Contract
一般定期借地権設定契約書 逐条解説
賃貸人○○○○(以下「甲」という)と賃借人○○○○(以下「乙」という)は、後記物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)につき、次のとおり一般定期借地権設定契約を締結する。
(賃借権による定期借地権)第1条
(1)甲と乙は、本件土地について、借地借家法(以下「法」という)第 22 条に定める一般定期借地権(以下「本件借地権」という)を設定する。
(2)本件借地権は、契約の更新(更新の請求および土地の使用の継続によるものを含む)および建物の築造による存続期間の延長がなく、ならびに法 13 条の規定による建物の買取りを請求することができないものとする。
(3)本件借地権については、法第4条ないし第8条、第 13 条および第 18 条なら
びに民法第 619 条の適用はないものとする。
(4)本件借地権は、法第2条1項の建物所有を目的とする土地の賃借権とする。
xx先生:第1条(解説)
(1),(2)法 22 条の一般定期借地権の特約を定めたものである。
(3)法4条(借地権の更新後の期間),法8条(借地契約の更新後の建 物の滅失による解約等),法 13 条(建物買取請求権),法 18 条(借地契約の更新後の建物
の再築の許可),民法 619 条(黙示の更新)の適用除外規定は、定期借地権契約において不可欠である。
(4)借地権には、建物所有を目的とする地上権と土地の賃借権の2種類があるので、そのいずれかを明記することが望ましい。
(期 間)
第2条本件借地権の存続期間は、西暦○○年○○月○○日から西暦○○年○
○月○○日までの○○年間とする。
xx先生:第2条(解説)
(1)存続期間は、50 年以上の確定的な期間として明確に規定する必要がある。 (借地借家法第 22 条)
(2)存続期間の開始日、終了日は、ともに年月日で明確に定めるのが望ましい。契約開始日が存続期間の記載欄に明確でない場合、年月を経た後、契約期間開始の時期が不明確になるおそれがある。
(使用目的)
特約
第3条 乙は、本件土地を居住用xxx建物所有以外の目的に使用してはならない。なお、使用目的の詳細は下記特約のとおりとする。
xx先生: 第3条(解説)
使用目的を居住用xxx建物の所有に限定しつつ、詳細については特約をもって定めることとしたのは、たとえば居住用xxx建物の1階に小さなレストラン、喫茶、アトリエ、ギャラリーなどを併設するなど、居住を主としつつも、建物の一部を他の用途にも使用することが考えられるからである。 これらについては、周囲の住環境と調和する限り排除する必要がなく、特約によってその許容範囲を明確に規定し、無用なトラブルを防止しようとする趣旨である。
(地代)第4条
(1) 本件土地の地代は次に定める前払地代と継続地代を合計した金額とする。
(2) [前払地代]本契約成立時に乙は甲に対し、西暦○○年○○月から西暦○○年
○○月までの○○年間の前払地代として○○○○円を一括して支払うものとする。
この前払地代は、○○年間にわたる契約全期間の地代の一部に均等に充てるものとし、その毎年の充当額(以下「年額換算額」という)は○○○○円、毎月の充当額(以下「月額換算額」という)は○○○○円とする。
(3) 甲乙双方は、契約期間満了時において、前払地代として一時金の支払いが
あったことを根拠とする借地権の消滅の対価に相当する金銭の授受は行わない。
(4) 本件借地権の存続期間の満了前に本契約を解除、解約する場合においては、前項の前払地代のうち、契約期間の残余の期間に充当されるべき前払地代の月額換算額の合計額を甲は無利息にて乙に返還しなければならない。この場合において返還すべき金員は日割計算とし利息を附さない。
(5)甲乙双方は、相手方に対し、前払い地代についての増減請求をすることが出来ない事を特約する。
(6) 乙は甲に対し、継続地代として月額○○○○円を毎月末日に翌月分を支払うものとする。
(7) 前項の地代の発生日は、西暦○○年○○月○○日とし、1か月に満たない場合は日割計算により算出するものとする。 (8)甲は、未経過分前払地代をいつでも乙に無利息で返還する事ができる。なお、その場合、本条第(6)項の継続地代は、同行の月額に月額換算額を加算した額とする。
