この政令は,1988 年 10 月 28 日,プノンペンにおいて,国家評議会(Council of State)により適用された。
契約及びその他の責任に関する政令 38 号1
この政令は,1988 年 10 月 28 日,プノンペンにおいて,国家評議会(Council of State)により適用された。
第1章 契約
第1節 総則
1条 契約とは,2人又はそれ以上の者の間の合意であり,それらの者を拘束する1つ又は複数の義務を形成し,変更し,又は消滅させるものである。
上記定義において,人とは,自然人又は法人をいう。法人は,その代理人を通じて契約を締結することができる。
2条 契約は,契約当事者に個人的及び社会的な利益をもたらすものとする。契約当事者は,xxxxに則り,社会倫理を尊重し,特に「一方当事者による他方当事者の搾取」の概念を排除して取引しなければならない。
第2節 契約の有効性及び形式
3条 契約は,以下の場合に有効となる:
-xxかつ自由な合意により生じた場合
-契約締結能力を有する当事者間で締結された場合
-その内容が確定しており,履行可能であり,適法であり,公序良俗に合致している場合
4条 契約は,口頭で,又は書面により締結することができる。法律は,契約締結について正確な方式を設定するものとする。法律の定める方式に従わないすべての契約は,無効とみなす。5000 リエル以上の価値を有する金銭又は品目を内容とする契約は,これに反する規定がある場合を除き,書面でしなければならない。
第3節 契約の無効
5条(契約の無効事由)
以下の契約は無効とみなす:
-違法な場合及び公序良俗に反する場合
1 本政令は,民法適用法(2011 年)79 条により,失効した(本政令 83 条から 88 条を除く。)。
-社会的利益に反する場合又は社会倫理に反する場合
-その内容が履行不能である場合
6条(契約の取消事由)
以下の契約は取り消すことができる:
-真意又は自由意思によるものでないとき
-契約能力を欠く当事者により締結された契約
7条(錯誤,強迫,詐欺)
錯誤,強迫,又は詐欺による契約は,有効な契約ではない。
8条(要素の錯誤)
契約の内容である対象の要素に関する錯誤がある場合,錯誤は契約を無効にする根拠となる。当事者の個性が契約の基礎となる場合を除き,人違いは契約を無効にする根拠とはならない。
9条(暴力)
暴力が契約当事者,その配偶者,尊属又は卑属に対する精神的,肉体的強迫の形の下に行われる場合は,暴力は契約を無効にする根拠となる。
10 条 契約の一方当事者によるごまかし,不正行為又は偽りがあり,それがなければ他方当事者が契約を締結しなかったであろう場合には,詐欺は契約を無効にする根拠となる。
11 条 契約を締結する際,一方当事者が不当な利益を得るために他方当事者の状況につけこんだときは,被害を受けた当事者は,いつでも契約取消しの訴えを起こすことができる。
12 条 契約を締結する際,一方当事者が申し出た内容の価値と代わりに考慮した価値との間に違いがある場合は,被害を受けた当事者は,差額を与える意図はなかったことを根拠として,契約取消しの訴えを起こすことができる。
13 条 錯誤,強迫又は詐欺により契約を締結したと主張する者は,契約に定められた債務の執行を回避するため,上記事項を証明しなければならない。
14 条 満 18 歳に達した者は,いつでも契約を締結することができる。ただし,法律に
定められた抑留者を除く。
15 条 18 歳未満の者は,xxxx義務を創設してはならず,特に法律上の後見人の同意なくして契約を締結することはできない。
事前に法律上の後見人の同意なく未xx者により締結された契約は,締結後に後見人がその契約に同意したときには執行することができる。ただし,日常生活上の必要から未xx者により締結された契約については,法律上の後見人の同意を要しない。
16 条 無能力者との契約を締結した者は,他方当事者の無能力を根拠として契約の義務を免れようとすることはできない。
17 条 契約の内容は,商業的価値を有しなければならない。その種類,質,量は,明確に記載されなければならない。
将来生じるものもまた契約の内容とすることができる。しかし,生きている者の遺産を売却することは,その者の同意があっても,することができない。
18 条 すべての者は,5条に掲げられた契約を完全に取り消す訴えを起こすことができる。
