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「契約書とは」
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目次
1.契約書とは
2.契約書全体の構成
3.契約と関連の深い文書
4.まとめ
2
1.契約書とは
契約書とは、契約が締結されたことを証明した文書です。
契約書を締結する際は、当事者のどちらかがドラフトを作成し、そのドラフト上で
お互いにコメントのやり取り(契約交渉)を行って、話がまとまったらそれを最終版として契約書にお互い記名押印するのが一般的です。
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分かりました。では報酬額の修正を反映した契約書を最終版として 締結を進めていきましょう。
<契約書作成の流れ>
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企業が契約書を作成するのは、契約書がもつ3つの機能を活用するためです。
①確認機能
契約内容を可視化することで、取引の内容・リスクを相互に確認する
②紛争予防機能
契約内容に関して当事者間の紛争を予防する
③証拠機能
訴訟に発展した際に、重要な証拠となる
契約書ドラフトをどちらの当事者が作成すべきかについては、状況によって異なります。
・(可能であれば)自社で作成した方がよい
→相手方から提示されるドラフトには、相手方に有利な条項・自分に不利な条項が 盛り込まれる可能性が高いです。契約交渉の中で修正を求めることはできますが、すべて自社の思い通りに書き換えることは困難でしょう。
・当該取引に慣れている側が作成する
→契約書において想定されている取引に慣れている当事者は、ひな形を保有していることがあります。
契約書ひな形には、実務経験に基づき、問題となりやすい事項が反映されていることが多いです。そのため、自社が作成した方がよいのは前提となりつつ、当該取引に慣れている側が保有しているひな形を利用するのは、合理的な考え方の一つでしょう。
2.契約書全体の構成
法務担当者として、契約書を読めるようになるためには、まず、契約書の構成を知ることが大切です。
原則として、契約書に何を書くかは、当事者の自由であり、
法律が定めた構成は存在しません。
しかし、契約書に関して、一般的に共通する構成が存在しますので、まずはこの構成を頭に入れておきましょう。
それでは、次ページにて構成を詳しく解説します。
売買取引基本契約
オオカミ(以下「売主」という)とヒツジ (以下「買主」という)は、売主と買主との 間における第1条に定める本件商品の売買について、以下のとおり取引基本契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条 (目的物)
本契約の目的となる商品(以下「本件商品」という) は以下のとおりとする。
⑴ ●●
⑵ ●●
第2条 ~~~第3条 ~~~第4条 ~~~
本契約締結を証するため、本書2通を作成し、売主及び買主が記名押印のうえ、各1通を保管する。
①表題(タイトル)
②前文
③本文
④後文
売主 住所 ●●
氏名 オオカミ
買主 住所 ●●氏名 ヒツジ
2021年●月●日
⑤契約締結日
⑥署名欄
※上記のほか、必要に応じて⑦ 別紙、⑧収入印紙が入るときもあります。
表題(タイトル)の付け方について、法令等が定めたルールはなく、
基本的にはいかなるタイトルであろうとも問題ありません。
しかし、タイトルは、取引の内容が端的に分かる記載とすることが望ましいです。なお、ビジネス上よく使われる契約書については、既に「型」がありますので、 基本的にはそうした慣習に従ってタイトルをつければよいでしょう。
例: 金銭消費貸借契約書/業務委託契約書/秘密保持契約書 など
ただし、上記のような典型的なタイトルだけでは取引の内容が分かりにくい場合は、
「webサイト記事制作に関する業務委託契約書」のように補足説明を追加するケース
もあります。
契約書の前文には、契約に関する基本的な事項を記載します。
①例文
株式会社●●(以下「甲」という。)と株式会社●●(以下「乙」という。)は、
甲が乙に対して、顧客を紹介し、もって乙の販売活動の促進を図ることを目的として、
以下のとおり顧客紹介契約(以下「本契約」という。)を締結する。
②記載すべき事項
・当事者の氏名(名称)
・当事者が予定している取引の内容(簡潔に)
・ 契約を締結する目的
・ 本文の内容にて契約を締結する旨 など
契約書の本文には、主に、以下の事項を記載します。
・取引の内容
・本契約における相互の権利義務の内容
・一般条項|解除条項、損害賠償条項、管轄条項など
「取引の内容」「相互の権利義務の内容」に、具体的に何を記載するのが望ましいかについては、契約類型ごとにポイントが異なります。