xx先生:第4条(解説) ※前払地代固有条項
この契約方式は、契約の当初に契約全期間の地代総額を算出し、その一部(例えば 50%)を一括前払地代とし、残余(例えば 50%)を継続払いの地代とする方式である。
前払地代については、税務取扱い上、その全額ではなく、その当年(度)分を貸主は所得、借主は経費として処理されることになり、中途解約のときには、未経過分に相当する金額は貸主から借主に返還されることとなるので、その年額・月額を表示する必要がある。
また、第2条の借地権の存続期間(全期間=例えば 50 年間)と重複して、本条にも前払地代の対象期間を○年○月から○年○月までの○年間と明記しているのは、前払地代の対象期間が、契約の全期間(例えば 50 年全期間)、ある
いは後半の 25 年間というような事例もあり得ようから、前払地代の性質(経過分、未経過分の把握の必要性)上、その対象期間を特定しておくことが重要となるからである。
本条(5)項に「前払賃料についての増減請求権を排除した特約」を明記しているが、本書9ページの「前払賃料と将来における賃料増減請求権に関する法律解釈」に記述したとおり、現行法ではこの特約をもってしても借主の減額請求権を排除することができないけれども、本書の主題の1つである「借地借家法第 22 条の一部改正」要望の実現を見越して明記したものである。
(8)項は、未経過分地代について、いつでも返還できる旨を定めるとともに、その場合に変更される継続地代の計算方法を明示したものである。
(地代の改定)第5条
(1)前条6項の継続地代は、3年ごとに次の方式により改定するものとする。
改定地代=(従前の支払地代-従前地代決定時の公租公課)×変動率+地代改定時の公租公課
公租公課:改定年度における本件土地に係る固定資産税、都市計画税その他公租公課
変 動 率:総務省統計局の都道府県庁所在都市別の○○の○○指数にしたがい決定する。
(2)第1回の地代改定に限り、前項の「従前地代決定時の公租公課」は、
「課税上、本件土地が乙の建物の用途に供されたことが認定された年の翌年の公租公課」と読み替えるものとする。
(3)甲が乙に対し、地代の改定を申し入れる時は、甲は、次の資料を乙に提供することとする。
①従前地代決定時および地代改定時の公租公課の額を示す資料
②従前地代決定時および地代改定時の本条第(1)項の○○指数を示す資料 (4)経済社会情勢に大幅な変動があった場合、および近隣地代と比較して著しく不相当となった時は、前項の定めにかかわらず、地代を改定することができる。
xx先生:第5条(解説)
(1)地代の改定をめぐって将来紛争が生じることが十分予想されるので、地代の改定方式をあらかじめ定めた。
ところで変動率について、単に消費者物価指数によるとしただけでは消費者物価指数のうちどの指数によるのか、たとえば総合指数なのか、特定の費目によるのか、全国平均なのか、地域別なのかという疑問が生じるので、特定しておくことが必要である。
左記の記載例:都道府県庁所在地別のさいたま市の総合指数に従い決定する。現在、統計局の消費者物価指数には「地代指数」の登載がないが、これがあれ ば最も望ましいものとなろう。
(2)当初の契約締結時点では、対象となる土地は、農地・山林・雑種地などの課税を受けていることが多く、その税額をもって「従前地代決定時の公租公課」とすると異常値が出るので、借地人の建物が完成し、区市町村の資産税課が、その翌年の1月1日時点で建物敷地として課税し、4・5月に通知される税額を採用することが第1回の地代改定の際には必要となる。
(3)xxが地代の改定を申し入れる時は、①②の資料をユーザーに提供しなければならないこととした。これにより、地代改定の申し入れを受けたユーザーは、本条第(1)項の計算式によって自分で地代の計算することができ、xxの申し入れが契約どおりのものであることを確認できる。なお、①の資料とは固定資産土地課税台帳の写しなどを指す。また、②の資料は政府刊行物を取り扱っている書店などで購入するか、総務省統計局のホームページから入手することができる。
