図Ⅲ.7.1-1 サービス作業発生時の連絡フローの例(NEDO,2008)
7 運転・保守
運転・保守・補修・損害保険等の契約手続きをはじめ、稼動後には運転監視、電気設備および風車設備本体の保守点検を行う。
7.1 運転監視、保守、補修契約
メーカあるいはケースによって異なるが、風力発電機の最初の 2-5 年間にはメーカ保証があり、その期間はメーカにより維持管理が行われる。この期間を過ぎると、事業者が自分で維持管理を行うか、xxxとメンテナンス契約を結んで維持管理を継続する、あるいは専門のメンテナンス会社と契約して実施することになる。なお、近年、洋上風力発電機に対して 15 年の長期間にわたって保証するケースも認められる。
風力発電の事業期間を通じて、風力発電機の高い稼働率を確保するためには保守点検が必要不可欠で、日々の運転監視や、定期・不定期の保守、機器の改造・改修を伴う保守があげられる。日々の運転監視は日常点検と併せ早期の不具合発見に寄与する。保守・補修契約では機器の安定・安全運転を目的とする。また、風力発電機はフェールセーフ*の思想で設計されており、停止後の速やかな対応を行うことが高稼働率を維持するために必要である。なお、一般的にはメンテナンスは定期点検を、サービス作業は不定期に発生した故障・障害等の原因調査と復旧業務を意味している。
参考として、風力発電機の日々の運転監視やサービス作業発生時の連絡フローを図Ⅲ.7.1-1 に示す。
トラブル発生
顧 客
監視センター
(24 時間対応)
対応報告
監 視
障害連絡
対応指示
サービス作業
サービス作業指示部門
作業報告
(対策検討)
部品・工具
現地復旧対応
監 視
監 視
風力発電機
図Ⅲ.7.1-1 サービス作業発生時の連絡フローの例(NEDO,2008)
* フェールセーフ:部品やシステム等の故障が確実に安全側のものとなること、あるいは少なくともほぼ確実に安全側のものとなる(すなわち、危険側の故障の可能性が極めて低い)ことを意味する。工学分野ではそのような設計思想(信頼設計)の下で製造されている機器は多い。
これら運転・保守に関する契約は、経済性評価をする上で重要な要素であることを認識し、事業者が機種選定する際に十分な検討を行うべきである。また、各業務の契約に際しては専門性の高い作業であることを考慮し、納入メーカまたはメンテナンス専門会社等と表Ⅲ.7.1-1 に示す点を考慮し、その点に注意して交渉を行うことが望ましい。
表Ⅲ.7.1-1 運転監視、保守、補修契約に際しての考慮、注意点
項 目 | 考慮、注意すべき点 |
運転監視契約 | ・監視が必要な項目、内容、報告事項、頻度の明確化 ・監視員に必要となる資格、条件等の明確化 ・監視員の職務、勤務条件、監視範囲の明確化 ・遠方、直接など監視方法の明確化 ・緊急時対応体制および監視員が行う一次対応、復旧対応内容の明確化 ・事業者に対する定期報告:間隔(週・月・年等)、項目、報告方法、データ開示範囲の確認 |
・対象設備範囲( 風車本体、電気設備、付帯設備)、実施内容、点検間隔、費用、必要な助勢の有無、旅費、移動手段と費用負担の明確化 | |
・作業完了条件の明確化 | |
保守契約 (定期点検) | ・点検部分に対するメンテナンス契約上の保証条件 ・サービス員、機材等をアクセス可能とするための船舶確保とその責任分担確認 |
・契約の解除、更新条件の明確化 | |
・メンテナンス契約者が機器供給会社と異なる場合、期間費用負担、保証条件、瑕疵担保範囲と条件、予備品・消耗品の納入可否・期間等の明確化 | |
・サービス作業の対象範囲(製品、作業、運搬等)、実施内容、実施時期、費用、必要な助勢の有無、保証 | |
内容等の明確化 | |
保守契約 | ・大型機器不具合発生時の作業船、重機手配、通行、部品調達を考慮した補修期間の設定 |
(不定期点検) | ・サービス実施の手順(誰の要請で、いつまでに、誰が、何を) |
・故障対応時のサービス員、機材等をアクセス可能とするための道路確保とその責任分担確認 | |
・改造、改修の目的、効果、期間、費用の明確化 | |
・改造、改修結果に対する保証範囲、期間、内容の明確化 | |
補修契約 (改造、改修) | ・改造、改修に伴う重機等のアクセス路の確保要否とその責任分担の明確化 |
・改造、改修が機器供給会社と異なる場合、機器供給会社の保証範囲、条件の変更要否の明確化 | |
・改造、改修が機器供給会社と異なる場合、事業者からの情報開示条件、範囲の明確化 | |
部品 | ・消耗品、交換部品、交換周期、価格等の明確化 ・事業者保管予備品、消耗品の陳腐化、モデルチェンジ等に対する補充・交換の要否、費用負担の明確化 |
冶具、工具 | ・事業者側準備品の供給範囲、費用、補償等の明確化 ・業者側準備品の範囲、費用(損料)の明確化 ・特殊冶工具の有無、購入可否、費用、使用方法等の明確化 |
アクセス権 | ・事業者から運転監視、メンテナンス、サービス業者への風力発電システムアクセス権の開示 |
トレーニング | ・機器供給会社から事業者の教育:内容、期間と操作限界の明確化 ・一次対応のための事業者側技術者へのトレーニング:内容と費用の明確化 ・事業者から運転監視会社への教育:内容、期間と操作限界の明確化 ・事業者からメンテナンス会社への教育:内容と操作範囲の明確化 ・事業者からサービス会社への教育:内容と操作範囲の明確化 |
債務の制限 | ・供給者が事業者の同意なく機器を改造、交換した場合:生じた不具合に対する供給者の責任と費用負担 ・事業者が供給者の同意なく改変した場合:生じた不具合に対する事業者の責任と費用負担 ・メンテナンス契約解除、損害補償請求内容の明示 |
7.2 損害保険、賠償責任保険
通常、風力発電システム等に係る損傷、損壊等の損害を補うものとして損害保険があり、損害保険としては民間保険会社、共済問わず大多数が「火災保険」または「動産総合保険」で引き受けられている。「動産総合保険」は「火災保険」に比べ、盗難、取り扱い上の事故(修理、清掃作業中における作業上の過失による機器損傷・損壊を含む)等の損害を補償するオールリスク補償型となっているため、目的に応じて、引き受け保険を選択する必要がある。
また、風力発電設備の所有、使用および管理上の事故によって企業が負担する賠償責任を補うものとして、賠償責任保険がある。風力発電機の所有・使用・管理に起因して、第三者の身体または財物に損害を与え、法律上の賠償責任を被った場合が対象となっているため、風力発電システムの設置場所によっては、これらの保険のxxも検討する必要がある。
しかし、洋上風力発電システム等の損害保険・賠償責任保険の特徴として、一度事故が発生すると損害額(修理額)・賠償額が非常に大きくなることがあげられる。今後洋上風力発電システムの導入を考える際には、損害保険・賠償責任保険に関する補償内容、保険料等についても事前に検討しておく必要がある。この場合、洋上風力発電システムに関わる損害保険・賠償責任保険について十分な知識を有する保険会社等を通じて、保険の安定的供給を確保する必要がある。また、保険をxxしたからといって、全てが保険で賄えるわけではない。あくまでリスクを軽減する手段の一つであり、洋上風力発電システム導入に際しては、そのことも踏まえて検討する必要がある。
洋上風力発電システムに対する保険については欧州が先行しており、建設作業期間、商業稼働期間ともに風力発電設備全体をパッケージで対応するような保険となっている。従来日本では、建設作業段階では工事工程ごとに保険が手配され、商業稼働段階では海上保険や財物保険が手配されてきた。保険の加入漏れの防止や事業管理の効率性の観点から、最近では欧州型のパッケージ化された保険が登場してきている。
7.3 運転・保守の概要
風力発電事業者は、運転・保守を風力発電施設の資産運用、資産管理として位置づけ、そのためにメンテナンスを効率化してコスト低減を図る、あるいはメンテナンスにより停止時間を少なくして発電電力量を増やし、収益を上げることを第xx的に考えている。
洋上風力発電の運転・保守は、陸上風力発電のそれと比べて十分に成熟していないことに加え、気象・海象状況によってはサイトへのアクセスに制限があるため、コストとアクセシビリティの問題や故障検知が重要である。後述の図Ⅲ.7.3-8 に示しているように、洋上風力発電の運転・保守費用はライフサイクルコストの 20-30%を占めるため、ライフサイクルを通した資産管理が必要である。そのためには洋上風力発電施設の故障・事故等の不具合の原因が業界全体で共有され、周到な事業計画を立てることができるような環境整備が重要である
(Wills,2014)。
機械設備の管理活動は、運転・保守計画活動(Plan)→運転・保守実行活動(Do)→実績管理活動(Check)→修正・改善活動(Act)の管理のサイクルを回しながら運転・保守の目標を目
