これらのことから、教員が法や法教育について学ぶ機会をつくることや多様な授業例の情報が発信され共有化されることが、法教育の普及のために重要であると言えよう。今後 、書籍や各団体のWeb サイト、冊子などに法教育の授業例や資料などがさらに掲載されていくと、教員は授業についての貴重な指針を獲得することができる。また、新課程 の教科書や資料集に法教育に関係する資料が掲載されるならば、教員は(生徒も)法教育を身近に感じることができる。同時に必要なことは、教員が法や裁判、司法制度などに...
学校現場において法教育を充実・発展させるための方策について
―「契約」の授業を踏まえて―
1.契約書を作成してみよう!
(1)契約書を作成してみよう!・・・現代社会の授業で
私の勤務校は、毎年生徒の 70%以上が就職する高校である。高校を人生 最後の学校として働き始める若者が教室には多数いるのである。したがって、私が法教育の授業について考えるときはこのような生徒が前提になる。
本校では3年生に現代社会を開講している。その内容の一つに消費者問題 があり、その中で契約について学習する。しかし、現在使用している教科書 には契約について次のように記述されているだけである。「売買契約をめぐ るトラブルが増えている。こうしたトラブルは、消費者の安易な契約態度に 原因のあるものが少なくない。契約には責任がともなうことに注意しなけれ ばならない」(実教出版)。すなわち、ここには契約をする際の消費者の安易 な態度を戒める記述はあるが、契約それ自体についての記述はほとんどない。したがって、この教科書にxxであれば、生徒は近代以降の社会における契 約の基本原則である「契約自由の原則」を学ぶことなく、その原則が修正さ れた法律(たとえば、消費者契約法や労働基準法)を学ぶことになるのであ る。しかし、むしろ求められているのは、契約それ自体についての学習であ り、契約する際によく考えぬく態度を生徒が身につけるためにはどうすれば いいのかという視点である。この契約の授業において、私は近代民法の三大 原則の一つである「契約自由の原則」を生徒に体験させ、その体験をもとに 社会において作成される契約書について学習させることを試みたのである。
【1.目的】
この授業の目的の第一は、二人の若者が賃貸借契約を結ぶというケースを設定して、その契約書の内容について、生徒に班で考えさせ、判断させ、文章に表現させることである。このことは、「高等学校学習指導要領」総則において教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項の一つにあげられている「生徒の言語活動を充実する」という目的に合致すると思われる。
目的の第二は、生徒が卒業後生きていく現実の社会において作成されるような契約書の例を読ませることによって、契約書の内容及び契約書で使用さ
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れる言葉の意味を理解することの重要性を実感させることである。
目的の第三は、生徒に、契約書を作成するときは想定されるあらゆる事態に対応できるように配慮することの重要性を理解させることである。
目的の第四は、これらの学習を通して、生徒に、「契約自由の原則」という近代以降の社会における「価値」と、契約書に具体化されている「法的なものの考え方」を理解させることである。なぜなら、法教育とは「法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身につけるための教育」であるからである。
【2.内容】
一人の若者が賃料をもらってコンピューターを貸したいという意思を持ち、もう一人の若者は賃料を払ってそのコンピューターを借りたいという意思を持っている。二人の意思表示が合致し、賃貸借契約が成立する。契約書を作成しなくても契約は成立するが、このような設定で二人が作成すると考えられる契約書の内容を班で話し合わせて書かせる。その際、「起こりうるさまざまな事態を想定」するように指示する。そして、もし契約書がまとまらなければ契約それ自体が決裂する可能性もあると言い添える。以上の内容は「契約書を作成してみよう! 」(資料①)にまとめられており、生徒は考え、互いに話し合いながら「作業用プリントA」に契約内容を書いていく。