具体的な取引の内容に応じて、自社がどんな権利をもちたいか、また、相手方にどのような義務を負わせるべきか、といった観点から本文中に必要な事項を記載しましょう。
本文中に記載する事項としては、各契約類型や取引内容に応じて必要となる事項と、
契約類型にかかわらず、一般的に必要となる事項があります。後者を「一般条項」といいます。
契約書の後文には、以下の事項を記載します。
ただし、書面での契約・電子契約で内容が異なります。
書面の場合 |
①例文 本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙それぞれ記名押印のうえ、各自1通ずつを 保管する。 ②記載すべき事項 ・契約書作成の目的 →本契約の成立を証するため ・ 契約書の通数 ※当事者の数と同じ通数を作成するのが一般的 →本書○通を作成し ・作成者と契約締結の方法 →甲乙それぞれ記名押印(署名捺印)のうえ ・ 保管者 →各自1通ずつを保管する |
電子契約の場合 |
①例文 本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙それぞれ電子署名を施し、 各自その電磁的記録を保管する。 ②記載すべき事項 ・契約書作成の目的 →本契約の成立を証するため ・電磁的記録で契約書を作成する旨 →本書の電磁的記録を作成し ・作成者と契約締結の方法 →甲乙それぞれ電子署名を施し ・ 保管者 →各自その電磁的記録を保管する |
「契約締結日欄」には、実際に契約書が作成された日を記載するのが原則です。バックデート(実際に締結した日より前の日を締結日とする)は避けましょう。
厳密には、署名捺印・記名押印を行った日と考えられます。
そのため、企業によっては、署名捺印・記名押印をするときに、あわせて日付を記入する運用をとっている場合があります。
なお、契約締結日の記載を忘れたとしても、その契約書が無効になるわけではありません。
しかし、(契約書の前文等に契約締結日の記載がなかった場合は)契約成立の日を
証明することが難しくなる点に注意が必要です。
当事者の署名捺印・記名押印を最後に記載します。
法人であれば、代表取締役などの代表の署名捺印・記名押印をします。
・署名捺印|手書きのサインによって当事者名を記載し、印鑑を押すこと
・記名押印|署名以外の方法(例:PCで入力したものを印字)によって当事者名を記載し、印鑑を押すこと
※「捺印」は「押印」と同じ意味ですが、記名の場合は押印、署名の場合は捺印と使い分けます。
契約書に署名捺印・記名押印を行うのは、署名がある契約書・押印が
なされた契約書は、訴訟において、偽造などを示す特段の事情がない限り、契約が有効に成立したものとして扱われるためです。
つまり、口頭のみでの契約などと比較して、契約成立の有効性をより確実に証明することができるのです。(民事訴訟法228条4項参照)
列挙すべき内容が多すぎて、契約書に記載すると読みづらくなる場合などは、
「別紙」を作成して、契約書本体に添付することもあります。
<別紙をつける場合の例>
・売買取引基本契約において、目的物が多くて本文中に記載すると読みにくい場合
・システム開発委託契約などで、目的物の詳細な仕様について本文中に記載すると読みにくい場合
売買取引基本契約
第1条 (目的物)
本契約の目的となる商品(以下「本件商品」という) は別紙1のとおりとする。第2条 ~~~
第3条 ~~~
2021年●月●日
売主 住所 ●●
氏名 オオカミ
買主 住所 ●●氏名 ヒツジ
別紙1
⑴~~~
⑵~~~
⑶~~~
⑷~~~
⑸~~~
⑹~~~
⑺~~~
⑻~~~
⑼~~~
⑽~~~
契約書が印紙税法上の課税文書に該当する場合、収入印紙を貼付する必要があります(収入印紙を購入→貼付という方法で税金を支払う)。
契約書の場合、原本を2通作成し各自で保管するという対応が多く行われていますが、
契約書が課税文書に該当する場合は、2通とも収入印紙を貼付する必要があるので、注意が必要です。
※ただし、原本は1通のみで残りは写し(コピー)の場合は、原本1通のみに印紙を貼付すれば足ります。
印紙税の負担については、文書を保管する者が各自で印紙を貼付して納税するというのが一般的です。
収入印紙の貼付が必要な契約書としては、以下の例が挙げられます。
・不動産売買契約書、不動産交換契約書
・土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書
・金銭消費貸借契約書
・取引基本契約書
収入印紙の貼る場所について、法律上の決まりはありませんが、表題付近の空きスペースに貼るのが一般的です。
収入印紙を貼った後は、必ず「消印」を押さねばならないので、忘れないように気を付けましょう。(印紙税法8条2項)
売買取引基本契約
消
印
第1条 ~~~第2条 ~~~第3条 ~~~第4条 ~~~
2021年●月●日
売主 住所 ●●氏名 オオカミ
買主 住所 ●●氏名 ヒツジ
忘れないこと!