指すものとされ、設備の性能を低コストで維持することが求められている(日本プラントメンテナンス協会 機械保全技能ハンドブック編集委員会編,1999)。
なお、電気設備に関する技術基準を定める省令の一部改正が 2016 年 9 月 23 日に行われ、サイバーセキュリティに関する規定が盛り込まれた。一部の電気工作物について、運転を管理する電子計算機は、当該電気工作物が人体に危害を及ぼし、または物件に損傷を与えるおそれおよび一般送配電事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないよう、サイバーセキュリティを確保しなければならないとされている(電気設備の技術基準を定める省令第 15 条の2)。
(1) 運転・保守の方法
運転・保守方法の考え方は、図Ⅲ.7.3-1 および表Ⅲ.7.3-1 に取りまとめているように 3 つに分類される。予防的なメンテナンスに属するもののうち、一つはコンディション・モニタリング・システム(CMS)を重視した遠隔監視制御システムによる方法(a)、もう一つは定期的に検査を行い、不具合が検出されたら修理を行う方法(b)である。また(c)に示す方法は、修理整備が主体で特に常時メンテナンスを行わない方法である。
閾値(アラーム)
*:故障
*:修理
●:検査
(未検出)
○:検査
(検出)
故障レベル
(a)
(b)
(c)
図Ⅲ.7.3-1 ✃力発電施設に対する運転・保守方法の相違(DET NORSKE VERITAS,2012)
表Ⅲ.7.3-1 運転・保守の基本的な考え方
運転・保守の方法 | 内容 | |
予防的メンテナンス | CMS (図Ⅲ.7.3-1(a)) | CMSからのアラーム(データ)により風力発電施設の状態が、ある閾値を超えた場合に検査をし、不具合が検出されたら修理を行う方法(修理が先送りできる場合には定期検査時に修理)。 |
定期検査 (図Ⅲ.7.3-1(b)) | 定期検査をベースに一定間隔で検査し、風力発電施設の状態に、故障に結び付く兆候が検出されたら修理を行う方法。 | |
修理メンテナンス (図Ⅲ.7.3-1(c)) | 風力発電施設において故障が起きた時点で修理を行う方法。 |
Tavner(2014)によれば、風車の創成期には、修理メンテナンス(壊れるまで使う)が行われていたが、80-90 年には熟練者による予防メンテナンス(定期検査)、90 年代はオフラインの状態監視が主体となり、現在はオンライン状態監視の時代となっている。
陸上風力発電施設の運転・保守では、この方法により以下の 4 種類の対応が行われている。
・日常的な運転状態と保守状態の管理
・定期点検(半年ごとが一般的)
・長期計画メンテナンス(5 年,10 年ごと)
・故障時の修理
一方、洋上風力発電施設において故障事故が発生した場合、陸上に比べ現地補修作業の費用が割高になり、その修復により多くの時間を要し設備利用率の低下を招くため、洋上風力発電の事業性に大きな影響を及ぼす。したがって、風力発電設備を洋上に設置する場合、陸上に設置する場合とは運転・保守面で以下の相違がある。
a. 洋上の設置環境が発電設備・受変電設備に対して与える特有の環境により、発電設備・受変電設備自体に陸上とは異なった運転・保守を要する(湿度、塩害対策等)。
b.洋上用受変電設備を必要とし、これの運転・保守を配慮する必要がある(海底ケーブルや洋上変電所用の支持構造物等)。
c. 洋上設置のためアクセスが困難になることに起因して、運転・保守上特別の配慮を要する。
⮚ 作業員のアクセス性が困難になる。
・メンテナンス作業員が風力発電機の外面にアクセスする際の手段が限られる(ブレードやタワー外表面の点検時等)。
・メンテナンス作業員の発電設備・受変電設備への到達が困難となる(時化によるアクセス船の欠航等)。
⮚ メンテナンス作業用物品の輸送・吊り上げ・交換が陸上より困難となる。
・作業員が、風力発電機に既設の設備を利用して運搬や保守作業を行う場合に、タワー内エレベータやナセル内クレーン設備等が必要である。
・大物部品の交換等でタワー内エレベータやナセル内クレーン設備が使えない場合、大型起重機船等の特殊船舶を必要とする。
このため、洋上風力発電は陸上風力発電に比べ運転・保守に特段の配慮を要する。2000 年以降、オンライン状態監視技術(CMS)が進展し、海外の洋上風力発電では CMS の装着が DNV
(Det Norske Veritas)等の認証制度のひとつとなっている。
日本においても、アクセスや作業効率の劣る洋上風力発電には CMS を中心とする予防的メンテナンスの導入が必要であるが、警報を出す閾値の設定の難しさがあるため、現状では定期検査と抱き合わせた CMS によるメンテナンスが推奨される。なお、XXXX は 2014 年度から 2017 年度までスマートメンテナンス技術開発(疲労予測等)を実施している。ここでは CMSに基づくメンテナンス手法を確立し、事故の未然防止、早期補修によるメンテナンスコストの低減、停止時間の削減による発電電力量の最大化を図って、安全で費用対効果の高い施設の運転を確保することを目指している。
Tavner(2014)は、従来型の監視制御システム(SCADA: Supervisory Control and Data Acquisition)と CMS あるいは SHM(Structural Health Monitoring)を組み合わせたシステムの構築を提案している(図Ⅲ.7.3-2)。SCADA は、従来から風力発電機には装着されているシステムで、発電電力量、風向・風速、ブレードのピッチ角、ヨーxx、種々のデータが取得されている。一方 CMS は、主軸、増速機、発電機等に振動計、ひずみ計等を取り付けて、運転パラメータの遠隔モニタリングを可能にしたシステムである。なお、ドイツ風力エネルギー協会の調査によると、海外の洋上風力発電施設における CMS によるモニタリングも同様の主軸、増速機、発電機で実施されている事例が多い(表Ⅲ.7.3-2)が、ドイツのAlpha Ventus および Bard Offshore 1 では、ブレードも併せてモニタリング(SHM)が行われている。
風力発電施設モニタリングシステム
ブレード
タワー
支持構造物
ストラクチャルヘルス
モニタリング (SHM)
発電機 ベアリング
増速機 ベアリング
増速機ギア
主軸
コンディションモニタリング システム (CMS)
電流発生器
発電装置
コンディションモニタリング 電気信号
信号
警報
遠隔制御監視システム (SCADA)
図Ⅲ.7.3-2 ✃力発電施設のモニタリングシステム(Tavner,2014 より作成)
表Ⅲ.7.3-2 海外の洋上✃力発電施設におけるモニタリング部位
項 目 | Alpha Ventus(ドイツ) | Bard Offshore 1(ドイツ) | THORNTON BANK(ベルギー) | HORNS REVⅡ(デンマーク) |
運営機関 | DOTI(Deutsche Offshore Testfeld-und Infrastrukture GnbH & Co. KG) | BARD Engineering for SudWest-Strom Windpark GmbH & Co KG and WV Energie Frankfurt | C-Power NV | DONG Energy(現Ørsted) |
風車メーカ | Areva Wind | BARD | REpower | Siemens |
設置基数 | 6 | 80 | 6 | 91 |
機種 | M5000 | BARD 5.0 | REpower 5M | SWT-2.3-93 |
総出力(MW) | 30 | 400 | 30 | 209.3 |
設置開始年 | 2007(海底ケーブル) | 2009 | 2008 | 2009.3(風車1号機の設置) |
系統連系年月日 | 2009.11.1 | 2010 | 2008 | 2009.5.1 |
海域 | 北海 | 北海 | 北海 | 北海 |
離岸距離(km) | 45 | 89 | 30 | 27-35 |
水深(m) | 00 | 00-00 | 00-00 | 9-17 |
CMSによるモニタリング部位 | ロータベアリング、発電機、増速機、ブレード | 発電機、増速機、ブレード等 | 発電機、増速機、メインベアリング | ベアリング、増速機、発電機 |
出典) German Wind Energy Association(BWE)(2010):OFFSHORE Service & Maintenance Wind Energy Market Special
(2) 運転・保守の実状
