静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、スルガノホールディングス㈱(社長 栗山勝訓)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.3.29
スルガノホールディングス㈱と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、スルガノホールディングス㈱(社長 xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 3 月 29 日(火)
2.融資金額 1 億円
3.資金使途 設備・運転資金
4.スルガノホールディングス㈱の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、土木工事業を営む駿河重機建設㈱を中核とした6社を傘下に持つ持株会社です。「地域に貢献す る 100 年企業を目指して、建設業から『まちづくり企業』へ」を合言葉に、荒廃森林・xx放棄地を守るための農林事業や、古民家再生やイベント企画などを行う地方創生事業等、様々な地域活性化策に取り組むことで、xx地区のまちづくりに貢献しています。
〇今回、同グループの企業活動が与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・自然保護活動(持続可能性の高い自伐型林業による山林再生や災害対策、海岸保全活動を通した環境保全教育、海・山林を保護する公共工事) ・環境保全対策(低騒音・低振動型重機や防音シートの活用による振動・騒音対策、散水車による粉塵対策、エコアクション 21 に則った環境経営活動による大気・水・土壌汚染対策や CO2 排出量・廃棄物の削減) | |
社会面 | ・地域のインフラを支える(土木工事業や解体工事業による地域インフラの整備や災害対策) ・xx地区を中心とした「まちづくり」(スルガノホールディングスの傘下企業による「まちづくり」) |
|
経済面 | ・最先端 ICT 建機による効率的で高品質な施工(自動制御された最先端の ICT 建機を活用した、効率的かつ高品質な施工の実践) |
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】スルガノホールディングス㈱の概要
所 在地 | xxxxxxxxx 000-0 | 創 業 | 2021 年(令和 3 年)11 月 |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:スルガノホールディングス株式会社
2022 年3月 29 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 スルガノホールディングス株式会社(以下、スルガノホールディングス) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、スルガノホールディングスの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
スルガノホールディングスは、土木工事業を営む駿河重機建設株式会社(以下、駿河重機建設)、不動産業を営む株式会社さくら不動産(以下、さくら不動産)、不動産管理業を営む株式会社 3rdplace(以下、3rdplace)、飲食業や菓子小売業を営む株式会社そこあげ(以 下、そこあげ)、酒類製造販売業を営む HORSEHEAD LABS 株式会社(以下、HHL)、道の駅運営業を営む株式会社スルガスマイル(以下、スルガスマイル)の6社を傘下に収める純粋持株会社である。売上高構成比は駿河重機建設が約8割を占め、事業の実態は駿河重機建設に依るところが大きいため、本評価書では駿河重機建設を中心に評価していく。
駿河重機建設は、売上高の約8割を公共工事、約2割を民間工事が占める土木工事業者である。解体工事業や農林事業、地方創生事業も営んでおり、xx地区のまちづくりに積極的に取り組み、地域のインフラを支えている。従業員の安全面への配慮や充実した教育体制の構築、休暇取得制度の整備など、働きやすく安心安全な職場の醸成にも注力しており、3Kの是正も図っている。自伐型林業による山林の再生や海・山を保全する土木工事など、自然保護にも貢献している。
さくら不動産は、一般個人客を相手にxx地区の物件を中心とした不動産売買・賃貸や資産形成コンサルティングを行い、コミュニティイベントを開催することでエリアマネジメントにも積極的に取り組んでいる。
3rdplace はスルガノホールディングスグループで扱っている不動産の管理を行っており、そこあげは地元老舗食堂「xx館」、チーズケーキと焼き菓子の専門店「すずとら」を経営している。
HHL とスルガスマイルは、2022 年に新設されたグループ会社であり、それぞれ、100%xx産の原材料を使用したクラフトビールやジャパニーズウイスキーの製造販売、2022 年夏に開業予定の道の駅「トライアルパークxx」の運営を予定している。
本ファイナンスでは、次のインパクトが特定され、それぞれに KPI が設定された。
【ポジティブ・インパクトの増大】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | ①2030 年までに、自 | ||||
伐型林業で5ha の山 | |||||
持続可能性の高い | 林を再生する | ||||
自伐型林業による | ②2030 年までに、特 | 教育 | |||
自然保護活動 | 山林再生や災害対 策、海岸保全活動 | 定非営利法人 XXXX ARA15th と共同で 15 | 生物多様性と生態系サービス | ||
を通した環境保全 | 件の海岸清掃活動を | ||||
教育、海・山林を保 | 行う | 気候変動 | |||
護する公共工事 | ③2030 年までに、治 | ||||
山工事を累計25 件施 | |||||
工する | |||||
社会 | ①2030 年までに、xx | ||||
地区の人口を 2021 年 | |||||
9 月 30 日時点の | |||||
10,775 人から1割増 | |||||
スルガノホールディン | 加させ、11,853 人を達 | ||||
グスの傘下企業によ | 成する | ||||
xx地区を中心とした 「まちづくり」 | る「まちづくり」、地域活性化イベントや地元小中学校での出前授業などの地域貢献活動を行ってい る特定非営利法人 | ②2030 年までに、まちづくりに資するグループ企業を増加させ、スルガノホールディングス全体で 15 社体制とする | 住宅雇用 | ||
