4.NGO 登録 5
草の根技術協力事業に係る業務ガイドライン
2021 年 8 月
独立行政法人国際協力機構国内事業部
目 次
はじめに 1
第1章 契約締結までに必要な手続き
1.採択団体向け説明会 3
2.実施計画の協議(契約交渉に向けた準備) 3
3.相手国政府等からの了承取付 4
4.NGO 登録 5
5.契約交渉 6
6.契約締結 7
第2章 安全対策
1.業務従事者等の安全対策について 9
2.安全対策にかかる経費について 10
第3章 契約の管理
1.監督職員とプロジェクトマネージャー 11
(1)監督職員
(2)プロジェクトマネージャー
(3)打合簿
2.監督職員の権限 12
(1)業務の内容に関すること
(2)契約金額の内訳に関すること
(3)業務従事者に関すること
(4)契約変更に関すること
3.契約履行過程での具体的な手続き 14
(1)契約締結時における確認事項
(2)物品・機材の調達・管理
(3)工事
(4)本邦研修受入れ
(5)不可抗力
4.業務上の提出物 17
(1)業務月報
(2)四半期業務報告書
(3)四半期支出状況報告書
(4)事業完了報告書
第4章 事業の評価
1.事業評価の実施方法 19
2.評価視点と評価項目 19
3.事業完了後のフォローアップ 21
別添:草の根技術協力事業 採択から契約締結・初回渡航までのフロー
はじめに
独立行政法人国際協力機構(以下、「JICA」という。)が実施する草の根技術協力事業は、案件の採択から業務委託契約の締結及び事業の実施の段階において、委託契約書のほか、本業務ガイドライン及び別途定める「草の根技術協力事業に係る経理ガイドライン」1(以下、「経理ガイドライン」という)に基づき実施されます。
草の根技術協力事業に係るガイドラインは、上記の2つに集約されていますので、事業計画の作成、契約交渉・締結、事業実施に当たっては、これらの2つのガイドラインの内容について、十分ご理解ください。
本業務ガイドラインは、「事業としてのマネジメント」と「業務委託契約のマネジメント」の視点からの解説となっています。その目的は、前者が「事業の成果の最大化」であるのに対し、後者は「適切な公的資金の執行」です。
「事業としてのマネジメント」については、事業計画の策定及びモニタリング・評 価の意義・目的を解説するとともに、その具体的な実施方法について示しています。一方、「業務委託契約のマネジメント」については、適切な契約管理として求めら
れる契約履行期間中の各種手続きを示しています。また、打合簿が必要となるよくある事例については「打合簿事例集」をウェブサイトにて公開しておりますので、手続き効率化の一助としてください。
今般、2020 年度に実施した経費実態調査に基づき契約金額の積算基準や精算方法を大幅に見直したこと、また、草の根技術協力事業を「消費税の不課税取引」と整理したことに伴い、本業務ガイドラインについても、手続きの簡素化・合理化を目的とした改正を行いました。主な改正内容は以下のとおりです。
⮚ 契約書附属書Ⅱ「特記仕様書」の様式を改正し、これまで別紙としていた以下の書類を廃止しました。従来PDM(プロジェクト・デザイン・マトリクス)に記載されていた事項のうち、プロジェクト目標、アウトプット、活動は、「特記仕様書」の本文に記載します。
・対象国及び地域の位置図
・事業実施スケジュール
・PDM
・業務従事者配置計画
⮚ また、契約書附属書Ⅲ「契約金額内訳書」を簡素化しました。
⮚ これら変更に伴い、「事業実施スケジュール」、「業務従事者配置計画」及び「契約金額詳細内訳書」については、契約締結後速やかに、監督職員とプロジェクトマネージャーがその内容を打合簿で確認・合意することとします。
⮚ 本邦研修受入を実施する場合、本邦研修実施業務を対象とした契約書を別途締結し、これを消費税の「課税対象取引」とします。
⮚ 打合簿を必要とする事項を大幅に削減しました。
⮚ 現地に渡航する業務従事者の海外旅行保険について、「治療・救援費用 5,000 万円以上」のプランに加入することを義務付けました。また、契約締結後の各業務従事者の初回の渡航に際して、各業務従事者の保険証書の写しの提出を求めます。
1 これまでの「草の根技術協力事業に係る経理処理ガイドライン」(2020 年 4 月)を改称しました。
⮚ 「NGO-JICA イコールパートナーシップ振り返りシート」を廃止しました。
⮚ 「終了時評価表」を廃止しました。終了時評価表に代わり、支出実績額が 5,000万円以上となる案件の事業評価報告(事業完了報告書の構成書類)を公開することとします。
⮚ DAC の評価項目の整理に伴い、「整合性」を加えた6項目で評価を行うこととし、従来採用してきた「実績とプロセス」の評価項目を廃止します。
なお、本業務ガイドラインは、原則として、2021 年度に募集を行った案件について適用しますので、それ以前に採択された案件については、従来の「草の根技術協力事業に係る業務実施ガイドライン(2020 年 4 月)」を参照してください。
第1章 契約締結までに必要な手続き
本章では、案件採択から契約交渉・契約締結までの手続きについて解説しています。手続きの流れは、別添「草の根技術協力事業 採択から契約締結・初回渡航までのフロー」を併せて参照してください。
採択案件は、原則として採択通知から1年以内に本章で定める手続きを完了し、契約を締結して事業を開始することとしています。2年以内に契約締結/事業開始に至らない場合は、採択取消しとなることがあります。
契約締結までの手続きは、JICAと採択団体が協力して実施するものですので、速やかな事業開始に向け、採択直後から当該所管のJICA国内機関と密に連絡を取り、契約締結までに必要な手続きや所要時間等を確認し、双方でスケジュールの進捗管理を行ってください。
1.採択団体向け説明会
業務委託契約の考え方や案件の開始準備、また、契約締結にかかる留意事項等につ いてご説明します。プロジェクトマネージャー及び現地調整員は必ずご参加ください。
2.実施計画の協議(契約交渉に向けた準備)
「実施計画の協議」では、事業を我が国政府開発援助(ODA)として実施するにあたり、途上国の開発への貢献及び公的資金の執行にかかる説明責任といった観点で、採択団体と JICA 国内機関との間で、事業提案書及び審査の段階で付された「実施にあたっての留意事項」を基に、事業内容(プロジェクト目標を達成するための活動・成果・投入・方法・アプローチ・スケジュール等)や、必要な経費の積算について見直します。
採択を以て、提案のあった事業内容や経費について、JICA がそのすべてを承諾し ているものではないことについて、予め理解願います。
実施計画の協議では、まずは以下の点を協議・確認します。
