静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱富士セラミックス(社長 清治 裕)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.3.30
㈱富士セラミックスと「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱富士セラミックス(社長 xx x)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 3 月 30 日(水)
2.融資金額 2 億円
3.資金使途 運転資金
4.㈱富士セラミックスの取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、圧電セラミックス素材を応用したセンサなどを取り扱う電気機械器具製造業者です。
経営理念「圧電セラミックス技術に特化して、世界に貢献する」のもと、圧電セラミックスの原料配合から一貫した生産システムを確立し、さまざまな分野における技術革新や環境負荷低減に寄与するモノづくりに取り組んでいます。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・無鉛圧電セラミックス製品の開発(無鉛化の潮流に対応した圧電材料の開発や製品の実用化) ・気候変動への対応(歩留まり向上や工数削減、建物照明のLED 化による電力使用量の削減を通じた CO2 排出量の抑制) |
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社会面 | ・医療・介護分野への圧電セラミックスの供給・応用(高性能な超音波プローブ用圧電セラミックスの製造、離床センサの開発) ・徹底した従業員教育(従業員の外部資格および社内認定取得に向けた勉強会や教育訓練の実施、ジェンダーレスな教育の推進、障がい者への手厚いフォ ローアップ) |
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経済面 | ・企業や研究機関との連携を通じた技術開発(大手セットメーカーや大学法人などとの共同研究による新たな焼結方法や圧電材料、センサの開発) |
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5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】㈱富士セラミックスの概要
所 在地 | xxxxxxxxx 0000-00 | 創 業 | 1975 年(昭和 50 年)4 月 |
資 本金 | 45 百万円 | 売 上高 | 4,779 百万円(2021 年 10 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:株式会社富士セラミックス
2022 年 3 月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 株式会社富士セラミックス(以下、富士セラミックス) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、富士セラミックスの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
富士セラミックスは、圧電セラミックス素材からこれを応用したセンサなどを取り扱う電気機械器具製造業者である。同社の強みは、原料配合からセンサ製造までの一貫体制と、一品物から量産品まで対応できるフレキシブルな生産体制にあり、同社の製品は、自動車・医療・精密機器など幅広い分野で使用されている。
環境面においては、無鉛圧電セラミックス製品の開発により、鉛使用量の削減に取り組んでいる。加えて、電力多消費産業を営む事業者として、歩留まり向上や工数削減、建物照明の LED 化による電力使用量の削減を通じた CO2 排出量の抑制に尽力している。
社会面においては、高性能な超音波プローブ用圧電セラミックスの製造や離床・見守りセンサの開発によって、医療・介護分野を支えている。また、多能工化を推進すべく、手厚い従業員教育に努めるとともに、従業員の安心・安全を最優先に考え、自動化設備の導入などによる労働環境の改善に取り組んでいる。
経済面においては、企業や研究機関との連携を通じた技術開発に注力しており、その成果として、特許権・実用新案権を現在 15 件保有している。
このように、富士セラミックスは、経営理念“圧電セラミックス技術に特化して、世界に貢献する”を実践しており、今後も、国内外に数社しかない圧電セラミックス専門メーカーとして、さまざまな分野における技術革新や環境負荷低減に寄与するモノづくりに努めていく。
本ファイナンスでは、以下のインパクトが特定され、それぞれに KPI が設定された。
【ポジティブ・インパクトの増大】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | 無鉛圧電セラミックス製品の開発 | 無鉛化の潮流に対応した圧電材料の開発や製品の実用化 | 有鉛圧電材から無鉛圧電材への代替を促進させる | 水 土壌 | |
社会 | 医療・介護 分野への圧電セラミックスの供給・応用 | 高性能な超音波プローブ用圧電セラミックスの製造、離床・見守りセンサの開発 | 2030 年までに、 医療・介護向けの売上高を現状の 1.4 倍以上に増加させる | 健康と衛生 | |