続いて、生徒が班で書いた契約書と私が作成した契約書の例を生徒に提示する。生徒は契約書の例を見ると、条文の詳しxx言葉の難しさに驚くが、驚かせることが授業のねらいの一つである。なぜなら、このような「心理的ショック」は記憶に刻まれ、生徒のこれからの生活において「十分な法意識を持って行動」する可能性を育むと期待できるからである。「コンピューター賃貸借契約書」(資料②)が生徒に提示する契約書の例である。
そして、近代民法の三大原則や契約書、賃貸借契約などについてまとめた書込み式のプリントを配布して語句を記入させ、説明する。授業の終わりには「卒業するまでに時間をつくって、市民社会のルールを規定している民法の簡単な解説書を読んでおくとよい」とアドバイスをする。「契約と賃貸借契約について(作業用プリントB )」が生徒に配るプリントである。なお、資料③はBのもとになったプリントであり、授業の後教室内に掲示する。
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【3.方法】
1時間目は、まず資料①を生徒に配布して事例の概要を説明する。その後、作業用プリントAを配布して、班ごとに契約書を書かせる。机間巡視をしながら各班にアドバイスを与える。終了時に各班が作成した契約書を集める。
2時間目は、最初にそのクラスで最もよく考えられていた契約書を生徒に配布し解説する。次に資料②を配布して、条文を順に生徒に読ませていきながら、条文の意味や言葉の意味を説明する。適宜板書し、ノートに書かせる。
3時間目は、作業用プリントBを配布して、具体例をまじえながら説明し、語句を書き込ませる。適宜板書し、ノートに書かせる。3時間確保することが難しければ、内容を精選して2・3時間目を1時間で授業してもよい。
(2)授業についての感想
今年度は、この授業を3年生5クラスで行なった。
生徒の感想としては契約書の詳しxx言葉の難しさに驚いたという感想が多かったが、考えることが楽しかったという声や勉強になったという声、これからの社会生活を考えて身が引き締まったという声も多かった。
私の反省としては、最初に班で作業をさせる際に、契約書は二人の若者がそれぞれ困る事態に陥ることを避けるための文書であると指摘したが、二人が困る事態とはどういう事態かをもっと時間をかけて考えさせてもよかったと思っている。しかし、予期していなかった内容を生徒が書いていることもあり、私にとっても楽しい、生徒の豊かな発想に驚かされた時間であった。
2.法教育の授業を構想する
生徒は、この「契約書を作成してみよう! 」と名づけられた授業に意欲的に取組んだ。それは、(1)生徒の興味・関心を引くテーマであったこと、(2)生徒の思考力を活性化する課題を与えたこと、(3)今後の生活を考えると学ぶ必要があると思える内容であったことが大きな理由であると思われる。
この授業及び生徒が意欲的であった理由から、法教育を充実させ発展させていくためのどのような道筋が見えてくるだろうか。
(1)生徒の興味・関心を引くテーマであること
二人の若者がコンピューターを貸す側と借りる側になり、その二人が作成する契約書を考えるという設定、そして言葉としては知っているが詳しくは
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知らない契約について学ぶことは、生徒には新鮮であったようである。
このような意味で、生徒が興味・関心を持っている結婚や家族に関わる法律、犯罪と刑罰、少年事件と少年法、ライフステージと法律などは、法教育の授業として魅力的なテーマであると思われる。たとえば、若い男女が出会って、恋愛して、働き始めて、結婚して、子どもが生まれて…、という人生の物語と法律との関わりをしっかり考え理解する授業も考えられる。
(2)生徒の思考力を活性化する課題を与えること