✓ 契約締結の希望時期
✓ 支払方法(四半期部分払/概算払/精算払)
✓ 事業総額(及びその年度別内訳)
上記を確認したうえで、JICA が採択団体に委託する「業務の内容(活動内容)」について、以下に沿って協議・確認します。
その際、審査の段階で付された「実施にあたっての留意事項」についての対応につき協議し、事業計画への反映を検討します。
(1)提案されたプロジェクトの目標(及び指標)2
(2)目標を達成するために必要なアウトプット(成果)3
2 プロジェクト目標とは、本プロジェクトが終了した時点で達成すべき目標・効果・影響と定義され、指標とは、プロジェクト目標の達成度について、数値等を用いて客観的に検証するための目印と定義されます。
3 アウトプットとは、プロジェクト目標が達成するためにプロジェクトが生み出す財・サービスと定義されます。
(3)アウトプットを構成する活動4
(4)事業実施スケジュール
(5)業務従事者配置計画
(6)経費積算
これらのうち、(1)~(3)が契約書附属書Ⅱ「特記仕様書」に反映され、(4)
~(6)は、契約締結後、契約業務の実施方法にかかる基本合意として、監督職員とプロジェクトマネージャーとの間で作成する打合簿に添付して確認します。
3.相手国政府等からの了承取付
草の根技術協力事業は、我が国 ODA の一環として実施することから、委託契約の締結に先立ち、事業実施国の了解を取り付ける必要があります。また、事業実施国によっては、当該国における「NGO 登録」を必要とする場合があります。
どの国において、どのような了承取付が必要なのか、NGO 登録が必要か否かについては、以下のウェブサイトに掲載していますので、予めご確認ください。国によっては、これら手続に相当の時間を要する場合があります。
⮚ 「相手国政府等からの了承取付・NGO 登録について」
(https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/entry.html)
了承取付方法については、予め我が国政府と相手国政府との協議によって定められており、以下の4つの方法があります。
採択団体が一部書類を作成したうえで、原則として JICA 在外事務所が主体となって手続きを行います(国によっては、採択団体にて手続きを進めていただく場合があります)。
(1)合意文書(会議議事録)の署名・交換
JICA 在外事務所と採択団体及び相手国実施機関(5 カウンターパート。以下「C/P」
とします。)(又は関係省庁、援助窓口機関など)との間で合意文書(会議議事録/ミニッツ=M/M: Minutes of Meeting)を締結する方法です。書類作成から合意文書締結に至るまでに、国によっては数ヶ月~1年を要することもあります。標準的な手続きは以下のとおりです。なお、合意文書の署名・交換を了した後に、契約交渉に入ります。
1)合意文書本文の原案(雛型は JICA ウェブサイト参照)を JICA が用意し、採択団体と協議します。合意文書に添付すべき書類(Project Outline 等)は採択団体が作成します。
2)本文と添付文書を JICA 国内機関から JICA 在外事務所へ送付します。在外事務所は必要に応じて文案を修正し、C/P(又は関係省庁、援助窓口機関など)と協議の上、署名を行います。
3)採択団体の代表者の署名も必要となる場合は、署名頂いた合意文書を本邦か
4 活動とは、アウトプットを生み出すための具体的な活動・行動と定義されます。
5 草の根技術協力事業における相手国実施機関(カウンターパート)とは、受託者とともに対象地域の受益者の生活向上に資する支援・活動を実施している、共同事業者としての役割が期待されている機関であり、主に相手国における公的な機関を想定しています。なお、カウンターパートが公的な機関ではない場合、原則として物品・機材の譲与ができないことから、「基盤整備・物品費」の計上が大きく制約されます。
ら送付します。
(2)JICA 在外事務所からの通知文書の発出
JICA 在外事務所から C/P(又は関係省庁、援助窓口機関など)に対して、事業の実施を文書により通知する方法です。国によっては、通知文書を送付した C/P等から、No Objection Letter(異議なしを表明する文書)等の取付け手続きを踏む場合もあります。(1)の合意文書(会議議事録)と比較すると迅速かつ簡単な方法です。
(3)日本国大使館からの通知文書の発出
事業実施国の日本国大使館から相手国援助窓口機関などに対して政府間の正式文書(口上書)により、案件の実施について簡潔に通報する方法です。数週間から数ヶ月程度要します。
標準的な手続きは以下のとおりです。
1)通知文書に添付すべき書類を採択団体が作成します。添付文書は国によって異なりますので、詳細は所管の国内機関からお知らせします。
2)JICA は外務省に対して通知文書の発出を依頼し、日本国大使館が先方政府へ通知文書を発出します。
3)外務省から JICA へ結果が通知され、採択団体に連絡します。
(4)国際約束の締結
国際協力機構法の規定では、草の根技術協力事業の実施について国際約束の締結は必要とされていませんが、相手国政府の制度により国際約束の締結が必要となる場合があります。その場合、日本国大使館と相手国援助窓口機関などとの間で、口上書を交換することによって国際約束を締結します。比較的時間を要する方法で、半年程度から、場合によっては2年近くを要します。
標準的な手続きは以下のとおりです。
1)口上書に添付すべき書類を採択団体が作成します。添付文書は国によって異なりますので、詳細は所管の国内機関からお知らせします。
2)JICA は外務省に対して国際約束の締結を依頼し、日本国大使館が先方政府と国際約束を締結(口上書を交換)します。
3)外務省から JICA へ結果が通知され、採択団体に連絡します。
4)更に実施機関レベル(JICA 在外事務所、採択団体及び C/P)の間で合意文書の署名・交換が必要となる場合があります。
4.NGO 登録
多くの国では、その国で外国 NGO 等が活動するにあたり、法律や政令に基づき、登録や認証を行う必要があります。この NGO 登録は国によって制度が異なりますが、主に相手国政府が外国 NGO の活動を把握すること、外国 NGO の活動と政府の活動との整合性を確保すること、外国 NGO が活動しやすい仕組みを提供すること等を目的としています。国によっては、採択団体が NGO 以外の場合であっても、何らかの手続きを求められる場合があります。
事業実施国の NGO 登録は、所管の国内機関と相談しながら、採択団体自ら行って ください。国によっては、応募に際して NGO 登録を了していることを応募要件としている場合があります。
