Contract
4 あっせん事例
※プライバシー保護のため、事例は個人などが特定できないようにしてあります。
1 新型コロナウイルス感染症の影響による雇止め
○x x
相談者は、小売店に勤務する契約社員であり、1年契約を更新して勤続約10年。新型コロナウイルス感染症の影響により会社の業績が極端に悪化し、半年間にわたって自宅待機が続いたが、契約期間満了をもって雇止めを通告されたため、雇用の継続を求めてセンターに来所した。
○あっせん結果
センターが会社から事情を聴いたところ、会社の顧客は外国人観光客の比率が極めて高く、海外からの観光客が全くいなくなった現在の状況では、企業体力の限界と なっており、雇用契約の更新は全く不可能であるとの回答であった。これに対し、センターは、有期雇用の更新についての合理的期待権や整理解雇の4要件(要素)等につき説明したものの、会社の見解は変わることはなかった。センターが相談者に会社の回答を伝えたところ、一定の理解を示したことから、将来、会社の事業が回復した際には相談者を優先的に採用するとの内容の書面を会社から相談者に対して交付することであっせんを終了した。
2 昇給をめぐるトラブル
○x x
相談者は、運輸業の会社に勤務する正社員。会社には賃金規定はあるものの、昇給に関する規定はなく、社長の意向による個別判断で行われていた。相談者は、これまで1度しか昇給がなく、その基準につき疑問を抱き、会社に説明を求めたが、会社から明確な説明がなかったため、センターに来所した。
○あっせん結果
センターが会社から事情を聴いたところ、昇給制度に関する規定がない点については事実を認め、既定の整備を行いたいが専門家の助言を得なければ困難であるため、これまで整備に着手することができなかったとの回答があった、そこで、センター は、都が実施している専門家派遣制度を案内し、活用を勧めたところ、会社は具体的に利用に関心を示した。
相談者に会社の回答や対応を説明したところ、相談者は会社の態度の変化に理解を示し、当面、様子を見守ることとなった。
3 店舗の閉鎖と退職金等の取扱い
○x x
相談者は、若くして現在の寿司店に弟子入りし、xx働いてきた。ところが、xxxxが突然亡くなり、その妻も病気により入院して意識不明に陥ったため、xxxxの親族から閉店による解雇を告げられた。相談者は、オーナーの親族から、退職金規定の退職金を全額支払えないかもしれないと言われたことに不安を抱き、また、愛着のある現店舗を引き続き営業していきたいとの思いでセンターに来所した。
○あっせん結果
センターがxxxx夫妻に代わって事務処理等を行っているオーナーの親族から事情を聞いたところ、退職金を全額支払える資産があるかまだわからないが、相談者が主張している退職金の金額が大きく疑問を持っていると回答があった。幸い、オー ナーの妻が意識を取り戻したため、センターから直接、退職金につき確認したとこ ろ、相談者の主張は事実であり、xxxxの生命保険金で退職金を支払う考えであること、店舗についても引き継いでほしいと考えているとの回答があった。その後、 xxxxの妻も亡くなったが、xxxxの親族が相談者へ退職金全額を支払い、店舗の引継ぎ手続きも滞りなく行われ、解決した。
4 契約更新上限年齢の新設をめぐるトラブル
○x x
相談者は、専門サービス業の会社の1年契約の契約社員であり、69歳。これまで会社には契約社員の更新上限年齢に関する規定はなかったが、突如70歳の更新上限年齢の規定が新設されたため、勤務継続を求めてセンターに来所した。
○あっせん結果
センターが会社から事情を聴いたところ、顧問弁護士に事前に相談した上で法的に問題ないとの見解を得て行った措置であるとの回答があった。これに対し、センターは、就業規則の変更による労働条件の不利益変更(労働契約法第10条)の合理性の問題であるため、判例上、労働者の不利益を緩和する経過措置等の存在も、変更内容の相当性を判断する上での一要素となるのではないかと助言した。その後、使用者か ら、現在の契約期間を6か月延長するとの提案があり、相談者もこれを受け入れて解決した。
5 緊急事態宣言による復職の延期と年次有給休暇の付与
○x x
