このような状況に対応するため、行政機関が行っていた業務を専門的な知識や経験を有する民間企業等が代行もしくは支援することが有効と考えられ、CM 方式や事業促進 PPP 方式が導入されつつある。
監理業務標準委託契約約款・監理業務共通仕様書利用の手引き
まえがき
1.監理業務とは
2.監理業務の契約図書
3.体制と契約関係
4.業務者の責任と権限
5.特記仕様書の記載例
6.監理業務委託料の積算、請求・支払
7.Q&A
<参考資料1:監督業務、検査業務に関連する法令>
<参考資料2:国土交通省における調査職員、監督職員、検査職員の用語の定義>
まえがき
わが国では、本格的な人口減少・高齢社会を迎え、生産年齢人口の減少に伴い各分野で人手不足が顕在化しつつある。建設行政の分野も例外ではなく、公共事業を執行する行政機関においても技術職員の確保が課題となっている。また、東日本大震災の復旧復興事業のように急激に建設需要が増加した場合には、職員のみでは対応が困難となり外部からの支援が必要となる。
このような状況に対応するため、行政機関が行っていた業務を専門的な知識や経験を有する民間企業等が代行もしくは支援することが有効と考えられ、CM 方式や事業促進 PPP 方式が導入されつつある。
「公共工事の品質確保の促進に関する法律」では、「発注者の責務」として、第 21 条に「発注者は、その発注に係る公共工事が専門的な知識又は技術を必要とすることその他の理由により自ら発注 関係事務を適切に実施することが困難であると認めるときは、国、地方公共団体その他法令又は契約により発注関係事務の全部又は一部を行うことができる者の能力を活用するよう努めなければならない。(以下略)」とされており、2015 年 1 月に策定された「発注関係事務の運用に関する指針」に
おいては、「外部からの支援体制の活用」として CM 方式、事業促進PPP 方式が例示されている。
「監理業務標準委託契約約款」及び「監理業務共通仕様書」は、必要な技術職員が確保できない場合、事業量の急増又は高い専門性などの理由で職員のみでは事業執行が困難な場合等に、行政機関の職員が従来行っていた業務を民間企業等に委託する際の標準的な契約図書として制定・公表するものである。
「監理業務」は、「事業監理」、「契約監理」及び「他機関調整等」から成るが、民間企業等に委託できる部分と行政機関の職員が自ら行う委託できない部分がある。「契約監理」は、調査職員・監督職員・検査職員の権限を監理業務受託者が行使することが法的にも認められているが、委託者・発注者のみが行使でき、委託してはならない権限がある。一方、「事業監理」、「他機関調整等」における行政機関の役割は法律行為に当たるものが多いため委託できる範囲を行政機関の支援にとどめている。この基本に基づき「監理業務共通仕様書」では監理業務の委託範囲をできるだけ幅広く規定しているが、実際に監理業務を委託する際には、行政機関の判断で必要な条項を取捨選択することとしている。
本「利用の手引き」は、「監理業務標準委託契約約款」及び「監理業務共通仕様書」を使用するに あたり、監理業務及びその契約図書に関する基本的な事項や留意点等を取りまとめたものである。監 理業務委託を適切に活用することにより、公共事業の円滑な執行に資することを期待するものである。
1.監理業務とは
監理業務は、「事業監理」、「契約監理」及び「他機関調整等」に分けることができる。
「契約監理」とは、公共土木事業の測量、調査、設計及び工事の各契約段階において、従来事業を執行する行政機関が担っていた調査職員、監督職員及び検査職員などの役割について、その全部又は一部を企業、団体又は個人が委託を受けて実施する業務である。
※ 調査職員、監督職員、検査職員:これらの呼称は、国や地方自治体によって、調査員、監督員、検査員など若干異なるものもあるが、ここではこれらを調査職員、監督職員、検査職員という呼称で代表させている。
「事業監理」は、行政機関が担っていた事業計画や測量、調査、設計及び工事の入札契約事務、用地補償に係わる業務のうち「契約監理」に関連する業務の一部を遂行することである。
「他機関調整等」は、「契約監理」に関連して行政機関が担っていた関係官公庁等に対する手続きや地元協議、住民説明、関係機関調整等を行う業務である。
事業を執行する行政機関は、自らの体制や事業の難易度などを勘案し、上記の業務内容から委託する範囲を特定する。
監理業務とは、公共土木事業の測量、調査、設計及び工事の各契約段階の契約監理の全部又は一部、及びそれらに密接に関連する事業計画や入札契約事務、用地補償、他機関調整、住民説明などの一部について、企業、団体又は個人が委託を受けて実施する業務をいう。
契約監理は、巻末の<参考資料1>に示す、会計法第29条の11第5項、予算決算及び会計令第101条の8、地方自治法施行令第167条の15第4項により、当該行政機関以外のものに監督及び検査を委託することができると明示されていることを根拠としている。当該行政機関以外のものには企業、団体又は個人が含まれると考え、企業、団体又は個人による本監理業務の実施は可能であるとの前提に立っている。
また、予算の執行などに係る行政機関の行為(契約額や工期、設計図書の変更等)は、民法で言うところの法律行為と考えられ、企業、団体又は個人に委託することはできないと考えられる。そのため、監理業務として委託できる範囲は、技術的な事項や業務・工事の手続き的な事項を取扱う調査職員、監督職員及び検査職員の役割と、これに密接に関連する事業計画や入札契約事務、用地補償、他機関調整、住民説明などの一部の役割としている。事業計画や入札契約事務、用地補償、他機関調整、住民説明などにおける行政機関の役割は法律行為に当たるものが多いため、監理業務として委託できる範囲は行政機関の支援にあたる部分となる。
「事業監理」、「契約監理」及び「他機関調整等」の業務内容は次のとおりである。
(1)事業監理
事業監理は、下記のような項目であり、事業計画や事業工程、事業予算、入札・契約に関する業務が含まれるため、従来行政機関が担っている。監理業務では、これらの一部について委託を受けて実施する。
• 測量・調査・設計等業務及び工事に関する事業計画の確認、事業工程計画の検討、実施計画案の検討等の業務
• 測量・調査・設計等業務及び工事の入札・契約に関する業務
• 用地補償手続きに関する業務
(2)契約監理
国土交通省や地方自治体等の公共土木事業を執行する行政機関は、測量、調査、設計及び工事の契約において、それぞれの契約図書(含、契約約款、仕様書)に調査職員、監督職員及び検査職員の存在を明示し、行政機関が果たすべき監督、検査を行うこととなっている。
これらの監督、検査については、関連法令において、行政の職員以外のものに委託することを可としている。
※ 関連法令:国の場合は会計法ならびに予算決算及び会計令、地方自治体の場合は地方自治法ならびに地方自治法施行令
契約監理は、次のような項目であり、行政機関が担っていた調査職員、監督職員及び検査職員などの役割について、その全部又は一部を実施する業務である。監理業務受託者は、監理業務の対象となる測量業務契約、調査業務契約、設計業務契約、工事請負契約の特記仕様書に、調査職員、監督職員及び検査職員の構成員として明示され、付与された権限の範囲内で監理業務を実施する。
• 測量・調査・設計等業務の契約監理
• 工事の契約監理
(3)他機関調整等
他機関調整等は、次のような項目であり、行政機関が担っていた関係官公庁等に対する手続きや地元協議、住民説明、関係機関調整等を行う業務である。監理業務では、事業を遂行する行政機関の指示を受けて、当該行政機関の代理として付与された権限の範囲内で調整等を実施する。
• 地元協議・住民説明
• 関係機関との協議・調整
監理業務の内容を整理すると図-1に示すようになる。
監理業務の対象者
監理業務
地権者(土地・建物)
住民
工事請負者
工事応札候補者
関係機関
測量・調査・設計者
測量・調査・設計等業務応札候補者
事業監理
・測量・調査・設計等業務及び工事の発注計画
・設計図書作成、入札手続支援
・用地補償
契約監理
・測量・調査・設計等業務の監理
・工事の監理
他機関調整等
・関係機関協議
・住民説明
・官公庁への手続き
図-1 監理業務の内容
監理業務は、契約監理が中心となり、それに関連する事業監理及び他機関調整等が加わることによって適切なものとなる。そのため、監理業務の契約の中に契約監理を含まないことは適切ではなく、また、契約監理の対象となる測量・調査・設計等業務及び工事に比較して大きく異なるような事業監理及び他機関調整等の範囲を設定することは妥当ではない。監理業務の範囲を設定する際には、事業監理、契約監理及び他機関調整等のバランスを図ることは重要である。
事業を執行する行政機関が行う主な業務項目のうち、監理業務の対象になり得る業務内容は表
-1のように整理できる。個々の監理業務の契約にあたっては、行政機関のニーズに応じて業務項目を取捨選択することにより、業務内容を明確にする。
監理業務の具体的な業務内容は、監理業務の契約図書の中で明記するものとする。
(4)業務内容を取捨選択する場合の契約図書における対応方法
監理業務共通仕様書の各条項で規定された業務内容から委託しないものがある場合に、監理業務契約図書における扱いとしては、次のような方法がある。
1.共通仕様書から不必要な条項を削除する(A)
2.特記仕様書に共通仕様書の該当する条項を適用しない旨を規定する(B)
なお、実際には適用することが無い規定であっても、残しておいても支障のない部分(例えば、第
1 章 共通編)はそのままでも良い。
【事例1】事業監理-入札契約事務のうち「入札参加企業の評価」については委託しない場合
(A)共通仕様書での対応
(入札参加企業の評価)
第 27 条 業務者は、測量・調査・設計等業務又は工事の入札にあたり、委託者・発注者が定め た評価基準に基づいて入札参加企業から提出された入札書類の評価を行い、その結果を報告書にとりまとめ、測量・調査・設計等業務委託者又は工事発注者に提出する。工事の入札時VEが行われた場合は、提案の採否や採用についての技術的判断及び工事費算出の適否について工事発注者に助言する。
(B)特記仕様書での対応
(監理業務共通仕様書の非適用)
第○条 監理業務共通仕様書の以下の条項は本業務に適用しない。一 第 27 条
【事例2】「工事の契約監理」及び「工事請負者間調整」のみを委託する場合
(A)共通仕様書での対応
監理業務共通仕様書の第 2 章、第 4 章及び第 3 章のうち「測量・調査・設計等業務の契約監理」
(第 35 条~第 45 条)を全削除(取消線を引く)
【測量・調査・設計者間及び工事請負者間調整】
(測量・調査・設計者間及び工事請負者間調整)
第 59 条 業務者は、監理業務の対象事業において関連する測量・調査・設計者間又は工事請負者間で生じる設計工程や工事工程等の技術的観点からの調整案について、円滑な工程進捗及び工事進捗状況を確保するため、必要となる設計条件や工事工程等の調整案を作成し、測量・調査・ 設計等業務委託者又は工事発注者に提案する。
