Contract
自治体職場における
【36協定 締結の手引き】(改訂版)
長時間労働を改善し、超勤手当不払いを根絶するために
労働基準法は、私たち地方公務員にも原則として適用されます。従って使用者が時間外労働を命ずる場合、あらかじめ労基法 36 条にある労使協定(36 協定)締結が必要です。
労基法は 8 時間労働の原則を定めており、これを超えて働かせることは本来違法ですが、36 協定を結ぶことにより労働者の合意をとりつけたとみなされ、使用者はその責を免れます。
このように 36 協定を結ぶ責任は使用者の側にありますが、労働者はこれを利用して、労働条件改善のツールとすることができます。例えば人員を増やして長時間労働を改善する努力を約束するなら協定を結ぶ等、労働組合が積極的に交渉に利用することが求められます。
この手引きを活用して各職場での労使交渉をすすめていただくようお願いします。
目 次
はじめに
(1)締結当事者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(2)労使で協定すべき事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(3)「特別条項付き協定」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
(4)労基法 33 条 1 項および 33 条 3 項に基づく超過勤務について・・・・・・・・・・・・7
(5)健康管理措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(6)自治体職場での規則改正にあたり注意すべきこと・・・・・・・・・・・・・・・・・8
※添付資料
<資料1> 労働基準法別表
<資料2> 36 協定締結のフローチャート(参考例)
<資料3> 時間外勤務及び休日勤務に関する基本協定モデル(案)
<資料4> 地方公務員法制定時参考資料
<資料5> 行政実例・時間外勤務と労働基準法第三十六条の協定
2019 年 3 月 初版
2024 年 2 月改訂版自治労連賃金権利局
はじめに
労働基準法によって、1 日の労働時間は 8 時間を超えて労働させてはならない、と定められており、例外的に時間外労働をさせる場合には 36 協定の締結が必要です。自治体職場も当然 36 協定を締結しなければ使用者は時間外労働をさせることができません。36 協定締結は、使用者が労働者に時間外労働をさせても罰則を免れるしくみですから、労働者側は協定の交渉において優位な立場にあります。協定を結ぶ条件として、人員増などの要求をあわせて交渉したり、時間外労働を最小限にするための様々なとりきめを協定に盛り込むことが重要です。しかし、協定のしくみをよく理解していないと、使用者側の示した一方的な内容で締結することにもなりかねません。
2024 年4月からは、これまで猶予となっていた医師、建設事業、自動車運転業務などの事業所も 2019
年改正労基法による時間外勤務の上限規制が適用されます。
この『自治体職場における 36 協定締結の手引き(改訂版)』では、先進的な単組の例も紹介しながら、締結の実際について解説します。
なお、本庁など一般官公署で働く一般職の公務員は、36 協定を締結しなくても労基法 33 条 3 項によ
り時間外労働をさせることが可能とされていますが、原則どおり 36 協定の締結を求めるとともに、締結しない場合であっても条例等で定める上限規制を厳格に運用させることが必要です(総務省も規則改正を求める通知を発出している)。この手引きは、一般的な労使協定を結ぶ際の参考にしていただくことも想定しています。
⮚ 「36(サブロク)協定」とは
使用者は、その事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合と、このような労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、これを労働基準監督機関に届け出た場合には、その協定で定められた範囲内で労働時間を延長し、または休日に労働させることができます。この労使協定は、その根拠が労基法 36 条にあることから、一般に「36 協定」と呼ばれています。協定の直接的な効力は「この協定があればその範囲内で時間外、休日労働を行わせても労働基準法違反の責を負わない」という刑事上の免責です。
⮚ 締結が必要である時間外労働
労基法に定められた労働時間(1 日 8 時間、週 40 時間)を超えて時間外労働を命じる場合。パートタイムの会計年度任用職員など非常勤の短時間労働者であっても、この時間を超えて働かせる場合は該当します。
⮚ 締結が必要である事業所
「労働基準法別表第1」に掲げる事業を営む事業所には、締結義務があります(指定内容は自治体により異なります)。事業所ごとに労使で協定を締結し、労働基準監督署に届ける必要があります。なお、部・課などの職場も締結の単位となります。また、一般官公署で働く非現業の一般職であっても、「公務のための臨時の必要」にあたらない業務に従事する場合には、締結が必要です(届け先は人事委員会。それがない場合は、市町村長や管理者)。
⮚ 未締結のまま時間外・休日労働をさせた場合の罰則
「6 ヶ月以下の懲役または 30 万円以下の罰金」が使用者に科されます(労基法 119 条)。
【1】締結当事者
1. 労働者の代表とは
36 協定は事業所ごとに締結することとされているので、締結するためには、その事業所の労働者代表
を決定しなくてはなりません。
すでに過半数を組織している労働組合がある場合はその労働組合が締結することになります。労働組合がない場合には、労働者側において過半数代表者を選出し、その者が締結することになります。