生徒に契約書の内容を考えるという課題を与えると、生徒は決して豊かとは言えない経験と知識を精一杯活用してこの課題に取組んだ。どのような文章を書けば起こりうるさまざまな事態に対応することができるのか、それぞれの若者が納得する契約書とはどのような内容なのか、生徒は考え、相談し、判断しながら、文章に表現していった。公民科の授業はややもすると教員による講義中心の授業になりがちだが、このように自分たちで考え表現する時間は、生徒にとっては思考力が活性化される時間になるのである。
このような意味で、共同体のルール作りの問題、脳死・xx死・尊厳死、死刑をめぐる問題などについて、生徒の思考力を刺激する課題を与えることができると思われる。また、模擬民事裁判・模擬刑事裁判や模擬裁判員裁判に参加することは、紛争や事件の内容、被告人の有罪無罪などについて生徒が考え、判断し、発言することになるので体験する意味は大きいし、その体験は記憶に刻まれる。なお、生徒の思考力を活性化するという観点から言うと、教員が説明を長く続けるより発問を活用する方法が効果的である。
(3)今後の生活を考えると学ぶ必要があると思える内容であること
ほとんどの生徒はこれからの人生において賃貸借契約や売買契約、労働契約などを結ぶ機会を持つだろう。そう考えると、その時に納得のいく契約をするためにも生徒である時期に(遅くとも高校生の時期に)契約書の例の一つにふれ契約について学ぶことは、意味のあることではないだろうか。生徒も近い将来に必要になる知識を今高校で学んでいると思ったからこそ、易しくはない契約についての説明を一生懸命に理解しようとしたと思われる。
このような意味で、労働やアルバイトなどの労働問題、悪質商法や多重債務などの消費者問題、自転車事故や自動車事故に関わる法律問題、そして結
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婚や家族に関わる法律など、これからの生活に密接につながる問題について生徒は強い学習意欲を持って学ぼうとするのではないだろうか。
これらの三つの点は、私たちが法教育の充実・発展をはかり、法教育の授業を構想していく上で、重要な視座になると思われる。
3.法教育を充実させ発展させるために
教員が法教育の授業を構想し実践する意欲を持つためには、教員に対してどのような支援が望ましいのだろうか。そして、生徒が法や司法制度に親しんでいくためには、どのような働きかけが求められるのだろうか。
(1)教員への支援
私が勤務する地域の社会(地歴・公民)科研究会では、数年前まで年に一度は裁判所見学・裁判傍聴の行事を実施していた。教員であっても自ら裁判傍聴に行く機会は少なく、研究会の行事に参加して初めて裁判所に入り裁判を傍聴した人も多かった。少年鑑別所や少年院の見学会を実施したこともあった。そして、2005 年からは高校生向けの法教育の教材の改訂版を制作するために、教員と弁護士会の法教育委員会に所属する弁護士との協同作業が始まった。この小冊子は 2008 年9月に発行された。その後、この小冊子のテーマごとの「授業実践の手引き」が作成され、教員が高校生に授業をする際に活用されている。教員と弁護士の協力関係は現在においても継続されており、法教育について考える講演会や教員のための法律講座(たとえば、労働法や裁判員制度などについての講座)が開催されてきている。
これらのことから、教員が法や法教育について学ぶ機会をつくることや多様な授業例の情報が発信され共有化されることが、法教育の普及のために重要であると言えよう。今後、書籍や各団体のWeb サイト、冊子などに法教育の授業例や資料などがさらに掲載されていくと、教員は授業についての貴重な指針を獲得することができる。また、新課程の教科書や資料集に法教育に関係する資料が掲載されるならば、教員は(生徒も)法教育を身近に感じることができる。同時に必要なことは、教員が法や裁判、司法制度などについて疑問に思うことがあれば、電話やメールなどで法律専門家に質問することができ、速やかに回答が返ってくるシステムを構築することである。公的な機関や弁護士会、大学などに教員の質問に答える体制ができると、教員は
