は再委託を行う場合においては,当該下請負者等にこの条例の趣旨を説明し,理解を得なければならない。
3 下請負者等は,受注者と共にこの条例を遵守しなければならない。
4 事業者及び下請負者等は,建設業法(昭和24年法律第100号),下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)その他関係法令を遵守するとともに,契約を締結するに当たっては,当事者間の対等な立場における合意に基づいてxxな契
約を締結し,これを履行しなければならない。
【解 説】
事業者は,公共調達の当事者として社会的責任を担うものとし,市とともに本条 例第3条に定める基本理念を実現するために義務を負うことを規定したものである。
また,基本理念を実現するためには,下請負者等にあっても本条例の趣旨を十分理解し,実際の業務を実施することが欠かせない要素である。そのため,本条において,事業者,受注者及び下請負者等の責務を明記したものである。
本条見出しにおいて「事業者等」としているのは,本条文の対象となるものが本条例第2条において定義した「事業者」のほか,「受注者」及び「下請負者等」であるため,「等」という言葉により集約したものである。また,ここで「下請負者等」と述べているのは,本条例第2条第9号イにおいて下請負を受注したもの又は再委託を受託したものを「下請負者等」と読み替えているためである。
更には,事業者及び下請負者等は,建設業法その他関係法令に規定されるとおり,相互が対等な立場にあることを確認し,xxな契約の締結とその履行をすべきであ る旨を明記している。
<第4項関係>
○「建設業法」とは
「建設業法」とは,建設業を営む者の資質の向上,建設工事の請負契約の適正化
等を図ることによって,建設工事の適正な施工を確保し,建設業の健全な発達を促進しようとするものである。
第18条においては,「建設工事の請負契約の当事者は,各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結し,xxに従って誠実にこれを履行しなければならない。」とし,対等な契約関係に基づいていることを規定している。
○「下請代金支払遅延等防止法」とは
「下請代金支払遅延等防止法」とは,下請代金の支払遅延等を防止することによって,元請事業者の下請事業者に対する取引をxxなものとするとともに,下請事業者の利益を保護しようとするものである。
(調達における協働)
第6条 市は,公共調達を伴う施策を立案する場合においては,協働を推進するよう努めるものとする。
2 市は,協働により公共調達を伴う事業を実施する場合においては,第3条に規
定する基本理念を十分に勘案するものとする。
【解 説】
市は,公共調達を伴う施策の立案の段階から,協働の視点から事業を実施するよう努めるとともに,当該事業を実施するに当たっては,本条例第3条に規定する基本理念を勘案することを明記したものである。
本条で「勘案」としている点であるが,「勘案」とは「いろいろの関連のある事柄をよく引き比べてそれを考慮に入れること」である。本条でその語を用いているのは,協働事業の場合,「協働」という考え方そのものに上記に示すような政策としての方針や事業の特性があることから,業務委託契約と同様の契約案件として単純に位置づけるべきでないと考えるからである。その一方で協働事業であっても雇用関係は存在し,公共調達という概念から外れるものではない。
このことから,協働事業を実施するにあっては,第一にはアウトソーシング基本方針に基づく協働の観点によるべきものであると考える。そのうえで,事業立案及び実施にあっては本条例第3条の基本理念を考慮に入れる必要があるということを示したものである。
○「協働」とは
市は,国分寺市自治基本条例(平成 20 年条例第 43 号)において,「参加と協働」を行政運営の基本方針の一つとして掲げ,「協働」を「市民及び事業者等と市が対等の立場で能力を分かち合い,共通の目的の実現に向けて協力して取り組むこと」と定義している。市は平成 19 年に「市民活動団体との協働事業の手引き」を策定し協働事業を進めている。
また,市は,アウトソーシング基本方針を平成 22 年1月に策定した。本方針の策定の背景として,「近年,地域の団体・NPO や民間企業などがまちづくりの参加意識を高めていること」「これまで主に行政が提供してきたサービスを地域の多様な担い手と行政とが,目標を共有し,互いに対等の立場で,連携・協力してより良いサービスを提供しようとする流れが構築されてきている」ことがある。
こうした変化に対応するとともに市民自治を推進するために,施策立案時から市政運営の基本原則である協働を推進するよう努めるものとし,協働の考え方に基づく公共調達を行おうとするときは,第3条に規定する基本理念を十分に勘案し,実施する必要があることを述べている。
(雇用の促進等)
第7条 事業者は,障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号),高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)その他関係法令に基づき,障害者,高年齢者その他の就労困難者に対する雇用の促進を図るとともに,子育てを支援し,男女平等を実現するための方策を推進することにより,
社会的価値の向上に努めるものとする。
【解 説】
事業者が公共調達において,労働者になり得るすべての立場の方の雇用促進,生活支援及び男女平等等,労働環境向上を推進するべく努める必要があることを規定している。
本条は,法令により既に国から雇用者たる事業者に対し責務として定められているものを列記しているのであって,本条において新たに義務を課すのではないということである。社会的価値の向上を図るには欠くことのできない基本的な取組みであるため,雇用者たる事業者として努めるべき立場にあることを表示したものである。
公共調達においては,次条に示すように調達手続を行うに当たり,価格のみによ らない調達を行う場合にあっては,本条に掲げるような項目に対し事業者を評価し,当該項目を評価項目として加点対象とする。それにより社会的価値の更なる向上を 目指そうとするものである。
具体的には,障害者又は高年齢者雇用にあっては,その対象者をどのくらい雇用しているかということでの評価となる。子育て支援や男女平等実現についての取組みにあっては,例えば,育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)の規定に基づき,育児休業について制度化されているとか,介護休業について制度化されているといった点が評価の視点となる。労働者にとっては,男女を問わずこのような取組みが制度化され,働く環境が整ってこそ,男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)において求められて
いる家庭生活における活動と就労等の両立も現実のものとなるといえる。
ただし,本条例においては,法令が求める以上の取組みを強要しようとするものではない。自由な経済活動を妨げ,経営を圧迫するようなことがあってはならないと考えている。
したがって,先にも述べたように価格のみによらない調達を行う場合であって当該項目を加算対象とするときには,市は確認を行うものであり,すべての調達案件において確認を行おうとするものではない。
事業者とは,第2条の定義でも述べたように,公共調達の契約の相手方となり 得るもの」とし,株式会社等の民間企業のみならず,社会福祉法人,財団法人, 社団法人,学校法人,特定非営利活動法人(NPO法人),市民活動団体等も含 む。したがって,NPO法人であっても,雇用関係が発生している者に対しては,雇用者としての責務があるため,限定的ではあるが,本条の対象となると考える。