2 業務者は、測量・調査・設計者間又は工事請負者間の調整が円滑に行われるよう関係する測
量・調査・設計者又は工事請負者と随時打合せ・協議を行う。
(B)特記仕様書での対応
(監理業務共通仕様書の非適用)
第○条 監理業務共通仕様書の以下の条項は本業務に適用しない。一 第 2 章(第 12 条~第 31 条)
二 第 3 章のうち、第 35 条~第 45 条
三 第 4 章(第 60 条)
2.監理業務共通仕様書の以下の条項は、次のように読み替える一 (工事請負者間調整)
第 59 条 業務者は、監理業務の対象事業において関連する工事請負者間で生じる工事工
程等の技術的観点からの調整案について、円滑な工事進捗状況を確保するため、必要となる工事工程等の調整案を作成し、工事発注者に提案する。
2 業務者は、工事請負者間の調整が円滑に行われるよう関係する工事請負者と随時打合
せ・協議を行う。
表-1(1/2) 監理業務の対象となる行政機関の業務項目〔事業監理〕
分類 | 業務項目 |
事業計画 | 事業計画に関する基本方針の決定 |
事業工程計画の決定 | |
事業全体の予算案の決定 | |
事業期間の短縮に関する検討 | |
事業のコスト縮減に関する検討 | |
事業のリスク等の検討 | |
測量・調査・設計等業務実施計画案の決定 | |
工事実施計画案の決定 | |
測量・調査・設計等業務の発注計画の決定及び発注準備 | |
工事の発注計画の決定及び発注準備 | |
用地取得計画案の決定及び関連調査業務の発注準備 | |
事業計画案の進捗状況管理 | |
情報公開 | |
その他業務 | |
入札契約事務 | 測量・調査・設計等業務の入札・契約方式の決定 |
工事の入札・契約方式の決定 | |
測量・調査・設計等業務者・工事請負者選定工程の決定 | |
選定資料の作成(※2 ) | |
契約関連図書の作成 | |
積算(予定価格の算定を含む)(※1) | |
入札手続き | |
現場説明・質疑応答 | |
入札参加企業の審査(※2 ) | |
技術提案の審査(※2 ) | |
測量・調査・設計等業務者・工事請負者選定、特定資料作成 | |
その他業務 | |
用地補償 | 現況ヒアリング等(※3) |
土地立ち入り手続き、現地踏査(※3) | |
土地調査、用地調査等の調査業務の発注計画、調達及び契約監理 | |
関係権利者の特定(※3) | |
補償額算定書の照合及び補償金明細表の作成(※3) | |
用地交渉方針の策定及び用地交渉用資料の作成等(※3) | |
権利者に対する用地交渉(※3) | |
用地交渉記録簿の作成(※3) | |
用地交渉後の措置(※3) | |
移転履行状況等の確認(※3) | |
移転履行状況等の確認後の措置(※3) | |
用地進捗管理 | |
その他業務 |
※1:発注者支援業務(積算業務)として民間に委託されることがある
※2:発注者支援業務(技術審査業務)として民間に委託されることがある
※3:発注者支援業務(用地補償総合技術業務)として民間に委託されることがある
表-1(2/2) 監理業務の対象となる行政機関の業務項目〔契約管理〕・〔他機関調整等〕
分類 | 業務項目 |
測量・調査・設計等業務の契約監理 | 設計図書、業務計画・照査計画等の確認 |
測量・調査・設計等の条件の確認 | |
業務の監督 | |
調査・設計変更事項の決定 | |
調査・設計変更の協議 | |
全体工程の管理 | |
技術提案(VE 提案を含む)の審査 | |
比較設計等の審査 | |
業務者間の調整 | |
業務者との打合せ・協議 | |
調査・設計成果の確認、審査 | |
完了検査 | |
調査・設計成績の評定 | |
その他業務 | |
工事の契約監理 | 設計図書及び施工計画書の確認(※4 ) |
品質計画書の確認(※4) | |
施工体制の確認 | |
材料の確認(※4) | |
工事施工の立会(※4) | |
段階(施行状況)確認・把握(※4) | |
工事工程・進捗の確認(※4) | |
技術提案の審査 | |
設計変更の協議及びその実施 | |
契約額設計変更の審査 | |
工期変更の審査 | |
改造請求及び破壊による確認 | |
建設副産物の適正処理状況の確認 | |
出来形の確認(※4) | |
中間検査及び完成検査 | |
完成図書の作成 | |
中間前払い及び部分払い請求時の対応 | |
工事区間の調整 | |
工事請負者との打合せ・協議 | |
工事成績の評定 | |
その他業務 | |
協議・調整等 | 関係官公庁への手続き等 |
許認可に関わる協議・申請 | |
地元協議・住民説明 | |
工事期間中の地元住民対応 | |
関係機関との協議・調整 |
※4:発注者支援業務(工事監督支援業務)として民間に委託されることがある
2.監理業務の契約図書
監理業務の契約図書としては、標準契約約款および共通仕様書を整備している。共通仕様書において特記仕様書に記載することとした項目については、「5.特記仕様書の記載例」にその一例を示す。
監理業務の契約図書の対象とする事業の範囲と事業段階の範囲は次のとおりとした。
• 事業の範囲は、公共土木事業とし、それに関連する建築、機械、電気設備などを含めることがある。
• 事業段階の範囲は、測量、調査、設計、工事とし、それらの準備段階も含めることがある。
個々の監理業務の範囲は、事業を執行する行政機関が適当と判断する任意の範囲を設定するものとし、必ずしも上記の範囲に限定されるものではない。
監理業務における「事業監理」、「契約監理」及び「他機関調整等」の内容については共通仕様書において明確にした。また、これらに関する具体の業務の範囲と内容は、対象となる事業、測量・調査・設計等業務、工事について、監理業務特記仕様書の中で明示する。
「事業監理」については、行政機関が実施していた業務を新たに業務者(監理業務受託者が監理業務に従事するものとして定めた者)に実施させるものであるため、参考とする図書類が十分にないことから、共通仕様書の各条項を新たに作成している。
「契約監理」において、測量、調査、設計等業務又は工事で現在活用されている契約約款や共通仕様書等は、極力変更を生じさせないものとしている。
「契約監理」において、業務者が調査職員・監督職員の実施する監督業務と検査職員の実施する検査業務の両方の役割を担う場合において、監督業務と検査業務の兼務が法令等により禁止されている場合は業務者の管理技術者の下に監督と検査を担当する技術者をそれぞれ置き、その兼務を不可とする。
(1)監理業務の契約図書
契約図書は、契約約款及び設計図書(図面、共通仕様書、特記仕様書、現場説明書、質問回答書、委託者・発注者から変更又は追加された図面及び図面のもとになる計算書等)を総称していう。
このうち、監理業務の委託者が共通に使用できるものとして、土木学会で標準契約約款と共通仕様書を制定した。その上で、共通仕様書において特記仕様書に記載することとした項目については、「5.特記仕様書の記載例」にその一例を示した。
(2)請負契約との相違点
監理業務は、委託者である行政機関等の職員が行う業務を監理業務受託者が職員に代わって処理するものであり、「仕事の完成を約する」請負契約とは異なり、民法の典型契約としては、準委任契約に相当するものである。
このため、監理業務標準委託契約約款においては一般的な請負契約とは次の点で異なる扱いを行っている。
1. 調査・設計業務における調査報告書・設計成果物、工事における工事目的物に相当する「業務の成果物」に関する規定を設けていない。なお、契約の履行の確認ができるように、監理業務受託者は監理業務委託者に履行の報告を行うことを規定している。
2. 「業務の成果物」が無いため、瑕疵担保責任及び著作権に関する規定を設けていない。
3. 請負契約では、部分払において一般的には出来高相当額の一部(例えば 1/10)の支払いを保留することができるが、監理業務では、検査により履行が確認されると過払いの可能性がないため、支払いを一定率留保できる規定を設けていない。
本契約図書で扱う業務内容に加えて、監理業務受託者に具体的な成果物の完成を求める業務を行わせる場合には、当該業務部分に関して必要な規定を加えるものとする。監理業務受託者に成果物の完成に係る責任を求める場合は、成果物の完成に対してのみ責任を付加するなど、十分注意することが必要である。
(3)監理業務の契約図書が対象とする範囲
監理業務の契約図書の対象となる事業の範囲は公共土木事業とし、事業段階の範囲は測量、調査、設計、工事とそれらの準備段階も含めることがある。
事業の範囲については、公共土木事業では多くの工種が混在することから、土木だけに限定するのではなく、それに関連する建築、機械、電気設備なども含めることがある。
事業段階の範囲については、測量、調査、設計、工事の各段階と、それらの段階の準備段階となる事業計画確認や入札契約事務などについても含めることがある。
上記は監理業務の契約図書を作成するために設けた対象範囲であり、個々の監理業務の契約範囲については、事業を執行する行政機関が適当と判断する任意の範囲で設定できる。すなわち、実際の契約では、上記範囲の一部に止まるものもあれば、上記範囲を超えるものもある。ただし、上記範囲を超えるような場合は、契約図書の内容を十分吟味したうえで標準契約約款及び共通仕様書の条項に適切な変更等を行ったうえで活用するものとする。この契約図書の作成にあたって対象としていない代表的な事業段階として維持管理が挙げられるが、維持管理における点検、修繕・更新等は、ここで作成する監理業務の契約図書を概ね準用できるものと考えている。
(4)既存契約図書の活用
監理業務により、現在の建設生産システムで活用されている契約図書類に多くの修正や変更が
生じると、その導入は難しいものとなってしまう。そこで、「契約監理」等において、測量・調査・設計等業務又は工事などで現在活用されている契約約款や共通仕様書等は、極力変更を生じさせないものとする。
具体には、監理業務の受託者が、行政機関が担務している調査職員、監督職員、検査職員の全部又は一部を構成することとし、監理業務対象の測量・調査・設計等業務又は工事については契約約款や共通仕様書に変更が生じないこととする。
修正・変更が発生せずに活用可能な契約約款及び共通仕様書は国土交通省を例にとると次のようなものであるが、これらに限定されるものではない。
測量・調査・設計等業務
○契約約款
• 国土交通省○○地方整備局「測量調査等請負契約書」
• 国土交通省○○地方整備局「用地調査等請負契約書」
• 国土交通省「公共土木設計業務等標準委託契約約款」
○共通仕様書
• 国土交通省「測量業務共通仕様書(案)」
• 国土交通省「地質・土質調査業務共通仕様書(案)」
• 国土交通省「土木設計業務等共通仕様書(案)」
工事
○契約約款
• 国土交通省「土木工事標準請負契約約款」
○共通仕様書
• 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)」