(譲渡・転貸)第6条
(1)乙は、甲の書面による承諾なく、本件借地権を譲渡しまたは本件土地を転貸してはならない。
(2)乙が本件借地権を第三者に譲渡しようとする時は(譲渡を受ける第三者を、以下「新賃借人」と言う)、新賃借人についての次の書類を添付して、甲に対
し、書面により譲渡の承諾を求めなければならない。(乙のこの申し入れは、次の①から④の書類をすべて添付しなければ効力を生じない)。
①借地申込書
②住民票(世帯全員)
③身分証明書(区・市町村発行のもの)
④印鑑登録証明書
(3)甲は、乙の前項の申し入れがあった時は、次の各場合を除いて、本件借地権の譲渡を承諾しなければならない。
①新賃借人が暴力団またはこれに類する団体の構成員、準構成員である場合
②新賃借人が破産者、禁治産者、準禁治産者である場合
③新賃借人の地代などの支払能力に不安がある場合
④新賃借人が近隣に迷惑を及ぼす恐れがある場合
⑤乙が第 11 条の保証金返還請求権とともに、本件借地権を譲渡するのでない場合(本件借地権は保証金返還請求権とともにするのでなければ、譲渡することはできない)
⑥その他、本件借地権の譲渡により、甲が不利益を受けることが明らかな場合
(4)甲は、本件借地権の譲渡を承諾しない時は、本条第(2)項の書面が甲に到達した日から 30 日以内に、乙に対し書面をもって、承諾を拒絶する旨の通知を発信しなければならない(30 日以内に通知が発信されればよく、30 日以内に乙に到達することを要しない)。この通知には、承諾を拒絶する理由を記載することとする。
(5)甲が、前項の期間内に、前項の通知を発信しない時は、甲は本件借地権の譲渡を承諾したものとみなす。
(6)甲が本件借地権の譲渡を承諾した場合または承諾したものとみなされた 場合は、乙は甲に対し、承諾の時点での6ヵ月分の地代相当額を承諾料として交付しなければならず、甲は承諾料の交付を受けるのと引換えに、承諾の書面
を乙に交付することとする。
(7)本条第(2)項から第(6)項までの規定は、本件土地の転貸については適用がなく、転貸の場合は、本条第(1)項のみによるものとする。
xx先生:第6条(解説)
(1)借地権を自由に譲渡、転貸されたのでは、どのような人間が借地人になるか分からないので、原則として譲渡、転貸にはxxの承諾を要することとした。 (2)しかし、定期借地権付き住宅を購入する者にとって、将来、転勤、家族構成の変化などの事情が生じた場合、住宅を売却できるかどうかは重大な関心事である。定期借地権という制度が広く普及していくためには、中古の定期借地権付き住宅を簡単に売り買いできるような環境の整備が必要である。
そこで、借地権の譲渡にはxxの承諾を要するとしつつも、xxが承諾を与える条件、手続および承諾料の額を契約上明らかにし、定期借地権付き住宅の売却が容易に行えるよう配慮した。
本項では、ユーザーが借地権譲渡の承諾を求めるには、xxに対し新賃借人についての①から④の書類を交付しなければならないものとした。これらの書類により、xxは新賃借人の家族構成、新賃借人が破産者などの欠格事由に該当しないことおよび新賃借人とされるものが本人に間違いないことなどを確 認することができる。
(3)xxは第(2)項の①から④の書類その他の事情から、借地権の譲渡を承 諾しても自己に不利益がないかどうかを判断する。そして本項の①から⑥に該当する事由がある場合を除いて、借地権の譲渡を承諾しなければならない。
本項のような規定を設けることによって、xxもユーザーも、本項①から⑥の事由がない限り、借地権の譲渡を拒否できないということを自覚し、本条第
(6)項で承諾料の金額が具体的に決められたことと相まって、当事者間の話し合いにより、借地権の譲渡がスムーズに行われることを期待できる。
なお、本項⑤で、保証金とともに借地権を譲渡するのでなければ承諾を拒否できるとい定めたのは、借地権者と保証金返還請求権者が異なったのでは、xxは借地権者の契約不履行から生じた損害と保証金とを相殺することができ なくなるからである。
(4)30 日というのは調査期間である。このように具体的に期間を定めることによって、xxがいつまでも回答を引き延ばすという事態を回避することができる。
