or
速攻組織再編
辰已法律研究所
司法書士専任講師 xxxxx
吸収合併
吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう(法2条27号定義)。
×
消滅会社 存続会社
株主
合併対価
承認!
吸収合併
契約書
僕は反対 買取請求
株主
ちょっと待てよ!
事前備置
吸収合併します!
債権者保護手続
債権者
ちょっと待ちなさいよ!
効力発生
新株予約権者
買取請求
事後備置
消滅会社側「略式」組織再編
存続会社が、消滅会社の特別支配会社である場合、株主総会の承認を要しない。
⇒ 通常の業務決定として取締役の過半数の決定(取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議)によって、吸収合併をすることができる。
[特別支配会社とは?] ※法468Ⅰ参照、以下要約
ある株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を他の会社が有している場合の他の会社のこと。
消滅会社側 略式組織再編のイメージ
特別支配会社
吸収合併
消滅会社 存続会社
株×主総会
不要!
《問題》
なぜ、存続会社が特別支配会社である場合、消滅会社側の株主総会が不要となるのか?
特別決議
成立
消滅会社の議決権の10分の9以上を特別支配会社が有しているということは、会社の実権を握っているのは存続会社である特別支配会社そのものといえる。
その存続会社側で、特別決議が成立したのであれば、消滅会社側でも、承認決議成立の蓋然性が極めて高い。
わざわざやるだけ無駄なんだから、省略してもよいということ。
消滅会社側 略式組織再編の禁止
たとえ、存続会社が特別支配会社であっても、消滅会社が公開会社である場合で、合併対価の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、株主総会の決議を省略することはできない。
前述の厳格化①特殊決議を要するケース。
特殊決議の要件は、議決権を行使することができる株主の半数以上(頭数要件)であって、当該株主の議決権の3分の2以上であるが、特別支配会社が議決権の10分の9以上を有しているからといって、株主の頭数要件が課せられている以上、承認決議成立の蓋然性が極めて高いとまでは言えないため。
存続会社側 「略式」組織再編
消滅会社が、存続会社の特別支配会社である場合、存続会社の株主総会の承認を要しない。
⇒ 通常の業務決定として取締役の過半数の決定(取締役会設置会社の場合、取締役会の決議)によって、吸収合併をすることができる。
(法362Ⅱ①,348Ⅰ、Ⅱ)
《注意》
前述の、消滅会社側の略式組織再編は(イメージ的に)小さな会社が大きな会社に吸収される事例であったが、今回はその逆のケース。
存続会社側 略式組織再編のイメージ
特別支配会社
×
消滅会社
吸収合併
存続会社
不要! ×株主総会
特別決議
成立
《理由》
消滅会社が特別支配会社である場合、存続会社側の株主総会でも承認決議が成立する蓋然性が極めて高いため。
存続会社側 略式組織再編の禁止
たとえ、消滅会社が特別支配会社であっても、存続会社が公開会社でない場合で、かつ交付する合併対価の全部又は一部が、存続会社の譲渡制限株式である場合、株主総会の決議を省略することはできない。
《問題》
なぜ、上記の場合に略式組織再編が禁止されるのだろうか?
ヒント 公開会社でない場合の
募集株式の発行
公開会社でない会社の募集株式の発行(第三者割当て)は、株主総会の特別決議を要する。
吸収合併の対価として譲渡制限株式を発行する場合であっても、譲
渡制限株式を交付するという意味においては同様である。
そのため、本来であれば特別決議を要するのだから合併の対価として譲渡制限株式を交付する場合においても、特別決議を省略することはできない。
公開会社でない会社の
募集株式の発行(第三者割当て)と同視
存続会社側 簡易組織再編
合併対価の総額が、存続会社の純資産額の5分の1を超えないときは、株主総会の承認を要しない。
× 吸収合併
株×主総会
気にするほどでない
株主
《理由》
ポケットマネー程度で吸収合併を行うのであれば、
株主総会を開くまでもない。
→ 大企業が、町工場を吸収するイメージ
債権者保護手続き(必要な理由)
消滅会社、存続会社ともに債権者保護手続を要するが、それぞれ保護を要する理由が異なる。
《消滅会社の債権者について》
×
消滅会社
存続会社
吸収合併
怒!