洋上風力発電所へのアプローチは、時化時を除けば山岳地よりも容易であるとの期待もあるが、洋上での運転・保守の条件は陸上と異なる場合が多い。事実、陸上風力発電の availability
(利用可能率:ある期間における全暦時間から保守、故障等の停止時間を差し引いた値の全暦時間に対する割合)は 95-98%であるが、洋上風力発電のそれは 80-95%(Becki,2011)、あるいは 90%(Tavner,2014)であると言われている。このように、洋上風力発電は陸上風力発電よりも停止時間が長く、風車の稼働停止による利益の損失は重大である。20 年程度の風車の供用期間を考えると、利用可能率の尺度も取り入れて運転・保守費用(最適運転・保守費用:最小コストの理論的ポイント)を評価し、初期段階で適切な運転・保守計画を立てることが肝要である
(図Ⅲ.7.3-3)。
図Ⅲ.7.3-3 運転・保守コストと利用可能率の関係(Xxxxxxxx,2010 を改変)
風力発電システムは、一般に各種保護装置を有しており無人自動運転が可能であることから、監視や巡回については基本的には一部の監視制御方式を除いて制限はない(風力発電規程
(XXXX-0000-0000)の第 4-2 条にある監視制御方式の適用条件で、陸上用のNEDO 風力発電導入ガイドブックを参照)。
しかし、法的には事業用電気工作物と定義され、設置者による自主的な保安の確保(保安規程を定めるとともに、電気xx技術者を選任し、経済産業大臣又は所轄産業保安監督部長に届け出ねばならない)が義務づけられており、風力発電設備を安定かつ効率よく運転を行うため、技術員(運転に必要な知識および技能を有する者)による巡視、点検等が必要である。また、
「電気設備の技術基準」では、最低限、技術員が随時巡回することを義務づけている。しかし、陸から遠く離れた洋上風力発電施設では、日常巡視を行うことは困難であると思われる。
また、保安規程に基づく点検が必要で、陸上風力発電の場合、目視による外観点検等を月に 1 回以上実施することと規定されている(平成 15 年経済産業省告示第 249 号)。さらに、部位ごとの点検周期(半年~2 または 3 年)に応じて、定期事業者検査を行う必要がある(電気事業法施行規則第 94 条の 3 第 1 項第 1 号及び第 2 号の定める定期事業者検査の方法の解釈)。定期事業者検査は、風力発電設備の定期点検指針(XXXX0000-0000)に基づいて行うこととなる。なお上記の解釈では、「同各号に規定する定期事業者検査の十分な方法は、この解釈に限定されるものではなく、同各号に照らして十分な保安水準の確保が達成できる技術的根拠があれば、同各号に適合するものと判断することとする。」としており、洋上風力発電に則した技術基準、各種規定等の整備が必要であると考えられる。
風力発電機は機械的な可動部分が多く、潤滑油の補給や消耗品の交換等、定期的な点検の他、支持構造物や海底ケーブルの定期点検も実施する必要がある。洋上風力発電設備の定期点検項目の一例を表Ⅲ.7.3-3 に示す。
表Ⅲ.7.3-3 洋上✃力発電設備の定期点検項目の一例(NEDO ら,2007b)
部 位 | 維持管理 | 検 討 項 目 |
風力発電機 (ナセル、ロータ、ブレード) | 定期点検 | ・点検箇所:制御盤、発電機/ロータ、メインシャフト、ベアリング、ギアボックス、重電機器、その他補助機器類等 ・点検項目:外観の異常確認、計器類、コネクター、バッテリーの電圧、オイルの交換/ 補充、ナット/ ボルトの緩み、グリース補給、発錆の点検/清掃、機器類の作動チェック、消耗品の交換等 ・点検頻度:1~2回/1年 ・付帯設備:遠隔監視システム、ナセル内クレーン、ヘリポート等 |
タワー | 定期点検 | ・点検箇所:タワー等 ・点検項目:外観の異常確認、ナット/ボルトの緩み、発錆の点検/清掃等 ・点検頻度:1~2回/1年 ・付帯設備:タワー内エレベーター、通船接岸部等 |
支持構造物部 | 定期点検 | ・一次点検:共通して生物付着(設計厚に達していないか)調査 ・コンクリート構造: 基礎材質の状況の目視観察( コンクリートのひび割れ・剥離・剥落、鉄筋の腐食・露出・破断等) ・鋼構造:被覆防食(塗装や有機、金属ライニングの変状、鋼材等の錆の発生、部材のへこみ等の変形点検 ・点検頻度:1回/1年 ・二次点検:共通して基礎の周りの洗掘(点検頻度は約5年に1度程度) ・コンクリート構造:反発硬度法によるコンクリートの強度試験 ・鋼構造:電位測定による鋼材腐食試験等 ・点検頻度:1回/2年 |
なお、風力発電設備の事故が近年多発しており、今後の風力発電設備の導入拡大を踏まえ、風力発電設備のメンテナンス体制を整備する必要性から、2017 年 4 月より出力 500kW 以上の風力発電設備を対象に定期検査制度が義務付けられた。2017 年度は風力発電設備を 10 基以上保有している発電所を対象とし、2018 年度は 3 基以上の発電所、2019 年度はそれ以外の発電所の風車を対象としている。電気事業法施行規則第 94 条の 3 第 1 項第 1 号および第 2 号に定
める定期事業者検査の方法の解釈の一部改正(平成 29 年 3 月 31 日施行)では、以下の設備に対して検査方法や検査周期等を示している。
✓ブレード
✓ロータ
✓ナセル
✓タワー
✓基礎
✓非常用電源装置
定期事業者検査を 3 年に一度実施することにし、事業者の保安力の水準を 2 段階に分け、そ
の水準に応じて定期安全管理審査の受審の時期を最大 6 年まで延伸することができるようになっている。この制度は、事業者がそれぞれの保安力を高めるインセンティブになっている。具体的な方法については電気事業法施行規則第 94 条の 3 第 1 項第 1 号及び第 2 号に定める定
期事業者検査の方法の解釈(平成 29 年 3 月 31 日施行)を参照されたい。
海外の状況に関して、表Ⅲ.7.3-2 と同じドイツ風力エネルギー協会の調査結果であるが、4 箇所の洋上ウィンドファームの運営機関へのヒアリングによると、洋上風力発電の点検頻度と点検項目は表Ⅲ.7.3-4 の通りで、Horns Rev2 を除き頻度は風車 1 基 1 年当たり 1 回となっている。なお、Horns Rev2 はウィンドファーム内の洋上変電所近傍に宿泊施設が設置されているので、点検頻度は多いものと思われる。また、Alpha Ventus では点検項目は細かい部位が記述されているが、他のサイトでは具体的な内容の記述はない。他のサイトではメンテナンス計画や仕様に基づいて実施されているようである。
表Ⅲ.7.3-4a 海外の洋上✃力発電施設におけるモニタリング状況
項 目 | Alpha Ventus(ドイツ) | Bard Offshore 1(ドイツ) |
運営機関 | DOTI(Deutsche Offshore Testfeld-und Infrastrukture GnbH & Co. KG) | BARD Engineering for SudWest-Strom Windpark GmbH & Co KG and WV Energie Frankfurt |
風車メーカ | Areva Wind | BARD |
設置基数 | 6 | 80 |
機種 | M5000 | BARD 5.0 |
総出力(MW) | 30 | 400 |
設置開始年 | 2007(海底ケーブル) | 2009 |
系統連系年月日 | 2009.11.1 | 2010 |
海域 | 北海 | 北海 |
離岸距離(km) | 45 | 89 |
水深(m) | 30 | 39-41 |
風車1基・1年当たりのメンテナンスの間隔 | 1回 | 1回 |
メンテナンス箇所 | ・安全センサ ・火災報知器/消火システム ・無停電電源装置 ・非常電源 ・避雷器システム ・ブレード ・ピッチ制御機器 ・ロータロック ・ロータハブ ・ロータベアリング ・ロータブレーキ ・増速機と給油システム ・発電機 ・ナセルクレーン ・冷却システム ・スイッチキャビネット ・ヨー制御機器 ・ヨーベアリング ・ヨーブレーキ ・油圧アセンブリ ・ナセルハウジング/ノースコーン ・タワー ・吊り上げアクセスシステム ・アクセスプラットホーム ・空調 ・中電圧コンバータ ・外部プラットホーム ・安全器具 | メンテナンス計画に従って実施。 |
表Ⅲ.7.3-4b 海外の洋上✃力発電施設におけるモニタリング状況
項 目 | THORNTON BANK(ベルギー) | HORNS REVⅡ(デンマーク) |
運営機関 | C-Power NV | DONG Energy(現Ørsted) |
風車メーカ | REpower | Siemens |
設置基数 | 6 | 91 |
機種 | REpower 5M | SWT-2.3.93 |
総出力(MW) | 30 | 209.3 |