市においても,平成22年1月に「国分寺市就労支援方針実施計画」を策定し,就 労支援の施策の推進に取り組んでいる。当該実施計画において就労困難者とされる 高年齢・障害等の要因や出産・子育て等の時間的制限により,働く意欲がありなが ら職につけない人々の雇用環境改善への取組みについて評価することで,その結果,就労支援の施策を推し進めることに寄与することができると考える。
また,男女平等実現の視点からも,国分寺市男女平等推進条例(平成19年条例第 10号)第6条(事業者等の責務)第2項にも「事業者等は,労働環境の整備に当たっては,その労働者の性別にかかわりなく,子育て,介護又は地域活動と,仕事とを両立できるよう努めなければならない」と規定し,事業者が雇用者として事業活動を行っていく上での責務を社会的価値の向上の視点からも規定している。
○「障害者の雇用の促進等に関する法律」とは
「障害者の雇用の促進等に関する法律」とは,法定雇用率として,企業及び国・地方公共団体における障害者雇用率達成を定めること等により,障害者の雇用の促進を図ることを目的として制定された法律である。
事業者は,雇用する労働者や職員のうち,障害者が一定の割合を占めなければならないことが,この法律で義務付けられている。
○「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」とは
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」とは,年齢による応募や採用の差別を原則禁止とすることを主な目的として制定されたものである。
○「育児休業介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
(育児休業等に関する法律)とは
「育児休業介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」とは,育児休業及び介護休業に関する制度等を設けること等により,子の養育及び家族
の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り,これらの者の職業 生活と家庭生活との両立に寄与することを主な目的として制定された法律である。
○「男女共同参画社会基本法」とは
「男女共同参画社会基本法」とは,男女の人権が尊重され,社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現するために,基本理念を定め,国,地方自治体及び国民の責務を明らかにするとともに,施策の基本となる事項を定めた法律である。
(調達手続における考慮事項)
第8条 市は,調達手続を行うに当たっては,第3条に規定する基本理念が十分に確保されるよう進めるものとする。
2 市は,調達手続を行う場合は,第19条に規定する履行状況の評価のほか,事業者が行っている環境への配慮,防犯及び防災への協力等による地域社会への貢 献,前条に規定する社会的価値の向上に係る取組等について,事業者の状況を評
価し,当該調達手続を進めるものとする。
【解 説】
本条は,市が具体的に調達手続を進めるにあたり,考慮すべき事項を具体的に述べている。
第3条に掲げる事項を確保するという基本的な姿勢について述べるほか,市は,第7条により事業者が取り組んでいる事項をはじめ,環境配慮,防犯及び防災への協力等による地域社会への貢献について積極的に評価し,調達手続を進めるものであることを明示している。
本条の「事業者」は,第2条で定義するとおりであり,第7条の事業者と同一である。
この考慮事項は,総合評価方式若しくはプロポーザル方式等による選定又は指定管理者候補者の選定といった価格のみによらない選定を行う場合に評価項目として反映するものである。総合評価方式及びプロポーザル方式等については,第11条及び第12条で説明を加えている。
<第2項関係>
○「事業者が行っている環境への配慮」とは
「事業者が行っている環境への配慮」とは,積極的に環境対策に取り組み,環境負荷の少ない事業運営及び成果品の提供を行うことをいう。
代 表 的 な 取 組 み 例 と し て は , ISO ( 国 際 標 準 化 機 構 ( International Organization For Standardization)で策定される国際規格)14001 の取得やエコアクション 21 が挙げられる。
ISO14001 とは,平成8年9月に制定され,企業や団体などの活動・製品及びサ
ービスによって生じる環境への影響を持続的に改善するためのシステム構築を要求した規格をいう。
エコアクション 21 とは,環境省が策定した「エコアクション 21 環境経営システ
ム・環境活動レポートガイドライン 2004 年版」に基づく認証・登録制度をいう。
○「防犯及び防災への協力等」とは
「防犯及び防災への協力等」とは,防犯パトロールの協力や災害時の協定の締結のほか,地域清掃への参加等,市の地域行政に対する施策を理解し,協力を行うことをいい,第3条第5号の「地域社会の発展に寄与する事業者を適正に評価すること」を具体化した評価の指標の一つとして規定したものである。
現在においても,市内事業者の協力のもと,上記のような積極的な取組みが行われている。本条例においては,総合評価方式等価格のみによらない選定を行う際には,そうした項目を点数化し,評価することとするものである。
(価格算定の適正化)
第9条 市は,最新の市場価格及び社会情勢を考慮し,適正な積算根拠に基づき調達品の価格を算出しなければならない。
2 市は,調達手続を行うに当たっては,調達品の品質を維持するために通常必要
とされる価格を著しく低下させてはならない。
【解 説】
市の調達において,市は必要な予算を適切な積算根拠によって確保し,社会的な品質の低下を防ぐことを規定している。
適正な積算をし,それに基づき調達手続を行うことによって,第3条に規定する基本理念として掲げる調達品における良質な品質を確保し,かつ,良好な市民サービスを確保するものである。
「調達品」とは,第2条に定義するとおり,「公共調達により得るもの」をいう。
<第1項関係>
○「市場価格」とは
「市場価格」とは,「財やサービスが実際に市場で取引されている価格」をいう。
○「適正な積算根拠」とは
「適正な積算根拠」とは,「単価,面積,人数,日数等の条件を明確にしたうえで市が適正に算出した,調達品の価格の基準となるもの」をいう。
上記に掲げたような各条件を明確にすることにより,人件費についても適正な算出をすることができる。
工事については,積算基礎となる設計単価があるため,それにより適正な価格を求めることになる。
業務委託や物品の購入の積算根拠としては,同種業務に係る実績値や市場価格を参考として積算することとなる。市場価格を確認する場合にあっては, 2以上の事業者から見積り等を徴し,その平均値から適正値を判断する,又は流通価格を確認する等により,積算根拠の妥当性を検証する必要がある。
(提示価格の適正化)
第10条 市は,公共調達において,事業者が提示する調達品の価格が市場価格に比して著しく低額であると認められるときは,必要に応じ,当該調達品の価格について調査するものとする。この場合において,調査の方法及びその取扱いについては,別に定める。
2 事業者は,前項に規定する調査に協力しなければならない。
【解 説】
市は,事業者が提示する調達価格について調査することにより,積算根拠の不明瞭な採算性を放棄するような価格での入札行為を防ぎ,適正な調達環境の確保を目指すものとする。それに伴い,調達の品質確保や労務環境の低劣化を防止するものである。
また,事業者は,市が行う調査に協力しなければならないとし,その調査の実効性を担保するものである。