KAMBARA15th へ | ③2030 年までに、まち | ||||
の参画 | づくりに資する事業でスル | ||||
ガノホールディングス全体 | |||||
の売上高を現状の 12 | |||||
億円から 13 億円増加さ | |||||
せ、25 億円を達成する |
社会 | ①2030 年までに、駿 | ||||
河重機建設の公共工 | |||||
事高を現状の9億円 | |||||
地域のインフラを支える 駿河重機建設 | 土木工事業や解体工事業による地域インフラの整備や災害 対策 | から+50%増加させ、 13.5 億円を達成する ②災害に対する強靭 | 住宅 移動手段 | ||
性を強化するため、 | |||||
BCP 会議を年4回開 | |||||
催する | |||||
働きがいのある職場の醸成 | 充実した教育体制の構築や県の優良工事表彰制度を活用した従業員の働きがい・モチベーションの向上 | 2030 年までに、スルガノホールディングス全体の従業員数を現在の 45 名から+35 名増加させ、80 名を達成する | 教育雇用 | ||
経済 | 最先端 ICT建機による効率的で 高品質な施工 | 自動制御された最先端の ICT 建機を活用した、効率的かつ高品質な施工の実践 | 2030 年までに、スルガノホールディングスの経常利益率を2021 年5月期以前の直近3期平均比で2倍にさせる | 経済の収れん |
【ネガティブ・インパクトの低減】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | ①振動・騒音・粉塵対 | ||||
策、大気・水・土壌汚 | |||||
染対策を継続し、駿河 | |||||
低騒音・低振動型 | 重機建設の各種xx | 大気 | |||
重機や防音シートの | 可・登録を維持する | ||||
環境保全対策 | 活用による振動・騒音対策、散水車による粉塵対策、エコアクション 21 に則った環境経営活動による大気・水・土壌汚染対策や CO2 排出量・廃棄物の | ②2030 年までに、駿河重機建設の売上高あたりの CO2 排出量を現状の 691kg-CO2/百万円から5%減少させ、656kg-CO2/百万円まで低減させる | 水 土壌 資源効率・ 資源安全確保 気候変動 | ||
削減 | ③2030 年まで、駿河 | 廃棄物 | |||
重機建設の廃棄物リサ | |||||
イクル率を 95%以上と | |||||
なるよう維持する | |||||
社会 | 最先端のICT 建機の | ①各種労働安全対策を | |||
安心安全かつ ジェンダーレスな職場 | 導入や各種安全への取組み、労働環境の改善、女性の積極的な採用などによる3 Kの是正かつジェンダ | 継続し、労働災害を毎年0件に抑える ②2030 年までに、女性従業員を現状の 10 名 から 15 名増加させ、25 | 健康と衛生 雇用 包摂的で 健全な経済 | ||
ーレスな職場の醸成 | 名を達成する |
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2022 年3月 29 日~2028 年 3 月 31 日 |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 設備・運転資金 |
モニタリング期間 | 6 年 0 ヵ月 |
企業概要
企業名 | スルガノホールディングス株式会社 |
所在地 | xxxxxxxxx 000-0 |
従業員数 | グループ全体 45 名(男性 35 名、女性 10 名) |
資本金 | 5,000 万円 |
グループ会社 | スルガノホールディングス株式会社(純粋持株会社) 駿河重機建設株式会社(土木工事業、解体工事業など)株式会社さくら不動産(不動産業) 株式会社 3rdplace(不動産管理業) 株式会社そこあげ(飲食業、菓子小売業) HORSEHEAD LABS 株式会社(酒類製造販売業) 株式会社スルガスマイル(道の駅運営業) |
許認可・登録・免許 | <駿河重機建設> ・建設業許可(土木工事業、とび・土工工事業、舗装工事業、解体工事業、造園工事業) ・産業廃棄物収集運搬業許可 <さくら不動産> ・宅地建物取引業免許 <そこあげ> ・飲食店営業許可 <HHL> ・酒類製造免許、酒類販売業免許 |
認証等 | <駿河重機建設> エコアクション 21、静岡県次世代育成支援企業、安全衛生優良企業、静岡市 SDGs 宣言事業所、 男女共同参画社会づくり宣言事業所、家庭応援協力企業、ふじのくに健康づくり推進事業所(シルバー事業所)、 海と日本 PROJECT 推進パートナー企業 |
主要取引先 | 鈴与建設㈱、イハラ建設工業㈱、地方公共団体、一般個人客など |
沿革 | 1960 年 xx町xxにてxx商店建材業を開業 1974 年 xxxxに移転し、名称を駿河重機建設に変更 1981 年 法人化、社名を㈲駿河重機建設とする 1989 年 駿河重機建設㈱に改組 2014 年 ㈱さくら不動産を設立 2015 年 ㈱3rdplace を設立 2021 年 スルガノホールディングス㈱、㈱そこあげを設立持株会社体制とする 2022 年 HORSEHEAD LABS㈱、㈱スルガスマイルを設立 |
(2022 年3月 29 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および特徴
スルガノホールディングスは、土木工事業を営む駿河重機建設、不動産業を営むさくら不動産、不動産管理業を営む 3rdplace、飲食業を営むそこあげ、酒類製造販売業を営む HHL、道の駅運営業を営むスルガスマイルの6社を傘下に収める純粋持株会社である。売上高構成比は駿河重機建設が約8割を占め、事業の実態は駿河重機建設に依るところが大きい。
スルガノ ホールディングス
<スルガノホールディングス全体図>
駿河重機建設 土木工事業 (78.1%) | さくら不動産 不動産業 (2.3%) | 3rdplace 不動産管理業 (2.3%) | そこあげ 飲食業 (4.7%) | HHL 酒類製造販売業 (4.7%) | ||||||
スルガスマイル | ||||||||||
道の駅運営業 | ||||||||||
(7.8%) | 土木工事業 | 解体工事業 | xx事業 | 地方創生事業 | ||||||
駿河重機建設が | (70.3%) | (6.3%) | (1.6%) | (僅少) | ||||||
7割出資 | ||||||||||