5.契約交渉
契約交渉では、実施計画の協議を踏まえ、契約書の記載内容等について、協議・交渉を行います。具体的には、契約書が以下の構成となっているので、このうち、附属書Ⅱ「特記仕様書」と附属書Ⅲ「契約金額内訳書」を合意する作業となります。
⮚ 草の根技術協力事業 業務委託契約書
⮚ 草の根技術協力事業 業務委託契約約款(定型雛型)
⮚ 附属書Ⅰ「共通仕様書」(定型雛型)
⮚ 附属書Ⅱ「特記仕様書」
⮚ 附属書Ⅲ「契約金額内訳書」
草の根パートナー型及び地域活性型は JICA 調達・派遣業務部が、草の根協力支援型はJICA 国内機関が、契約交渉を行います。
(1)委託業務の内容
契約業務の内容を記述する「特記仕様書」においては、主に「本事業の背景」、
「本事業の概要」、「業務の内容」、及び「業務実施上の留意事項」が記述されます。このうち、「業務の内容」に記述された業務(活動)を実施・完了するこ とが、契約金額支払の根拠となりますので、一定程度具体的な記述が求められます。
事業提案書において、事業のフレームワークを「プロジェクト目標(及び指標)」、
「アウトプット」及び「活動」等の要素に区分して記載いただきましたが、「業務の内容」のイメージは、この「活動」とほぼ一致するものであると考えています。なお、業務委託契約という性格上、JICA が採択団体に委託する範囲の活動のみを切り出して記載し、採択団体が自主的に活動する部分は外してください。
(2)事業実施スケジュールと業務従事者配置計画6
上述の「業務内容」をどの様なスケジュールで実施する想定としているかを「事業実施スケジュール」として、個別業務ごと(活動要素ごと)に提示してください。また、この「事業実施スケジュール」に基づき、「業務従事者配置計画」を提示してください。
これら「事業実施スケジュール」と「業務従事者配置計画」については、業務の実施(事業の進捗)に伴い、変更が必要になると考えますが、契約締結時点で最も蓋然性の高い計画としてください。
(3)契約金額の積算
上述の「特記仕様書」と「事業実施スケジュール/業務従事者配置計画」に基づき、見積書を提示7してください。特に以下について、ご留意ください。
1)業務従事者の格付
それぞれの担当分野の業務従事者の格付(1号~4号)は、それぞれが担当す
6 この2つの文書は、契約書には添付されず、契約書締結後、監督職員とプロジェクトマネージャーの間で確認され、打合簿に記録(添付)されることとなります。
7 見積書の作成については、「草の根技術協力事業に係る経理ガイドライン(2021 年 8 月)」を併せて確認してください。契約交渉で合意された金額を最終見積書として提出いただきます。なお、契約書附属書Ⅲ「契約金額内訳書」には、費目(中項目)までの内訳のみが示されますが、契約締結後、最終見積書と同レベルの内訳を示した「契約金額詳細内訳書」を監督職員とプロジェクトマネージャーで確認し、打合簿に記録(添付)することとします。
る業務の難易度に応じて、適切に設定してください。
2)旅費
「業務従事者配置計画」の現地業務期間(予定)と平仄を合わせて、計上してください。
3)直接経費
経理ガイドラインにおいて、精算の対象となる「直接経費」として明示的に認められている直接経費のみを計上してください。明示的に認められていない経費は計上できません。
また、「業務の内容」に規定される業務を実施する上で、直接的に必要となる
「直接経費」のみを計上してください。
4)本邦研修受入に係る積算
本邦研修を実施する場合は、本邦研修実施に特化した契約書を別途締結しますので、本邦研修受入に必要な「直接経費:国内活動費」及び関連する直接人件費及び間接経費を分けて見積もってください。
6.契約締結
契約は、採択団体の代表者と JICA 契約担当役の間で締結されます。JICA 契約担当役は、草の根協力支援型は JICA 国内機関の機関長となりますが、草の根パートナー型及び地域活性型では JICA 契約担当役理事となります。
後者の場合、次章で説明する JICA の「監督職員」に授権されている以外の契約手続きを調達・派遣業務部契約第二課で行います。具体的には、主に以下の手続きが契約第二課で行われます。
✓ 契約書内容の最終確定と最終見積書の受領
✓ 契約書の締結
✓ 四半期支出状況報告書の確認
✓ 経費精算報告書の確認と支払金額の確定
✓ 請求書の受領と支払い
【草の根技術協力事業の業務委託契約の性格】
1.契約の性格
草の根技術協力事業における業務委託契約の性格は、契約約款第1条第1項に規定されているとおり、「受託者は、(中略)~に定義する業務を(中略) 履行期間内に実施及び完了することを約し、委託者は(中略)その対価を支払うもの」であり、一般的に請負契約8といわれるものです。受託者が業務を実施・完了(部分的な実施・完了を含む。)したことを確認の上、委託者である JICAはその対価である契約金額(報酬)を支払うことになります。
実施・完了すべき業務とは、附属書Ⅱ「特記仕様書」に規定されている業務内容(≒事業活動内容)となりますので、この業務内容について双方で共通の認識を確認しておくことが重要です。
2.契約金額の支払い
官庁契約における支払いは、業務の実施・完了を確認した後に一括で行われ
8 より正確には「委任契約と請負契約の混合契約であり請負性の高い契約」と位置付けています。
ることが原則ですが、草の根技術協力事業においては、受託者の資金繰りへの支援を目的として、四半期毎の部分払又は概算払の制度を用意しています。
3.監督職員とプロジェクトマネージャー
契約書は、JICA 契約担当役(委託者)と団体代表権者(受託者)との間で締結されますが、業務の実施過程においては、委託者と受託者のそれぞれから授権された監督職員(委託者側)とプロジェクトマネージャー(受託者側)との間で契約が管理されます。
授権されている権限の範囲、それに基づく具体的な契約管理方法等について、「第3章 契約の管理」に詳述していますので、受託者及び主要な業務従事者はその内容を十分理解した上で、業務に従事してください。
【履行期間を分割した契約について】
これまで、事業の実施期間が長い場合、契約履行期間を分割し、先行する契約履行期間終了後、当該契約業務の結果を踏まえ、業務内容等に必要な変更を行ったうえ、改めて継続する契約履行期間の契約書を締結するよう推奨していました。
今般、提案可能な事業期間を原則3年以下に制限しましたので、本業務ガイドラインにおいては、そのような推奨は行っていませんが、事業の実施過程で、試行的な取組み結果を踏まえて、途中で事業計画を大胆に見直す計画がある事業等については、契約履行期間を区分することを検討してください。