市では,平成20年に国分寺市低入札価格調査等取扱試行要綱(平成20年要綱第7号)を定め,予定価格が一定の金額以上の工事又は製造(物品の製造を除く。)の請負契約に係る競争入札において,要綱で規定する調査基準額に満たない価格で申込みが行われた場合又は契約を締結した場合には,調査を行っている。
(価格のみによらない相手方の選定)
第11条 市は,総合評価方式(地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第167条の 10の2の規定に基づき,予定価格(市が契約を締結するときに,その契約金額を決定する基準となる価格として,市長があらかじめ作成するものをいう。以下同じ。)の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち,価格その他の条件が市にとって最も有利なものをもって申込みをしたものを落札者とすることができる方式をいう。)及びプロポーザル方式等(業務に対する提案等の提出を受
け,その提案等を評価し,最も適切な創造力,技術力,経験等を有する事業者又は最も優れた企画案を選定する方式をいう。)の価格のみの競争ではない方式により受注者を選定するときは,予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち,最低の価格をもって申込みをしたもの以外のものを契約の相手方
とすることができる。
【解 説】
市は,調達品の種別によっては,価格に加えて価格以外の要素により事業者を評価し,当該評価により最も望ましいと認められものを契約相手方とすることができる旨を規定したものである。
○「総合評価方式」とは
地方自治体の法体系では地方自治法施行令第167条の10の2に「一般競争入札において最低価格の入札者以外の者を落札者とすることができる場合」として次のように規定されている。
総合評価一般競争入札とは,「一般競争入札により支出の原因となる契約を締結しようとする場合において,当該契約がその性質又は目的から地方自治法第234条第3項本文(最低価格落札制度)又は地方自治法施行令第167条の10(低入札価格調査制度及び最低制限価格制度)の規定により難いものであるときは,これらの規定にかかわらず予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち,価格その他の条件が当該普通地方公共団体にとって最も有利なものをもって申込みをした者を落札者とすることができる」という制度である。
総合評価方式は,価格だけで評価していた従来の落札方式と異なり,品質を高めるための新しい技術やノウハウなど,価格に加えて価格以外の要素を含めて総合的
に評価する新しい落札方式のことである。価格と品質の両方を評価することにより,総合的に優れた調達を行うことが可能になる。
入札価格が予定価格の制限の範囲内にあるもののうち,価格と品質を数値化した
「評価値」が最も高いものを落札者とすることにより,予定価格の範囲内で最も品質の良い施工業者を選定する。総合評価方式においては,新しい施工方法や施工上の工夫などの技術提案や,同種工事の施工実績,工事成績等が評価の対象となる。総合評価方式における「品質」とは,工事目的物そのものはもとより,工事の効 率性,安全性,環境への配慮等,工事の実施段階における様々な特性,つまり工事
そのものの質も含まれる。
この考え方は,基本的には次の述べるとおり,工事に関して取り入れられた考え方である。
○総合評価方式の導入の背景
近年,公共投資の減少による価格競争の激化の中で,著しい低価格による入札が急増するとともに,適切な技術的能力を持たない業者による,不良工事の発生,下請や労働者へのしわ寄せによる公共工事の品質低下に関する懸念が起きている。こうした状況に対応するため公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年法律第18号。以下「品確法」という。)が作られ,平成17年4月から施行された。
各発注者は品確法に即して,技術的能力を有する者により公共工事を施工する環境を主体的に整備するとともに,価格と品質が総合的に優れた調達を行うことが求められており,これにより,下記のような効果が期待される。
① 一定のコストに対し最も価値の高いものの調達の実現
② ダンピングの防止,不良・不適格業者の排除
③ 談合が行われにくい環境整備
品確法第5条により,地方公共団体は,以下の責務を有するとされている。
① 品確法の基本理念にのっとること。
② 国との連携を図ること。
③ 地域の実情を踏まえ,公共工事の品質の確保の促進に関する施策を策定,実施すること。
品確法の基本的な理念を具体化するものが,同法に位置づけられた総合評価方式である。国からは,地方自治体に対して,総合評価方式の積極的な活用が求められている。
○総合評価方式の導入の意義(メリット)
総合評価方式には次のようなメリットがあり,これにより,高い技術的能力と地域の発展に対する強い意欲を持つ建設業者が成長できる環境が整備される。
① 価格と品質が総合的に優れた調達により,優良な社会資本整備を行うことができること。
② 必要な技術的能力を有する建設業者のみが競争に参加することにより,ダンピングの防止,不良・不適格業者の排除ができること。
③ 技術的能力を審査することにより,建設業者の技術力向上に対する意欲を高め,建設業者の育成に貢献すること。
④ 価格と品質の二つの基準で業者を選定することから,談合防止に一定の効果が期待できること。
⑤ 総合評価方式の活用により,地域の建設業者の役割を適切に評価することも可能となり,一般競争入札の導入・拡大を進めやすくなることから透明性の確保が図れ,納税者の理解を促進すること。
○総合評価方式のタイプ
市区町村が発注することの多い技術的な工夫の余地が小さい一般的で小規模な工事に活用される総合評価方式のタイプとして「簡易型」のほか,「市区町村向け簡易型(特別簡易型)」がある。
① 簡易型
技術的な工夫の余地が小さい一般的な工事において,特定のテーマに沿って作成された簡易な施工計画(A4サイズで1~2枚程度)のほか,同種・類似工事の施工実績や工事成績などの評価項目と入札価格を総合的に評価する方式
② 市区町村向け簡易型(特別簡易型)
技術的な工夫の余地が小さい一般的で小規模な工事において,施工計画の評価を要件とせず,同種工事の施工実績や工事成績など,定量化された評価項目と入札価格を総合的に評価する方式。この方式は,価格競争方式において競争参加資
格を確認する際に業者に求めている企業の施工実績や工事成績等の情報を活用して落札者を選定するので,基本的な入札関係事務の流れは価格競争方式の場合と大きな違いはなく,手続きを進める上で過重な事務量が発生することはない。
①と②との違いは,①が施工計画の評価を行うのに対し,②では施工計画の評価は行わないという点である。
当市においては,市区町村向け簡易型(特別簡易型)を採用することとしている。
○業務委託における総合評価方式の考え方
業務委託に関しては,工事のような法律が存在するわけではない。
しかしながら,価格のみによらない評価による総合評価を導入することにより,良質な調達品や市民サービスが確保し得るのみでなく,上記に述べた導入の意義と全く同様の意義を有する。
国(経済産業省)や他の自治体において,既に業務委託についても独自の評価項目や基準を設け,総合評価方式を取り入れた競争を行っている。
当市においても,評価項目や基準を検討し,業務委託についても総合評価の考え方を競争に取り入れて,調達を実施しようとするものである。
○「プロポーザル方式等」とは