(5)監督業務と検査業務の兼務禁止
予算決算及び会計令第101条の7では、監督の職務と検査の職務の兼職禁止が示されており、監督業務を担当するものと検査業務を担当するものは兼務できないことになっている。一方で、地方自治法あるいは地方自治法施行令では同様の記述は見当たらない。
そこで、「契約監理」において、業務者が調査職員、監督職員の実施する監督業務と検査職員 の実施する検査業務の両方の役割を担う場合において、監督業務と検査業務の兼務が法令等によ り禁止されている場合は業務者の管理技術者の下に監督と検査を担当する技術者をそれぞれ置き、その兼務を不可とする。
3.体制と契約関係
監理業務を導入する事業において、契約などの当事者となり得る関係者は、行政機関、監理業務の調査職員と検査職員、測量・調査・設計等業務の調査職員と検査職員、工事の監督職員と検査職員、監理業務受託者、測量・調査・設計者(測量者、調査者、設計者)、工事請負者などである。
業務者に測量・調査・設計等業務の調査職員・検査職員、工事の監督職員と検査職員の全てを実施させる場合には、行政機関側にはそれに対応する当事者はいないことになるが、委託者・発注者として行使すべき権限に見合う十分な体制は確保する必要がある。
契約関係は、監理業務受託者、測量・調査・設計者、工事請負者が行政機関とそれぞれ締結することになる。事業の執行において監理業務を導入することにより、指示や確認等の業務に関する関係は、契約を締結している当事者間だけではないところにも生じることになる。これらの関係を概念図として表したものが図-2である。
監理業務受託者を構成する企業及びその関係者は、受託する監理業務の対象範囲において、委託・発注される業務・工事に応札することはできない。
(1)関係者の相関関係
監理業務における、行政機関、監理業務受託者・業務者、測量・調査・設計者及び工事請負者の契約関係、監理業務に登場する人物と主たる指示等の関係は図-2のとおりである。
「公共工事標準請負契約約款」では行政機関側で監督、検査を行う者を監督員、検査員としており、必ずしも国や地方自治体において統一された用語を用いているわけではない。本契約図書では、混乱を避けるため、行政機関において監督、検査を行う職員を調査職員、監督職員、検査職員という用語で代表させている。監理業務では、測量・調査・設計等業務委託契約、工事請負契約の契約監理において、監理業務受託者の者が監督、検査の全部又は一部を行うことから、調査職員、監督職員、検査職員の全部又は一部を構成することになるが、混乱を避けるため、監理業務受託者の者は業務者として区別した。
監理業務契約図書における関係者(組織・人)の呼称については、監理業務共通仕様書第 2 条
(用語の定義)で示されている。
• 行政機関の呼称は、監理業務及び測量・調査・設計等業務を委託する場合は、それぞれ、「監理業務委託者」、「測量・調査・設計等業務委託者」とし、工事を発注する場合は、「工事発注者」として区別して用いる。これらを総称して呼ぶ場合は「委託者・発注者」と表現している。(第 2 項)
• 監理業務及び測量・調査・設計等業務を受託する者をそれぞれ「監理業務受託者」及び「測量・
調査・設計者」、工事を請負う者を「工事請負者」とし、これらを総称して呼ぶ場合は「受託者・請負者」と表現している。(第 3 項)
• 「監理業務管理技術者」とは、監理業務の管理及び統括等を行う者で、監理業務標準委託契約約款第 9 条の規定に基づき、監理業務受託者が定める。(第 7 項)
• 監理業務受託者が監理業務に従事するものとして定めた監理業務管理技術者及びその他監理業務を実施する技術者を総称して「業務者」という。業務者は、行政機関側の体制に入り、測量・調査・設計等業務の調査職員・検査職員及び工事の監督職員・検査職員の全部又は一部を担う。(第 8 項)
• 監理業務委託者は、監理業務の対象範囲や重要度、難易度などによって、業務者の全て又は一
部の構成員を当該監理業務に専任させる場合がある。
• 「調査職員」は、監理業務及び測量・調査・設計等業務のそれぞれに存在するため、「調査職員」の前に「監理業務」、「測量・調査・設計等業務」を付けて区別する。「監理業務調査職員」は監理業務委託者の職員がその職務を、「測量・調査・設計等業務調査職員」は測量・調査・設計等業務委託者の職員又は業務者が契約図書に定められた範囲内で職務を行う。(第 4 項)
• 「監督職員」は、工事発注者の職員又は業務者が、契約図書に定められた範囲内で職務を行う。
(第 5 項)
• 「検査職員」は、監理業務、測量・調査・設計等業務及び工事のそれぞれに存在するため、「検査職員」の前に「監理業務」、「測量・調査・設計等業務」、「工事」を付けて区別する。「監理業務検査職員」は、監理業務委託者の職員がその職務を、「測量・調査・設計等業務検査職員」、「工事検査職員」は委託者・発注者の職員又は業務者が、契約図書に定められた範囲内で職務を行う。(第 6 項)
行政機関側体制
行政機関 (委託者・発注者)
協議
説明
検査職員
・関係機関
・住民
・地権者
確認 協議
承諾 指示
検討 評価
提案 報告
協議、説明、調
整等の支援
監理業務受託者
業務者
確認照査
調整
指示
通知
報告
提案
確認照査
立会
調整指示
通知
報告
提案
測量・調査・設計業務等受託者
工事請負者
管理技術者、その他技術者
現場代理人、xx技術者
管理技術者、担当技術者
監督職員
調査職員
【測量・調査・設計段階】 【工事段階】
凡例: 契約関係 指示等の関係
図-2 監理業務の体制及び契約関係図
(2)委託者・発注者の体制
測量・調査・設計等業務及び工事の契約では、調査職員、監督職員、検査職員を配置した場合においても、なお委託者・発注者だけが行使する権限が多くある。そのため、業務者に測量・調査・設計等業務の調査職員と検査職員、工事の監督職員と検査職員の全てを実施させる場合、行政機関側にはそれに対応する当事者、すなわち調査職員、監督職員、検査職員はいないことになるが、委託者・発注者として行使する権限に見合う十分な体制は確保する必要がある。
(3)調査職員、監督職員及び検査職員と業務者の関係
調査職員、監督職員及び検査職員は、それぞれ下記のような構成になっている。これら職員について、国土交通省の用語の定義例を巻末の<参考資料2>に示す。
【調査職員】
• 統括調査員
• xx調査員
• 調査員
【監督職員】
• 統括監督員
• xx監督員
• 監督員
【検査職員】
• 検査員
業務者が調査職員、監督職員及び検査職員のすべての役割を担う場合には、上記すべての構成員を業務者から配置する必要があるが、行政機関の体制によっては業務者が上記の一部の役割を担うこともある。
特に、行政機関において調査職員及び監督職員の体制に判断が可能な職員を配置できる場合には、統括調査員や統括監督員に行政機関の職員を配置し、業務者はxx調査員・調査員やxx監督員・監督員を配置する体制となることが考えられる。
(4)監理業務受託者等の対象業務・工事への応札禁止
監理業務の対象となる測量・調査・設計等業務又は工事について、監理業務受託者(設計共同体の場合は全構成企業)が入札に参加することは競争におけるxx性を欠き、当該業務・工事を受注した場合には適正な契約監理が行われない可能性がある。この問題は、監理業務受託者に限らず人的・資本的に関係する企業等(関係者の範囲については委託者・発注者である行政機関が判断)についても該当する。したがって、その事態を避けるための措置をとる必要がある。
• 監理業務の契約図書(例えば、特記仕様書)に記載する。
• 監理業務の対象となる業務・工事の入札公告(例えば、参加要件)に記載する。
4.業務者の責任と権限
監理業務において、事業を執行する行政機関が担っていた役割を実施する部分については委任的な行為と考えられ、民法での「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」
(所謂、善管注意義務)とともに債務不履行責任が課されるが、請負契約で求められる無過失責任は課されない。
契約監理においては業務者(監理業務受託者が監理業務に従事するものとして定めたもの)は調査職員、監督職員及び検査職員の役割を果たす。
業務者の権限の取扱いは、行政機関が業務者に委任する権限の範囲により異なる。また、行政機関が業務者へ委任する権限の重さにより、業務上の処理を行うプロセスにいくつかのパターンが存在する。
監理業務において業務者に付与する権限の範囲については、特記仕様書において明示するものとする。
(1)監理業務の責任
監理業務は事業を執行する行政機関の業務の一部を委任した委任的業務という性格が強いため、業務者には「善管注意義務」と「債務不履行責任」が発生するが、請負契約ではないため「無過 失責任」は発生しない。
※ 委任契約:
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる(民法 643 条)。
※ 準委任契約:
この節(注:第 10 節委任)の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する(民
法 656 条)。
※ 請負契約:
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(民法 632 条)。
(2)役割と権限
業務者は、監理業務契約において付与された役割と権限に基づいて監理業務を遂行する。
監理業務は、「事業監理」、「契約監理」及び「他機関調整等」に分類できる。このうち、事業監理と他機関調整等は行政機関の支援を行うことが主たる業務となるため、業務者は行政機関の設定する業務の範囲の中で限定的な役割と権限を行使することになる。それらは、監理業務の契約図書の中で明示される。
契約監理においては、業務者は調査職員、監督職員及び検査職員の役割の全部又は一部について行政機関から委任を受けて業務を遂行する。すなわち、業務者が測量・調査・設計者や工事請負者に対して行使する権限は行政機関の果たすそれと同じものになるため、行政機関が業務者に委
任する役割と権限の範囲は慎重かつ明確に設定する必要がある。それらは、監理業務の契約図書の中で詳細に明示される。
(3)指示パターン
業務者に委譲する具体の権限の範囲については、行政機関と監理業務受託者が締結する契約図書の中で、業務者が受託者・請負者に対して行う指示、通知、承諾等のプロセスを明らかにしたパターン(以下、指示パターン)として示す。指示パターンは、業務者の役割と権限の捉え方から、次のように分類して考える必要がある。
• 契約監理における指示パターン
⮚ 委託者・発注者だけが行使することができる権限に基づく指示パターン
⮚ 調査職員、監督職員及び検査職員が行使する権限に基づく指示パターン
• 事業監理、他機関調整等における指示パターン
1)契約監理における指示パターン