印紙税が課税されるのは、紙媒体で作成される文書のみであり、 電子データによって作成される書面については課税されないため、収入印紙を貼付する必要はありません。
ゆえに、電子契約を活用すると印紙税を払わないで済むため、紙で契約を締結するケースよりもコストの削減ができます。
特に、不動産取引に関係する契約など、
高額な印紙税を求められる取引が多い会社にとっては、大きなメリットになるでしょう。
電子書面に印紙税がかからないのは、電子書面を作成することが、
印紙税法が定める課税文書の「作成」に当たらないと理解されているためです。
3.契約と関連の深い文書
契約、すなわち「当事者間による意思表示の合致」が示されている文書であれば、契約書の一種といえます。
したがって、表題に「契約書」とついていなくても、契約書に分類されるものもあります。
ここでは、契約書というタイトルではないものの、
契約書の一種といえる文書・契約書と関係の深い文書をいくつか紹介していきます。
※注意
ある文書がどの法律文書に該当するかは、タイトルではなく内容で判断されます。
そのため、実際に目の前にある文書がどの法律文書かは、個別に判断しなければなりません。ここでは、一般論として、契約書の一種といえるケースが多いものを紹介します。
法律用語としての「覚書」は、多くの場合「簡潔な内容の契約書」を指します。
覚書は、合意内容を書面に残し証明するものであり、契約書の一種といえます。
タイトルに「覚書」とあっても、当該書面の内容が「当事者同士の意思表示の合致」証明するものであれば、契約書であることには変わりません。
簡潔な内容について作成するのが覚書の一般的な特徴ですが、
・内容として非常に重要なことが定められる可能性もあること
・法的拘束力は通常の契約書と変わらないこと
には注意が必要です。
覚書は、例えば、締結済の契約書に対し、修正や変更を行いたい場合などに使われます。
Aさんとの契約書では、「web記事の執筆を委託する」と業務内容を定めていたけど、
「商品のパンフレット制作」も追加でお願いしたいなぁ…。
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上記の例のように、締結済である契約書の一部を変更したい場合、契約を改めて締結しなおすことでも変更可能です。
しかし、覚書による変更とすることで、一から新しい契約書を作成する手間がなくなります。
そのため、覚書で対応できそうな変更や修正であれば、覚書を用いるほうが効率的です。
覚書に関連し、「原契約」という用語も覚えておきましょう。
原契約とは、「最初に締結した契約」を指します。
覚書で変更の対象となった、もともとの契約を指す言葉としてよく使われます。
原契約
覚書
売買取引基本契約
第1条 (目的物)
本契約の目的となる商品(以下「本件商品」という) は別紙1のとおりとする。第2条 ~~~
第3条 ~~~
2021年●月●日
売主 住所 ●●氏名 オオカミ
買主 住所 ●●
氏名 ヒツジ
覚書
オオカミ(以下「売主」という)とヒツジ
(以下「買主」という)とは、2021年●月
●日付で締結した売買取引基本契約書(以下「原契約」という)の一部について、以下のとおり覚書を締結する。
内容を 一部変更
誓約書・念書は、一般的には、作成者が何らかの事項を提出先に約束することを 内容とする書面(=作成者が提出先に対して一方的な義務を負うことを作成者側が認めることを証する書面)です。これに対して、契約書は、原則として、
双方向の義務を発生させる書面である点に違いがあります
(ただし、贈与契約など一方のみが義務を負う契約書も存在します)。
念書・誓約書の使い分け方に明確なルールはありませんが、
・フォーマルな書面(提出先が企業の場合など)では「誓約書」
・プライベートな書面(個人間の借金の場合など)では「念書」
が使われることが多い傾向にあります。
誓約書の例 |
・入社時の誓約書 ・退職時の誓約書 ・秘密保持の誓約書 |
念書の例 |
・借金の返済に関する念書 ・養育費の支払いに関する念書 ・財産分与に関する念書 |
合意書・同意書は、当事者の間で何らかの事項を合意(同意)する際に締結する書面です。
ただし、「合意書」が当事者間で話し合って決めた内容をまとめた書面であるのに対して、
「同意書」は一方の当事者から別の当事者に対して提出される書面であるという違いが
あります。
法的な機能としては、両方とも「契約書」と同じです。
合意書の例 |
・ トラブルに関する和解合意書 ・ 隣地間での境界確定に関する合意書 ・ 離婚合意書 |