徹底した従業員教育 | 従業員の外部資格および社内認定取得に向けた勉強会や教育訓練の実施、ジェンダーレスな教育の推進、障害者への手厚いフォローアップ | ①2030 年までに、推奨資格取得者数を延べ 20 名以上増加させる ②2030 年までに、障害者雇用を 10 名以上に増加させる | 教育雇用 | ||
経済 | 企業や研究機関との連携を通じた 技術開発 | 大手セットメーカーや大学法人などとの共同研究による新たな焼結方法や圧電材料、センサの開発 | 2030 年までに、特許権・実用新案権を新たに 2 件以上取得する | 経済の収れん |
【ネガティブ・インパクトの低減】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | 気候変動への対応 | 歩留まり向上や工数削減、建物照明の LED 化による電力使用量の削減を通じた CO2 排出量の抑制 | 2030 年までに、売上 高 1 百万円当たりの CO2 排出量を現状の 1t-CO2 から 10%以上削減させる | 気候変動 | |
社会 | 労働環境の改善 | 法令遵守で従業員の健康保護、自動化設備の導入による重労働の低減 | 労働災害ゼロを継続させる | 雇用 |
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2022 年 3 月 30 日~2027 年 3 月 30 日 |
金額 | 200,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5 年 0 ヵ月 |
企業概要
企業名 | 株式会社富士セラミックス |
所在地 | xxxxxxxxx 0000-00 |
工場 | 本社工場(xxxxxx 0000-00)北工場 (xxxxxx 0000) xx工場(xxxxxx 000-0) 外神工場(富士宮市外神 1971-1)白糸工場(xxxxxxx 0000) 協力工場:株式会社xxセラム(xxxxxx 0000-000) |
従業員数 | 250 名(男性 180 名、女性 70 名) |
資本金 | 4,500 万円 |
業種 | 製造業(電気機械器具製造業) |
事業内容 | ①圧電セラミックスをベースとした電子セラミックス素子の製造販売 ②振動・衝撃・音響・超音波その他各種圧電センサの製造販売 ③微動変位など各種圧電アクチュエータ素子の製造販売 ➃その他、電子セラミックスの応用デバイス・機器の製造販売 |
認証登録 | ・ISO9001、ISO14001 登録範囲:圧電セラミック、圧電セラミック応用製品及び、その周辺製品の設計・開発、製造、販売 対象事業所:本社、北工場、xx工場、白糸工場、外神工場 ・IATF16949 登録範囲:圧電セラミックの設計及び製造製造事業所:白糸工場 支援事業所:本社 |
主要取引先 | テルモ株式会社(xxxxxx) xxxx株式会社(京都府京都市下京区)オリンパス株式会社(xxx新宿区) JFE スチール株式会社(xxxxxx区)株式会社日立製作所(xxxxxx区) 三菱電機株式会社(xxxxxx区) |
沿革 | 1975 年 現テルモ株式会社の圧電部門が分離独立し発足登記富士宮市xxにて操業開始 1980 年 富士宮市xxに本社工場を新築移転 1984 年 協力工場の株式会社xxセラム本社工場を移転静岡xxx管理優良事業所受賞 1989 年 海外販売業務を開始 1990 年 外神工場を新築 1992 年 xx工場を新築 1998 年 ISO9001 認証取得 2005 年 白糸工場を新築 2007 年 ISO14001 認証取得 2008 年 IATF16949 認証取得 2012 年 北工場を新築 2019 年 経済産業省 地域xx牽引企業に選定 |
(2022 年 3 月 30 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および特徴
富士セラミックスは、圧電セラミックス素材からこれを応用したセンサなどを取り扱う電気機械器具製造業者である。圧電セラミックスとは、振動や衝撃を与えると高電圧が発生し、逆に電圧をかけると伸縮する、機械エネルギーと電気エネルギーの相互変換機能をもった素材であり、その応用分野は生活機器から産業機器まで多岐にわたる。同社の強みは、原料配合からセンサ製造までの一貫生産と、一品物から量産品まで対応できるフレキシブルな生産体制にあり、同社の製品は、自動 車・医療・精密機器など幅広い分野で使用されている。
応用分野 | 用途例 |
医療 | 超音波エコーによる画像診断、輸液・透析装置のチューブ内気泡検知 |
海洋 | 魚群探知機、海面レベル計 |
半導体 | ワイヤーボンダー、シリコンウエハ加工時の純水流量をコントロールする超音波流量計 |
xx用製品 | カメラのオートフォーカス、スキャナーのxx送を検知する超音波センサ |
精密機器 | 走査型電子顕微鏡や原子xx顕微鏡 |
自動車 | ノックセンサ、バックセンサ |
産業機器 | 超音波洗浄機、パーツフィーダー、超音波溶着機、工業用インクジェットプリンター |
福祉 | 点字ディスプレイ、介護用センサ |