なお、当該事業所の過半数を組織している労働組合の合意があれば、各事業所の長でなく自治体首長や、事業場の労働組合でなく本部の労働組合が締結の主体となることも可能です。
また、一事業所に労働組合が複数ある場合、そのいずれかが過半数を組織しているときは、その労働組合と協定すれば足り、他と協定する必要はなく、その効力は当該事業所のすべての労働者に及ぶとされています。また、複数の労働組合で協議して過半数代表となることも可能です。
2. 過半数を占めているかどうかの決定における、母数となる「労働者」の考え方
労基法 9 条で定義されている管理監督者や非正規雇用職員等を含む、すべての労働者が該当します。
月 1 日勤務のような勤務形態であっても雇用関係がある者は含まれます。派遣・請負労働者は雇用関係がないので含まれません。
3. 過半数代表者の選出について
(1) 労働者の代表を選ぶ手続きであるため、主導権は労働組合が握り、使用者側が一方的に日程や選出方法を決めて職員に通知するなど、不当な対応をさせないようにします。
(2) 過半数の分母となる労働者数を確認します。
(3) 過半数労組かどうかを判断する基準日を決め、基準日までに過半数めざして組合員を拡大します。
(4) 過半数労組でない場合、過半数代表の選出方法について、労組から提案して確認しましょう(労働組合の代表を過半数代表とすることに同意する署名(信任状)を過半数の労働者から集める、過半数代表を選出するための選挙を行うなど。挙手、回覧(書面を回覧し記名押印)なども考えられるが、匿名性を守るためには望ましくない)。
(5) 過半数代表選挙の方法
労働組合と使用者側で選出委員会をつくり、立候補受付期間、選挙運動期間、投票期間、開票日、投票場所、得票が過半数に満たない場合の対応(上位 2 名の再選挙、最多得票者の信任投票等)などについて決めましょう。職員が投票しやすい場所・時間を考慮し、開票には労働組合も立ち会います。
(6) 複数の事業所(A、B、C)を組織する X 労働組合がある場合、A 事業所に働く労働者の過半数が組合員であれば、X 労働組合が過半数労組として、A 事業所における 36 協定の締結当事者となります
(X 労働組合の代表が A 事業所の労働者である必要はなく、執行委員長など組合全体の代表でも分会長など職場代表でも可能)。
(7) 代表者を使用者が指名することはできません。使用者たる長を除く労基法 41 条 2 号に規定する監督又は管理の地位にある者は、労働者に含まれるが、過半数代表にはなりえません。
(8) 選出の記録は書面で残しておきましょう。
【2】労使で協定すべき事項
1. 法・規則等で規定されている事項
(1) 時間外または休日の労働をさせる必要のある業務の種類、労働者の数。
(2) 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間(1 年以内に限る)。
(3) 対象期間における 1 日、1 か月、および 1 年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数。
(4) 時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的事由
「業務の都合上必要な場合」「業務上やむをえない場合」などの抽象的な定め方は、恒常的な時間外労働を生じさせる可能性があるため避けましょう。
(5) 有効期間
36 協定の単位が 1 年間とされているので、有効期間は 1 年以内とする。また、1 か月単位の締結も可能。例えば、1 年単位の協定内容が合意に達していない場合には、短期間で結ぶということも可能。
2. 2019 年 4 月から施行された上限時間設定について
厚労省資料より
36協定締結の基準
単 位 | 労働基準法上の上限規制(あくまで限度であり、事業所ごとの労使協議によりこの範囲 内で最小限に設定することが求められる) |
1日 | 法上の上限規制はない。 |
1月 | 45 時間が原則的な限度時間(法定休日に勤務した時間は含まない)。 上限は単月 100 時間未満(法定休日勤務を含む)。 月 45 時間を超えることができるのは、年間 6 回が限度。 |
1年 | 360 時間が原則的な限度時間(法定休日勤務は含まない)。 上限は 720 時間(法定休日勤務は含まない)。 2~6 か月のどの平均でも月あたり 80 時間であることが必要(法定休日勤務を含む)。 |
※法定休日とは、労基法で定められた最低限の基準。使用者は労働者に、毎週少なくとも 1 回の休日、
または 4 週間を通じて 4 日以上の休日を与えなくてはならない(労基法 35 条)
3. 上限時間設定にあたり、留意すべきこと
(1) 労基法と同時に改正された労働安全衛生法において、事業主に対し、管理職を含めた労働者について、タイムカードやパソコンの使用記録など客観的記録による労働時間把握を求めています。
(2) 私たちの運動を反映し、長時間労働の抑制のため下記のように厚労省の指針で定められています。この指針に沿って、36 協定を結ぶ場合でも必要最小限のものとさせましょう。
4. 医師、建設事業、自動車運転などへの上限規制の適用
(1) これまで猶予となっていた医師、建設事業、自動車運転の業務等も「改正労基法」が適用されます。 2024 年 4 月以降に締結される 36 協定が対象です。2024 年 3 月 31 日までに締結した 36 協定については、当該協定の定める期間の初日から 1 年を経過する日までに改正労基法に合致するよう見直すことが必要です(労基法附則 2 条)。逆に言えば、3 月 31 日までに締結された協定は 1 年間有効となりますので(途中変更は可能)、法の基準を満たす内容とさせることが重要です。