債権者
権利義務が存続会社に承継される
結果、債務者は存続会社となる。
→免責的債務引受の実質。勝手に債務者が変わるのは困る!
《存続会社の債権者について》
×
消滅会社
存続会社
吸収合併
怒!
債権者
吸収合併によって,消滅会社の債権者は、存続会社の債権者となる 。
つまり、債権回収のライバルが増加する。
→消滅会社の財務状況が悪い場合、債権回収可能性が低下し、その利益が害される。
(
吸収分割
吸収分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後の会社に承継させることをいう(法 2条29号定義)。
事業 (全部又は一部)
株式会社
or
合同会社
会社
制限なし)
分割対価
《POINT》 合併、株式交換・移転と違い、対価を受けるのは会社自身!
人的分割のイメージ
事業
吸収分割会社
吸収分割承継会社
分割対価
株主
分割の効力発生日に上記①や②の方法を利用し、
分割対価を株主に交付することができる。
① 全部取得条項付種類株式の取得
② 剰余金の配当
(配当財産は、吸収分割承継会社の株式のみに限る)
承認決議
承認手続においても、基本的に吸収合併等と同様に考えてよい。 吸収分割の場合、対価を受けるものが会社自身であるため、分割会社側の承認手続は、他の組織再編と異なる(後述※①、②)。
また、吸収分割会社側における簡易組織再編ができることも、会社
分割特有の話である(後述※③)。
僕たちは
対価受けない
事業
株主
分割対価
※①承認決議が厳格化しない
他の組織再編で
・特殊決議 (譲渡制限株式の設定と同視)
・総株主の同意 (対価が持分)
を要する場面であっても、会社分割の場合、承認決議の厳格化を 定めた規定が存在しない。
対価を受けるは会社であるため。
株式交換
株式交換とは、株式会社がその発行株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう(法2条31号定義)。
(全部)
株式会社 or
株式会社 合同会社
株主
完全親子会社に
対価 するための手続
債権者の保護(原則)
株式交換をする場合、債権者保護手続は、原則として双方の会社において不要(法789、799)。
株式会社
株式会社
or
合同会社
株式交換
株主変動があっても、困らない。興味があるのは、
債権回収ができるかどうか!
株主が誰であるかが変わるだけだから
債権者の保護が必要な場面①
株式会社
株式会社
or
合同会社
株式交換
《POINT》
新株予約権承継をする場合に、その株式交換契約新株予約権が新株予約
新株予約権付社債権者 権付社債
双方の会社で債権者保護手続が必要
債権者の保護が必要な場面②
株式会社
株式交換
株式会社
or
合同会社
会社の物的財産の減少
株主
《POINT》
対価が,株式以外の時
完全親会社側で債権者保護手続必要
株式移転
株式移転とは、1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう(法2条32号定義)。
(全部)
株式会社
株式会社
株主
完全親会社を
対価 設立する手続
(少なくとも1株以上)
完全子会社
完全子会社の新株予約権付社債についての新株予約権者に対して債権者保護手続を要する。
→社債部分について免責的債務引受の実質。
完全親会社
完全親会社の債権者(全員)に対して債権者保護手続を要する。社債権者増加→債権回収のライバルが増加。
会社分割と事業譲渡との違い
事業譲渡は、単に「事業を売買する」という売買契約のこと
(対価は金銭)。
会社分割は組織再編手法の一つであり、会社の一部を他の会社に承継させること(対価は原則株式)。
≪債権者保護手続きについて≫
事業譲渡の場合は不要(事業譲渡の場合は、債権者ごとに個別に同意を取り付ける必要有)。
会社分割の場合は、原則、債権者保護手続きが必要。