19 条 契約が無能力,錯誤,強迫又は詐欺により取り消すことができる場合,被害を受けた当事者又はその主張につき法律上の利益を有するすべての者が,契約取消しを主張することができる。被害を受けた当事者又はその主張につき法律上の利益を有するすべての者は,他の当事者に通知しなければならない。通知を受けた者は,遅滞なく回答しなければならない。
被害を受けた当事者又はその主張につき法律上の利益を有するすべての者は,通知をした後 12 か月の期間内に契約取消しの訴えを起こすことができる。
20 条 19 条に規定された契約取消しの訴えを起こす権利は,提訴後,その権利者が,自ら義務を履行することに同意するか,又は書面により訴えを取り下げることに同意した場合,消滅する。
21 条 契約の無効事由がある場合は,契約締結前の状況に復帰する。第4節 契約の効果及び解釈
22 条 契約は,法的に拘束力を有する当事者間の合意である。契約の修正は,契約当事
者の双方の合意によってのみ行うことができる。
契約は,誠実に,当事者の意思に基づいて履行されなければならない。契約は,契約当事者のみを拘束する。
23 条 契約の意味が明確でない場合,契約は,契約が締結された場所における通常の実務又は慣習に従って解釈されなければならないが,その解釈は,この法律の規定に反してはならない。不明確性がある場合は,契約は債務者に有利に解釈されなければならない。
24 条 債務者は,現在又は将来入手可能な自己の動産又は不動産から支払うことより,契約に基づく債務を履行しなければならない。
第5節 契約の制限に関する規定
25 条 法律が別に定める場合を除き,契約に基づく債務は,債権者が契約に定義された日から,又は契約に定義されていない場合は契約締結の日から,5年以内に履行を求める訴えを起こさない場合は,消滅するものとみなす。
26 条 制限期間は,債務者が居住地に不在の場合で,その不在が法律に従って地方当局により認証された場合は,延長される。
27 条 債務者又は保証人は,制限の規定を主張することができる。債務者又は保証人が制限の規定の主張をしないときは,人民裁判所は,それらの者のためにそれをすることができる。
28 条 制限期間が経過した後に契約上の義務を履行した債務者又は保証人は,制限期間が経過したことを理由にその金額又は価値の返還を求めることはできない。
第6節 契約の履行
29 条 契約上の債務は,適時に,かつ,適正に ― 特に定められた質,量,場所,期限に関して ― 履行しなければならない。
30 条 契約の当事者とは,次の者をいう。
-履行すべき債務を負う債務者
-債務者が履行すべき債務についての債権を有する債権者
31 条 債権者は,次のことを強制されない。
-受領する権利を有する物と異なる物を受け入れること(仮にその価値が同じか高い場合であっても)。
-契約の一部の履行を受け入れること。ただし,厚意及び債務者の窮状に基づき,人民裁判所は,契約の履行時期を延長し,又は遅らせ,債権者の行為の一時停止を命じることができる。その場合,その決定の理由は明らかにされなければならず,人民裁判所はこの権限を細心の注意に基づいて行使しなければならない。
32 条 契約の履行は,契約に定めがない限り,債務者の住所地でしなければならない。
33 条 契約の履行について期間の定めがない場合,債務者は,いつでも支払又は提供をすることができ,債権者はいつでも支払を要請することができる。
第2章 いくつかのよく使われる契約
第1節 売買
34 条(売買契約の定義)
売買とは,ある者が対象物又は権利の所有権を移転する義務を負い,他の者がその対象物又は権利の価値を補償する義務を負う契約をいう。
35 条(売買契約の無効事由)
次の売買は,無効とみなす。
-他人の財産の売買
-夫による妻の所有物の売買,逆も同じ
-「分割できない」共有物をある共有者が別の共有者の同意なく売却すること
1 売主の義務
36 条(保管義務)
売主は,売却の目的物を引渡期日まで良好な状態で保管し,契約上の義務,すなわち目的物の引渡しを履行できるようにしなければならない。
37 条(目的物の変更の禁止)
売主は,売買の日から引渡しまで,売却の目的物に変更を加えてはならない。
38 条(損害賠償責任)
売主は,引渡し時までに売却の目的物に生じた損害について責任を負う。引渡し