なおその場合、先行する契約履行期間が終わる前に、継続する契約履行期間を開始するなど、現地活動を継続して実施するための配慮も可能です。
第2章 安全対策
事業の実施に際し、受託者には契約書附属書Ⅰ「共通仕様書」第9条(安全対策)に規定されている安全対策を講じる義務があります。
1.業務従事者等の安全対策について
(1)安全対策措置
JICA は安全対策の一環として、事業を実施している国ごとに「安全対策措置
(渡航措置及び行動規範)」を定めています。草の根技術協力事業についても、これを遵守して実施して頂くこととなります。
併せて、国ごとの「安全対策マニュアル」を作成していますので、「安全対策措置」を踏まえた具体的な対策を検討する際に参考としてください。
これら、国別の「安全対策措置」及び「安全対策マニュアル」は、応募に先立って JICA ウェブサイトから入手いただいていますが、採択後及び事業実施中には、渡航の都度、受託団体にて以下の JICA のウェブサイトから最新版を確認してください(受託者の申請に基づき、ログイン ID 及びパスワードが提供されます)。
⮚ JICA 国別安全対策情報
https://www.jica.go.jp/about/safety/rule.html
(2)安全対策研修の受講
現地に渡航する業務従事者は、JICA 安全対策研修(渡航者向研修)を受講してください。ただし、提供されている研修素材の言語を理解できない者については、この限りではありません。
詳しくは以下をご参照ください。
⮚ JICA 安全対策研修・訓練
https://www.jica.go.jp/about/safety/training.html
また、プロジェクトマネージャー又は現地調整員等、現地において事業を中心的にマネジメントする方のうち少なくとも1名は、「渡航者向け研修(対面式)」に参加してください。研修参加に際し旅費が発生する場合は、契約とは別に JICA国内機関から支給します。
(3)海外旅行保険への加入
業務従事者の現地渡航に際しては、5,000 万円以上の治療・救援費用9が付保されている海外旅行保険に加入してください。加入内容については、現地業務連絡先届にて、保険加入状況(保険会社名、連絡先電話番号、保険証券番号等)を確認します。また、契約締結後の業務従事者の初回の渡航に際して、現地業務連絡先届と併せて保険証書の写しを提出してください。
なお、「JICA 国際協力共済会」が民間保険会社と締結している「団体保険契約」に草の根技術協力事業の受託者の方々も加入が可能となっていますので、参考までに、以下にウェブサイトを紹介します。
9 2021 年度以降の募集で採択された案件に対して適用しています。発生する保険料を勘案して、同じ時期に積算基準を改定し、当該保険料を加味した間接経費率を設定しています。
⮚ 海外旅行保険について
https://www.jica.go.jp/about/safety/insurance.html
(4)たびレジの登録
現地渡航に際しては、外務省が邦人向けに提供している海外旅行登録システム
「たびレジ」へ登録してください。
⮚ 外務省ウェブサイト「海外へ渡航される皆様へ(たびレジ)」
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/index.html
(5)現地連絡体制等の報告
業務対象国へ渡航する際には、委託者の監督職員に以下の書類を提出してください。監督職員から当該国の JICA 在外事務所に転送します。
1)連絡体制・緊急連絡網(対象国への業務従事者の到着後)
2)現地業務連絡先届(渡航する前月の 20 日までに提出)
また、初回渡航時には現地 JICA 在外事務所において安全管理ブリーフィングを行うことがありますので、予めご了解願います。
(6)関係者にかかる海外旅行保険
上記(3)に加え、本邦研修員や第三国で実施する研修への参加者等についても付保が義務付けられています10。事業関係者を対象国の外(本邦を含む。)に渡航させる場合は、必ず海外旅行保険を付保してください。
2.安全対策にかかる経費について
安全対策にかかる経費は、上述の海外旅行保険料を除き11、直接経費の海外活動諸費にて計上することが可能です。
上述のとおり、事業実施に際しては、随時最新の「安全対策措置」に基づいて具体的な対策を講じていただくことになりますが、「安全対策措置」に必要な対策等に追加で必要となる直接経費(例:警備員傭上に係る経費等)や危険地域からの一時退避等に必要な旅費等については、委託者・受託者間で協議し、必要に応じ契約金額の増額を含めた契約変更を検討します。
10 契約書附属書Ⅰ「共通仕様書」第 10 条(事業関係者への保険付保)で新たに規定しています。
11 ただし、第三国への事業関係者の渡航は特例扱いとなるため、海外旅行保険料の計上を可能としました。業務従事者の業務地への渡航及び本邦研修員の来日に係る保険料については、間接経費見合いとなります。
第3章 契約の管理
草の根技術協力事業の業務委託契約は、契約書附属書Ⅱ「特記仕様書」に規定される業務(活動)を受託者が実施・完了し、これを委託者が確認した上で支払いを行うという性格の契約となります。
一方で、草の根技術協力事業が対象とする業務は途上国において長期間継続的に実施されるものであり、途上国における事業環境や開発ニーズの変化に応じ、業務の内容やその方法を柔軟に変更することが求められます。また、契約の締結に当たって「特記仕様書」に受託者が実施すべき業務(活動)の内容を「業務(活動)の内容」として記載しますが、同じ理由により、これを正確かつ厳密に規定することは困難です。このため、プロジェクト目標は原則として変更することはできませんが、この「業務
(活動)の内容」については、一定程度幅を持たせた表現とし、柔軟性を確保しています。
「業務(活動)の内容」に一定の柔軟性を確保する場合、契約業務の履行過程において、委託者と受託者の間で、業務の進捗や事業環境や開発ニーズの変化に応じ逐次実施される(された)個別業務を具体的に確認(必要に応じ、変更を合意)していくことが求められます。具体的には、主に、四半期ごとに提出される四半期業務報告書に基づき、委託者・受託者で業務の履行状況をモニタリングすることになります。
この契約履行過程におけるモニタリングが「契約管理」の主たる内容であり、主に委託者と受託者から授権された監督職員とプロジェクトマネージャーが行うこととなります。
1.監督職員とプロジェクトマネージャー
草の根技術協力事業の「業務委託契約」は、委託者(JICA 契約担当役)と受託者