契約監理においては、業務者は調査職員、監督職員、検査職員の役割の全部又は一部を行うことになる。測量・調査・設計等業務又は工事の契約図書においては、委託者・発注者だけが行使できる権限と委託者・発注者から委任を受けた調査職員、監督職員、検査職員が行使することができる権限があり、これらが混在していることになる。
委託者・発注者だけが行使できる権限には、予算の執行などに関連する、設計の変更、業務委託料・工事請負額の支払・変更、業務・工事の中止、工期の変更、契約の解除等があり、その多くが契約約款に明示されている。これらの権限は、業務者に委任できるものではなく、委託者・発注者だけが行使できるものである。
一方で、監理業務が対象としている調査職員、監督職員、検査職員が行使する権限は、技術的な事項や業務・工事の手続的な事項が多く、その多くが共通仕様書に示されている。
1.1)委託者・発注者だけが行使することができる権限に基づく指示パターン
測量・調査・設計等業務又は工事の契約約款では、委託者・発注者が調査職員又は監督職員を置いたときは、契約約款に定める指示等は、設計図書に定めるものを除き、調査職員又は監督職員を経由して行うことが明示されている。
これに従うと、契約約款に委託者・発注者の行動として示されている条文では、下記に示す2つの指示パターンが存在する。
上側が上記の契約約款の記述を受けた、調査職員又は監督職員を経由して行う原則的な指示パ
ターンであり、下側が例外的な指示パターンである。例外的な指示パターンは、契約図書に定められていない指示等及び設計図書に原則的な指示パターンによらないことが明示されている指示等となる。
これらの指示パターンのうち、委託者・発注者と業務者の役割については監理業務の契約図書に明示されるものとする。
【原則】
測量・調査・設計等業務契約
委託者-測量・調査・設計者
工事請負契約
発注者-工事請負者
測量・調査・設計者および 工事請負者
調査職員、監督職員、検査職員
監理業務受託者(業務者)
③指示、通知、
承諾等
監理業務契約
委託者-監理業務受託者
②請求、提案等
行政機関
(委託者・発注者)
④指示、通知、
承諾等
①請求、提案等
【例外】
行政機関
( 委託者・発注者)
監理業務契約
委託者-監理業務受託者
②指示、通知、
承諾等
②通知、報告等
監理業務受託者(業務者)
調査職員、監督職員、検査職員
測量・調査・設計等業務契約
委託者-測量・調査・設計者
①請求、提案等
工事請負契約
発注者-工事請負者
測量・調査・設計者
および 工事請負者
1.2)調査職員、監督職員が行使する権限に基づく指示パターン
測量・調査・設計等業務及び工事の契約図書に調査職員・監督職員及び検査職員の行動として示されている条文では、行政機関が業務者に委任する権限の範囲により下記に示す3つの指示パターン(【パターン1】~【パターン3】)が存在する。
これらの3つの指示パターンでは、測量・調査・設計者及び工事請負者と調査職員・監督職員及び検査職員の間の対応はいずれも同じであり、現在使用されている測量・調査・設計等業務及び工事の契約約款等を変更しないで監理業務を導入できることが分かる。
これらの指示パターンのうち、委託者・発注者と業務者の役割については監理業務の契約図書に明示されるものとする。
【パターン1】
【パターン1】は、調査職員、監督職員及び検査職員の業務の全部又は一部を業務者へ委任するパターンであり、業務者は調査職員、監督職員及び検査職員として振る舞い、検討・評価のみならず指示、通知、承諾等についても行うこととなり、行政機関へはその結果を報告するのみとなる。このパターンは行政機関側に土木職員が全くあるいは殆どいないような地方公共団体等や、調査職員、監督職員及び検査職員の体制に判断が可能な行政機関側職員を配置し業務者への委託範囲を限定する場合などに適用されることが想定される。
【パターン1】
測量・調査・設計等業務契約
委託者-測量・調査・設計者
工事請負契約
発注者-工事請負者
測量・調査・設計者および 工事請負者
調査職員、監督職員、検査職員
②検討、評価等
監理業務受託者(業務者)
監理業務契約
委託者-監理業務受託者
④報告等
行政機関
( 委託者・発注者)
③指示、通知、
承諾等
①請求、提案等
このパターンを使用する際に特に留意すべき点は、例えば、設計業務の調査職員の役割の全てを業務者へ委任するような場合、設計業務委託者には、監理業務を導入するか否かにかかわらず、その成果の最終責任があるということである。国家賠償法第2条第1項において、「公の営造物の設営又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」と規定されている。そのため、業務者に設計業務の調査職員として検討、
評価、指示、承諾等を全て行わせていたとしても、設計業務委託者は自らがその成果の最終責任を果たせるよう、業務者からの報告を十分理解し、場合によっては業務者に適切な指導を行うことが求められる。
また、国家賠償法第2条第2項には、前述した第1項に関連して「前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべきものがあるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。」と規定されている。つまり、業務者に善管注意義務違反や債務不履行があった場合には責任を問われることがあることが分かる。業務者は、設計業務委託者へ丁寧に分かりやすく説明し理解を得る責務があることを忘れてはならない。工事の監督職員の役割の全てを業務者へ委任する場合においても、上記と同様に考えられる。
さらに、前述したように、予算の執行などに関連する、設計の変更、業務委託料・工事請負額の支払・変更、業務・工事の中止、工期の変更、契約の解除等、委託者・発注者だけが行使できる権限については業務者に委任できるものではない。また、公物管理法(道路法、河川法等)に基づく行政判断も業務者に委任することはできない。業務者へ委任する調査職員、監督職員及び検査職員の役割のうち、これらの権限に関連したものについては、委託者・発注者は十分に理解しておく必要がある。
以上のように、たとえ【パターン1】を活用して、調査職員、監督職員及び検査職員の全ての役割を業務者に委任したとしても、委託者・発注者の責任と権限は非常に重いということを理解しておかなければならない。では、なぜ監理業務が必要なのか。それは、委託者・発注者の体制や対象となる事業の性質などにより異なるが、基本的には委託者・発注者の保有するリスクを専門家である業務者を入れることにより低減し、委託者・発注者が行使する権限を適切に行うことができるようにするためということになる。
こうした考え方は、【パターン1】に限定されたものではなく、全てのパターンに共通のものである。
【パターン2】
【パターン2】は、調査職員、監督職員及び検査職員の業務の全部又は一部を業務者へ委任するパターンであり、業務者は調査職員、監督職員及び検査職員として振る舞うものの、検討、評価等を主体的に行い、その結果の判断を伴う指示、通知、承諾等は行政機関が行う。このパターンは行政機関側に土木職員がいるものの、その質あるいは量が不足するような地方公共団体等や、調査職員、監督職員及び検査職員の体制に判断が可能な行政機関側職員を配置できない場合などに適用されることが想定される。
【パターン2】
測量・調査・設計等業務契約
委託者-測量・調査・設計者
工事請負契約
発注者-工事請負者
測量・調査・設計者および 工事請負者
調査職員、監督職員、検査職員
④指示、通知、
承諾等
②検討、評価等
監理業務受託者(業務者)
③報告、提出、
提案等
監理業務契約
委託者-監理業務受託者
行政機関
( 委託者・発注者)
⑤指示、通知、
承諾等
①請求、提案等
【パターン3】
【パターン3】は、調査職員、監督職員及び検査職員の業務の一部を業務者へ委任するパターンであり、業務者は調査職員、監督職員及び検査職員として振る舞うものの、基本的に行政機関が検討、評価を含む全ての指示、通知、承諾等を行うものである。このパターンは行政機関側に土木職員がいるものの、その量が不足するような国及び地方公共団体等に適用されることが想定される。
【パターン3】
③検討、評価等
監理業務契約
委託者-監理業務受託者
行政機関
(委託者・発注者)
④指示、通知、
承諾等
②請求、提案等
監理業務受託者(業務者)
測量・調査・設計等業務契約
委託者-測量・調査・設計者
工事請負契約
発注者-工事請負者
測量・調査・設計者および 工事請負者
調査職員、監督職員、検査職員
⑤指示、通知、
承諾等
①請求、提案等
【パターン1】から【パターン3】については、特定の条項あるいは役割に限定して指示パターンを設定することも可能である。その場合は、監理業務特記仕様書等にその旨明示しなければならない。
2)事業監理、他機関調整等における指示パターン
上記に示した指示パターン以外に、事業監理や他機関調整等では、契約当事者である行政機関と業務者以外に、関係機関・地元・用地関係者、測量・調査・設計等業務及び工事の応札候補者などとの関係が存在するものがある。代表的なものとして、【パターンA】に関係機関・地元・用地関係者との協議等に関するもの、【パターンB】に発注段階における対応に関するものを下記に示した。これらの指示xxxxは、監理業務の契約図書に明示されるものとする。
【パターンA】
行政機関
( 委託者・発注者)
③報告等
監理業務契約
委託者-監理業務受託者
①指示等
④支援
④協議、交渉等
監理業務受託者(業務者)
②支援(協議、交渉、
関係機関
地元関係者用地関係者
打合せ、調整)
【パターンB】
行政機関
( 委託者・発注者)
⑤報告、提出、
提案等
監理業務契約
委託者-監理業務受託者
①支援に関する指示等
⑥指示、通知、承諾等
④検討、評価等
監理業務受託者(業務者)
②説明等
⑦回答等
③質問等
測量・調査・設計 および
工事請負の 応札候補者
5.特記仕様書の記載例
監理業務共通仕様書において特記仕様書に記載することとした項目については、記載例を示す。対象となる共通仕様書の規定は次のとおりである。
第3条 監理業務の対象
第29条 用地補償手続きに関する業務の支援第32条 契約監理の対象
第33条 契約監理における測量・調査・設計者又は工事請負者への指示等のパターン
第49条 工事の監督
記載例-1:第3条 監理業務の対象
(監理業務の対象)
第3条 「事業監理」又は「他機関調整等」の対象となる業務、「契約監理」の対象となる測量・調査・設計等業務又は工事の契約及びそれらの契約における業務の範囲と内容については、監理業務特記仕様書の中で具体的に明示する。
「事業監理」は、測量・調査・設計等業務や工事の委託・発注前の計画策定・見直し、委託・発注に向けた設計図書作成、調達及び用地補償関連の業務支援を含み、「他機関調整等」は、事業の実施前又は実施中の関係機関協議、地元説明、官公庁への手続き支援等を行うものである。一方、「契約監理」は、測量・調査・設計等業務の契約監理及び工事の契約監理を指すものである。