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大きな安心感を抱くことができる。たとえば、法テラスの地方事務所に教員からの質問に回答する体制(教員からの質問専用のダイヤルやメールアドレスの開設など)を整備することを検討してもいいのではないだろうか。
以上のように、教員自ら行事や講座に参加して学び、共有化された授業例 から指針を得るとともに、教員の疑問に法律専門家が回答するシステムがつ くられるならば、教員は広く深い見識を持つようになり、授業のテーマを見 出し、さらには構想をまとめて、法教育の授業を実践してみようという意欲 を持つようになるのではないだろうか。教員自らの探求とさまざまな支援、協力のもとで、法教育の授業を創造する教員が増えてくることが期待される。
(2)生徒への働きかけ
教員が裁判の傍聴や見学会で見聞したことや考えたことなどを授業で数分間語るだけでも、生徒の興味・関心を引くことになる。さらに教員が法教育の授業を 1 時間でも行うことは、生徒の内に新たな認識や体験を育むことになる。そして、弁護士や検察官、司法書士らによる出張授業も生徒にとっては知的刺激に富む新鮮な時間である。法律専門家という職業は憧れの職業の一つであるから、教室で直接話を聞けることは生徒にとってはキャリアデザインを考える時間にもなるのであり、その意味では法律専門家自ら「将来の法律専門家」を育む時間になりうるのである。一方で、このような法律専門家が学校や生徒のようすを直接知ることは、それぞれの学校現場の現状に即した授業案を構想することにつながるので意味は大きいと思われる。
本校では、弁護士による出張授業を依頼して今年で6年目になるが、2年前からは 12 月に地方裁判所の見学と裁判傍聴も実施している。3年生の希望者が参加している。昨年、生徒が裁判員裁判を傍聴していると、法廷で尋問をしておられた弁護士の一人が出張授業に来てくださった弁護士であるとわかり、生徒と弁護士が法廷で感動の再会をしたということもあった。そして、参加した生徒のほぼ全員が、法廷の張りつめた空気に緊張したが、裁判を実際に傍聴することができたことは貴重な体験になったと語っている。
法教育は、これからも生徒を中心にして、教員自らの探求と法律専門家による支援、各団体相互の協力によって充実・発展していくことが求められている。私たちは、そのための方途をたゆまず追究していかなければならない。
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【現代社会:契約書・資料①】
契約書を作成してみよう!
A君は貸したい! B君は借りたい!
A君(25 歳)は、xxの舞台から飛び降りるつもりで、15 万円もする大画面のコンピューターを購入した。ところが、その直後、会社から 1 年間の海外出張を命じられた。A君にとっては「青天の霹靂(せいてんのへきれき)」である。
ところが、そのコンピューターを持っていくことは難しい。しかし、家に置いたままにするのももったいないので、A君は誰かに 1 年間貸して、賃料をもらいたいと考えた。
一方、A君の友人のB君(26 歳)は、家で仕事をするのに必要なので同じようなコンピューターを購入したい気持ちを持っていたのだが、お金が足りなかった。また、もう少し待てば、さらに高性能になり価格も下がるという情報がB君の耳に入っていた。そこで、B君は、A君から 1 年間コンピューターを賃料を払って借りておいて、
1 年後にもっと高性能で安いコンピューターを買えればいいなあと考えた。
このようなことから、1 ヶ月 2000 円で 1 年間、A君のコンピューターをB君が借りるということで、うまく話がまとまった。
以上のようなA君とB君との貸し借りについての契約書を作成してください。
(民法上は、このような賃貸借契約の成立に契約書は必要ではありませんが、契約書なしに紛争に備えることは難しいのです)
この契約書は、引渡しから返却にxxx過程において、起こりうるさまざまな事態を想定して作成することが求められます。
がんばって!!