「プロポーザル方式」とは,その業務に係る実施体制,実施方針,プロジェクト に対する提案等のプロポーザル(企画提案書)の提出を受け,必要に応じて事業者 にヒアリングを実施した上で,それぞれのプロポーザルに対して評価し,最も適切 な創造力,技術力,経験等を有する設計者(事業者等)を選定する選定方式である。
「プロポーザル方式等」の「等」とは,プロポーザル方式のほかにコンペ(設計競技)方式による選定が含まれていることを指す。コンペ方式とは,対象業務等に関する明確な設計条件を提示して,具体的な企画提案自体を評価し,最も優れた企画案を選定するものである。
また,プロポーザル方式等により示された企画提案の内容は,選定結果に対して,より大きな比重を占めるものである。したがって,示された企画提案は,業務の履 行において,特に遵守され,確実に履行されなくてはならないものである。
(総合評価方式等による公共調達の実施)
第12条 市は,前条に規定する総合評価方式及びプロポーザル方式等の価格のみの競争ではない方式により受注者を選定するときは,事業者の業務実績等公共調達に係る履行能力を評価するとともに,第8条に規定する考慮事項及び事業に対する提案について評価し,公共調達の受注者を決定するものとする。
2 市は,前項の規定により価格のみの競争ではない方式により受注者を決定した
場合において,事業に対する提案を評価対象としたときは,契約締結後の当該提
案についての変更は,原則として認めないものとする。ただし,社会情勢に急激な変化が生じる等,受注者の責めによらない理由において当該提案の履行が著しく不適当であると認めるときは,その実情に応じ,当該提案の変更を認めることができる。
3 市は,第1項の評価を行う場合における評価の手続,項目その他必要な事項に
ついては,別に定める。
【解 説】
市は,前条の規定に基づき総合評価方式,プロポーザル方式等の価格のみの競争ではない方式により受注者を選定する場合における評価項目の視点を具体的に示したものである。
事業者の業務に対する履行能力を評価するほか,本条例第8条第2項に「調達手続における配慮事項」として掲げた市が調達を行う際に配慮する事項について,選定の際に評価し,点数化することにより,価格のみでない総合的評価を実施するものとする。
<第2項関係>
プロポーザル方式等の価格のみの競争ではない方式により受注者を決定した際に事業に対する提案を評価対象とした場合においては,当該提案についての変更は,原則として認めないものとする。これは,プロポーザル方式等により示された企画提案の内容は,選定結果に対して,より大きな比重を占めるものであり,示された企画提案は,業務の履行において,特に遵守され,確実に履行されなくてはならないものである。
ただし,社会情勢に急激な変化が生じる等,受注者の責に帰さない理由において当該提案の履行が著しく不適当であると認めるときは,その実情に応じ,当該提案の変更を認めることができるものである。
<第3項関係>
○「別に定める」とは
「別に定める」とは,総合評価方式及びプロポーザル方式等についての手続や基準の詳細を定めるにあたっては,要綱等を作成し,受注者の選定を行うことを述べている。
プロポーザル方式等については,平成20年に国分寺市プロポーザル方式等による 調達手続実施要綱(平成20年要綱第4号)を定め,手続を進めているところである。
総合評価方式についても,要綱を設置し,取り組んでいくものである。
(法令の遵守)
第13条 市及び事業者は,公共調達について関係法令及びこの条例(以下「関係法令等」という。)を遵守し,労働条件及び賃金水準を適正に確保しなければならない。
2 市及び受注者は,関係法令等のほか,公益通報者保護法(平成16年法律第122号)及び国分寺市職員等のxxな職務の執行の確保に関する条例(平成19年条例第20号)に定めるところに従い,公益通報に対し適切に対処するとともに下請負
者等に対し公益通報制度の周知を図るものとする。
【解 説】
市と事業者は,各種労働関係法令及び本条例を遵守するとともに,労働条件等を確保しなければならないことを明示し,労働者が安心して就労し健全な生活が営めるようにすることを目的に,この条文を定めている。
市及び受注者に対して,関係法令等の遵守のほか,公益通報者保護法や国分寺市職員等のxxな職務の執行の確保に関する条例についても,適切に対処することを求めている。この法律等は,違法行為や不正行為が行われている場合において,その事実を通報したときに,その通報した労働者等が解雇や減給等の不利益な取扱いを受けることがないように保護することを定めたものである。
また,受注者の従事者のみならず,下請負者等に対しても公益通報制度を周知することにより,より適切な労働環境の保持を目的としている。
<第2項関係>
○「公益通報者保護法」とは
「公益通報者保護法」とは,企業や組織の内部で公益にかかわる違法行為や不正行為がなされている場合において,内部の事情を知る従業員等がその事実を行政,xxxx等に通報したときに,その通報した従業員等が解雇や減給等の不利益な取扱いを受けることのないように保護することを目的として平成16年6月に制定された法律である。
○「国分寺市職員等のxxな職務の執行の確保に関する条例」とは
「国分寺市職員等のxxな職務の執行の確保に関する条例」とは,公益通報者保護法を受けて,市の内部で違法行為や不正行為がなされているときに,事情を知っている職員がその事実を公益監察員に通報した場合に,その通報した職員が不利益な取扱いを受けることのないように保護することを目的として平成19年6月に制定された条例である。
本市の条例には,上記の公益通報者の保護措置の他に第19条として職員の「xxな職務の執行を損なう行為等」が規定されており,暴力,脅迫等により業務の妨害を受けた場合のほか,市が行う契約又は入札に関して関与するような行為があった場合等には,任命権者に報告しなければならない旨規定されている。
(公共調達に係る契約等の内容)
第14条 市は,公共調達に係る契約等(次条に定めるものに限る。第16条から第19条まで及び第22条から第24条までにおいて同じ。)においては,次に掲げる事項を定めなければならない。
(1) 受注者及び下請負者等は,公共調達に係る業務に従事する労働者に対し,次項の規定により算出した額(以下「最低額」という。)以上の賃金を支払わなければならないこと。
(2) 受注者は,下請負者等がその雇用する労働者に最低額を下回った賃金を支払った場合は,その支払った賃金と最低額との差額に相当する額を当該下請負者等と連帯して支払わなければならないこと。
(3) 受注者は,下請負又は再委託を行う場合においては,次のア又はイに掲げる公共調達の区分に応じ,当該ア又はイに定める報告事項について,市に報告すること。
ア 次条第1項第1号に該当する公共調達 受注者から徴する下請負に係る相手先,下請負の額その他の規則で定める報告事項
イ 次条第1項第2号又は第3号に該当する公共調達 受注者から徴する再委託に係る相手先,再委託の額その他の規則で定める報告事項
(4) 受注者は,前号の下請負又は再委託について変更が生じたときは,当該変更事項について速やかに市に報告すること。
(5) 受注者は,公共調達に係る業務に従事する労働者について,労働基準法(昭和22年法律第49号)第108条(賃金台帳)に規定する賃金台帳(以下「賃金台帳」という。)及び規則で定める報告書を作成し,当該公共調達の事業場に備えて置くこと。
(6) 受注者は,規則で定めるところにより,賃金台帳の写しを市に提出すること。
(7) 受注者は,次に掲げる事項を公共調達の事業場に掲示し,又は従事する労働者に書面により周知しなければならないこと。
ア 公共調達の発注者の名称及び所管部署の連絡先イ 最低額
ウ 受注者と下請負者等において第2号の規定による連帯責任がある旨の説明エ 受注者及び下請負者等の代表者並びに受注者及び下請負者等の当該公共調