公共工事 (56.3%) | 民間工事 (14.1%) | ※()内の数字はスルガノホールディングス全体の売上に占める各項目の割合(2021年5月期実績、そこあげ、 | ||||||||
HHL、スルガスマイルに関しては見込み) |
駿河重機建設は、売上高の約8割を公共工事、約2割を民間工事が占める土木工事業者 であり、大型重機を使用した重機土木や造成工事を得意としている。最先端技術を活用した ICT建機を6台所有しており、高品質な施工を求めるゼネコンから受注を集めているほか、型枠・コンクリート・とび工事などの土木一式工事全般に豊富な施工経験がある。土木工事以外では、一般x xxビルなどの解体工事業、荒廃森林・xx放棄地を守るための農林事業、古民家再生やイベント企画などを行う地方創生事業にも取り組んでいる。
さくら不動産は、一般個人客を相手にxx地区の物件を中心とした不動産売買・賃貸や資産形成コンサルティングを行っている。不動産の知識・情報などをセミナーの開催を通じて発信したり、不動産を中心としたコミュニティイベントを開催することでエリアマネジメントにも取り組んでいる。
3rdplace は、スルガノホールディングスグループで扱っている不動産の管理を行っている。
そこあげは、xx地区で 67 年ものxxされ続けている食堂「xx館」やチーズケーキと焼き菓子の専門店「すずとら」を 2022 年2月から継承し、飲食業や菓子小売業を営んでいる。
HHL とスルガスマイルは、2022 年に新設されたグループ会社であり、それぞれ、100%xx産の原材料を使用したクラフトビールやジャパニーズウイスキーの製造販売、2022 年夏に開業予定の道の駅「トライアルパークxx」の運営を予定している。
2. 業界の動向
【i-Construction の推進】
建設業は社会資本の整備の担い手であり、社会の安全・安心を確保する地域の守り手であるにも関わらず、就業者の高齢化などにより将来的に労働力不足が予想されている。建設現場の中でも、特に土工やコンクリート工などは生産性の向上が遅れており、トンネル工事は昭和 30 年代からの約 50 年間で生産性が 10 倍となったのに対し、土工とコンクリート工はほぼ横ばいで推移している。労働者不足を解消するために、全技能労働者の約4割を占めるこれらの従事者の生産性向上が求められている。
また、建設業は全産業と比較して2倍の死傷事故率を記録している。建設現場における労働災害発生要因としては、最も多い墜落に次いで建設機械との接触による事故が多い。
このような現状を是正するために国土交通省では、調査・測量から設計、施工、検査、維持x x・更新までのすべての建設生産プロセスで ICT などを活用する「i-Construction」を推進してい る。ドローンによる 3 次元測量や ICT 建機による施工などにより、人手を要する丁張や品質・出来形管理などを効率化することで、工期短縮・省人化が期待されている。建設現場における作業者が少なくなることで建設機械との接触の危険が減るなど、安全面の向上も図られる。
スルガノホールディングスでは、土木工事現場において最先端の ICT 建機を6台導入しており、活躍の場を広げている。半自動運転で行われる施工は高品質かつ高効率であり、30 年以上労働災害0という実績にも貢献している。同社は、今後も新たな ICT 建機の導入を予定しており、政 府の施策に沿った取組みを拡大させていく方針である。
【労働環境の改善】
建設業は現場の労働環境が厳しく、「きつい」、「汚い」、「危険」という3K と言われる業界の 1つである。このようなイメージから若者が就職・定着しづらく、建設業就業者の約3割が 55 歳以上、29 歳以下は約1割となるなど高齢化が進行している。
スルガノホールディングスでは、労働環境を改善すべくxx直帰を基本とした残業時間の削減や独自休暇制度の制定、安全性の高い重機の使用などに取り組むことで、静岡県内初となる厚生労働省認定の安全衛生優良企業となり、業界のイメージを払拭しようと努めている。
以上のようにスルガノホールディングスの企業概要や特徴および同社が属する業界動向を総合的に勘案した上で、UNEP FI のインパクト評価ツールを用いて網羅的なインパクト分析を実施し、ポジティブ・ネガティブ両面のインパクトが発現するインパクトカテゴリーを確認した。そして、同社の活動 が、環境・社会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に貢献すべきインパクトを次項のように特定した。
3. インパクトの特定および KPI の設定
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>住宅、雇用
<SDGs との関連性>
8.9 2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
11.1 2030 年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
<KPI(指標と目標)>
①2030 年までに、xx地区の人口を 2021 年 9 月 30 日時点の 10,775 人から1割増加させ、11,853 人を達成する
②2030 年までに、まちづくりに資するグループ企業を増加させ、スルガノホールディングス全体で 15 社体制とする
③2030 年までに、スルガノホールディングス全体の売上高を現状の 12 億円から 13 億円増加させ、25 億円を達成する
<インパクトの内容>
スルガノホールディングスでは、「地域に貢献する 100 年企業を目指して、建設業から『まちづくり企業』へ」を合言葉に、様々な地域活性化策に取り組んでおり、グループの中核企業である駿河重機建設の企画開発室を中心に、古民家の再生や地域イベントなどまちづくりに関する取組みを企画してきた。規模が大きくなり、事業化されたものは新規事業部やグループ会社を立ち上げ、駿河重機建設が関与しなくても自走するまちづくり体制を整えている。
xx地区は東海道の宿場町であり多くの古民家が存在する。不動産を取り扱うさくら不動産や 3rdplace は、それらをリノベーションし、古民家に住んでいた人やxx宿の思いを発信する観光資源に再生することで地域の交流人口の増加を図っている。宿泊施設としてだけでなく、住居としても利用できるようリノベーションされており、安価な住宅として、地域住民やxx地区を気に入り移住を検討する若者へ提供することも予定している。交流人口や定住人口の増加を図ることで、xx地 区を活性化させることが目的であり、同地区のまちづくりに貢献している。
駿河重機建設のxx事業部では、xx放棄地を有効活用し、大麦やホップなどを栽培しており、100%xx産の原材料を使ったクラフトビールやジャパニーズウイスキーの製造も計画している。この事業は現在、2022 年夏の販売を見据え、新設した HHL が引き継いでいる。