☆近代民法の三大原則の一つに、「契約自由の原則」があります。
これは、契約するかしないか、どのような契約を結ぶかは、契約しようとする人が自由に決めることができるという原則です。A君とB君は、この原則に基づいて契約を結ぼうとしているのです。
なお、①内容が違法な場合、②内容が社会常識を越えている場合、③相手を騙(だま)して契約させた場合、④脅して契約させた場合などは、契約を取り消すことができます。
【現代社会:契約書・作業用プリントA 】
コンピューター賃貸借契約書
ちんたい ちんしゃく
賃貸人Aを甲とし、賃借人Bを乙とする。
甲と乙は、次のとおり契約する。第 1 条
第 2 条
第 3 条
第 4 条
第 5 条
第 6 条
第 7 条
第 8 条
第 9 条
第 10 条
第 11 条
以上のとおり契約が成立したので、本契約書 2 通を作成し、各自署名押印のうえ、
各 1 通を所持する。
年 月 日
賃貸人(甲) | 住所 | |
氏名 | ㊞ | |
賃借人(乙) | 住所 | |
氏名 | ㊞ |
( )系 組 ・( )班の生徒氏名
【現代社会:契約書・資料②】
コンピューター賃貸借契約書
賃貸人Aを甲とし、賃借人Bを乙とする。甲と乙は、次のとおり契約する。
(注)・・民法上は賃貸借契約の成立に契約書は必要ではないが、契約書なしに紛争に備えることは難しい。
第1条(契約の趣旨) 乙は、甲から別紙記載の物件(以下、装置という)を次条以下
の条件で借り受ける。
(注)・・別紙には、コンピューターの型式とか製品番号、引渡す日や場所、賃貸借期間、損害賠償額、さらに振込先口座などを具体的に記載する。
第2条(引渡し) ①甲は、別紙記載の引渡し日に、別紙記載の引渡し場所において、
乙が装置を使用できる状態に調整した上で、装置を引渡すものとする。
はんにゅう か し
②乙は、搬入された装置について直ちに乙の費用で検査を行い、瑕疵がないことを確認
なついん
し、甲持参の受領書に署名捺印の上、装置を引取るものとする。
(注)・・瑕疵(かし)とは、あるべき品質や性能が欠如していること。欠陥。
第3条(装置の損傷) ①乙は、装置を善良な管理者の注意をもって使用するものとし、
装置に損傷が生じたときは、天災地変、戦争その他不可抗力の場合を除き、乙の負担で
しゅうぜん
修繕することとする。
②修繕不能である場合には、乙は別紙記載の損害賠償額を甲に支払うものとする。
(注)・・善良な管理者の注意とは、行為者の職業や地位に応じて期待される注意のこと。この場合の「善良」とは、いい人という意味ではない。
第4条(期間) 賃貸借期間は、別紙記載のとおりとする。
第5条(賃料の支払い) ①乙は甲に別紙記載の方法で 1 ヶ月 2000 円の賃料を支払うものとする。
x x ん
②遅延損害金は別紙記載の通りとする。
(注)・・この条文の第2項は、賃料の振込みが遅れたときに備えている。
第6条(装置の所有権侵害行為の禁止) ①乙は、装置を第三者に譲渡したり、担保に
差し入れたり、その他甲の所有権を侵害するような行為をしてはならない。
②甲は、装置に甲の所有権を明示する標識を貼ることができ、乙はこれをその状態に維持しなければならない。
第7条(報告・点検調査) ①乙は、甲の要求があったときは、装置の状況を書面によ
り甲に報告しなければならない。
すみ
②甲又は甲の指定する者が、装置の状況を点検調査することを求めたときは、乙は速や
かにこれに応じなければならない。
か し た ん ぽ
第8条(瑕疵担保責任) 甲は、装置の瑕疵による責任は一切負わないものとする。
第9条(契約解除) 乙について下記の各号のいずれかの事情が生じたときは、甲は、
さいこく
催告を要しないで、この契約を解除することができるものとする。
1 賃料の支払いが遅延したとき
き そ ん
2 装置を毀損しその他必要な保存行為をしなかったとき