事業・業務 | 2024 年4⽉1日以降の取り扱い |
建設事業 | 災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。 災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休⽇労働の合計について、 ⽉100 時間未満 2〜6か⽉平均 80 時間以内とする規制は適用されません |
自動⾞運転 の業務 | 特別条項付き 36 協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年 960 時間となります。時間外労働と休⽇労働の合計について、 ⽉100 時間未満 2〜6か⽉平均 80 時間以内とする規制は適用されません。 時間外労働が⽉45 時間を超えることができるのは年 6 か⽉までとする規制は適用されません。 |
医師 | 具体的な上限時間は今後、省令で定めることとされています。 |
(2) 労働時間等設定改善法で、前日の終業時刻と翌日の就業時刻の間に一定時間の休息を確保すること
(インターバル規制)について、使用者の努力義務が盛り込まれました。地方公務員については適用除外となっていますが、積極的に制度化させましょう。法律上は 1 日の労働時間規制がないもと
で、インターバル規制を入れることでそれを補う役割を持たせることができます。勤務間インターバルについては、人事院も 23 勧告の際の「人事管理に関する報告」のなかで、2024 年 4 の施行を目指すとしており、これを念頭に置いた議論が必要です。
5. 労働組合として、協定に盛り込むべきこと
例えば「協定の有効期間中であっても、労働組合の破棄通告により失効する」、「(使用者側は)時間外労働ならびに休日労働について、不断に削減の努力義務を負う。」「協定で定めた1か月の時間外労働の時間数を 3 か月連続で超える場合は、(使用者側は)業務分担や人員配置の見直しなど時間外労働の削減に努めるものとする。」などのように、時間外労働を抑制するためのとりきめを積極的に追及しましょう。
※参考までに<資料2>36 協定締結までのフローチャート、および<資料3>時間外勤務及び休日勤務に関する基本協定モデル(案)をご覧ください。
6. 協定締結の前提と締結後のフォロー
36 協定は、一つ間違えば時間外労働を蔓延させるための免罪符になりかねません。協定を結ぶ前や締結後のとりくみとして、下記のような点を確認・要求することは欠かせません。
(1) 時間外労働を発生させないことが基本であり、時間内に業務を終わらすことができるよう、必要な人員体制整備を含め使用主が努力すること。管理監督者が、職場の個々の労働者の労働実態をきちんと把握すること※1。そのために、労働者自身の申告にとどまらず、タイムカードやパソコンの使用状況など客観的なシステムによる労働時間管理を行うこと※2。
※1 厚労省「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」参照
※2 改正労働安全衛生法 66 条 8 の 3
(2) 恒常的に長時間の時間外労働が行われている場合、その原因を究明し、業務内容の精査・段取りの改善等で解決しなければ人員増を行うこと。
(3) 協定の時間内で業務が終わらない場合の対応策を準備すること(他部署からの応援等)。
(4) 36 協定は締結して終わりではありません。毎月、時間外労働等についての資料提出を求め、協定違反がないかどうかはもちろん、労使で確認した改善対策が進展しているかチェックしましょう。また、再締結にあたっては自動更新ではなく、前年の実態を検証させることは欠かせません。
(5) 労働安全衛生委員会を活用して、時間外・休日労働、年休取得等の実態を部署ごとに報告させ、改善策を協議することを追求しましょう(1 日 2 時間半以上や月 45 時間以上の時間外労働該当者について、部署・理由を報告させ、年度の半ばで 180 時間を超えている場合、対策をとらせることとしている単組もある)。
(6) 協定した上限時間を超える可能性があり当局から再締結を求められた場合も、必ず増員等の手立てをとらせることを前提に臨みましょう。
【3】「特別条項付き協定」について
1. 「特別条項付き協定」とは
時間外労働を上限である月 45 時間以内、年 360 時間以内にとどめることは当然の前提ですが、どうしてもそれを超えざるをえないことが見込まれる場合、特別条項を協定に付加する方法があります。
使用者は、当該事業場において「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に」労働させる必要がある場合に、36 協定の「特別条項」を労使で締結して労働基準監督署に届出した場合に限り、月 45 時間・年 360 時間を超えて時間外労働を命ずることができます(但し、あくまで 4 頁にある
上限規制の範囲内)
2. 要件・内容
(1) 36 協定の中に特別条項も含めて協定すること。
(2) 特別条項は「特別の事情」が生じたときに限り発動されるものであり、「特別の事情」は「臨時的なもの」に限られること。
→「臨時的なもの」とは一時的または突発的に時間外勤務を命じる必要があるものであって、常態的なものではありません。したがって、特別条項付きの協定の適用は1年のうち半分を超えてはなりません。例えば、1 か月 45 時間という協定を結んでいた場合、これを超えることができるのは年 6 回
までであって、あとの 6 か月は 45 時間を超えることはできません。
(3) 特別条項の発動は、労使間で定めた手続きを経る必要があること。
特別条項を発動する場合には、あらかじめ協定で定めた手続きを経る必要があります。協定書には、発動の要件(例「機械故障による業務遅滞で通常の延長時間では処理できないことが明らかなとき」)および労働者側とその都度協議の上での発動という手続きを明記させることが重要です。