同社の製品は、圧電セラミックスのみで構成される「圧電素子群」、金属部品やリード線等と複合化された「応用製品群」、センサとして利用される「センサ群」の 3 つに分類できる。最終製品に近づくほど差別化が図られ多品種少量生産が進むため、他と比べて大ロットで受注することが多い圧電素子群が売上に占める割合は高い。ただし、同社では、原料仕入から、原料配合、焼成、加工と いったプロセス(10 頁参照)をすべて自社で行っているため、混合する原料や加熱温度など、さまざまな工程で微調整を行うことによって、圧電素子群から顧客ニーズに合わせた多様な製品群を実現している。
製品群 | 売上構成比 | 製造工場 |
圧電素子群 | 50% | 北工場、xx工場、白糸工場、株式会社xxセラム |
応用製品群 | 30% | 本社工場、外神工場 |
センサ群 | 20% | 本社工場 |
圧電セラミックスを取り扱う企業には上場企業も存在するが、圧電セラミックス専門メーカーは国 内外に数社しかなく、同社は、大手セットメーカーの OEM や大手メーカーがあまり参入しないニッチな市場の製品を主力として取り扱っている。同社はもともとテルモ株式会社の圧電部門から分離独立しており、設立当初より高い技術力やノウハウ、生産設備をもっていたため、そのような市場においてトップシェアを誇る製品も少なくない。たとえば、自動車のエンジンに取り付けられるノックセンサに組み込まれる部品は、年間およそ 1,300 万個を生産しており、世界でも相応のシェアをもつ。また、電子式ライター用の圧電素子を生産する国内メーカーは実質 2~3 社とみられ、競争力は極めて高 い。
また、同社の製品は国外にもユーザーが多く、売上の約 2 割が海外向けである。直近 1 年間をみても、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニア地域 20 カ国以上に販売実績があり、国内外のサプライチェーンにおいて重要な役割を果たしている。
同社は、経営理念“圧電セラミックス技術に特化して、世界に貢献する”のもと、粉体から最終製品までの一貫生産を武器に、さまざまな分野における技術革新や環境負荷低減につながるモノづくりに取り組んでいる。
圧電セラミックスの製造プロセス
同社は、環境マネジメントシステムの厳正な運用のもと、企業活動から生じる環境負荷の低減にも取り組んでいる。たとえば、鉛成分を含み特別管理産業廃棄物にもなる汚泥の排出量を削減すべく、研磨から生じるカスを減らすために設計段階から工夫を凝らしたり、不良削減のための技術会議を定期的に開いたりしている。排水には最大限の注意をしており、各工場に排水処理設備を完備、法定基準値より厳格に定めた自主基準値にて監視している。同社は、創業来環境被害を発生させたことはないが、排水処理設備故障時の緊急対応訓練も実施し、有事の際の地域への環境被害を最小限に抑える準備もしている。その他、廃プラスチックや金属くずといった産業廃棄物についても、環境方針のひとつ「生じる“廃棄物の減量化”」に則って削減活動に努めるとともに、リサイクル業者への委託を徹底。産業廃棄物管理票(マニフェスト)の確認等が形骸化しないように、総務部による組織立った対応が確立されている。
また、使用にあたって環境負荷を伴う有機溶剤の購入量も管理している。洗浄回数の削減や洗浄レス加工へのシフトを常に模索することで、IPA(イソプロピルアルコール)や炭化水素系洗浄剤といった洗浄液の使用量削減に取り組んでいる。加えて、有限資源である金や銀の購入量についても月次で管理、環境方針のひとつ「消費される“資源・エネルギーの削減”」を実践している。
2. 業界の動向
【Society 5.0 の実現に向けて拡大するセンサ市場】
2016 年、日本政府は目指していくxxの社会像として「Society 5.0」を掲げた。「Society
5.0」とは、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会のさまざまなニーズにきめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といったさまざまな違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」を意味する。つまり、サイバー空間と現実社会が高度に融合し、経済発展と社会的問題の解決を両立することを目指している。この「Society 5.0」の実現に大きな役割を担うのがセンサである。センサとは、自然現象や機械的性質・化学的性質などがもつ情報を電気信号やデータに変換して出力する装置であ り、あらゆるものがインターネットでつながる「Society 5.0」を牽引するキーデバイスとなる。
センサの市場規模をみると、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が集計した日系企業 75 社の 2020 年の世界出荷金額は 1 兆 8,791 億円、世界出荷数量は 322 億個 と、10 年前と比較して大きく伸長している。センサの活用範囲は幅広く、今後もさまざまな分野で需要の拡大が続くことが見込まれる。
資料:一般社団法人電子情報技術産業協会「JEITA センサ・グローバル状況調査・センサ世界出荷実績」
富士セラミックスの売上に占めるセンサ群は約 2 割だが、圧電素子群と応用製品群の最終用途まで追うと、センサ関連製品は約 5 割を占める。そのため、同社は「圧電セラミックス&センサ専門メーカー」として、センサの素材から最終製品まで、xx専門技術を磨いてきた。圧電セラミックス・センサに関して、現在、同社が有する特許権・実用新案権は 15 件あることからも技術力の高さがうかがえる。同社は、今後も、技術力・開発力の向上を通じて、次代を切り拓くキーデバイスとなるセンサの製造に注力していく。