(注)・・催告とは、相手方に一定の行為を要求すること。
第 10 条(引取り) 賃貸借期間満了のときは、1ヶ月以内に、甲は、別紙記載の引渡し場所において装置を引取るものとする。
第 11 条(合意管轄) 甲及び乙は、この契約の内容に関する訴訟については、別紙記載の裁判所が専属的に管轄を持つことに合意する。
(注)・・このような契約で紛争が生じると、どこで裁判をするかをめぐっても争いが生 じることがある。この条文は紛争を早く解決するための予防的配慮の一つである。
以上のとおり契約が成立したので、本契約書2通を作成し、各自署名押印のうえ、各
1通を所持する。
年 月 日
賃貸人(甲) 住所
氏名 ㊞
賃借人(乙) 住所
氏名 ㊞
その他、甲としては、発生するかもしれない損害賠償にあてるために、
① 乙から一定額の保証金を受取っておく
② 乙の責任を連帯して負うべき連帯保証人からの署名捺印をとっておく
という方法もあり、それを条文に記載することも考えられる。
【現代社会:契約書・作業用プリントB】
契約と賃貸借契約について
(1) 契約自由の原則とその修正原理
① 近代民法の三大原則
ア.(1 )
・・土地や建物など物については、所有権を持っている人や法人が、自由にその所有物の使用、収益及び処分をすることができるという原則
(ただし、日本国憲法第 29 条を参照すること)
イ.(2 )
・・法に基づく権利を得たり義務を負ったりする権利能力は、すべての人に平等に認められているという原則
ウ.契約自由の原則
・・だれとどのような内容の契約をどのような形式で締結しようと自由であるという原則
② 契約自由の原則には、次の4点が含まれているア.契約締結の自由(契約を締結するか否かの自由)イ.契約締結相手方選択の自由
ウ.(3 )の自由
エ.契約方式の自由
③ 契約自由の原則の修正とは? ・・ いくつかの例ア.社会法的修正・弱者保護的修正
たとえば、雇用契約が(4 )などの労働法によって、売買契約が割賦販売法や特定商取引法などによって、修正されている
また、消費者保護という観点から、(5 )が制定されているイ.xxな自由競争の確保という観点から、(6 )、不正競争防止
法などが一定の競争制限的な契約を規制している
の法律は、
以前に学習しました
(2) 口頭合意原則と契約書
契約自由の原則は、(7 )の自由を含むので、口頭による合意も契約としての効力を有する
一方、現実の社会では契約書が重視され、押印とくに(8 )などが重視されることも少なくない。法的に、口頭の合意と契約書はいかなる関係に立つのだろうか
① 契約自由の原則のもとで、口頭の合意にも契約としての拘束力が認められるのが原則である
この原則は、契約の成立と同時に債務の履行がなされる「現実売買等の分野」と
「(9 )の分野」で主に機能する
その理由は、債権・債務が残らない現実売買では、多くの場合には証拠としての契約書は不要であり、少額取引であれば、たとえ債券・債務が存続しても深刻なものではないからである
(例)・コンビニでの売買、ピザの電話注文
② 契約成立後に、一定の価値をもつ債権・債務が残る場合には、(10 )としての契約書が作成されることが多い。とりわけ、高額取引においては、証拠書類の必要性が高いので、契約書が作成される割合が高い
特に、(11 )など高額な取引で契約書を作成するのが社会的な慣行とみられ、契約書の作成と手付けの交付があって初めて契約が成立する、と認定されることが多い
(3) 賃貸借契約について
① 賃貸借契約は、「ある物の(12 )」を相手方にさせることを約し、相手方が「(13 )支払い」を約することによって成立する
(例)・家屋やマンションを借りて住む =所有者と建物賃貸借契約を締結している
・レンタルビデオを利用する =店と賃貸借契約を締結している
② 賃貸人・賃借人の権利義務
【賃貸人】
1.賃貸人の主な債権