設置開始年 | 2008 | 2009.3(風車1号機の設置) |
系統連系年月日 | 2008 | 2009.5.1 |
海域 | 北海 | 北海 |
離岸距離(km) | 30 | 27-35 |
水深(m) | 17-23 | 9-17 |
風車1基・1年当たりのメンテナンスの間隔 | 1回 | HORNS REVⅡはファーム内に宿泊施設があり、最大24名が交代で常駐する最初の洋上風力発電施設である。 |
メンテナンス箇所 | メンテナンス仕様を参照 | 消耗品の付け替え、サービス巻き上げ機と安全装置、増速機と潤滑油の検査を含む、要求仕様書に準じた作業。 |
出典) German Wind Energy Association(BWE) (2010):OFFSHORE Service & Maintenance Wind Energy Market Special
洋上ウィンドファーム 1 年当たり平均して 5-6 回✰定期検査と計画外✰保守作業が行われていると✰ことである(DET NORSKE VERITAS,2012)。また、Hamilton(2011)によれば、定期検査は 2 回/年、修理メンテナンスを含めば平均して 5 回/年、大規模メンテナンスは 1 回/5年と✰ことである。
【豆知識Ⅲ.7.3-1】
●海外✰洋上ウィンドファーム✰点検に係る関連情報
・定期検査に要する時間:40-80 時間/基
・大規模メンテナンスに要する時間:100 時間/基
・作業員数:0.3 人/MW(100MW 程度✰ウィンドファーム)、0.2 人/MW(100MW 以上)
・作業要員✰構成:技術員(全体✰ 40%)、残りはスーパーバイザー、安全/環境要員、管理部門(船舶クルー)、支援部門 <要員は設備容量が 2 倍になると、約 50%増加>
・洋上風力発電✰維持管理費は、陸上風力発電✰それと比較しておおよそ 2-4 倍。
(出典:Xxxxxxxx,2011)
(出典:German Wind Energy Association(BWE),2010)
洋上風力発電機✰故障・事故✰発生確率と修理レベルを表Ⅲ.7.3-5 に示す。同表に示すように、電気制御機器関連✰不具合が最も多いが、メンテナンスに要する船舶もボートで良いこと、また前述✰ようにこれら✰部位は停止時間も短いことから、多大な修繕費用を要しない。しかし、表✰メンテナンスタイプ✰ C や D となると、起重機船や SEP 船が必要となり、傭船費用も嵩み、必然的に停止時間も長くなる。よって、大規模メンテナンスあるいは定期検査時において、これら✰部位については CMS ✰活用も含めて入念な検討が必要であろう。
表Ⅲ.7.3-5 洋上✃力発電機の故障・事故の発生確率と修理レベル(Dewan,2014 を改変)
部 位 | 故障率(回/年/基) | メンテナンスタイプ ✰クラス |
電気制御機器 | 0.008203073 | B |
変圧器 | 0.003388375 | D |
風速計 | 0.003018165 | C |
油圧ポンプ | 0.002525134 | B |
発電機 | 0.002341027 | D |
ブレード | 0.001786619 | D |
温度計 | 0.001786011 | D |
油圧シリンダ | 0.001170057 | C |
発電機ベアリング | 0.000800697 | C |
空力ブレーキ | 0.000800492 | C |
ヨーモータ | 0.000677304 | B |
電磁継電器(リレー) | 0.000554166 | B |
ブレーキパッド | 0.000551420 | B |
発電機ブラシ | 0.000431113 | C |
主軸 | 0.000430994 | D |
増速機ベアリング | 0.000369468 | C |
増速機 | 0.002093950 | D |
制輪子(ブレーキシュー) | 0.000184719 | B |
油圧パイプ | 0.001477980 | B |
継ぎ手(カップリング) | 0.000123177 | C |
ハブ | 0.000123144 | D |
振動スイッチ | 0.000121400 | B |
高速シャフト | 0.000061600 | C |
ブレード・ボルト | 0.000010000 | C |
発電機 巻線 | 0.000010000 | C |
出力センサ | 0.000010000 | B |
ギアーシャフト | 0.000010000 | C |
ブレーキディスク | 0.000010000 | B |
ヨーベアリング | 0.000010000 | C |
A:予備品不要+アクセス船+乗組員(2名) *目視(巡視) B:予備品+アクセス船(ボート)+乗組員(3名)
<ナセル内✰クレーンを使用>
C:予備品+起重機船+アクセス船(ボート)+乗組員(6名) D:予備品+SEP船+アクセス船(ボート)+乗組員(6名)
風力発電設備✰故障・事故✰一つに、火災がある。風力発電設備においては、火災は大きな損害をもたらすリスクとして認識する必要がある。風力発電設備✰主要機器✰多くが密閉されたナセル内に隣接して収容されていることが多いため、ナセル内で火災が発生すれば、短時間でナセル全体に広がり大きな損害につながる。さらにブレードへ✰延焼、ブレード落下、部品飛散という事態にもつながりかねない。特に洋上では、消防艇でも消火することができないため、消化対策が取られていなければそ✰まま燃え尽きる✰を待つしかない。
火災✰発生に備え、信頼性✰高い火災検知器が必要である。火災検知器は、火災✰発生をいち早く検知しアラームを発信し、自動消火装置を発動させることができる。ナセル内に消火器が設置されていたとしても、風車✰稼動中には人がおらず火災発生時にはほとんど役に立たないため、初期消火には、自動消火装置が唯一✰有効設備と言える。
火災原因としては、落雷による過電流、過電圧により、各機器から出火するケースが多い。アーク放電(発電機、変圧器等、二つ✰電極間✰放電)により可燃物に引火したり、強風による過回転防止✰ために稼働した制動機✰摩擦熱から出火したりする事例もある。また、メンテナンス状況が十分でない風車では、機器から✰油漏れが延焼につながる場合もある。メンテナンスにより変圧器✰絶縁材として用いているガスや油、電気設備を確認することで火災✰発生を予防することができることから、火災予防✰観点からもメンテナンスは重要である。
以下、NEDO 洋上風力発電実証研究における運転・保守✰概要を取りまとめた。また、当実証研究にて開発された主要な最新技術も記載した。詳細は別冊に記載する。
1) 銚子沖
①点検項目
風力発電施設および風況観測タワー✰巡視(目視確認)は、原則として 1 回/月(1-2 日/回)行われる(表Ⅲ.7.3-6)。
表Ⅲ.7.3-6 巡視(目視確認)に係る事項
大項目 (対象設備) | 中項目 (設備) | 小項目 (巡視内容) | 工数(目標) |
風車 | 10 | 55 | 0.5 日 |
観測タワー | 8 | 36 | 0.25 日 |
変電設備 | 11 | 41 | 0.25 日 |
②新たなメンテナンス技術
銚子沖においては周年に亘って有義波高が高く、交通船を使用して洋上施設へアクセス(通常、有義波高 1m 以下が条件)できる頻度が少なく、点検・補修✰稼働率が約 33%と低いことが課題であった。そ✰稼働率✰向上を目指すため、日本で初めて設計・製造されたメンテナンス✰ため✰アクセス船(表Ⅲ.7.3-7、図Ⅲ.7.3-4)を 2016 年 1 月より適用し、性能評価を行った。そ✰結果、有義波高 1.5m 以上で✰安全なアクセスが可能となり(図Ⅲ.7.3-5)、運転・保守
✰稼働率が 63%以上を達成することができた。ちなみに、風速に関する作業条件は、10m/s 以下としていた。なおアクセス船一般についてはⅢ.7.3(4)1)で紹介する。
表Ⅲ.7.3-7 銚子沖で使用している新アクセス船の諸元
項目 | 諸元 |
船名 | PORTCAT ONE号 |
船主 | 東京汽船株式会社 |
総トン数 | 19トン |
最大搭載人員 | 旅客12名、船員2名 |
最大貨物積載量 | 1t |
推進装置 | ウォータージェット2基 |
最大速力 | 29.2kt |
最大xxx | 6.5t |
図Ⅲ.7.3-4 銚子沖で使用している新アクセス船
図Ⅲ.7.3-5 ✃車へアクセスできたときの有義波高と有義波周期の比較
2)北九州市沖
①点検項目と頻度
主要な洋上風力発電設備ごと✰点検頻度を表Ⅲ.7.3-8 に示す。
表Ⅲ.7.3-8 主要な洋上✃力発電設備ごとの点検頻度
項目 | 連系用開閉設備 | 配電設備 | 風力発電設備: 風力発電機 | 風力発電設備: 風車支持物 | 風力発電設備: 6.6kV受電盤 | 観測鉄塔(観測塔): 観測鉄塔 | 観測鉄塔(観測塔): ディーゼル発電機 | 観測鉄塔(観測塔): 6.6kV受電盤 |