以上のように、富士セラミックスの企業概要や特徴および同社が属する業界動向を総合的に勘案した上で、UNEP FI のインパクト評価ツールを用いて網羅的なインパクト分析を実施し、ポジティブ・ネガティブ両面のインパクトが発現するインパクトカテゴリーを確認した。そして、同社の活動が、環境・社会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に貢献すべきインパクトを次項のように特定した。
3. インパクトの特定および KPI の設定
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>水、土壌
<SDGs との関連性>
6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させる ことにより、水質を改善する。
9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
14.1 2025 年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
有鉛圧電材から無鉛圧電材への代替を促進させる
<インパクトの内容>
現在、圧電セラミックスの材料として一般に用いられているのが、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である。PZT は強い圧電性を示すため多くの製品に組み込まれているが、成分に鉛を含んでいることから、鉛フリーの圧電材料の開発が進められている。そもそも、鉛は人体に対する毒性が強く、土壌や河川・海洋汚染にもつながるため、各国で法規制が強化されてきた。特に、EU が 2006 年に施行した「RoHS 指令」は、電気・電子機器のリユース・リサイクルを容易にすることと、最終的に埋立てや焼却処分されるときにヒトや環境に悪影響を与えないようにすることを目的とした、電気・電子機器 における特定有害物質の使用制限であり、生産基準のひとつとして遵守している国内メーカーも多 い。ただし、圧電セラミックスにおいては、鉛を技術的に代替することが難しいことから適用除外とさ れ、無鉛化の動きは弱い。しかし、今後いっそう鉛の使用に関する規制厳格化が予想される中、大手メーカーや研究機関による無鉛圧電セラミックスの研究開発が行われている。
富士セラミックスは、環境方針のひとつに「環境に配慮した“環境対応型製品の開発“」を掲げて おり、鉛を含んだ有害物質による環境問題に対応するべく、早くから無鉛圧電セラミックスの開発に 着手している。実際、2000 年代前半には、無鉛圧電材料である BiT 系(チタン酸ビスマス)を 国内では先行して開発。PZT と同水準の圧電性をもたせることは難しいものの、高温に強いという 特長を生み出したことで、高温環境下で使用される超音波流量計や、車載用の筒内圧センサへ採用されている。2012 年には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)の「ナノテク・先端部材実用化研究開発」事業として、東芝テック株式会社(xxx品川区)などとアルカリニオブ酸系の材料による無鉛圧電アクチュエータを使用したインクジェットプリンタヘッドを開発(特開 2014-69467)。無鉛圧電セラミックスを用いて、PZT を使用したインクジェットプリンタヘッドと同等の機能性を実現した。
近年は、世界的な SDGs や脱炭素の潮流を受けて、ユーザー企業から環境負荷の低い素材開発依頼が増えており、大手セットメーカーや国内外の大学等との共同研究を通じて、無鉛圧電セラミックス製品の試作を強化。PZT は、売上高 1 億円当たりの鉛使用量がおよそ 100 ㎏あるため、無鉛圧電セラミックス製品群での代替を促進することで、インパクトレーダーの「水」や「土壌」に資するポジティブなインパクトを増大させていく。
静岡銀行は、富士セラミックスの「無鉛圧電セラミックス製品の開発」による環境への貢献度を確認するために、有鉛圧電材から無鉛圧電材への代替に関する取組みをモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>健康と衛生
<SDGs との関連性>
3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.d すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。
9.1 全ての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、医療・介護向けの売上高を現状の 1.4 倍以上に増加させる
<インパクトの内容>
富士セラミックスは、大手医療機器メーカーのテルモ株式会社から圧電部門が分離独立してお り、設立当初より医療機器用の圧電セラミックスに強みをもつ。ユーザー業種別売上構成比をみると
(8頁参照)、医療向けは20%(売上高約10億円)と、自動車向けに次ぐ割合を占めている。主な用途としては、超音波エコーによる画像診断、輸液・透析装置のチューブ内気泡検知などで、超音波プローブ(超音波の発信・受信源)に圧電セラミックスが使用されている。高齢化社会の進行に伴い、医療検査の高度化が要求される中、圧電セラミックスは超音波診断の要として需要が 拡大するとともに高性能化が求められている。