特記仕様書の中では、監理業務の対象(事業監理、契約監理及び他機関調整等)を示すとともに、それぞれの対象業務の内容を具体的に明示する。監理業務を採用する事業段階によって、対象業務の内容を明示できる範囲は異なるが、対外的に発表できる情報の中からできる限り詳細に明示するものとする。
特記仕様書に記載する対象業務の明示例は次のようになる。
第○条(適用業務)
本監理業務において対象となる業務の構成は下図のとおりである。
事業計画
事業監理
入札契約事務
用地補償関係
監理業務
測量・調査・設計等業務の監理
契約監理
工事の監理
測量・調査・設計者間及び工事請負者間調整
他機関調整等
地元協議、住民説明及び関係機関調整等
(測量・調査・設計等業務及び工事段階)
本監理業務の範囲と内容は次のとおりである。
【事業監理】
○○川災害復旧事業に係わる下記事項
⚫ 測量・調査・設計等業務及び工事に関する全体事業計画の確認、事業工程計画の検討、実施計画案の検討の事業実施前の業務
⚫ 測量・調査・設計等業務及び工事の委託・発注に関する業務
⚫ 用地補償手続きに関する業務
上記の期間 平成○○年○月より○○カ月
※ 次項につづく
【契約監理】
○○川災害復旧事業に係わる下記事項
⚫ 下記の測量・調査・設計等業務の契約監理
(※ 具体の案件名を列挙する。)
・○○川○○区間(○○km) 河川測量調査及び地質・土質調査
・○○川○○地区河川環境調査
・○○川○○区間(○○km) 築堤、河道掘削及び護岸工構築に係る詳細設計
・□□□
上記の予算規模○億円、期間 平成○○年○月より○○カ月
⚫ 下記の工事の契約監理
(※ 具体の案件名を列挙する。)
・○○川○○区間;堤防、河道掘削及び護岸工事
・○○川水門本体工事
・△△△
上記の予算規模○○○億円、期間 平成○○年○月より○○カ月
【他機関調整等】
○○川災害復旧事業に係わる下記事項
⚫ 上記の事業監理、契約監理に関連する、地元協議・住民説明、関係機関との協議・調整
上記の期間 平成○○年○月より○○カ月
記載例-2:第 29 条 用地補償手続きに関する業務の支援
(用地補償手続きに関する業務の支援)
第 29 条 業務者は、委託者・発注者が実施する用地交渉の対象となる権利者等へのヒアリング、現地踏査、関係権利者の特定、補償額算定書の照合、補償金明細書表の作成、用地交渉用資料の作成、権利者に対する用地交渉、権利者に対する移転履行状況の確認等の用地補償手続きに関する業務を支援する。具体的な業務項目、実施方法及び権限の範囲については、監理業務特記仕様書に従うものとする。
用地補償業務の実施にあたり、対象事業の概要、進捗状況等を踏まえ、業務項目、実施方法、役割を具体的に示す。
特記仕様書における業務内容の記載例は次のようになる。
第〇条(用地補償業務の内容)
用地補償業務の対象、及び業務項目、実施方法、業務者の役割は次のとおりである。
1.業務の対象
(※ 業務者が、用地補償業務への理解を深めるため、基本的な事項を記載する。)
(1) 業務の範囲・対象
・〇〇川〇〇区間の農地における、新たな堤防構築及び新規水路開削に係る用地の取得
・〇〇川〇〇地区の堤防・護岸及び樋xxの河川構造物の施工に向けた借地、及び施工前の建物調査
(2) 業務の実施期間
○○区間の築堤工事の開始を○○年○○月に予定しており、これを満足するよう用地補償手続きの実施期間は次のとおりとする。
○○年○○月~△△年△△月
(3) ・・・・・・・
2.業務項目、実施方法、業務者の役割
用地補償業務の項目、実施方法及び業務者の役割は、表-Aに示すとおりである。
※ 次項につづく
表-A 用地補償業務の項目、実施内容・方法、業務者の役割(例)
業務項目 | 実施内容・方法 | 結果の記録 | 役 割 | |
概況ヒアリング等 | ・当該事業の計画、取得対象の土地等、移転対象の建物等、権利者ごとの補償内容・実状、その他関連事項の概要把握 ・利権者等との面接により公共用地交渉等 への協力依頼 | 用地交渉記録簿書 | 把握、確認、権利者との面談・協力依頼 | |
土地立ち入り手続き、土地調査、現地踏査等 | ・現地と補償額算定書の照合 | 補償額算定書 | 把握、確認、補償業務委託者報告、権利者への説明 | |
関係権利者の特定 | ・登記事項証明書、戸籍簿、住民票等の記載事項と補償額算定書の照合 | 補償額算定書 | 把握、確認、補償業務委託者と協議及 び報告 | |
補償額算定書の照合及び補償金明細表の作成 | ・補償額算定書での補償基準等の適合の妥当性の確認 ・補償金明細表の作成、提出 | 補償金明細表 | 把握、確認、補償業務委託者と協議及 び報告、作成、提出 | |
用地交渉方針の策定及び公共用地交渉用資料の作成等 | ・権利者毎の交渉スケジュール、説明内容等交渉の進め方に関する方針の策定 ・各権利者の権利の内容に応じた交渉資料 の作成 | 用地補償総合技術業務協議書 | 作成、補償業務委託者との協議 | |
権利者に対する用地交渉 | ・調書の説明及び確認 ・損失補償協議書の説明 ・補償契約書案の説明及び契約の承諾 | 用地交渉記録簿書 | 権利者との協議及び交渉、承諾獲得 | |
用地交渉記録簿の作成 | ・公共用地交渉を行った場合、速やかに報告 | 用地交渉記録簿書 | 作成、補償業務委託者への報告 | |
用地交渉後の措置 | ・公共用地交渉の詳細な内容の監理業務委託者への報告 ・補償契約書の写しの作成(利権者が押印 後) | 補償契約書の写し | 作成、補償業務委託者への報告 | |
移転履行状況等の確認 | ・利権者との契約締結後、利権者の移転履 行状況の確認 | 移転状況確認報告 書 | 確認、権利者への説 明・協議 | |
移転履行状況等の確認後の措置 | ・移転履行状況等の確認を行った場合、速やかに報告 | 移転状況確認報告書 | 確認、補償業務委託者への報告 | |
用地進捗管理 | ・用地補償業務の進捗状況の整理 ・支障となる公共施設等の移転時期、移転 方法等について、当該施設を管理する関係機関等と調整 | 進捗報告書 | 確認、関係機関の調整 | |
用地調査等の調査業務 発注計画、調達及び契約監理 | ・民間委託業務の業務(境界測量、権利調 査、工作物調査、環境調査等)の契約監理 | |||
契約監理を参照 | ||||
その他の業務 | (適宜記載) |
(※ 必要に応じてその他業務の内容、実施方法等を記載する。)
記載例-3:第 32 条 契約監理の対象
(契約監理の対象)
第 32 条 契約監理は、対象となる測量・調査・設計等業務又は工事の各契約図書に示された調査職員、監督職員又は検査職員の役割の全て又は一部を業務者が実施することをいう。
2 監理業務の対象となる測量・調査・設計等業務又は工事において業務者が担う調査職員、監
督職員又は検査職員の役割については、監理業務特記仕様書に定める。
3 監理業務の対象となる測量・調査・設計等業務又は工事の各契約において、業務者が担う調査職員、監督職員又は検査職員の役割については、測量・調査・設計等業務又は工事の各特記仕様書に明示する。
4 契約監理の対象となる測量・調査・設計等業務又は工事の件名・予算規模等については、監
理業務特記仕様書に具体的に明示する。
(1)契約監理の対象業務
第32条第2項で求めている業務者の担う調査職員、監督職員又は検査職員の役割について、特記仕様書の中で業務項目に添って具体的に明示する。
特記仕様書における上記職員の役割の記載例は次のようになる。
第○条(業務者の役割)
契約監理業務を行う業務者(調査職員、監督職員、検査職員)の役割は表-Bに示すとおりである。
(※ 契約監理の業務項目(監理業務共通仕様書を参照)ごとに監理業務を実施する担当者及びその役割を記載する)
※ 次項につづく
表-B 契約監理における業務者の役割(例)
契約監理の業務項目 | 監理業務の担当者 | 役 割 |
○○測量・調査・設計等業務の契約監理 | ||
設計図書等の確認 | 統括調査員、xx調査員 | 把握、確認 |
業務計画・照査計画の確認 | 統括調査員、xx調査員 | 確認、協議・調整、承諾、修正点指示 |
測量・調査・設計等の条件の確認 | 統括調査員、xx調査員 | 確認、協議・調整、承諾、修正点指示 |
業務の監督 | xx調査員、調査員 | 把握、確認、協議・調整、承諾、業務委託者への報告、改善策指示、通知 |
調査・設計変更事項の決定 | xx調査員、調査員 | 受理、確認、評価、協議支援、業務委託者への助言、変更支援 |
業者間の調整 | xx調査員、調査員 | 協議・調整、通知 |
全体工程の管理 | xx調査員、調査員 | 確認、協議・調整、承諾、改善策指示 |
技術提案の評価 | 統括調査員、xx調査員 | 評価、業務委託者への報告 |
業務者との打合せ・協議 | 統括調査員、xx調査員、調査員 | 協議調整、通知 |
比較設計等の評価 | xx調査員、調査員 | 評価、業務委託者への報告 |
調査・設計成果内容の確認 | xx調査員、調査員 | 確認、業務委託者への報告 |
調査・設計成果の評価及び完了検査 | 統括調査員検査員 | 確認、検査、業務委託者への報告 |
調査・設計成績の評定 | 統括調査員、xx調査員 | 評価、業務委託者への報告 |
△△工事の契約監理 | ||
設計図書の把握 | xx監督員 | 把握、確認 |
施工・品質計画書の確認 | xx監督員 | 確認、協議・調整、承諾、修正点指示 |
施工体制の確認 | xx監督員 | 確認、協議・調整、承諾、修正点指示 |
工事施工の立会及び材料の確認 | 監督員 | 立会、確認、把握、協議・調整、承諾、工事発注者への報告、改善策指示、通知 |
工事区間の調整 | xx監督員、監督員 | 協議・調整、通知 |
段階確認・把握及び工事工程進捗の確認 | 監督員 | 確認、協議・調整、承諾、改善策指示 |
工事請負者との打合せ・協議 | xx監督員、監督員 | 協議・調整、通知 |
技術提案の評価 | xx監督員、監督員 | 評価、工事発注者への報告 |
設計変更の協議及びその実施 | 監督員 | 受理、確認、評価、協議支援、工事発注者への助言、変更支援 |
改造請求及び破壊による確認 | xx監督員、監督員 | 確認、評価、協議・調整、承諾、破壊検査指示又は改造請求 |
建設副産物の適正処理状況の確認 | 監督員 | 確認、協議・調整、承諾、是正指示 |
中間検査及び完成検査 | 検査員 | 確認、検査、工事発注者への報告 |
中間前払い金請求時の対応及び出来高の確認 | xx監督員 | 受理、確認、工事発注者への報告 |
部分払い請求時の対応及び出来形の確認 | xx監督員 | 受理、確認、工事発注者への報告 |
工事成績の評定 | xx監督員 | 評価、工事発注者への報告 |
○○業務、△△工事の他機関調整等に係る事項 | ||
地元協議及び住民説明 | 調査員、監督員 | 説明、意見・要望受理、協議、通知、業務委託者又は工事発注者への報告 |