相談者は、メンタル疾患により休職中であったが、主治医が復職可のと診断書を会社に提出した時期に、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発出されたため、復職のための産業医面談が延期になった。緊急事態宣言の解除後に産業医面談が行わ れ、相談者は復職したものの、前年の全労働日の8割以上出勤していないとの理由で年次有給休暇が付与されなかった。相談者は、産業医面談の延期と休職期間の延長は会社の判断であり納得できないとしてセンターに来所した。
○あっせん結果
センターが会社から事情を聴いたところ、就業規則に従って判断したとの回答が あった。これに対し、センターは、休職が延長されたのは本人の責任ではないこと、使用者の責に帰すべき事由または不可抗力的事由による休業は全労働日から除外すべきであるとの通達の存在を助言した。その後、会社から、産業医面談が延期された期間については全労働日から除外して再計算した結果、8割出勤の基準を満たすため有給休暇を付与することとしたと回答があり、解決した。
6 正社員転換
○x x
相談者は、製造業の会社に新卒で入社し、結婚を機に退職したが、退職から約10年後に契約社員として会社に復帰して働いていた。相談者が退職していた間に、一定の条件はあるが結婚・育児等で一度退職しても正社員として復帰できる制度が新設されたが、相談者は対象外であった。同一条件での無期転換も打診されていたが、メリットが感じられないため無期転換権は行使せずにいた。均衡・均等待遇(同一労働同一賃金)が法制化されたことから、所属の人事担当者と話したが、契約内容の見直しはできないと言われ、自力での解決は不可能ではないかと感じ、センターに来所した。
○あっせん結果
センターが本社の人事部から事情を聴いたところ、地域正社員制度が存在するが職務内容が通常の正社員と同様に無限定となること、退職者を正社員として再雇用する現行の制度は退職後5年を超えると適用されないことにつき説明があった。センターが同一労働同一賃金の法施行を踏まえ、会社にとって有益な人材を適切に処遇する方法を柔軟に検討するよう助言したところ、会社から正社員化の希望があれば検討する余地があるとの回答があった。
その後、人事担当役員による面接が実施され、相談者は総合職として合格し、正社員として再び勤務を開始した。
7 新型コロナウイルス感染症の影響による退職勧奨
○x x
相談者は、飲食店の店長として勤務していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により店舗の営業が大幅に縮小されたため、自宅待機を命じられ、休業手当も一部分のみしか支払われない状態となった。そして、会社から、店舗閉鎖の可能性が高いため、賃金の1か月分を支払うから辞めてほしいと言われたため、勤務の継続を希望してセンターに来所した。
○あっせん結果
センターが相談者からこれまでの勤務状態を確認したところ、毎日法定労働時間を大幅に超えて勤務しており、この残業代が支払われていなかったことが確認できた。これを受けて、センターが会社から事情を聴いたところ、残業代は確かに支払っていなかったので対応を検討するが、会社の経営状況は非常に厳しいため相談者には退職を勧奨したいとの回答があった。
その後、センターが労使の意向を踏まえて調整したところ、未払残業代の分割払 い、相談者の退職及びアルバイトとしての雇用継続等を内容とする合意が労使間で成立し、解決した。
8 勤務先の一時閉鎖による退職と退職金
○x x
相談者は、学習塾でxx勤務する正社員であったが、塾の経営難を理由とする労働条件の見直しを発端としたトラブルの末に、最終的には塾が一時閉鎖され、勧奨により退職した。ほどなくして塾は再開されたため、退職時に十分な補償を得ていなかった相談者は、塾に退職金の支払いを求めたが回答がなかったため、センターに来所した。
○あっせん結果
センターが経営者から事情を聴いたところ、現在は何とか塾を再開したものの経営状況は依然として厳しいため事業譲渡も考えているとの回答があった。また、塾に退職金規定は存在しないものの、先代の経営者が退職者に対して一定の退職金を支払っていた事実が複数存在することも明らかとなったため、センターは経営者に対し、退職金の支払いに関する労使慣行が成立していると認められた場合のリスクにつき助言した。その後、センターが労使双方の意向を踏まえ調整したところ、相談者の要求額には達しなかったが、塾から相談者に対して退職金が支払われ、解決した。