30 日の期間の起算日を、譲渡の承諾を求める書面がxxに到達した時としたのは、xxが外国旅行などで長期間不在の場合を考えてのことである。また、 30 日以内に承諾を拒絶する通知が発信されればよいというのは、ユーザーにこ
の通知が到達しないうちに 30 日が経過してしまうのを防ぐ趣旨である。
(5)xxが承諾を拒絶する通知を発しない場合、承諾したことになるのか、拒絶したことになるのか不明では困るので、このような条項を設けた。
(6)承諾料は地代の6ヵ月分とし、低額かつ具体的な金額にした。これは、定期借地権というのは 50 年の期間が満了すれば必ず終了するもので、使用の継続や建物の再築による期間の延長がないから、xxは従来の借地権の場合と比べ借地人の個性にこだわる必要性が少ないからである。また、承諾料は具体的に定めておくことが、紛争防止に役立つと考えた。
(7)本条第(2)項から第(6)項の規定は、定期借地権付き住宅の流通性を高めるために設けたものである。したがって、借地権の譲渡についてのみ適用があればよく、法律関係を複雑にする転貸については、本条第(1)項の原則によればよいと考えた。
(図面・書面の相互交付)第7条
(1)甲は乙に対し、本契約締結と同時に、本件土地の地積と境界標を明示した土地家屋調査士作成の地積測量図および本件土地の登記簿謄本を交付しなけ ればならない。
(2)乙は甲に対し、本件土地上に乙が建築する建物の着工前においては、「建築確認申請書」、「平面図・立面図」を、建物完成後においては、建物の表示登記、保存登記後の「建物登記簿謄本「建物図面」を交付しなければならない。 (3)甲乙双方は、相続・贈与などによる土地所有名義人、建物所有名義人に変動が生じたときは、相手方に対し、「土地登記簿謄本」または、「建物登記簿謄本」を交付しなければならない。
xx先生:第7条(解説)
本条は、土地所有者と地上権者が、相手方に対し、各々が知り得べき最小限の情報としての図面や書面を互いに交付すべきとしている。
土地に関する図面・書面は、地上権者にとって不可欠のものであり、建物の図面・書面は、土地所有者にとって管理上、必要最小限の情報として点検、保管されるべきものである。
双方の相続・贈与などによる親族への名義変更の情報を互いに知ることも、当事者にとって望ましい姿といえる。
(底地の譲渡)第8条
(1)甲が本件土地を第三者に譲渡する場合には、事前に乙に通知するものとする。
(2)前項の土地譲渡が行われた場合には、甲は乙に対する保証金返還債務を本
件土地譲受人に承継させる手続きを行うこととする。
xx先生:第8条(解説)
(1)xxが底地を第三者に譲渡する場合に、ユーザーに買い受けの機会を与える趣旨である。
(2)底地の譲渡が行われた場合は、保証金返還債務は当然に新xxに引き継がれると考えられるが、念のためこのような条項を入れた。
(建物の増改築など)第9条
(1)乙が、本件土地上に建築した居住用xxx建物(以下「本件建物」という)を、本契約期間中に増改築しようとする場合、または本件建物が滅失または毀損したことにより、新たに建物を築造(以下「再築」という)する必要が生じた場合には、甲に対し、あらかじめ、増改築または再築の内容を図面・書面により通知しなければならない。
(2)甲は、前項の増改築、再築について、乙に対して、承諾料その他の名目で金銭の支払いを請求することができない。
(3)増改築または再築に建築確認が必要な場合、前項の通知には、建築確認書を添付しなければならない。
(4)増改築または再築は、第3条の使用目的および特約の定めに従い、建築基準法その他の建築法令を順守するとともに、周囲の環境に調和したものでなければならない。
xx先生:第9条(解説)
建物の増改築、再築は原則としてユーザーの自由とし、その内容を通知すればよいこととし、承諾料などの支払いは一切不要とした。これは、定期借地権
というには 50 年の期間が満了すれば必ず終了するもので、増改築や再築による期間の延長がないから、xxは従来の借地権の場合と比べ、これらにこだわる必要性が少ないからである。
ただし、土地所有者の管理上必要な増改築、再築の内容につき、借地権者から図面・書面の交付を受けるべきとした。