(14 )権、目的物の用法遵守請求権、契約終了時の目的物返還請求権
2.賃貸人の主な債務
目的物の引渡し義務、目的物を使用・収益させる義務
【賃借人】
1.賃借人の主な債権
目的物の引渡し請求権、目的物の使用・収益を求める権利
2.賃借人の主な債務
賃貸人と賃借人の債権と債務は、
対応していますね
(15 )義務、目的物の用法遵守義務、契約終了時の目的物返還義務
債権・債務という言葉は、
すでに学習しました
( )系 組 番・氏名
【現代社会:契約書・資料③】
契約と賃貸借契約について
(1) 契約自由の原則とその修正原理
① 近代民法の三大原則 ア.所有権絶対の原則
・・土地や建物など物については、所有権を持っている人や法人が、自由にその所有物の使用、収益及び処分をすることができるという原則
(ただし、日本国憲法第 29 条を参照すること)
イ.権利能力平等の原則
・・法に基づく権利を得たり義務を負ったりする権利能力は、すべての人に平等に認められているという原則
ウ.契約自由の原則
・・だれとどのような内容の契約をどのような形式で締結しようと自由であるという原則
② 契約自由の原則には、次の4点が含まれているア.契約締結の自由(契約を締結するか否かの自由)イ.契約締結相手方選択の自由
ウ.契約内容決定の自由エ.契約方式の自由
③ 契約自由の原則の修正とは? ・・ いくつかの例ア.社会法的修正・弱者保護的修正
たとえば、雇用契約が労働基準法などの労働法によって、売買契約が割賦販売法や特定商取引法などによって、修正されている
また、消費者保護という観点から、消費者契約法が制定されている
イ.xxな自由競争の確保という観点から、独占禁止法、不正競争防止法などが一定の競争制限的な契約を規制している
の法律は、
以前に学習しました
(2) 口頭合意原則と契約書
契約自由の原則は、契約方式の自由を含むので、口頭による合意も契約としての効力を有する
一方、現実の社会では、契約書が重視され、押印とくに実印などが重視されることも少なくない。法的に、口頭の合意と契約書はいかなる関係に立つのだろうか
① 契約自由の原則のもとで、口頭の合意にも契約としての拘束力が認められるのが原則である
この原則は、契約の成立と同時に債務の履行がなされる「現実売買等の分野」と「少額取引の分野」で主に機能する
その理由は、債権・債務が残らない現実売買では、多くの場合には証拠としての契約書は不要であり、少額取引であれば、たとえ債券・債務が存続しても深刻なものではないからである
(例)・コンビニでの売買、ピザの電話注文
② 契約成立後に、一定の価値をもつ債権・債務が残る場合には、証拠書類としての契約書が作成されることが多い。とりわけ、高額取引においては、証拠書類の必要性が高いので、契約書が作成される割合が高い
特に、不動産取引など高額な取引で契約書を作成するのが社会的な慣行とみられ、契約書の作成と手付けの交付があって初めて契約が成立する、と認定されることが多い
(3) 賃貸借契約について
① 賃貸借契約は、「ある物の使用及び収益」を相手方にさせることを約し、相手方が「賃料支払い」を約することによって成立する
(例)・家屋やマンションを借りて住む =所有者と建物賃貸借契約を締結している
・レンタルビデオを利用する =店と賃貸借契約を締結している
② 賃貸人・賃借人の権利義務
【賃貸人】
1.賃貸人の主な債権
賃料請求権、目的物の用法遵守請求権、契約終了時の目的物返還請求権
2.賃貸人の主な債務
目的物の引渡し義務、目的物を使用・収益させる義務
【賃借人】
1.賃借人の主な債権
目的物の引渡し請求権、目的物の使用・収益を求める権利
2.賃借人の主な債務
賃料支払い義務、目的物の用法遵守義務、契約終了時の目的物返還義務
債権・債務という言葉は、
すでに学習しました
賃貸人と賃借人の債権と債務は、
対応していますね
( )系 組 番・氏名