までに商品が滅失し,又は重大な損傷を受けたとき,又は売主が代替物を見つけられないときは,売買を解除することができる。売買が解除された場合は,売主は,売却の目的物に生じた滅失又は売主の過失により生じたすべての損傷について,買主に賠償金を支払わなければならない。
39 条(情報,書類の提供義務)
売主は,買主に対し,売却の目的物のすべての重要な特性及びその他の重要な状況について,買主に知らせなければならない(特に,目的物について他者が有する権利に関する情報がある場合)。売主は,売買に関するすべての書類を買主に交付しなければならない。
40 条(派生物の引渡義務,不動産の引渡しの時期)
売主は,目的物の主要部分だけではなく,派生物及び付属品も引き渡さなければならない。
不動産売買の場合,権利証の引渡しをその不動産の引渡しとみなす。引渡しにより生じる費用は,売買契約に別段の定めがない限り,売主が負担する。
41 条(不動産,動産の権利移転の時期)
不動産に関しては,売主の権利の買主への移転は,xxの権利証が認証され,登録された場合に,有効とみなす。認証及び登録の日以降は,第三者はその不動産について権利を有しない。動産に関しては,目的物が買主の手に引き渡されたときから,売主の権利の移転は有効とみなされ,第三者は権利を有しない。ただし,売買が認証された権利証により行われる場合は除く。その場合,権利証が認証された日から,第三者は異議を述べることができない。
42 条(瑕疵担保責任及びその期間)
売主は,外観から判明する瑕疵について責任を負わないが,売買より前から存在 する隠れた瑕疵については責任を負う。買主は,売買に先立ちそのような瑕疵が存 在したことを証明できたときは,契約の解除又は代金の減額を求めることができる。
買主は,購入をやめる場合又は代金減額を請求する場合,引渡しの日から1年以内にその主張をしなければならない。1年以内にその主張がされない場合,買主の沈黙は同意とみなす。
43 条(第三者による権利主張と売主の責任)
売主は,買主から目的物を奪おうとする第三者の行為,第三者が目的物について権利を有すると主張することに対し,防御を保証しなければならない。
44 条(第三者による権利主張と売主の責任)
第三者が買主から目的物を奪うために訴訟を起こすと警告してきた場合,買主は,直ちにその第三者について売主に知らせることができる。売主は,買主が裁判所の 判断を通じて第三者の主張に勝てると保証できる場合を除き,第三者が買主に対し て主張をすることをあらゆる手段で防がなければならない。
45 条(第三者による権利主張と売主の責任)
買主から買主のために行為をするよう求められた売主は,第三者との争いを引き継がなければならず,買主は賠償について責任を負わない。売主がその状況を解決できない場合,買主は訴訟に進まなければならない。
46 条(買主が目的物を受領できなかった場合の売主の責任)
裁判所が買主から目的物を奪うことを決したときは,売主は買主から受領した額を返還しなければならない。加えて,売主は,損害賠償責任を負う。損害額は,契約及び命令による損失及び売却日以降に被った関連費用を含むものとする。
47 条(売主の死亡)
売主が死亡したときは,その義務は相続人に帰する。
48 条(売主が犯罪により目的物を得ていた場合の買主の解除権)
売主が重罪又は軽罪により目的物を得た場合,それを知っていた買主は,買主から目的物を奪う旨の第三者の警告がない場合であっても,契約の解除を求めることができる。
この規定に反するすべての契約は無効とみなす。
49 条(転々売買における買主の権利)
同じ目的物が多数の者に続けて売却された場合,最後の買主は,直接の売主に対し,遡って自らの権利を守るよう求めることができる。
その売主は,必要な場合,譲渡の連鎖における直接の売主に対し,遡って求めることができる。
2 買主の義務
50 条(代金支払の日時及び場所)
買主は,既に決められた日時及び場所において,契約に定められた代金を支払わなければならない。契約に日時及び場所の定めがない場合,支払は引渡しの場所で
行わなければならない。
51 条(遅延利息)