(4) 延長時間の限度を協定すること。
厚労省資料より
「特別の事情」がある場合の延長時間の限度は、年 720 時間(法定休日に働いた時間を含めれば 960時間)とされています。しかし、これをできる限り短くする努力が求められており、職場の労働実態を掴んだうえで、話し合いで必要最小限の時間を設定すべきです。
◆「上限時間」「特別条項」等の関係
① 月 45 時間、年 360 時間 →「上限時間」
② ①を超え、年 720 時間まで →「特別条項」
③ ①②を超え、「災害等において」臨時の必要がある場合は、別途の協定※を結ぶことが望ましい。
※ 現業・公営企業の場合は、労働基準法上の「労働協約」として締結することができるが、非現業職員の場合は、地公法上の「書面による協定」となる。
(5) 「限度時間」を超える時間の労働に係る割増賃金率を定めること。
種 類 | 支払う条件 | 割増率 |
時 間 外 (時間外手当・残業手当) | 法定労働時間(1 日 8 時間・週 40 時間)を超えたとき | 25%以上 |
午後 10 時~翌日午前 5 時までの時間外勤務をさせたとき | 50%以上※1 | |
時間外労働が限度時間を(1 か月 45 時間・1 日 360 時間)を 超えたとき | 25%以上※2 | |
時間外労働が1か月 60 時間を超えたとき | 50%以上 | |
休 日(休日手当当) | 法定休日(週 1 日)に勤務させたとき | 35%以上 |
協定書には、時間外労働の賃金割増率を記載することが必要です。労基法では、次ページの表のように賃金割増率が定められていますが、これはあくまで最低基準であり、使用主にはこれ以上に引き上げる努力義務があります。しかし、実際、自治体では超えている例はないと思われます。引き上げ要求の運動もあわせてとりくみましょう。
※1 月 60 時間以上は 75% ※2 25%を超える率とするよう努めることが必要です。
◆具体例に見る特別条項発動の必要なケースと対応できないケース
想定 協定本則:1月 45 時間、1年 360 時間 特別条項:1月 80 時間、1年 720 時間
〔月別 時間外勤務等実績】 | 協定本則 | 特別条項 | |||||||||||||||||
職員 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 年計 | 1月 | 1年 | 1月 | 1年 | 回数 | 判定 |
A | 29.6 | 18.3 | 28.3 | 22.3 | 28.0 | 12.8 | 24.0 | 24.7 | 21.3 | 23.9 | 7.3 | 26.2 | 266.5 | ○ | ○ | 発動なし | ○ | ||
B | 11.5 | 44.0 | 67.5 | 78.5 | 41.3 | 15.5 | 41.5 | 62.8 | 10.3 | 29.0 | 51.0 | 52.3 | 505.0 | × | × | ○ | ○ | 5 | ○ |
C | 45.3 | 63.5 | 69.8 | 62.5 | 47.4 | 39.0 | 66.5 | 62.5 | 70.6 | 53.5 | 64.5 | 31.5 | 676.5 | × | × | ○ | ○ | 10 | × |
D | 21.5 | 35.5 | 40.3 | 9.3 | 11.3 | 48.5 | 59.0 | 55.5 | 86.0 | 48.0 | 14.0 | 46.3 | 475.0 | × | × | × | ○ | 6 | × |
E | 76.3 | 78.3 | 72.3 | 52.0 | 73.8 | 54.8 | 69.5 | 53.3 | 42.5 | 52.3 | 71.3 | 50.3 | 746.3 | × | × | ○ | × | 11 | × |
※「判定」で「×」は、労基法の時間外労働規制に照らして、特別条項でも対応不可のケース)
3. 「特別条項」は原則締結しない。
(1) やむを得ず締結する場合も、極力時間数を減らし、対策を明確にさせます。例えば、救急指定病院が急患を受け入れるのは通常の業務であって、「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴う臨時的な特別の事情」にはあたりません。また、「1 年の半分を超えないこと」とされていることから、1 年間の半分(6 ヵ月)を超えて 45 時間を超えることが想定される場合も、「特別条項」は適用できません。災害時等の対応については、労基法 33 条 1 項に規定されているので、災害等の事態を想定して「特別条項」を締結する必要はありません。
(2) 特別条項付き協定を締結する場合もその前に、事務改善、業務量の縮減、業務の平準化など超過勤務等の縮減策を講じ、限度時間内に収める努力を尽くすことが重要です。
【4】労基法 33 条 1 項および 33 条 3 項に基づく超過勤務について
1. 労基法 33 条 1 項(災害対応等)
労基法 33 条 1 項では、「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度におい……労働時間を延長し、又は……休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。」とされており、こうした場合、法律上は 36 協定の上限時間を超えて働かせることが可能となっています。しかし、近年自然災害が頻発しており、対応職員の長時間労働が問題となっているもと、33 条 1 項にもとづく超勤命令も、対象となる労働者の人数・期間・上限時間について労働組合に協議することをあらかじめ協定しておくことが求められます。この場合の超過勤務等は、36 協定に定める時間数には含まれないものであり、別枠扱いとなります。