スルガノホールディングスの代表取締役 CEO xxxxx(以下、xx代表)が立ち上げ、現在も副理事長を務める特定非営利法人 XXXXXXX15th(以下、KAMBARA15th)では、2万8千個の LED ライトで作られた高さ 25mものクリスマスツリーが夜を照らす「クリスマスドリームナイト」や自転車でxx地区に設けられたチェックポイントを巡る「サイクルロゲイニング」を開催している。また、地域まちづくり構想をテーマとした小中学校での特別授業やxxの情報発信を行うポータルサイト「ポタルxx」の運営も行っている。駿河重機建設は、このような地域貢献活動に取り組む KA MBARA15th の活動に参画しており、各種活動に人的、物的、経済的に支援している。
駿河重機建設やさくら不動産、スルガスマイルの3社は、静岡市の道の駅整備事業として 2022 年夏にオープン予定のトライアルパークxxの運営を予定している。トライアルパークxxは、公共施設などの暫定利用を希望する民間事業者が実際に一定期間利活用する「トライアル・サウンディング」という手法を用いた試行(トライアル)を重ねて進化していく新しいカタチの道の駅であ り、静岡市の入札に代表企業として駿河重機建設が、構成企業としてさくら不動産とスルガスマイルが参加している。xxを訪れるきっかけとなる施設となり、地域活性化に貢献することが期待される。
そこあげはxx地区を代表する店舗の継続に尽力している。2022 年2月にそこあげが承継した食堂「xx館」は、xx地区で 67 年ものxxされ続けていたものの、前経営者が高齢を理由に閉店を検討していた飲食店である。地元住民から閉店を惜しむ声が多く、xxの味を残すべきと判断したxxxxが屋号をそのままに、同じ場所で同じ味を提供することを決めた。チーズケーキと焼き菓子の専門店「すずとら」に関しても、後継者を探していた同店から事業を承継し、地元の味を残している。このような、そこあげによる地域に根付いた店舗を承継し、経営を継続する取組みは、地 域の賑わいを維持することに貢献する。
そのほか、従業員のフレキシブルな働き方を実現するために建設したスルガノホールディングス新社屋は、まちづくり企業としての情報を発信していく拠点としての役割も担っている。まちづくりに関するさまざまな取組みを全国に発信することで、採用面にも良い影響を与えており、これまで応募の少なかった大卒や大学院卒の学生が同社に興味を持つなど、多様な人材の確保につながっている。同社は、今後も魅力ある事業を次々に発足させ、更なる雇用を創出していく方針を打ち出している。
このように、スルガノホールディングスはグループを挙げてxxのまちづくりや住居の提供などに取り組み、xx地区の住宅へのアクセスの確保や持続可能な観光の促進に貢献している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「住宅」、「雇用」に該当する。
静岡銀行は、スルガノホールディングスの持続可能なまちづくりへの貢献度を定量的に確認するために、xx地区の人口やスルガノホールディングスのグループ会社数、グループ全体の売上高をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>住宅、移動手段
<SDGs との関連性>
9.1 すべての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエン ト)なインフラを開発する。
11.5 2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
<KPI(指標と目標)>
①2030 年までに、駿河重機建設の公共工事高を現状の9億円から+50%増加させ、13.5億円を達成する
②災害に対する強靭性を強化するため、BCP 会議を年4回開催する
<インパクトの内容>
駿河重機建設は、「地域社会と共に発展し、重機土工のプロフェッショナル集団として誇りを持ち、従業員の幸福と会社の永続を目指します。」という経営理念の下、地域貢献と重機土工の技術・品質、従業員の幸福の3点に重点を置いた経営を行っている。特に、地域に根差した中小企業であるため同社にとって地域貢献は最重要課題となっている。
駿河重機建設の売上の約9割を占める土木工事業は、重機を用いた大掛かりな土木工事を行っており、県内の道路工事などといった地域のインフラを整備する工事から宅地の造成工事やと び・土工工事などの住宅やビルを建設するための工事まで、幅広い施工実績がある。老朽化した建物の解体工事も請け負っており、街の新陳代謝の促進につながっている。こうした土木工事や解体工事は、地域の発展に欠かせないものであり、スルガノホールディングスの目指すべき地域への貢献に直結している。
そのほか、駿河重機建設では静岡県交通基盤部の土木関係総合評価落札方式に則ったBCP
(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定し、災害時の早急な復旧対応を準備している。これは、従業員の安全性や事業の継続性を高めることを目指したものだが、自社のコア事業が罹災した道路の復元などといった地域インフラの復旧に大きく貢献できる土木工事業だからこそ策定しており、災害時、いち早く復旧するための備えとなっている。災害協定も組合や協会を通して静岡県や静岡市と締結しており、迅速な対応を取れるよう万全な体制を整えている。また、災害時
にも安全に作業できるよう、最新のラジコンユンボを導入予定であり、平時は通常のユンボとして、有事には300mほど離れた場所から遠隔操作できるユンボとして利用を想定している。
このように、駿河重機建設はコア事業である土木工事業を通して、地域インフラの整備や地域防災に貢献している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「住宅」、「移動手段」に該当する。
静岡銀行は、駿河重機建設の地域への貢献度を定量的に確認するために、公共工事高や BCP 会議の回数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>
教育、生物多様性と生態系サービス、気候変動
<SDGs との関連性>
4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
11.5 2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