(受託団体の代表権者)との間の契約となりますが、具体的な契約の履行・管理は、委託者と受託者それぞれから授権された監督職員とプロジェクトマネージャーが責任を持つことになります。
(1)監督職員
監督職員の業務は、契約約款第4条第2項に規定されています。
監督職員は、原則として、JICA 国内機関の草の根技術協力事業担当課の課長が指名されます。
【契約約款第4条第2項】
(中略)監督職員は、本契約の履行及び本業務の実施に関して、次に掲げる業務を行う権限を有する。
(1)第1条第5項に定める書類の受理
(2)本契約書に基づく、受託者又は(中略)受託者のプロジェクトマネージャーとの協議
特記仕様書に規定されている業務内容の変更の承諾(ただし、契約金額又は履行期間等の変更を伴うものを除く。)
(3)附属書Ⅲ「契約金額内訳書」(以下「契約金額内訳書」という。)に示す直接経費に係る流用等の承諾契約金額内訳書に示す直接経費に係る流用等の承諾
(4)契約書等に基づく、業務工程の監理及び立会
(2)プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーの権限は、契約約款第5条第2項に規定されています。同規程に基づき、プロジェクトマネージャーは、契約変更が必要な事項を除 き、受託者を代表する権限を有するものとし、監督職員と協力して、適切に業務を実施する責任を負います。
【契約約款第5条第2項】
プロジェクトマネージャーは、本業務の実施についての総括管理をつかさどるほか、本契約に基づく受託者の行為に関し、受託者を代表する権限(ただし、契約金額の変更、作業項目の追加等本業務内容の重大な変更、履行期間の変更、損害額の決定、本契約に係る支払請求及び金銭受領の権限並びに本契約の解除に係るものを除く。)を有するものとする。
(3)打合簿
上述の監督職員とプロジェクトマネージャーの間の打合せ事項を記録として残すものが「打合簿」です。打合簿については、契約約款第4条第3項に規定され、監督職員が行った「協議」及び「承諾」の内容を書面に残すものです。
【契約約款第4条第3項】
前項の規定に基づく監督職員等の協議及び承諾は、原則としてこれを書面
(以下「打合簿」という。)に記録することとする。打合簿は、監督職員とプロジェクトマネージャーがそれぞれ一部ずつ保管するものとする。
協議や承諾は、事態が発生する前に行うこととし、打合簿の日付は、原則として、実際に協議や承諾(電話やメールのやり取り、担当者等を通じた協議や承諾を含む。)を行った日付としてください。
打合簿を必要とする具体的な事項については、本章の「3.契約履行過程での具体的な手続き」を参照のうえ、ウェブサイト掲載の「打合簿事例集」を併せてご確認ください。
2.監督職員12の権限
監督職員とプロジェクトマネージャーが共同して契約を管理していくに当たって、常に認識しておかなければならないことは、監督職員とプロジェクトマネージャーがそれぞれ委託者と受託者から授権されている権限の範囲です。この権限の範囲を超えた事項については、打合簿による対応ではなく、契約変更を行う必要があります。
下表では、監督職員に授権されている権限の範囲について、契約変更で対応すべきもの(監督職員に授権されていない事項)、打合簿で対応すべきもの(監督職員に授権されている事項)、受託者の裁量によるものに分類/整理しています。
⮚ 業務の内容: 契約書附属書Ⅱ「特記仕様書」に係ること
⮚ 契約金額内訳: 契約書附属書Ⅲ「契約金額内訳書」に係ること
⮚ 業務従事者: 業務従事者の交代等に係ること
12 プロジェクトマネージャーは、契約約款第5条第2項に基づき、監督職員より大幅な権限を授権されています(すなわち、監督職員の権限の範囲内であれば、契約約款上、プロジェクトマネージャーによる対応が可能です)ので、ここでは、監督職員の権限のみを整理しています。
監督職員の権限の範囲(概要)
業務内容 | 契約金額内訳 | 業務従事者 | |
契約変更 | ・特記仕様書記載の業務内容の軽微でない変更 | ・契約金額の変更 ・費目(大項目)注)の変更 | |
打合簿 | ・特記仕様書記載の業務内容の軽微な変更 | ・50%を超える費目(中項目)注)間の流用 | ・プロジェクトマネージャーの交代 |
受託者の裁量 | ・特記仕様書記載の業務内容を実施するために必要な方法、手段、手順の変更及び確定 | ・50%を超えない費目(中項目)注)間の流用 ・費目(小項目)注)間の流用 | ・業務従事者の交代(プロジェクトマネージャーを除く。) |
注)費目の分類については、「経理ガイドライン」を参照してください。
(1)業務の内容に関すること
契約書附属書Ⅰ「共通仕様書」及び契約書附属書Ⅱ「特記仕様書」に記載されている業務の内容に関する事項については、一般的に契約変更による対応とすべきです。ただし、草の根技術協力事業の業務委託契約においては、開発ニーズに対応した柔軟な業務内容の変更を確保するため、業務内容の軽微な変更は監督職員の権限としています。
監督職員とプロジェクトマネージャーは、常に密接な連絡を取り、業務内容の変 更を含めて、業務の進捗について情報共有に努めてください。
(2)契約金額の内訳に関すること
契約書附属書Ⅲ「契約金額内訳書」に記載されている契約金額の内訳についても、業務への支障を生じさせないため、一定の範囲内で柔軟に変更を行うことが求められます。
このため、50%を超える13費目(中項目)間の流用(費目間の流用とは、業務実施上不足している費目を余剰となっている他の費目をもって補うことをいいます。)を監督職員の権限とし、それ以下は受託者(プロジェクトマネージャー)の裁量としています。
この他、契約金額の変更を伴わない以下の変更等を監督職員の権限としています。
1)200 万円を超える物品・機材の調達、建設工事の発注、又は第三者への一部業務の再委託の調達方法の基本方針
2)損料単価・渡切旅費(日当・宿泊料等)単価の設定
(3)業務従事者に関すること
業務従事者の配置については、原則として受託者の裁量となります。
ただし、プロジェクトマネージャーの交代は、実施体制に大きな影響を与えると認められますので、やむを得ない場合を除き、基本的に認められません。交代が必要になる場合は、監督職員の承諾を要することとします。
プロジェクトマネージャー以外の業務従事者の交代や確定は、月報及び四半期
13 「50%を超える(流用)」とは、流用先の費目(中項目)に係る契約当初金額の 50%を超えて流用することと定義します。
業務報告書に記載して報告してください。
なお、業務従事者の配置等に係る以下の事項については受託者の裁量であり、打合簿は不要です。ただし、直接人件費の増額を認めるわけではありませんので、ご留意ください。