超音波プローブ用圧電セラミックスは、中国の新興メーカー等でも生産が可能となっているが、同社の製品はその性能の高さから複数の大手医療機器メーカーから採用され、医療分野を支えている。具体的には、圧電セラミック素子の薄板化と、圧電セラミック素子が均一で小さな粒径および少ないポア(セラミックスの空孔)の微細構造を有することにより、観察可能部位の増加と高解像度化を実現。xx培ってきた専門的な技術力・ノウハウに加え、最新の機械設備を導入して、超音波プローブ市場を支えている。
2012年には、医療機器製造・販売の株式会社メディカルプロジェクト(静岡市葵区)および静岡県工業技術研究所と「離床・見守りセンサ」を開発し、介護分野にも進出している。自動車盗難を防ぐ空圧センサの技術を応用したセンサをマットレスの下に組み込むことで、空気の動きでベッド上の要介護者の動きを検知、呼吸や脈拍の変化まで捉えることができる。従来は、要介護者が転落や徘徊のためベッドを離れたことを検知する離床センサが一般的であったため、全国の医療機関や介護施設で導入が進んでいる。
空圧センサの技術を応用した離床・見守りセンサ
このように、同社は、圧電セラミックスの供給・応用を通じて、医療・介護分野への貢献が認められる。同社は「技術で社会に貢献する」という社是のもと、目覚ましい進歩を遂げる医療・介護分野への対応を強化していく方針であり、今後も高度な圧電セラミックス技術・センサ技術によって、インパクトレーダーの「健康と衛生」に関するポジティブなインパクトを増大させていくことが期待される。
なお、途上国への作業着のリユースとポリオワクチンの寄付を目的に「古着deワクチン」活動に参加したり、コロナ禍において地元の医療機関に対して寄付を行ったりするなど、生産活動以外の側面からも医療従事者支援への取組みがみられる。
静岡銀行は、富士セラミックスの「医療・介護分野への圧電セラミックスの供給・応用」による社会への貢献度を定量的に確認するために、医療・介護向けの売上高をモニタリングしていく方針であ る。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>教育、雇用
<SDGs との関連性>
4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
<KPI(指標と目標)>
①2030 年までに、推奨資格取得者数を延べ 20 名以上増加させる
②2030 年までに、障害者雇用を 10 名以上に増加させる
<インパクトの内容>
富士セラミックスは、創業来培ってきた技術ノウハウの継承・発展のために全従業員の教育を徹 底している。まず、圧電セラミックス素材から応用品であるセンサまでを一貫製造するため、19 の外部資格の取得を推奨している。外部資格の取得にあたっては、受験料や交通費など全面的な経済的援助をしているほか、先輩社員による勉強会などを実施。有資格者の増加に向けて、会社を挙 げて取り組んでおり、現在、推奨資格取得者は延べ 240 名に上っている。次に、作業工程別に社内独自の資格認定を設けて、教育訓練を実施している。根幹となる訓練計画の下、50 を超える 社内認定を設け、個別に指導書を作成。各部門長が従業員別の技能習得状況に応じた育成計画を作成、集合教育として座学や実技研修を行っている。社内認定は、従業員ごとに作業従事期間や実技試験で責任者が認定しており、力量管理も徹底している。
その他、コンサルタントによる社内講習会を定例化しており、外部の目を入れることで、多様な観点から従業員教育が促進されるようにしている。同社には、女性技術者も多数在籍しており、ジェンダーレスな雇用・教育の推進をトップダウンで示達しているほか、障害者に対しても手厚いフォローアップを実施。全従業員が各々の役割を果たすことができるよう、人材育成に努めている。
こうした取組みにより、社外資格・社内認定ともに、有資格者数は逓増しており、今後は一段と多能工化を図ることで、品質向上および業務平準化を推進していく。また、充実した教育体制により働きがいを醸成、従業員の定着を図ることも目標として掲げており、ダイバーシティの観点からも現在 5 名の障害者雇用などを拡大させていく方針。このように、同社は、インパクトレーダーの「教育」や「雇用」に関するポジティブなインパクトを増大させている。
静岡銀行は、富士セラミックスの「徹底した技能教育」による社会への貢献度を定量的に確認するために推奨資格取得者数および雇用障害者数をモニタリングしていく方針である。
公的資格一覧表
社内認定一覧表
社内01 | 計測機器の校正業務 重さ | 社内32 | 圧電セラミック外観選別検査業務(xx) |
社内02 | 計測機器の校正業務 長さ | 社内33 | 圧電セラミック外観選別検査業務(白糸) |
社内03 | 計測機器の校正業務 電気特性 | 社内34 | PS部黒化処理業務 |
社内04 | 計測機器の校正業務 粘度計 | 社内35 | ダイシング加工作業者認定(xx) |
社内05 | 計測機器の校正業務 プッシュプルゲージ | 社内36 | レーザー溶接業務 |
社内06 | 計測機器の校正業務 油分濃度計 | 社内37 | 資材受入検査業務 |
社内07 | 内部品質監査業務 | 社内38 | 検査業務 |
社内08 | 圧電セラミック検査業務(xx) | 社内39 | 銀ロウ付け業務 |