14.1 2025 年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.5 2020 年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の 10 パーセントを保全する。
15.2 2020 年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
<KPI(指標と目標)>
①2030 年までに、自伐型林業で5ha の山林を再生する
②2030 年までに、KAMBARA15th と共同で 15 件の海岸清掃活動を行う
③2030 年までに、治山工事を累計 25 件施工する
<インパクトの内容>
スルガノホールディングスでは、まちづくりに必要な社会面に加えて環境面にも配慮することでxx地区の持続可能性を高めている。移住促進やイベントによる地域活性化、インフラの整備などといっ
た人々が住みよいまちづくりだけでなく、海や山などの自然も保護することで、災害にも強く永続的な街の形成を図っている。
駿河重機建設のxx事業部では、人の手が加えられなくなり豪雨などで土砂崩れの危険がある山林を自伐型林業で整備する農林再生に注力している。自伐型林業とは、長期間に渡る多間伐施業に取り組み、高品質材を生産することで採算性と環境保全を両立する持続可能性の高い林業である。自伐型林業によって再生された山林は、土砂崩壊を抑制する小規模な砂防施設の効果を発揮するため防災面での活躍も期待でき、大気中の CO2 削減にも貢献する。
<一般的な林業と自伐型林業の違い>
資料:特定非営利活動法人 持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会
xx代表が副理事長を務め、駿河重機建設が参画している KAMBARA15th も、xx地区の活性化を目的とした組織であるが、海岸環境を保全する海岸協力団体に指定されており、海岸の清掃活動を伴う「トライアルマルシェ」を開催するなど、地域住民に対して環境保全教育にも力を入れている。
また、土木工事に関しても道路工事などの街の整備だけでなく、用宗から田子の浦までの海岸保全工事や堰堤をつくる治山工事といった公共工事にも多く携わっており、自然保護に貢献している。
このように、スルガノホールディングスの自伐型林業や海岸清掃活動を伴うイベントの開催、海や山を保全する公共工事は、自然保護や CO2 削減、減災などに資する取組みである。これらの取組みは、インパクトレーダーの「教育」、「生物多様性と生態系サービス」、「気候変動」に該当する。
静岡銀行は、スルガノホールディングスの自然保護活動を定量的に確認するために、山林の再生面積や海岸清掃活動の実施回数、治山工事の施工件数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>教育、雇用
<SDGs との関連性>
4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、スルガノホールディングス全体の従業員数を現在の 45 名から+35 名増加させ、80 名を達成する
<インパクトの内容>
駿河重機建設では、従業員の技術力や知識の向上、県の表彰制度を活用した働きがいの創出や手厚い福利厚生によるモチベーションの向上に力を入れている。
駿河重機建設は土木工事をはじめとした多くの工事を請け負っており、必要な資格や技能も多岐にわたるため、従業員には施工管理技士(土木、建設機械、造園、管工事)や技能講習
(建設機械運転、小型移動式クレーン、不整地運搬車運転、玉掛け、足場組立てなど)といった資格の取得を推奨しており、必要な費用を同社が負担するなどの支援を行っている。現場の従業 員だけでなく、事務員にも建設業経理の研修に参加させるなど、能力の向上を図っている。
また、静岡県の交通基盤部・経済産業部による優良工事表彰も活用している。駿河重機建設の従業員が表彰されるようサポートは惜しまず、ほぼ毎年度、同社から受賞者を出し、従業員の士気を高めている。
福利厚生面も充実しており、退職金制度などといった一般的な制度に加え、企業型確定拠出年金や従業員の養老保険への加入、全従業員が利用できる軽井沢の保養所の所有、さまざまな特典を受けられる福利厚生サービスへの加盟などを行い、従業員のモチベーションを高めている。
このようなスルガノホールディングスの取組みは、働きがいのある職場の醸成に貢献している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「教育」、「雇用」に該当する。
静岡銀行は、スルガノホールディングスの働きがいある職場の醸成度合いを定量的に確認するために、従業員数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>経済
<インパクトレーダーとの関連性>経済の収れん
<SDGs との関連性>
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、スルガノホールディングスの経常利益率を 2021 年 5 月期以前の直近3期平均比で2倍にさせる
<インパクトの内容>
駿河重機建設は、2016 年9月に静岡県で初めて ICT 建機を導入した。ICT 建機とは、ICT
(情報通信技術)を用いた建設機械であり、2D・3D データや位置情報などを活用することで 効率化・省人化を実現できると期待されている。国土交通省が建設業の生産性向上を狙い 2016 年度から本格的に推進しているプロジェクトである i-Construction の中でも ICT 建機の活用は、中心的な施策となっている。
<i-Construction のトップランナー施策>
資料:国土交通省「i-Construction の推進」
ICT 建機には、2D・3D の別とマシンガイダンス・マシンコントロールの別があり、4種類に分類される。マシンガイダンスタイプは施工のためのナビゲーションが表示されるのみであり、操作はオペレータが行うが、マシンコントロールタイプは施工自体が半自動運転となる。
<ICT 建機の分類>
マシンコントロール
(半自動運転)
マシンガイダンス
(ナビゲーション表示のみ、操作はオペレータが行う)
3D(3次元)データを活用
2D(2次元)データを活用
・比較的安価
・3Dデータが不要で導入しやすい
・オペレータに技術が必要
・丁張・検測が必要
・場所が変わるとリセット
・丁張・検測が不要
・場所が変わってもリセット不要
・2Dよりも高価
・3Dデータの作成が必要
・オペレータに技術が必要
・3Dデータが不要で導入しやすい
・仕上がりが綺麗
・丁張・検測が必要
・場所が変わるとリセット