・ 業務従事者間の業務従事人月の振替え
・ 現地業務と国内業務の業務従事人月の振替え
・ 業務従事者間の現地渡航回数の振替え
・ 現地渡航回数の増減
(4)契約変更に関すること
監督職員の権限の範囲は、上記(1)~(3)の記載のとおりであり、記載の権限を越える事項は契約変更にて対応する必要があります。
契約変更に際しては、まずは、監督職員とプロジェクトマネージャーとの間で、
①契約変更の経緯と理由、②変更される業務内容等、③変更契約金額の概算、④履行期限の延長期間、及び可能であれば変更契約書に添付する「変更特記仕様書
(案)」概算について協議し、その内容を打合簿にて確認してください。
監督職員が、逐次委託者である「契約担当役」に変更内容について事前に共有しておくことにより、打合簿締結後速やかに、JICA 内の契約変更手続きを行えることとなります。
なお、契約変更を必要とする主な項目は以下のとおりと想定しています。
⮚ 「業務の内容」の軽微でない変更(業務が削減される場合を含む。)
⮚ 契約金額の変更(主に増額。費目(大項目)の変更を含む。)
⮚ 業務履行期間の変更(主に、延長。)
3.契約履行過程での具体的な手続き
(1)契約締結時における確認事項
「はじめに」において紹介したとおり、2021 年度の契約書附属書の簡素化・合理化に伴い、以下の資料については、契約締結後、監督職員とプロジェクトマネージャーの間で、打合簿にてその内容を確認することとしています。
以下の資料については、契約交渉において、委託者・受託者の双方で確認を了しているため、契約締結後速やかに打合簿を作成してください。
⮚ 事業実施スケジュール
⮚ 業務従事者配置計画
⮚ 契約金額詳細内訳書14
また、契約交渉において協議・確認された事項は、基本的に契約書に反映されるものですが、全ての確認事項を契約書に反映させることは困難であり、実務的にも適当ではありません。一方で、口頭での了解ではなく、文書に記録しておくことが望ましいと判断される確認事項については、「契約締結時における確認事項」として、打合簿に記録しておくこととしてください。
具体的には、例えば以下のような事項については、打合簿に記録してください。
⮚ 契約開始時点で必ずしも明確になっていない項目(例:評価指標、ベースラ
14 契約交渉を了した後に提出いただく「最終見積書」とほぼ同一の内容となります。
イン調査の内容等)がある場合に、それらを双方で確認・協議する時期や方法
⮚ 一定期間後に事業全体の見直しを検討することが望ましい場合に、その実施計画レビューの時期や方法
(2)物品・機材の調達・管理
草の根技術協力事業の受託者が行う物品・機材調達は、受託者の責任の下、調達先を選定し、契約・発注し、納入品を検査し、支払を行うことになりますが、その際の留意事項は以下のとおりです。なお、以下と異なる運用とする場合、打合簿を必要とすることがあります。
1)物品・機材の調達
200 万円を超える物品・機材の調達については、調達に先立って、発注方法/方針を監督職員に確認します。
承認された発注方法/方針に基づき、契約相手先を選定し、契約書の締結を終えたら、四半期業務報告書に、調達経緯報告書と契約書(写)を添付して報告してください。「調達経緯報告書」には、①見積依頼先の選定方法と、②選定結果(価格以外の要素を加味して選定した場合その理由)を記述してください。
2)輸出規制法令の順守
本邦で調達した物品・機材を外国に輸出する場合、受託者は輸出者として、輸出管理規制法令を遵守し、これら法令に基づき必要な手続きを行わなくてはなりません。具体的な手続きは、「JICA 輸出管理ガイドライン15(業務受託者向け)」を参照ください。
3)物品・機材の管理
受託者が調達した物品・機材は、事業実施期間中 JICA に所有権があり、受託者に無償で貸付けているとの位置付けですので、受託者は善良な管理者の注意をもって、使用、管理してください。
調達した物品・機材のうち、単価が5万円以上の物品・機材については「貸与物品リスト」を作成し、四半期業務報告書に添付してください。
4)「JICA マーク」の貼付
JICA の資金により調達した物品・機材には、原則として「JICA マーク」(英・仏・西・葡・アラビア語)及び「日章旗マーク」(英・仏・西・葡・アラビア語)を貼付することになっています。「JICA マーク」、「日章旗マーク」は、JICA在外事務所の担当者から受取ってください。
5)事業終了時の C/P への譲渡
調達した物品・機材は、原則として、事業終了時に C/P に譲渡する16こととなりますので、C/P に受領の意思があるのか、事前に確認してください。なお、物品・機材の譲渡は、原則として C/P が公的な機関(又は公的な性格を持つ団体)であることが前提となりますので、ご留意ください。
15 JICA 輸出管理ガイドライン https://www.jica.go.jp/announce/manual/guideline/consultant/export.html
16 事業終了時に C/P へ物品・機材を譲渡したときには、当該機関の長又はそれに準ずる者が署名した受領書を徴取し、経費精算報告書の証拠書類として添付してください。
(3)工事
業務対象国において工事を行う場合は、規模の大小にかかわらず工事安全面のリスクを伴います。安全確保の見地から、外部技術者の傭上や現地で信頼のおける専門工事業者への発注を検討してください。
工事発注に際しても、全ての手続きを受託者の責任の下で実施することになりますが、その際の留意事項は以下のとおりです。
1)工事実施の前提条件の確認
施設の建設や設備の設置に際しては、対象となる土地や施設の所有権の確保、施設建設後の譲渡先、建設許可等の前提条件が確保できているか、確認願います。契約締結に際して、特記仕様書に工事実施に係るこれら留意事項を記載することとしますが、前提条件が確認できていない場合は、契約締結後に確認を行い、工事発注前にその内容を監督職員に報告し、承諾を得て(打合簿に記録して)ください。
2)再委託の承認
工事の発注は、契約約款第3条で発注者の事前承認を要する「再委託又は下請負」に該当するため、特記仕様書又は打合簿において、再委託の承諾が必要となります。再委託の承諾に当たっては、発注方法/方針を監督職員に確認します。
承認された発注方法/方針に基づき、契約相手先を選定し、契約書の締結を終えたら、上記「物品・機材の調達」の記載と同じ方法で報告してください。
3)工事完了施設の C/P への譲渡
工事完了後は速やかに施設を C/P に譲渡(物品・機材と同様に、C/P が公的な機関であることが条件となります。)し、当該機関の長又はそれに準ずる者が署名した受領書を徴取してください。工事の完了及び引渡し(譲渡)があったときは、四半期業務報告書において報告17してください。