契約においては,買主に対し,支払が遅れた場合の契約代金に対する利息の支払義務を負わせることができる。利率は5パーセントを超えてはならない。契約において利率が定められていない場合,買主は契約で定められた代金のみを支払う義務を負うが,目的物が利益又は収益を生むものである場合は,利率は法律の定めに従い計算される。
52 条(第三者による権利主張がされた場合の買主の支払義務)
買主が目的物を受領したが,第三者から目的物は自己の物である旨の主張が買主にされた場合は,買主は,支払を延期することができる。買主は,第三者との問題が解決された後に限り,売主に対して支払義務を負う。
53 条(売主の目的物保持の権利)
売主は,買主が代金を支払うまで,目的物を保持する権利を有する。
54 条(代金不払による売主の契約解除権)
期日に買主が支払をしない場合,売主は,代金請求訴訟を起こす意思がないときは,契約を解除することができる。支払が完了しない限り,売主はいつでも契約を解除することができる。
55 条(解除の効果)
契約が解除された場合,契約の当事者双方は,互いに受領したものを返還しなければならない。買主は,目的物を既に得た利息及び収益とともに返還しなければならない。売主は,買主が支払った金銭を返還し,法律の規定による利息を支払わなければならない。
第2節 利息付貸金契約
56 条(利息付貸金契約)
利息付貸金契約とは,一方当事者が他方当事者に金銭を交付し,後者がその金額と契約期間に応じた付加金額をともに返済する義務を負う契約である。
57 条(書面の必要性)
この契約は書面でしなければならない。その契約書には,当事者の氏名,住所,貸金の額,利息の額,貸付期間及び返済日を明記しなければならない。借主は,契
約書に署名しなければならない。
58 条(貸付期間及び利率の推定)
契約書に返済日及び利率が記載されていない場合,双方当事者は,1年間無利息での契約に合意したものと推定する。
59 条(制限利息)
貸主は,双方当事者間に合意があれば,貸金について利息を課すことができる。法律に別段の定めがある場合を除き,その利率は年5%を超えることができない。
60 条(過払利息の返還)
貸付期間中に貸主が課した超過利息は,すべて元金から控除される。返還された額が元金及び法律で許された利息額を超える場合,債権者は,その超過額を,借主から返済を受けた日から計算した利息とともに,借主に返還しなければならない。
この場合,貸主は,効力のある刑法の規定に従い,刑事責任を負う。
61 条(返済期,借主が死亡した場合の処理)
貸主は,返済日より前に返還請求することができない。借主が死亡した場合,貸主は,貸金全額の返還を直ちに請求することができる。返還義務は使者の相続人に引き継がれ,相続人は,未払の借入金について,使者の財産から,その分割前に支払わなければならない。
62 条(債権証書,支払証書)
貸主は,資金がすべて返済されたときには,借主に対し,貸金証書又は支払を証する書面を交付しなければならない。
63 条(利息)
個人財産に関する貸金に伴う利息については,貸金に関する規定にしたがわなければならない。
第3節 個人財産担保契約
64 条(個人財産担保契約)
個人財産担保契約とは,債務者が自らの個人財産を借入れの担保として引き渡す契約をいう。
その担保財産を占有する債権者は,その財産の売却手続において,他のすべての債権者に先立って支払を受ける権利を有する。
65 条(個人財産担保契約の要件)
個人財産担保契約は書面でしなければならない。この契約は,債権者が担保財産を占有している場合に限り有効とする。
債務の額及び担保財産は,契約において特定して明記しなければならない。契約において利息及び返済日が特定されていない場合,債務は無利息で契約締結日から
1年間のものとする。
66 条(債権者の管理,保管義務)
債権者は,担保財産を自由に処分する権利は有しない。債権者は,担保財産を合理的に管理し,保管する義務を負う。債権者の過失により担保財産に損傷が生じ,又は滅失した場合,債権者は損傷を修理し,又は損傷若しくは滅失について債務者に賠償しなければならない。
67 条(債権者による担保財産使用の禁止)
契約書に異なる定めがない限り,債権者は,担保にとった個人財産の使用又は収益をすることはできない。債権者は,被保全債権からしか利益を受けることを許されていない。その利益は,必要経費に使用されなければならない。
債権者が契約書に違反して担保財産を使用した場合,債務者は担保財産の取戻しの訴えを提起することができる。