・仕上がりが綺麗
・丁張・検測が不要
・場所が変わってもリセット不要
・高価
・3Dデータの作成が必要
駿河重機建設で使用している ICT 建機はすべて3D データを活用したマシンコントロールタイプであり、導入コストは大きいものの、丁張(施工の目印となる杭を打つ作業)や検測(施工が正しくできているか確認する作業)が不要となり、オペレータ以外の作業員が現場にいる必要がないた め、最も効率が良く生産性が高いモデルとなっている。施工が半自動化されるため、オペレータの技 量に依らず施工面の仕上がり品質も良くなる。
ICT 建機を活用する上で重要になる3D データは、コマツカスタマーサポート株式会社に外注しており、ドローンにより撮影した画像から取得した点群データを加工することで作られている。完了検査においても、ドローンで取得したデータから作成した3D データを提出するだけで済むため、大幅な効率化が図られている。
<土木工事の施工手順>
現在では、35 台所有している建設機械のうち6台が ICT 建機であり、中小建設業者としては高い所有割合となっている。特に、コマツ社製の大型バックホウ PC300i-11 を自社所有している建設業者は非常に珍しい。駿河重機建設では、今後も ICT 建機を拡充し、さらなる効率化を進めていく方針である。
このような、駿河重機建設の ICT 建機を活用した土木工事は、効率化・省人化・高品質化が図られており、高い経済生産性を実現している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「経済の収れん」に該当する。
静岡銀行では、スルガノホールディングスの高い経済生産性を定量的に確認するために、経常利益率をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>
大気、水、土壌、資源効率・資源安全確保、気候変動、廃棄物
<SDGs との関連性>
6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
①振動・騒音・粉塵対策、大気・水・土壌汚染対策を継続し、駿河重機建設の各種許認可・登録を維持する
②2030 年までに、駿河重機建設の売上高あたりの CO2 排出量を現状の 691kg-CO2/百万円から5%減少させ、656kg-CO2/百万円まで低減させる
③2030 年まで、駿河重機建設の廃棄物リサイクル率を 95%以上となるよう維持する
<インパクトの内容>
駿河重機建設は、環境経営方針を策定し、環境理念や7つの環境保全への行動指針を定めている。具体的な環境保全活動は①電気使用量削減実施事項、②ガソリン・軽油使用量削減事項、③廃棄物排出量の削減及びリサイクル率上昇実施事項、➃水使用量削減実施事項、⑤社会貢献活動実施事項の5つに分かれており、未使用場所の消灯徹底や昼光の積極的利用、エコドライブ・エコ操作の徹底、廃棄物の適正処理・分類、節水の徹底、事務所・工事現場周辺の清掃徹底などを行っている。
事務所の照明器具は全て LED 化されており、土木工事で使用する重機もハイブリッドモデルがないものを除き全てハイブリッド重機とすることで CO2 排出量を抑制している。最先端の ICT 建機は効率的な施工が可能なため、稼働時間を短縮でき使用燃料を削減することで事業活動に伴う
CO2 の排出を抑制している。解体工事現場では、低騒音・低振動型の重機や防音シートを活用することで騒音・振動対策を施しており、粉塵対策として散水を行っている。散水に利用する水は水道水だけではなく、川の水を散水車で運び使用することで、水道水の使用量を大幅に削減してい る。公共工事として河川改修工事などを行う際は、水に混じる汚泥をタンク内で沈殿させ分離するノッチタンクを活用することで、排水から汚泥を取り除くなど適正に処理している。
<駿河重機建設 環境経営方針>
環境理念
駿河重機建設株式会社は事業活動の全てにおいて、近年、より深刻化している地球影響を自覚するとともに、その影響を最小限に止める努力を惜しみません。
また、環境経営システムを構築・運用・維持することにより、環境保に推進いたします。
環境保全への行動
1.廃棄物の排出量の削減及び適切なリサイク
2.再生資源を有効利用し、グリーン購
3.燃料使用効率の高い設備・機
4.環境関連法規等を遵守
5.環境経営システ
6.地域社会
7.本
CO2 排出量や産業廃棄物リサイクル率、水使用量、社会貢献活動に関しては数値目標も計画している。2020 年度の CO2 排出量は大幅な未達となったが、これは事業規模が急拡大したことに伴う CO2 排出量の増加であり、売上高当たりで算出すると前年度の 73%まで低減させることに成功している。
<駿河重機建設 数値目標と実績>
項目 | 単位 | 2020年度目標 | 2020年度実績 | 達成率 | |
CO2 | 電気使用量 | kWh | 11,931 | 9,407 | 126.8% |
ガソリン使用量 | L | 19,239 | 22,216 | 86.6% | |
軽油使用量 | L | 168,098 | 259,345 | 64.8% | |
総排出量 | kg-CO2 | 496,529 | 725,168 | 68.5% | |
産業廃棄物リサイクル率 | % | 100.0 | 96.3 | 103.8% | |
水使用量 | ㎥ | 76 | 67 | 113.4% | |
社会貢献活動 | 回 | 2 | 2 | 100.0% |
項目 | 単位 | 2019年度実績 | 2020年度実績 | 前年度比 |
売上当たりCO2排出量 | kg-CO2/百万円 | 946 | 691 | 73.0% |
また、駿河重機建設は環境関連法規の遵守も徹底しており、廃棄物処理法や建設リサイクル法などに適応している。
<駿河重機建設に関連する法規>
環境関連法規 | 内容 |
廃棄物処理法 | 委託契約書作成、保管基準、マニフェスト交付・保管、交付状況等報告 書の提出、廃棄物委託処理先の現地確認 |
建設リサイクル法 | 建築物等の分別解体実施義務、事前届出、特定建設資材廃棄物の再資源 化義務 |
騒音・振動規制法 | 届出、規制値の遵守 |
オフロード法 | 基準値に適合した特定特殊自動車の使用義務、点検整備適正燃料の使用 |
自動車リサイクル法 | 適正に専門業者への引き渡し |
自動車NOx・PM法 | 規制対象車両の登録禁止・指定地域通行禁止 |
グリーン購入法 | 環境負荷低減に資する製品・サービスの調達を推進する |
浄化槽法 | 定期検査、保守点検、清掃 |
労働安全衛生法 | 届出、報告、安全衛生教育の実施、安全衛生推進者の選任、石綿障害予 防規則による調査、分析、記録、教育 |