(4)本邦研修受入れ
草の根技術協力事業の業務の一環として、事業の関係者を日本に招聘し、事業に関係する研修・視察(本邦研修)を行うことが可能です。
本邦研修を実施する場合、研修員の来日1~2ヶ月前を目途に、本邦研修実施業務を対象とした契約書を締結します。本体契約と分離して契約書を締結する理由は、本体契約が消費税の「不課税取引」であることに対し、本邦研修実施業務に係る委託契約は、国内で役務が提供される「課税取引」に区分されるため、この区分を明確化するためのものです。
契約書には、契約約款(本邦研修実施業務)、附属書Ⅰ「日程表」、及び附属書Ⅱ「契約金額内訳書」が含まれることになります。契約締結時点では、来日研修者及び研修日程がほぼ確定していることを想定しており、このため、実際の来日研修員の人数や研修日程に大幅な変更がない限り、国際航空賃を除き、証拠書類に基づく経費の精算はほとんどなくなることを想定18しています。
本邦研修実施業務は、研修員の訪日手続き(ビザの取得等)を含めて受託者が実施することとなります。外国人の受入れ手続きや来日中の移動手段や宿泊施設
17 「受領書」は、四半期支出状況報告書に添付してください。
18 詳細は、「経理ガイドライン」を参照願います。
の確保等について、十分な知見がない場合は、国内機関に相談ください。
なお、本邦研修受入に関しては、上述のとおり、当該業務に関する委託契約書を締結しますので、特に打合簿を要する手続きは想定されません。
(5)不可抗力
業務委託契約約款第 18 条(天災その他の不可抗力の扱い)に基づき、不可抗力や天災(大規模デモ、大規模な洪水被害、地震等)が発生し、予定どおりの業務が困難となった場合は、速やかに監督職員へ第一報を連絡してください。
受託者は合理的に実行可能な限りにおいて、業務の履行を続ける努力を行う必要がありますが、契約期間に業務を完成することが出来ない場合の契約期間の延長や、不可抗力により生じた追加的な経費についての措置、業務内容の変更について監督職員と協議し、打合簿により基本的な対処方法について合意形成を行った上、必要に応じ契約変更します。
4.業務上の提出物
契約履行過程及び履行完了後に提出される報告書等は、契約管理を委託者・受託者双方で適切に行うに当たって、最も重要な資料となります。このため、契約約款及び共通仕様書において、以下の報告書の提出を規定19しています。
各報告書の様式は、JICA ウェブサイト20を参照願います。
⮚ 業務月報(共通仕様書第7条)
⮚ 四半期業務報告書(契約約款第7条第1項)
⮚ 四半期支出状況報告書(契約約款第12条の2)
⮚ 事業完了報告書(契約約款第7条第4項)
(1)業務月報
業務従事者の月毎の業務従事実績を確認するための報告書です。
業務内容の軽微な変更に係る柔軟性を確保しているため、契約金額の支払に際しては、業務従事者の従事実績を確認することとしています。業務月報は、この業務従事実績を月毎に確認することにより、実績の正確性を確保する目的を持っています。このため、業務月報には「業務従事者の従事計画・実績表」の添付を求めています。
(2)四半期業務報告書
業務月報は主に業務従事者の従事実績を確認しますが、四半期業務報告書は、
「業務の進捗状況」を確認することを目的としています。また、四半期部分払を行う場合は、この「業務の進捗状況」の確認が支払いの条件となります。
このため、四半期業務報告書の提出があったときには、当該報告書に基づき、委託者と受託者で四半期モニタリング会合を開催し21、事業計画の進捗状況や課
19 この他にも、「経費精算報告書」や「現地業務連絡先届」等の提出が規定されており、また特記仕様書において報告書の作成・提出が規定されている場合があるが、ここでは、「契約管理」に直接関係する報告書のみを解説する。
20 JICA ウェブサイト>JICA について>調達情報>調達ガイドライン、様式>草の根技術協力事業(業務委託契約):https://www.jica.go.jp/announce/manual/guideline/kusanone/index.html
21 四半期モニタリング会合は、必ずしも面談会議方式で実施する必要はなく、リモート会議等を運用します。
題等を共有することとしています。また、これに基づき、必要に応じ、監督職員とプロジェクトマネージャーの間で、次期四半期以降の業務方針の確認、業務内容の軽微な変更/直接経費に係る流用の承諾等を記録(打合簿)に残します。
四半期業務報告書には、以下の項目を記載してください。
1)当該四半期の業務進捗状況
業務区分ごとに進捗を記述してください。契約書附属書Ⅱ「特記仕様書」で区分して記載されてる業務内容ごとに記述することを想定していますが、具体的な区分は、監督職員とプロジェクトマネージャーで相談してください。
2)次期四半期の業務計画(概要)
3)事業実施上の課題
4)その他共有しておくべき情報
なお、四半期業務報告書には、「業務(活動)計画・実績表」と「貸与物品リスト」を添付してください。
(3)四半期支出状況報告書
経費の精算は、最終的に経費精算報告書に基づき確定しますが、精算の対象となるべき経費の範囲や領収書の内容などについて、委託者と受託者の間で認識が異なることを防ぐため、また、四半期の業務進捗の確認材料とするため、四半期支出状況報告書22の提出を求めています。また、四半期部分払を行う場合は、本報告書に基づき、委託者側で四半期部分払の上限額を決定します。
四半期支出状況報告書には、支出の総括表や個別費目の内訳書・支払簿、業務従事者の業務従事計画・実績表のほか、支出に係る証拠書類(領収書等)を添付してください23。
(4)事業完了報告書24
契約業務の完了時に、当該契約業務が実施・完了しているかを確認するための報告書です。契約業務が実施・完了していることを委託者が確認しなければ、契約金額の支払ができません。委託者は、業務完了の報告があった後にその完了を確認・検査しますので、本事業完了報告書は「業務完了届」に添付して提出してください。
事業完了報告書(業務完了届)の提出に先立って、委託者と受託者との間でモニタリング会合を開催し、契約業務が実施・完了しているか確認を行います。
事業完了報告書には、少なくとも以下の項目を記載してください。また、業務
(活動)の様子が分かる写真を添付してください。
1)事業実施の背景
2)事業実施の結果(業務の実施・完了状況)
3)事業の成果
4)実施に当たっての課題とその対応方法
5)事業評価報告
22 すなわち、四半期支出状況報告書に基づき、JICA は当該四半期の支出額の確認を行いますが、この