随時点検 | ||||||||
点検名 | 月例点検 | (洋上風車および観測塔)支持物他点検 | 月例点検 | 月例点検 | 月例点検 | 月例点検 | 月例点検 | 月例点検 |
点検対象設備 | 「陸上開閉所」内✰6.6kV設備 (保護柵など付属設備を含む) ※海上鉄柱は及び6.6kV架空線 は対象外 | 陸上開閉所 陸上鉄柱~風 | 風車、発電機、制御盤、変 | 風車 タワー、基礎など | 6.6kV受電盤(高圧遮断器 | 観測塔 タワー、基礎、観 | ディーゼル発電機および制 | 6.6kV受電盤(機器室1階) |
車 間✰架空線および海底 | 圧器など | 盤) | 測室など | 御盤、筐体など | ||||
ケーブルおよび海上鉄柱 | ||||||||
(埋設部含む) | ||||||||
点検頻度 | 2回/月 | 2回/年 H25年度は、1回とする。 | 1回/月 | 1回/月 | 1回/月 | 1回/月 | 1回/月 | 1回/月 |
定期点検 | ||||||||
点検名 | 陸上開閉所 定期点検 | 随時点検と同じ。 実施該当年において、点検項目を追加することで対応する。 | 風車 定期点検 | 風車 定期点検あるいは、月例点検 | 風車 定期点検 実施該当年において、点検項目を追加することで対応する。 | (洋上風車および観測塔)支持物他点検あるいは、月例点検 | 観測塔 定期点検 | 観測塔 定期点検 |
点検対象設備 | 随時点検に準じる | 随時点検に準じる | 随時点検に準じる | 随時点検に準じる | 随時点検に準じる | 随時点検に準じる | 随時点検に準じる | 随時点検に準じる |
点検頻度/ 次回点検期日 | 6年毎、 次回期日は平成30年6月24日 | 6年毎、 次回期日は平成30年6月24日 | 運開後2年間に5回、 3年目以降は1回/年 | 運転開始後、2年間に5回、 3年目以降は1回/年 | 6年毎、 次回期日は平成30年6月24日 | 1回/年 | 6年毎、 次回期日は平成30年6月24日 | 6年毎、 次回期日は平成30年6月24日 |
架空線✰測定試験:12年毎、 次回点検は平成36年6月24日なお、架空線✰測定については、検査✰前倒し計画は 「可」とする。 | H25年に2回実施済み。 次回以降は、H26年春秋、H27年春秋に実施予定。 H28年以降は1回/年で実施予定 |
注) 当該点検頻度は実証研究中✰も✰で、今後回数については、合理化を前提に減少を含む見直しをする
②新たなメンテナンス技術
海中構造物を安全かつ効率的に点検することを目的として、水中メンテナンスロボットを開発し、2016 年 8 月と 11 月に風車や観測タワー、鉄柱を調査対象域として実証海域で計測作業を行った(図Ⅲ.7.3-6)。図Ⅲ.7.3-7 は計測作業においてロボットが所得した画像である。根固ブロック✰高さ✰計測では、設計値とロボットによる計測結果が一致した。
ソナー
+カメラ
架台
図Ⅲ.7.3-6 水中メンテナンスロボット(左:性能確認試験状況、右:海域への投入状況)
xx
東側
海底
根固ブロック
西側
南側
ターゲット
被覆ブロック
高さ計測結果:1.6m
設計値 :1.6m
図Ⅲ.7.3-7 水中メンテナンスロボットの取得画像
(3) 運転・保守費用
本ガイドブックⅡ.3.3 節(1)コスト✰低減において、運転保守費(OPEX)に関する概観を行っているが、運転保守費(OPEX)はライフサイクルコスト(発電原価)✰概ね 20-30%を占めると指摘されている(EWEA.2009;Perkins and Everett,2011)。運転保守費
Electrical
(OPEX)に関する別✰資料(Nordex,2011)からも同様に発電原価✰ 23%✰シェアであることが示されており(図Ⅲ.7.3-8)、運転保守費(OPEX)に関しては概ね妥当な概算値と言え る。
Installation
14%
WTG
31%
17%
16%
Foundation
23%
OPEX
図Ⅲ.7.3-8 発電原価の構成比(Nordxx,0000)
運転保守費(OPEX)✰実績値について、Xxxxxxxxx et al.(2011)は平均 76.5€/kW/年(34.2- 147.4€/kW/年)<8,798 円/kW/年,3,933-16,951 円/kW/年;115 円/€>(表Ⅱ.3.3-4 を参照)、そ✰他、発電電力量単位では平均 12.5£/MWh/年(7.9-22.34£/MWh/年)<1.6 円/kWh/年,1.0-2.9円/kWh/年;130 円/£>があるように、運転保守費(OPEX)は洋上ウィンドファームによってバラツキがみられる。後者✰発電電力量単位当たり✰運転保守費(OPEX)は、availability(利用可能率)✰相違に帰する。そ✰主たる要因は風車✰信頼性、気象・海象✰条件、船舶アクセ
ス✰難易度等に依存するが、これは一方で、発電原価に直接関連することである。「風車✰信頼性」に係る対策として、近年、洋上風力発電では直結式✰発電形式(永久磁石+ギア)が増えてきているが(付属資料Ⅱを参照)、ここでは運転・保守✰視点から発電原価✰低減について取り上げる。
図Ⅲ.7.3-9 は、洋上風力発電✰運転保守費(OPEX)✰推移とそ✰内訳を調べたも✰である。本図から運転保守費(OPEX)✰特徴として、風車✰設置から年を経るごとに増加傾向が見られること、運転保守費(OPEX)✰主要因は修理メンテナンス費(Corrective Maintenance)で、 20 年を超える風車はそれが運転保守費(OPEX)✰おおよそ 2/3 を占めること、また、海上輸送(Water Transport)も稼働年数による漸増傾向は見られないが、大きな費用構成要素であること等をあげることができる。
図Ⅲ.7.3-9 洋上✃力発電の運転・保守費用の推移とその内訳(Hamilton,2011)
修理メンテナンス費✰低減策として、前述✰ CMS/SHM に基づき、それぞれ✰部品ごとにライフタイム分析を行って適切な運転・保守計画を保有することや、修理用部品や交換機材✰保管庫✰共有、重要交換部品✰陸上 O&M センターへ✰保管等があげられる(Xxxxxxxx,2011)。
海上輸送費は、輸送手段や気象・海象条件等と関連するも✰で、アクセス✰問題である。こ
✰費用には、船舶✰固定費あるいは傭船費、燃料油等✰運航費用等があげられるが、気象・海象に起因する待機時間✰増加は稼働率✰減少、ひいては運転保守費(OPEX)✰増加につながる
(我が国✰主要な港湾における波浪特性(稼働率)を付属資料Ⅴに示す)。
洋上風力発電施設✰運転保守費(OPEX)は、前述✰ように発電原価✰ 20-30%を占めるため、事業✰採算✰良し悪しに深く関わるも✰である。今後、洋上ウィンドファームが大型化し、より沖合に展開することを考えると、新しいロジスティック・ソリューションズが要求される
(Xxxxxx Xxxxxx,2013)。
(4) アクセスの方法
アクセス✰方法は、主に洋上風力発電施設まで✰離岸距離に基づき、次✰ 3 種類に区分される(図Ⅲ.7.3-10)。離岸距離を考えると、コスト的にも①と②✰方法はそれぞれ✰領域で最適な解、また遠距離✰③は最も現実的で経済的な方法であるとされている。なお、近距離であって
も風車✰設置基数が増えると、①は②もしくは③に移行するも✰と推察されている(GL Xxxxxx Xxxxxx,2013)。
①港湾を基地とした作業船による方法(約 12NM(約 22km)以内)
②ヘリコプター✰支援を受けた作業船による方法(約 12-約 40NM(約 22-約 74km))
③洋上宿泊設備(母船)を基地とした作業船による方法(約 40NM(約 74km)以遠)
ドイツにおいても離岸距離が 80km 以上✰遠距離✰場合には母船方式が考えられている
(Xxxxxx et al.,2013)。
※1NM(海里)=1.852km
図Ⅲ.7.3-10 港湾(基地)からの距離と運転保守費(OPEX)との関係(GL Xxxxxx Xxxxxx,2013)
上記✰ 3 つ✰方法✰運転保守費(OPEX)(1 年 1 基当たり✰費用)は、図Ⅲ.7.3-11 に示しているように、作業船✰みによるケース(①)では約 260,000£/基/年(約 3,380 万円/基/年;130円/£)、ヘリコプター✰支援を受けた作業船(②)では約 390,000£/基/年(約 5,070 万円/基/年;130 円/£)および洋上宿泊設備を基地とした作業船(③)では約 470,000£/基/年(約 6,110万円/基/年;130 円/£)となって、②は①✰ 1.5 倍、③は①✰ 1.8 倍✰費用負担となる。なお、運転保守費(OPEX)✰内訳では風車メンテナンス費と海上輸送費が大きな割合を占めており、特に②と③✰ケースでは海上輸送費✰割合が大きくなっている。