フロン排出抑制法 | 登録充填回収業者による適切な引き渡し、冷媒フロン類のみだり放出禁 止、エアコン機器の簡易点検 |
これらの活動が認められ、駿河重機建設は環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステムであるエコアクション 21 認証を取得した。
このように、駿河重機建設は騒音・振動対策や粉塵対策、大気・水・土壌汚染対策を施すことで環境保全に貢献している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「大気」、「水」、「土壌」、「資源効率・資源安全確保」、「気候変動」、「廃棄物」に該当する。
静岡銀行は、駿河重機建設の環境保全活動を確認するために、法令に則り各種許認可・登録を維持すること、売上高当たりの CO2 排出量、廃棄物のリサイクル率をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>
健康と衛生、雇用、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)>
①各種労働安全対策を継続し、労働災害を毎年0件に抑える
②2030 年までに、女性従業員を現状の 10 名から 15 名増加させ、25 名を達成する
<インパクトの内容>
駿河重機建設では、従業員の幸福に重点を置いた経営を行っている。特に、労働災害に関しては、重機を扱っているため少しのミスが重大な事故につながりやすいことから、労働災害の未然防止を明言した安全宣言を策定し、各種安全対策を徹底している。
工事現場では、全従業員・全協力会社に対して現場への送り出し教育を実施している。新規の現場に取り掛かる際に、工事の概要やスケジュール、現場のルール、危険な箇所、作業する上での注意点などを職長から実際に作業する従業員に伝達し、労働災害の発生を防止している。
毎月末開催される安全衛生委員会のミーティングでは、各現場パトロールの実施報告や現場工程進捗度・安全衛生災害防止対策の現場ごとの発表、リスクアセスメント(5S、ヒヤリハット)についての事例紹介・ビデオ視聴などが行われている。このような労働災害防止の内容以外にも、健 康づくりに向けたレシピの紹介や日々の健康管理、メンタルヘルスについても話し合われ、現場ごとの有給休暇取得予定者の確認から現場の改善要望まで何でも相談できる場となっている。駿河重機建設では、従業員のワークライフバランスの観点からxx直帰を基本としており、社長の理念・考え方や業界動向、事務連絡など全従業員への伝達事項も安全衛生委員会のミーティングで伝えられている。
そのほかの労働災害対策としては、安全な重機の利用が挙げられる。駿河重機建設の重機はすべてアラウンドビューモニターが搭載されており、車体が大きく死角の多い重機でも安全に操作できるよう工夫されている。また、ICT 建機を使った現場では、丁張や検測を行う作業員が不要であるため、被害者となり得る人を現場に配置することがない構造となっている。オペレータ自身も、半自動 運転であるため重機から降りて作業面を確認する必要がなく、地面から高い位置にあるキャビンへの乗り降りの回数が格段に減ることで怪我の防止にもなっている。
このような安全への取組みを徹底することで駿河重機建設は 30 年以上労働災害が発生しておらず、2015 年 11 月に全国で7番目、県内では初となる厚生労働省認定の安全衛生優良企 業となった。現在でも全国で 39 社しか認定を取得できておらず、半数近くが大手企業である中、駿河重機建設は3回目の更新を済ませ、高い水準の安全衛生を維持している。
また、駿河重機建設は従業員の労働環境の改善にも力を入れており、次世代育成支援対策推進法に基づいた一般事業主行動計画を作成している。
<駿河重機建設 一般事業主行動計画>
この計画の中で目標を定めている通り、男性の子育て支援や介護・看護のしやすい制度の充 実、所定外労働の削減、有給休暇取得の促進などに取り組んでいる。実際に、同社の就業規則では法定を上回る内容の各種休暇制度が定められており、育児休暇や介護休暇などが利用されている。年次有給休暇に関しても、計画的な取得を推進するためのプラスワン休暇制度を就業規則の中で制定することで取得を促している。以上のような取組みが認められ、静岡県次世代育成支 援企業の認証も取得した。
また、スルガノホールディングスでは男女平等な環境の形成も推進しており、事務職だけでなく一般的に男性が多いと言われる工事現場における女性従業員の積極的な採用などジェンダーレス化も図っている。重機やダンプを操作する作業員として女性が活躍している。グループ全体で、女性従業員 10 名のうち4名が統括総務や事業部長などのポストに登用されるなど、女性管理職の増加においても一定の成果を出している。
このようなスルガノホールディングスの取組みは、従業員が安心して働ける職場の醸成に貢献し、ジェンダーレスな社会の形成に資する。これらの取組みは、インパクトレーダーの「健康と衛生」、「雇用」、「包摂的で健全な経済」に該当する。
静岡銀行は、スルガノホールディングスの安全性や女性の活躍推進度合いを定量的に確認するため、労働災害の発生件数と女性の従業員数をモニタリングしていく方針である。
4. 地域課題との関連性
スルガノホールディングスは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、 2030 年の売上高を 25 億円に、従業員数を 80 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この目標を達成することによって、スルガノホールディングスは、静岡県経済全体に年間 40 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
【静岡県産業成長戦略 2022】
スルガノホールディングスが所在する静岡県は、2022 年2月に「静岡県産業成長戦略 2022」を公表した。新型コロナにより顕在化した東京一極集中の弊害やデジタル対応、脱炭素社会の急速な進展への対応、人口減少・少子高齢化の進行、激甚化する災害対応、自動車産業などの構造変化といった静岡県が直面する課題に対して、「東京時代から静岡時代へ~新しい生産と消費の循環で SDGs を達成~」を基本理念とし、需要面では「生活空間の拡大と新しい物流網の 構築」を、供給面では「DX と脱炭素への積極的な投資」を目指す姿として施策を展開していく方 針である。
<静岡県産業成長戦略 2022 の中心となる8つの柱と主な施策>