「確認額」は、あくまで、「特記仕様書に規定されている業務が実施・完了していると JICA が判断した場合」に精算の対象とできる金額という意味であり、当該「確認額」の支払が確定したということではありません。
23 四半期支出状況報告書の具体的な内容については、「経理ガイドライン」を参照してください。
24 事業全体の期間を分割し、複数の契約書を締結している場合であって、継続する契約がある場合は、
「業務完了報告書」という名称となります(契約約款第 7 条第 7 項)。
第4章 事業の評価
草の根技術協力事業は、我が国 ODA の一環として実施されるものです。このため、単に契約が適切に履行されたかという視点だけではなく、契約に基づき実施された業務が、「事業(プロジェクト)」として、効果的・効率的に実施され、事業の目標が達成されたのかという視点も重要です。
このため、草の根技術協力事業では、事業の終了に際しての事業評価として、終了時評価を実施します。
これまでの活動実績をふり返り、事業の効果・目標の達成状況を評価することで、類似プロジェクトの改善に資する教訓・提言を引き出すことができ、今後のより良い案件の形成・実施、草の根技術協力事業の制度の改善が可能となります。また、事業への評価を公開することにより、事業の透明性を確保し、日本国民(納税者)への説明責任を果たすことができます。
1.事業評価の実施方法
終了時の事業評価の結果は、以下の手順で取りまとめ、受託者が作成する「事業完了報告書」に項目を設けて記述します。
(1)JICA は事業終了に先立って、可能な限り現地調査を行い、受託者・JICA 双方で現地状況を確認する。
(2)受託者が、次の「2.評価視点と評価項目」に基づき、事業評価をドラフトし、
JICA と共有する。
(3)JICA と受託者の間で、事業評価ドラフトを協議し、内容を確認する(この際、 JICA が受託者に対し評価の内容として追加の記述を求めること、また、必要に応じ、JICA が追加記述をドラフトし、受託者に提示することがあります)。
(4)事業評価の内容を確定し、「終了時の事業評価」を含めて「事業完了報告書」を完成させる。
なお、事業総額(支出実績額)が 5,000 万円以上の事業については、事業完了報告書に含めて提出いただく「事業評価報告」を JICA ウェブサイトにて公開することとします。
2.評価視点と評価項目
草の根技術協力事業は、独立行政法人国際協力機構法(平成 14 年法律第 136 号)
第 13 条第 1 項第 4 号において、「開発途上地域の経済及び社会の開発又は復興に協力することを目的とする(国民等の協力)活動を促進し、及び助長する」ものと規定されています。
これを踏まえ、草の根技術協力事業はその事業目的を以下の2つとしており、契約書で定めたプロジェクト目標の達成状況に加え、これらの目的に則した評価を行います。
⮚ 市民の力による開発への貢献が質・量ともに拡大する。
⮚ 途上国や日本の地域の課題解決への理解・参加が促進される。
事業の評価では、プロジェクト目標の達成状況にかかる評価を DAC6項目25に加え、市民参加の視点1点を含めて評価を行います。具体的な評価項目は、以下のとおりです。
(1)妥当性
✓ 支援の実施は妥当であったか(当該国の開発計画、開発ニーズ/社会のニーズ
/対象地域の受益者層)。
✓ 「受益者」に着目し、脆弱層への配慮や公平性を踏まえて案件が形成されているか。また、事業実施期間中に状況の変化が生じた際にも、常に妥当性を確保し続けるべく適切な調整を行ったか。
✓ 評価時点で問題や課題が存在する場合には、事業計画、アプローチのロジックが適切であったか。
(2)整合性
✓ 日本政府・JICA の開発協力方針と整合しているか。
✓ JICA の他事業との具体的な相乗効果・相互連関が認められるか。
✓ 日本の他事業、他の開発協力機関等による支援と適切に相互補完・調和・協調しているか。
(3)有効性
✓ 期待された事業の効果の、目標水準の達成度(施設、機材の活用を含む。)はどうか。
✓ 直接的な結果、短期的効果の実現状況を確認できるか(インパクトでは「正負の間接的・長期的効果の実現状況」を確認する。)
(4)効率性
✓ プロジェクトの投入計画は、事業期間・事業費の計画と実績を振り返り効率的であったか。
(5)インパクト
✓ 正負の間接的・長期的効果の実現状況(環境・社会配慮を含む)はどうか。
✓ 社会システムや規範、人々の幸福、人権、ジェンダーの平等、環境への潜在的な影響はどうであったか。
(6)持続性
✓ 事業によって発現した効果の持続性はどうか。
(7)市民参加の観点での評価
✓ 日本の市民の国際理解促進の機会となる工夫・活動として、どのような取組みを行ったか。
✓ 市民に JICA 及び ODA 事業について周知する工夫・活動として、どのような取組みを行ったか。
✓ JICA の NGO 等活動支援事業の機会活用により、受託者の事業運営や組織面の強化につながった点はあるか(経理・会計業務、広報、ファンドレイジング、事業計画策定、事業評価、組織マネジメント等)。
25 JICA のプロジェクト評価では、評価における価値判断の基準として「DAC 評価基準」を採用している 。「DAC 評価基準」とは、1991 年に経済協力開発機構開発援助委員会(OECD DAC)で提唱された開発援助の評価基準であり、国際的な基準となっている。「DAC 評価基準」はもともと5項目であったが、 2019 年 12 月に新たに1項目が追加され、6項目となった。
(8)グッドプラクティス、教訓、提言等
✓ 案件実施の意義を具体的に伝えられるエピソード
✓ 他団体等に共有したいグッドプラクティス、教訓
✓ 今後に向けた提言(当該事業の今後の展開、類似プロジェクトへの反映、草の根技術協力事業の制度の改善、受託者の独自事業への反映、JICA/現地関係機関/国内関係者とのパートナーシップ改善など)
3.事業終了後のフォローアップ
(1)特定の地域や課題を対象とした調査
草の根技術協力事業の制度にかかる評価を行うことを目的として、特定地域や特定課題を対象に、第三者の視点を入れた調査を定期的に実施しています。制度の課題を抽出し、制度改善等に役立てる目的で行うものであるため、実施の際はご協力をお願いします。
(2)アンケート調査及びフォローアップ調査
終了した事業についての事後現況の把握を目的として、事業終了後3年程度が経過した時期を目途として、事業終了後の現況に係るアンケートを実施しています。
また、アンケートや受託者への聞き取り等を踏まえ、フォローアップが必要と判断された事業については、事業終了後の状況に係る調査を実施します。
これら調査を実施する際には、ご協力をお願いします。