(建物の賃貸借に関する措置)第 10 条
(1)乙が本件建物を第三者に賃貸する場合は、その第三者と締結する建物賃貸借契約書において、借地借家法第 39 条にもとづき、第2条に記載した期間の満了と同時に、建物賃貸借契約が終了する旨を定めなければならない。 (2)乙は、本件建物の賃借人である第三者が本件建物を転貸することを承諾する場合には、乙と第三者、および第三者と転借人との建物賃貸借が、借地借家法第 39 条の適用を受けるものであることを転借人に告知すること条件としなければならない。
(3)乙が前二項に違反したために、甲に損害が生じた場合は、乙は甲に対して、その損害を賠償しなければならない。
xx先生:第 10 条(解説)
(1)本条第1項では、借地権者が建物を貸す場合には、借地借家法第 39 条の確定期限付建物賃貸借契約を締結しなければならないこととしている。これにより、本契約に定める存続期間が満了し、建物が取壊される時点で借家権は消滅し、この結果、借地権者は建物賃借人に対し建物退去(明渡し)を請求することができ、土地所有者は建物賃借人(占有者)に対し建物退去明渡しを請求することができる。
(2)本条第1項に基づく建物賃貸借の賃借人が賃貸部分を転貸するのには、借地権者(建物賃貸人)の承諾を要するところ、本条第2項は、この承諾は、転貸借を借地借家法第 39 条の確定期限付建物賃貸借契約とすることを条件としてしなければならないとしている。その意義は、第1項の場合と同様である。
(保証金)第 11 条
(1)乙は甲に対し、甲乙間の一般定期借地権設定契約(以下「本件借地契約」という)によって生ずる乙の債務を担保するため、保証金として金○○○○円を預託しなければならない。
(2)前項の保証金は無利息とし、第 14 条第(1)項の原状回復がなされ、明け渡しが完了した後3ヵ月以内に、乙の甲に対する残存債務を差し引いた残額を返還するものとする。
(3)乙は、本条第(1)項の保証金をもって、未払い地代その他甲に対する債務と相殺することは出来ない。
(抵当権の設定など)第 12 条
(1)甲は、乙の甲に対する将来の保証金返還請求権を担保するため、本件土地に抵当権を設定する事を承諾する。なお、抵当権の設定登記の費用は乙が負担するものとする。
①未経過分前払地代返還請求権金○○○○円
遅延損害金○○%
②保証金返還請求権金○○○○円
遅延損害金○○%
(2)前項の抵当権設定登記は、乙が住宅金融公庫、銀行、保険会社、信用金庫、 農協その他これに準じる金融機関から、本件建物建築資金の融資を受ける場合、金融機関から、本件建物建築資金の融資を受ける場合、金融機関の本件建物に 対する抵当権設定登記後に経由するものとし、それまでの間は登記保留とする ことに甲、乙とも合意する。
(3)甲において相続が発生し、本件土地を物納する必要が生じた場合、その他甲の理由により、甲または甲の相続人が乙に対し保証金を全額返還した時は、乙はこれと引換えに、本条第(1)項の抵当権を抹消しなければならず、甲または甲の相続人に対し抹消に必要な書類を交付しなければならない。
(4)前項の抹消登記手続費用は、甲又は甲の相続人が負担するものとする。
xx先生:第 12 条(解説)
(1)未経過分前払地代返還請求権及び保証金請求権を担保するために抵当権を設定する。
(2)住宅金融公庫などが建物に設定する抵当権を、前項の抵当権に優先させる趣旨である。
(3)定期借地権を設定した底地について、xxに物納する必要が生じても、抵当権が設定されたままでは物納できない。そこで、保証金を全額返還した時は、ユーザーは抵当権を抹消しなければならないとしたものである。もっとも保証金は無利息であるから、xxはいつでも保証金を返還することができ、その場合には抵当権の抹消を請求することができる。したがって、このような規定を設けなくても抹消を請求できることは当然なのであるが、物納についてのxxの不安を取り除くためと、保証金の返還、抵当権の抹消を、xx、ユーザー間でスムーズに行うために本項を設けた。
(4)抵当権の抹消は、xx側の物納の都合で行うのであるから、抹消の費用はxx側が負担することとした。