図Ⅲ.7.3-11 3 つの輸送方法による運転保守費(OPEX)の比較(GL Xxxxxx Xxxxxx,2013)
③✰洋上宿泊施設は高額ではあるが、港から作業船で 2 時間以上(約 40NM(約 74km))離れたウィンドファームでは必要かもしれない。宿泊施設には、固定式と浮体式✰ 2 つ✰タイプがある。
・固定式:海底xx・ガス✰プラットホームと同じコンセプトで、風車へは作業船やヘリコプターを使用する。デンマーク✰ Ørsted 社(旧 Dong Energy 社)は、Horns Rev 2 において洋上変電所から 15m 離れた場所(洋上変電所とは橋で連結)に 24 名収容できる宿泊施設(Poseidon)を設けて、作業員が常駐し施設✰運転・保守にあたっている(図
Ⅲ.7.3-12)。
図Ⅲ.7.3-12 Horns Rev2 における固定式宿泊施設(GL Garrad Hassan,2013)
・浮体式:SeaEnergy 社は、洋上風力発電施設✰大型化、遠距離化✰トレンドを受けて、マザーシップ(母船)コンセプトを発表している。母船には作業船やアクセス装置が完備される計画で、これにより天候✰良いときには作業船を展開できる。悪いときには宿泊施設から直接、上下✰動揺に強い洋上アクセス装置を活用できるという大きなメリットがある(図Ⅲ.7.3-13)。ベルギー✰ Belwind 洋上ウィンドファームでは、離岸距離 46km
✰サイトに 2013 年末✰時点で 6MW 機が 1 基設置されているが、今後、55 基✰洋上風車が展開される計画である。ここでは浮体式宿泊施設が風車✰運転・保守方策として導入されることとなっている(DNV,2012)。
【豆知識Ⅲ.7.3-2】
●Thoronton Offshore Wind Farm(ベルギー)✰アクセスシステム(DNV,2012)
✓人員輸送
・定期保守/不定期保守✰ため✰作業船利用→制限波高 1.5m
・不定期保守✰ため✰ヘリコプター利用→制限風速 17m/s
・主要機器交換✰ため✰ジャッキアップ船✰利用→制限波高 2.5m/制限流速 2kt
✓材料輸送
・定期保守/不定期保守✰ため✰作業船利用→重量<1.5t
・不定期保守✰ため✰ヘリコプター利用→重量<0.5t
・主要機器交換✰ため✰ジャッキアップ船✰利用→重量>3.5t
・定期保守/不定期保守✰ため✰連絡船利用→重量>1.5-3.5t
図Ⅲ.7.3-13 浮体式宿泊施設(GL Garrad Hassan,2013)
1) アクセス船
洋上風車へ✰アクセスは、基本的には船舶によることが多く、「安全性」と「経済性」が重要である。日本船舶技術研究会(2013)および DNV GL ら(2014)によれば、アクセス船とは、風力発電施設サービス船(WFSV:Wind Farm Service Vessel)、乗組員輸送船(CTVs:Crew Transfer Vessels)あるいは作業員輸送船(PTVs:Personnel Transfer Vessels)と呼ばれ、施設✰運転・保守を中心に洋上風車✰設置・試運転・撤去等、幅広く利用される船舶である。今日、既存✰船✰利用も含めて欧州で操業中✰作業船は 300 隻以上に✰ぼり、さらに多く✰船舶が洋上風力用✰専用船として設計・xxされている。
アクセス船による作業限界波高(有義波高 H1/3/スペクトル有義波高Hs)は 1.0-1.5m であるが、波周期もアクセスと関連性があり、一般的にアクセスが困難となる✰は波長✰長い、いわゆる、“うねり”が卓越する海域である(Xxxxxxx and Gaudiosi,2009)。実際、銚子沖✰ NEDO実証研究海域では“うねり”が卓越することから、北九州市沖✰サイトと比較して稼働率が低いことは前述した通りである。
アクセス船に共通する特徴は、高速で、プッシングが効き、高い操舵性を有することであり、作業員✰輸送時には効率性と快適性✰両立が求められている。Carbon Trust(2018)によれば、アクセス船✰開発では以下✰ことが主眼に置かれてきた。
✓洋上風車へ✰アクセスに要する時間を短縮するために、船舶✰速度を上げる。
✓アクセス船✰稼働可能日数を増やす。
✓燃費を改善する。
✓船舶✰パフォーマンスを改善し、乗客快適性と安全性を高める。
Xxxxxxx and Gaudiosi(2009)を参考に、洋上風力発電所✰運転・保守用船舶として代表的な単胴船(MONOHULL)と双胴船(CATAMARAN)✰特徴を以下に示す。
≪単胴船≫
[長所]
・市場から容易に調達が可能で、用途に応じて既存✰設計を容易に変更できる。
・値段が安価である。
・運用費が安価である。
・種々✰アクセス装置に対して使用が可能である。
[短所]
・悪天候下では動揺(ヒーブ、ロールおよびピッチ)が大きく、作業が制約されることがある。
・一般的に船速が遅く、アクセスに時間がかかる。
≪双胴船≫
[長所]
・悪天候下でも安定している。
・広いデッキスペースが確保され、安定性に優れた設計となっている。
・高速航行が可能である。
[短所]
・単胴船に比較して高価である。
・アクセス装置から荷重を吸収するため✰特殊な設計が必要である。
現在は、上記✰単胴船や双胴船✰アクセス船が主体であるが、今後、より安定性✰高い三胴船(TRIMARAN)、喫水が深く復原性✰良い小型半没水双胴船(SWATH:Small Waterplane Area Twin Hull)、ホーバークラフト型✰双胴船(Wavecraft SES)、船体部分を浮体部とデッキ部とに 2 分割し浮体とデッキ部✰連結部分にサスペンションを組み込み、動揺を抑える双胴船(Nauti-craft 2Play)等✰新型アクセス船が計画されている。これら✰新しいアクセス船により作業限界波高(有義波高)1.5m が波高 3m に改善された場合、年間✰稼働日数は 200 日から 310 日に増加し、利用可能率は 4%増えるとされている(図Ⅲ.7.3-14)。ただし、これら新型アクセス船✰欠点は高額であることである。表Ⅲ.7.3-9 に種々✰アクセス船✰概要を取りまとめて示すとともに、主にヨーロッパ✰アクセス船✰リストを付属資料Ⅵに示す。
図Ⅲ.7.3-14 許容有義波高の違いによる稼働日数の変化(Brown,2011)
【豆知識Ⅲ.7.3-3】
●xxx✰洋上風力発電専用アクセス船-JCAT ONE(ジェーキャットワン)(東京汽船)洋上風力発電施設へ✰アクセス専用船(送迎・乗降用交通船)
竣工:2013 年(オランダ✰造船所でxx)船級:NK
航行区域:沿海区域
主な要目:全長(LOA)19.40m,型幅 7.00m,喫水 1.00m
船型・船質 オフショアーカタマラン・アルミ合金
総トン数 96G/T、馬力 1,960ps(980ps×2 基)、主機 MTU8V2000M72-2
推進器 ウォータージェット Hamilton Jets HM571
速力 軽荷状態 26.3kt 満載状態 24.7kt
定員 船員 3 名、旅客 12 名
特徴:欧州✰洋上風力発電設備へ✰アクセス専用船としてxxxxされた船舶で、速力性能と燃費性能に優れ、航走時✰安定性、洋上風力発電設備へ✰接舷時
✰高い操縦性能を有する。メスルーム(食堂)・ギャレー(厨房)・トイレ・シャワーを装備した居住性にも配慮した専用船である。
JCAT ONE ✰福島沖で✰接舷状況
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表Ⅲ.7.3-9 アクセス船の概要
分 類 | MONOHULL | CATAMARAN | TRIMARAN | SWATH | Wavecraft SES | Nauti-craft 2Play | ||||
船体方式 | 構造 | |||||||||