社内09 | 圧電セラミック検査業務(白糸) | 社内40 | 部品磨き作業 |
社内10 | 資材受入検査業務(xx) | 社内41 | 素子組立業務 |
社内11 | 資材受入検査業務(白糸) | 社内42 | 接着作業 |
社内12 | 特殊工程業務(xx) | 社内43 | 受入検査工程 |
社内13 | 重要工程業務 仮焼成工程業務(xx) | 社内44 | 接着工程 |
社内14 | 重要工程業務 仮焼成工程業務(白糸) | 社内45 | 切断加工工程 |
社内15 | 重要工程業務 成型工程業務(xx) | 社内46 | 出荷検査工程 |
社内16 | 重要工程業務 成型工程業務(白糸) | 社内47 | 成型工程作業者認定 |
社内17 | 重要工程業務 本焼成工程業務(xx) | 社内48 | 単独炉作業者認定 |
社内18 | 重要工程業務 本焼成工程業務(白糸) | 社内49 | トンネル炉作業者認定 |
社内19 | 重要工程業務 銀装工程作業(xx) | 社内50 | 酸素焼成炉作業者認定 |
社内20 | 重要工程業務 銀装工程作業(白糸) | 社内51 | 平面研磨作業者認定 |
社内21 | TS設計業務者 | 社内52 | ダイシング加工作業者認定 |
社内22 | 設計業務資格者 | 社内53 | C面加工作業者認定 |
社内23 | ハンダ付作業者 | 社内54 | 端面銀装作業者認定 |
社内24 | 計測機器の校正業務 段差 | 社内55 | 平面銀装作業者認定 |
社内25 | 熱量管理作業者 | 社内56 | 金スパッタ作業者認定 |
社内26 | 計測機器の校正業務 温度計 | 社内57 | 工程検査業務(外観検査) |
社内27 | 検査業務(PS) | 社内58 | 資材受入作業者認定 |
社内28 | 資材受入検査業務(PS) | 社内59 | 押出成型作業者認定業務 |
社内29 | 計測機器の校正業務 d33メータ | 社内60 | 技術部検査業務 |
社内30 | 外観検査業務(PS) | 社内61 | 内部環境監査業務 |
社内31 | 計測機器の校正業務 pH計 | 社内62 | 排水処理業務 |
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>経済
<インパクトレーダーとの関連性>経済の収れん
<SDGs との関連性>
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
9.5 2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、特許権・実用新案権を新たに 2 件以上取得する
<インパクトの内容>
富士セラミックスは、世界に数社しかない圧電セラミックス専門メーカーとして、同業他社やセットメーカー、国立大学法人など、国内外の企業や研究機関と共同研究を行っている。テルモ株式会社の圧電部門に由来する専門的な設備と技術ノウハウは、大手企業や公的機関の研究者から評価され、今までに多数の民間企業、研究機関、個人事業主と連携。その成果として、現在、15 件の特許権・実用新案権を保有している。
同社の研究開発は、基本的に開発部が中心となる。開発部は、部長 1 名と従業員 7 名で構成されており、各従業員が異なるテーマをもって独自研究に努めるとともに、共同開発案件に対してxxとなって取り組んでいる。加えて、圧電素子群を管轄する生産本部、応用製品群を管轄するアセンブリ部、センサ群を管轄するセンサ部、各々にある技術部門が、製造管理だけでなく技術改良にも取り組んでいるほか、営業本部による改善提案などにより、多面的な研究開発活動が行われている。また、開発部部長は、xxxx(後述)のもとで博士号を取得しており、確実にコア技術を継承、大学教員や他社圧電部門との繋がりも強い。そうした技術ノウハウ等を脈々と伝承できるよう、開発部に所属する従業員への教育・啓発を強化している。
他社や研究機関との連携による具体的な成果としては、2000 年に、当時同社技術開発顧問であったxxxxが所長を務める東北大学流体科学研究所と、圧電セラミックスの新しい焼結方法「ハイブリッド焼結」を開発。従前の電気炉による焼結プロセスをマイクロ波焼結炉とホットプレスの組み合わせで代替する画期的な手法を用いて、製造した圧電アクチュエータの電圧定数(一定の
電圧に対する伸縮度合い)を従来比 1.5 倍に向上させることに成功した。これにより、材料自体が環境や条件の変化に応じて、適切かつ自律的に振動や形状を制御する「知的材料」への応用研究が進められた。
その他、2012 年には、大手セットメーカーなどと共同で無鉛圧電アクチュエータを使用したインクジェットプリンタヘッドを開発(13 頁参照)したり、地元企業などと共同で離床・見守りセンサ(15頁参照)を開発したりするなど、連携先のニーズに合わせたさまざまな技術開発を実現してきた。また、毎年、「顧客満足度アンケート」調査を実施しており、顧客ニーズを一覧表で管理。コストダウンや短納期化といった要求に対しても、営業部門と生産部門が綿密なコミュニケーションをとり、顧客満足度向上に真摯に取り組んでいる。