(保証金の譲渡など)第 13 条
(1)乙が、甲の承諾を得て第三者に本件借地権を譲渡し、これとともに甲に対する保証金返還請求権を譲渡する場合を除いて、xは同請求権を譲渡することはできない。また乙が、第 11 条の保証金または本件土地上の建物の取得(新築、増改築もしくは購入)資金につき、住宅金融公庫、銀行、保険会社、信用金庫その他これに準じる金融機関から融資を受ける場合を除いて、乙は保証金返還請求権を質入することはできない。
(2)前項により、乙が保証金返還請求権を譲渡または質入する場合、甲は保証金返還請求権の成立・存続・行使につき異議がある場合を除いて、乙に対し確定日付のある異議を留めない承諾書を交付しなければならない。
(3)前項の確定日付を取得するための費用は、乙の負担とする。
xx先生:第 13 条(解説)
(1)ユーザーは、借地権の譲渡とともにするのでなければ保証金返還請求権を譲渡できない。借地人の債務不履行によってxxに損害が生じた場合、その損害を担保するのは保証金であるから、借地権者と保証金返還請求権者が別人になるのは許容できないのである。
ユーザーが保証金について銀行などから融資を受ける場合、xxに対する保証金返還請求権に対し、銀行あるいは保証会社などが質権を設定することになる。そこで、銀行、住宅金融公庫などから融資を受ける場合に限って、保証金の質入を認めることとした。
(2)異議を留めない承諾とは、xxが保証金返還請求権の譲渡・質入を承諾する場合に、同請求権の成立・存続・行使について、何らの異議を留保しないでする単純な承諾を言う。xxが異議を留めない承諾をした場合には、保証金がすでにユーザーに返還されているとか、あるいは最初から保証金がxxに支払われていないなどの事情があった場合でも、xxは保証金返還請求権の譲受人あるいは質権者に対し、それらの事情を主張できなくなる。つまり譲受人あるいは質権者は、xxの異議を留めない承諾を得ておけば、どのような事情があっても、安心して保証金返還請求権を譲り受けたり、質に取ったりすることができるということである。
異議を留めない承諾は承諾書という書面によって行うが、この承諾書には確定日付を得ておく必要がある。確定日付を得ておかないと、保証金返還請求権の譲受人あるいは質権者は、第三者(たとえば保証金返還請求権を二重に譲り受けた者とか、同請求権を差し押さえた者など)に対して保証金返還請求権の譲り受けあるいは質入れを対抗できなくなる。確定日付とは、一般的には承諾書を公証役場に持参し、公証人にその日の日付印を押してもらうことを言う。
以上の理由から、xxはユーザーに対して確定日付ある異議を留めない承諾書を交付することとした。
(3)確定日付ある承諾書は、ユーザーが借地権の譲渡をしたり、銀行などから融資を受けるために必要なのであるから、確定日付の取得費用はユーザーの負担とした。
(期間内解約)第 14 条
乙は、本契約期間中において、書面により何時でも解約の申し入れをすることができる。ただし、本件借地契約は乙の解約申し入れ後、一年を経過したことによって終了するものとする。
xx先生:第 14 条(解説)
本条の規定を設けないと、期間内解約が困難になる (賃貸人による契約の解除)
第 15 条
甲は、乙が次の各号の一つに該当し、甲と乙の信頼関係が破壊されたと認められる場合は、何らの催告なくして本件定期借地契約を解除することができるものとする。
①甲の承諾なく、本件土地の性情、形質を変更し、その他、本件土地の用法に違反したとき。
②第4条(6)項の継続地代の支払いを3ヶ月分怠ったとき。
③第6条の規定に違反し、甲の書面による承諾なく本件借地権を譲渡または転貸したとき。
④近隣に著しい迷惑を及ぼす行為をしたとき。
⑤乙または本件建物に居住あるいは反復出入している者(乙と同居しているものであると、乙から本件建物を賃借した者であるとを問わない)が、暴力団またはこれに類する団体の構成員、準構員であることが判明したとき。
⑥本件建物を暴力団またはこれに類する団体の事務所として使用し、もしくは第三者にこれらの団体の事務所として使用することを許容したとき。
⑦その他、乙が本契約に違反したとき。