達の指揮命令の責任者の氏名及び連絡先
オ 労働基準法に規定する所定労働時間及び休日
カ 第16条第2項の申出をする場合の通報先及び当該申出をしたことを理由に不利益を受けることがないことの説明
(8) 受注者は,公共調達に係る業務に従事する労働者に支払われた賃金の額が賃金台帳の記載に合致しているかどうかの確認その他当該公共調達における前各号に掲げる事項の履行状況の調査を市が行う場合において,協力を求められたときは,これに協力すること。
2 市は,次の各号に掲げる公共調達の種類に応じ,当該各号に定める事項を勘案して最低額を定めるものとする。
(1) 次条第1項第1号に該当する公共調達 農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価
(2) 次条第1項第2号又は第3号に該当する公共調達 当該公共調達に係る契約等における業務の種別及び内容に応じて,当該業務の標準的な賃金と認められ
る規則で定める額
【解 説】
市が締結する公共調達において,労働条件,賃金をはじめ適正な労働環境を確保するための事項を公共調達締結の条件として定めることを規定したものである。
<第1項第1号・第2号関係>
労働者に対し適正な賃金が支払われることで,公共調達の品質確保及び価値向上が図られると考える。この賃金については下請負者等であってもその労働者に対して確保されるべきものである。
そこで,第1項において市が定める賃金の最低額以上の賃金の支払いを規定したうえで,下請負者等が雇用する労働者の賃金の支払いについて雇用側に連帯責任を負わせることで,本条例の実効性を担保するものである。
<第1項第3号・第4号関係>
下請負又は再委託が行われる場合及び変更が生じた場合に,受注者からの報告を徴することにより,受注者の状況を把握し,適正な手続を確保するものである。
<第1項第5号・第6号関係>
賃金台帳等を整備し,必要に応じて市に提出させることにより,第4章の検証及び評価における履行状況の把握及び評価をより良質化し,より優れた調達を実施していくことを目指すものである。
<第1項第7号関係>
市は事業者に対し,労働者の労働条件確保による調達の質の向上を目指すため,公共調達を実施する事業者として行うべき第1号に規定する市が定める賃金の最低額等の周知事項を規定している。
○「事業場に掲示」とあるのは
「事業場に掲示」とあるのは,各案件別に次に示す掲示場所に掲示し,又は方法により通知することをいう。
(1) 第15条第1号に該当する案件については,施工現場や現場事務所又は作業員詰所等に掲示する。
(2) 第15条第2号に該当し,かつ,履行場所が施設に特定できる案件及び第15条第
3号に該当する案件については,当該施設の労働者の事務室や休憩xx,労働者が記載内容を確認できる場所に掲示する。
(3) 上記に該当しない場合でも可能な限り掲示する手段を講じ,それでも掲示できない又は労働者が掲示を確認できない等意味を成さない場合には,労働者へ書面による通知を行う。
○「所定労働時間及び休日」のうち「労働時間」とは
「所定労働時間及び休日」のうち「労働時間」とは,労働基準法第32条に規定する,休憩時間を除き1週間について40時間以内で,かつ,1週間の各日について休憩時間を除き1日8時間以内で設定された労働時間のことをいい,「休日」とは,労働基準法第35条に規定する,労働者に与えられる毎週少なくとも1回以上の休日のことをいう。
○「所定労働時間」とは
「所定労働時間」とは,各会社や団体で定めた労働時間のことであり,労働基準法第32条(労働時間)で定める法定労働時間(1週40時間,1日8時間を超えない時間)とは異なる。
「所定休日」も所定労働時間と同様に,労働基準法第35条で定める法定休日(毎週少なくとも丸1日)とは異なる。例えば,週休二日の場合,休日のうち1日は法定休日で,残りの1日は法定外休日となる。
各会社や団体は,この労働基準法第32条や第35条で規定する範囲内において所定労働時間や休日を就業規則等に明記する必要がある。
<第2項関係>
受注者及び下請者等は,公共調達に係る契約等に従事する労働者に支払う賃金については,この条例に基づき定められた賃金の最低額以上の賃金を支払うことを規定したものである。
○「農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価」とは
「農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価」とは,公共事業の積算に用いる単価であり,農林水産省及び国土交通省が毎年公共事業に従事する労働者の県別賃金を職種ごとに調査した結果をもとに決定しているものをいう。
○「業務の種別及び内容に応じて,当該業務の標準的な賃金と認められる規則で定める額」とは
「業務の種別及び内容に応じて,当該業務の標準的な賃金と認められる規則で定める額」とは,国やxxxにおいて定期的に実施される賃金統計調査(厚生労働省にあっては賃金構造基本統計調査)により示される産業別の賃金を勘案し,決
定することとしている。詳細については,規則により定める。
(適用範囲)
第15条 前条の公共調達に係る契約等の範囲は,次の各号のいずれかに該当する公共調達について適用する。
(1) 予定価格が90,000,000円以上の工事等の請負
(2) 予定価格が10,000,000円以上の工事等の請負以外のもののうち,規則で定めるもの
(3) 市が提示する指定管理費の額が10,000,000円以上の指定管理者により行われる公の施設の管理に係る指定のうち,規則で定めるもの
2 前項に規定する公共調達に係る契約等のうち,当該契約等の手続等について法令又は条例によりその取扱いが定められているものについては,当該法令又は条
例の定めるところによるものとする。
【解 説】
本条は,公共調達に係る契約等の適用範囲を定めたものである。
本条例においては,従事者が多い大規模の契約等や設備投資の大きい業務委 託や技術的又は専門的視点を加味して行う業務委託ではなく, 単に労務に対する賃金として換算することができる契約等を対象とすることで,実効性の確保を図るために一定の範囲を定めている。
<第1項第1号関係>
○「工事等の請負」とは
「工事等の請負」とは,次に掲げるもの等,「工事請負費」として契約締結するものをいう。
(1) 土木工事(道路舗装,水道施設,下水道施設及び一般土木)
(2) 建築工事
(3) 設備工事(電気,給排水衛生,空調)
○「予定価格」とは
「予定価格」とは,市が契約を締結するときに,その契約金額を決定する基準となる価格として,市長があらかじめ作成するものをいう。契約の目的となる物件又は役務について取引の実例価格,需給の状況,履行の難易,数の多少,履行期間の長短等を考慮して適正に定められるものである。
○予定価格を9,000万円以上とした理由
本条例の適用範囲については,実効性の確保という点を考慮し,公共調達に係る契約等に従事する者が多い大規模の契約をその範囲とすることとした。受注者だけでなく,その下請負人等も含めて対象とすることとしているため,多くの当
該契約に従事する者が本条例の対象となると考える。
市においては,議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例
(昭和 39 年条例第 13 号)第 2 条により予定価格 1 億 5,000 万円以上の工事等の請負契約を締結するに際しては,議会の議決を経る必要がある。これは,本来,契約の締結は予算執行に関する事項であり,長の権限に属するが,特に重要な契約の締結については,市民の利害に与える影響が大きいので,長のみに委任せず,議会の審議を経ることが地方自治法第 96 条において規定されているためである。