なおこの条項は、待機についてはまだ災害が発生していないこと、また恒常的に発生するものであることなどから該当せず、待機ではなくて天災地変が発生している現場で作業にあたるというような場合を想定していると考えられます。
労基法 33 条 1 項に基づく事前許可または事後届の提出の際に、提出内容について労使協議を行うことも求めましょう。
2. 労基法 33 条 3 項(公務の臨時の必要がある場合)
(1) 労基法別表第一に掲げる事業を除く官公署の事業に従事する職員については、労基法 33 条 3 項によって、時間外労働を「公務のために臨時の必要がある場合」に限って 36 協定を結ばなくてもできることになっています。したがって、「公務のために臨時の必要」以外の理由では、一般官公署に勤務する地方公務員についても36 協定がなければ時間外労働をさせることはできません。しかし、厚労省は「公務のために臨時の必要がある場合」を広く解釈し、地方公共団体の判断に委ねるとしています。
(2) この点については、1992 年の 4 月 17 日の参議院地方行政委員会で、当時の日本共産党・諫山博参議院議員が当時の自治省公務員部長に対して行った質問で「公務上臨時の必要がある」場合に該当しない場合は「36 協定が必要である」とした総務省見解<資料4>および<資料5>の 2 点については、当時の公務員部長も見解に変更がないことを認めています。
【5】健康管理措置
1. 労働安全衛生法の改正による、健康管理措置の強化
事業主は、1 か月の時間外労働が 80 時間を超えた労働者の情報を産業医に通知せねばならず、また、
1 か月の時間外労働が 80 時間を超えかつ疲労蓄積が認められる労働者に対し産業医の面接指導を受けさ
せなくてはならないとされています(改正前の 100 時間から引き下げ)。
さらに事業者は、産業医から受けた健康管理に関する勧告の内容を衛生委員会に報告し、衛生委員会での実効性のある健康確保対策の検討に役立てなくてはなりません。
2. 安全配慮義務
事業主が上記の対応をせず、恒常的な長時間労働を是正せずに放置した結果、労働者が心身の健康を損なった場合、使用者は安全配慮義務違反があったとして損害賠償責任を負うことになります(労働契約法 5 条、民法 415 条)。公務にも安全配慮義務があることは、この間自治労連が行った総務省交渉でも、総務省が認めています。
【6】自治体職場での規則改正にあたり注意すべきこと
非現業(労基法別表第一の職場以外)では、条例・規則の「他律的業務」の見直しと適用の厳格化、「特例業務」の適用の厳格化・廃止を求めます。
1. 人事院規則の機械的適用は認めない
総務省が 2019 年 2 月 1 日に発出した通知(総行公 8 号)では、人事院規則の改正内容を紹介した上で、「地方公共団体におかれては、地方公務員法の趣旨に沿い、これらの内容を踏まえ、超過勤務命令の上限時間等について平成 31 年 4 月より適用すべく、条例、人事委員会規則等の改正など所要の措置を講じていただくようお願いします。」とあるのみです。
国家公務員と異なり、自治体職場は、労基法別表第一に記載されている職場は全面的に労基法 36 条の対象となり、一般官公署も労基法 33 条 3 項(公務のための臨時の必要のある場合)を除いては同様のはずですが、その点についての記述は見られません
※ 時間外労働規制の交渉を行う際、人事院規則の機械的横引きをさせないよう、交渉をすすめていく必要があります。
2. 「他律的業務」「特例業務」は、原則指定させない
人事院規則を準用する場合でも、「他律的業務」や、上限規制の対象外とされる「特例業務」等を安易に持ち込ませないことが重要です。特に「特例業務」は、一般官公署以外の職場では労基法 33 条 1 項を適用する場合を除き上限規制の対象外となる労働者は存在しないのに対し、著しい不均衡を招きます。なお、人事院規則によれば、「他律的業務」とされる部署の指定を行う場合には、当該職員に周知する必要があるとされています。当然労働組合に対しても協議することを要求しましょう。
総務省は自治体での取り扱いについて、「他律的業務」は「例えば、地域住民との折衝等に従事するなど、業務の量や時期が任命権者の枠を超えて他律的に決まる比重の高い部署が考えられますが、その範囲は必要最小限とし、部署の業務の状況を考慮して適切に判断する必要があります」としています。また、
「特例業務」は「特例業務の範囲は、職員が従事する業務の状況を考慮して必要最小限のものとする必要があります」としています。
今後組合として、「他律的業務」や「特例業務」は原則指定させないことや、その指定や範囲を自治体当局に一方的に行わせないために、労使協議や交渉を行い、制限をかけていくことが必要です。
3. 災害対応の場合も上限規制は必要
災害対応等やむをえない事情で「特例業務」の指定を受ける場合も、職員の健康を守るために上限時間の設定や最低週 1 日の休日確保は必要です。また、人事院規則は、事後に「当該超過勤務に係る要因の整理、分析及び検証を行わなければならない」としており、その中には、「人員配置又は業務分担の見直し等によっても回避できなかった理由を記録しなければならない」とされています。事後の検証を行うことを要求しましょう。
4. 限度時間にはすべての休日勤務の時間を含ませる
労基法では上限規制の月 45 時間、年 360 時間には法定休日に勤務した時間は含まれないとされています。しかし、国家公務員の場合は祝日・年末年始は勤務を割り振る日とされているため、人事院規則に休日勤務の規定はなく、週休日も含めた超過勤務について月 45 時間、年 360 時間を原則的な上限とし、この範囲内で必要最小限とするとしています。