68 条(担保財産処分に対する刑事責任)
債権者が事前に債務者の承諾を得ることなく担保財産を処分した場合,債権者は刑法の規定に基づき刑事責任の追及を受ける。
69 条(弁済による担保不動産の返還)
支払期が到来し,債務者が全額の弁済をした場合,債権者は,担保財産の占有を債務者に返還しなければならない。支払期にも債務の一部が未払である場合,債権者は未払分が支払われるまで,担保不動産を保持することができる。
70 条(未払による担保財産の換価請求)
支払期が到来したのに債務者が義務を履行しない場合,債権者は,人民裁判所に対し,担保財産の換価を請求することができる。
担保財産の売却により得られた代金は,最初に担保財産を占有していた債権者に支払われる。代金の残額は,債務者に支払われ,又は支払を受けていない債権者に支払われる。
担保財産の売却による代金によっても債務の全額の支払に足りない場合は,債務者は債権者に対し,未払額について依然として責任を負う。
71 条(債権者による所有権取得の禁止)
契約において,債務者が契約に基づく義務を履行でしない場合に債権者が担保にとった個人財産の所有者になるとの定めがある場合,個人財産担保契約は無効とみなされる。
第4節 請負契約
72 条(請負契約の定義)
請負契約は,一方当事者が他方当事者のために仕事の実施を行い,仕事に応じた報酬を得る契約をいう。
73 条(請負代金の定めがない場合)
契約中において報酬が明示されていない場合,裁判所は仕事が実施された場所における慣習に基づいて報酬を決しなければならない。
74 条(仕事が合意違反である場合の注文者の権利)
仕事は,契約において明確に定められなければならない。実施すべき仕事が契約書における文言に従って行われなかった場合,注文者は;
a 契約に定められたであろう仕事の結果を受け入れないるか,又は請負人に損害の賠償その他の損失の補償をさせることができる(ある場合)。
b 請負人に対し,請負人の費用において,双方当事者が合意できる一定の期間内に必要な修補を請求することができる。
c 報酬を減額することにより仕事を受け入れることができる。
75 条(仕事の完成の遅延)
契約において仕事の完成時期が定められており,訴えの期間内に仕事が完成しなかった場合,注文者は主張することができる損害の可能性にかかわらず,契約を解除することができる。
しかし,仕事の遅延が不可抗力により生じた場合,注文者は損害賠償を請求することができない。
76 条(注文者の材料供給等の遅延)
注文者は,契約に定められた一定期間内に前払金を支払わず,又は材料を供給しない場合,仕事の遅延に基づいて契約を解除することができない。請負人は,その
ような遅延に基づき契約を解除することができる。その場合,請負人は,既に完成させた仕事について合理的な報酬を受け取ることができる。
77 条(注文者の解除権)
注文者は,仕事の完成までは,請負人に代金及び既に完成した仕事に関する他の費用を支払う限り,いつでも契約を解除することができる。
78 条(損害賠償等)
請負人の過失により仕事の目的物が完成前に壊れてしまった場合で,注文者が請負人に前払金の支払及び/又は材料の提供をしているときは,注文者は,損害額及び仕事に関して支払った他の費用に相当する額にについて賠償を受けることができる。しかし,不可抗力により損害が生じた場合は,契約の各当事者は,互いに他方当事者に対して法的権利を有しない。
79 条(請負人の使用人に関する責任)
請負人は,その使用人による仕事の実施について責任を負う。
80 条(報酬の支払)
仕事が完成した場合,請負人は,仕事の目的物の引渡しと同時に報酬等を受け取ることができる。報酬を支払うことは,なされた仕事を受け入れたものとみなす。
81 条(請負人の過失による瑕疵)
仕事の目的物の注文者への引渡しの後,請負人の過失による結果である仕事の瑕疵が明らかになった場合,契約は,
-解除されるか
-注文者に報酬の一部が返還されるか
-請負人の負担により修補がされる。
注文者は,瑕疵担保の期間内に瑕疵が明らかになった場合に限り,それを主張することができる。瑕疵担保の期間が契約に定められていない場合,注文者は仕事を受け入れた日から3年以内に主張することができる。
82 条(請負人の死亡)
請負人が自然人であり,死亡した場合,契約は無効となる。