この金額については,地方自治法施行令により議決案件の金額が定められており,昭和 38 年に 3,000 万円と定められた。その後,昭和 52 年には 9,000 万円に,平成
5年には 1 億 5,000 万円に改正されている。
本条の適用範囲について,議決案件となる 1 億 5,000 万円を適用範囲の区切りとした場合は,近年,工事においては,該当する案件がない。
そこで,改正前の数値である 9,000 万円とする。件数としては少ないが,現在の体制の中で,本条例に基づく制度を検証しながら,実効性を担保していくには導入するに適切な数値であると考える。
<第1項第2号関係>
○「工事等の請負以外のもの」とは
「工事等の請負以外のもの」とは,地方自治法第 234 条第 1 項において規定されている売買,貸借,委託その他の契約のうち,第 1 号に定める工事等の請負を除いたものをいう。ただし,この条項で具体的に想定している案件の実際の 適用範囲については, 規則で定めることとしている。
なお, 対象とする案件についての考え方としては, 導入時にあっては, 設備投資の大きい業務委託や技術的又は専門的視点を加味して行う業務委託ではなく, 単に労務に対する賃金として換算することができる業務委託から導入するものとする。
○予定価格を 1,000 万円以上とした理由
当市において,予定価格 1,000 万円以上の案件で工事等の請負以外のものについては,国分寺市競争入札業者選定委員会において選定等に関し審議を要することとなっている。
これは,工事等の請負の考えたと同様に,市民生活への影響が大きい案件であるとの考えに基づき,一定の手続を設けているものである。
このような点から,本条例において,規模の大きさと実効性の担保について考慮した結果,予定価格 1,000 万円以上の工事等の請負以外のものについて適用することとしたものである。
○協働事業による業務委託は,この条項に該当するのか。
現在,市民活動団体等との協働事業の実施においては,当該協働事業に係る協定
において,市民活動団体等が行う業務と市が行う業務を明示したうえで,市民活動団体等が行う業務について委託という形で契約を締結している。
したがって,第2号が示す業務委託という範囲の中には,市民活動団体等との協働事業に係る協定書に基づき締結される業務委託についても含まれる。具体的に適用範囲となるかどうかについては,その金額や規則で定める案件に該当するか否かで判断することとなる。
<第1項第3号関係>
○適用範囲に指定管理者により行われる公の施設の管理の指定を含めることについて
適用範囲に指定管理者制度を含める理由として,主には次の2点が挙げられる。
1点目としては,指定管理者制度は,平成15年の地方自治法の一部改正により導入された制度であり,地方自治体が指定する法人その他の団体に公の施設を管理させようとする制度である。指定にあたっては,団体から価格その他の要素について提案書等を提出させ,最も優れていると市が選定したものを指定管理者として指定することとしている。
この点においては,価格のみによらない評価方式によろうとする公共調達の考え方に合致するものである。
2点目としては,指定管理者制度は,多様化する住民ニーズに対してより効果的,効率的に対応するため,施設の管理に民間の能力を活用しつつ,住民サービスの向 上を図るとともに,経費の節減等を図ることを目的として導入された。この経費節 減を追求した場合に,他の調達と同様に人件費等へのしわ寄せ等が懸念される。公 の施設の管理がその業務の主となることを鑑みれば,第2号に規定する業務委託と 同等の考え方に基づき適用範囲を定め,本条例の対象とすることは妥当であると考 える。
○指定管理者制度における対象業務について
第1項第3号で「規則で定めるもの」とする内容は,国分寺市公共調達条例施行規則第7条第2項において,公の施設の「使用許可及び施設の維持管理を主たる業務とするもの」と定めている。
当市においては,指定管理者制度における指定管理者の管理業務を,以下の4つに区分している。(指定管理者制度の運用指針)
ア 事業の実施に関する業務イ 使用許可に関する業務
ウ 使用料の収納等に関する業務
エ 施設及び設備の維持管理に関する業務
指定管理者が行う管理業務は,施設の類型により上記アからエの組合せとなるが,施行規則第7条第2項における「使用許可及び施設の維持管理を主たる業務とするもの」とは,上記アからエのうち,イからエの業務を指し,アを管理業務に含む場合は適用範囲外とする。
<第2項関係>
第2項は,第1項に規定する契約等のうち,当該契約等の手続等について法令又は条例によりその取扱いが定められている場合にあっては,当該他の法令又は他の条例の定めるところにより行うものであることを明示したものである。
これは,一つの事案に対して,二重の基準が置かれ,その適用において混乱することを避けるためのものである。
例えば本条第1項第3号に規定する指定管理者により行われる公の施設の管理に 係る指定においては,国分寺市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例 が置かれており,指定の手続にあたっては,その条例の規定を適用することとなる。選定後,市が指定管理者として相手方を指定する際にあっては,本条例の第14条に 従い市が定めることとされている事項について,本条例の適用を受ける。本条の適 用範囲が適用される第16条から第19条まで及び第22条から第24条までについても同 様である。
○この条文においては,個別の法律や条例を指定せずに「法令又は条例」と表示していることについて
これは,当該契約等の手続等について該当する法律や条例のすべてを把握することができないためである。個別の法律や条例を列記した場合に,そこに列記されなかった法律や条例に対する適用がどうなのかという疑問が出てしまう。そのため,包括的に「法令又は条例」と述べ,具体的にその手続についてどうかということを照らし合わせつつ,適切な事務執行を行おうとするものである。
また,「手続等」の「等」とは,法律や条例で規定している内容が手続のみに限られているものではなく,考え方や基準が規定されていることを鑑み,「等」を用い,手続のみが法律や条例によるのではないことを示したものである。
○市街地再開発事業にかかる「特定建築者制度」と本条例の関係について
市は,再開発事業を行うに当たっては,都市再開発法第99条の2の規定に基づき,施行者である市以外の者(以下「特定建築者」という。)に施設建築物の建築を行 わせることができる。
この制度を活用した場合において,特定建築者との関係が上記の工事等の請負に該当するか否かという点であるが,保留床の処分方式について同制度を活用する旨が権利変換計画又は管理処分計画において定められることとなる。また,工事請負については,この制度は,市が当該施設建築物の施主となる特定建築者を公募・決定した後に,特定建築者が自ら工事を行うか又は他の事業者に工事を発注することとなる。
上記に示す「特定建築者制度」の手続等については,都市再開発法,同法施行令 及び同法施行規則によりその詳細が定められており,公募による手続等については,当該法令に従って進めるものとする。
(調査等)
第16条 市は,公共調達に係る契約等の業務に従事する労働者に支払われた賃金が賃金台帳の記載に合致しているかどうかの確認その他当該公共調達における第14条第1項第1号から第7号までに掲げる事項の履行状況の調査を行わなければならない。
2 公共調達に係る契約等の業務に従事する労働者は,その従事する公共調達の受注者又は下請負者等が当該公共調達において第14条第1項第1号から第7号までに掲げる事項に違反していると認めるときは,その旨を市又は当該受注者若しくは下請負者等に申し出ることができる。