労働基準法に定める 36 協定の限度時間の月 45 時間、年 360 時間の時間数には休日勤務を含みませんが、国家公務員との均衡から、休日勤務を含めた時間とさせることが必要です。
なお、人事院規則に定める「他律的業務」の上限である、単月 100 時間未満、2~6 か月平均月 80 時
間、年 720 時間については週休日・祝日を含みますが、労基法の特例条項の年間上限 720 時間には休日勤務は含んでいません。仮に特例条項を締結する事情が生じた場合でも、すべての休日勤務を含めた時間数にしていく必要があります。
<参考資料>
① 厚労省「36 協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/000350731.pdf
② 厚労省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(巻末に 36 協定新届出様式もあり)
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
③「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
<資料1>労基法別表第一の号別区分
1 号 (製造業) | 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。) (例)水道事務所 | 労働基準監督署 |
2号(鉱業) | 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業 | |
3号(土木・建築) | 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業 (例)土木事務所、下水道事務所 | |
4号(交通) | 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業 (例)バス、鉄道 | |
5号(港湾) | ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取 扱いの事業 | |
6号(農林) | 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐 採の事業その他農林の事業 | |
7号(牧畜・水産) | 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の 畜産、養蚕又は水産の事業 | |
8号(商業) | 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業 | |
9号(金融・広告) | 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業 | |
10 号(映画・演劇) | 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業 | |
11 号(通信) | 郵便、信書便又は電気通信の事業 | |
12 号(教育・研究) | 教育、研究又は調査の事業 (例)公立学校、公立専門学校、試験研究機関、美術館、図書館 | 人事委員会(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長) |
13 号(保健・衛生) | 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業 (例)病院、保健所、児童相談所(一時保護所)、児童養護施設、特別支援学校(寄宿舎) | 労働基準監督署 |
14 号(娯楽・接客) | 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業 (例)ボートレース場、競輪場 | |
15 号(清掃・と畜) | 焼却、清掃又はと畜場の事業 (例)塵芥収集、清掃工場、動物保護管理センター |
別表以外
一般官公署 | 本庁、税事務所、消費生活センター、福祉事務所、児童相談所(一時保護所を除く)家畜保健衛生所、男女共同参画センター、議会事務局、教育委員会事務局、選挙管理委員会事務局、人事委員会事務局、監査委員 事務局、労働委員会事務局、警察本部、収用委員会事務局など | 人事委員会(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長) |
※上表の事業所名は(例)ですので、手続きの際は地元の労働局に確認する必要があります。
<資料2>36 協定締結のフローチャート
36 協定締結のフローチャート(参考例)
36 協定締結までのフローチャートはあくまで参考例です。
時間外勤務及び休日勤務の実態把握、36 協定締結に向けたルール※、スケジュール等の労使協議と確認
事業所の時間外勤務の実態を所管から報告(月・年間)
事業所の時間外勤務時間数について職場討議(事業所に職員の過半数で組織する労働組合がない場合は職場代表者の選出)
事業所の時間外勤務時間数について所管課または事業者との協議
事業所の職場側の時間外勤務時間数について所管課へ提出
36 協定書に事業所代表者の署名及び捺印
時間外勤務及び休日勤務、36 協定に関する基本協定の締結
時間外勤務及び休日勤務、36 協定に関する基本協定の協議
※労使協定が締結されており、変更する必要が無い場合は省略
※ 労働者の過半数を組織する労組が無い場合の過半数代表の選出法等の詳細は 2 ページを参照。
<資料3>時間外勤務及び休日勤務に関する基本協定モデル
時間外勤務及び休日勤務に関する基本協定