同意書の例 |
・個人情報の取扱いに関する同意書 ・インフォームドコンセントに関する同意書 ・ 未xx契約同意書 |
注文書とは、発注側が「申込み」の意思を示す書類です。発注書とも呼ばれます。一方、注文請書(ちゅうもんうけしょ)とは、受注側が注文書による申込みに
ついて、「承諾」する意思を示す書類です。
契約は、一方の「申込み」に対して、もう一方が「承諾」をすることで成立します。
そのため、注文書と注文請書はセットで契約書という扱いになります。
web記事執筆の業務をお願いしたいです。
注文書を発行しますので、
ご検討よろしくお願いします(申込み)
注文書
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喜んでお引き受けいたします。注文請書を発行します(承諾)
注文請書
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注文書などに関連し、「基本契約」「個別契約」という用語もこの機会に覚えておきましょう。
・基本契約
→ある取引先と継続的な取引をする際に、すべての取引に共通する事項を定める契約です。 継続的な取引を行う際、毎回契約条件を交渉し合意してという手順を踏むことは面倒です。そこで、取引をより迅速に進めるために締結されるのが、基本契約です。
「取引基本契約/売買取引基本契約」といったタイトルの契約書が基本契約に該当します。
・個別契約
→個々の取引に際して締結される契約です。個別契約では、基本契約で定めていない事項で、個々の取引上確認が必要な事項を記載した書面を作成します。
「注文書(発注書)&注文請書」といった書面が個別契約に該当します。書面のタイトルに「契約」といった文字は含まれていませんが、これらも契約書の一種なのです。
A社は、いろいろな物品の販売価格がお手ごろだな。よし! オフィス用品はすべてA社から買おう。 まずは、椅子とデスクとモニターが必要だな。
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基本契約
売買取引基本契約
上記例のように、自社は、A社から さまざまな物を購入したいとします。
個別契約
注文請書
注文書
通常であれば、椅子・デスク・モニターを買うたびに、個別に売買契約書を作成することになります。
しかし、どの商品の売買でも共通する事項
(支払方法など)を定めた「取引基本契約」
を締結することでこの手間がなくなります。
取引基本契約締結後は、購入する物や数量、 価格といった個々の購入にかかる内容を定めた注文書・注文請書のやりとりのみで済むようになります。
「約款」とは、事業者が不特定多数の者と同じ契約をする際に用いる、
定型的な契約条項です。
※なお、約款のうち、民法上の要件を満たしたものを「定型約款」といいます。
よく見られる約款の例としては、以下が挙げられます。
・保険約款
・電気供給約款
・ガス供給約款
約款による取引では、原則として、内容の交渉を行うことは想定されていません。そのため、
約款の提示を受けた側は、多くの場合、その約款を受け入れて取引を行うか・取引を行わないか、を選ぶことになります。
当事者の一方が圧倒的に不利な立場におかれますが、事業者が、不特定多数の人と取引をする際に、 個別に契約書を作成・締結していてはビジネスが回らないため、約款を用いた取引が行われています。
4.まとめ
■ 契約書とは、契約が締結されたことを証明する文書です
■ 企業が契約書を作成するのは、契約書がもつ以下の3つの機能を活用するためです
①確認機能|契約内容を可視化することで、取引の内容・リスクを相互に確認する
②紛争予防機能|契約内容に関して当事者間の紛争を予防することができる
③証拠機能|訴訟に発展した際に、重要な証拠となる
■ 法務担当者として、契約書を読めるようになるためには、まず、契約書の構成を知ることが大切です
■ 契約、すなわち「当事者間による意思表示の合致」が示されている書面であれば、契約書の一種といえます
■ そのため、表題に「契約書」とついていなくても、契約書に分類されるものもあります
■ その他、契約と関連の深い文書もあるため、それぞれの書面の意味を理解しておく必要があります
• xxxx『初めての人のための契約書の実務 読み方・作り方・交渉の考え方 第3版』中央経済社、
2018年
• xxxx『リーダーを目指す人のための実践企業法務入門〔全訂版〕』民事法研究会、2018年
• xxxxx『契約の法務 第2版 [勁草法律実務シリーズ]』勁草書房、2019年