OA 機器の購入及び賃貸借等に係る契約に関する検討事項について(案)
解説資料別紙
OA 機器の購入及び賃貸借等に係る契約に関する検討事項について(案)
本解説資料「別紙」は、平成 20 年度環境配慮契約法基本方針検討会及び OA 機器ワーキンググループ1において継続して検討すべき事項とされた OA 機器の購入及び賃貸借等に係る契約に関し、コピー機等及びプリンタ等2を調達対象とした台数指定を行わず求める性能を規定した発注による OA 機器の調達(以下、「最適配置等を考慮した機器調達」という。)の導入準備に当たって使用することを想定したものである。国及び独立行政法人等は、本資料を参考に、最適配置等を考慮した機器調達の導入に向けた準備等を行うことが望ましい。
1.最適配置等を考慮した機器調達の必要性と意義
平成 18 年度における政府の電気使用量は、約 1,782 百万 kWh で、基準年(平成 13 年度)に比べ 3.1%増加しており、面積当たり使用量は 110.7kWh/m2 で、基準年に比べ 2.5%の減少にとどまっている3。
オフィスにおける電気使用量のうち、コピー機、プリンタ等の OA 機器は、電気使用量の一定程度の割合を占めており4これらの省エネルギー(省 CO2)は重要な課題となっている。このような中、民間企業等においては、利用者の適切な作業能率を確保し、コピー機やプリンタ等の設置台数や配置を最適化する、いわゆる「最適配置」の事例が増えている。また、一部府省では、コピー機、プリンタ等の利用実態調査を行い、適切な調達を目指した先駆的な取り組みが始められている。そこで、国等の調達において、OA 機器の中でも配置を考慮することにより消費電力量の大幅な削減を見込むことのできる機器を対象として最適配置等を考慮した機器調達を実施するこ
1 検討会・ワーキンググループに関する資料・議事録等は環境省ホームページを参照。
xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxx/00xxxxxx-xxxxxxx/xxxxx00.xxxx
2 コピー機等、プリンタ等の定義は、グリーン購入法の基本方針における「コピー機等」(コピー機及び複合機並びに拡張性のあるデジタルコピー機)及び「プリンタ等」(プリンタ及びプリンタ/ファクシミリ兼用機)である。
3 地球温暖化対策推進本部幹事会(第 23 回) 資料 2-1「平成 18 年度の政府の温室効果ガス排出量等について」
4 三田寺ら:「オフィスビルにおける OA 機器のエネルギー消費実態」,エネルギー・資源学会第 16 回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集,pp.15-20(2000)によると、電算機やコピー機、プリンタ等の OA 機器類による消費電力量は、事務所ビルのエネルギー消費量全体の約 16%である。そのうち、コピー機、プリンタの消費電力量は、OA 機器類の消費電力量の約 13%を占めている。
とが望ましい5。
一般的に、国等の機関におけるこれらの OA 機器の契約方法は、機器の仕様を詳細に規定し調達台数を指定した複数年の賃貸借で、付随する保守管理を併せて最低価格落札方式で発注する場合が多く、機器が高速化・高機能化する中、必ずしも利用状況や要求される性能を把握・分析した上で調達されているとは言い難い状況と考えられる。また、コピー機とプリンタは、元々は別々の用途に用いられていたものであったが、近年両者の役割が近接する中、以前と変わらず両者を別々に調達し続けることにより、機器が過剰に設置される傾向がみられる。そもそも OA 機器調達の本旨は機器の購入、機器の設置そのものではなく、コピー機、プリンタ等が提供するコピー・プリンタサービスを享受することである。したがって、OA 機器の調達は、目的から考えると、本来的にはサービス調達であるとの意識の転換が必要である。
このように、OA 機器調達の本旨は必要なコピー・プリントができる環境を確保することという観点に立つと、従来のような機器の台数、個別機器の仕様を指定した調達ではなく、利用状況・要求性能を考慮した上で、必要となるサービス水準を確保するための調達に変えていくことが望ましい。また、国等を取り巻く厳しい財政事情も踏まえ、OA 機器について、単に定常的な機器の入れ替えを行うのではなく、利用状況や要求性能、環境負荷の低減や、機器の購入及び賃貸借等の直接費用、スペースコスト等の間接費用等の様々な観点を考慮した調達を行う必要があり、こうした発注・契約において、機器の最適配置等を含めた民間のノウハウを活かすことが適切と考えられる。
一方、事業者にとっても、このような最適配置等を考慮した調達への変更は、調達者から示された要求性能に基づき各事業者が創意工夫してサービスを提供するという行為への転換を意味しており、各事業者が自らの得意とする手法を活用することができる6という利点を有している。