◯◯市長(以下「甲」という)と◯◯労働組合〇〇委員長(以下「乙」という)は、時間外勤務及び休日勤務に関し、労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号。以下「法」という)第 36 条の規定に基づく協定
(以下「36協定」という)を締結する場合、及び、その他の場合における「時間外及び休日勤務の労使確認事項」の基本となる事項について、次のとおり協定する。
1.定義
この協定書において、時間外勤務及び休日勤務の定義は次のとおりとする。
(1)時間外勤務とは、法第 32 条及び第 32 条の 2 の規定による時間を勤務することをいう。
(2)休日勤務とは、法第 35 条に規定する休日に勤務することをいう。
2.基本方針
(1)時間外勤務及び休日勤務(以下「時間外勤務等」という)は、原則として行わせないものとする。
(2)(使用者側は)時間外労働ならびに休日労働について、不断に削減の努力義務を負う。
(3)時間外勤務等は、臨時的、突発的、の他急を要する等、業務処理上真にやむを得ない場合に限り3
6協定、及び「労使確認事項」に基づき行うものとする。
(4)協定で定めた1ヶ月の時間外労働の時間数を3ヶ月連続で超える場合は、(使用者側は)業務分担や人員配置の見直しなど時間外労働の削減に努めるものとする。
(5)時間外勤務等を行わせる場合、所属の長は、部署の適切な運営に努めるとともに、職員の健康等に留意し、労働実態の把握に十分努めるものとする。
(6)協定の有効期間中であっても、労働組合の破棄通告により失効する。
3.36協定締結の当事者
(1)36協定の締結当事者は、各事業所の長と当該事業所において職員の過半数で組織する労働組合がある場合においては労働組合を代表する者、職員の過半数で組織する労働組合がない場合においては職員の過半数を代表する者とする。
(2)労働者過半数代表の選挙においては、乙が事業所等ごとに推薦を行なうことができるものとする。また、事業所の区分や該当職場の分類等について、及び、民主的に労働者代表を選ぶための選挙方法
(選挙公示、立候補の受付、選挙の実施、公表などに関する事項)について労使協議を行ない事前に確認する。
4.時間外勤務及び休日勤務の必要のある事由
時間外勤務等の必要のある事由とは、次の場合とする。
(1)緊急を要する災害(水防等の待機含む)等が生じたとき。
(2)通常の業務において一時的かつ緊急を要する作業量の増大が生じ、所定の勤務時間では処理できないことが明らかなとき。
(3)交替制職場における引き継ぎ
(4)その他甲乙が必要と認めるもの
※研修や交替制勤務職場における業務引き継ぎなど、各事業所の実態など踏まえ不払い残業となら
ないよう具体的に列挙する。
5.延長することができる時間
この協定によって延長することができる勤務時間数は、条例・規則(または就業規程)で規定する 1 日
の実勤務時間が 8 時間、1 週 40 時間を超えて延長する勤務時間数とし、以下のとおりとする。
(1)時間外勤務は、 1か月 45時間以内、1年間 360時間以内とする。また、1日について4時間以内、1週15時間以内とし、勤務間インターバル等の規定を設けること。
(2)休日勤務は(1)で定める延長する勤務時間数に含むものとする。
6.協定時間を超えて時間外勤務をさせる特別の場合
(1)4の規定にかかわらず、協定時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別な事情があるときは、特別協定を締結し延長できるものする。
(2)協定時間を超えて延長する場合の事由は、以下の事例などを基本に職場ごとに具体的に明示するものとし、事前に労使協議、労使合意をはかる。
①災害等緊急業務により通常の延長時間では処理できないことが明らかなとき。
②機械等及びコンピューターの故障等が生じたとき
③突発的臨時業務(事故等への対応)が発生し集中的に処理しなければならないとき。
④前各号に準ずる特別事情のあるとき。
(3)特別協定の場合の時間外勤務の上限等
① 月 80 時間、年 720 時間以下、また、1 日当たりの上限、勤務間インターバル等の規定を設けること。
② ①に休日勤務(週休日・祝日)を含む
③ 1 ヶ月当り 45 時間を超えることは年間 6 回以内であること。月 45 時間を超えたどの 1~6 か月の
平均時間外労働時間も月 80 時間以内であること。
(4)特別協定の手続きは以下のとおりとする
①協定時間を超えて延長する場合は、事前に乙及び「協定締結の労働者代表」に、命令する業務内容、理由、期間及び時間について報告し、了解を得るものとする。やむを得ない事情がある場合は、事後、速やかに報告と確認を得るものとすること。
②甲は、実施後にその命令が妥当であったか検証を行い、乙及び「協定締結の労働者代表」に速やかに報告し、必要ある場合は今後の対策(人員、体制含む)について協議を行うものとする。
(5)法第 33 条1項に規定する緊急な業務及び激甚災害等に伴う復旧業務の取扱い
①どのような事態に適用するのか事態や要件等を具体的にし、適用する場合の手続や労使協議、事後の検証等について定めるものとする。
②その際の時間外勤務の上限規制や期間、休憩や休暇の取り方、職員交替の基準などを、(3)を基準として明確に定めるものとする。
7.安全衛生委員会への報告
(1)甲は当該事業所に勤務する職員の時間外労働について、以下を当該事業所の安全衛生を所管する安全衛生委員会に報告し、具体的対策を協議するものとする。
①時間外勤務の上限(月 45 時間、年 360 時間など)を超えた職員数、また、特別条項に基づく時間外勤務を行った職員数などの、職場ごとの状況。
②各月の個人別時間数及び、累計の最高時間数と平均時間数。