3 前項の申出をした労働者を使用する受注者又は下請負者等は,当該申出をした
ことを理由として,当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない。
【解 説】
市は,公共調達の締結において,条件として定めた第14条第1項第1号から第7 号までに掲げる事項について,履行状況等の調査を行う旨を定め,労働条件,賃金 をはじめ適正な労働環境を確保しようとするものである。また,受注者が条例違反 を行っている場合において,当該公共調達に係る労働者はその旨の申出ができる旨 も規定し,より本条例が目指す調達における適正な手続の確保を目指すものである。
(履行状況の把握等)
第17条 市は,公共調達に係る契約等において,調達手続における安全性及び正確性を確保するため,公共調達の工程及び履行状況を適切に把握しなければならない。
2 市は,前項の公共調達の工程及び履行状況の把握を円滑に実施するため,規則
で定めるところにより,受注者から契約締結時における着手届,契約期間中における中間報告届及び契約期間満了時における完了届を徴するものとする。
【解 説】
履行中の事業の工程及び履行状況を把握し,調達の質を一定水準に確保するため具体的な手順を規定している。
市においては,会計法・地方自治法により義務づけられている監督制度に基づき,工事の請負契約や業務委託契約の締結にあっては,着手届をはじめ,その工程や履 行状況を把握するために,受注者から適切な時期に応じた帳票やその根拠となる書 類等を徴し,進行管理を行っているところである。円滑かつ適正に履行状況を確認 するとともに,より良好な調達品を担保するため受注者から適切な時期に提出する 書類を個別に定めている。
指定管理者制度にあっても,モニタリングの実施をはじめ,指定管理者からの報告等により,その履行状況の適切な把握に努めるものである。
○価格のみによらない競争により決定した案件について
価格のみによらない競争により決定した案件については,その価格以外に評価した項目について,履行がされているかを確認することが肝要である。また,市で定めた最低賃金についても報告書の提出を求め,調達品に係る履行状況の把握に合わせ,確認する必要がある。
○プロポーザル方式等により示された企画提案について
プロポーザル方式等により示された企画提案の内容は,選定結果に対して,より 大きな比重を占めるものである。したがって,示された企画提案は,業務の履行に おいて,特に遵守され,確実に履行されなくてはならないものである。したがって,履行状況の確認は重要な点であり,履行内容のうち,特に提案に係る部分について は充分に留意し,特に変更を要する場合には提案の意図と相違が生ずることのない よう配慮する必要がある。
○指定管理者制度における履行条条の把握
指定管理者制度にあっても,履行状況の把握にあっては,モニタリングの実施をはじめ,指定管理者からの報告等により,その履行状況の適切な把握に努めるものである。
(完了時の検査)
第18条 市は,公共調達に係る契約等において,別に定めるところにより調達手続の完了時に検査又は検収を行い,履行状況等について確認し,必要な品質の確保に資するものとする。
【解 説】
調達手続の完了時の検査について客観的に評定する基準を整備し,一定金額以上の工事等にあっては専門的判断力を有する者の判定による適確な検証手続を行うことをはじめ,完了時における履行確認を行い,必要な品質を確保する旨を規定している。
○「別に定めるところにより」とは
「別に定めるところにより」とは,国分寺市検査事務規程(昭和50年訓令第18 号)を指し,同規程の定めに従い,契約完了時における検査又は検収が現在も行われているところである。同規程第7条の規定により検査員は契約金額が1,300,000円以上の工事,製造及び修繕の請負契約について検査を行い,第8条の規定により検収員が検査員検査の対象とならない契約について検査を行っている。良質な品質及
びサービスの確保を担保するうえで重要な手続である。
○プロポーザル方式等により示された企画提案における検査
プロポーザル方式等により示された企画提案における検査の内容は,選定結果に 対して,より大きな比重を占めるものである。したがって,示された企画提案は, 業務の履行において,特に遵守され,確実に履行されなくてはならないものである。提案が確実になされたことについて,またその提案を導入することにより得られた 成果について,一定の確認を行うことが必要である。
○指定管理者制度における検査
指定管理者制度においては,指定管理者制度に係る運用指針を定め,その中で指定管理者及び当該施設管理の所管課によるモニタリングを 実施することを求めている。常時履行状況の把握に努めるとともに,年度末ごとに指定管理者からの報告に基づき,サービスについての検証・確保を図ることとしている。
(評価)
第19条 市は,公共調達に係る契約等において,前条に規定する検査又は検収の結果に基づき,受注者の公共調達における履行状況を評価するものとする。
2 市は,前項の評価を同種の公共調達に係る事業者選定に反映させるものとす
る。
【解 説】
調達の履行と結果において事業者等を評価できる環境を整備し,調達手続のxx性,xx性及び競争性の確保をし,評価の実施を規定したものである。
履行状況の評価は,公共調達の成績評価及び履行の能力について評価項目として加算対象となった項目について行うものとする。
なお,加算点を得るに至った評価区分の基準を満たしておらず,その責が受注者にあると認めるときは,評価の減点対象とする。
成績評価及び減点とした評価の結果を次回以降の同種の公共調達に係る案件の調達手続に反映させることを規定している。
(公共調達委員会の設置等)
第20条 市の調達手続を適正に維持するため,国分寺市公共調達委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は,市長の諮問に応じ,次に掲げる事項について審議し,その結果を市長に答申するほか,市長に建議することができる。
(1) 第14条第2項に定める最低額に関すること。
(2) 第22条第2項及び第3項に規定する措置に関すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか,公共調達の重要事項に関すること。
3 委員会は,委員5人以内をもって組織し,事業者,労働者及び識見を有する者のうちから市長が委嘱する。
4 委員の任期は,2年とし,再任を妨げない。ただし,委員が欠けた場合における補欠委員の任期は,前任者の残任期間とする。
5 委員会に委員長を置き,委員の互選によりこれを定める。
6 委員長は,委員会を代表し,会務を総理する。
7 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは,委員長があらかじめ指名する者がその職務を代理する。
【解 説】
この条例に定める公共調達において,市長の附属機関として国分寺市公共調達委 員会を設置するものとする。この委員会は,事業者,労働者及び識見を有する者で 構成する。市長の諮問に応じ審議し,答申するほか,市長に建議することができる。
本条においては,第2項として審議事項を示すとともに,委員会の設置目的及び組織について定めたものである。
<第2項関係>
○「公共調達の重要事項」とは
「公共調達の重要事項」とは,次に掲げる事項が考えられる。
・適用範囲の考え方
・評価項目とその基準の考え方
・その他制度運営をしていく中で基準となる点
<第3項関係>
○委員の構成について