(1)新たな広域経済圏「山の洲」の形成 | (2)リーディング産業への重点投資 |
・「バイ・山の洲」の展開 ・新たな物流、商流、情報流の構築 ・観光分野における「ふじのくに経済圏」づくり | ・プラットフォームの構築 ・リーディングセクターの競争力強化 ・デジタル人材の確保、育成 |
(3)企業誘致と県内への定着 | (4)新たな生活様式を踏まえた個人消費の拡大 |
・マザー工場、研究所立地推進 ・工業用地の確保 ・実証フィールドの形成促進 ・首都圏ICT企業の誘致 | ・新しい働き方の実践 ・生活空間の拡大 ・人々を惹きつける豊かな地域資源の新統合 |
(5)環境と経済成長が両立した循環型社会への移行 | (6)成長分野・領域への投資促進(中小から中堅企業へ) |
・脱炭素型産業構造への転換 ・中小企業の脱炭素化への支援 ・サーキュラーエコノミー(循環経済)への対応 | ・オープンイノベーションの推進 ・研究開発の推進、人材への投資 ・継続的な設備投資の促進 |
(7)中小・小規模企業の事業再構築・再生による経営の強靭化 | (8)中小企業の事業継続に向けた強靭化 |
・事業の付加価値向上 ・事業継続への支援 | ・人材の確保、育成 ・BCP策定促進 |
戦略の中心となる8つの柱に対して、スルガノホールディングスのまちづくりや ICT 建機の活用、自然保護活動、防災対策といった取組みの多くが施策に沿ったものとなっている。特に、同社が最も注力しているまちづくりによる地域活性化、人口増加、雇用の創出は「新たな生活様式を踏まえた個人消費の拡大」や「中小・小規模企業の事業再構築・再生による経営の強靭化」、「中小企業の事業継続に向けた強靭化」など多くの分野の課題の解決に貢献している。
【SDGs xx都市】
静岡市は、SDGs の理念に沿った基本的・総合的取組を推進しようとする都市・地域の中から、特に、経済・社会・環境の3側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域として内閣府より選定されている。同市は、SDGs の推進を「普及啓 発」、「情報発信」、「市政への組込み」の 3 段階に分けて進め、2018 年度から 2020 年度まで の 3 年間は SDGs の達成に向けて SDGs を知ること、理解することが最初の一歩であると考え情報発信・普及啓発に重点的に取り組んできた。2021 年度からは、個人、団体、企業がつながり、連携して SDGs 推進が図られるよう、「知る・理解する」の普及啓発から「行動する・連携する」のパートナーシップにステップアップしている。その中で、市内の事業所や団体等による SDGs 活動を促進し、優良事例の発掘と横展開を図るとともに、市内事業所・団体などにおける SDGs 取組み状況 を測定し、国内外に向けて情報発信することを目的に「静岡市 SDGs 宣言事業所」を認定している。
駿河重機建設も静岡市の SDGs の推進に賛同しており、安心安全かつジェンダーレスな職場の醸成や環境保全活動、自然保護活動などの取組みを宣言し、静岡市 SDGs 宣言事業所に認 定された。このような情報発信は市内の事業者や団体の SDGs の達成を促進することにつながり、静岡市の SDGs の促進に資する活動である。
5. マネジメント体制
スルガノホールディングスでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、組織横断的なプロジェクトチームを結成。xxxxが陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xxxxを最高責任者とし、xxxx取締役 CFO を実行責任者とした統括本部内に設置されたプロジェクトチームを中心として、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。
最高責任者 | 代表取締役 CEO xxxx |
実行責任者 | 取締役 CFO xxxx |
担当部署 | 統括本部 |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とスルガノホールディングスの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行とスルガノホールディングスが協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するスルガノホールディングスから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
研究部 研究員 xx xx
x400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x XXX:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 3 月 29 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: スルガノホールディングス株式会社に対する ポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトフ
ァイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行がスルガノホールディングス株式会社(「スルガノホールディングス」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。 PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じ て促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のこと
をいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、スルガノホールディングスの持ちうるインパクトを、UEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、スルガノホールディングスがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるスルガノホールディングスから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることと
し、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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