(2)毎月開催される安全衛生委員会の際に報告。安全衛生委員会の設置義務のない事業所にあっては、締結当事者乙に報告するものとする。
8.時間外勤務手当の支給について
(1)職員が時間外・休日勤務を行った場合には、その実績に対して労働基準法・条例及び規則に基づき時間外勤務手当を支給する。
(2)時間外勤務が限度時間を(1 か月 45 時間・1 日 360 時間)を超えたときは割増率を◯◯%とする。
9.職員の健康管理等
職員の健康管理等については労働安全衛生法及び規則に基づき以下の通りとする。
(1)甲は休憩時間を除き1週間あたり 40 時間を超えて勤務させた場合におけるその超えた時間が1か
月 80 時間を超え、また疲労の蓄積が認められる職員に対し、医師による面接指導を実施する。
(2)甲は休憩時間を除き1週間あたり 40 時間を超えて勤務させた場合におけるその超えた時間が1か
月 80 時間を超えた職員の氏名、その職員に係る超えた時間に関する情報、職員の業務に関する情報で、健康管理等を行うために必要なものを医師に提供する。
10.協定の有効期間及び変更について
(1)この協定の有効期間は、平成◯◯年◯月◯日から平成◯◯年◯月◯日までとする。なお、協定期間終了後の再締結に向けて、甲乙は実態を検証し、協議のうえ、再度協定するものとする。
(2)本協定について変更が必要となった場合や疑義があるときは、甲乙協議するとともに、甲は速やかに改善に努めるものとする。
年 月 日
甲 ◯◯◯◯市 市長 ◯◯◯◯
乙 ◯◯◯◯組合
執行委員長 ◯◯◯◯
<資料4>地方公務員法制定時参考資料 一 自治省公務員第一課編
自治省公務員第一課が出した「地方公務員制定時参考資料一」という資料の中で「公務上臨時の必要がある」場合に該当しない場合は「36 協定が必要である」としている資料。
(地方行政委員会会議録第四号 平成4年4月17日(参議院))。
問三 労働基準法第三十六条を適用するのは、本法の精神に矛盾するものと思うがどうか。
答 労働基準法第三十六条は、「使用者は、当該事業場における労働組合又はこれに代わる者との書面による協定をなし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条若しくは第四十条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」旨を規定している。この規定で問題になるのは、労働時間の延長又は休日労働という労働条件の変更とみられ得べきものが、使用者と労働者との協定によって行われることであり、この規定の適用は労働条件対等決定の原則を否定している本法の精神と矛盾しないかということである。然しながら、第三十六条の協定は、原則的な労働条件の決定に関して行われるものではなく、使用者は、必ずしもそのような協定をしなければならないのではない、いいかえれば、この協定がなければ、労働時間なり休日なりの定めがなし得ないというわけでなく、一定の条件の下に、労働時間を延長し、又は休日労働 をさせるためにのみ、協定が必要であるのである。その限りにおいて、このような協定は、いわば補足的なものであって、労働条件対等決定の原則を否定することと全面的に両立しないものではない。又、職員が、その職員の団体を通じて、地方公共団体の当局と団体協約を締結することは認められていないとしても、第五十五条第二項の趣旨にもかんがみ、職員の団体との間に、勤務条件に関して、法の定める範囲内で一定の協定をすることまでもが、団体協約禁止の規定に触れるとは考えられない。更に、この規定は、以上のように、理論的に、公務員関係の基本と矛盾するものではないとともに、実際上においても、公務関係に必要な混乱を惹起するおそれもなく、職員の勤務条件の保護という観点からも必要である。第三十六を適用することとしたのは、この理論的及び実際的の両方の理由によるものである。
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<資料5>行政実例・時間外勤務と労働基準法第三十六条の協定
1952 年 10 月 2 日付の行政実例「兵庫県人事委員会事務局長あて公務員課長回答」の中で「地方公務
員法 58 条 2 項によって、一般職地方公務員法の時間外労働には労基法 36 条の協定は必要ないと解して
(昭二七・一〇・二 自公発第六二号 兵庫県人事委員会事務局長あて公務員課長回答「地方公務員法の解釈について」)照会
四(1)地方公務員法第二十四条第六項の規定による職員の勤務時間等に関する条例において、超過勤務及び祝日勤務について別記のとおり規定を設けた場合においても、労働基準法第三十六条による書面の協定をなさない限りにおいては、超過勤務又は祝日勤務を命ずることはできないか。
(2)或は、法第五十八条第二項によって労働基準法第二条の適用を除外せられているから、労働基準法第三十六条の書面による協定は必要ないものと解してよいか。
勤務について別記のとおり規定を設けた場合においても、労働基準法第三十六条による書面の協定をなさない限りにおいては、超過勤務又は祝日勤務を命ずることはできないか。
② 或は、法第五十八条第二項によって労働基準法第二条の適用を除外せられているから、労働基準法第三十六条の書面による協定は必要ないものと解してよいか。
(別記)
第六条 任命権者は、公務のため臨時の必要がある場合においては、正規の勤務時間をこえて又は国民の祝日に関する法律(第百七十八号)に規定する日において、職員に勤務を命ずることができる。
回答
四 労働基準法第三十三条の規定に該当する場合を除き、設問の協定を要するものと解する
よいか」という問い合わせに対して、自治省公務員課長は「労働基準法 33 条の規定に該当する場合(公務のための臨時の必要のある場合)を除き、設問の協定を要するものと解する」と回答している資料。