上記の必要性と意義を踏まえ、平成 20 年度環境配慮契約法基本方針検討会及び OA 機器ワーキンググループで検討を行った結果、最適配置等を考慮した機器調達の必要性をはじめ、OA 機器の購入及び賃貸借等に係る契約に関する枠組みについて一定の合意を得た。しかしながら、最適配置等を考慮した機器調達を直ちに導入することは時期尚早であり、「発注において入札に参加する者に提示すべき情報の整理」、
「最適配置を行った際の作業能率確保の考え方の整理」、「現状の OA 機器の使用実態の把握」等の課題があるとの指摘があった。
5 パーソナルコンピュータ(PC)は、一人が一台ずつ使用するのが通常であるため、配置の工夫による削減が見込めないため対象外とする(調達に際しては、グリーン購入法の判断の基準を適用)。
6 コピー機、プリンタ等の最適配置による環境負荷低減を考えた場合、例えば、A 社は、①最新型高速機を中心とした配置による台数削減、B 社は、②ある程度台数が増えても省エネ性能に優れた機器の配置、C 社は、③リユース機の導入や紙の使用量の削減など 3R の推進、により目的を達成することができる。このように、各事業者は自らの持つ技術、ノウハウを活用することができ、事業展開に応じた提案が可能となる。
2.OA 機器実態調査の目的
機器の仕様を詳細に規定し調達台数を指定する従来の調達方式では、最適配置等を考慮することが困難であり、必要なコピーやプリント環境の確保のためにどのような条件が必要かの整理が必要である。そのため、導入に当たっては、機器使用状況の把握、当該事務所が必要とする性能の考え方の整理等、調達者は十分な準備を行う必要がある。
最適配置等を考慮した機器調達に当たっては、従来の調達方式と相違があるため、調達者が要求性能を的確に整理し、入札に参加する者に対して提示すべき情報、その他仕様書に記載すべき項目等について整理をしておく必要がある。特に、要求性能の決定に当たっては、機器使用者の適切な作業能率を確保することが重要である。作業能率は、機器のレイアウト、機器稼働率、とりわけピーク時における使用状況、コピー、プリンタ利用に関する業務形態等、さまざまな要因により影響を受けることから、作業能率の確保に関する知見を蓄積することが必要である。
また、この調達方式を導入することによる温室効果ガス等の排出削減効果、調達事務の効率性、入札に参加する者の負担等を勘案すると、国等のすべての OA 機器調達において適用されることは適切ではなく、これらの有効性の観点から対象となる調達の範囲を設定する必要がある。
なお、最適配置等を考慮した機器調達は新しい考え方に基づく契約方式であり、国及び独立行政法人等の取組なしには導入に向けた検討にも資する現状把握等を進めることは困難である。実際に導入が決定された場合に、契約を円滑に実施するためには、国及び独立行政法人等が体制整備や現状把握、調達年度の統一化等、十分な準備を行っておくことが不可欠である。最適配置等を考慮した機器調達は、環境負荷削減効果が見込まれるものであり、導入後は、実施可能な施設から早期の実施が求められる。
<OA 機器実態調査の目的>
○ 最適配置等を考慮した機器調達の導入に向けた準備を行う。
○ 調達者の要求性能の記載方法(発注に当たって入札に参加する者に対して提示すべき情報、その他仕様書に記載すべき項目等)について整理する。特に、要求性能を決定する際に、機器使用者の作業能率を確保するための方策について知見を得る。
○ 最適配置等を考慮した機器調達を適用すべき調達の範囲(施設の規模、業務の性質等)に係る知見を得る。
3.OA 機器実態調査の方法
3-1 調査対象
調査の対象施設は、以下の考え方を踏まえ、国及び独立行政法人等において適切に選定することとする。
調査は、調査結果を踏まえつつ調達体制等を整え、機器更新が多く発生する等、次年度において最適配置等を考慮した機器調達が見込める施設を優先することが望ましい。あわせて、機器の配置替えを行うことにより、あるいは、一部機器の契約期間を調整することにより、施設/フロアごとに機器の調達年度の統一化を図ること等の準備を行うよう努める。
また、温室効果ガス等の排出削減効果、調達事務の効率性等を勘案すると、一定の 調達規模が必要となることから、一施設の一調達当たりの台数等で規模を限定して実 施することが適切である。機器メーカーヒアリングや国等の調達の現状を踏まえると、一施設当たりの元の機器台数(コピー機等、プリンタ等、FAX、スキャナの合計台数)で数えておおよそ 100 台以上が一つの目安となる。
以上の条件を満たしつつ、最適配置等を考慮した機器調達の導入に向けた準備をより効果的に実施するためには、施設規模、業務の性質、現行の OA 機器調達方法等が異なる複数の施設について調査を行うことが望ましい。調査には相応の負担が掛かることも勘案し、例えば、一施設/一フロア当たりの職員数や OA 機器の台数、コピー