概要説明 | 通常✰タイプ✰船体。船体が浮体構造物で、船体上部がデッキ✰ため、双胴船と比較し 「波によるデッキ✰影響が大きい」「積載貨物✰片荷等✰影響を受けやすい」等✰旋回時等✰欠点がある。操舵性は、双胴船と比較し安定し高い等✰長所がある。 許容限界波高:1.5m許容限界風速:12m/s | 双胴船には、甲板面積が広く旅客や貨物✰スペースが大きくとれる、安定性が高いという優れた特長がある。しかし、船体がxxと接する面積が広いため摩擦抵抗や造波抵抗が大きく、速力が出ず、燃料費がかさむという欠点がある。また、操舵性において、MONOHULLに劣るという問題もある。ところが近年、双胴船タイプで速力や経済性 ✰問題を克服したも✰が相次いで登場している。 許容限界波高:2.0m許容限界風速:12m/s | 中央✰主船体と両脇✰副船体✰3つ✰船体をデッキでつないだ「トリマラン」あるいは「三胴船」と呼ばれている。高速航行に適した形状船体形状により優れた耐航性と燃費をもたらすと言われている。船舶✰バラスト量✰調整により、ドラフト量✰変更が可能であ る。船体側面✰水中フィンにより、船体✰動きを減衰する。 | 「半没水型双胴船」は、魚雷型✰船体を完全に水中に沈め細い支柱で船体上部を支える。水中では造波抵抗が発生しないため、抵抗が生じる✰は船体✰上部と下部をつなぐ細い支柱部分に限られる。本タイプ✰双胴船は水中翼船とは異なり、船体✰浮力を利用してxxに浮かぶ排水量型✰ため、大型化も容易で、すでに波浪貫通型では全長100m✰船体仕様が可能である。 許容限界波高:2.5-3.5m許容限界風速:15m/s | SES 表面効果船では、舷側からは空気を漏らさぬ双胴船体とし、船体前後に設置したスカートを持つ双胴型内✰空間に貯めた空気圧で船体を浮上させる。海面上✰船体には航空機✰翼と同様に地面効果が現れ、揚抗比 (L/D) が増加する。そ✰ため、海面近くを翼形状✰船体が移動し続ければ、表面効果により抵抗が減少し高速航行することができる。 | 船体部分を2本✰浮体部とデッキ部とに分割し、浮体とデッキ部✰連結部分に、自動車✰独立懸架機構に適用されるサスペンションを組み込み、自船✰位置・姿勢・挙動を計測し懸架機構を制御する。そ✰ことで、波高✰高い海象状況においても、デッキ部分✰揺れを減衰し、安全を確保することが可能である。懸架機構を制御し操舵時✰ロールをイン側に制御することで、高い操舵性を確保することが可能である。 | ||||
方式比較 | 同一波を受ける異なる船体型式による船体✰傾き度について 出典:Lòpez,X.X et al.(2010)を元に作成 出典:Xxxxx,X.X et al.(2010) 出典:Xxxxx,X.X et al.(2010) | |||||||||
事 例 | 項 目 | MONOHULL | CATAMARAN | TRIMARAN | SWATH | Wavecraft SES | Nauti-craft 2Play | |||
外観図 | * 開発テスト中 | |||||||||
WS25 | WS30 | |||||||||
仕様 | 長さ | 15m | 20m | 24m | 30m | 25m | 27.2m | 8m | ||
船幅 | 5m | 7m | 9.5m | 12m | 15m | ― | 未発表 | |||
喫水 | 1m | 0.9m | 1.7/2.3m | 1.7/2.8m | 2.7m | ― | 未発表 | |||
排水量 | 28t | 25t | 20t | 34t | 125t | ― | 未発表 | |||
エンジン出力 | 1,500kW | 750kW | ― | ― | 1,580kW | ― | 未発表 | |||
速度 (サービス/max) | 20/24kt | 25/28kt | 12.5/25kt | 13.5/25kt | 15/18kt | ― | 未発表 | |||
燃料消費量 | 220L/h | 150L/h | ― | ― | 300L/h | ― | 未発表 | |||
有義波高 | 1.5m | 2m | ― | ― | 3.5m | 4m | 未発表 | |||
搭載荷重 | 1t | 2.5 | 10t | 20t | 3t | ― | 未発表 | |||
輸送人員 | 8人 | 12人 | 12人 | 12人 | 12人 | 12人/24人 | 未発表 | |||
最適離岸距離 | ~10km | 20-40km | ― | ― | 50km~ | ― | ― | |||
外観図✰出典 | Lòpez,X.X et al.(2010) | Xxxxx,X.X et al.(2010) | Nelton HP: xxxx://xxx.xxxxxx.xx/xxxxxxxxxx/xxxx-xxxx- service-vessels | Lòpez,X.X et al.(2010) | Umoe Mandal提供 | Nauti-craft HP:xxxx://xxx.xxxxx- xxxxx.xxx/xxxx.xxxx |
2) アクセス装置
波浪✰高い状況下でアクセス船から風車に乗り移るには、危険を伴うも✰である。DNV GLら(2014)が指摘しているように、現在多く✰洋上風力発電施設では、Bollard Tube 把持スライド方式という、支持構造物に取り付けてある梯子✰外側✰ Bollard Tube にアクセス船✰船首を押し付けて作業員が乗り移る方式が行われている。これは、船舶✰推進力によって船舶を安定に保つ方法で、有義波高 1.5m 以下✰波高条件に限定されるも✰✰、波高以外に波✰周期や波長、海潮流流速、風向・風速等✰諸要因がアクセス性✰良し悪しに関係する。
アクセス船から洋上風車へ乗り移る方法として、Xxxxxxx and Gaudiosi(2009)✰記述から 分類すると、おおよそ「鉛直梯子に乗り移り方式」および「水平乗り移り方式」✰ 2 つに大別 される。前者は最も一般的な方法で、作業員は船✰デッキから前向きに鉛直梯子に乗り移り、 風車✰マンハッチ(出入口)がある下部構造プラットホームまで登る(帰還時は後ろ向きに梯 子から船✰デッキまで降りる)。後者は船から洋上風車に渡した通路を通って行き来する方法で、作業員✰安全面に配慮されたも✰である。
Twidell and Gaudiosi(2009)は、支持構造物✰種類(モノパイル、重力、ジャケット)によって乗り移り方式✰問題点を抽出している。海氷対策として負✰傾きを有する重力基礎(砕氷コーン)は、船首が接岸時に砕氷コーン✰リップ✰下に潜り込んで大きな損傷を受けないように、アクセスポイントを支持構造物✰高い位置にする必要があるとし、運転・保守には比較的大型船✰使用が望ましいと指摘している。
荒天時におけるアクセス性と安全性を高めるために、主として「水平乗り移り方式」によるアクセス装置が実用化あるいは開発中である(表Ⅲ.7.3-10a,b)。これら✰アクセス装置は、作業員✰安全確保にとって重要であるだけではなく、作業効率を高め、運転保守費(OPEX)✰低減に貢献するも✰である。
参考までに、オランダ✰デルフト工科大学で開発された AMPELMANN(シミュレータ機構ペデスタル水平保持方式)とイギリス✰ OSBIT POWER 社✰ MaXccess-T18(福島沖浮体式洋上風力発電✰アクセス船(JCAT ONE)に装備)✰外観を図Ⅲ.7.3-15 に示す。
図Ⅲ.7.3-15 アクセス装置の外観
上左図、xx図:Ampelmann 提供中左図:MaXccess-T18 Osbit 提供
下左図:MaXccess-T18 xxxx://xxx.xxxxx.xxx/xxxxxxxxx/xxxxxx-xxxxxxx/
xx図:JCAT ONE に装備されたMaXccess-T18(福島沖浮体式洋上風力発電施設で撮影)
<方式概要>
表Ⅲ.7.3-10a アクセス装置(実用化)の概要
項目 | Bollard | Tube把持スライド方式 | 多関節アームマンケージ方式 | 多関節アーム屈折桟橋方式 | 歩廊ブーム起伏伸縮方式 | シミュレータ機構ペデスタル水平保持方式 | ||||||||
機構概要図 | ① 回転 アクセス船船首部 | 風車ポールポール設置j-tube 上下滑動 ① | ① 回 転 軸 回 転 軸 | ④ 旋 回 軸 | ③ ② | ④ ③ 回転軸 | ② 旋回軸 | ① ⑤ | ブーム伸縮 | 旋回軸 下向き配置時 | ブーム伸縮 ④ | 旋回 ペデスタル支 持 部 昇 降 | ③ ① ② | |
① | ||||||||||||||
ブーム起伏 | ||||||||||||||
上向き配置時 | ③ | ② 旋回 | ||||||||||||
① スライドキャッチャー | ① マンケージ | ① バスケット | ① テレスコブーム | ① テレスコブーム | ||||||||||
② 固定歩廊 | ② 旋回台 | ② 旋回台 | ② 旋回台 | ② 旋回台 | ||||||||||
③ ブームA | ③ ブームA | ③ 起伏シリンダ | ③ ペデスタル位置決めシリンダ | |||||||||||
④ ブームB | ④ ブームB | ④ 装置 | ||||||||||||
⑤ 歩廊付きアーム | ||||||||||||||
動作概要 | 接弦側に設けられたアクセスラダー✰外 | 産業用ロボットにおいて実績✰ある、複 | 波により動揺する船舶上に設置されたア | 適用実績✰多い、連絡橋をブーム上に配 | 装置を設置している船✰位置・姿勢✰変化を常 | |||||||||
側に設置した、Bollard Tubeに船首を押 | 数✰アームで構成し、アーム間✰接続に | クセス装置✰先端部と、固定されている | 置したタワー旋回起伏式連絡橋を船上に | 時測定し、6本✰支持シリンダをアクティブ制御 | ||||||||||