関係機関との協議・調整 | 調査員、監督員 | 説明、意見・要望受理、協議・調整、通知、業務委託者又は工事発注者への報告 |
(2)調査職員、監督職員、検査職員の構成員としての業務者の明示
第32条第3項は、契約監理の対象となる業務・工事の特記仕様書に明示されるべき内容となる。
1)測量・調査・設計等業務
公共土木設計業務等標準委託契約約款(国土交通省)では、測量・調査・設計等業務の契約における調査職員の決定・通知及び役割・権限について次のような規定がなされている。
「公共土木設計業務等標準委託契約約款」における調査職員の権限についての規定
(調査職員)
第9条 発注者は、調査職員を置いたときは、その氏名を受注者に通知しなければならない。その者を変更したときも、同様とする。
2 調査職員は、この約款に基づく発注者の権限とされる事項のうち発注者が必要と認めて調査職員に委任したもののほか、設計図書に定めるところにより、次に掲げる権限を有する。一発注者の意図する成果物を完成させるための受注者又は受注者の管理技術者に対する業務
に関する指示
二この約款及び設計図書の記載内容に関する受注者の確認の申出又は質問に対する承諾又は回答
三この契約の履行に関する受注者又は受注者の管理技術者との協議
四業務の進捗の碓認、設計図書の記載内容と履行内容との照合その他この契約の履行状況の監督
測量・調査・設計等業務の契約監理の実施にあたり、上記約款の第9条第1項の内容を踏まえ、測量・調査・設計者に対し、監理業務の業務者の存在を特記仕様書の中で下記のように明示する。
(調査職員及び検査職員)第○条
調査職員及び検査職員の構成は次のとおりである。
本業務の調査職員及び検査職員には、外部に委託した監理業務受託者があたる。
① 調査職員
⚫ 統括調査員: ○○
⚫ xx調査員: ○□
○▽
○×
⚫ 調査員: □□
□○
□▽
○○ (監理業務受託者)
□○ (測量担当、監理業務受託者)
▽○ (調査担当、監理業務受託者)
×○ (設計担当、監理業務受託者)
□□ (測量担当、監理業務受託者)
○□ (調査担当、監理業務受託者)
□▽ (設計担当、監理業務受託者)
② 検査職員
⚫ 検査員:
○□ ○▽ (測量・調査・設計等業務担当、監理業務受託者)
2)工事
)
公共工事標準請負契約約款では、工事請負契約における監督職員の決定・通知及び役割・権限について次のような規定がなされている。
「公共工事標準請負契約約款」における監督職員の権限についての規定
(監督員)
第九条 発注者は、監督員を置いたときは、その氏名を受注者に通知しなければならない。監督員を変更したときも同様とする。
2 監督員は、この約款の他の条項に定めるもの及びこの約款に基づく発注者の権限とされる事項のうち発注者が必要と認めて監督員に委任したもののほか、設計図書に定めるところにより、次に掲げる権限を有する。
一 この契約の履行についての受注者又は受注者の現場代理人に対する指示、承諾又は協議
二 設計図書に基づく工事の施工のための詳細図等の作成及び交付又は受注者が作成した詳細図等の承諾
三 設計図書に基づく工程の管理、立会い、工事の施工状況の検査又は工事材料の試験若しくは
検査(確認を含む。)
工事の契約監理の実施にあたり、上記約款の第9条第1項の内容を踏まえて、当該工事請負者に対し、監理業務の業務者の存在を特記仕様書の中で下記のように明示する。
(監督職員及び検査職員)第○○条
監督職員及び検査職員の構成は次のとおりである。
本業務の監督職員及び検査職員には、外部に委託した監理業務受託者が含まれる。
① 監督職員
⚫
⚫
⚫
⚫
⚫
統括監督員: ▽▽
xx監督員: ▽○
監督員:
▽□
▽○
▽×
▽▽ (○○県工事課長)
○▽ (監理業務受託者)
□▽ (A 地区担当、監理業務受託者)
□▽ (C 地区担当、監理業務受託者)
×▽ (D 地区担当、監理業務受託者)
② 検査職員
⚫ 検査員:
□▽ ○× (工事担当、監理業務受託者)
(3)契約監理の対象業務
第3条の「監理業務の対象」において、契約監理の対象となる事項を明示したので、ここでは、第32条第4項で求めている契約監理(測量・調査・設計等業務の契約監理、工事の契約監理)で実施する業務の概要及び内容を具体的に示す。
特記仕様書における業務内容の記載例は次のようになる。
第○条(契約監理の業務内容)
本契約監理の対象となる業務(測量・調査・設計等業務の契約監理、工事の契約監理に係る事項)に係る事業の概要及び業務内容は次のとおりである。
1.事業概要
(※ 業務・工事の名称、予算規模、実施期間等、業務者が業務・工事についての理解を深めるための基本的な情報を記載する。)
(1) 測量・調査・設計等業務
(i) ○○川○○区間 河川測量調査及び地質・土質調査委託予算規模:○○万円
委託期間:○○年○○月~○○年○○月
(ii) ○○川○○区間 築堤、河道掘削及び護岸工構築に係る詳細設計委託予算規模:○○万円
委託期間:○○年○○月~○○年○○月
(iii) ~
(2) 工事
(i) ○○川○○区間;堤防、河道掘削及び護岸工事工事予算規模:○○万円
工事期間:○○年○○月~○○年○○月
(ii) ○○川水門本体工事 工事予算規模:○○万円
工事期間:○○年○○月~○○年○○月
(iii) ~
※ 次項につづく
2.業務内容
(※ 業務又は工事の要求事項を踏まえ、監理業務共通仕様書に示されている条項を参考にして業務内容を業務・工事ごとに記載する。)
○○測量・調査・設計等業務の契約監理
① 測量・調査・設計等業務計画書の確認
測量・調査・設計者から提出された業務計画書の実施方針・・・以下省略
③ 業務実施にあたっての条件等の確認
業務の実施段階に設定される調査・設計に係る条件について・・・以下省略
④ 測量・調査・設計等業務の監督
測量・調査・設計者と打合せ等を行い、業務内容や・・・以下省略
⑤~
△△工事の契約監理
① 施工計画書の確認
工事請負者から提出される施工計画者の確認を行い・・・以下省略
② 施工体制の確認
工事請負者から提出される施工体制について確認し、・・・以下省略
③ 工事の監督
基準に基づき工事施工の立会いを行い、工事材料の品質確認・・・・以下省略
④ 技術提案の評価
提出された VE 提案等の技術提案について、提案内容を評価し・・・以下省略
⑤ 調整案の提案
工事請負者間で生じる工事工程等の調整について、円滑な工程・・・以下省略
⑥ ~
記載例-4:第 33 条 契約監理における測量・調査・設計者又は工事請負者への指示等のパターン
(契約監理における測量・調査・設計者又は工事請負者への指示等のパターン)
第 33 条 業務者が、測量・調査・設計等業務又は工事における調査職員、監督職員又は検査職員として、測量・調査・設計者又は工事請負者へ指示、通知、承諾等(以下「指示等」という)を行う場合には、下記のパターンを適切に選択して行うものとする。監理業務委託者は、あらかじめ選択するパターンを監理業務特記仕様書に明示する。
(1) 業務者が、自ら検討・判断した指示や交渉・調整等の事項について、業務者が直接、測量・調査・設計者又は工事請負者へ指示等を行い、その後、結果を委託者・発注者に報告する。
(2) 業務者が、自ら検討・判断した指示や交渉・調整等の事項について、委託者・発注者に事前
の承諾を得たのち、業務者が直接、測量・調査・設計者又は工事請負者へ指示等を行う。
(3) 業務者が、委託者・発注者より指示された指示等の事項、又は監理業務委託者から指示された交渉・調整事項について、測量・調査・設計者又は工事請負者へ指示等を行う。
契約監理の業務項目、監理業務の担当者及び担当者の役割設定に加え、契約監理における測量・調査・設計者又は工事請負者への指示等の実施方法を設定する必要がある。指示等のパターンは、共通仕様書第33条に示された3つのパターンから選定するものであるが、測量・調査・設計等業務又は工事ごとに、それぞれの業務項目に対応した、業務者に実施させる指示パターンを選定し、特記仕様書に明示する必要がある。
特記仕様書における指示等のパターンの記載例は次のようになる。
第○条 契約監理における測量・調査・設計者又は工事請負者への指示等のパターン
本契約監理の対象業務(測量・調査・設計等業務及び工事)の実施において採用する測量・調査・設計者又は工事請負者への指示、通知、承諾等(以下「指示等」という)のパターンは、表-Cに示すとおりである。
基準パターン
パターン1:業務者が、自ら検討・判断した指示や交渉・調整等の事項について、業務者が直接、測量・調査・設計者又は工事請負者へ指示等を行い、その後、結果を委託者・発注者に報告する。
パターン2:業務者が、自ら検討・判断した指示や交渉・調整等の事項について、委託者・発注者に事前の承諾を得たのち、業務者が直接、測量・調査・設計者又は工事請負者へ指示等を行う。
パターン3:業務者が、委託者・発注者より指示された指示等の事項、又は監理業務委託者から指示された交渉・調整事項について、測量・調査・設計者又は工事請負者へ指示等を行う。
(※ 契約監理の対象業務又は工事ごとに業務項目を列挙し、指示等を行う業務に対して業務項目ごとにパターン1、 2、 3を明示する。)
※ 次項につづく
表-C 契約監理における指示等のパターン(○○業務、△△工事)(例)
契約監理の業務項目 | 指示等のパターン |
○○測量・調査・設計等業務の契約監理 | |
設計図書等の確認 | ― |
業務計画・照査計画の確認 | パターン1 |
測量・調査・設計等の条件の確認 | パターン2 |
業務の監督 | パターン2 |
調査・設計変更事項の決定支援 | パターン2 |
業者間の調整 | ― |
全体工程の管理 | パターン1 |
技術提案の評価 | ― |
業務者との打合せ・協議 | パターン1 |
比較設計等の評価 | ― |
調査・設計成果の確認 | ― |
調査・設計成果の評価及び完了検査 | ― |
調査・設計成績の評定 | ― |
△△工事の契約監理 | |
設計図書の把握 | ― |
施工・品質計画書の確認 | パターン1 |
施工体制の確認 | パターン1 |
工事施工の立会及び材料の確認 | パターン2 |
工事区間の調整 | ― |
工程の確認及び進捗管理 | パターン1 |
工事請負者との打合せ・協議 | パターン1 |
技術提案の評価 | ― |
設計変更の協議及びその実施 | パターン2 |
改造請求及び破壊による確認 | パターン2 |
建設副産物の適正処理状況の確認 | パターン2 |
中間検査及び完成検査 | ― |
中間前払い金請求時の対応及び出来高の確認 | ― |
部分払い請求時の対応及び出来形の確認 | ― |
工事成績の評価資料の作成 | ― |
○○業務、△△工事の他機関調整等に係る事項 | |
地元協議及び住民説明 | パターン3 |
関係機関との協議・調整 | パターン3 |
(※ ―:指示、請求、xx等の指示等がないもの)
記載例-5:第 49 条 工事の監督
(工事の監督)
第 49 条 業務者は、監理業務特記仕様書に示された基準[注]に基づき、工事施工の立会いを行い、工事材料の品質及び施工状況の段階確認を行うとともに施工状況を把握する。