xx先生:xx先生:第 15 条(解説)
xxが広大な土地を開発造成して、住環境の優れた一団の定期貸付各区画に定期借地権を設定した場合、その中の1つの区画の借地人が、他の区画の借地人に著しい迷惑を及ぼすような行為をすると、xxは他の区画の借地人から責任を追及され、そのことを理由に地代の減額請求や、地代の支払いを拒否されたり、あるいは他の区画の借地人が中途解約をしてしまった場合には、新たな借地人を探すことが困難になったりする。本条の④から⑥の解除事由を設けたのはこのような事態に対処する趣旨である。
また、借地権者が土地所有者の承諾を得た上で、第三者に、残存期間の借地権と中古建物を望ましい価格で譲渡できる(これは、土地所有者にとっても、地代収入の断絶がないという意味で有益である。)ためにも、一団の定期借地権住宅街の環境維持は必要条件となり、ユーザー(借地人)に対し、良好な住宅用地の供給者としての土地所有者の姿勢を明らかにするためにも重要な規定 となろう。
(原状回復義務)第 16 条
(1)本件借地契約の存続期間が満了した場合、または第 15 条もしくは第 16条により本件借地契約が解除された場合、xは自らの負担と責任において、本件土地に存する建物その他の工作物を収去し、本件土地を原状に復して甲に 明け渡さなければならない。
(2)乙は甲に対し、本件借地権の存続期間が満了する1年前までに、本件建物の取り壊しに関する事項(取り壊し工事の着工予定日、工事期間、施工業者など)および建物賃借人の立ち退きに関する事項(賃借人および同居人の氏名、立ち退き予定日など)、その他、本件土地の明渡しに必要な事項について書面により通知しなければならない。
(3)第1項に規定する本件土地の明渡しが遅延した場合、乙は甲に対し、その時点における本件土地の地代の3倍に相当する額を使用損害金として支払わなければならない。
(4)甲に前項の使用損害金以外の損害が生じた場合、乙は甲に対し、この損害も賠償しなければならない。
xx先生:第 16 条(解説)
(2)明渡しに必要な事項を書面で通知するわけだが、その通知の内容を具体的に定めた。
(3)明渡しが遅延した場合の使用損害金の計算方法について定めた。賃貸借契約が終了したのにかかわらず、本件土地から立ち退くべき借地権者(賃貸借契約が終了しているわけだから、正確に言うと、すでに借地権者ではない)が、まだ本件土地に居座っているというような場合、地代の何倍かに相当する、使用損害金を取るべきであろう。そうでないと、借地権者は賃貸借契約終了後も土地を無償で使用できることになり、居座れば居座るほど得をすることになってしまう。
(賃借人の相続)第 17 条
乙に相続が発生し、甲が乙の相続人に対して、賃料の請求、契約の解除、その他の意思表を行う場合、甲は乙の相続人のうち、本件建物に居住している者に対して意思表示をすることにより、また、本件建物に居住している相続人がいない場合は、甲は、乙の相続人のうち、任意の 1 名に対して意思表示をすることにより、全相続人に対して意思表示をしたものとみなす。
xx先生:第 17 条(解説)
賃借人の賃料の滞納、契約違反行為などがあり、賃貸借契約を解除したいという場合に、賃借名義人がすでに死亡していたという事態は、実務上しばしば生じる事である。このような場合、民法 544 条により、賃借人の相続人がxxいる場合は、賃貸人はその相続人全員に対して、地代の支払いを催告し、契約解除の通知をしなければならない。しかし、相続人全員に対して、地代支払いの催告、契約の解除をするためには、賃借人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本をそろえ、相続人を確定した上で、現存する相続人の戸籍附票をとって住所を調べ、その上で全員に対して催告、通知をしなければならない。しかも、催告、通知は証拠として残るように内容証明郵便で行った方が良いし、不在などの理由で郵便が配達されない時は、再度催告、通知をする必要がある。
このように、相続人全員に対して催告、通知を行うといっても、なかなか大変な作業なので、本条文を設ける方がよい。