本条に定める委員会の所掌事務は,公共調達に関し専門的見地から審議していただく必要があること,契約の解除等,事業者に対しての制裁的意味合いが強い決定をする必要があること等に鑑み,事業者,労働者及び識見を有する者により構成するものである。その選任に当たっては,xx性及び透明性の確保に努めるものとする。
(委員会の会議等)
第21条 委員会の会議は,委員長が招集し,委員長は,会議の議長となる。
2 委員会は,委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができない。
3 委員会の議事は,出席委員の過半数で決し,可否同数のときは,委員長の決するところによる。
4 委員は,自己若しくは父母,祖父母,配偶者,子,xxxxは兄弟姉妹の一身
上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係の
ある事件については,審議することができない。
5 委員会は,会議の運営上必要があると認めるときは,委員以外の者を会議に出席させ,その意見を聴き,又は委員以外の者から資料の提出を求めることができる。
6 委員は,職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,同様とする。
7 委員会の会議は,公開する。ただし,国分寺市附属機関の設置及び運営の基本に関する条例(平成11年条例第26号)第5条(会議の公開)ただし書の規定に該当する場合は,当該会議の全部又は一部を公開しないことができる。
8 委員会の庶務は,総務部契約管財課において処理する。
【解 説】
本条は,前条において設置された公共調達委員会の会議について定めたものである。
第4項では,「委員は,自己若しくは父母,祖父母,配偶者,子,孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については,審議することができない。」として除斥事項を置き,xxな審議を担保するものである。
(是正措置等)
第22条 市は,公共調達に係る契約等において,この条例に違反した受注者に対して,次に掲げる措置を講ずるものとする。
(1) 違反する事実の是正の指導又は勧告
(2) 第19条第1項の規定により評価した結果に基づき付した点数の引下げ
(3) 指名停止
2 市は,前項に規定する措置を実施してもなお受注者が是正しない場合は,当該公共調達に係る契約等を解除することができるものとする。
3 市は,受注者がこの条例に違反した事項が重大であると判断した場合は,規則で定める事項の公表を行うものとする。
4 市は,第2項の規定により当該公共調達に係る契約等を解除した場合における
受注者の損害については,その責めを負わない。
【解 説】
市は,この条例の規定に違反していることが明らかになった受注者に対し,違反事実の程度や段階に応じた厳格な措置を講じることで,この条例の遵守を促進させる規定である。
第1項は,違反する事実そのものについて行う措置であり,受注者の作為・不作為を問わない規定である。
第2項及び第3項については,違反している事実に対して受注者の意思が明らか
である必要がある。
そのため,第2項及び第3項の措置を行うに当たっては,次条に定めるように,受注者に対する意見聴取等,事実確認を行う必要がある。
<第1項第3号関係>
○「指名停止」とは
「指名停止」とは,国分寺市競争入札等参加資格者指名停止措置基準に基づき,調達に係る業者選定について,指名のxxと契約の履行を確保するため, 事故や事件等の当事者となり指名対象として不適当と判断した事業者に対し,一定期間の指名を停止する措置をいう。
<第3項関係>
「重大である」とは,次のような場合を指し,該当するときは遅滞なく公表するものとする。
・第2項の規定により解除を行ったとき。
・提出書類の内容に虚偽の記載があったことが判明したとき。
・違反する事実について,作為的に行っていることが判明したとき。
・公共調達に係る契約等の終了後に受注者がこの条例に違反していたことを隠匿した事実が判明したとき。
(意見聴取等)
第23条 市は,公共調達に係る契約等において,前条第2項及び第3項の規定によ
る措置を講ずるときは,規則で定めるところにより,事前に受注者の意見を聴取し,事実確認を行うものとする。
【解 説】
市は,第22条の規定により,公共調達の解除又は公表を行う場合は,本条例違反の受注者に対して,意見を聴取し,その事実の詳細について確認することを要する旨を規定したものである。
(損害賠償)
第24条 受注者は,公共調達に係る契約等において,第22条第2項の規定による解除によって市に損害が生じた場合は,その損害を賠償しなければならない。
【解 説】
市が第22条第2項の規定により公共調達に係る契約の解除を行った場合において,市に損害が生じたときは,その解除の理由が受注者の条例違反であることから,受 注者にその損害の賠償の責任があることを明示したものである。
(譲渡等への勘案)
第25条 市は,この条例に定める調達のほか,市の所有するものを他に譲渡,賃貸等する場合においても,この条例の趣旨を十分に勘案して実施しなければならない。
【解 説】
本条例は,市が物品,完成品,成果品及びサービス等を得ることに対して基本的な調達のあり方を明確にしたものであるが,市の財産等を他に譲渡し,又は賃貸等する場合であっても,第3条に掲げる基本理念の考え方に則り,契約等を実施する必要があることを述べている。
譲渡や賃貸等については,国分寺市有財産の交換,譲与,無償貸付け等に関する条例(昭和39年条例第21号),国分寺市財産価格審議会条例(平成6年条例第9 号)等があり,これに規定する手続に則り,実施している。当該手続において,本条例を十分勘案して,実施することを述べている。
なお,市は,再開発事業を行うに当たっては,都市再開発法第99条の2の規定に基づき,施行者である市以外の者(以下「特定建築者」という。)に施設建築物の建築を行わせることができる。この制度を活用した場合は,同制度において公募・決定した特定建築者との間で特定建築者の取得する床部分の所有を目的とする敷地に関する権利について,敷地譲渡契約を締結することとなる。
この場合において,本条例に規定する譲渡等に該当するか否かであるが,都市再開発法第108条第2項において地方公共団体の財産の管理処分に関する法令の規定は適用しないと規定している。その趣旨を鑑みると,都市再開発法に基づき行う敷地譲渡契約は,本条例の規定の適用対象外であるといえる。
(委任)
第26条 この条例の施行について必要な事項は,別に定める。
【解 説】
本条例を施行するにあたり,必要な細部の事項を市長が規則及び要綱により定める旨を規定したものである。
附 則
(施行期日)
1 この条例は,公布の日から起算して6月を超えない範囲内において規則で定める日から施行し,第14条から第19条まで及び第22条から第24条までの規定は,この条例の施行の日以後に公告その他の申込みの誘引を行う公共調達に係る契約等について適用する。
(国分寺市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
2 国分寺市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(昭和
40年条例第45号)の一部を次のように改正する。
別表第2非常勤職員等公務災害補償等審査会委員の項の次に次のように加える。
国分寺市公共調達委員会委員 9,500円
(見直し)
3 この条例は,この条例の施行後3年を目途に,その必要性に応じて見直しを行うものとする。
【解 説】
条例の施行日に係ることを定めるとともに,条例施行に際し,調整すべき条例を併せて改正するものである。
また,社会情勢の変化に対応できるように3年を目途にその必要性に応じ見直しをする旨を明記した。したがって,3年を待たずとも必要があれば改正を行う。