[注] 例えば、土木工事監督技術基準(案)等
2 業務者は、工事材料の品質確認及び施工状況の確認・把握の結果、品質基準又は設計図書に示された基準に適合していないと認められる場合には、その旨を工事発注者に報告するとともに、当該工事請負者と協議を行う。
契約監理における測量・調査・設計等業務の契約監理又は工事の契約監理の実施にあたっては、監理業務共通仕様書のほか次に挙げるような図書(第49条の工事の監督において使用する基準を含む)を熟知したうえで、業務を遂行することが求められる。
監理業務の中で参考とする図書に関し、監理業務特記仕様書では次のような規定を設ける。
第○条 適用する仕様書等
本監理業務の実施にあたっては、本業務の仕様書のほか、次に上げる図書等を熟知し、本特記仕様書第○条(適用業務)に定める業務を遂行しなければならない。
⚫
⚫
⚫
⚫
土木工事監督技術基準(案)(平成○○年○月以降適用)
土木工事施工管理基準及び規格値(案)(平成○○年○月以降適用)土木工事技術検査基準(案)(平成○○年○月以降適用)
用地交渉等ハンドブック、等
(※ 業務又は工事の特徴や要求事項から判断して、上記の図書以外に使用すべき仕様書、
基準等がある場合は、それを追加して記載する。)
6.監理業務委託料の積算、請求・支払
業務者の委託料に係わる積算、請求及び支払いについては、監理業務契約図書等の適切な場所に明示するものとする。
(1)業務者の委託料
業務者の委託料の支払いや変更については監理業務契約約款第28条等に記載されている。しかしながら、業務者の委託料に係わる積算、請求・支払については、それだけでは十分と言えないため、監理業務契約図書等の適切な場所にその詳細を明示する。
(2)委託料の積算
建築士法第25条では、業務の報酬について基準を定めることができるとされており、国土交通省告示第15号(平成21年1月7日)においてその基準が示されている。また、土木分野においても、国土交通省はさまざまな積算基準を示しており、監理業務においてもこのような基準が示されることが必要と考えられる。
※ 建築士法 第 25 条(業務の報酬):
国土交通大臣は、中央建築士審査会の同意を得て、建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準を定めることができる。
前述の国土交通省告示第15号には標準的な業務の内容が示されているが、監理業務における標準的に選択可能な業務内容については、監理業務共通仕様書で明示している。実際の契約において、それに加えるべき業務がある場合には業務内容の詳細について監理業務特記仕様書に明示しなければならない。
委託料の積算については、積算基準を明示し、その中で委託料の費目構成や、費目の内容、委託料の算定式、算定における前提条件、算定の方法、変更の取扱いなどを明確に記述しなければならない。また、監理業務では、できる限りその内容と業務量を詳細に設定して入札を実施することが重要である。しかしながら、監理業務の性格上、その入札時点で詳細に業務内容と量を設定できないような場合も多いと考えられる。そうした場合には、国土交通省が作成した土木設計
等変更ガイドライン(平成27年3月)のようなルールを明示するなど、適切に設計変更が行われる
よう留意する必要がある。さらに、監理業務の中に標準的な歩掛りがあるような業務を追加する場合は、その積算方法を監理業務の応札者に分かるよう示さなければならない。
積算基準作成の留意点としては下記のようなものが挙げられる。
• 委託料の費目構成や委託料の算定式等については、下記の例などを参考にあらかじめ定めておく必要がある。
⯎ (直接人件費+直接経費+その他経費+一般管理費等)×(1+消費税率)
⯎ (業務者報酬+直接経費+予備費)×(1+消費税率)
⯎ (事業費×定率+予備費)×(1+消費税率)
⯎ (自由積算+予備費)×(1+消費税率)
• 費目内容については、下記の例などを参考にあらかじめ定めておく必要がある。また、算定方法については、総額を一括で計上するもの、事前に設定した単価と想定される数量の積により計上するもの、積み上げにより計上するもの、他の費目の算定結果と事前に設定した率の積により算定するものなどがあり、それぞれの費目について算定方法をあらかじめ定めておく必要がある。
⯎ 直接人件費:基本給相当額+諸手当+賞与相当額+事業主負担額
⯎ 直接経費:事務用品費+旅費交通費+業務用自動車損料・燃料費・運転手賃金等
+業務用事務室損料・備品費等+電算機使用経費
⯎ その他原価:直接経費のうち積上げ計上しない上記費用以外の経費+間接原価
⯎ 一般管理費等:販売費・一般管理費+付加利益
⯎ 予備費:上記の総和×定率
⯎ 消費税相当額
• 算定における前提条件については、人件費や経費の算定について、標準報酬日額や打合せ回数、宿泊日数、CADオペレータや補助者、現場内移動、執務スペース、PCと関連機器など、積算の前提とする事項がある場合にはあらかじめ定めておくとともに、積算におけるそれら条件の義務化の有無などについて明示する必要がある。
• 変更の取扱いについては、積算条件と実際の業務との間にかい離が発生した場合に、請求・支払における変更方法についてあらかじめ定めておく必要がある。
(3)委託料の請求・支払
請求・支払については、採用する請求・支払の方式を明確にするとともに、請求・支払の標準的な期間・時期、精算方法などを明確に記述しなければならない。これらにおける留意点としては下記のようなものが挙げられる。
• 請求・支払方式には、発生したコストなどの実績に基づいて請求・支払を行うものや、契約総額を一括して請求・支払を行うもの、事前に設定したタイミングで段階的に請 求・支払を行うものなどがあるため、あらかじめ定めておく必要がある。
• 精算方法では、単価と数量の積によるものや、総額と事前に設定した率の積によるもの、総額を一括で請求・支払を行うものなど、あらかじめ費目ごとに取り決めておく必要がある。
単価の取扱いには、積算や見積などで設定した単価を請求・支払に用いるものや、領収証の確認により実績の単価を用いるものがあり、あらかじめ定めておく必要がある。
請求・支払方式において、監理業務受託者にインセンティブを与える場合は、その手法を吟味の上、契約図書に必要な規定を加えるものとする。
また、本契約図書においては、部分払いを可としているため、前払い金の規定を設けていないが、業務開始時期の準備費用の多寡などによって前払い金が必要と判断される場合は、関連する規定を加えるものとする。
さらに、監理業務が複数年契約となり、物価の変動等による契約金額の変動が大きいと判断される場合は、物価等のスライドに関わる条項を規定する。
7.Q&A
Q1:監理業務の委託段階で「支援」、「検討」、「監理業務委託者の指示」等については、その業務の度合い(求められる内容・必要な技術力や業務量)が明確にされていないと、業務委託料を決め
られないのではないか?
A1:「6.監理業務委託料の積算、請求・支払」において委託料に係わる積算、請求及び支払いについては契約図書に明示するものとしている。積算の前提条件(技術者の技術力レベルや員数を含む)についてはあらかじめ定めておくこととしており、監理業務受託者は、その前提条件に対応した体制により業務を実施するものであり、支援等の業務はその範囲で行われることが基本である。前提条件については、契約後に委託者と受託者の間で解釈が異なることのないように、委託段階で質問回答等によって明確にしておく必要がある。業務の実施過程でその範囲を超える場合には履行期間や業務委託料を適切に変更する必要があり、約款第 16 条、第 21 条、第 22 条の規定が適用される。
Q2:共通仕様書における「支援」、「検討」、「監理業務委託者の指示」等については、その業務の度合い(求められる内容・必要な技術力や業務量)が明確にされていないと、過重な負担を強いら
れる可能性があり、監理業務受託者のリスクが大きすぎるのではないか?
A2:監理業務の委託段階で「支援」、「検討」、「監理業務委託者の指示」等に関わる業務の内容を明確に示すことが望ましいが、委託段階には明確になっていない場合もある。また、監理業務の性格上業務の実施過程で必要(不必要)になる業務が明らかになる場合があるものと想定される。この場合の履行期間や業務委託料を適切に変更する必要があり、約款第 16 条、第 21 条、第 22 条の規定が適用される。
Q3:約款第 24 条及び第 25 条において監理業務受託者が損害に対する費用を負担する規定は監理
業務受託者にとって重すぎるのではないか?
A3:監理業務受託者に課せられた義務は善管注意義務と契約を履行する義務であり、後者の義務違反については約款第 33 条及び第 34 条に規定されている。約款第 24 条及び第 25 条の損害は「業務を行うにつき生じた」損害であり、監理業務受託者が善管注意義務を怠ったために生じた損害が該当し、無過失責任を課しているものではない。
Q4:約款第 27 条 3 項において、「検査に合格しないときは、直ちに履行して監理業務委託者の検
査を受けなければならない」とあるが、直ちに履行することが難しい場合にはどうするのか?
A4:履行が遅れて履行期間内に完了しない場合は約款第 34 条、履行ができなかった場合は約款第
33 条の適用となる。
Q5:①約款第 34 条における「監理業務を完了することができない場合」とは、何をもって判断するのか? ②例えば協議が間に合わなくて事業が遅延した場合などに損害金を支払わなければなら
ないとすると監理業務受託者のリスクが大きすぎないか?
A5:①「監理業務を完了することができない場合」とは、契約の履行が完了しない場合であって、第 27 条の業務完了の通知ができない、または検査に合格しない場合である。②契約監理において測量・調査・設計等業務や工事が遅延した場合の責任は基本的にはそれぞれの受託者・請負者にあるが、
委託者・発注者側の責任で行う協議や指示等の遅れが原因である場合は委託者・発注者側が遅延の責任を負うことになる。その場合、監理業務受託者の責によるものであれば約款第 34 条の規定が適用される場合がある。
Q6:共通仕様書第 13 条及び第 14 条に事業期間及びコストの縮減を提案することが規定されてい
るが、提案が認められた場合には対価を支払うべきではないか?
A6:監理業務受託者の業務内容として提案をすることが含まれる場合には、その採否に関わらず業務委託料に提案に係る費用を含むことを基本としている。このことは、良い提案を得るためにインセンティブフィーを設けること等を否定しているわけではなく、その場合は特記仕様書等に必要な規定を記載するものとする。
Q7:共通仕様書第 24 条では、監理業務委託者からの指示があった場合には約款第 1 条 3 項により積算を行わなければならなくなる。積算は負担の大きい業務であるため、この条項は監理業務受託
者のリスクが大きすぎるのではないか?