本条は、賃貸人と賃借人の賃貸借契約に定められるものであるが、賃借人の相続人は賃借人の権利義務をすべて引き継ぐから、賃借人の相続人も本条の定めに拘束されると考えられる。
(遅延損害金)第 18 条
第 14 条第(3)項の場合を除き、乙が本件借地契約により甲に対し負担した債務の履行を遅延したときは、年 14.6%の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
xx先生:第 18 条(解説)
消費者契約法上、借地権者が消費者の場合は、金銭債務不履行の場合の違約金は年 14.6%となる。
(登 記)
第 19 条
(1)甲および乙は、第 20 条によりxx証書が作成された後速やかに、本件土
地について法第 22 条の規定による一般定期借地権の設定登記をするものとする。
(2)前項の登記費用は、甲および乙が各2分の1を負担するものとする。
xx先生:第 19 条(解説)
(1)借地権設定契約はxx証書によって行う。したがって、xx証書が作成された後すなわち借地権設定契約が締結された後速やかに、定期借地権の設定登記をするものとした。
(2)定期借地権の設定登記は、xx、ユーザー双方のためにするものであるから、登記費用は各2分の1の負担とした。
(管轄裁判所)第 20 条
本件借地契約に係る紛争については、本件土地の所在地を管轄する地方裁判所を第1審の管轄裁判所とする。ただし、第5条の地代改定に関する紛争については、本件土地の所在地を管轄する簡易裁判所を調停管轄裁判所とする。
(xx証書)第 21 条
(1)甲および乙は、本契約書を交わした後速やかに、本契約書の内容に基づくxx証書の作成を法務局公証人に委嘱するものとする。
(2)前項のxx証書作成費用は、甲および乙が各2分の1を負担するものとする。
xx先生:第 21 条(解説)
借地権設定契約はxx証書によって行うから、本契約書を交わした後速やかにxx証書を作成する必要がある。
借地借家法第 22 条では、一般定期借地権である旨の特約は書面によってしなければならないと定められているのみで、必ずしもxx証書による必要はない。それにもかかわらずxx証書を作成することとしたのは次の理由による。
公証人法施行規則第 27 条第1号によれば、xx証書の保存期間は 20 年とさ
れているが、一般定期借地権のように契約期間が 20 年を超える文書の場合は、その契約期間内は公証役場において保存が継続される扱いとなっている。土地の登記事項証明書によって定期借地権であることや存続期間その他の限定的 要目を知ることができるとしても詳細な契約条項を確かめることは不可能で ある。したがって、xx証書によって借地権設定契約をしておけば、xxが契約書を紛失してしまった場合でも、当事者(xx・ユーザー)の求めにより、xx証書の謄本は有料でいつでも交付されることとなり、契約内容の全部が確認できることとなる。
なお、xx証書を作成する場合、本契約書は、その準備書面となり、本契約書の字句が多少修正されるほかは、本契約書の内容とxx証書の内容はほとんど同一である。
なお、xx証書は、土地所有者、借地権者双方のために作成するものであるから、作成費用は各2分の1の負担とした。
(強制執行認諾条項)第 22 条
甲および乙は、本契約書に基づく金銭債務不履行の時は、直ちに強制執行を受けても異議がないことを認諾します。
(その他)第 23 条
本契約書に疑義ある事項および本契約書に定めのない事項については、甲、乙双方協議のうえ定めるものとする。
〔物件目録〕
所 在○○○○
地 番○○○○
地 目○○○○
地 積○○㎡
以上、各条項にわたり、甲、乙の合意の成立を証するため、本契約書2通を作成し、署名押印のうえ、当事者各1通を保有するものとする。
西暦○○年 ○○月○○日
土地所有者(甲) 住 所○○○○
氏 名○○○○印
借 地 権 者 (乙) 住 所○○○○
氏 名○○○○印
x x x
住 所○○○○
氏 名xx工務店印宅地建物取引士(登録番号○○○○)
氏 名○○○○印
振 込 銀 行 口 座
銀行・支店 | 銀行 支店 |
預金の種類 | 普通預金 当座預金 |
口座番号 | |
名義人 |
※ 上記口座は、甲が指定した場合は変更になります。