第5節 運送契約
83 条(運送契約の定義)
運送契約とは,運送人である者が,ある場所から他の場所へ乗客,荷物又は物品を輸送し,当事者間の合意で定めた送料又は国家が定めた送料を得る契約をいう。
84 条(運送開始の遅延)
運送人が運送を開始するのを遅延した場合,荷主は契約を解除し,運送人に次の支払を求めることができる:
-送料及び代わりの運送人に対する他の前払金
-運送の遅延により生じた損傷,滅失,運送された荷物若しくは物品の損壊,運送の遅延により生じた価格の減少についての賠償金
85 条(運送の遅延)
運送人が運送を遅延した場合,荷主は契約を解除し,運送人に次の支払を求めることができる:
-送料及び代わりの運送人に対する他の前払金
-運送の遅延により生じた損害,損失,運送された荷物若しくは物品の損壊,運送の遅延により生じた価格の減少についての賠償金
86 条(運送人の責任)
運送人は,運送した荷物又は物品の滅失又は損傷について責任を負う。運送人は,運送中に乗客に生じたすべての事故について責任を負う。
運送人は,傷害不可抗力又は乗客自身の過失により生じたときには,責任を負わない。
運送中の荷物又は物品が盗まれた場合,運送人は盗まれた荷物又は物品について支払をする責任を追う。
87 条(運送人の責任)
運送人は,不可抗力又は荷物若しくは物品自身の自然の損壊によらないすべての滅失又は損傷に関し,荷物又は物品について責任を負う。
運送人は,正当な理由によらない運送の遅延から生じたすべての滅失又は損傷について特に責任を負う。
88 条(提訴期間の制限)
滅失又は損傷の賠償を求める訴えは,荷主が荷物若しくは物品が滅失若しくは損傷したことを知った日又は乗客が被害者になった日から1年以内に提起しなければならない。
第6節 寄託契約
89 条(寄託契約の定義)
寄託契約は,ある者(被寄託者)が別の者(寄託者)の個人財産を無償又は有償で保管し,特定の時期又は財産の返還が求められたときに,寄託者又は寄託者が明確に指定した者に対し,返還する契約をいう。
90 条(報酬の定めがない場合)
基本原則として,契約において報酬が特定されていない場合,被寄託者は報酬を受けることができない。
91 条(被寄託者の義務)
被寄託者は,寄託された財産を保管し,一定の時期又は寄託者が返還を求めたときに,これを返還しなければならない。
被寄託者は,寄託者が許可しない限り,寄託された財産を使用することができない。
92 条(寄託された財産の損傷又は滅失)
被寄託者は,被寄託者側の過失により生じた寄託された財産の損傷又は滅失について,責任を負う。
寄託された財産に不可抗力により損傷又は滅失が生じた場合は,賠償はされない。
93 条(盗難についての被寄託者の責任)
有償寄託で寄託財産が盗難により失われた場合,被寄託者は,賠償責任を負う。無償寄託で寄託財産が盗難により失われた場合,被寄託者は,寄託財産につき注 意深く安全措置を取ったことを立証する十分な証拠を有する場合,賠償責任を負わ
ない。
ただし,ホテル,商店,レストランの所有者は,宿泊客又は顧客の財産の盗難について,ホテル又はレストランの所有者の管理下に財産があった場合には責任を負う。
第7節 使用貸借契約
94 条(使用貸借契約の定義)
使用貸借は,利息又は代金を一切伴わない貸借をいう。他の者に財産を使用させるために貸す者は,その財産の所有権を保持する。
95 条(借主による売却等の禁止)
借主は,貸主の同意のない限り,借りた財産を売却し,交換し,又は貸すことができない。
96 条(借主による目的物の使用)
借主は,借りた財産を良心的,適正な方法で使用し,自らが所有するのと同様な程度に安全措置をとり,目的に従った方法でそれを使用しなければならない。
借主は,借りた財産について安全措置をとり,保管するための費用を支払う責任を負う。
97 条(目的物の損傷又は滅失についての借主の責任)
目的物が不可抗力により損傷し,又は滅失した場合,借主は賠償責任を負わない。しかし,損傷又は滅失が借主の過失によるときは,借主は,貸主に対して賠償責任を負う。
98 条(目的物の返還時期)
借主は,貸主に対し,契約に定められた時期に借りた財産を返さなければならない。契約に時期の定めがない場合,貸主は,貸した財産の返還をいつでも求めることができる。
99 条(目的物の即時返還)