/プリントの使用状況の異なると考えられる、本府省及び、地方支分部局等のうちおおむねブロックごとに置かれている組織等(いわゆる一次出先機関)について各府xx施設ずつを目安に調査を実施することが考えられる。
なお、実態調査を既に行っている等、最適配置等を考慮した機器調達の導入に向けた準備が整っている施設は、あらためて調査を実施する必要はない。
3-2 調査規模
調査に当たっては、調査対象施設の規模等に応じて、調査規模(調査期間、調査員人数等)を設定することが必要である。現地調査は簡易な調査を基本とする。
3-3 調査内容
調査は、専門性を要することから事業者が行うことが想定されるが、調査対象者が自ら調査を行うこともできる。
調査では、以下(1)、(2)に示す項目を基本項目として実施することが望ましい。下記項目以外にも、調査対象の性質に応じて適当と考えられる調査を実施することができる。事業者が調査を行うに当たっては、例えば、機器使用状況の把握を行う期間、
回数を明記する等、調査実施者に対して調査内容を具体化して提示する。また、紙使用量の削減目標等、業務上特に留意している点については、調査内容に影響を与えるため事前に提示することが望ましい。
(1)定量調査
機器の基本的な情報と使用状況等について把握を行う。なお、現地調査を円滑に実施するため、調査対象施設においては、可能な範囲で以下に示すデータを事前に整理しておくことが望ましい。
<調査項目例>
<機器配置状況>
・ メーカー、機種、台数、オプション構成(スキャナ機能、FAX 機能、フィニッシャー、トレイ等の有無)、ネットワーク接続の有無、契約内容等を確認
<レイアウト図>
・ レイアウト図、組織図により、オフィス什器やその他物品の配置と配置変更が可能な範囲、機器の配置、更新する機器、移設可能な機器、機器ごとの利用者、コンセントの位置等を確認
<機器使用状況>
・ 機器ごとの、用途、使用人数、出力枚数(平常時の月間コピー枚数・プリント枚数、ピーク時の 1 日コピー枚数・プリント枚数)、稼働率等を把握
<コピー、プリンタ利用に関係する業務形態>
(2)定性調査
定量調査と並行して、定量調査のみからは把握しにくい、機器使用状況に関する使用者の意見・要望、次の調達における改善のポイントとなる情報の把握を行う。
① アンケート調査
幅広い機器使用者を対象にアンケート調査を行い、機器の使用状況、出力環境に関する意識、満足度、意見、要望等を把握する。
<調査項目例>
○コピー機等について
・ 利用状況
・ 主に使用しているコピー機
・ 利用目的
・ コピーする原稿枚数と部数
・ 両面コピー、集約コピー機能の利用状況
・ フィニッシャーの活用状況
・ カラーコピーの利用状況、利用目的
・ セキュリティ、環境保全、コスト削減に対する意識
・ コピー機に対する項目別(台数、速度、操作性等)満足度、総合満足度
・ コピー機についての課題、要望
○プリンタについて
・ コピー機と同様の項目
○FAX について
・ 利用状況
・ 利用目的
・ 受信枚数、送信枚数
・ FAX に対する満足度
・ FAX についての課題、要望
○スキャナ
・ FAX と同様の項目
○オフィス環境
・ 項目別(スペース、美化、機器の発熱等)満足度、総合満足度
・ オフィス環境についての課題、要望
② インタビュー調査
現状の改善のポイントとなる情報をより詳細に把握するため、(部署内の)機器管理者、管理職/一般職等、立場の異なる使用者数名にインタビュー調査を行う。
<調査項目例>
・ 機器の管理状況、職場内における機器の使用規則等を把握(機器管理者)
・ 業務におけるコピー、プリントの使用状況、文書管理の仕組み等、現在の使用実態を詳細に把握(管理職/一般職)
3-4 調査報告
事業者が調査を行った場合、調査結果について簡潔な報告書を求め、あわせて調査結果を環境省に通知することが望ましい。
報告書の構成例を以下に示す。
○調査目的
○調査方法
○調査結果
・ 機器配置状況、機器使用状況等、機器に関する現状把握(レイアウト図を含む)
・ 事業所が抱える課題
・ 機器使用者の意見、要望等
・ 現状の作業能率
・ 発注に当たって入札に参加する者に対して提示すべき情報、その他仕様書に記載すべき項目等のまとめ(一覧表)
○評価、考察
・ 現行の課題の抽出、整理
・ 上記の課題の解決に向けた対応策
・ 望ましい機器配置 等
3-5 留意点
事業者に調査を依頼する場合、調査の際には調査実施者が事務所に立ち入るため、調査対象者は、事前に個人情報や機密情報等を管理する部署との調整を行うこと、機器設置部署に対して調査を実施する旨を周知する、必要に応じて調査実施者と個人情報、機密情報等に関する契約を取り交わす等、調査が円滑に実施するための調整を行うことが望ましい。
4.その他
上記のほか、環境省は、各府省、地方公共団体等と適宜意見交換を実施する。