A7:監理業務委託者が「積算の実施」を業務の内容としない場合は当該条項を削除することは可能である。また、業務開始後に監理業務委託者からの指示により積算を行う場合には履行期間や業務委託料の変更を約款第 16 条の規定に基づき、適切に実施される必要がある。
Q8:監理業務の対象である調査・測量・設計業務又は工事で後になって瑕疵が判明した場合に監
理業務受託者にはどのような責任があるのか?
A8:業務・工事の瑕疵責任はxx的にはそれぞれの受注者にある。ただし、監理業務受託者に債務不履行や善管注意義務違反があった場合には責任の一部を負うことがありうる。
Q9:共通仕様書第 32 条では、契約監理の対象である調査・測量・設計業務又は工事において業務
者が担う役割を監理業務の特記仕様書(第 2 項)に規定するとともに、対象業務・工事の特記仕様
書(第 3 項)に明示することとされている。これら特記仕様書に記載された内容に齟齬があった場合どちらを優先させるのか?
A9:共通仕様書第 9 条により作成される監理業務計画書には、第 32 条第 2 項により特記仕様書で
規定された業務者の役割に従った業務組織計画が記載される。また、第 9 条第 2 項においては、対象となる測量・調査・設計等業務と工事の契約において、監理業務計画書の内容が反映されるよう必要な措置を講じることとされており、基本的に齟齬が生じる可能性は低い。万一、齟齬が生じた場合には、どちらかの特記仕様書を変更することになる。
<参考資料1:監督業務、検査業務に関連する法令>
【監督業務、検査業務に関連する法令(国)】
会計法(法律第 35 号)第 29 条の 11(契約の履行の確保)では、支出負担行為担当官は、工事請負契約の適正な履行を確保するため必要な監督を行い、受ける給付の完了の確認をするために検査を行うことが義務付けられている。
【会計法第 29 条の 11】
契約担当官等は、工事又は製造その他についての請負契約を締結した場合においては、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、契約の適正な履行を確保するため必要な監督をしなければならない。
2 契約担当官等は、前項に規定する請負契約又は物件の買入れその他の契約については、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、その受ける給付の完了の確認(給 付の完了に代価の一部を支払う必要がある場合において行なう工事若しくは製造の既済 部分又は物件の既納部分の確認を含む。)をするため必要な検査をしなければならない。
4 各省各庁の長は、特に必要があるときは、政令の定めるところにより、第1項の監督及び第2項の検査を、当該契約に係る契約担当官等及びその補助者以外の当該各省各庁所属の職員又は他の各省各庁所属の職員に行なわせることができる。
5 契約担当官等は、特に必要があるときは、政令の定めるところにより、国の職員以外の者に第1項の監督及び第2項の検査を委託して行なわせることができる。
【予算決算及び会計令】
第 101 条の3 (監督の方法)
会計法第29 条の 11 第1項に規定する工事又は製造その他についての請負契約の適正な履行を確保するため必要な監督(以下本節において「監督」という。)は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、立会い、指示その他の適切な方法によって行なうものとする。
第 101 条の4 (検査の方法)
会計法第29 条の 11 第2項に規定する工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他の契約についての給付の完了の確認(給付の完了前に代価の一部を支払う必要がある場合において行なう工事若しくは製造の既済部分又は物件の既納部分の確認を含む。)をするため必要な検査(以下本節において「検査」という。)は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて行なうものとする。
第 101 条の7 (監督の職務と検査の職務の兼職禁止)
契約担当官等から検査を命ぜられた補助者及び各省各庁の長又はその委任を受けた職員から検査を命ぜられた職員の職務は、特別の必要がある場合を除き、契約担当官等から監督を命ぜられた補助者及び各省各庁の長又はその委任を受けた職員から監督を命ぜられた職員の職務と兼ねることができない。
第 101 条の8 (監督及び検査の委託)
契約担当官等は、会計法第 29 条の 11 第5項の規定により、特に専門的な知識又は技能を必要とすることその他の理由により国の職員によって監督又は検査を行なうことが困難であり又は適当でないと認められる場合においては、国の職員以外の者に委託して当該監督又は検査を行なわせることができる。
【監督業務、検査業務に関連する法令(地方自治体)】
【地方自治法 第 234 の2】
(契約の履行の確保)
普通地方公共団体が工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他の契約を締結した場合においては、当該普通地方公共団体の職員は、政令の定めるところにより、契約の適正な履行を確保するため又はその受ける給付の完了の確認(給付の完了前に代価の一部を支払う必要がある場合において行う工事若しくは製造の既済部分又は物件の既納部分の確認を含む。)をするため必要な監督又は検査をしなければならないと定められている。
【地方自治法施行令第167条の15、地方自治法第234条の2第1項】
(監督又は検査の方法)
地方自治法施行令第167条の15、 地方自治法第234条の2第1項の規定による監督は、立会い、指示その他の方法によって行わなければならない。
2.地方自治法第234条の2第1項の規定による検査は、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて行わなければならない。
3.普通地方公共団体の長は、地方自治法第234条の2第1項に規定する契約について、契約の目的たる物件の給付の完了後相当の期間内に当該物件につき破損、変質、性能の低下その他の事故が生じたときは、取替え、補修その他必要な措置を講ずる旨の特約があり、当該給付の内容が担保されると認められるときは、同項の規定による検査の一部を省略することができる。
4.普通地方公共団体の長は、地方自治法第234条の2第1項に規定する契約について、特に専門的な知識又は技能を必要とすることその他の理由により当該普通地方公共団体の職員によって監督又は検査を行うことが困難であり、又は適当でないと認められるときは、当該普通地方公共団体の職員以外の者に委託して当該監督又は検査を行なわせることができる。
<参考資料2:国土交通省における調査職員、監督職員、検査職員の用語の定義>
【土木設計業務等共通仕様書(案) 国土交通省(平成 27 年3月 11 日)】第1編 共通編
第1章 総則
第1102 条 用語の定義
共通仕様書に使用する用語の定義は、次の各項に定めるところによる。
3.「調査職員」とは、契約図書に定められた範囲内において、受注者又は管理技術者に対する指示、承諾又は協議等の職務を行う者で、契約書第9条第1項に規定する者であり、総括調査員、xx調査員及び調査員を総称していう。
4.本仕様で規定されている総括調査員とは、総括調査業務を担当し、主に、受注者に対する指示、承諾または協議、および関連業務との調整のうち重要なものの処理を行う者をいう。また、設計図書の変更、一時中止または契約の解除の必要があると認める場合における契約担当官等(会計法(平成 18 年6月7日改正法律第 53 号第 29 条の3第1項に規定する契約担当官をいう。)に対する報告等を行うとともに、xx調査員および調査員の指揮監督並びに調査業務のとりまとめを行う者をいう。
5.本仕様で規定されているxx調査員とは、xx調査業務を担当し、主に、受注者に対する指示、承諾または協議(重要なものおよび軽易なものを除く)の処理、業務の進捗状況の確認、設計図書の記載内容と履行内容との照合その他契約の履行状況の調査で重要なものの処理、関連業務との調整(重要なものを除く)の処理を行う者をいう。また、設計図書の変更、一時中止または契約の解除の必要があると認める場合における総括調査員への報告を行うとともに、調査員の指揮監督並びにxx調査業務および一般調査業務のとりまとめを行う者をいう。
6.本仕様で規定されている調査員とは、一般調査業務を担当し、主に、受注者に対する指示、承諾または協議で軽易なものの処理、業務の進捗状況の確認、設計図書の記載内容と履行内容との照合その他契約の履行状況の調査(重要なものを除く)を行う者をいう。また、設計図書の変更、一時中止または契約の解除の必要があると認める場合におけるxx調査員への報告を行うとともに、一般調査業務のとりまとめを行う者をいう。
7.「検査職員」とは、設計業務等の完了検査及び指定部分に係る検査にあたって、契約書第 31 条第2項の規定に基づき、検査を行う者をいう。
【土木工事共通仕様書(案) 国土交通省(平成 25 年 3 月)】第1編 共 通 編
第1章 x x
第11節 x x
1-1-1-2 用語の定義
1.監督職員
土木工事においては、本仕様で規定されている監督職員とは、総括監督員、xx監督員、監督員を総称していう。
2.総括監督員
本仕様で規定されている総括監督員とは、監督総括業務を担当し、主に、受注者に対する指示、承諾または協議及び関連工事の調整のうち重要なものの処理、及び設計図書の変更、一時中止または打切りの必要があると認める場合における契約担当官等(会計法(平成18年6月7日改正 法律第53号第29条の3第1項)に規定する契約担当官をいう。)に対する報告等を行う者をいう。また、土木工事にあってはxx監督員及び監督員、港湾工事及び空港工事にあってはxx現場監督員及び現場監督員の指揮監督並びに監督業務のとりまとめを行う者をいう。
3.xx監督員、xx現場監督員
本仕様で規定されている土木工事におけるxx監督員、港湾工事、空港工事におけるxx現場監督員とは現場監督総括業務を担当し、主に、受注者に対する指示、承諾または協議
(重要なもの及び軽易なものを除く)の処理、工事実施のための詳細図等(軽易なものを除く)の作成及び交付または受注者が作成した図面の承諾を行い、また、契約図書に基づく工程の管理、立会、段階確認、工事材料の試験または検査の実施(他のものに実施させ当該実施を確認することを含む)で重要なものの処理、関連工事の調整(重要なものを除く)、設計図書の変更(重要なものを除く)、一時中止または打切りの必要があると認める場合における総括監督員への報告を行う者をいう。また、土木工事にあっては監督員、港湾工事、空港工事にあっては現場監督員の指揮監督並びに現場監督総括業務及び一般監督業務のとりまとめを行う者をいう。
4.監督員、現場監督員
本仕様で規定されている土木工事における監督員、港湾工事及び空港工事における現場監督員は、一般監督業務を担当し、主に受注者に対する指示、承諾または協議で軽易なものの処理、工事実施のための詳細図等で軽易なものの作成及び交付または受注者が作成した図面のうち軽易なものの承諾を行い、また、契約図書に基づく工程の管理、立会、工事材料試験の実施(重要なものは除く。)を行う者をいう。また、土木工事における監督員は段階確認を行い、港湾工事及び空港工事における現場監督員は、施工状況検査を行う。なお、設計図書の変更、一時中止または打切りの必要があると認める場合において、土木工事にあってはxx監督員、港湾工事及び空港工事にあってはxx現場監督員への報告を行うとともに、一般監督業務のとりまとめを行う者をいう。
37.検査職員
検査職員とは、契約書第31条第2項の規定に基づき、工事検査を行うために発注者が定めた者をいう。