このように、同社はパートナーシップを通じた技術開発に注力。さまざまな分野における技術能力の向上に貢献しており、こうした取組みは、インパクトレーダーの「包摂的で健全な経済」や「経済の収れん」に資するポジティブなインパクトである。なお、同社の製品がさまざまな分野の研究開発に役立っているという側面もある。主力製品のひとつである加速度センサは、各種プラントの異常振動監視や設備診断だけでなく、ダムや橋梁などの大型構造物の耐震性研究、鉄道や自動車、航空機など車両の乗り心地試験、道路交通における振動公害の調査などにも採用されており、国内外の調査研究活動を支えている。
静岡銀行は、富士セラミックスの「企業や研究機関との連携を通じた技術開発」による経済への貢献度を定量的に確認するために特許権・実用新案権の取得件数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>気候変動
<SDGs との関連性>
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、売上高 1 百万円当たりの CO2 排出量を現状の 1t-CO2 から 10%以上削減させる
<インパクトの内容>
富士セラミックスは、2050 年カーボンニュートラルに向けて、企業活動から生じる CO2(二酸化炭素)排出量の削減に取り組んでいる。圧電セラミックスは電気炉を使用して生成する。粉体生産量 1kg あたりの炉電力使用量は約 32kWh であり、全体で年間 1,000 万kWh 以上の電力を使用している。同社は、電力多消費産業を営む事業者として、電気炉だけでなく、他の事業活動 で使用する電力も合わせた総電力使用量を月次で管理し、CO2 排出量を算出。直近 5 年間の平均を目標値として、会社を挙げて CO2 排出量削減に取り組んでいる。具体的には、従業員による改善提案活動を強化したり、技能教育を充実させたりすることで、歩留まり率の向上や工数削減に努めているほか、従業員に対しては、毎年、環境方針の自覚教育を実施。自身が従事する業務に関係する環境への影響について理解を深めることで、日ごろの節電等も含めた行動変容を促している。加えて、社内照明の LED 化を進めており、すでに本社工場・外神工場・xx工場は全面設置済み。数年以内に、残りの白糸工場・北工場・本社南館にも導入する方針である。
その他、ガソリン、軽油、ガスの使用量についても管理を徹底。環境負荷の低減に努めるべく、エコカーの導入が進んでいない社用車について、ハイブリッド車や電気自動車へ切り替えることなどを計画している。
このように、同社では、会社を挙げた気候変動への対応が認められ、インパクトレーダーの「気候変動」に関するネガティブなインパクトを低減している。
静岡銀行は、富士セラミックスの「気候変動への対応」による環境への貢献度を定量的に確認するために、CO2 排出量をモニタリングしていく方針である。
注)2020 年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で生産活動が縮小したため、CO2 排出量も例年より少ない。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>雇用
<SDGs との関連性>
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)> 労働災害ゼロを継続させる
<インパクトの内容>
富士セラミックスは、従業員が安心・安全に働くことができる職場づくりに注力している。大気汚染防止法を遵守し、工場内において年 2 回、電気炉等の使用に伴い発生する煤塵や VOC(揮発性有機化合物)などを測定。振動規制法や騒音規制法、悪臭防止法などを基準に、工場ごとの用途地域の区分に従い昼間における騒音測定を行ったり、製造現場の官能試験を実施したりすることで、従業員および地域の健康保護に努めている。特に危険を伴う鉛作業従事者に対する定期健康診断も徹底。常駐する保健師や提携する医師の指導のもと、血液検査などを実施している。また、重労働を伴う業務に関しては、自動化を進めている。たとえば、BLT(ランジュバン型振動
子)の締付作業は、従来、手動にて製品を固定しながら大きなレンチを使用して締め付ける必要があっため、男性従業員限定の作業としていた。それでも、微調整に対する労力が大きかったことから、自動化設備を導入。現在は女性従業員も負担なく作業に取り組むことができている。BLT 締付機の導入により、年間の作業時間をおよそ 170 時間削減、品質向上にもつながっている。同社では、一部製造装置の製作を内製化しており、こうした作業者に対する負荷の大きい業務に関して自動化を図ることで、労働環境の改善に努めている。
その他、社内環境について、担当者が定期的な巡回を実施して5S 活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を徹底。半日休暇を導入したほか、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種や副反 応、濃厚接触者は特別休暇の対象としたり、各工場における完全分煙を実施したりすることで、全従業員が働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる。
このように、同社は、労働環境の改善に尽力することで、労働災害については 10 年以上連続で発生させておらず、インパクトレーダーの「雇用」に関するネガティブなインパクトを低減している。
静岡銀行は、富士セラミックスの「労働環境の改善」による社会への貢献度を定量的に確認するために、労働災害の発生件数をモニタリングしていく方針である。