借主が通常の用法に従わない方法で借りた財産を使用した場合,貸主は契約に定められた時期の前でも,即時に財産の返還を求めることができる。
第8節 賃貸借契約
100 条(賃貸借契約の定義)
賃貸借とは,賃貸人がその財産を一定期間使用させるために借主に貸し,賃料を得る契約をいう。
賃貸される財産は,不動産,動産のどちらでもよい。
101 条(賃貸借期間)
賃貸借の期間は,定められていても定められていなくてもよく,賃貸借期間が定められていない場合,賃貸借期間は 12 年を超えてはならない。
期間が1年を超える賃貸借契約は,書面でしなければならない。
102 条(書面によらない賃貸借契約の証明)
書面によらない賃貸借契約で,一方当事者が賃貸借の存在を否定する場合,その
賃貸借契約の期間が1年を超えない限り,賃貸借を証する証拠は,証人の証言に基づかなければならない。
103 条(賃貸人の義務)
賃貸人は,賃借人に不当な問題を生じさせる事故を防ぐため,賃借人に良好な状態の財産のみを賃貸しなければならない。また,例えば抵当権のような目的財産に関する権利を主張する第三者の請求から,賃借人を保護しなければならない。
104 条(賃貸人の修繕義務)
賃貸人は,法律又は契約に別の定めがある場合を除き,目的財産に関する大きな修繕について責任を負う。
105 条(賃借人の義務)
賃借人は,契約によって定められた額の賃料を支払わなければならず,目的物を通常の用法及び契約に定められた用法に従って使用しなければならず,目的物を良好な状態に保たなければならず,法律又は契約に別の定めがある場合を除き,目的物に関する小さく,又は単純な修繕について責任を負う。
106 条(借主の返還義務)
契約を解除する際,借主は目的物を受領したときと同じ状態で返還しなければならない。
107 条(借主の義務違反と解除)
貸主は,借主が義務を履行しない場合又は借主が通常の用法に従わない方法で目的物を不適切に使用する場合若しくは目的物に損傷を生じさせる方法でこれを使用する場合に,契約を解除することができる。
108 条(転貸の禁止)
借主は,法律に別の定めがある場合を除き,貸主の同意を得ることなく目的物を他の者に転貸することができない。
109 条(転貸後の賃借人の責任)
目的物を転貸した賃借人は,その後も賃貸人に対し,契約に基づく義務を負い,特に賃料不払,転貸から生じた目的物の破壊又は損壊について責任を負う。
110 条(期間の定めのない賃貸借契約の解除)
賃貸借契約に期間の定めがない場合,当事者は,最低1か月前又は最高2か月前の通知をしない限り,契約を解除することはできない。
111 条(賃貸人又は賃借人の死亡)
賃貸人が死亡した場合,契約の効力は存続する。賃借人が死亡した場合,契約の効力は存続しない。ただし,賃借人の相続人が賃貸借契約の存続を希望する場合,契約の効力は存続する。
第9節 保証契約
112 条(保証契約の定義)
保証契約とは,「保証人」と呼ばれる第三者が,債務者が債権者に対して義務を履行しない場合に,債務者の義務を負い,又は履行する旨を債務者に対して合意する契約をいう。この契約は,書面によりしなければならない。
113 条(1つの主債務に対する保証契約の数)
1つの債務について,複数の保証をすることができる。
114 条(主債務の無効の効果)
法律により無効な債務に関する保証契約は,効力を有しない。ただし,債務者が未xx者であることによる無効の場合は,その保証契約は有効とみなされる。
115 条(保証人に対する法律行為の債務者への効力)
保証人に対する法律行為は,同時に又は後に,債務者に対する行為ともみなされる。
116 条(保証人の財産と債務者の財産の差押えの先後関係)
裁判所の決定の後,保証人は,保証人の財産に先立ち債務者の財産の差押えを行うよう要請することができる。
117 条(債務者の財産の売却後の保証人の責任)
債務者の財産を売却したが,売得金の額が債務を満足させるのに十分でなかった場合,保証人は残額について責任を負う。
118 条(複数の保証人の責任の関係)
多数の保証人がいる場合,各保証人は,一つしか保証人がいない場合のように,すべての債務について責任を負う。すべての保証人は,債務の支払に付き連帯責任
を負う。
119 条(保証人の債務者に対する求償)