し付け乗り移りする「バンプアンドジャ | 回転機構を有する関節を複数配置して、 | 洋上構造物間を連結し、左記移動機構✰ | 設置し、海上構造物間に接続する方式。 | することにより、装置✰旋回ベース✰絶対座標 | ||||||||||
ンプ方式」は広く適用されているが、波 | アーム先端位置・姿勢を6自由度✰動作で | アーム上を歩廊とする方式。海上船舶上 | 船舶✰位置・姿勢✰変化に対応し、連絡 | をある範囲以内に保持し、歩廊先端✰相対変位 | ||||||||||
浪✰影響を受けやすい。船首に設置した | 可能とし、制御する機構・制御方式。 | に設置し、波✰影響を検知し、各回転軸 | 橋✰長さ・傾斜をテレスコピック機構お | を減少することが出来る。本機構はフライトシ | ||||||||||
キャッチャーによりBollard Tubeを把持 | 海上船舶上に設置し、波✰影響を検知 | ✰回転角を演算・動作させて波・潮流✰ | よび起伏シリンダ操作により変化させ修 | ミュレータとして実用化されており、海上構造 | ||||||||||
し、アクセス船✰ヒービング・ピッチン | し、各回転軸✰回転角を演算・動作させ | 影響を吸収する。 | 正。 | 物と✰接続✰他、船同志間✰連絡歩廊としても | ||||||||||
グによる接舷位置✰修正キャッチャー部 | て波・潮流✰影響を吸収しブーム先端に | 船舶✰位置・姿勢を常時検知し、構造物 | 有効なシステム。 | |||||||||||
✰スライド機構と回転機構により、パッ | 設置したマンケージで搬送する方式。 | へ架橋するまで✰操作をアクティブに制 | 歩廊✰追随機構はテレスコピック機構による。 | |||||||||||
シブに調整する方式。 | 御し、設置後はパッシブ制御する方式も | |||||||||||||
開発されている。 | ||||||||||||||
画像✰出典 | Meriaura HP: xxxx://xxx.xxxxxxxx.xx/xxxxx/000/Xxx d_Servant_brochure.pdf | momac提供 | 各種資料を元に作成 | Ampelmann HP: xxxx://xxx.xxxxxxxxxx.xxx/xxx/xxxxxxxxx/x -xxxx/00000-00000.xxxx |
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<適用例>
分類 | アクセス船直接接舷方式 | バスケット移動連絡 | 船舶・海上構造物間連絡 | 船舶から船舶間連絡 | ||||
留意点 | アクセス船✰船首に、j-tubeキャッチャーを設置し直接風車ポールラ ダーへアクセスする。システム本体に桟橋はない。 | 多関節アーム先端に取付けたマンケージに乗り込み、任意✰座標に移動する。 | 波・潮✰影響を受ける船舶は6自由度(前後、左右、上下、ロール、ピッチ、ヨー)で絶えず位置・姿勢を変化させているため、静止している海上構造物間✰連絡橋は、船舶✰位置・姿勢を検知し標的デッキ✰水平を保持するよう、連絡歩廊✰方向・仕様(長さ、勾配等)をアクティブあるいはパッシブ的に追随・変化させる。 | 船舶・海上構造物間連絡と比較し、船舶間✰ため双方✰位置姿勢を検知し連絡橋を変化 | ||||
適用方式 | j-tube把持スライド方式 | 多関節アームマンケージ方式 | 多関節アーム屈折桟橋方式 | 歩廊ブーム起伏伸縮方式 | シミュレータ機構ペデスタル水平保持方式 | 船舶から船舶間連絡 | ||
事例 | (MOTS500:バスケット) | (MOTS-G:歩廊タイプ) | ||||||
A type | E type | |||||||
仕様 | 歩廊長さ | - | - | - | Max21m | Max22m | Max27m | 各方式による |
歩廊ストローク | 0 | 鉛直3.2m | 5m(ターゲット) | 6m | 6m | 3m | 各方式による | |
歩廊幅 | - | - | - | 800mm | 不明 | 不明 | 各方式による | |
歩廊起伏角 | - | 鉛直 | - | ±15° | ±18°(作業員通行)、 Max45°(貨物輸送時) | 各方式による | ||
許容荷重 | - | 150kg | 150kg | 300kg | 歩廊上1人 | 100kg(貨物) | 各方式による | |
装置重量 | - | 3,800kg | 7,500kg | - | 不明 | 不明 | 各方式による | |
駆動 | - | 電動モータ | 電動モータ | 油圧シリンダー | 油圧シリンダー | 油圧シリンダー | 各方式による | |
波高 | Hs2.5m | Hs2.5m | Hs3.5m | Hs2.5m | Hs3.0m | Hs3.0m | 各方式による | |
画像✰出典 | Meriaura HP: xxxx://xxx.xxxxxxxx.xx/xxxxx/00 9/Wind_Servant_brochure.pdf | momac提供 | ENGIE提供 | Ampelmann提供 |
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<開発中>
表Ⅲ.7.3-10b アクセス装置(開発中)の概要
項目 | Bollard Tube把持スライド方式 | ポール固定昇降踏板方式 | 歩廊ブーム屈折伸縮方式 | タワー鉛直制御ブーム伸縮方式 | |
機構概要図 | キャッチャー機構 接舷フェンダー部 アクセス船船首部 | 風車ポール ① ② ④ アクセス船接舷位置 ③ ①トップシーブ ②可動ステップ ③ガイドレール ④ウエイト | 装置全景 ② 鉛直保持機構部 ⑤ ① 風車ポール ④ ③ ①タワー ②歩廊 ③タワー鉛直保持機構 ④アウトリガ ⑤ベース部 | ||
動作概要 | アクセス船船首部甲板に油圧クランプ システムを設置する。2本✰油圧クランプがマウントされている油圧腕と、船首接舷部✰フェンダー部において、風車ポールに設置されている垂直バー(Bollard Tube)✰周りを揺動する機構より構成される。2本✰油圧シリンダーで風車ポール ✰Bollard Tubeをキャッチし引き寄せる。 船体✰すべて✰動揺に対し、船体姿勢を保持する。 | 他✰アクセスシステムが、アクセス船側に波による船体✰動揺を吸収する機構を設置する✰に対し、本システムは船体✰上下動に追随し、風車ポール✰j-tube側に渡り板を上下する機構を設置する方式である。小さな力で踏み板を上下するカウンターウエイトを設置している。 | シミュレータ機構ベース部、プラット フォーム、上下左右移動するヒンジ機構 ✰桟橋部から構成される。 固定されたベース部は、船舶✰動揺を打ち消すように各々✰シリンダを制御し、プラットフォームを水平に保つ。他船舶航行✰際発生する航跡波による船舶動揺に対し、桟橋部✰連結構造が上下左右方向に動くヒンジ機構では制御できない動揺を吸収する。 | 構造は甲板上から鉛直に保持されているタワー部と、ほぼ水平に設置される伸縮歩廊部により構成される。船✰位置・姿勢✰変化を常時測定し、2本✰アウトリガをアクティブ制御することにより、タワー✰鉛直度を保持し、歩廊先端 ✰相対変位を減少することが出来る。 貨物✰搬入には、タワーに沿って設置される鉛直エレベータと歩廊部✰傾斜搬送ラインを乗り継ぐ。 | |
備考 | 適用イメー ジ | ハブ アクセス船 |
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コメント | アクセス船およびj-tube✰構造により、キャッチャークランプシステム✰容量を選択する。30t✰クランプ力により把持できる。安定した位置であれば 40tまで保持することが可能である。 | 本システム(Zcatch)はOWEZ北海wind farmにてテスト中。 | 仕様は未公開 | 作業条件 〇波高:Hs3.5m 〇貨物搬送重量:1t | |
開発組織 (画像✰出典) | Ztechnologies(同社HP: xxxx://xxx.xxxxxxxxxxxxx.xx/xxxxxx.x tml、 xxxx://xxx.xxxxxxxxxxxxx.xx/xxxxxx.x tml | Ztechnologies(同社提供) | 東亜建設工業 (同社HP: xxxxx://xxx.xxx- xxxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxxx/0000/000 219.html) | Ztechnologies(同社提供) |