4. 地域課題との関連性
富士セラミックスは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 70 億円に、従業員数を 300 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この目標を達成することによって、富士セラミックスは、静岡県経済全体に年間 107 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
【健康長寿への貢献】
静岡県は、2001 年に、富士山麓に広がる静岡県東部地域に医療健康産業クラスターを形成することを目的に、ファルマバレー(富士山麓先端健康産業集積)構想を策定。以来、「世界一の健康長寿県の形成」を目指し、地域の民産学官が協働して「ファルマバレープロジェクト」を推進している。実際、厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」によると、2020 年の静岡県の医療機器生産額は 3,654 億円と、12 年連続で全国 1 位であり、医療機器生産工場や研究拠点の集積が進んでいる。
富士セラミックスは、現テルモ株式会社の圧電部門が分離独立したことで発足しており、現在も医療機器向けに力を入れている。大手企業や研究機関との連携を通じて、先端医療分野を支えるとともに、業績および雇用拡大を図っており、そうした取組みは、地元企業の高い技術力を活用しながら“健康増進・疾病克服”と“県民の経済基盤の確立”を図るファルマバレープロジェクトの理念と合 致している。
また、同社は、ファルマバレープロジェクトの発展を目的とした「富士山麓医用機器開発エンジニア養成プログラム」へ従業員を参加させている。同プログラムは、文部科学大臣認定の職業実践力育成プログラムであり、国立高等専門学校機構 沼津工業高等専門学校における講義に加えて、国立病院機構 静岡医療センターや地元の特別養護老人ホームなどの医療・介護現場での研修も 実施される。同プログラムを受講した従業員が、専門的な知識を身に付けるだけでなく、地元の現 場ニーズを汲み取ってくることで、同社は、現代社会や地域社会に貢献する製品開発に注力している。
5. マネジメント体制
富士セラミックスでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、組織横断的なプロジェクトチームを結成。xxx社長が陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xxx社長を最高責任者、xxxxxxを実行責任者として立ち上げた SDGs 推進プロジェクトチームを中心に、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。なお、現在、SDGs 推進プロジェクトチームは、管理部を主体に、各部門よりメンバーを選出しており、今後は、全社的に推進できる体制を早期に整えていく。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxx |
xx責任者 | 管理部 経理課 xx xxxx |
担当部署 | SDGs 推進プロジェクトチーム |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と富士セラミックスの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行と富士セラミックスが協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する富士セラミックスから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
研究部 研究員 xx xx
〒400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x XXX:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 3 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社富士セラミックスに対する ポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトフ
ァイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が株式会社富士セラミックス(「富士セラミックス」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、富士セラミックスの持ちうるインパクトを、UEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、富士セラミックスがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である富士セラミックスから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能
な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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