保証人が債務者の債務を支払った場合,債権者に与えられていた権利はすべて保証人に移転する。保証人は,債務者に対し,保証人が支払った金額の返済のほか,債務が支払われた日以降に発生した利息その他の費用の支払を求めることができる。
120 条(保証人の他の保証人に対する求償)
保証人の1人が債務者の債務を支払い,債務者が支払不能の状態にある場合,この保証人は,他の保証人に対し,その各自の持分の支払分の填補を求めて法的手段をとることができる。
121 条(不法行為責任)
第3章 他の責任
自らの過失により他の者に損害を発生させた者は,その損害を賠償する責任を負う。不注意又は怠慢などの故意ではない行為により損害が生じた場合であっても,加害者は責任を負う。
122 条(無能力者が生じさせた損害)
精神障害者及び 14 歳未満の未xx者は,無能力者とみなす。これらの者は,自らが他の者に生じさせた損害について責任を負わない。
123 条(親権者等の責任)
親権者,後見人その他無能力者を担当し,又は世話をする者は,これらの無能力者が生じさせた損害について個人的に責任を負う。
124 条(未xx者と親権者等の連帯責任)
14 歳を超えて 18 歳未満の未xx者は,自らが他の者に生じさせた損害について責任を負う。その損害の賠償について,それらの未xx者及び親権者又は後見人は,連帯責任を負う。未xx者が訴えの損害を賠償するための資金や財産を有しない場合,親権者又は後見人が代わりに支払わなければならない。
125 条(組織の使用者責任)
国家,社会組織及び集団組織又は企業は,その公務員,職員,労働者が使用者の
ために仕事をしているとき又はその間の行為により生じた損害について責任を負う。
126 条(雇用者の使用者責任)
使用者は,使用人が使用者のために仕事をしているとき又はその期間中の行為により生じた損害について責任を負う。
127 条(動物の管理者の責任)
動物の所有者又は動物を使用する者は,その動物が管理下にいる間に他の者に生じさせた損害又はその動物が逃げ,若しくは失われていた期間に生じさせた損害について責任を負う。
128 条(財産から生じた損害についてのその所有者の責任)
財産の所有者は,その財産の維持,管理又は補修を懈怠により行っていなかったことにより他の者に損害が生じた場合,その損害につき責任を負う。
129 条(共同不法行為)
損害が複数の加害者により生じた場合,それらの者は被害者に対して連帯責任を負う。一定の場合,人民裁判所は,加害についての寄与度の割合に応じて,各加害者に被害者へ賠償させることを決することができる。
130 条(加害者の他の加害者への求償)
他の加害者と連帯責任を負う加害者の一名が全損害を自ら賠償した場合,加害についての寄与度の割合に応じて,他の者に寄与度の割合を請求することができる。
131 条(行為者の代わりに責任を負う者による求償)
組織又は個人は,他の者により生じた損害について責任を負う場合,その者に対し,損害の填補を求めて法的手段をとることができる。
132 条(損害の一部を生じさせた被害者の責任)
損害の一部を被害者が生じさせた場合,被害者は,その部分について責任を負う。
133 条(損害賠償責任を負わない場合)
以下の損害については,損害を生じさせた者は他の者に対して責任を負わない。
1. 不可抗力により生じた損害
2. 被害者の過失のみにより生じた損害
134 条(被害者による危険の承認)
被害者が損害の危険を負うことに合意した状況で損害が生じた場合で,社会的利益に影響せず,又はこれを脅かさないときは,そのような損害は賠償されない。
135 条(損害賠償請求権の時効期間)
損害賠償請求の時効期間は,3年に限定される。
第4章 最終条項
136 条(本政令施行前の契約の取扱い)
この政令の施行前に締結されたすべての契約は,党及び国家の政策を通じ,又は慣習及び伝統を通じて解決される。
上記契約の解決は,この政令が発効してから5年間に限り行うことができる。
137 条(本政令実施の責任)
閣僚評議会,最高人民裁判所,最高人民裁判所に置かれた検事総長は,それぞれの権限の範囲内において,この政令の実施について責任を負う。
138 条(本政令の効力発生の時点)
この政令は,施行のときに効力を生じる。
プノンペン,1988 年 10 月 28 日
国家評議会(Council of State)
首相(president)署名xx
xx·xxxx